説明

リアルタイム検出PCR法による鶏コクシジウム原虫遺伝子の測定方法ならびにそれに用いられるプライマー

【課題】特別な手技を必要とせず簡便に実施することができ、かつ、糞便やワクチン等の検体に含まれる鶏コクシジウム原虫の定量を可能とする、種特異的な鶏コクシジウム原虫の高感度な測定方法を提供する。
【解決手段】開示される配列を有するフォワード側プライマー4種と、同じく開示される配列を有するリバース側プライマー4種を用い、被検試料中の測定すべき鶏コクシジウム原虫遺伝子を鋳型としてPCRを行うとともに、増幅断片の量をリアルタイムに測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイム検出PCR法による鶏コクシジウム原虫遺伝子の測定方法ならびにそれに用いられるプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
鶏コクシジウム原虫は胞子虫類のコクシジウム目、アイメリア属に属する原虫で鶏に感染し、鶏コクシジウム症を引き起こす。鶏コクシジウム症は世界各地で発生しており、激しい出血性下痢や水様性下痢を主症状とする疾病で、鶏の斃死、体重減少、衰弱、産卵低下などにより養鶏産業に甚大な被害をもたらしている。原因となる鶏コクシジウム原虫は、アイメリア属の8種、アイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、アイメリア・ブルネッティ(Eimeria brunetti)、アイメリア・ハガニ(Eimeria hagani)、アイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)、アイメリア・ミティス(Eimeria mitis)、アイメリア・ネカトリックス(Eimeria necatrix)、アイメリア・プレコックス(Eimeria praecox)およびアイメリア・テネラ(Eimeria tenella)である。その中でも、アイメリア・アセルブリナ、アイメリア・ブルネッティ、アイメリア・マキシマ、アイメリア・ネカトリックス、およびアイメリア・テネラの5種は特に病原性が強く、その対策が重要とされている原虫種である。
【0003】
鶏コクシジウム症の診断は、糞便検査により糞便からオーシストを検出することによる。一般に、オーシストを顕微鏡で観察し、その形態と大きさから原虫種の鑑別を行うが、鶏コクシジウム症では種により発症にいたるオーシスト数が大きく異なること、およびその形態と大きさが類似しているため正確な原虫種の特定には高度の熟練を要すること、という問題点が存在する。また、回収したオーシストをSPF鶏などに感染させ、糞便中にオーシストが排出されるまでの時間から原虫種を特定する方法もあるが、専用の施設と手間および時間を必要とする。
【0004】
鶏コクシジウム原虫の5S rRNA遺伝子(非特許文献1)、small subunit rRNA遺伝子(非特許文献2)、rRNA遺伝子のITS-1領域(非特許文献3、非特許文献4)およびrRNA遺伝子のITS-2領域(非特許文献5、非特許文献6)を対象としたPCR法による原虫種の鑑別方法が提案されている。しかしながら、鶏コクシジウム症の診断において、糞便中に含まれるオーシスト量が重要な判定要素となることから、当該原虫の検出のみならず、定量が必須となる。従来の方法では、鶏コクシジウム原虫を実験室内で定量することは不可能であった。
【0005】
近年の養鶏産業において、抗コクシジウム剤の使用の低減化に伴い、鶏コクシジウム症の発生の制御には、生ワクチンを利用する方法が中心となってきている。この生ワクチンには複数の原虫種が含まれることから、製品に含有される各原虫種のオーシスト数を定量することは、ワクチンの品質管理上、非常に重要な事項である。従来は、ワクチンを鶏に投与し、一定期間後に各原虫種により攻撃を行い、ワクチン投与鶏における感染防御効果を確認することによって、ワクチンに各オーシストが所定量含有したことを確認していた。けれどもこの方法は、専用の施設と手間および時間のかかる大変困難な作業であった。
【非特許文献1】Stucki et al., Experimental Parasitology, 76: 68-75, 1993
【非特許文献2】Tsuji et al., Journal of Parasitology, 83: 966-970, 1997
【非特許文献3】Schnitzler et al., Avian Pathology, 27: 490-497, 1998
【非特許文献4】Schnitzler et al., Avian Pathology, 28: 89-93, 1999
【非特許文献5】Woods et al., International Journal for Parasitology, 30: 1019-1023, 2000
【非特許文献6】Gasser et al., Electrophoresis, 22: 3546-3550, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、特別な手技を必要とせず簡便に実施することができ、かつ、糞便やワクチン等の検体に含まれる鶏コクシジウム原虫の定量を可能とする、種特異的な鶏コクシジウム原虫の高感度な測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
近年、2本鎖DNAにインターカレートする蛍光色素の存在下にPCRを行い、標的核酸の増幅に伴ってリアルタイムに増加する蛍光強度を測定することにより、検体中の標的核酸の測定を行う技術(本明細書において「リアルタイム検出PCR法」という)が開発されている。本発明者は、このリアルタイム検出PCR法を鶏コクシジウム原虫の測定に利用できないかと考え、鋭意研究を行った。その結果、本願発明のプライマーを用いることにより、煩雑な手技を必要とせず、迅速でかつ、非常に高感度に鶏コクシジウム原虫を定量することができるリアルタイム検出PCR法を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(12)に係るものである。
(1) 配列表の配列番号1で示される塩基配列を有するDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・テネラ遺伝子測定用のフォワード側PCRプライマー。
(2) 配列表の配列番号2で示される塩基配列を有するDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・テネラ遺伝子測定用のリバース側PCRプライマー。
(3) 配列表の配列番号3で示される塩基配列を有するDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・アセルブリナ遺伝子測定用のフォワード側PCRプライマー。
(4) 配列表の配列番号4で示される塩基配列を有するDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・アセルブリナ遺伝子測定用のリバース側PCRプライマー。
(5) 配列表の配列番号5で示される塩基配列を有するDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・ネカトリックス遺伝子測定用のフォワード側PCRプライマー。
(6) 配列表の配列番号6で示される塩基配列を有するDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・ネカトリックス遺伝子測定用のリバース側PCRプライマー。
(7) 配列表の配列番号7で示される塩基配列を有するDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・ブルネッティ遺伝子測定用のフォワード側PCRプライマー。
(8) 配列表の配列番号8で示される塩基配列を有するDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・ブルネッティ遺伝子測定用のリバース側PCRプライマー。
(9) (1)に記載のDNAをフォワード側プライマーとして用い、(2)に記載のDNAをリバース側プライマーに用いて、被検試料中の測定すべきアイメリア・テネラ遺伝子を鋳型としてPCRを行い、増幅産物をリアルタイムに測定することからなる、被検試料中のアイメリア・テネラ遺伝子の測定方法。
(10) (3)に記載のDNAをフォワード側プライマーとして用い、(4)に記載のDNAをリバース側プライマーに用いて、被検試料中の測定すべきアイメリア・アセルブリナ遺伝子を鋳型としてPCRを行い、増幅産物をリアルタイムに測定することからなる、被検試料中のアイメリア・アセルブリナ遺伝子の測定方法。
(11) (5)に記載のDNAをフォワード側プライマーとして用い、(6)に記載のDNAをリバース側プライマーに用いて、被検試料中の測定すべきアイメリア・ネカトリックス遺伝子を鋳型としてPCRを行い、増幅産物をリアルタイムに測定することからなる、被検試料中のアイメリア・ネカトリックス遺伝子の測定方法。
(12) (7)に記載のDNAをフォワード側プライマーとして用い、(8)に記載のDNAをリバース側プライマーに用いて、被検試料中の測定すべきアイメリア・ブルネッティ遺伝子を鋳型としてPCRを行い、増幅産物をリアルタイムに測定することからなる、被検試料中のアイメリア・ブルネッティ遺伝子の測定方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、特別な手技を必要とせず簡便に実施することができ、かつ、検体中の鶏コクシジウム原虫の検出のみならず定量も可能な、種特異的な鶏コクシジウム原虫の高感度な測定方法ならびにそれに用いられるDNAプライマーが提供された。本発明によれば、測定に要する時間はPCR開始から終了までが50分程度であり、極めて迅速に鶏コクシジウム遺伝子の測定を行うことができ、さらに多検体の測定を同時に実施することが可能である。測定の経過はコンピューターによりリアルタイムに可視化され、ゲルでの電気泳動などの手間を必要としない。本発明によれば、被検試料中の鶏コクシジウム原虫を種特異的に定量することができるため、鶏コクシジウム症の診断が可能になる。また、鶏コクシジウム症生ワクチンの製品中に含有される各原虫種のオーシスト数をそれぞれ定量することが可能であることから、従来の鶏を用いた力価試験法に比べて、製品の品質管理をより正確で簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法では、フォワード側プライマーとリバース側プライマーを用いて、測定すべき被検試料中の鶏コクシジウム原虫の遺伝子を鋳型としてPCRを行い、反応液からの蛍光をリアルタイムに測定する。リアルタイム検出PCR法自体は公知であり、測定に用いる装置および試薬キットも市販されており、それらを用いて実施することができる。しかしながら、用いるDNAプライマーの設定いかんによって、測定の感度および再現性が必ずしも満足にいくものにはならない。そこで、鋭意研究の結果、以下のようにリアルタイム検出PCR法に応用するのに最適なDNAプライマーを見出した。
【0011】
鶏コクシジウム原虫において、種特異的な塩基配列を有するDNA領域がいくつか特定されている。そのうちのひとつが、ITS-1領域と呼ばれるsmall subunit ribosomal RNA 遺伝子と5.8S ribosomal RNA遺伝子に挟まれた領域である。この領域は鶏コクシジウム原虫の種別に配列が明らかにされ、データベース上に公開されている。
【0012】
本発明では、これら領域のうち、特に種特異的な部分に着目し、その中からリアルタイム検出PCR法に応用可能なフォワード側およびリバース側のDNAプライマーペアーを設計・開発した。アイメリア・テネラにおいては、8502塩基(GenBank accession No. AF026388)のうちフォワード側プライマーは第2612番目のヌクレオチド(以下、「2612nt」のように記載する)から2631ntに(配列番号1)、リバース側プライマーは2739ntから2868ntに対応するよう(配列番号2)、アイメリア・アセルブリナにおいては、586塩基(GenBank accession No. AF026384)のうちフォワード側プライマーは295ntから314ntに(配列番号3)、リバース側プライマーは441ntから460ntに対応するよう(配列番号4)、アイメリア・ネカトリックスにおいては、778塩基(GenBank accession No. AF026385)のうちフォワード側プライマーは212ntから229ntに(配列番号5)、リバース側プライマーは342ntから359ntに対応するよう(配列番号6)、およびアイメリア・ブルネッティにおいては、629塩基(GenBank accession No. AF026383)のうちフォワード側プライマーは50ntから67ntに(配列番号7)、リバース側プライマーは178ntから197ntに対応するよう(配列番号8)に設計した時、最も良好なリアルタイム検出PCR法による測定成績が得られることが判明した。
【0013】
試料は、鶏コクシジウム原虫を含むか、含む可能性のあるものであれば、特に限定されるものではない。例として、鶏コクシジウム症に罹患した疑いのある鶏の糞便、腸管組織、培養細胞、および鶏コクシジウム原虫を含有する生ワクチン製剤などの材料を挙げることができる。これらの試料から、DNA調製のために通常用いられる方法により、鶏コクシジウム原虫のDNAを得ることができる。
【0014】
次に、本発明の測定原理をインターカレーター法を例に挙げて説明する。ただし、リアルタイム検出PCR法にはTaqManプローブ法やモレキュラービーコン法等があり、本発明は以下に説明するインターカレーター法に限定されるものではない。鶏コクシジウム原虫のDNA中、種特異的な配列を有する領域部分を増幅するため、本願で発明したプライマーを用い、被検試料由来の全DNAを鋳型としてPCRを行う。被検試料中に鶏コクシジウムのDNAが含まれていれば、上記プライマー間に対応する領域が増幅され、2本鎖DNAが多量に形成される。PCR増幅されたDNA分子は相補的な塩基対をもつ2重らせん構造をとるため、平面構造を有する分子がらせん構造の間に挿入されやすい。これをインターカレート現象といい、反応液中にインターカレートする特殊な性状をもった蛍光試薬を含有すると、この蛍光試薬は2本鎖DNAに結合し、上記PCR反応が進行するにつれて、その蛍光強度が増大する。そこで、この反応液中の蛍光強度を、PCR反応の間、専用の測定機を用いてリアルタイムに測定すると、あるサイクル数を過ぎると、急激に蛍光強度の増加が認められる。この時、被検試料中に含まれる鶏コクシジウム原虫遺伝子の量が多いほど、少ないサイクル数で急激な蛍光強度の増加が観察される。このことから、急激な蛍光強度の増加が始まるサイクル数(以下Ct値と略)を調べることにより、被検試料中の鶏コクシジウム原虫の定量測定が可能となる。すなわち、被検試料中に含まれる鶏コクシジウム原虫の遺伝子量の常用対数を横軸に、上記Ct値を縦軸にとると、両数値は一次直線上にプロットされるため、その検量線を基にしてCt値から鶏コクシジウム原虫の量を算出することができる。
【0015】
リアルタイム検出PCR法においては、まれに非特異的なDNAの増幅による蛍光強度の増加が発生する場合がある。ほとんどの場合、目的とする増幅産物と非特異的産物の融解温度(以下Tm値と略)が異なるため、融解曲線を描かせることによって両者を区別し、非特異産物の生成による誤測定を回避することが可能である。すなわち、PCR終了後、増幅産物はすべて2本鎖になっており、高い蛍光強度を示すが、試料の温度を徐々に上昇させていくと、2本鎖DNAは解離していき、インターカレートしていた蛍光試薬は放出され、蛍光強度は徐々に低下する。やがて増幅産物の温度がTm値に達した時、2本鎖DNAは完全に解離して、1本鎖DNAになるため、その時点で蛍光強度は極端に低下する。Tm値は塩基中のGC含量や鎖長などの要素によって決まるため、各増幅産物は固有のTm値を示し、PCR反応後各産物のTm値を調べる事により増幅した産物が特異的なものであるか決定することができる。
【0016】
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づき、より具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
(1) プライマーの合成
配列番号1から8に記載したプライマーは、Expedite(商品名、ニホンミリポア株式会社製)を用いて、化学合成して作製した。
(2) 被検試料の調製
各鶏コクシジウム原虫種のオーシストを1×104〜1×107個/mL の濃度に含む浮遊液500μL に、直径0.5mm のガラスビーズ250mgを添加し、これを2mL容量の丸底バイアルチューブ中で2分間振盪・混和することにより、オーシスト壁を破壊した。このオーシスト破壊液300μL を、15,000 rpm で10分間遠心し、沈渣を回収した。沈渣からのDNA抽出には、High Pure PCR Template Preparation Kit (Roche Diagnostics社製) を用い、付属の説明書に従って操作を実施した。回収されたDNA抽出液は、滅菌蒸留水で10倍に希釈し、被検試料とした。
(3) リアルタイム検出PCR反応
LightCycler - FastStart DNA マスター SYBR Green I(Roche Diagnostics社製)の調製は、付属の説明書に従い、酵素液10μLをSYBR Green Iを含む反応溶液に加え、ピペッティングにより緩やかに混和して調製した。
【0018】
PCR反応液の組成は表1に示した。
【0019】
【表1】

【0020】
PCR反応とリアルタイム蛍光検出は、ライトサイクラークイックシステム350S (Roche Diagnostics社製)を用いて実施した。反応条件は、初期変性工程は95℃・10分間、増幅工程は、変性95℃・10秒、アニーリング62℃・10秒、伸長72℃・10秒に設定し、これを40サイクル行った。測定条件は、増幅工程においては蛍光強度をリアルタイム自動測定とし、Ct値を決定した。融解曲線分析では、変性95℃・0秒、アニーリング60℃・15秒、目標温度95℃とし、最後に反応液を40℃・30秒間冷却して測定を終了した。
【0021】
(4) 測定結果
アイメリア・テネラの測定結果を図1に、アイメリア・アセルブリナの測定結果を図2に、アイメリア・ネカトリックスの測定結果を図3に、およびアイメリア・ブルネッティの測定結果を図4にそれぞれ示した。各図の横軸はオーシスト数(常用対数スケール)を、縦軸はCt値とし、それぞれの測定成績をプロットしたところ、全ての測定値が、各原虫種に固有の一次直線上に配置された。Ct値とオーシスト数の相関係数は-0.99および-1.00を示し、ほぼ完全な反比例関係にあった。このことから、それぞれの検量線を用いることにより、得られたCt値から、各原虫種のオーシスト数をほぼ正確に算出できることが判明した。
【0022】
各原虫種由来増幅産物の温度に伴う融解曲線について、図5にはアイメリア・テネラの、図6にはアイメリア・アセルブリナの、図7にはアイメリア・ネカトリックスの、および図8にはアイメリア・ブルネッティのものを、それぞれ示した。横軸は温度を、縦軸は試料の蛍光値を一次微分した負の値とし、各温度における測定値を連続的にプロットした。その結果、各原虫由来の増幅産物の融解曲線はすべて単一のピークを示し、産物毎に固有で単一のTm値を示すことが判明した。このことは、本リアルタイム検出PCR法において、各原虫種において特異的な増幅産物が得られていることを示している。この測定で得られた各原虫種由来の増幅産物の大きさとTm値は、それぞれ、アイメリア・テネラで147bp、89.8℃、アイメリア・アセルブリナで166bp、90.1℃、アイメリア・ネカトリックスで148bp、81.3℃、およびアイメリア・ブルネッティで148bp、83.3℃であった。以上の成績から、本発明において開発した各原虫種特異的DNAプライマーを用いることにより、各コクシジウム原虫のオーシストの量を、迅速かつ正確に測定できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0023】
鶏コクシジウム症の診断には、鶏コクシジウム原虫の検出のみならず定量が必要となる。本発明によれば、迅速かつ簡便に糞便等の被検材料中の鶏コクシジウム原虫を、種特異的に定量することが可能となる。従って、鶏コクシジウム症の新しい診断法を提供することにおいて、本発明は非常に有用である。
【0024】
また、鶏コクシジウム生ワクチンの製品の品質管理において、製品を鶏に接種することなく、実験室内において迅速かつ正確に製品中に含まれる各原虫種のオーシストを定量することが可能となるため、本発明は非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】リアルタイム検出PCR法により測定されたアイメリア・テネラのオーシスト数とCt値の関係を示した図である。
【図2】リアルタイム検出PCR法により測定されたアイメリア・アセルブリナのオーシスト数とCt値の関係を示した図である。
【図3】リアルタイム検出PCR法により測定されたアイメリア・ネカトリックスのオーシスト数とCt値の関係を示した図である。
【図4】リアルタイム検出PCR法により測定されたアイメリア・ブルネッティのオーシスト数とCt値の関係を示した図である。
【図5】リアルタイム検出PCR法により測定されたアイメリア・テネラの増幅産物の融解曲線を示した図である。
【図6】リアルタイム検出PCR法により測定されたアイメリア・アセルブリナの増幅産物の融解曲線を示した図である。
【図7】リアルタイム検出PCR法により測定されたアイメリア・ネカトリックスの増幅産物の融解曲線を示した図である。
【図8】リアルタイム検出PCR法により測定されたアイメリア・ブルネッティの増幅産物の融解曲線を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号1に示されるDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・テネラ遺伝子測定用のフォワード側PCRプライマー。
【請求項2】
配列表の配列番号2に示されるDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・テネラ遺伝子測定用のリバース側PCRプライマー。
【請求項3】
配列表の配列番号3に示されるDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・アセルブリナ遺伝子測定用のフォワード側PCRプライマー。
【請求項4】
配列表の配列番号4に示されるDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・アセルブリナ遺伝子測定用のリバース側PCRプライマー。
【請求項5】
配列表の配列番号5に示されるDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・ネカトリックス遺伝子測定用のフォワード側PCRプライマー。
【請求項6】
配列表の配列番号6に示されるDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・ネカトリックス遺伝子測定用のリバース側PCRプライマー。
【請求項7】
配列表の配列番号7に示されるDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・ブルネッティ遺伝子測定用のフォワード側PCRプライマー。
【請求項8】
配列表の配列番号8に示されるDNA、又はこれと相補的配列を有するDNAからなることを特徴とするアイメリア・ブルネッティ遺伝子測定用のリバース側PCRプライマー。
【請求項9】
請求項1に記載のDNAをフォワード側プライマーとして用い、請求項2に記載のDNAをリバース側プライマーに用いて、被検試料中の測定すべきアイメリア・テネラ遺伝子を鋳型としてPCRを行い、増幅産物をリアルタイムに測定することからなる、被検試料中のアイメリア・テネラ遺伝子の測定方法。
【請求項10】
請求項3に記載のDNAをフォワード側プライマーとして用い、請求項4に記載のDNAをリバース側プライマーに用いて、被検試料中の測定すべきアイメリア・アセルブリナ遺伝子を鋳型としてPCRを行い、増幅産物をリアルタイムに測定することからなる、被検試料中のアイメリア・アセルブリナ遺伝子の測定方法。
【請求項11】
請求項5に記載のDNAをフォワード側プライマーとして用い請求項6に記載のDNAをリバース側プライマーに用いて、被検試料中の測定すべきアイメリア・ネカトリックス遺伝子を鋳型としてPCRを行い、増幅産物をリアルタイムに測定することからなる、被検試料中のアイメリア・ネカトリックス遺伝子の測定方法。
【請求項12】
請求項7に記載のDNAをフォワード側プライマーとして用い、請求項8に記載のDNAをリバース側プライマーに用いて、被検試料中の測定すべきアイメリア・ブルネッティ遺伝子を鋳型としてPCRを行い、増幅産物をリアルタイムに測定することからなる、被検試料中のアイメリア・ブルネッティ遺伝子の測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−20543(P2007−20543A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212037(P2005−212037)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000173865)財団法人日本生物科学研究所 (6)
【Fターム(参考)】