説明

リグニン分解酵素の生産のための木材腐朽担子菌

本発明は、高度に効果的な発酵技術を使用する、特定の白色木材腐朽担子菌からのリグニン分解酵素、ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼの生産に関する。本発明の目的は、前述の酵素を生産するための、特定の菌株、発酵方法、および単離精製技術の使用を含む新規の経済的かつ時間効果的な手順全体を作り出すことである。特に、小麦粒、マンダリン果皮、およびヌカからのエタノール生産の廃棄物のような有機廃棄物からの種々のリグノセルロース性基質での特定の菌株の液内発酵が開発される。培養条件は、ラッカーゼまたはマンガンペルオキシダーゼのいずれかの生産に有利になるようにラッカーゼ/マンガンペルオキシダーゼ比率を変更するために選択されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色腐朽菌からのリグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、およびラッカーゼのようなリグニン分解酵素の生産に関する。
【背景技術】
【0002】
白色腐朽菌は、扱いにくい木材ポリマーであるリグニンを分解する特有の能力によって特徴付けられる。白色腐朽菌のリグニンを分解する能力に関連する主要な酵素は、白色腐朽菌が同じ酵素の組を有するわけではないが、リグニンペルオキシダーゼ(LiP)、マンガンペルオキシダーゼ(MnP)、およびラッカーゼ(Lac)である。最近、これらの菌についての広範な研究が、リグニン分解酵素ならびに以下の工業的適用について重要な性質を有する酵素の分泌を増大した新しい生物を単離する目的で行われた:有害な生体異物によって汚染された産業廃棄物の流れの生物的環境浄化;バイオブリーチングおよびバイオパルピング;織物産業および染色産業;医薬品および他の中間生成物の生体内変換;食品産業;バイオセンサー構築物;化粧品;医学および分析的生化学。これらの生物工学的適用の全ては、低いコストで多量の酵素を必要とする。しかしながら、現在製造される酵素は、生産および単離における低い収率および高いコストのためになお高価である。さらに、多くの組み換え生物が種々の工業用酵素を効率よく過剰に生産するにもかかわらず、異種由来のシステムにおけるラッカーゼおよびペルオキシダーゼの信頼性のある発現は未だ達成されておらず、それらは今でも天然供給源から得られなければならない。したがって、主要な課題は、リグニン分解酵素を生産する生物のスペクトルを拡大すること、および特に特定の酵素誘導物質を添加することによって培養条件を最適化することによりリグニン分解酵素の生産を増大することである。
【0003】
この数年の間に、リグニン分解酵素の生産のために白色腐朽菌を使うことが頻繁に試みられた。ファネロキーデ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、トラメテス(Trametes)種およびプルーロタス(Pleurotus)種、フレビア・ラジアータ(Phlebia radiata)は、最も広範に研究された担子菌であった。白色腐朽菌におけるリグニン分解機構が栄養分によって高度に制御されることは今や知られている。特に、炭素および窒素供給源、ならびにいくつかの芳香族化合物および微量元素は、強い制御効果を有することが示された。一般に認められたデータに基づいて、以下のいくつかのアプローチが、酵素生産を促進するために用いられた;窒素または炭素を制限する条件下での菌の培養、栄養培地への誘導物質(例えば、キシリジン、フェルラ酸、およびベラトリルアルコール)の添加、エタノール、マンガン塩、ポリプロピレングリコール、リン脂質、および不飽和脂肪酸の添加。例えば、JAGERら(APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,1985,pp.1274−1278)は、静置培養において現在得られるリグニンペルオキシダーゼに匹敵する割合でリグニンペルオキシダーゼの生産を増大するために、液内培養物にTWEEN 80またはTWEEN 20のような洗浄剤を添加することを提案した。LEISOLAら(J.BIOTECHNOL.,1985,pp.97−107)は、ベラトリルアルコールの添加がリグニンペルオキシダーゼの合成を増大することを報告した。培養の異なる段階でのリン脂質、乳化脂肪酸、およびベラトリルアルコールの添加を含み、かつ構成物の含有量を変えることによる、ファネロキーデ・クリソスポリウムからリグニンペルオキシダーゼを生産するための方法の提案がASTHERら(米国特許第5153121号)によってなされた。46.4nkat/mlのリグニンペルオキシダーゼ生産は、250mlエルレンマイヤーフラスコ中に導入された100mlの培地において得られた。ポリウレタンフォーム上に固定された細胞は、25nkat/ml/日の酵素を生産した。
【0004】
IRVINEら(米国特許第5342765号)は、ファネロキーデ・クリソスポリウムを酸素透過性表面上に固定し、酸素透過性表面を通して生物に酸素を供給することによって、菌による細胞外酵素の生産が230ユニット/L(U/L)のレベルまで発達し、8回分の生産期間にわたって平均して121U/Lとなる方法を提案した。リグニンペルオキシダーゼ生産を増強するために、ベラトリルアルコール(1mM)は生産培地と共に使用された。
【0005】
バイオリアクター中に固定され、かつリン脂質およびベラトリルアルコールを含む非常に複雑な培養培地を供給されたファネロキーデ・クリソスポリウムについて提案がなされた(米国特許第5972672号)。さらに、純粋な酸素気泡の流れは20L/時間の流速で供給された。これらの条件下で、最大のMnPおよびLiP活性は、それぞれ10000U/Lおよび2400U/Lであった。
【0006】
Call(米国特許第5403723号)は、セレナ・ユニカラー(Cerrena unicolor)をラッカーゼ生産体として使用した。非常に複雑かつ高価な培地が菌培養のために開発された。主要な培地成分の他に、培地は酵母の細胞、またはベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、アミノベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジアリールまたはトリアリール、ジアルキルアルカン、トリアルキルアルカン、開鎖イミンまたは環状イミン、あるいは前述の物質の誘導体を、誘導化合物として含有した。毎日、フラスコは30秒間(100l/時間)Oでガス処理された。培養期間は4〜5日であった。酵素の収率は約1500〜2000IU/lであった。
【0007】
しかしながら、これらのおよび他の提案におけるリグニン分解酵素生産の収率またはレベルは、大規模な商業的生産収益をあげるにはなお不十分である。それらは非常に高価な装置および培地成分を使用し:使用された誘導物質のうちのいくつかは毒性である。したがって、リグニン分解酵素生産の商業的に実現性のある低コストの技術を開発するために、単純で、毒性の培地を使用しない、速くて安価な製造方法を使用する、最も高い酵素活性を確実にする手順に対して、そして過剰発現酵素活性を有する菌に対して必要性がある。本発明の方法は、特に、リグノセルロース性農工業廃棄物の発酵を使用して高い収率の標的酵素を生産するように処方された栄養培地上の液内培養物中の白色腐朽菌からのリグニン分解酵素の生産を含む。
【発明の開示】
【0008】
白色腐朽担子菌によって生産される細胞外ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼの収率を増大し、コストを減少することが、本発明者の目的であった。この目的のために、本発明者らはラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼを過剰に分泌する新しい菌株(セレナ・ユニカラーおよびトラメテス・ベルシカラー)の検出に成功した。本発明者らは、担子菌から細胞外酵素を生産するための、特に前述の白色腐朽菌からラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼを生産するための優れた培地を発見した。このために、小麦粒、マンダリン果皮、ヌカ、およびその他のものからのエタノール生産の廃棄物のようなリグノセルロース性基質を使用する液内発酵技術が開発された。特に、本発明者らは特定の培養条件を案出し、この条件は、酵素収率が著しく増大されるように発酵器において実行されることができる。本発明者らは、第1に、最初の2〜3日の間菌の最良の増殖を維持する適切な培養条件(攪拌、曝気、培地のpH)を作り出し、一方発酵の第2段階で設定される培養条件が標的酵素の優勢な合成のためのものであることが好ましいことを見出した。これは先行技術の培養物で得られる収率と比較して、ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼの収率をかなり増大することを可能にする。本発明の実行は、さらに、必要に応じてラッカーゼ/マンガンペルオキシダーゼ比率を制御および変更することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の全般的な目的は、2つの部分を有する。本発明の第1の側面は、白色腐朽菌、特にグルジア(旧ソビエト社会主義共和国連邦)において単離され、Culture Collection of the Netherlands(Centraalbureau voor Schimmelcultures,International Depository Authority,仮参照番号:トラメテス・ベルシカラーCBS 117346およびセレナ・ユニカラーCBS 117347)において寄託されたトラメテス・ベルシカラーおよびセレナ・ユニカラーである。
【0010】
本発明の第2の側面は、前述の白色腐朽菌の培養物からラッカーゼおよび/またはマンガンペルオキシダーゼを生産するための方法であり、この方法は上述の菌株からなる群から選択される少なくとも1つの菌株を培養することを含むことによって特徴付けられる。
【0011】
上記培養物の生産の基本は、前培養から得られた均質化された菌糸体断片からなる接種原からの担子菌培養物を増殖する慣行の標準的な技術に依り、その技術自体は公知である。本方法は、リグノセルロース分解酵素系を有し、栄養のためにリグノセルロースを分解する能力を有する、細菌、真菌、および酵母を含むいかなる好気性微生物にも適用可能である。
【0012】
本発明の方法において使用されることができる菌の例は、トラメテス・ベルシカラー、ファネロキーデ・クリソスポリウム、フレビア・ラジアータ、フナリア・トロギー(Funalia trogii)、セレナ・ユニカラーのような白色腐朽菌を含み、それはラッカーゼおよび/またはマンガンペルオキシダーゼおよび/またはリグニンペルオキシダーゼを生産する。本発明の方法は、例えば、種々の酵素、抗生物質、アルコール、医薬品、ホルモン、およびタンパク質を含む種々の細胞外生産物を生産するために使用されることができる。
【0013】
リグニン分解酵素を生産するために、白色腐朽菌の培養物は、良好な菌糸体増殖およびバイオマス蓄積のために使用されるような水性培地中で処理される。培養培地は、少なくとも1つのリグノセルロース性基質および少なくとも1つの窒素供給源、無機塩を含み、それは酵母抽出物を補充される。
【0014】
白色腐朽菌の全ての種は、リグノセルロース材料を使用することができるので、五炭糖、六炭糖、および多糖を含む広範囲の炭水化物はそれらの増殖のための良好な炭素供給源およびエネルギー供給源である。リグノセルロース性基質の濃度は、好ましくは30g/L〜80g/Lである。好ましく使用されるリグノセルロース性基質は、エタノール生産の廃棄物、マンダリン果皮およびヌカを含むが、他のリグノセルロース性基質もまた、単独でまたは混合されて使用されることができる。
【0015】
窒素供給源は例えば、酵母抽出物と組み合わせて、硝酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、またはペプトンからなる。窒素供給源の濃度は好ましくは、0.5g/L〜5g/Lである。
【0016】
無機塩の中で、培養培地に含めることができるものはカリウムおよびマグネシウムのカチオンを含有する種々の塩である。有用なカチオンは、リン酸塩、硫酸塩、および塩化物の形態で得られることができる。同化できる無機塩は、0.2g/L〜1g/Lの濃度で使用される。
【0017】
特別な活性化および/または保護成分、微量元素、またはビタミンは、本方法において使用されない。
【0018】
本発明による方法を実行するために、培養はフラスコまたは発酵器のいずれかにおいてそれ自体公知の方法で行われてもよい。液内発酵は、制御された条件下で種子発生の1つまたはそれより多い段階を含む。接種原調製の第1段階のための液体栄養培地は、炭素および窒素供給源のいかなる好適な組合せでもよく、好ましくは、グルコース、ペプトン、および酵母抽出物である。100mlの栄養培地を含有するフラスコは、表面の寒天培養物(試験管またはペトリ皿)から接種され、それらは27℃および140rpmで振盪器上で培養される。5〜6日後、菌の菌糸体はWaring実験用ブレンダー中で均質化され、菌糸体のホモジェネートは1:5〜1:20の比で無菌培地に移された。この場合、菌糸体は直径0.5〜5mmになりうるボール(ペレット)の形態で増殖される。
【0019】
使用される発酵器は、攪拌モジュール(例えば、Rushtonブレード回転子)を有するベンチ攪拌槽型反応器(直径/高さ比率(d/h)=約1/2〜1/3)である。
【0020】
本発明によるリグニン分解酵素を生産する方法を実施する1つの有利な方式において、発酵の第1の工程は約2〜3日の期間(菌を良好に増殖させるため)pH制御なしに培養培地において行われ、次の工程はpH5.5に制御された培養培地で行われる。
【0021】
培養は、好ましくは培地の曝気および攪拌によって行われる。
【0022】
培地の曝気は、空気、純粋な酸素、または菌への酸素の十分な供給を確実にするための任意の他の気体の混合物を、この気体の均質な分散を可能にする装置によって導入することによって行われる。
【0023】
培地の攪拌は、機械的に行われてもよい。培地の攪拌はまた、曝気システムの直接作用を使用することによってまたは同時に使用されるそれと等価なシステムによって、空気圧で行うことができる。
【0024】
攪拌および/または曝気のレベルは、菌バイオマスが受ける剪断ストレスを制限しながら平均直径0.5mm〜5mmの菌糸体ペレットの形成を可能にする方法で見出される。このレベルは培養期間の間に変えられてもよい。
【0025】
培養は、好ましくは約27℃の温度で行われるべきである。
【0026】
ラッカーゼ/マンガンペルオキシダーゼ混合物の生産ならびにLac/MnP比率は、使用される菌株および基質によって制御されることができる。したがって、ラッカーゼまたはマンガンペルオキシダーゼのいずれかの望ましい優勢で酵素カクテルを得ることが可能である。
【0027】
ラッカーゼの生産に有利になるようにLac/MnP比率を変更するために、セレナ・ユニカラーの培養は、例えば30g/L〜60g/Lの濃度、好ましくは50g/L程度のエタノール生産の廃棄物の存在下で行われる。
【0028】
マンガンペルオキシダーゼの生産に有利になるようにLac/MnP比率を変更するために、セレナ・ユニカラーの培養は、例えば30g/L〜80g/Lの濃度、好ましくは60g/L程度のマンダリン果皮の存在下で行われる。
【0029】
本発明による方法は、従来公知の全ての方法と比べて、ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼの活性および生産性をかなり増大させる。実際、セレナ・ユニカラーの複雑な培養培地が誘導物質(ベラトルム酸、フェルラ酸、またはキシリジン)を補充された場合において菌培養の14日後に500〜600U.l.−1程度のラッカーゼ活性が得られ、一方培養培地が誘導物質を補充されたとき、マンガンペルオキシダーゼ活性は30〜300U.l.−1程度であり(ROGALSKI J.,DAWIDOWICZ A.,JOZWIK E.,LEONOWICZ A.IMMOBILIZATION OF LACCASE FROM CERRENA UNICOLOR ON CONTROLLED POROSITY GLASS.J.MOL.CATALYSIS B:ENZYMATIC.1999,6,29−39;GIL P.K.,ARORA D.S.EFFECT OF CULTURE CONDITIONS ON MANGANESE PEROXIDASE PRODUCTION AND ACTIVITY BY SOME WHITE ROT FUNGI.J.IND.MICROBIOL.BIOTECHNOL.2003,30,28−33)、ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼ活性はそれぞれ、培養培地が選択されたリグノセルロース性基質、マンダリン果皮、またはエタノール生産の廃棄物を補充される本発明の方法を使用するときに例えばセレナ・ユニカラー培養の5〜6日後に、400000U.l.−1および7000U.l.−1に到達する。
【0030】
用途に応じて、ラッカーゼおよび/またはマンガンペルオキシダーゼの酵素カクテルを生成する培養液は、直接的に使用されるか、または例えば限外濾過によって行われる濃縮後に使用されることができる。精製の目的のために、イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーが実行される。宿主細胞から分泌されるラッカーゼ変異体は、遠心分離または濾過によって培地から細胞を分離すること、および硫酸アンモニウムのような塩による培地のタンパク質成分を沈殿させた後のイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのようなクロマトグラフィー手順の使用を含む、周知の手順またはそれらの変形によって培養培地から都合良く回収されることができる。
【0031】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する。しかしながら、これらの実施例は本発明の対象の例証のためのみに与えられ、それらは限定を構成するのではないということが明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0032】
実施例1
セレナ・ユニカラーが生産菌株として使用される。まず、麦芽抽出物寒天が接種され、次いで約10〜12日間27℃で培養される。1〜2cmの量の増殖された菌糸体が寒天の表面から除去され、500mlのエルレンマイヤーフラスコ中の100mlの栄養培地に接種される(培養時間は27℃で約5日)。このようにして得られた前培養物は、次いで30秒間にわたって2回、Waring実験用ブレンダー中で均質化される。培地1リットルあたり50mlの前培養菌糸体のホモジェネートが、振とうフラスコ中に添加される。すなわちエタノール生産の廃棄物を含有する0.5Lの培地で満たされる2lの振盪フラスコに25mlが添加される。培養温度は27℃であり;振盪頻度は140rpmである。培養期間は7〜10日である。ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼの収率は、それぞれ約50000〜150000IU/Lおよび500〜800IU/Lである。
【0033】
培地組成は以下の通りである:
a)前培養培地(g/L):
グルコース−10.0
ペプトン−0.2
酵母抽出物−0.3
KHPO−0.8
NaHPO−0.2
(MgSOO−0.5
b)主要培地(g/L)
小麦粒からのエタノール生産の廃棄物−50.0
ペプトン−0.3
酵母抽出物−0.5
KHPO−0.8
NaHPO−0.2
MgSO−0.5
【0034】
実施例2
(実施例1の条件は繰り返され;0.5Lの主要な栄養培地は60g/Lの粉砕されたマンダリン果皮を含有する)
セレナ・ユニカラーが菌株として使用される。まず、麦芽抽出物寒天が接種され、次いで約10〜12日間27℃で培養される。1〜2cmの増殖された菌糸体が寒天の表面から除去され、500mlのエルレンマイヤーフラスコ中の100mlの栄養培地に接種される(培養時間は27℃で約5日)。このようにして得られた前培養物は、次いで30秒間にわたって2回、Waring実験用ブレンダー中で均質化される。培地1リットルあたり50mlの前培養菌糸体のホモジェネートが、振盪フラスコ中に添加される。すなわち粉砕されたマンダリン果皮を含有する0.5Lの培地で満たされる2Lの振盪フラスコに25mlが添加される。培養温度は27℃であり;振盪頻度は140rpmである。培養期間は6〜9日である。ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼの収率は、それぞれ約15000〜25000IU/Lおよび4000〜7000IU/Lである。
【0035】
培地は以下の通り構成される:
a)前培養培地(g/l):
グルコース−10.0
ペプトン−0.2
酵母抽出物−0.3
KHPO−0.8
NaHPO−0.2
(MgSOO−0.5
b)主要培地(g/l)
粉砕されたマンダリン果皮−60.0
ペプトン−0.3
酵母抽出物−0.5
KHPO−0.8
NaHPO−0.2
MgSO−0.5
【0036】
実施例3
トラメテス・ベルシカラーが菌株として使用される。まず、麦芽抽出物寒天が接種され、次いで約10〜12日間27℃で培養される。1〜2cmの増殖された菌糸体が寒天の表面から除去され、500mlのエルレンマイヤーフラスコ中の100mlの栄養培地に接種される(培養時間は27℃で約5日)。このようにして得られた前培養物は、次いで30秒間にわたって2回、Waring実験用ブレンダー中で均質化される。培地1リットルあたり50mlの前培養菌糸体のホモジェネートが、振盪フラスコ中に添加される。すなわち粉砕されたマンダリン果皮を含有する0.5Lの培地で満たされた2Lの振盪フラスコに25mlが添加される。培養温度は27℃であり;振盪頻度は140rpmである。培養期間は4〜5日である。ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼの収率は、それぞれ約15000〜20000IU/Lおよび200〜400IU/Lである。
【0037】
培地は以下の通り構成される:
a)前培養培地(g/l):
グルコース−10.0
ペプトン−0.2
酵母抽出物−0.3
KHPO−0.8
NaHPO−0.2
(MgSOO−0.5
b)主要培地(g/l)
粉砕されたマンダリン果皮−60.0
ペプトン−0.3
酵母抽出物−0.5
KHPO−0.8
NaHPO−0.2
MgSO−0.5
【0038】
実施例4
セレナ・ユニカラーが菌株として使用される。まず、麦芽抽出物寒天が接種され、次いで約10〜12日間27℃で培養される。1〜2cmの増殖された菌糸体が寒天の表面から除去され、500mlのエルレンマイヤーフラスコ中の100mlの栄養培地に接種される(培養時間は27℃で約5日)。このようにして得られた前培養物は、次いで30秒間にわたって2回、Waring実験用ブレンダー中で均質化される。培地1リットルあたり50mlの前培養菌糸体のホモジェネートが、振盪フラスコ中に添加される。すなわち0.5lの前培養培地で満たされた2Lの振盪フラスコに25mlが添加される。培養温度は27℃であり;振盪頻度は140rpmである。培養期間は5日であり、次いでバイオマスは30秒間にわたって2回、Waring実験用ブレンダー中で均質化される。培地1リットルあたり50mlの第2前培養菌糸体ホモジェネートが、振盪フラスコ中に添加される。すなわち小麦粒からのエタノール生産後のリグノセルロース性廃棄物を含有する8Lの培地で満たされた12Lのベンチ攪拌槽型Bioflo 2000発酵器(New Brunswick Scientific Co.,NJ)に400mlが添加される。
【0039】
培養の初期段階のパラメータは以下の通りである:攪拌−150〜300rpm;DO−10%;pH−自由変更型;曝気−0.5v/v/分;温度−27℃。使用される泡消し剤はポリプロピレングリコール2000である。4%KOHおよび4%HClは、発酵の間pHを制御するために使用される。48〜72時間後、空気流の速度は0.5L/分に増大され、培地のpHは5.5に制御される。96時間後、攪拌は200rpmに減少され、培養は6日間まで継続される。ラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼの収率は、それぞれ約200000〜400000IU/Lおよび200〜600IU/Lである。
【0040】
培地組成:
a)前培養培地(g/l):
グルコース−10.0
ペプトン−0.2
酵母抽出物−0.3
KHPO−0.8
NaHPO−0.2
(MgSOO−0.5
b)主要培地(g/l)
小麦粒からのエタノール生産後のリグノセルロース性廃棄物−50.0
ペプトン−0.3
酵母抽出物−0.5
KHPO−0.8
NaHPO−0.2
MgSO−0.5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン分解酵素を生産するための特定の木材腐朽担子菌株であって、特定のリグノセルロース性基質を含有する液内培養において増殖された菌株。
【請求項2】
リグニン分解酵素を製造するための方法であって、
(1)増殖刺激栄養分を含有する水性培地および細胞外でラッカーゼおよびペルオキシダーゼを生産する白色腐朽菌で満たされた液内発酵システムを準備すること;
(2)2組の発酵パラメータを維持すること:パラメータの第1の組は少なくとも2〜3日間菌の最適増殖を確実にするためのものであり、一方パラメータの第2の組は最良の酵素合成を最適化するためのものである;および
(3)前記水性培地から前記リグニン分解酵素を単離すること
を含む方法。
【請求項3】
前記木材腐朽菌はセレナ・ユニカラー(Cerrena unicolor)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記木材腐朽菌はトラメテス・ベルシカラー(Trametes versicolor)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
培養培地が有機残留物(より具体的には、30g/L〜80g/Lの濃度での誘導性化合物の供給源および増殖基質としての小麦粒からのエタノール生産の副産物)を補充されるとき、セレナ・ユニカラーはラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼを生産する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
30g/L〜80g/Lの濃度での誘導性化合物の供給源および増殖基質としての果実加工廃棄物、好ましくはカンキツ類残留物の添加により、トラメテス・ベルシカラーはラッカーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、およびリグニンペルオキシダーゼを生産する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
発酵の第1の工程が約2〜3日の期間培養培地においてpH制御なしに行われ、次の工程が一定のpH5.5で行われるときに、セレナ・ユニカラーはラッカーゼおよびマンガンペルオキシダーゼを生産する、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2008−538914(P2008−538914A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508413(P2008−508413)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000502
【国際公開番号】WO2006/114787
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507354699)マイコエンザイム リミテッド (1)
【Fターム(参考)】