説明

リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌及びその利用

【課題】 本発明の目的は、リグノセルロースに対して優れた分解作用を有し、リグノセルロースを酵素糖化・発酵処理の多糖原料として有効利用できるように変換可能な菌株を提供することである。
【解決手段】 リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株は、優れたリグノセルロースの分解作用を有しており、リグノセルロースの酵素糖化・発酵処理の前処理に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロースに対して優れた分解作用を有し、リグノセルロースを酵素糖化・発酵処理の多糖原料として有効利用できるように変換可能な白色腐朽菌に関する。更に、本発明は、当該白色腐朽菌を使用したリグノセルロースの分解方法、リグノセルロースの糖化方法、リグノセルロースから発酵産物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の急激な人口増加と化石資源の消費に伴うCO2濃度の増加に対処するため、再生産可能な資源であるバイオマスから多糖の糖化・発酵により有用なエネルギー・化学原料を生産することが求められている。しかしながら、木材細胞壁多糖はリグニンに被覆されリグノセルロースとして存在しているため、木材細胞壁多糖を酵素糖化・発酵するには、リグノセルロースを分解してリグニンにより被覆された多糖を露出させる前処理が必要である。リグノセルロースを分解して木材細胞壁多糖を酵素と接触できるように露出させる前処理としては、粉砕、爆砕、蒸煮、マイクロ波照射、ガンマ線照射、電子線照射、希硫酸処理、アルカリ処理、ソルボリシス処理、等の前処理が知られている(非特許文献1及び2参照)。これらの方法は、エネルギーの投入量が大きい、前処理による糖の損失が大きい、有害物質による環境負荷が大きい、などの欠点があり、木材の酵素糖化法によるエタノールへの変換は未だに工業化されていない。これらの前処理法の中で、爆砕、マイクロ波加熱などの熱化学的処理は、実用化に近い方法として研究例が多いが、いずれの方法も、触媒を添加しない条件では、針葉樹材に対する処理効果が小さいという欠点を有していた。例えば、ブナ材をマイクロ波加熱前処理した場合の最大酵素糖化率は100%になるが、スギ材をマイクロ波加熱前処理した場合の最大酵素糖化率は、36%にとどまることが知られている(非特許文献2参照)。こうした欠点を補うため、熱化学的処理に硫酸やSO2を触媒として利用する方法も試されているが(非特許文献3参照)、これらの有害物質の使用は、酵素糖化法の利点である低環境負荷を損なうことになる。
【0003】
一方、リグノセルロース中のリグニンを分解できる微生物である白色腐朽菌に注目して、白色腐朽菌を他の木材酵素糖化前処理法と組み合わせて利用する方法が報告されている(非特許文献4参照)。しかしながら、従来の白色腐朽菌を使用してリグノセルロースを分解する方法では、環境に対する負荷が少ないという利点があるものの、木材の酵素糖化・発酵に対する前処理の効果が小さく、未だ満足できるものではなかった。例えば、広葉樹ブナ材を、白色腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumで28日間培養した後210℃で爆砕処理すると、酵素糖化率は腐朽木材当たり76%に達するが、28日間のPhanerochaete chrysosporium培養でブナ材の重量は30%以上減少しているため、元の材の重量あたりの糖化率は、55%以下にとどまる(非特許文献3参照)。このため、腐朽に伴う木材の重量減少率が小さく、なおかつ広葉樹材や非木材リグノセルロースのみでなく、スギなどの針葉樹材に対しても高い前処理効果を示す白色腐朽菌の開発が求められてきた。
【非特許文献1】安田征市、バイオマス資源の利用技術 1.前処理技術、木質バイオマスの利用技術、文永堂出版、19-23 (1991)
【非特許文献2】越島哲夫、セルロース資源−高度利用のための技術開発とその基礎、越島哲夫編、学会出版センター、88−99 (1991)
【非特許文献3】Dale, B. E., Moreira, M. J., Biotech. Bioeng. Symp., 12, 31-43 (1982).
【非特許文献4】Sawada, T., Y. Nakamura, F. Kobayashi, M. Kuwahara and T. Watanabe: effects of fungal pretreatment and steam explosion pretreatment on enzymatic saccharification of plant biomass, Biotechnol. Bioeng., 48, 719-724 (1995).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、広葉樹リグノセルロースや非木材系リグノセルロースのみならず針葉樹リグノセルロースに対して優れた分解作用を有し、リグノセルロースを酵素糖化・発酵処理の多糖原料として有効利用できるように変換可能な菌株を提供することを目的とする。更に、本発明は、上記菌株を使用して、効率的にリグノセルロースを分解する方法、リグノセルロースを効率的に糖化する方法、及びリグノセルロースを原料として有用物質を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、生育樹木、倒木、落葉、材木等から採取された多種の菌株の中から、リグノセルロースに対して優れた分解作用を有し、リグノセルロースを酵素糖化・発酵処理の多糖原料として有効利用できるように変換可能な白色腐朽菌(FERM AP−20591)を見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明である:
項1. リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株。
項2. リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株をリグノセルロースの存在下で培養する工程を含む、リグノセルロースの分解方法。
項3. リグノセルロースが針葉樹材、広葉樹材、又は非木材リグノセルロースである、項2に記載の分解方法。
項4. リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株をリグノセルロースの存在下で培養する工程、及び
前記工程で得られた培養物中の多糖を酵素糖化処理する工程を含む、リグノセルロースの糖化方法。
項5. リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株をリグノセルロースの存在下で培養する工程、及び
前記工程で得られた培養物中の多糖を用いて糖化及び発酵処理する工程を含む、リグノセルロースから発酵産物を製造する方法。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.白色腐朽菌
本発明の白色腐朽菌は、リグノセルロース分解作用を有するものであり、FERM AP−20591(識別のための表示:SK M2102)として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている菌株である。本発明の白色腐朽菌は、優れたリグノセルロース分解作用を有し、リグノセルロースを酵素糖化・発酵処理の多糖原料として有効利用できるように変換することができる。従って、本発明の白色腐朽菌は、リグノセルロースを酵素糖化・発酵処理する際の前処理において有用である。
【0008】
本発明の白色腐朽菌は、リグニンペルオキシダーゼ、べラトリアルアルコールオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、マンガン非依存性ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ等のリグニン分解に寄与する酵素を産生すると共に、エキソ-1,4-β-グルカナーゼ、エンド-1,4-β-グルカナーゼ、β-グルコシダーゼ等の多糖分解酵素を産生するという特徴を備えている。
【0009】
本発明の白色腐朽菌は、その18SrRNAの塩基配列は配列番号1に示す通りであり、当該18SrRNAの塩基配列から推定した担子菌の分子系統樹上では、Ceriporiopsis subvermisporaを含む従来公知の白色腐朽菌とは遺伝的に異なる菌である。
【0010】
本発明の白色腐朽菌は、従来公知の白色腐朽菌の場合と同様の培地及び培養条件で生育することができる。例えば、本発明の白色腐朽菌は、ポテトデキストロース寒天(PDA)培地上で、15〜33℃で好気的条件下で良好に生育することができる。
【0011】
本発明の白色腐朽菌の生育特性を以下に示す:
(i)PDA培地上での生育は良好であるが、菌糸の成長速度はCeriporiopsis subvermisporaより遅い。
(ii)15〜35℃程度で菌糸の生育が見られるが、もっとも生育が良好な温度は28〜30℃前後である。
(iii)培養した際の生育形状は、菌糸状であり、周縁部は波打った様な形となり、菌糸増殖による厚みが見られ、さらに培地が黄色〜褐色に変化することもある。
【0012】
また、本発明には、白色腐朽菌(FERM AP−20591)の変異株も包含する。当該変異株は、例えば、白色腐朽菌(FERM AP−20591)を公知の変異処理に供すること、又は経代培養による適応や自然変異により作成できる。
【0013】
2.白色腐朽菌の利用法
上記白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株を利用して、リグノセルロースを分解することができる。
【0014】
ここで分解対象となるリグノセルロースとしては、例えば、針葉樹材、広葉樹材、非木材系リグノセルロース等が挙げられる。具体的には、針葉樹材としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック及びこれらの関連樹種等が例示される。また、広葉樹材としては、具体的には、アスベン、アメリカンブラックチェリー、イエローポプラ、ウォールナット、カバザクラ、ケヤキ、シカモア、シルバーチェリー、タモ、チーク、チャイニーズエルム、チャイニーズメープル、ナラ、ハードメイプル、ヒッコリー、ピーカン、ホワイトアッシュ、ホワイトオーク、ホワイトバーチ、レッドオーク及びこれらの関連樹種等が例示される。更に、非木材系リグノセルロースとしては、具体的には、イネ、サトウキビ、ムギ、トウモロコシ、パイナップル、オイルパーム等の農産物及びその廃棄物;ケナフ、綿等の工業植物及びその廃棄物;アルファルファ、チモシー等の飼料作物;タケ、ササ等が例示される。これらのリグノセルロースの内、針葉樹木材は、リグニン含量が多く本発明において好適な分解対象である。
【0015】
分解対象のリグノセルロースは、その形状については、粉末状、チップ状、角材状、丸太状、フレーク状、繊維状(例えば、長さ0.5−3cm、直径0.01−2mm程度のもの)等の如何なる形状のものであってもよい。効率的に白色腐朽菌による分解を行うという観点から、好ましくは粉末状、チップ状、フレーク状、繊維状である。
【0016】
リグノセルロースの形状がチップ状である場合、その大きさとしては、例えば、長さ100mm以下、縦20mm以下及び横50mm以下程度、好ましくは50mm以下、縦10mm以下及び横30mm以下程度のものが例示される。
【0017】
リグノセルロースの分解は、上記白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株をリグノセルロースの存在下で培養することによって行われる。
【0018】
当該リグノセルロースの分解において、リグノセルロースが存在する環境下で、上記白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株が生育可能な環境にするためには、通常、リグノセルロース100重量部に対して水分をを5〜500重量部、好ましくは50〜400重量部、更に好ましくは50〜300重量部程度添加することにより、水分含量を調整することが望ましい。また、更に、該リグノセルロースには、必要に応じて、白色腐朽菌の生育に必要とされる塩や栄養素(例えば、ふすま、ペプトン、コーンスティープリカー、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、ポテトエキス、米ぬか、合成無機塩類(Kirk塩)等)を添加してもよい。このように調製したリグノセルロースは、上記白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株の植菌に先だって、加熱殺菌等の殺菌処理に供して、雑菌の繁殖を防止しておくことが望ましい。
【0019】
リグノセルロースに上記白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株を植菌する方法は、特に制限されず、通常の植菌方法に従って行うことができる。例えば、リグノセルロースが粉末状又はチップ状の場合であれば、これらの針葉樹材の表面に種菌を降りかける方法や、これらのリグノセルロースと種菌を混合する方法が例示できる。また、例えば、リグノセルロースが角材状や丸太状の場合であれば、針葉樹材に適宜穴を開けて、その穴に種菌を詰める方法が例示される。
【0020】
植菌に使用する種菌としては、例えば液体種菌、穀粒種菌、おがくず種菌、寒天種菌などを使用することができる。
【0021】
リグノセルロースの分解の為の培養は、通常4〜45℃、好ましくは15〜37℃、更に好ましくは20〜33℃の温度条件下で、相対湿度を30%以上に保持して好気的に行われる。
【0022】
また、培養時間は、使用するリグノセルロースの種類や培養条件等によって異なるが、通常3日以上、好ましくは7〜180日、更に好ましくは10〜60日が例示される。
【0023】
斯くしてリグノセルロースを処理することにより得られる分解産物(培養物)は、更に必要に応じて、粉砕処理、マイクロ波照射、爆砕処理、蒸煮処理、放射線照射処理、化学処理(ソルボリシス処理、オゾン処理、アルカリ処理、酸処理、酸化剤処理、還元剤処理等)、菌処理、酸化酵素処理、及びこれらの複合処理等の各種前処理に供してもよい。
【0024】
このようにリグノセルロースを処理することにより、リグノセルロースが分解され、その細胞壁多糖が酵素の作用を受け易い構造に変換される。即ち、リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株をリグノセルロースの存在下で培養することにより得られる培養物中には、細胞壁多糖が酵素糖化や発酵処理の原料として利用することができる状態で存在している。従って、当該培養物中の多糖に対して、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、ガラクタナーゼ、ペクチナーゼ等の酵素で糖化処理することにより、該多糖を糖化(単糖化又はオリゴ糖化)することができる。ここで、培養物中の多糖は、単離又は精製されて本糖化処理に供されても良く、また該培養物に含有された状態で(即ち、培養物をそのまま)本糖化処理に供されてもよい。
【0025】
また、当該糖化処理において、酵素の反応条件については、使用する酵素の種類や目的とする糖化の程度等に基づいて適宜設定される。
【0026】
このように糖化処理することにより細胞壁多糖が低分子化されて単糖又はオリゴ糖が生成する。この低分子化された糖を炭素源として利用して各種の発酵処理に供することにより、各種発酵産物を製造することができる。
【0027】
ここで、発酵処理としては、有用物質を含む発酵産物が得られる発酵処理であることが望ましく、例えば、エタノール発酵、メタン発酵、水素発酵、アセトン・ブタノール発酵、乳酸発酵、コハク酸発酵、イタコン酸発酵、アミノ酸発酵等の発酵処理が好適に例示される。これらの発酵処理に使用される微生物や発酵処理条件は公知である。
【0028】
また、当該発酵処理は、上記糖化処理の後に実施してもよく、また上記糖化処理と同時に実施してもよい。後者の発酵処理と糖化処理を同時に実施する方法については、糖化処理に要する酵素と、発酵処理に要する微生物を共存させて、該酵素と微生物の双方が有効に作用若しくは生育できる条件に設定してインキュベートすることにより実施される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の白色腐朽菌を用いてリグノセルロースを分解することによって、リグノセルロース中の多糖が高い糖化率で酵素糖化されるようになるので、リグノセルロースを有用物質の生産のための原料として有効利用することができる。従って、本発明の白色腐朽菌を使用することによって、リグノセルロース中の多糖の糖化や発酵処理を効率的に実施することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 SK M2102株のスクリーニングとリグノセルロースの分解処理効果の検証
日本国内の生育樹木、倒木、落葉又は材木等が多く存在する環境から採取した子実体、及び木、枝又は葉に付着した糸状菌を候補菌株として、まず第1次スクリーニングを行って、リグニン分解作用が比較的強い25菌株を選択した。
【0031】
なお、選択された25菌株にブナ木材中のリグニンを分解する作用があることの確認は、木材中リグニン含量を調べ、その減少によって評価した。測定方法はセルロースが硫酸により加水分解されて溶解しリグニンが残ることを利用し測定するKlasonリグニン法であり、その操作は以下の通りとした。
【0032】
木材0.35g程度を正確に秤量し、これに72%濃度の硫酸を4.5ml加え、ガラス棒で十分になじませた後、2.5時間撹拌しながら反応させ、更に蒸留水171mlを加えて希硫酸中に懸濁状態としてオートクレーブで熱反応(121℃, 30 min)を行った。放冷後に、溶液に残る褐色の浮遊物がリグニン(Klasonリグニンあるいは硫酸リグニン)であり、ガラスフィルター(GA-100, φ45 mm)上に吸引ろ過と熱水での洗い込みを行ってリグニンを回収した。次いで、リグニンを含むフィルターを乾燥し(105℃、16 hr)正確な重量を測定した。木材に微生物を成育させなかった試料を対照として、スクリーニングによって得られた菌株のリグニン分解が確認された。
【0033】
次に、1次選抜した25菌株を用いてスギ材チップ(長さ10〜30mm、縦2〜8mm、横5〜20mm)を4又は8週間腐朽させ、腐朽材を小型ミルで2分間粉砕して、粉砕物のセルラーゼによる酵素糖化率を測定した。具体的には、まず、C. subvermispora ATCC90467及び1次選抜した25菌株をポテトデキストロース寒天(PDA)培地上で、25℃で1週間前培養した。これとは別に、スギ材チップ5.5gに小麦フスマ0.5gと蒸留水16.5mlを、300ml容三角フラスコに入れ、よく混合した後シリコ栓をし、120℃で20分間オートクレーブしてスギ材チップ培地を調製した。C. subvermispora ATCC90467及び1次選抜した25菌株の前培養物からコルクボーラーでペレットをそれぞれ4個打ち抜き、それをスギ材チップ培地に植菌し、28℃、湿度70%で4〜8週間培養して、スギ材チップを腐朽させて腐朽木材サンプルを得た。
【0034】
次いで得られた腐朽木材サンプルを酵素糖化処理して、各腐朽木材サンプルの酵素糖化率を測定した。なお、酵素糖化率の測定は、100 mlメディウム瓶に、50 mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 5)、乾燥重量0.4 gの腐朽木材サンプル、及び40 FPU(濾紙崩壊活性;Filter Paper Unit)/g-腐朽木材サンプルの濃度メイセラーゼ(明治製菓株式会社製)を含む反応液中で実施した。なお、腐朽木材サンプル中の含水量も考慮にいれて添加する酢酸ナトリウムバッファーの量を調整し、反応液を20 mlとし、更に抗菌剤として200 μlの2%アジ化ナトリウムを加えた。反応はシェーカーを用い、170 rpm、45℃で96時間行った。96時間後、10分間の煮沸で反応を停止させ、遠心分離して得た上清中の還元糖をソモギネルソン法で定量した。
【0035】
このように酵素糖化率を測定して、各腐朽木材サンプルの中で、最も高い酵素糖化率を示す腐朽木材サンプルの菌株として、SK M2102株を選択した。このSK M2102株の腐朽木材サンプルは、従来知られている最も優秀なバイオパルピング菌C. subvermisporaの腐朽木材サンプルを凌駕する酵素糖化率を示した。図1には、SK M2102株の腐朽木材サンプルと、C. subvermisporaの腐朽木材サンプルの酵素糖化率を測定した結果を示す。
【0036】
実施例2 白色腐朽菌の培養によるスギ材の成分変化の検証
C. subvermispora ATCC90467および新規株(SK M2102株)をポテトデキストロース寒天(PDA)プレート上に、25℃で1週間前培養した。これとは別に、スギ材チップ55gに小麦フスマ5.5gと蒸留水165mlをオートクレーブ可能な滅菌フィルター付き菌床椎茸栽培用の袋NTキノバック(日昌(株))に入れ、よく混合した後、120℃で20分間オートクレーブしてスギ材チップ培地を調製した。冷却後、C. subvermispora ATCC90467及び新規株(SK M2102株)の前培養物からコルクボーラーでペレットをそれぞれ10個打ち抜き、それをスギ材チップ培地に植菌し、28℃、湿度70%で4〜8週間培養した。
【0037】
図2に白色腐朽菌によりスギ材を4週間腐朽させた際の重量減少率を示す。新規単離株(SK M2102株)は、C. subvermisporaに比較し、腐朽に伴う木材の重量減少率が小さいため、バイオマス変換に適していることが分かった。また、培養後のスギ材チップのホロセルロース、α-セルロース含量を測定した結果、図3及び4に示すように新規株(SK M2102株)は、C. subvermisporaに比較して、ホロセルロース及びα-セルロースの残存量が高いことが明らかとなった。これは白色腐朽菌処理後に発酵に利用できる糖が多く残存していることを示し、新規株(SK M2102株)は、木材(リグノセルロース)の糖化の前処理に好適な性質を備えていると結論された。リグニン含量の残存率に関しては、4週間の培養では新規株(SK M2102株)は、C. subvermisporaと同等、8週間では、新規株(SK M2102株)の方が残存率がやや高い結果となった(図5参照)。リグニンの利用を考えた時、酵素糖化率が同じであれば、リグニン残存率は高いことは好ましいと考えられ、新規株(SK M2102株)はリグニンの利用にも適する株と結論される。
【0038】
実施例3 新規株による木材前処理が及ぼす酵素糖化率への影響−1
C. subvermispora ATCC90467及び新規株(SK M2102株)をポテトデキストロース寒天(PDA)プレート上で、25℃で10〜14日間前培養した。これとは別に、スギ材チップ55gに小麦フスマ5.5gと蒸留水165mlをオートクレーブ可能な滅菌フィルター付き菌床椎茸栽培用の袋NTキノバック(日昌(株))に入れ、よく混合した後、120℃で20分間オートクレーブして、スギ材チップ培地を調製した。C. subvermispora ATCC90467及び新規株(SK M2102株)の前培養物からコルクボーラーでペレットをそれぞれ10個打ち抜き、それをスギ材チップ培地に植菌し、28℃、湿度70%で4〜8週間培養して、腐朽チップ(培養物)を得た。
【0039】
ステンレス製オートクレーブに、培養により得られた腐朽チップ(乾燥重量15 g)と60% (v/v) エタノール水(90 g)を加え、200℃、1時間加熱し、エタノリシス反応を行った。エタノール水の濃度は、腐朽チップに元々含有している水分も考慮にいれて計算した。反応後、オートクレーブを氷水中で直ちに冷却した。次いで、エタノリシス反応後に残存する不溶性画分(以下、パルプと表記する)を、ろ紙(Whatmann No.4)で分離した。分離したパルプをジューサーに入れ、250 mlの50%エタノール水中で4分間解繊した。この繊維は150 mlの50%エタノール水で3回、その後、300 mlの蒸留水で2回洗浄し、パルプ画分として酵素糖化試験に供した。パルプ画分の酵素糖化試験は、100 mlメディウム瓶に、50 mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 5)、乾燥重量0.4 gのパルプ及び40 FPU/g−pulpの濃度のメイセラーゼ(明治製菓株式会社製)を含む反応液中で実施した。なお、腐朽木材サンプル中の含水量も考慮にいれて添加する酢酸ナトリウムバッファーの量を調整し、反応液を20 mlとし、更に抗菌剤として200 μlの2%アジ化ナトリウムを加えた。反応はシェーカーにおいて、170 rpm、45℃で96時間行った。96時間後、10分間の煮沸で反応を停止させ、遠心分離して得た上清中の還元糖をソモギネルソン法で定量した。その結果を図6に示す。その結果、新規株(SK M2102株)を培養したスギ材チップは、C. subvermisporaで培養した場合に比して優れた酵素糖化率を示すことが明らかとなった。
【0040】
実施例4 新規株による木材前処理が及ぼす酵素糖化率への影響−2
C. subvermispora ATCC90467及び新規株(SK M2102株)をポテトデキストロース寒天(PDA)プレート上で、25℃で10〜14日間前培養した。これとは別に、スギ材チップ55gに小麦フスマ5.5gと蒸留水165mlをオートクレーブ可能な滅菌フィルター付き菌床椎茸栽培用の袋NTキノバック(日昌(株))に入れ、よく混合した後、120℃で20分間オートクレーブして、スギ材チップ培地を調製した。C. subvermispora ATCC90467及び新規株(SK M2102株)の前培養物からコルクボーラーでペレットをそれぞれ10個打ち抜き、それをスギ材チップ培地に植菌し、28℃、湿度70%で4〜8週間培養して、腐朽チップ(培養物)を得た。
【0041】
培養後の腐朽チップ(乾燥重量3 g)を試験管に入れ、これに36 gの溶媒(エチレングリコール/酢酸/水=72/14/14)を加えた。これをマイクロ波照射装置の照射フード内に静置し、2.45 GHzのマイクロ波を入射電力0.6 kWで照射し、試料温度220℃まで昇温後、入射電力を0.3から0.4 kWの間で調節しながら5分間220℃に保持した。5分保持後直ちに照射を止め、照射フード外側の防爆容器内に常温空気をポンプで通気し、空冷した。試料温度が80℃以下になった時点で照射フード内の圧力を徐々に下げ、常圧にし、試料を取り出した。溶媒とチップをろ過で分離した。腐朽チップは100 mlの50%エタノールを加えてミルにかけ、4分間の解繊処理を行った。ろ過で繊維分を取り出してパルプ画分とし、これを酵素糖化試験に供した。パルプ画分の酵素糖化試験は、100 mlメディウム瓶に、10 mlの50 mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 5)に、乾燥重量0.2gのパルプを分散させ、更に40 FPU/g−pulpのメイセラーゼ添加して、45℃で96時間、170 rpmの振盪をしながら行った。96時間後、10分間煮沸して反応を停止させ、遠心分離した上清中の還元糖量をソモギネルソン法で定量した。
【0042】
得られた結果を図7に示す。この結果、新規株(SK M2102株)は、酵素糖化を促進し、その酵素糖化率は、93.5%に達した。これに対し、C. subvermisporaでは、大きな糖化促進効果は認められなかった。
【0043】
実施例5 新規株による木材前処理が及ぼすエタノール発酵への影響
C. subvermispora ATCC90467及び新規株(SK M2102株)をポテトデキストロース寒天(PDA)プレート上で、25℃で10〜14日間前培養した。これとは別に、スギ材チップ55gに小麦フスマ5.5gと蒸留水165mlをオートクレーブ可能な滅菌フィルター付き菌床椎茸栽培用の袋NTキノバック(日昌(株))に入れ、よく混合した後、120℃で20分間オートクレーブして、スギ材チップ培地を調製した。C. subvermispora ATCC90467及び新規株(SK M2102株)の前培養物からコルクボーラーでペレットをそれぞれ10個打ち抜き、それをスギ材チップ培地に植菌し、28℃、湿度70%で4〜8週間培養して、腐朽チップ(培養物)を得た。
【0044】
ステンレス製オートクレーブに、培養後の腐朽チップ(乾燥重量15 g)と60% (v/v) エタノール水(90 g)を加え、200℃、1時間加熱し、エタノリシス反応を行った。エタノール水の濃度は、腐朽材に元々含有している水分も考慮にいれて計算した。反応後、オートクレーブを氷水中で直ちに冷却した。次いで、エタノリシス反応後に残存する不溶性画分(以下、パルプと表記する)を、ろ紙(Whatmann No.4)で分離した。分離したパルプをジューサーに入れ、250 mlの50%エタノール水中で4分間解繊した。この繊維は150 mlの50%エタノール水で3回、その後300 mlの蒸留水で2回洗浄し、パルプ画分としてエタノール発酵試験に供した。
【0045】
パルプ画分のエタノール発酵は併行複発酵法で、メイセラーゼ(40 FPU/g-pulp)と酵母Saccharomyces cerevisiae AM12を用い、微嫌気条件下クエン酸緩衝液(pH 5.0)中、35℃でパルプ画分(基質)濃度50g/lで72時間培養した。エタノールの定量は、ガスクロマトグラフィーを用いた。
【0046】
得られた結果を図8に示す。この結果、新規株(SK M2102株)は、木材の酵素糖化率の上昇のみでなく、酵素糖化後のエタノール発酵に対しても高い促進効果を示すことが明らかとなった。
【0047】
実施例6 新規株(SK M2102株)のリボソーム配列シーケンス
実施例1で得られた新規株(SK M2102株)のリボソーム配列を以下のようにシーケンスし、データベースに登録された配列との相同性検索を行った。
【0048】
菌株はPDA培地で静置条件28℃にて生育させ、その糸状の生育部分の一部を先細ピンセットにより1.5mLのエッペンドルフチューブに移し、−20℃での凍結および融解処理を行った後、DNA抽出キット(Dneasy Plant Mini、QIAGEN社製)を用いてPCR用鋳型DNAの抽出を行った。抽出したDNAを鋳型として18S rDNAのPCRを行った。プライマーは18S rDNAを増幅させるためのプライマーのE21f(5'-ATCTGGTTGATCCTGCCAGT-3')及びE1778r(5'-AATGATCCTTCCGCAGGTTC-3')を用い、RoboCycler Gradient 96 with Hot Top(Stratagene社)を使用して以下のPCR反応サイクルを行った。反応条件は、プレヒート:98℃、2分、反応サイクル:変性98℃、30秒、アニーリング63/58℃、30秒、伸張74℃、40秒、35サイクル反応後、74℃の伸長反応を120秒行った。
【0049】
PCRにより増幅した予想サイズ約1800bpのDNA断片は、スピンカラム法(QIAquick PCR Purification Kit、QIAGEN社)を用いて精製し、精製DNAを鋳型としてABI Big Dye Terminator法によりPCRを行い、PCR生成物をABI PRISM 3100 16キャピラリーシステム(Applied Biosystems社)を用いてシーケンスをおこなった。この結果、配列番号1に示す塩基配列が新規株(SK M2102株)の18SrRNAの配列として同定された。
【0050】
得られた配列について、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)がWWW上で提供する相同性検索システムBLASTを用いて相同性検索を行った。相同性検索の結果、新規株(SK M2102株)の18S rDNAの配列に最も相同性の高いものは、Fomitiporia mediterranea(98.3%)、Inonotuslinteus(98.2%)、Fibricium rude(98.2%)、Inonotus baumii(98.1%)であったことから、担子菌類の一種であることが明らかとなった。
【0051】
実施例7 新規株(SK M2102株)の性質:バーベンダム反応
新規株(SK M2102株)が白色腐朽菌であることを検証するために、以下の方法に従ってバーベンダム反応を実施した。
【0052】
ポリデキストロース寒天 (PDA)0.78g、グアイアコール20μl、蒸留水20mlを混合・加熱後冷却して、グアイアコールを含むPDAプレートを作成した。同様に、ポリデキストロース寒天(PDA)0.78g、没食子酸25μg、蒸留水20mlを混合・加熱後冷却して、没食子酸を含むPDAプレートを作成した。PDAプレート上で6日間前培養した新規株(SK M2102株)とC. subvermispora ATCC90467からコルクボーラーでペレットを打ち抜き、それをグアイアコール又は没食子酸を含むPDAプレートに植菌し、25℃で菌の生育とプレートの色の変化を観察した。
【0053】
その結果、新規株(SK M2102株)では、培養が進につれてグアイアコールの酸化によりプレートが紫色に変化した、また、没食子酸でも、酸化による茶色の呈色が次第に強くなり、どちらの培地でも、10日目には強い色素の着色帯が観察された。一方、C. subvermispora ATCC90467では、没食子酸による茶色の呈色は観察されたが、グアイアコールを含む培地では、生育阻害のために、菌糸がほとんど生育せず、色素の酸化帯は観察されなかった。以上の結果から、新規株(SK M2102株)は、バーベンダム反応に陽性であり、白色腐朽菌としての特徴を備えていることが明らかとなった。
【0054】
実施例8 新規株(SK M2102株)の性質:リグニン分解酵素とセルラーゼの生産
新規株(SK M2102株)によるリグニン分解酵素とセルラーゼの生産プロファイルを以下の方法に従って調べた。
【0055】
新規株(SK M2102株)をポテトデキストロース寒天(PDA)プレート上で、25℃で1週間前培養した。また、300 ml三角フラスコにスギ材チップ5gに小麦フスマ0.5gと蒸留水15mlを入れ、よく混合した後、120℃で20分間オートクレーブして、スギ材チップ培地を調製した。新規株(SK M2102株)の前培養物からコルクボーラーでペレットをそれぞれ4個打ち抜き、それをスギ材チップ培地に植菌し、28℃、湿度75%で培養した。培養開始後経時的にサンプリングを行い、培地中の菌体外酵素を80分間減圧下で抽出濾過し、リグニン分解酵素とセルラーゼの活性を測定した。具体的には、リグニンペルオキシダーゼ、べラトリアルコールオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、マンガン非依存性ペルオキシダーゼ、ラッカーゼは3日毎に、エキソ-1,4-β-グルカナーゼ、エンド-1,4-β-グルカナーゼ、β-グルコシダーゼは6日毎に活性を測定した。
【0056】
リグニンペルオキシダーゼ(LiP)活性は、ベラトリルアルコールを基質とし、過酸化水素に依存して生成するベラトルムアルデヒドを310nmで定量した。べラトリアルコールオキシダーゼ(VAO)活性は、同様にベラトリルアルコールを基質とし、過酸化水素非存在下で生成するベラトルムアルデヒドを310nmで定量した。マンガンペルオキシダーゼ(MnP)活性、マンガン非依存性ペルオキシダーゼ(MiP)活性、ラッカーゼ活性は、2,6-ジメトキシフェノールを基質として測定した。ラッカーゼ(Lac)活性は、過酸化水素及びマンガンを含まない条件で菌体外酵素によって直接基質が酸化される活性とした。マンガン非依存性ペルオキシダーゼ(MiP)活性は、マンガン非存在下過酸化水素存在下で基質が酸化される活性からラッカーゼ(Lac)活性を差し引いた活性とした。マンガンペルオキシダーゼ(MnP)活性は、マンガンおよび過酸化水素存在下で基質が酸化される活性からマンガン非依存性ペルオキシダーゼ(MiP)活性とラッカーゼ(Lac)活性を差し引いた活性とした。これらの活性は、25mMの酒石酸緩衝液(pH3.0とpH5.0)中で測定した。
【0057】
エキソ-1,4-β-グルカナーゼ活性とβ-グルコシダーゼ活性は、p-Nitrophenyl β-D-cellobioside(PNPC)とp-Nitrophenyl β-D-glucosideをそれぞれ基質とし、酵素反応により生成するp-ニトロフェノールを定量することにより測定した。これらの活性は、20mMの酢酸緩衝液(pH3.0とpH5.0)中で測定した。エンド1,4-β-グルカナーゼ活性は、0.5%CM-セルロースを基質とし、37℃10分間の反応で生成する還元糖量をソモギネルソン法により測定した。
【0058】
得られた結果を図9〜16に示す。これらの結果から分かるように、新規株(SK M2102株)はリグニン分解酵素であるマンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼを主要な菌体外酸化酵素として生産することが確認された。また、新規株(SK M2102株)は、リグニンペルオキシダーゼ、ベラトリルオキシダーゼ、マンガン非依存性ペルオキシダーゼも生産することが分かった。更に、新規株(SK M2102株)は、セルラーゼであるセロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、β-グルコシダーゼも生産することが明らかとなった。こうした菌体外酵素の生産プロファイルと18S rDNAの分析から、新規株(SK M2102株)は、リグニンを分解する白色腐朽菌であると結論される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1において、SK M2102株の腐朽木材サンプルと、C. subvermisporaの腐朽木材サンプルとの酵素糖化率を測定した結果を示す。
【図2】実施例2において、白色腐朽菌(SK M2102株又はC. subvermispora)をスギ材の存在下で4週間培養した後のスギ材の重量減少率を測定した結果を示す。
【図3】実施例2において、白色腐朽菌(SK M2102株又はC. subvermispora)をスギ材の存在下で4週間培養した後のスギ材中のα-セルロース量を測定した結果を示す。なお、図中、コントロールとは、白色腐朽菌による培養を行わなかったサンプルを使用して測定した結果である。図中の単位(%)は、培養後のスギ材チップの総重量に対するα-セルロースの含有割合(%)である。
【図4】実施例2において、白色腐朽菌(SK M2102株又はC. subvermispora)をスギ材の存在下で4又は8週間培養した後のスギ材中のホロセルロース量を測定した結果を示す。なお、図中、コントロールとは、白色腐朽菌による培養を行わなかったサンプルを使用して測定した結果である。図中の単位(%)は、培養後のスギ材チップの総重量に対するホロセルロースの含有割合(%)である。
【図5】実施例2において、白色腐朽菌(SK M2102株又はC. subvermispora)をスギ材の存在下で4又は8週間培養した後のスギ材中のリグニン量を測定した結果を示す。なお、図中、コントロールとは、白色腐朽菌による培養を行わなかったサンプルを使用して測定した結果である。図中の単位(%)は、培養後のスギ材チップの総重量に対するリグニンの含有割合(%)である。
【図6】実施例3において、測定したスギ材チップパルプ画分の酵素糖化率を測定した結果を示す。なお、図中、コントロールとは、白色腐朽菌による培養を行わなかったサンプルを使用して測定した結果である。
【図7】実施例4において、測定したスギ材チップパルプ画分の酵素糖化率を測定した結果を示す。なお、図中、コントロールとは、白色腐朽菌による培養を行わなかったサンプルを使用して測定した結果である。
【図8】実施例5において、スギ材チップパルプ画を用いてエタノール発酵した際の培養液中のエタノール濃度を測定した結果を示す。なお、図中、コントロールとは、白色腐朽菌による培養を行わなかったサンプルを使用して測定した結果である。
【図9】実施例8において、新規株(SK M2102株)のリグニンペルオキシダーゼの生産プロファイルを測定した結果である。図中の酵素活性の単位(Unit/g木材)は、培養に使用したスギ材チップ1g当たりのリグニンペルオキシダーゼ活性(Unit)である。
【図10】実施例8において、新規株(SK M2102株)のベラトリルアルコールオキシダーゼの生産プロファイルを測定した結果である。図中の酵素活性の単位(Unit/g木材)は、培養に使用したスギ材チップ1g当たりのベラトリルアルコールオキシダーゼ活性(Unit)である。
【図11】実施例8において、新規株(SK M2102株)のマンガンペルオキシダーゼの生産プロファイルを測定した結果である。図中の酵素活性の単位(Unit/g木材)は、培養に使用したスギ材チップ1g当たりのマンガンペルオキシダーゼ活性(Unit)である。
【図12】実施例8において、新規株(SK M2102株)のマンガン非依存性ペルオキシダーゼの生産プロファイルを測定した結果である。図中の酵素活性の単位(Unit/g木材)は、培養に使用したスギ材チップ1g当たりのマンガン非依存性ペルオキシダーゼ活性(Unit)である。
【図13】実施例8において、新規株(SK M2102株)のラッカーゼの生産プロファイルを測定した結果である。図中の酵素活性の単位(Unit/g木材)は、培養に使用したスギ材チップ1g当たりのラッカーゼ活性(Unit)である。
【図14】実施例8において、新規株(SK M2102株)のエキソ-1,4-β-グルカナーゼの生産プロファイルを測定した結果である。図中の酵素活性の単位(Unit/g木材)は、培養に使用したスギ材チップ1g当たりのエキソ-1,4-β-グルカナーゼ活性(Unit)である。
【図15】実施例8において、新規株(SK M2102株)のエンド-1,4-β-グルカナーゼの生産プロファイルを測定した結果である。図中の酵素活性の単位(Unit/g木材)は、培養に使用したスギ材チップ1g当たりのエンド-1,4-β-グルカナーゼ活性(Unit)である。
【図16】実施例8において、新規株(SK M2102株)のβ-グルコシダーゼの生産プロファイルを測定した結果である。図中の酵素活性の単位(Unit/g木材)は、培養に使用したスギ材チップ1g当たりのβ-グルコシダーゼ活性(Unit)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株。
【請求項2】
リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株をリグノセルロースの存在下で培養する工程を含む、リグノセルロースの分解方法。
【請求項3】
リグノセルロースが針葉樹材、広葉樹材、又は非木材系リグノセルロースである、請求項2に記載の分解方法。
【請求項4】
リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株をリグノセルロースの存在下で培養する工程、及び
前記工程で得られた培養物中の多糖を酵素糖化処理する工程を含む、リグノセルロースの糖化方法。
【請求項5】
リグノセルロース分解作用を有する白色腐朽菌(FERM AP−20591)又はその変異株をリグノセルロースの存在下で培養する工程、及び
前記工程で得られた培養物中の多糖を用いて糖化及び発酵処理する工程を含む、リグノセルロースから発酵産物を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−37469(P2007−37469A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225851(P2005−225851)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【Fターム(参考)】