説明

リザーバタンク

【課題】作動油中の異物を除去し得るリザーバタンクを提供する。
【解決手段】リザーバタンク10は、流入パイプ11に連結されるバッフラ40の加圧室41と、流出パイプ12に連結される漏斗部50と、加圧室41と漏斗部50との間に設けられる加圧室フィルタ33を有する中間部材30とを備えている。流入パイプ11は、通孔40bを介して内周壁42のバッフラ中心Lからずれて加圧室41に連結されており、加圧室41の内周壁42には、バッフラ中心Lに向けて上方へ傾斜して延出する傾斜部62を有する異物捕集部60が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油の貯溜、ろ過等を行うリザーバタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、作動油の貯溜、ろ過等を行うリザーバタンクとして、下記特許文献1に示すリザーバタンクが知られている。このリザーバタンクは、流入パイプから流入される作動油をバッフラの加圧室に圧送して加圧するとともに、この加圧室にフィルタを挟んで対向する漏斗室をオイルポンプの吸引力でもって負圧とする。このような加圧室と漏斗室との間に圧力差が生じることによって、作動油が粘性の高い状態であってもフィルタにより円滑にろ過されて、作動油中の異物が捕集される。
【特許文献1】特開2006−046603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、通常のフィルタでは、例えば、150μm程度の大きさの異物を捕集することができるが、オイルポンプにおけるロータとサイドプレートの最小クリアランスやフローコントロールバルブの最小クリアランス等を考慮すると、さらに小さな異物をも捕集する必要がある。
【0004】
しかしながら、より小さな異物を捕集するためにフィルタの目をさらに細かくすると、このフィルタが作動油のろ過における抵抗となってしまい、特に、粘性の高い状態(低温状態)の作動油では、オイルポンプの吸い込み不足が発生するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、作動油中の異物を除去し得るリザーバタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のリザーバタンクでは、流入口(11)に連結される流入室(41)と、流出口(12)に連結される流出室(50)と、前記流入室と前記流出室との間に設けられるフィルタ(33)と、を備えるリザーバタンク(10)であって、前記流入口は、前記流入室の内周壁(42)の中心(L)からずれて当該流入室に連結されており、前記内周壁には、前記内周壁の中心へ向けて上方へ傾斜して延出する傾斜部(62)を有する異物捕集部(60)が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、リザーバタンクは、流入口に連結される流入室と、流出口に連結される流出室と、流入室と流出室との間に設けられるフィルタとを備えている。流入口は、流入室の内周壁の中心からずれて当該流入室に連結されており、内周壁には、当該内周壁の中心に向けて上方へ傾斜して延出する傾斜部を有する異物捕集部が設けられている。
【0008】
このように、流入口は流入室の内周壁の中心からずれて当該流入室に連結されているので、流入口より流入室に流入する作動油は、流入室の内周壁に沿うように流動するとともに当該作動油の流速に応じて加圧される。その際、流入室の内周壁には当該内周壁の中心に向けて上方へ傾斜して延出する傾斜部を有する異物捕集部が設けられているので、作動油が内周壁に沿い流動している際に、作動油中の異物が異物捕集部の傾斜部と流入室の内周壁とより形成される捕集領域に案内されることにより異物捕集部に捕集される。
したがって、作動油中の異物を除去することができる。
【0009】
また、作動油中の異物は、その大きさにかかわらず異物捕集部により捕集されるので、フィルタにより捕集される異物の量が削減される。このため、フィルタにより捕集される異物に起因するろ過抵抗を低減することができるので、オイルポンプの吸い込み不足が発生することもなく、オイルポンプに要求される出力を低下することができる。
【0010】
請求項2の発明では、異物捕集部には、傾斜部の下端部近傍であって上方に開口する溝部が形成されている。これにより、異物捕集部の傾斜部と流入室の内周壁とより形成される捕集領域に案内されて捕集された作動油中の異物が、上方に開口している溝部に案内されて当該溝部に流下するので、異物捕集部による異物の捕集をより確実にすることができる。また、溝部では流入室の内周壁に沿うように流動する作動油の影響が少ないため、溝部に流下した異物の流出を抑制し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るリザーバタンク10の構成概要を示す断面図である。図2は、リザーバタンク10の下端部を切断して示す上面図である。なお、図1は、図2のA−A断面とB−B断面とを便宜上、同軸で結合して示している。
【0012】
図1に示すように、リザーバタンク10は、作動油を蓄積するタンク部20と、作動油中の異物をろ過するフィルタが配設される中間部材30と、流入パイプ11から流入する作動油の流速を利用して当該作動油を加圧するバッフラ40と、流出パイプ12に接続される漏斗部50とを備えている。なお、流入パイプ11は、アクチュエータである図略のギア部の排出側に接続されており、流出パイプ12は、油圧源である図略のオイルポンプの吸入側に接続されている。
【0013】
タンク部20は、図1に示すように、略円筒形状をした例えば合成樹脂製の成形体であり、上端部には油を注入する注油口21が形成されており、この注油口21は、オイルキャップ22によって、わずかな大気連通状態を保って閉塞されている。また、タンク部20の下端部には、つば状に張り出したフランジ部23が形成されており、このフランジ部23の下面には、溶着の際に用いられる環状に隆起した図略の溶着部が設けられている。また、タンク部20の下端部には、流入パイプ11が取着形成されている。なお、この流入パイプ11はタンク部20の本体と一体成形されて設けられていてもよい。
【0014】
中間部材30は、略リング形状をした例えば合成樹脂製の成形体であり、リング部31と、このリング部31の内周側に設けられるフィルタ支持板32とを備えている。リング部31の上面および下面の周縁には、タンク部20と漏斗部50との溶着の際に用いられる、図略の溶着部がそれぞれ設けられている。
【0015】
フィルタ支持板32の中央部には、バッフラ40の後述する加圧室41から漏斗部50へ流出する作動油をろ過する円形状の加圧室フィルタ33が設けられており、この加圧室フィルタ33の周囲には、漏斗部50からタンク部20へ流出する作動油をろ過する複数の加圧室外フィルタ34が設けられている。
【0016】
バッフラ40は、加圧室フィルタ33の外径と略同一の内径を有する凹部40aを備えており、この凹部40aが下方向に開口するようにタンク部20の下方に配置されている。そして、バッフラ40の凹部40aと加圧室フィルタ33とにより加圧室41が区画形成されている。
【0017】
この加圧室41は、凹部40aの内周壁42の鉛直方向中心(以下、バッフラ中心Lともいう)からずれるように形成された通孔40bによって流入パイプ11と連通されている(図2参照)。
【0018】
また、バッフラ40は、タンク部20の内周面に向かって延びるつば状のバッフラフランジ部43を有し、タンク部20と中間部材30との間に挟み込まれる態様で配設されている(図2参照)。
【0019】
図3は、異物捕集部60を説明するための拡大断面図である。
図1〜図3に示すように、加圧室41には、内周壁42の下端部に沿うように略環状に形成された、例えば鉄製の異物捕集部60が設けられている。
【0020】
異物捕集部60は、内周壁42の下端部に固定される略環状の異物捕集部本体61と、この異物捕集部本体61の内周上面からバッフラ中心Lに向け上方へ傾斜して延出する略環状の傾斜部62とを備えている。
【0021】
異物捕集部本体61には、傾斜部62の下端部近傍であって上方に開口する断面コ字状の溝部61aが全周に渡り形成されている。なお、本実施形態においては、溝部61aに流下した作動油中の異物の流出を抑制するため、溝部61aの幅寸法は、例えば、0.5〜1.0mmに設定されており、溝部61aの深さ寸法は、例えば、幅寸法の2倍に設定されている。
【0022】
漏斗部50は、略漏斗形状をした例えば合成樹脂製の成形体であり、この漏斗部50の下端部には流出パイプ12が一体に接続されている。なお、このタンク部20と漏斗部50とは、製造工程において中間部材30を挟んで回転可能に組み付けられ、通孔40bと流出パイプ12とが成す角度の決定後に溶着される。
【0023】
このように構成することにより、上記リザーバタンク10は次のように作用する。
まず、流入パイプ11から加圧室41に流入する作動油は、加圧室41の内周壁42に沿うようにバッフラ中心Lを中心として図2の矢印α方向に流動するとともに当該作動油の流速に応じて加圧される(図2参照)。これにより加圧室41内が正圧となる。これに対して、漏斗部50の漏斗室51は、流出パイプ12を介してオイルポンプの吸入側に接続されているので、オイルポンプの吸引力が作用し、負圧となる。
【0024】
これにより、加圧室フィルタ33を挟んで正圧(加圧室41)と負圧(漏斗室51)とが間近で対向することとなる。そして、このような圧力差が生じることによって、たとえ粘性の高い状態の作動油であっても円滑に加圧室フィルタ33を通過できるようになる。
【0025】
このとき、加圧室41の内周壁42に沿い流動する作動油中の異物は、異物捕集部60の傾斜部62と内周壁42とより形成される捕集領域に案内された後、異物捕集部本体61の溝部61aに流下して確実に捕集される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係るリザーバタンク10は、流入パイプ11に連結されるバッフラ40の加圧室41と、流出パイプ12に連結される漏斗部50と、加圧室41と漏斗部50との間に設けられる加圧室フィルタ33を有する中間部材30とを備えている。流入パイプ11は、通孔40bを介して内周壁42のバッフラ中心Lからずれて加圧室41に連結されており、加圧室41の内周壁42には、バッフラ中心Lに向けて上方へ傾斜して延出する傾斜部62を有する異物捕集部60が設けられている。
【0027】
このように、流入パイプ11は内周壁42のバッフラ中心Lからずれて当該加圧室41に連結されているので、流入パイプ11より加圧室41に流入する作動油は、加圧室41の内周壁42に沿うように流動するとともに当該作動油の流速に応じて加圧される。その際、加圧室41の内周壁42にはバッフラ中心Lに向けて上方へ傾斜して延出する傾斜部62を有する異物捕集部60が設けられているので、作動油が内周壁42に沿い流動している際に、作動油中の異物が異物捕集部60の傾斜部62と加圧室41の内周壁42とより形成される捕集領域に案内されることにより異物捕集部60に捕集される。
したがって、作動油中の異物を除去することができる。
【0028】
また、作動油中の異物は、その大きさにかかわらず異物捕集部60により捕集されるので、加圧室フィルタ33により捕集される異物の量が削減される。このため、加圧室フィルタ33により捕集される異物に起因するろ過抵抗を低減することができるので、オイルポンプの吸い込み不足が発生することもなく、オイルポンプに要求される出力を低下することができる。
【0029】
また、本実施形態に係るリザーバタンク10において、異物捕集部60の異物捕集部本体61には、傾斜部62の下端部近傍であって上方に開口する溝部61aが形成されている。これにより、異物捕集部60の傾斜部62と加圧室41の内周壁42とより形成される捕集領域に案内されて捕集された作動油中の異物が、上方に開口している溝部61aに案内されて当該溝部61aに流下するので、異物捕集部60による異物の捕集をより確実にすることができる。また、溝部61aでは加圧室41の内周壁42に沿うように流動する作動油の影響が少ないため、溝部61aに流下した異物の流出を抑制し得る。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)溝部61aは断面コ字状に形成されることに限らず、例えば断面V字状など、上方に開口する形状に形成されてもよい。
【0031】
(2)異物捕集部60において、傾斜部62および溝部61aのどちらか一方を廃止してもよい。捕集効果は低下するものの、より簡易的な構成でもって作動油中の異物を捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係るリザーバタンクの構成概要を示す断面図である。
【図2】リザーバタンクの下端部を切断して示す上面図である。
【図3】異物捕集部を説明するための拡大断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10…リザーバタンク
11…流入パイプ(流入口)
12…流出パイプ(流出口)
20…タンク部
30…中間部材
33…加圧室フィルタ(フィルタ)
40…バッフラ
40a…凹部
41…加圧室(流入室)
42…内周壁
50…漏斗部(流出室)
60…異物捕集部
61…異物捕集部本体
61a…溝部
62…傾斜部
L…バッフラ中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口に連結される流入室と、
流出口に連結される流出室と、
前記流入室と前記流出室との間に設けられるフィルタと、
を備えるリザーバタンクであって、
前記流入口は、前記流入室の内周壁の中心からずれて当該流入室に連結されており、
前記内周壁には、前記内周壁の中心に向けて上方へ傾斜して延出する傾斜部を有する異物捕集部が設けられることを特徴とするリザーバタンク。
【請求項2】
前記異物捕集部には、前記傾斜部の下端部近傍であって上方に開口する溝部が形成されることを特徴とする請求項1記載のリザーバタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−298091(P2008−298091A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141319(P2007−141319)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】