説明

リジッドな光起電力モジュール用のバックシート

バックシートは、i)ポリオレフィン樹脂を含む内層;ii)ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又はポリプロピレン樹脂/MAH−g−PP多層構造体、を含むコア層;iii)無水マレイン酸グラフト化ポリフッ化ビニリデン(MAH−g−PVDF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とMAH−g−PVDFのブレンド、又はPVDF/MAH−g−PVDF多層構造体、を含む外層;iv)前記コア層と前記外層の間に存在する第1のタイ層;及びv)前記コア層と前記内層の間に存在する任意選択的に用いられる第2のタイ層を含む共押出多層シートを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロスレファレンスの記述
本願は2009年9月1日に出願された米国仮出願第61/238,808号の利益を主張する。米国仮出願第61/238,808号の内容全体を引用により本明細書に援用する。
技術分野
本発明は、電子デバイスモジュールに関する。一実施態様において、本発明は、電子デバイス、例えば太陽電池と、保護ポリマー材料を含む電子デバイスモジュールに関し、別の実施態様において、本発明は、保護ポリマー材料がフルオロポリマー及びポリオレフィンを含む多層ポリマーシートである電子デバイスモジュールに関する。さらに別の実施態様において、本発明は電子デバイスモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料は、太陽電池(光起電力セル)(又はPVセル)、液晶パネル、電界発光デバイス及びプラズマディスプレイユニットなど(これらに限定されない)の1又は2以上の電子デバイスを含むモジュールの製造に通常使用されている。モジュールは、しばしば、片方又は両方の基材がガラス、金属、プラスチック、ゴム又は別の材料を含む2つの基材の間にしばしば配置される1又は2以上の基材、例えば1又は2以上のガラスカバーシートとの組み合わせで電子デバイスを含む。ポリマー材料は、典型的には、モジュールのための封止材又はシーラントとして使用されるか、又はモジュールの設計に応じて、モジュールのスキン層成分、例えば太陽電池モジュールのバックスキンとして使用される。これらの目的のための典型的なポリマー材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、酢酸セルロース、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)及びアイオノマーが挙げられる。
【0003】
多層ポリマーシートは、太陽電池(光起電力)モジュール用のバックシート(又はバックスキン、基材)としてしばしば使用される。このシートは、片側に接着剤コーティングを有するポリフッ化ビニル(PVF)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)のフィルムを含む第1のポリマー層と、第1のポリマー層の接着剤コーティング上に押出された任意選択的に着色されていてもよい第2のポリマー層と、そして最適には、防湿及び誘電体絶縁を提供するための第3のポリマー層を含むことができる。このシートは、モジュール内の太陽電池及び金属製コンポーネントを環境要素から保護するために、封止材に対する良好な接着強度、機械的強度、電気的絶縁及び湿気遮断性を有することが求められる。さらに、バックシートは、デバイスのバックコンタクトから接地された金属フレームへの伝導経路を妨げるために電気的に絶縁性でなくてはならない。また、バックシート材料は、水分の侵入を妨げなくてはならない。なぜなら、水分の侵入は、IEEE 1262認定試験に合格しないデバイスについての一般的に受け入れられている破壊モードであるからである。IEEE 1262は、一般的に、「高温多湿試験(damp heat test)」と呼ばれており、その規格に従って、試験の一部として、PVデバイスを85℃及び相対湿度(RH)85%に1000時間かける。このように、モジュール内の太陽電池及び金属製コンポーネントを環境要素から保護するために、良好なバックシート材料は封止材との良好な接着性、良好な電気的絶縁性、機械的強度、及び湿気遮断性を有することが求められる。
【0004】
現在のバックシートは、製造するのに複数の加工工程を必要とする。しばしば、個々のフィルム層は、それぞれ別々に製造され、その後、しばしば中間接着剤層により積層される。例えば、米国特許第6,521,825号明細書には、三層積層フィルムを含む太陽電池モジュールが開示されている。それらの層のうち2つの層は耐熱性及び耐候性であり、コア層は耐湿性である。
【0005】
現在、TEDLAR(登録商標)/PET/TEDLAR(登録商標)、TEDLAR(登録商標)/PET/EVA、及びTEDLAR(登録商標)/アルミニウム箔/TEDLAR(登録商標)などのいくつかの多層フィルムがPVモジュール用のバックシートとして使用されている。TEDLAR(登録商標)は、ポリフッ化ビニルについてのデュポン(DuPont)の登録商標であり、PETはポリエチレンテレフタレートであり、EVAはエチレン−酢酸ビニルである。これらの多層材料は十分な機械的強度及びUV安定性を提供するが、防湿性は、太陽電池の長期耐久性には十分でない。アルミニウム箔は、防湿性を付与するために中央層として使用されるが、産業界では、バックシートの内側に導電層を配置することがバックシートの長期的な誘電特性を損なうおそれがあるのではないかと懸念している。
【0006】
酢酸ビニルモノマーから誘導された単位の含有量が高い(28〜35質量%)のEVAコポリマーは、一般的に、光起電力(PV)モジュールで使用するための封止材フィルムを製造するために使用されている。例えば、国際公開第95/22844号、第99/04971号、第99/05206号及び第2004/055908号を参照。EVA樹脂は、典型的には、紫外(UV)線吸収剤で安定化され、それらは典型的には、約80℃〜90℃の温度に対する耐熱性及び耐クリープ性を向上させるために、太陽電池積層プロセスの間に過酸化物を使用して架橋される。しかし、EVA樹脂は、いくつかの理由から、理想的なPVセル封止フィルム材料に至っていない。例えば、EVA樹脂は紫外線の影響下で化学的に分解するために、EVAフィルムは、強烈な太陽光で次第に暗くなる。この変色は、環境にわずか4年暴露後に太陽電池モジュールの出力が30%超低下することがある。EVA樹脂も水分を吸収し、分解されやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,521,825号明細書
【特許文献2】国際公開第95/22844号
【特許文献3】国際公開第99/04971号
【特許文献4】国際公開第99/05206号
【特許文献5】国際公開第2004/055908号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えばCuInGaSe(CIGS)多結晶薄膜光起電力セルなどの薄膜光起電力技術における最近の発展は、PVモジュールバックシートに由来する良好な防湿性も必要としている。CIGS PVモジュールに使用されるEVA層を有するバックシートは、「高温多湿試験」(上記規格に従って、85℃及び相対湿度(RH)85%で1000時間)に合格することに関して問題がある。そのため、封止材に対する良好な接着性、良好な電気絶縁性、機械的強度及び防湿性を有するバックシート材料がPV産業界で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施態様において、本発明は、共押出多層シートを含むバックシートであって、共押出多層シートが、i)ポリオレフィン樹脂を含む内層;ii)ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又はポリプロピレン樹脂/MAH−g−PP多層構造体、を含むコア層;iii)無水マレイン酸グラフト化ポリフッ化ビニリデン(MAH−g−PVDF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とMAH−g−PVDFのブレンド、又はPVDF/MAH−g−PVDF多層構造体、を含む外層;iv)コア層と外層の間に存在する第1のタイ層;及びv)コア層と内層の間に存在する任意選択的に用いられる第2のタイ層を含むバックシートである。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、光起電力セルと、共押出多層シートを含むバックシートとを含むリジッドな光起電力セルパネルであって、共押出多層シートが、i)ポリオレフィン樹脂を含む内層;ii)ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又はポリプロピレン樹脂/MAH−g−PP多層構造体、を含むコア層;iii)無水マレイン酸グラフト化ポリフッ化ビニリデン(MAH−g−PVDF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とMAH−g−PVDFのブレンド、又はPVDF/MAH−g−PVDF多層構造体、を含む外層;iv)コア層と外層の間に存在する第1のタイ層;及びv)コア層と内層の間に存在する任意選択的に用いられる第2のタイ層を含む、リジッドな光起電力セルパネルである。
【0011】
さらに別の実施態様において、本発明は、共押出多層シートを含むバックシートであって、共押出多層シートが、(1)PVDFとMAH−g−PVDFのブレンド、(2)MAH−g−PVDF、又は(3)PVDFの層とMAH−g−PVDFの層を含む二層構造体、を含む第1の層;(1)ポリプロピレン樹脂、(2)ポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又は(3)ポリプロピレン樹脂の層とMAH−g−PPの層を含む二層構造体、を含む第2の層;第1の層と第2の層の間に挟持され、かつ、第1の層及び第2の層と接触している第1のタイ層であって、エチレン−メタクリレート樹脂(EMA)、エチレン−グリシジルメタクリレート樹脂(E−GMA)もしくはエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレート樹脂(E−MA−GMA)のうちの少なくとも1つ、又は官能基、例えばグリシジルメタクリレート及びアミンなどを有するポリオレフィンを含む第1のタイ層を含み、(1)第1の層が二層構造体を含む場合には、MAH−g−PVDFの層は第1のタイ層と接触しており、(2)第2の層が二層構造体を含む場合には、MAH−g−PPの層は第1のタイ層と接触しているバックシートである。
【0012】
本発明は、バックシートの製造方法及び当該バックシートから製造される製品を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】図1aは本発明のバックシートの一実施態様の三層試験セグメントの概略図である。
【図1b】図1bは本発明のバックシートの一実施態様の三層試験セグメントの概略図である。
【図1c】図1cは本発明のバックシートの一実施態様の三層試験セグメントの概略図である。
【図2a】図2aは図1に示したセグメントから製造されたバックシートの概略図である。
【図2b】図2bは図1に示したセグメントから製造されたバックシートの概略図である。
【図2c】図2cは図1に示したセグメントから製造されたバックシートの概略図である。
【図3a】図3aは図2に示したバックシートの別の実施態様を示す。
【図3b】図3bは図2に示したバックシートの別の実施態様を示す。
【図3c】図3cは図2に示したバックシートの別の実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義:
本開示における数値範囲は、任意の小さい方の値と任意の大きい方の値との間が少なくとも2単位離れている場合、1単位きざみで、下限値及び上限値からの値及び下限値及び上限値を含む全ての値を含む。一例として、組成、物理的特性又は他の特性、例えば分子量、粘度、メルトインデックスなどが100〜1,000である場合に、100、101、102などの全ての個々の値と、サブ範囲、例えば、100〜144、155〜170、197〜200などが明示的に列挙されていることを意図する。1未満である値を含む範囲又は1よりも大きい小数を含む値(例えば1.1、1.5など)を含む範囲の場合、1単位は必要に応じて0.0001、0.001、0.01又は0.1である。10未満の一桁の数字を含む範囲(例えば1〜5)の場合、1単位は典型的には0.1であると見なされている。これらは、具体的に何を意図しているのかの例にすぎず、列挙した最低値と最高値の間の全ての可能な組み合わせが本開示に明示的に記載されているとみなされるべきである。数値範囲は、特に、メルトインデックス、分子量分布(Mw/Mn)、結晶化度(%)、コモノマーの百分率、コモノマー中の炭素原子の数について、本開示中に示されている。
【0015】
「組成物」及び類似の用語は、2種以上の材料の混合物を意味する。組成物には、反応前の混合物、反応混合物及び反応後の混合物が含まれ、反応後の混合物は、反応生成物及び副生成物と、反応混合物の未反応の成分、及びもしあるなら、反応前混合物又は反応混合物の1又は2種以上の成分から形成された分解生成物を含む。
【0016】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」及び類似の用語は、2種以上のポリマーの組成物を意味する。かかるブレンドは混和性であっても混和性でなくてもよい。かかるブレンドは相分離していても相分離していなくてもよい。かかるブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当該技術分野で知られている任意の他の方法により決定される、1又は2以上のドメイン構成を含んでいても含んでいなくてもよい。ブレンドは積層体でないが、積層体を構成する1又は2以上の層がブレンドを含むことができる。
【0017】
「ポリマー」は、同じ又は異なるタイプのモノマーを重合することによって製造された高分子化合物を意味する。従って、ポリマーという総称は、たった1種のモノマーから製造されたポリマーを指すために通常使用される用語ホモポリマーと、以下で定義する用語インターポリマーを包含する。
【0018】
「インターポリマー」は、少なくとも2種の異なるモノマーの重合により製造されたポリマーを意味する。この総称は、通常、2種の異なるモノマーから製造されたポリマーを指すために用いられるコポリマー、2種よりも多くの異なるモノマーから製造されたポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどを包含する。
【0019】
「オレフィン系ポリマー」、「ポリオレフィン」、「PO」及び類似の用語は、重合したオレフィンモノマー、例えばエチレン又はプロピレンに由来する単位を50モル%超(重合性モノマーの合計量に基づく)を含むポリマーを意味する。代表的なポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン及びそれらの様々なインターポリマーが挙げられる。本開示の文脈では、「オレフィン系ポリマー」及び類似の用語は、オレフィンマルチブロックインターポリマーを明示的に除く。
【0020】
「オレフィンマルチブロックインターポリマー」、「マルチブロックインターポリマー」、「マルチブロックコポリマー」、「セグメント化コポリマー」及び類似の用語は、好ましくは線状に連結された2つ以上の化学的に異なる領域又はセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダント又はグラフト化様式ではなく、むしろ、重合したエチレン性官能基に対してエンド・トゥー・エンド(end-to-end)で連結された化学的に区別される単位を含むポリマーを指す。好ましい一実施態様において、ブロックは、それに取り込まれたコモノマーの量又はタイプ、密度、結晶化度の量、かかる組成のポリマーに起因し得る結晶子サイズ、タクチシティー(アイソタクチック又はシンジオタクチック)のタイプ又は程度、位置規則性又は位置不規則性、分岐(長鎖分岐又は超分岐を含む)の量、均一性、あるいは任意の他の化学的又は物理的特性において異なる。逐次モノマー付加、流動性触媒又はアニオン重合法により製造されたコポリマーなどの従来技術のブロックコポリマーと比べて、本発明の実施において使用されるマルチブロックコポリマーは、好ましい実施形態においてその製造で使用される複数の触媒と併用されるシャトル剤(shuttling agent)(1種又は2種以上)の効果に起因する、両方のポリマーの多分散度(PDI又はMw/Mn又はMWD)、ブロック長分布、及び/又はブロック数分布の特異な分布により特徴づけられる。より具体的には、連続法で製造される場合、ポリマーは、望ましくは、1.7〜3.5、好ましくは1.8〜3、より好ましくは1.8〜2.5、最も好ましくは1.8〜2.2のPDIを有する。回分法又は半回分法で製造される場合、ポリマーは、望ましくは、1.0〜3.5、好ましくは1.3〜3、より好ましくは1.4〜2.5、最も好ましくは1.4〜2のPDIを有する。本開示の文脈において、「オレフィンマルチブロックインターポリマー」及び類似の用語は、オレフィン系ポリマーを明示的に除く。代表的なオレフィンマルチブロックインターポリマーとしては、商標INFUSE(登録商標)でザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)から販売されているオレフィンマルチブロックインターポリマーが挙げられる。
【0021】
「エチレンマルチブロックコポリマー」及び類似の用語は、エチレンと1又は2種以上の共重合性コモノマーから誘導された単位を含み、エチレンから誘導された単位がポリマー中の少なくとも1つのブロック又はセグメントの複数、好ましくはブロックの少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも95モル%、最も好ましくは少なくとも98モル%の重合したモノマー単位を含むマルチブロックコポリマーを意味する。全ポリマー質量を基準として、本発明の実施に使用されるエチレンマルチブロックコポリマーは、好ましくは25〜97%、より好ましくは40〜96%、さらに好ましくは55〜95%、最も好ましくは65〜85%のエチレン含量を有する。
【0022】
「エチレン系ポリマー」及び類似の用語は、50モル%超の重合したエチレンモノマー(重合性モノマーの合計量に基づく)を含むオレフィン系ポリマーを意味する。本開示の文脈において、エチレン系ポリマー及び類似の用語は、エチレンマルチブロックインターポリマーを明示的に除く。
【0023】
「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」及び類似の用語は、50モル%超の重合したエチレンモノマー(重合性モノマーの合計量に基づく)と少なくとも1種のα−オレフィンを含むオレフィン系インターポリマーを意味する。本開示の文脈において、エチレン/α−オレフィンインターポリマー及び類似の用語は、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーを明示的に除く。
【0024】
「ランダムエチレン/α−オレフィンインターポリマー」及び類似の用語は、ポリマーに関する当該技術分野でのそれらの使用と整合して本開示で使用し、それらの用語は、コモノマー(1又は2種以上)がポリマー鎖に沿ってランダムに分布しているエチレン系インターポリマーを意味する。本開示の文脈において、ランダムエチレン/α−オレフィンインターポリマー及び類似の用語は、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーを明示的に除く。
【0025】
「プロピレン系ポリマー」及び類似の用語は、50モル%超の重合したプロピレンモノマー(重合性モノマーの合計量に基づく)を含むオレフィン系ポリマーを意味する。本開示の文脈において、プロピレン系ポリマー及び類似の用語は、プロピレンマルチブロックインターポリマーを明示的に除く。
【0026】
「プロピレン/α−オレフィンインターポリマー」及び類似の用語は、50モル%超の重合したプロピレンモノマー(重合性モノマーの合計量に基づく)と少なくとも1種のα−オレフィンを含むインターポリマーを意味する。本開示の文脈において、プロピレン/α−オレフィンインターポリマー及び類似の用語は、プロピレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーを明示的に除く。
【0027】
用語「プロピレン/エチレンインターポリマー」及び類似の用語は、50モル%超の重合したプロピレンモノマー(重合性モノマーの合計量に基づく)を含むインターポリマーを意味し、当該インターポリマーの残りの部分は、少なくとも幾つか、例えば少なくとも1モル%の重合したエチレンモノマーを含む。この用語は、本明細書において、プロピレン/エチレンマルチブロックインターポリマーを指さない。
【0028】
「積層体(laminates)」、「積層(laminations)」及び類似の用語は、互いに密接に接触している2又は3つ以上の層、例えばフィルム層を意味する。積層体としては、コーティングを有する成形品が挙げられる。積層体はブレンドでないが、積層体を構成する1又は2以上の層がブレンドを含んでいてもよい。
【0029】
本発明のバックシートは、シングルステップ押出プロセスで製造される。バックシートは、少なくとも3つの主要な層を含み、これら主要な層の間にタイ層を有する。第1の主要な層、又は内層は、バックシートと電子デバイスの間の良好な接着を可能にする必要がある。第1の層は、典型的には、ポリプロピレンと、封止材層に使用される材料との間の良好な密着性を提供するポリオレフィンを含む。好適なポリオレフィンとしては、エチレンホモポリマー又はエチレンのコポリマー、特に不均一に分岐した線状エチレン系インターポリマー、及びエチレンマルチブロックコポリマーが挙げられる。
【0030】
不均一に分岐した線状エチレン系インターポリマーは、均一に分岐したエチレン系インターポリマーと、主にそれらのコモノマー分岐分布の点で異なる。例えば、不均一に分岐したインターポリマーは、ポリマー分子が同じエチレン対コモノマー比を持たないという分岐分布を有する。不均一に分岐したエチレン系インターポリマーは、典型的には、チーグラー/ナッタ触媒系を用いて製造される。これらの線状インターポリマーは、長鎖分岐(又は測定可能な量の長鎖分岐)を欠く。
【0031】
不均一に分岐したエチレン系インターポリマーとしては、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)及び超低密度ポリエチレン(ULDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。市販のポリマーとして、DOWLEX(登録商標)ポリマー、ATTANE(登録商標)ポリマー及びFLEXOMER(登録商標)ポリマー(全てザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)、並びにESCORENE(登録商標)及びEXCEED(登録商標)ポリマー(両方ともExxon Mobile製)が挙げられる。
【0032】
内層は、例えばグリシジルメタクリレート(GMA)、アミンなどの官能基を有するタイ層のポリマーと強い化学結合を形成することができる無水マレイン酸含有コポリマー又は無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含んでもよい。市販のポリマーとしては、BYNEL(登録商標)ポリマー(DuPont製)、無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニルポリマーが挙げられる。
【0033】
内層は、着色顔料(典型的には白色)を含んでもよい。好適な顔料はAMPACET(登録商標)11560白色顔料であり、内層の質量に基づいて約8%の量で添加することができる。他の任意成分としては、UV安定剤及び酸化防止剤、例えば0.6質量%のCYASORB(登録商標)UV 3853 PP5、0.3質量%のCYASORB(登録商標)THT 2001、0.2質量%のUVINAL(登録商標)5050H、0.1質量%のTINUVIN(登録商標)770、及び0.025質量%のIRGANOX(登録商標)1010(全ての百分率はポリオレフィン系樹脂の質量に基づく)が挙げられる。内層は、典型的には、約1ミル(25.4μm)〜約5ミル(127μm)の厚さを有する。
【0034】
第2の主要な層であるコア層は寸法安定性を提供する。第2の層は、典型的には、ポリプロピレン樹脂、若しくはポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又はポリプロピレン/MAH−g−PP多層構造体を含む。
【0035】
好適なプロピレン系ポリマーとしては、プロピレンホモポリマー、プロピレンインターポリマー、及び約1〜約20質量%のエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンコモノマーを含むことがあるポリプロピレンのリアクターコポリマー(RCPP)が挙げられる。ポリプロピレンホモポリマーは、アイソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックポリプロピレンであることができる。プロピレンインターポリマーは、ランダム若しくはブロックコポリマー又はプロピレン系ターポリマーであることができる。別の実施形態において、プロピレン系ポリマーは、核形成されたものであってもよい。「核形成」及び類似の用語は、造核剤、例えばMillad(登録商標)(Millikenから市販されているジベンゾイルソルビトール)などを添加することにより変性されたポリマーを指す。他の従来の造核剤を使用してもよい。
【0036】
プロピレンポリマーは、結晶性、半結晶性又はアモルファスのものであることができる。結晶性ポリプロピレンポリマーは、典型的には、その反復単位の少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%がプロピレンから誘導されたものである。
【0037】
プロピレンとの重合に好適なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、並びに4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキサン及びスチレンが挙げられる。好ましいコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが挙げられ、より好ましくはエチレンである。本明細書において、プロピレン系ポリマーのみに関して、プロピレン/オレフィンインターポリマーとして、具体的には、プロピレン/エチレンインターポリマーが挙げられる。
【0038】
必要に応じて、プロピレン系ポリマーは、好ましくはジエン又はトリエンである、少なくとも2つの二重結合を有するモノマーを含む。好適なジエン及びトリエンコモノマーとしては、7−メチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7,11−トリメチル−1,6,10−オクタトリエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,3−ブタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン又はそれらの混合物、好ましくはブタジエン、ヘキサジエン及びオクタジエン、最も好ましくは1,4−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が挙げられる。
【0039】
さらなる不飽和コモノマーとしては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン及びジシクロペンタジエン;C8〜40ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、o−、m−及びp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンなど;並びにハロゲン置換C8〜40ビニル芳香族化合物、例えばクロロスチレン及びフルオロスチレンなどが挙げられる。
【0040】
特に関心のあるプロピレンコポリマーとしては、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン、プロピレン/1−オクテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/ENB、プロピレン/エチレン/1−ヘキセン、プロピレン/エチレン/1−オクテン、プロピレン/スチレン及びプロピレン/エチレン/スチレンが挙げられる。
【0041】
好適なポリプロピレンは、例えばシングルサイト触媒(メタロセン又は拘束された幾何学的形状(constrained geometry))又はチーグラー・ナッタ触媒を使用して、当業者が備えている技能の範囲内の手段によって形成される。例えば、Galli他によりAngew. Macromol. Chem., Vol. 120, 73 (1984)に、又はE. P. Moore他によりPropylene Handbook, Hanser Publishers, New York, 1996、特に第11-98頁に開示されているように、プロピレンと任意選択的なコモノマー、例えばエチレン又はα−オレフィンモノマーを当業者の技能の範囲内の条件下で重合させる。
【0042】
以下は本発明の組成物に使用することができる例示であるが非限定的なポリプロピレンポリマーである:PROFAX(登録商標)SR−256M(0.90g/ccの密度及び2g/10分のメルトフローインデックスを有する透明ポリプロピレンコポリマー樹脂)、PROFAX(登録商標)8623(0.90g/ccの密度及び1.5g/10分のMFRを有する耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー樹脂)及びCATALLOY(登録商標)(ポリプロピレン(ホモ−又はコポリマー)と1又は2種以上のプロピレン−エチレン又はエチレン−プロピレンコポリマーとのリアクター内ブレンド、このブレンドは広範囲な密度及びMFRを有する)(これらは全てBasell(メリーランド州エルクトン)から入手可能);ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能な0.86〜0.89g/ccの範囲内の密度を有するプロピレン/エチレンコポリマーとして入手可能なVERSIFY(登録商標)プラストマー及びエラストマー;ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能な0.5dg/分(230℃/2.16kg)のメルトフローインデックスと164℃の融点を有するINSPIRE(登録商標)D114分岐耐衝撃性コポリマー。他のポリプロピレンポリマーとしては、ShellのKF 6100ホモポリマーポリプロピレン、SolvayのKS 4005ポリプロピレンコポリマー、及びSolvayのKS 300ポリプロピレンのターポリマーが挙げられる。
【0043】
MAH−g−PP樹脂の製造は当該技術分野でよく知られており、これらの樹脂は市販されている(例えば、ChemturaからPOLYBOND(登録商標)樹脂)。
【0044】
コア層は、着色顔料(典型的には白色)を含んでもよい。好適な顔料はAMPACET(登録商標)11343白色顔料であり、内層の質量に基づいて約8%の量で添加することができる。他の任意成分としては、UV安定剤、例えば0.6質量%のCYASORB(登録商標)UV 3853 PP5、0.3質量%のCYASORB(登録商標)THT 2001、0.2質量%のUVINAL(登録商標)5050H、0.1質量%のTINUVIN(登録商標)770、及び0.025質量%のIRGANOX(登録商標)1010(全ての百分率はポリオレフィン樹脂の質量に基づく)が挙げられる。コア層は、典型的には、約1ミル(25.4μm)〜約15ミル(381μm)、好ましくは約1ミル(25.4μm)〜約5ミル(127μm)の厚さを有する。
【0045】
第3の層又は外層は、耐候性、環境及び水蒸気からの保護性を提供する。この外層は、無水マレイン酸グラフト化ポリフッ化ビニリデン(MAH−g−PVDF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とMAH−g−PVDFのブレンド、又はPVDF/MAH−g−PVDF多層構造体を含むことができる。
【0046】
外層は、着色顔料(典型的には白色)を含んでもよい。好適な顔料はKynarFlex(登録商標)白色濃縮物(Chromatics製)であり、内層の質量に基づいて約10%の量で添加することができる。他の任意成分としては、UV安定剤及び酸化防止剤が挙げられる。外層は、典型的には、約1ミル(25.4μm)〜約5ミル(127μm)の厚さを有する。
【0047】
バックシートは、コア層と外層の間にタイ層と共押出しされる。タイ層は、コア層と内層(又は、一実施態様において内層が存在しない場合は封止材層)との間に存在しても。タイ層は、無水マレイン酸と反応することができるグリシジルメタクリレート(GMA)官能基を有するコポリマー又はターポリマーを含む。タイ層は、例えばグリシジルメタクリレート(GMA)、アミンなどの官能基により変性されたポリマーも含む。コポリマーは、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー(E−GMA)コポリマーを含む。ターポリマーは、エチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートターポリマー(E−MA−GMA)ターポリマーを含む。E−GMAコポリマー及びE−MA−GMAターポリマーも市販されている。好適なE−GMAコポリマーとしては、LOTADER AX8840エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマーが挙げられる。好適なE−MA−GMAターポリマーとしては、LOTADER AX8950エチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートターポリマーが挙げられる。
【0048】
タイ層がUV安定剤及び酸化防止剤、例えば0.6質量%のCYASORB(登録商標)UV 3853 PP5、0.3質量%のCYASORB(登録商標)THT 2001、0.2質量%のUVINAL(登録商標)5050H、0.1質量%のTINUVIN(登録商標)770、及び0.025質量%のIRGANOX(登録商標)1010(全ての百分率はポリオレフィン樹脂の質量に基づく)を含んでもよい。各タイ層は、典型的には、約0.05ミル(1.27μm)〜約2ミル(50.8μm)の厚さを有する。
【0049】
実施態様によっては、E−GMAに基づくタイ層が、無水マレイン酸(MAH)グラフト化ポリマーを含む主要な層とともに使用される。この実施態様によって、層間の結合が改善される。なぜなら、MAHがE−GMAと反応して強い化学結合を形成するからである。コストを抑えるために、MAHグラフト化ポリマーと非MAHグラフト化ポリマーとのブレンドを使用できる。図1aは、この実施態様のバックシートの断面図を示す。図1b及び図1cは、この実施態様の代替を示すもので、MAHグラフト化ポリマーの別個の層をタイ層に接触させることによりコストを抑えるために主要な層のうちの1又は2つが複数の層に分かれている。
【0050】
図2a、2b及び2cはそれぞれ、図1A、1B及び1Cに示したセグメントに基づくバックシート用の得られた構造体を示す。
【0051】
図2a、2b及び2cに示すバックシートの構造体は、図3a、3b及び3cに示すように、内層をなくし、内層を封止材フィルムと置き換えることによって、いくつかの実施形態においてさらに簡略化できる。封止材フィルムは、EVA又はシラン官能化ポリマー、例えばシラングラフト化オレフィンエラストマー又はシラングラフト化マルチブロックコポリマーなどであることができる。
【0052】
本発明の実施において有用なオレフィンマルチブロックインターポリマーに関しては、これらは、エチレンマルチブロックコポリマーは一般的にオレフィンマルチブロックインターポリマーの例示であることを理解した上でエチレンマルチブロックコポリマーの文脈中に記載されている。
【0053】
エチレンマルチブロックコポリマーは、2種の触媒を使用して製造されるもので、様々な量のコモノマーを含み、これらのコポリマーのブロックの質量比は95:5〜5:95である。エラストマーポリマーは、望ましくは、ポリマーの総質量に基づいて、20〜90%のエチレン含量、必要に応じて、0.1〜10%のジエン含量、及び10〜80%のオレフィン含量を有する。さらに好ましくは、この実施態様のマルチブロックエラストマーポリマーは、ポリマーの総質量に基づいて、60〜90のエチレン含量、0.1〜10%のジエン含量、及び10〜40のオレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、10,000〜約2,500,000、好ましくは20,000〜500,000、より好ましくは20,000〜350,000の質量平均分子量(Mw)、3.5未満より好ましくは3未満、約2程度の低い値の多分散度、及び1〜250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。より好ましくは、かかるポリマーは、65〜75%のエチレン含量、0〜6%のジエン含量、及び20〜35%のオレフィン含量を有する。
【0054】
本発明の実施に有用なエチレンマルチブロックコポリマーは、約0.90g/cc未満、好ましくは約0.89g/cc未満、より好ましくは約0.885g/cc未満、さらに好ましくは約0.88g/cc未満、よりいっそう好ましくは約0.875g/cc未満の密度を有する。エチレンマルチブロックコポリマーは、典型的には、約0.85g/ccより大きい、より好ましくは約0.86g/ccより大きい密度を有する。密度は、ASTM D−792の手順で測定される。低密度エチレンマルチブロックコポリマーは、一般的に、アモルファスで、可撓性で、良好な光学的特性、例えば高い可視光及び紫外線透過率及び低ヘイズ、を有することを特徴とする。
【0055】
本発明の実施に有用なエチレンマルチブロックコポリマーは、約125未満の融点を有する。融点は、国際公開第2005/090427号(米国特許出願公開第2006/0199930号)に記載されている示差走査熱量測定(DSC)法により測定される。低い融点を有するエチレンマルチブロックコポリマーは、往々にして、本発明のモジュールの製造に有用な望ましい可撓性及び熱可塑性を示す。
【0056】
本発明の実施に有用なエチレンマルチブロックコポリマー並びにそれらの製造及び使用は、米国特許第7,355,089号、国際公開第2005/090427号、米国特許出願公開第2006/0199931号、米国特許出願公開第2006/0199930号、米国特許出願公開第2006/0199914号、米国特許出願公開第2006/0199912号、米国特許出願公開第2006/0199911号、米国特許出願公開第2006/0199910号、米国特許出願公開第2006/0199908号、米国特許出願公開第2006/0199907号、米国特許出願公開第2006/0199906号、米国特許出願公開第2006/0199905号、米国特許出願公開第2006/0199897号、米国特許出願公開第2006/0199896号、米国特許出願公開第2006/0199887号、米国特許出願公開第2006/0199884号、米国特許出願公開第2006/0199872号、米国特許出願公開第2006/0199744号、米国特許出願公開第2006/0199030号、米国特許出願公開第2006/0199006号、及び米国特許出願公開第2006/0199983号により詳細に記載されている。
【0057】
多層バックシートは、当該技術分野でよく知られている共押出により形成される。多層フィルム製造技術は、The Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer, Third Edition, John Wiley & Sons, New York, 1981, Vol. 16, pp. 416-417及びVol. 18, pp. 191-192;Wilmer A. Jenkins及びJames P. HarringtonによるPackaging Foods With Plastics, (1991), pp. 19-27;Thomas I. Butlerによる"Coextrusion Basics", Film Extrusion Manual: Process, Materials, Properties,pp. 31-80(TAPPI Press により発行(1992));W.J. Schrenk及びC.R. Finchによる"Coextrusion For Barrier Packaging", Society of Plastics Engineers RETEC Proceedings, June 15-17 (1981), pp. 211-229;K.R. Osborn及びW.A. Jenkins;並びにPlastic Films, Technology and Packaging Applications (Technomic Publishing Co., Inc. (1992))に記載されており、これらの開示は引用により本明細書に援用する。
【0058】
製造後、本発明の多層フィルムを、当該技術分野でよく知られている方法及び手順を使用して延伸(オフライン又は連続操作で)することができる。フィルムを延伸するために、二軸延伸法、例えばテンターフレーム法、「トラップバブル(trapped bubble)」法及び「ダブルバブル(double bubble)」法を使用できる。好適な技術は、米国特許第3,456,044号(Pahlke)、米国特許第4,865,902号(Golike他)、米国特許第4,352,849号(Mueller)、米国特許第4,820,557号(Warren)、米国特許第4,927,708号(Herran他)、米国特許第4,963,419号(Lustig他)、米国特許第4,952,451号(Mueller)に記載されており、これらの開示は引用により本明細書に援用する。
【実施例】
【0059】
多層フィルムを共押出することによりバックシートを製造した。フィルムは、0.915の比重(ASTM D792により測定)及び3.2g/10分のメルトインデックス(I)(ASTM D1238により測定、条件190℃/2.16kg)を有するATTANE 4202 ULDPEの内層を有していた。フィルムは、ポリプロピレン(INSPIRE D118.01又はINSPIRE D118.02ポリプロピレン樹脂のいずれか、両方ともザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能)のコア層を有していた。実施例1は、ポリプロピレン樹脂(INSPIRE D118.01又はINSPIRE D118.02ポリプロピレン樹脂のいずれか)と次のUV安定剤及び酸化防止安定剤:0.6質量%のCYASORB UV 3853 PP5、0.3質量%のCYASORB THT 2001、0.2質量%のUVINAL 5050H、0.1質量%のTINUVIN 770、及び0.025質量%のIRGANOX 1010(全ての百分率はポリプロピレン樹脂の質量に基づく)を含む外層を有していた。実施例2は、KYNAR 710−PLT PVDF樹脂の外層を有していた。実施例3は、KYNAR 710−PLT PVDF樹脂とPLEXIGLAS HFI7−101ゴム変性PMMA樹脂の50:50ブレンドの外層を有していた。実施例4は、PLEXIGLAS HFI7−101ゴム変性PMMA樹脂の外層を有していた。実施例1〜4は全て、内層とコア層の間及びコア層と外層の間にタイ層を有し、タイ層はLOTRYL 24MA005エチルメチルアクリレート(EMA)樹脂(メチルアクリレート24%、MI 0.5g/10分)とLOTRYL 28MA07 EMA樹脂(メチルアクリレート、7g/10分(I))の50:50ブレンドであった。
【0060】
MADICO PHOTO−MARK TPEの基準層に対し、例1〜4を異なる封止材フィルムに積層した。2種の市販製品、MADICO PHOTO−MARK TPE及びISOVOLTA TPTを、比較のために同じように積層した。接着性の結果を表1に示す。外層がHDPEであることを除いて実施例1〜4と同じであるさらなる試験バックシートも積層試験で評価したがその結果は表1には示されていない。積層したバックシートを、収縮、粘着、離層、カール/巻付き、しわ、封入材に対する接着性、及び全体的な美観についても評価した。
【0061】
HDPE外層を有する試験フィルムは、140〜150℃に耐えず、テフロン(Teflon)(登録商標)カバーシートの圧痕が付いたという点で、積層プロセスで十分に機能しなかった。ゴム変性PMMA(PVDFとブレンドされていない)を有するバックシートは、カール量が大きく、テフロン(登録商標)カバーシートの圧痕が付いたため、積層試験で機能しなかった。PP、PVDF又はPVDF/ゴム変性PMMAブレンドに基づく外層を有するフィルムは、積層前と積層後でフィルムの外観が同じであり、美観、カール、表面テクスチャー、色又はサイズ(目に明らかな収縮がない)に目に明らかな変化はなかった点で、積層プロセスで十分に機能した。
【0062】
【表1】

【0063】
PVDFとPPの間の接着性を高めるPVDFとPPとの間の密着性を向上させるというコンセプトは、PVDF層及びPP層にMAH−グラフト化ポリマーを加えることであり、タイ層としてE−GMAを使用することで、MAH−グラフト化PVDFとE−GMAの間及びMAH-グラフト化PPとE−GMAの間に強い化学結合が生じる。MAHは、GMAと反応する。3つの多層フィルム(三層)(実施例5、6及び7)は、10インチ(25.4cm)のキャストライン上で製造した。層構造、加工条件及び層間接着性をそれぞれ表2、3及び4に示す。
【0064】
実施例6については、MAH−g−PVDF/E−GMA界面で剥離が始まった。E−GMAは、MAH−g−PDVFから剥離し、また、PPから徐々に剥離した。E−GMAは、変形し、分裂した。離層がE−GMA/PP界面で広がった。85℃で、MAH−g−PVDF/E−GMA界面で剥離が始まった。実施例7については、MAH−g−PVDF/E−GMA界面で剥離が始まった。E−GMAは、MAH−G−PVDFから剥離し、PPから剥離しなかった。E−GMA/PPは変形した。85℃で、MAH−g−PVDF/E−GMAの界面で剥離が始まった。同じメカニズムが観察された。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
本発明を、上記の説明と実施例によりかなり詳細に説明したが、この詳細は、説明のためであり、添付の特許請求の範囲に記載されているとおりの本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきでない。先に示した全ての米国特許、公開特許出願及び許可された特許出願は引用により本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共押出多層シートを含むバックシートであって、前記共押出多層シートが、
i)ポリオレフィン樹脂を含む内層;
ii)ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又はポリプロピレン樹脂/MAH−g−PP多層構造体、を含むコア層;
iii)無水マレイン酸グラフト化ポリフッ化ビニリデン(MAH−g−PVDF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とMAH−g−PVDFのブレンド、又はPVDF/MAH−g−PVDF多層構造体、を含む外層;
iv)前記コア層と前記外層の間に存在する第1のタイ層;及び
v)前記コア層と前記内層の間に存在する任意選択的に用いられる第2のタイ層;
を含むバックシート。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂が、不均一に分岐したエチレン系インターポリマー又は無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、請求項1に記載のバックシート。
【請求項3】
前記内層が、約1ミル(25.4μm)〜約5ミル(127μm)の厚さを有する、請求項1に記載のバックシート。
【請求項4】
1又は2以上の層がさらに顔料を含む、請求項1に記載のバックシート。
【請求項5】
1又は2以上の層がさらに少なくとも1種のUV安定剤又は酸化防止剤を含む、請求項1に記載のバックシート。
【請求項6】
前記コア層が約1ミル(25.4μm)〜約15ミル(381μm)の厚さを有する、請求項1に記載のバックシート。
【請求項7】
前記第1のタイ層が、エチレン−メタクリレート樹脂(EMA)、エチレン−グリシジルメタクリレート樹脂(E−GMA)又はエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレート樹脂(E−MA−GMA)のうちの少なくとも1つを含むエチレンコポリマーであるか、あるいは官能基、例えばグリシジルメタクリレート及びアミンなどを有するポリオレフィンである、請求項1に記載のバックシート。
【請求項8】
前記第1のタイ層及び/又は任意選択的に使用される第2のタイ層がそれぞれ約0.05ミル(1.27μm)〜2ミル(50.8μm)の厚さを有する、請求項1に記載のバックシート。
【請求項9】
前記第2のタイ層が存在する場合に、第2のタイ層はエチレン−メタクリレート樹脂(EMA)、エチレン−グリシジルメタクリレート樹脂(E−GMA)又はエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレート樹脂(E−MA−GMA)のうちの少なくとも1つを含むエチレンコポリマーであるか、あるいは官能基、例えばグリシジルメタクリレート及びアミンなどを有するポリオレフィンである、請求項1に記載のバックシート。
【請求項10】
光起電力セルと、共押出多層シートを含むバックシートとを含むリジッドな光起電力セルパネルであって、前記共押出多層シートが、
i)ポリオレフィン樹脂を含む内層;
ii)ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又はポリプロピレン樹脂/MAH−g−PP多層構造体、を含むコア層;
iii)無水マレイン酸グラフト化ポリフッ化ビニリデン(MAH−g−PVDF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とMAH−g−PVDFのブレンド、又はPVDF/MAH−g−PVDF多層構造体、を含む外層;
iv)前記コア層と前記外層の間に存在する第1のタイ層;及び
v)前記コア層と前記内層の間に存在する任意選択的に用いられる第2のタイ層;
を含む、リジッドな光起電力セルパネル。
【請求項11】
共押出多層シートを含むバックシートであって、前記共押出多層シートが、
(1)PVDFとMAH−g−PVDFのブレンド、(2)MAH−g−PVDF、又は(3)PVDFの層とMAH−g−PVDFの層を含む二層構造体、を含む第1の層;
(1)ポリプロピレン樹脂、(2)ポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又は(3)ポリプロピレン樹脂の層とMAH−g−PPの層を含む二層構造体、を含む第2の層;
前記第1の層と第2の層の間に挟持され、かつ、前記第1の層及び第2の層と接触している第1のタイ層であって、エチレン−メタクリレート樹脂(EMA)、エチレン−グリシジルメタクリレート樹脂(E−GMA)もしくはエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレート樹脂(E−MA−GMA)のうちの少なくとも1つ、又は官能基、例えばグリシジルメタクリレート及びアミンなどを有するポリオレフィンを含む第1のタイ層、
を含み、(1)第1の層が二層構造体を含む場合には、MAH−g−PVDFの層は第1のタイ層と接触しており、(2)第2の層が二層構造体を含む場合には、MAH−g−PPの層は第1のタイ層と接触している、バックシート。
【請求項12】
前記多層シートがさらに、
ポリオレフィン樹脂を含む第3の層;及び
前記第3の層と第2の層の間に挟持され、かつ、前記第3の層及び第2の層と接触している第2のタイ層であって、エチレン−メタクリレート樹脂(EMA)、エチレン−グリシジルメタクリレート樹脂(E−GMA)もしくはエチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレート樹脂(E−MA−GMA)のうちの少なくとも1つを含むエチレンコポリマーであるか、又は官能基、例えばグリシジルメタクリレート及びアミンなどを有するポリオレフィンである第2のタイ層、
を含む、請求項11に記載のバックシート。
【請求項13】
前記ポリオレフィン樹脂が不均一に分岐したエチレン系インターポリマー又は無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、請求項12に記載のバックシート。
【請求項14】
前記第1の層が約1ミル(25.4μm)〜約5ミル(127μm)の厚さを有する、請求項11に記載のバックシート。
【請求項15】
前記第2の層が約1ミル(25.4μm)〜約15ミル(381μm)の厚さを有する、請求項11に記載のバックシート。
【請求項16】
前記第1のタイ層が約0.05ミル(1.27μm)〜約2ミル(50.8μm)の厚さを有する、請求項11に記載のバックシート。
【請求項17】
前記シートがさらに第2の層に隣接しているか又は第3のタイ層により第2の層に取り付けられた封止材フィルムを含む、請求項11に記載のバックシート。
【請求項18】
前記封止材フィルムがシラン官能化樹脂を含む、請求項17に記載のバックシート。
【請求項19】
i)ポリオレフィン樹脂を含む内層;
ii)ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂と無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MAH−g−PP)のブレンド、又はポリプロピレン樹脂/MAH−g−PP多層構造体、を含むコア層;
iii)無水マレイン酸グラフト化ポリフッ化ビニリデン(MAH−g−PVDF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とMAH−g−PVDFのブレンド、又はPVDF/MAH−g−PVDF多層構造体、を含む外層;
iv)前記コア層と前記外層の間に存在する第1のタイ層;及び
v)前記コア層と前記内層の間に存在する任意選択的に用いられる第2のタイ層;
を有する多層フィルムを共押出することを含む、バッキングシートの製造方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公表番号】特表2013−504205(P2013−504205A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527958(P2012−527958)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047212
【国際公開番号】WO2011/028672
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】