説明

リソグラフィ装置及びリソグラフィ装置内のコンポーネントの冷却方法

【課題】リソグラフィ装置用に冷却システムを設けること。
【解決手段】リソグラフィ装置は、コンポーネントと、コンポーネントに局所冷却負荷を与える局所冷却器とを含む。局所冷却器は、コンポーネントの上流の流量制限器を含み且つ流量制限器から出るガスの流れを誘導してコンポーネントの表面を冷却するように構成されるガス通路、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、リソグラフィ装置及びリソグラフィ装置内のコンポーネントの冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが与えられる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。既知のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0003】
[0003] この機械は、例えば水のような屈折率が比較的高い液体が、投影システムの最終要素と基板との間の空間を満たしているものであってよい。ある実施形態では、液体は蒸留水であるが、他の液体も使用することができる。別の流体、特にウェッティング流体、非圧縮性流体及び/又は屈折率が空気より高い、望ましくは屈折率が水より高い流体が適切な場合もある。気体を除く流体が特に望ましい。そのポイントは、露光放射は液体中の方が波長が短いので、結像するフィーチャの小型化を可能にすることである。(液体の効果は、システムの有効開口数(NA)を大きくでき、焦点深さも大きくすることと見なすこともできる。)固体粒子(例えば石英)が懸濁している水、又はナノ粒子の懸濁(例えば最大10nmの最大寸法の粒子)がある液体などの、他の液浸液も提案されている。懸濁粒子は、これが懸濁している液体と同様の屈折率又は同じ屈折率を有しても、又は有さなくてもよい。適切になり得る他の液体としては、芳香族などの炭化水素、フルオロハイドロカーボン、及び/又は水溶液が挙げられる。
【0004】
[0004] 回路パターンの代わりに、パターニングデバイスを用いて、例えばカラーフィルタパターン、又はドットマトリックスなどの他のパターンを生成してもよい。従来のマスクの代わりに、パターニングデバイスは個別に制御可能な要素のアレイを含むパターニングアレイを備えて、回路又は他の適用可能なパターンを生成してもよい。従来のマスクベースのシステムに比べ、このような「マスクレス」システムの利点は、低コストで迅速にパターンの提供及び/又は変更ができることである。
【0005】
[0005] それ故、マスクレスシステムは、プログラマブルパターニングデバイス(例えば、空間光変調器、コントラストデバイスなど)を含む。プログラマブルパターニングデバイスは、個別に制御可能な要素のアレイを用いて所望のパターン付ビームを形成するように(例えば、電子的又は光学的に)プログラミングされる。プログラマブルパターニングデバイスのタイプとしては、マイクロミラーアレイ、液晶ディスプレイ(LCD)アレイ、グレーティングライトバルブアレイなどが含まれる。
【0006】
[0006] PCT特許出願公開WO2010/032224号及び米国特許出願公開US2011−0188016号(共に参照により全体を本明細書に組み込むものとする)に開示されるように、従来のマスクの代わりに、変調装置が、基板の露光エリアを所望のパターンに従って変調された複数のビームに露光するように構成されてもよい。投影システムは、変調されたビームを基板上に投影するように構成され、複数のビームを受けるためのレンズのアレイを備えてもよい。投影システムは、露光エリアの露光中に、変調装置に対してレンズのアレイを動かすように構成されてもよい。
【0007】
[0007] リソグラフィ装置は、極端紫外光(例えば、5〜20nmの波長を有する)を用いるEUV装置であってよい。
【発明の概要】
【0008】
[0008] リソグラフィ装置内の多くのコンポーネントは、それらに加えられる望ましくない熱負荷を持ち得る。この負荷は、投影ビームがコンポーネントに衝突した結果、又は電流が流れた結果などであり得る。このような局所加熱は、局所的な変形を引き起こし、それにより結像誤差を生じ得るため望ましくない。さらに、例えば、投影ビームが通過する投影システムのトッププレート(例えば、図4及び図5のミニ環境に関連する構造)の温度が一定ではない場合、これにより屈折率にばらつきが生じるか、又は所望の形状からの変形が生じる結果となり、そのため、結像誤差を引き起こす直接の原因となる。温度のばらつきが基板テーブル上である場合は、例えば、これが基板の変形を生じさせ、それにより結像誤差が起こり得る。
【0009】
[0009] リソグラフィ装置では、加えられた熱負荷の近傍の1つ又は複数のチャネルを流れる冷却液を使用することもできる。冷却媒体は、コンポーネントの設定温度よりも低い温度でコンポーネントに供給されてもよい。これにより、急速に冷却が行われる。しかし、問題は、コンポーネントへのコンジット内の冷却媒体の温度が低いことが、コンジットが通過するときに通る1つ又は複数のコンポーネントの温度に望ましくない影響をもたらし得ることである。さらに別のシステムでは、冷却媒体を設定温度で供給することができる。しかし、この構成では、コンポーネントが設定温度に到達するのはかなり困難である。追加的に又は代替的に、コンポーネントから出て行くコンジット内の冷却媒体の温度が設定温度より高く、これが1つ又は他のコンポーネント(例えば、コンジットが通過するときに通る1つ又は複数のコンポーネント)に有害な影響をもたらし得る。
【0010】
[00010] リソグラフィ装置用に冷却システムを設けることが望ましい。ある実施形態では、冷却媒体に関連する上記問題点の少なくとも1つを冷却システムによって対処している。
【0011】
[00011] 本発明の一態様によれば、コンポーネントと、局所冷却負荷をコンポーネントに適用するための局所冷却器とを備えるリソグラフィ装置であって、局所冷却器は、コンポーネントの上流の流量制限器を含み、流量制限器から出るガス流を誘導してコンポーネントの表面を冷却するように構成されるガス通路を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0012】
[00012] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置内のコンポーネントを冷却する方法であって、ガス通路を通してガスの流れを提供し、強制的にガスを流量制限器を通してガスを膨張させ冷却することと、膨張され冷却されたガスを誘導して、冷却対象のコンポーネントの表面を冷却することとを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[00013] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【図1】[00014]本発明のある実施形態によるリソグラフィ装置を示す。
【図2】[00015]局所冷却器のある実施形態を概略的に示す。
【図3】[00016]局所冷却器のある実施形態を概略的に示す。
【図4】[00017]内部ガス環境、及びパターニングデバイスのサポートの上側(z方向において)の第1及び第2の平面要素を示す。
【図5】[00018]内部ガス環境、及びサポートの下側(z方向において)の第1及び第2の平面要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[00019] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示したものである。この装置は、
− 放射ビームB(例えばUV放射又はDUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
− パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
− 基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
− パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ又は複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSとを備える。
【0015】
[00020] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁、静電型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでもよい。
【0016】
[00021] 支持構造はパターニングデバイスを保持する。支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。この支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電式等の冷却器ンプ技術を使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0017】
[00022] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0018】
[00023] パターニングデバイスは、透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0019】
[00024] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁光学システム及び静電型光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0020】
[00025] 本明細書で示すように、装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
【0021】
[00026] リソグラフィ装置は、2つ以上のテーブル(又はステージ若しくはサポート)、例えば、2つ以上の基板テーブル又は1つ又は複数の基板テーブルと1つ又は複数のセンサ若しくは測定テーブルの組合せを有するタイプであってもよい。このような「マルチステージ」機械では、追加のテーブルを並列に使用でき、あるいは1つ又は複数の他のテーブルを露光のために使用しながら、1つ又は複数のテーブル上で準備ステップを実行することができる。リソグラフィ装置は、基板、センサ及び測定テーブルと同様に並列に使用できる2つ以上のパターニングデバイス(又はステージ若しくはサポート)を有してもよい。
【0022】
[00027] また、リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部が例えば水などの屈折率が比較的高い液体によって、投影システムと基板との間の空間を満たすように覆われているタイプのものであってもよい。また、液浸液を、リソグラフィ装置内の別の空間、例えばマスクと投影システムとの間に適用してもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加するために当分野で周知である。本明細書中に「液浸」という用語が用いられる場合は、基板などの構造を液体中に浸すことを排他的に意味するのではなく、露光中に投影システムと基板との間、及び/又はマスクとの間にその液体を配置することもできる。これには基板などの構造を液体中に浸すことを含んでも、又は含まなくてもよい。参照符号のIMは液浸技術を実施するための装置が配置され得る箇所を示している。このような装置は、液浸液の供給システムと、液体を関心のある領域に封じ込めておくためのシール部材とを含んでもよい。任意選択的に、基板テーブルが液浸液によって完全に覆われるように、上記装置が配置されてもよい。
【0023】
[00028] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDを用いて、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の場合では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0024】
[00029] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。放射源SOと同様、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一部を形成すると考えてもよいし、又は考えなくてもよい。例えば、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一体化部分であってもよく、又はリソグラフィ装置とは別の構成要素であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置は、イルミネータILをその上に装着できるように構成することもできる。任意選択として、イルミネータILは着脱式であり、別に提供することもできる(例えば、リソグラフィ装置の製造業者又は別の供給業者によって)。
【0025】
[00030] 放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTは、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めできるように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、支持構造MTの移動は、第1のポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、支持構造MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、パターニングデバイスMA上に複数のダイを設ける状況では、パターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0026】
[00031] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードにおいては、支持構造MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードにおいては、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さの一部が決まる。
3.別のモードでは、支持構造MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用できる。
【0027】
[00032] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0028】
[00033] 図2は、ある実施形態による局所冷却器100を概略的に示す。局所冷却器100は、ジュールトムソン効果(Joule-Thomson effect)を使用する。ジュールトムソン効果は、実在気体の急激な膨張による温度変化を説明するものである。二酸化炭素及び窒素(及びそれ故言うまでもなく空気)などの多くの気体は膨張の間に温度低下する。ヘリウム及び水素などの他の気体は温度上昇する。ある実施形態では二酸化炭素が使用される。ある実施形態では、非常にクリーンな乾燥空気(すなわち、XCDAと呼ばれることもあるろ過され除湿された空気のことで、リソグラフィ装置では広く使用される)が使用される。
【0029】
[00034] 上記実施形態は、デバイスが冷却器として用いられることを仮定している。しかし、本発明のある実施形態は、ヒータにも同様に適用する(例えば、液浸液の蒸発により液浸装置内の基板が局所的に冷却されることがあるがそれを補償するため)。膨張の間に温度上昇する気体の例にはヘリウムがある。
【0030】
[00035] 従来の液体冷却器に比べ、この冷却器の利点は、冷却ガスをコンポーネント及び/又は装置全体の設定温度に近い温度で冷却対象のコンポーネント120へ及び冷却対象のコンポーネント120から供給できることである。さらに、冷却に使用された後のガスを装置内で再使用してもよい。ガスは、例えば、不要なガス及び/又は汚染物質を特定のエリア(例えば、マスク周りの環境、又は位置測定システムの放射ビームが通過するときに通るエリア)から追い出すためのパージ動作に再使用されてもよい。ガスは、ガスナイフ、非接触シール、又は乾燥ステーションの一部などとして再使用されてもよい。再使用には、例えば、投影システムの冷却に用いられる調節した冷却液及び/又はろ過による温度調節を必要とする場合がある。
【0031】
[00036] 図2に示すように、局所冷却器は、ガス通路110と、流量制限器115とを備える。ガスがガス通路110を流れ、流量制限器115を通ると、圧力降下が生じる。これにより、ガスの急激な膨張が起こり、ジュールトムソン効果によりガスの冷却が起こる。冷却されたガスは、次に冷却対象のコンポーネント120の表面を冷却するように誘導される。ある実施形態では、冷却したガスを冷却対象のコンポーネント120の表面の上を流れるように誘導することでこれが達成される。ある実施形態では、冷却対象のコンポーネント120の表面から熱を抽出するコンジットを冷却するために冷却したガスが用いられる。冷却したガスが、冷却対象のコンポーネント120の表面に直接又は間接的に接触することによって冷却を行ってもよい。
【0032】
[00037] ある実施形態では、局所冷却器は、対応する流量制限器115を備える2つ以上の通路110を備える。各通路110の膨張したガスを、冷却対象のコンポーネント120の表面の異なるエリアへ誘導してもよい。このようにして、局所冷却負荷を異なる箇所に適用することができ、コンポーネント120の表面全体を適切な制御下で等温に維持することができる。
【0033】
[00038] ある実施形態では、2つ以上の流量制限器115が通路110に設けられる。コンポーネント120の表面に接触するガスが、その表面によって温度上昇されることで、流量制限器115に最も近い冷却負荷が、流量制限器115から遠いものよりも大きくなる。これを補償するため、且つ、より均一な冷却負荷が大きな表面に加わるようにするために、2つ以上の流量制限器115が直列に設けられ、それによってガスが少なくとも2回膨張し、従って2回冷却される。これが図2に第2の流量制限器115Aとして点線で示されている。任意の数の流量制限器115、115Aをガス通路110に直列に設けてもよい。
【0034】
[00039] 流量制限器115、115A上のガスの圧力降下を制御することで、局所冷却負荷の大きさを制御するように冷却コントローラ130が設けられる。図2の実施形態では、流量制限器115、115Aは可変流量制限器である。冷却コントローラ130は、流量制限器の大きさ(例えば、ガスが通過するスリット又は孔のサイズ)を制御し、それによって圧力降下の大きさを制御するように構成される。
【0035】
[00040] 冷却コントローラ130は、圧力降下の大きさ(例えば、流量制限器115、115Aのサイズ)を任意の方法で制御することができる。ある実施形態では、冷却コントローラ130が、フィードフォワード方式(コントローラが、冷却されるコンポーネント120の表面に加わる熱負荷を予想するための情報を有して、次の温度上昇を予測することができる方式)で動作する。
【0036】
[00041] ある実施形態では、図2に示すように、冷却コントローラ130がフィードバック方式で圧力降下を制御する。ある実施形態では、(表面)温度センサ140で検知したコンポーネント120の温度(例えば、表面)に基づいて制御が行われる。それ故、コンポーネント120の表面の温度が特定の(例えば、所定の)値を超えて上昇すると、コントローラ130が、圧力降下を(例えば、流量制限器のサイズを小さくすることによって)を増加し、それによって局所冷却負荷の大きさを増大させる。反対に、コンポーネント120の表面温度の上昇が、より低い冷却負荷が望ましいようなものであれば、コントローラ130が流量制限器115、115Aのサイズを大きくすることによって、圧力降下を減少させ、それによって、局所冷却負荷の大きさを低減することができる。
【0037】
[00042] 図2の実施形態では、実質的に一定の流量のガスを通路110に沿って提供する質量流量コントローラ150が設けられる。質量流量コントローラ150(ポンプ151を組み込むこともある)は、特定の、例えば所定の流量のガスを通路110を通して供給するように構成される。コントローラ130が、可変流量制限器115の調製のみによって冷却負荷の大きさを制御する。図3を参照して説明するが、ある実施形態では質量流量コントローラ150が、コントローラ130からガスの流量の大きさを調整するように指示を受けてもよい。流量制限器115、115Aの上流側の圧力を変化させることによって、流量制限器115、115A上の圧力降下の大きさを変化させることができる。さらに、質量流量が高くなると、熱伝達係数が高くなり、ガス流の熱容量が増大する。
【0038】
[00043] 上記のように、ガスは二酸化炭素、又はXCDA、又は窒素であってもよく、ガス源160から供給される。通路の端部のガスが、冷却されるコンポーネント120の表面の下流のアウトレット170に到達する。ある実施形態では、ガスハンドリングシステム180はアウトレット170に接続される。ガスハンドリングシステム180は、通路110からのガスを使用してもよい。この使用は、冷却以外の目的であってもよい。ガスの使用の例には、(例えば、マイクロ環境から、又は測定システムの測定ビームが通過するときに通る空間から)不要なガス及び/又は微粒子の空間をパージするための使用、2つの表面間の非接触シールを形成するための使用、及び/又は湿った表面を乾燥するための使用が含まれる。
【0039】
[00044] ある実施形態では、アウトレット170を出るガスが、ガス源160へ再循環される。ある実施形態では、アウトレット170を出るガスは、リソグラフィ装置が配置されている環境へ入るようにされる。アウトレット170がリソグラフィ装置の外側の排気システムへ接続されてもよい。
【0040】
[00045] 流量制限器115、115Aの上流に熱交換器190を設けてもよい。熱交換器190は、液体を熱媒体などとして使用してもよい。熱交換器190は、ガスの温度を装置の基準温度に充分近い温度にし、それによって、通路110を形成する1つ又は複数のコンジットをコンポーネント及び/又は装置全体の基準温度に近い温度にする。
【0041】
[00046] コンポーネント120(例えば、コンポーネント120の表面)の下流のガス通路110内のガスの温度を測定するために、下流温度センサ200が設けられる。冷却コントローラ130は、下流温度センサ200によって測定される温度を監視することができる。この温度を、制御ループにおいて用いることができる。例えば、冷却コントローラ130は、下流温度センサ200によって(例えば、フィードバック方式において)測定された温度に基づいて圧力降下を調整するように構成してもよい。代替的に又は追加的に、下流温度センサ200によって測定された温度を、コンポーネント120の下流のガスがコンポーネント及び/又は装置全体の設定温度に確実に近づけるための助けとして使用してもよい。
【0042】
[00047] ある実施形態では、流量制限器115、115Aの上流の通路110内のガスの圧力を測定するために、圧力センサ210が設けられる。圧力センサ210の出力は、リミットコントローラ(冷却コントローラ130の一部であり得る)に供給されてもよい。圧力センサ210によって測定された圧力が特定の値を超えるときに、リミットコントローラが流量制限器115、115Aの上流の通路110内のガスの圧力を制限してもよい。例えば、リミットコントローラは、流量制限器115、115Aのサイズを制御し、及び/又は質量流量コントローラ150に通路110内のガスの質量流量を低減するように指示し、及び/又は圧力調整器を動作させて(又は圧力調整器となって)流量制限器の上流の通路110内のガスの圧力を調整する。ある実施形態では、冷却コントローラ130が圧力調整器の圧力を調整し、それによって、流量制限器115、115A上の圧力降下を制御してもよい。
【0043】
[00048] ある実施形態では、冷却コントローラ130が、圧力センサ210によって測定された圧力に少なくとも部分的に基づいて、質量流量コントローラ150及び/又は流量制限器115、115Aを制御してもよい。
【0044】
[00049] 図2に示すように、質量流量コントローラ150が冷却コントローラ130に信号を送信してもよい。その信号は、例えば、システムの限界に関連するものであってもよく、最大質量流量に到達したことに関する情報、又は質量流量コントローラ150が特定のポイントを超えて(例えば、流速を超えて)質量流量を増加することができないという情報などである。代替的に又は追加的に、最大の圧力降下を達成したときに質量流量を増加し、冷却力をさらに増大することができる。冷却コントローラ130が、センサ140、200、210の1つ又は複数からのフィードバックを使用し、ストラテジーを変更したり、限界に到達したシステムの使用者へフィードバックを提供したりすることができる。
【0045】
[00050] 図3はさらに別の実施形態を示す。図3の実施形態は図2の実施形態と同様であるが、以下に説明する部分が異なる。
【0046】
[00051] 図3の実施形態では、冷却コントローラ130が質量流量コントローラ150を制御する。質量流量コントローラ150を調整することで、通路110を通るガスの流量を変化させ、流量制限器115、115Aの圧力降下を少なくとも部分的に変化させる。このような実施形態では、流量制限器115、115Aが可変流量制限器であってもよい(冷却コントローラ130が質量流量と流量制限器のサイズの両方を変化させることによって、圧力降下を変化させることができる)。ある実施形態では、流量制限器115、115Aが固定制限器であってもよく、その場合、通路110を通過する質量流量を変化させることのみによって圧力降下が制御される。
【0047】
[00052] 流量制限器115、115Aの上流の圧力調整器を用いて、流量制限器115、115Aの上流のガス通路110内の圧力を変化させてもよい。圧力調整器の設定を変化させることによって、流量制限器115、115A上の圧力降下を変化させることができる。
【0048】
[00053] 冷却システムは非常にフレキシブルであり、比較的に簡単な制御を有し、設定温度から乖離する温度の冷却媒体流を伴わない。熱慣性に問題がある液体ベース閉鎖ループの冷却システムに比べて、システムの応答時間が優れている。すなわち、ガスに比べて液体は熱容量が高いため、液体を加熱する(エネルギーを抽出するための)間のタイムラグが大きい
【0049】
[00054] 冷却システムは、液体ベースの冷却システムが必要とするような温度調節設定を必要としなくてもよい。しかし、液体ベースの冷却システムは、上記冷却システムよりも多くの熱エネルギーを抽出し得る。ある実施形態では、再循環させるガスのための戻り通路を必要としなくてもよい。これによってホース束のホースの数を低減することができる。これは、使用される容積及び剛性、及び動的性能の問題の観点から有益である。
【0050】
[00055] 上記のように、ガスをコンポーネント120の表面を冷却するために使用した後、そのガスを効率的な方法で他の問題を解決するために用いることができる。
【0051】
[00056] さらに、リソグラフィ装置内に液体があるのは一般に望ましくない。特定のエリアにおいては、液体の存在は避けなければならない。他のエリアでも、ガスの漏れはそれほど問題にならないが、液体の漏れは問題を起こし得る。
【0052】
[00057] 次に示すのは、寸法が1×200×300mm、ガス流の速度が10m/s未満、及び流量が毎分100ノルマルリットル(周囲圧力及び0℃)のときにレイノルズ数が2200未満、XCDAの場合に熱伝達係数約100W/mKを達成し、COの場合に熱伝達係数約65W/mKを達成する、通路110を備える冷却システムである。二酸化炭素及び空気に関するデータによると、22℃のときに、COに関するジュールトムソン係数が約1.080K/バールであり、XCDAに関するジュールトムソン係数が約0.237K/バールであることが示されている。これは、約4バールの圧力降下を伴う上記エリア(1×0.2m×0.3m)内の熱移動の結果、熱移動エリアの平均熱移動はXCDAの場合約50W/m、COの場合約130W/mになる。制限要因は、ガス流量の熱容量であり、従ってXCDAのガス流量の冷却力は約2.2Wであり、COの場合は、約11Wである。
【0053】
[00058] 上記は、冷却システムによって抽出される熱の量がそれほど大きくないことを示すが、これがリソグラフィ装置内の特定のコンポーネント、特に上記ホースのための冷却に有用な量である。
【0054】
[00059] 冷却システム100をリソグラフィ装置の任意のコンポーネントを冷却するために用いてもよい。例としては、基板テーブルWTの一部、例えば基板テーブルWTのアクチュエータ、特に、直径(又は同等寸法)が450mm又は300mmの基板Wと共に使用するようになされた基板テーブルWTのためのアクチュエータが挙げられる。本発明は、基板のサイズ/形状に限定されない。より大きい基板W用の基板テーブルWTは、基板Wの表面を平坦化するために1つ又は複数の操作部を含んでもよく、この操作部のサイズは、内部を流れる電流によって加えられる熱負荷が上記冷却システムによって抽出されるように充分低くなるような大きさであってよい。例えば、基板Wのための基板サポートの下側から、局所的に基板を冷却するために、冷却システムを使用することができる。冷却システムは、トッププレートを含む投影システムPSのコンポーネントを冷却するために使用してもよい。
【0055】
[00060] 冷却システム100は、リソグラフィ装置のセンサ又はテーブル(位置)エンコーダなどのコンポーネントを冷却するために使用することができる。冷却システム100は、パターニングアレイ又は変調装置を用いて投影ビームをパターニングするためのリソグラフィ装置又はEUVリソグラフィ装置のコンポーネント(例えば、変調装置から複数のビームを受けるためのレンズのアレイ)を冷却するために使用することができる。ガスをコンポーネントへ(及びから)供給するために用いられる1つ又は複数のコンジットは、コンポーネントの上流に設けられる流量制限器115に対してフレキシブルであってもよい。
【0056】
[00061] 冷却システム100は、図4及び図5を参照して以下に説明するトッププレートを冷却するために使用することもできる。トッププレートは、支持構造MTのモータ及び/又は投影ビームPB及び/又はレチクル基準(測定中にレーザによって加熱され、その後、熱をトッププレートに放射する)によって局所的に加熱されてもよい。
【0057】
[00062] リソグラフィ投影装置では、パターニングデバイスMAの領域内に制御された内部ガス環境を維持することが望ましい。パターニングデバイスの領域内の内部ガス環境は、汚染物質及び/又は放射ビーム及び/又はパターニングデバイスの感応性要素を妨害する可変特性を有する空気を避けるように制御されてもよい。内部ガス環境は、通常は、外の領域とは実質的に隔離されるが、完全にシールされることはない。内部ガス環境へのアウトレットを有するガス供給システムが設けられ、内部ガス環境の中を過圧力に維持するように構成される。過圧力は、内部ガス環境からのガスの流れ(例えば、実質的に一定の流れ)を駆動する。即ち、その環境をパージする働きをする。ガスの流出は汚染物質の流入を防止するのに役立つ。ガスの流出が、漏出シールを通して、例えば、対面する流量制限面を通して運ばれてもよい。さらに、測定システムの1つ又は複数のエンコーダ及び/又は干渉計のビームが通過する通路は、汚染物質が無く、1つ又は複数の実質的に一定の特性を有することが望ましい。
【0058】
[00063] 図4は、サポートMT上の領域において、内部ガス環境4の制御をどのように達成することができるかを示す実施形態を示している。この例では、内部ガス環境4は、片側のパターニングデバイスMA及びサポートMTと、反対側の照明システムILの最終要素(及びハードウェアを囲む)2との間に位置する。図示された内部ガス環境4は、従って放射ビームがパターニングデバイスMAに到達する前に通過する容積である。
【0059】
[00064] 図4及び図5の例では、アウトレット7を介して内部ガス環境4にガスを供給するためのガス供給システム5が設けられる。ガスは、制御された組成及び/又は制御された流量を有して供給されてもよい。冷却システムのアウトレット170からガスが供給されてもよい。任意選択的に、内部ガス環境4内では過圧力が維持される。過圧力の結果、矢印6によって概略的に示されるようにガスが流出する。ガス供給システム5及び/又はアウトレット7は、パターニングデバイスサポートMT(図に示すように)の上又は内部に、及び/又はパターニングデバイスサポートMTの上及び/又は下の要素の上又は内部に装着されてもよい。例えば、ガス供給システム5及び/又はアウトレット7は、照明システムILの最終要素2の上又は内部に装着してもよい。代替的に又は追加的に、ガス供給システム5及び/又はアウトレット7は投影システムPSの第1の要素3の上又は内部に装着してもよい。
【0060】
[00065] 流量/速度の空間分布は、図4に示すように、第1及び第2の平面要素8A、10Aによって制御することができる。第1の平面要素8Aは、例えば、第1の流量制限面8Bを示す。第2の平面要素10Aは、例えば、第2の流量制限面10Bを示す。
【0061】
[00066] 図4の流量制限面8B、10Bは、互いに向かい合っており、それらの間のギャップを通るガスの流入及び流出を制限するように構成される。ガスの流入に抵抗することは、内部ガス環境4の汚染を低減するのに役立つ。ガスの流出に抵抗することは、ガス供給システム5が内部ガス環境4の安定的な過圧力を維持するのに役立つ。また、流量制限面8B、10Bは、流出するガスが通過するための比較的小さいギャップを示す。この結果、流出するガスの速度が増加する。この速度の増加が、汚染物質の内側への拡散に抵抗する。また、流出速度が高くなると、以下の理由で有益であり得る。例えば、パターニングデバイスサポートMTがYに沿って第1の方向に移動するときは、その後流に低圧力領域が生成され、そこに環境ガス(例えば、空気)が充填されやすくなる。この環境ガスは、内部ガス環境への侵入を阻止することが望ましいものである。次にパターニングデバイスサポートMTが反対方向にスキャンバックするときは、内部ガス環境への環境ガスの著しい流入を完全に阻止するために出力速度が少なくともパターニングデバイスサポートMTのスキャン速度よりも速いこと(望ましくはスキャン速度に、環境ガスが低圧力領域に流入する最大速度を加算した速度であること)が望ましい。
【0062】
[00067] 図5は、図4の配置に相当する配置を示すもので、内部ガス環境4がパターニングデバイスMAの下に位置していることが異なる。図示された内部ガス環境4は、従って、放射ビームがパターニングデバイスMAに遭遇した後に通過する容積である。内部ガス環境4は、片側のサポートMT及びパターニングデバイスMAと、反対側の投影システムPSの第1の要素(及び周囲のハードウェア)3(例えば、上記冷却システムによって冷却してもよい(少なくとも部分的に透明の)トッププレート)とによって封じ込められる。サポートMTは、この例では、その下側部分に形成された第1の平面要素9Aを備える。第1の平面要素9Aは、第1の流量制限面9Bを有する。投影システムPSの第1の要素はその上側表面に取り付けられた第2の平面要素11Aを有する。第2の平面要素11Aは、第2の流量制限面11Bを有する。第2の流量制限面11Bは第1の流量制限面9Bに対面するように構成される。
【0063】
[00068] 図4の配置及び図5の配置の両方において、矢印6は、ガス供給システム5のアウトレット7から、内部ガス環境4の中央領域を通り、流量制限面8B、9B、10B、11Bの間のギャップを通り、内部ガス環境4の外側の領域に達する、ガスの流れを概略的に示す。
【0064】
[00069] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの他の用途もあることを理解されたい。このような代替的用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には理解される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に付加し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に1つ又は複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0065】
[00070] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組合せを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0066】
[00071] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射(例えば、436nm、405nm、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)並びにイオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームを含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0067】
[00072] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明の実施形態は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとってもよい。さらに、機械読み取り式命令は、2つ以上のコンピュータプログラムで実施してもよい。2つ以上のコンピュータプログラムを、1つ又は複数の異なるメモリ及び/又はデータ記憶媒体に記憶してもよい。
【0068】
[00073] 本発明は、直径が300mm又は450mm又はその他の任意のサイズの基板に適用することもできる。
【0069】
[00074] 1つ又は複数のコンピュータプログラムがリソグラフィ装置の少なくとも1つのコンポーネント内にある1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって読み出されるときに、本明細書に記載するコントローラは各々、又は組み合わせて動作可能になる。コントローラは各々、又は組み合わせて、信号を受信、処理、送信するのに適した任意の構成を有する。1つ又は複数のプロセッサは、コントローラの少なくとも1つと通信するように構成されている。例えば、各コントローラは、上記方法のための機械読み取り式命令を含むコンピュータプログラムを実行する1つ又は複数のプロセッサを含むことができる。コントローラは、そのようなコンピュータプログラムを記憶するデータ記憶媒体及び/又はそのような媒体を収容するハードウェアを含むことができる。したがって、コントローラは、1つ又は複数のコンピュータプログラムの機械読み取り式命令に従って動作することができる。
【0070】
[00075] 本発明の1つ又は複数の実施形態は、液浸液が槽の形態で提供されるか、基板の局所的な表面領域のみに提供されるか、又は閉じ込められないかにかかわらず、任意の液浸リソグラフィ装置に適用することができる。閉じ込められない構成では、液浸液は基板及び/又は基板テーブルの表面上に流れることができ、したがって実質的に基板テーブル及び/又は基板の覆われていない表面全体が濡れる。このように閉じ込められていない液浸システムでは、液体供給システムが液浸液を閉じ込めることができないか、又はある割合の液浸液閉じ込めを提供することができるが、実質的に液浸液の閉じ込めを完成しない。
【0071】
[00076] ある実施形態では、リソグラフィ装置は、投影システムの露光側に位置する2つ以上のテーブルを備え、各テーブルが1つ又は複数のオブジェクトを備え、及び/又は保持する多段装置である。ある実施形態では、1つ又は複数のテーブルは放射感応性基板である。ある実施形態では、1つ又は複数のテーブルは、投影システムからの放射を測定するセンサを保持してもよい。ある実施形態では、多段装置は放射感応性基板を保持するように構成された第1のテーブル(すなわち、基板テーブル)と、放射感応性基板を保持するように構成されていない第2のテーブル(以下では限定的にではなく一般に測定及び/又は洗浄テーブルと呼ばれる)とを備えている。第2のテーブルは、放射感応性基板以外の1つ又は複数のオブジェクトを備え、及び/又はこれを保持してもよい。このような1つ又は複数のオブジェクトは以下から選択された1つ又は複数のオブジェクト、すなわち投影システムからの放射を測定するセンサ、1つ又は複数のアライメントマーク、及び/又は(例えば液体閉じ込め構造を洗浄するための)洗浄デバイスを含んでもよい。
【0072】
[00077] ある実施形態では、リソグラフィ装置は装置のコンポーネントの位置、速度などを測定するエンコーダシステムを備えていてもよい。ある実施形態では、コンポーネントは基板テーブルを備えている。ある実施形態では、コンポーネントは測定及び/又は洗浄テーブルを備えている。エンコーダシステムは本明細書に記載のテーブル用の干渉計システムの追加、又はその代替であってもよい。エンコーダシステムは、センサ、トランスデューサ、又は目盛又はグリッドを有する例えば1対の関連する読み取りヘッドを備えている。1つ又は複数のセンサ、トランスデューサ、又は読み取りヘッドは、1つ又は複数の目盛又は1つ又は複数のグリッドと連係してコンポーネントの位置、速度などを判定する。ある実施形態では、コンポーネントがそれに対して移動するリソグラフィ装置のフレームは1つ又は複数の目盛又はグリッドを有し、可動コンポーネント(例えば基板テーブル及び/又は測定及び/又は洗浄テーブル)は1つ又は複数の目盛又は1つ又は複数のグリッドと連係してコンポーネントの位置、速度などを判定する1つ又は複数のセンサ、トランスデューサ、又は読み取りヘッドを有している。
【0073】
[00078] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁及び静電型光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ又はその組合せを指すことができる。
【0074】
[00079] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポーネントと、
局所冷却負荷を前記コンポーネントに与える局所冷却器と
を備え、
前記局所冷却器は、前記コンポーネントの上流の流量制限器を含み且つ該流量制限器から出るガス流を誘導して前記コンポーネントの表面を冷却するように構成されたガス通路、を備える、
リソグラフィ装置。
【請求項2】
前記ガス通路は、前記コンポーネントの下流のアウトレットをさらに備える、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項3】
ガスハンドリングシステムが、前記アウトレットに接続され、前記通路からガスを主に冷却剤以外の目的で使用するように構成される、請求項2に記載のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記ガスハンドリングシステムは、前記通路からの前記ガスを使用して、不要なガス又は汚染物質の空間をパージするように、あるいは2つの表面間の非接触シールを形成するように、あるいは湿った表面を乾燥するように構成される、請求項3に記載のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記局所冷却器は、前記流量制限器上のガスの圧力降下を制御して、それにより前記コンポーネント上の前記局所冷却負荷の大きさを制御する冷却コントローラをさらに備える、請求項1〜4のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記流量制限器は可変流量制限器であり、前記冷却コントローラは、前記流量制限器のサイズを制御して、前記圧力降下の大きさを制御するように構成される、請求項5に記載のリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記通路を通して特定の流量のガスを提供するように構成された質量流量コントローラをさらに備える、請求項5又は6に記載のリソグラフィ装置。
【請求項8】
前記質量流量コントローラは、ガスの前記流量を実質的に一定の大きさで維持するように構成される、あるいは前記冷却コントローラは、前記質量流量コントローラを制御し、ガスの前記流量の大きさを調整して、前記圧力降下の大きさを調整するように構成される、請求項7に記載のリソグラフィ装置。
【請求項9】
(i)前記流量制限器の上流の前記通路内のガスの圧力を調整する圧力調整器、
(ii)前記コンポーネントの温度を検知する温度センサ、
(iii)前記コンポーネントの下流の前記通路内のガスの温度を測定する下流温度センサ、
(iv)前記流量制限器の上流の前記通路内のガスの圧力を測定する圧力センサ、
(v)前記流量制限器の上流の前記通路内のガスを特定の温度に維持する熱交換器、及び
(vi)上記任意の組合せ
のうち少なくとも1つをさらに備える、請求項5〜8のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項10】
前記冷却コントローラは、
(i)前記圧力調整器の圧力設定を変更し、それによって前記流量制限器上の前記圧力降下を変更すること、
(ii)前記温度センサによって検知された前記温度に基づくフィードバック方式において前記圧力降下を調整すること、
(iii)前記下流温度センサによって測定された前記温度に基づいて前記圧力降下を調整すること、及び
(iv)上記の任意の組合せ
のうち少なくとも1つを行うように構成される、請求項9に記載のリソグラフィ装置。
【請求項11】
前記圧力センサによって測定された圧力が特定の値を超えるときに、前記流量制限器の上流の前記通路内のガスの圧力を制限するように構成されたリミットコントローラをさらに備える、請求項9又は10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項12】
前記コンポーネントは、(i)基板を支持する基板テーブル、(ii)投影システム、又は(iii)投影システムトッププレート、の一部である、請求項1〜11のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項13】
前記流量制限器の下流から前記装置へガスを放出するように構成された、請求項1〜12のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項14】
リソグラフィ装置内のコンポーネントを冷却する方法であって、
ガス通路を通してガスの流れを提供して、強制的に該ガスを流量制限器を通して該ガスを膨張させ冷却することと、
前記膨張され冷却されたガスを誘導して、冷却対象の前記コンポーネントの表面を冷却することと
を含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−84934(P2013−84934A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−206553(P2012−206553)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】