説明

リソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップ及びその製造

本発明は、リソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップを製造する方法に関するものであって、前記アルミニウムストリップは、圧延インゴットから製造され、場合により実施する均熱処理の後で、厚さ2mm〜7mmまで熱間圧延され、そして、最終厚さ0.15mm〜0.5mmまで冷間圧延される。更に、本発明は、相当して製造された厚さ0.15mm〜0.5mmを有するアルミニウムストリップと、本発明によるアルミニウムストリップから製造される印刷プレート支持体とに関する。リソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップを製造する方法を提供する目的は、アルミニウムストリップが、以下の合金成分(重量%で表示):0.3%<Fe<0.4%、0.2%<Mg<1.0%、0.05%<Si<0.25%、Mn<0.1%、場合によりMn<0.05%、Cu<0.04%、残余アルミニウム及び不可避の不純物(それぞれ最大で0.05%、合計最大で0.15%)を有するアルミニウム合金を含むこと;そして、
冷間圧延の間で、厚さ1.5mm〜0.5mmにおいて中間焼鈍を実施し、そして、アルミニウムストリップを、次に、最終厚さ0.15mm〜0.5mmまで冷間圧延により圧延して、リソグラフ印刷プレート支持体へ追加加工するために、圧延された硬質の状態で巻き取ることによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、リソグラフ印刷プレート支持体(lithografische Druckplattentraeger)用のアルミニウムストリップを製造する方法であって、前記アルミニウムストリップを圧延インゴットから製造し、場合により実施する均熱処理(Homogenisieren)後に、厚さ2mm〜7mmまで熱間圧延し、そして、最終厚さ0.15mm〜0.5mmまで冷間圧延する、前記方法に関するものである。更に、本発明は、厚さ0.15mm〜0.5mmを有する、相当して製造されたアルミニウムストリップと、本発明のアルミニウムストリップから製造される印刷プレート支持体とに関する。
【0002】
リソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップの品質には、非常に高い要件が設けられている。リソグラフ印刷プレート支持体の製造用のアルミニウムストリップは、通常、電気化学粗面化(Aufrauung)を施され、それによって、任意の縞状のむら(Streifigkeitseffekte)を有さない広範囲の粗面化及び無組織の外観をもたらすことが好ましい。粗面化された組織は、感光層(これは、次に感光される)を付与するために重要である。感光層は、220〜300℃の温度及び3〜10分の焼鈍時間で焼込み(einbrennen)され、ここで、焼込み時間の標準的な組合せは、例えば、240℃で10分間、260℃で6分間、及び260℃で4分間である。印刷プレート支持体は、焼込みの後でなるべく強度を失わないことが必要とされるので、更に上手く処理することができ、印刷デバイスへ容易に固定することができる。同時に、印刷プレート支持体は、そして、それに相当して製造されるべきアルミニウムストリップは、できる限り高い反復曲げ疲労強度を有している必要があり、その結果、前記印刷プレート上への機械的応力により生じるプレートの破損をほとんど減少させることができる。現在まで、これらの要件は従来のアルミニウムストリップによって十分満されてきた。しかしながら、生産性を増加させるために、印刷プレート支持体が圧延方向に対して横断方向に曲げられて、そして、圧延方向に対して横断方向の機械的応力を受けるように、前記印刷プレート支持体を固定することが必要とされる印刷機がだんだんと使用されてきている。同時に、サイズが大きく、そして、強度値が変化しない、大型のリソグラフ印刷プレート支持体を処理することはより困難になる。
【0003】
例えば、本特許権利者に由来する欧州特許EP1065071B1では、リソグラフ印刷プレート支持体を製造するためのストリップであって、焼込み処理後に、非常に高い反復曲げ疲労強度と十分な熱安定性とが組み合わさっている非常に良好な粗面性を特徴とする前記ストリップが公知である。しかしながら、印刷機のサイズが増加したこと、及びそれにより、必要とされる印刷プレート支持体のサイズが増加したことによって、公知のアルミニウム合金及びそれらから製造されるリソグラフ印刷プレート支持体の特性を更に改良する必要がある。例えば、アルミニウム合金を変化させることによって、引張強度を単純に増加させることでは、所望の効果をつくることができない。なぜなら、引張強度が高い場合には、アルミニウムストリップの巻き取り設定を修正することがより難しくなるからである。この巻き取りは、通常、焼込み処理の前の、圧延された硬質の状態(walzharter Zustand)で実施される。
【0004】
このことを出発点として、本発明の原理を形成する目的は、リソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップを製造する方法、標準外サイズの印刷プレート支持体を製造することができるアルミニウムストリップ、及び、加工が容易であって、そして、プレート破損の傾向がほとんどない印刷プレート支持体を提供することである。
【0005】
本発明の第一の教示によると、前記の目的は、アルミニウムストリップが、以下の合金成分(重量%で表示):
0.3 %≦Fe≦0.4 %、
0.2 %≦Mg≦1.0 %、
0.05%≦Si≦0.25%、
Mn≦0.1 %、場合により、Mn≦0.05%、
Cu≦0.04%、
残余アルミニウム及び不可避の不純物(それぞれ最大で0.05%、合計最大で0.15%)
を有するアルミニウム合金からなること;そして、
冷間圧延の間に、厚さ1.5mm〜0.5mmにおいて中間焼鈍を実施し、そして、前記アルミニウムストリップを、次に、最終厚さ0.15mm〜0.5mmまで冷間圧延によって圧延して、リソグラフ印刷プレート支持体へ追加加工するために、圧延された硬質の状態で巻き取ること、において達成される。
【0006】
本発明により製造されるアルミニウムストリップは、非常に高い反復曲げ疲労強度と同時に非常に良好な熱安定性とを伴う、中程度(moderat)の強度増加を提供する。強度の増加が中程度であるために、巻き取り設定の修正が難なく可能である。しかしながら、同時に、本発明の方法により得られるアルミニウムストリップの熱安定性が良好であるため、例えば、印刷機へ固定される際に印刷プレートが焼込みされた状態であっても、印刷プレートの取り扱いが容易である。非常に大型のリソグラフ印刷プレート支持体を製造するためにアルミニウムストリップが使用される場合には、前記アルミニウムストリップを中間焼鈍後で、最終厚さ0.25mm〜0.5mmまで冷間圧延することが好ましい。標準外サイズのリソグラフ印刷プレート支持体用のために本発明の方法により製造されるアルミニウムストリップの特定の適用性は、低い圧下率(Abwalzgrade)及び高いマグネシウム含有量の理由から、高い強度と反復曲げ疲労強度とを提供することができ、それによって、取り扱いが容易になり、そして、印刷プレート支持体の耐久性を改良することができることに起因する。マンガンは、合金中の熱安定性に寄与する。しかしながら、その他の合金成分との組合せにおいて(特に、マグネシウムの割合)、0.1重量%を超える含有量の場合に、粗面性に関する問題が生じる。マンガン含有量が0.05重量%を超えない場合に、熱安定性と粗面特性との間の良好な安定が達成される。
【0007】
本発明の第1の実施態様によると、アルミニウム合金は、0.4重量%〜1.0重量%、好ましくは0.6重量%〜1重量%のMg含有量を有する。リソグラフ印刷プレート支持体を製造するためのアルミニウム合金中の高い〜非常に高いMg含有量によって、製造された印刷プレート支持体での、圧延方向に対して横断方向の反復曲げ疲労強度をかなり増加させる。同時に、当業者の予想に反して、相当するアルミニウム合金から製造されるストリップを粗面化した場合に問題が生じない。高いMg含有量によって、中間焼鈍後の圧下率を減少させることができると同時に、特に、圧延方向に対して横断方向の引張強度値を維持又は増加することができる。
【0008】
次の本願発明の代替の実施態様によるアルミニウム合金が、0.25重量%〜0.6重量%、好ましくは、0.3重量%〜0.4重量%のMg含有量を有している場合には、高い反復曲げ疲労強度を伴う良好な強度値を提供することができる。このことは、特に、0.4重量%〜0.6重量%のMg含有量の場合に当てはまる。
【0009】
本発明の或る実施態様によると、本発明の特性は、アルミニウム合金が、最大で0.05重量%、好ましくは最大で0.015重量%のチタン(Ti)含有量、最大で0.05重量%の亜鉛(Zn)含有量、及び100ppm未満、好ましくは最大で50ppmのクロム(Cr)含有量を更に有することによって、特に確実に得ることができる。チタンは、通常、鋳造間での微粒化(Kornfeinung)のために使用される。しかしながら、Ti含有量の増加は、鋳造での問題を引き起こす。亜鉛は粗面性に影響するので、その含有量は、最大で0.05重量%であることが好ましい。Zn含有量が増加する場合には典型的な問題が生じる。なぜなら、リソグラフ印刷プレート支持体が粗面化される際に不均質となるからである。クロムは再結晶化を抑制するので、アルミニウム合金中には、100ppm未満、好ましくは最大で50ppmのごく少ない割合で含まれることが好ましい。
【0010】
熱間圧延温度を250℃〜550℃の範囲内に設定(ここで、熱間ストリップ最終温度は、280℃〜350℃である)することによって、表面の持続性の再結晶化が熱間圧延の間で達成され、それによって、例えば、リソグラフ印刷プレート支持体の製造間で、壁面を十分に粗面化できることが保証される。
【0011】
中間焼鈍の間で、アルミニウムストリップの金属温度が200℃〜450℃であることが好ましい。次に、アルミニウムストリップを、前記金属温度で、少なくとも1〜2時間保持する。このことは、通常、バッチ炉中で実施される。アルミニウムストリップは更に、前述の温度範囲での中間焼鈍によって、回復した状態、又は、再結晶化した状態、あるいは、それらが組み合わさった状態で処理される。再結晶化は、約300〜350℃の温度で開始され、このことは、製造パラメーター(特に、もたらされるひずみ硬化)によって左右される。それとは反対に、ひずみ硬化の減少は、低温での回復焼鈍によってのみ達成されることができるので、回復焼鈍後での非常に低い圧下率が見込まれる。しかしながら、中間焼鈍後のそれぞれの圧下率と、合金組成とによっては、中間焼鈍としての再結晶化焼鈍の実施が必要となることがある。
【0012】
本発明の第2の教示によると、開示された前記目的は、リソグラフ印刷プレート支持体を製造するための新規のアルミニウムストリップによって達成され、前記アルミニウムストリップは、以下の合金成分(重量%で表示):
0.3 %≦Fe≦0.4 %、
0.2 %≦Mg≦1.0 %、
0.05%≦Si≦0.25%、
Mn≦0.1 %、場合により、Mn≦0.05%、
Cu≦0.04%、
残余アルミニウム及び不可避の不純物(それぞれ最大で0.05%、合計最大で0.15%)
を有するアルミニウム合金からなっており;そして、
前記アルミニウムストリップは、反復曲げ試験における少なくとも1850サイクルの、圧延方向に対して横断方向の反復曲げ疲労強度を有している。
【0013】
反復曲げ試験では、薄板(Streifen)をアルミニウムストリップから切り出して、30mmの半径を有する2つの円筒部分の間で前後に曲げる。これまでに製造されるリソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップとは反対に、本発明のアルミニウムストリップは、圧延方向に対する横断方向においても、焼込み処理後で、1850を超える反復曲げサイクルを達成することができ、これは、これまでに使用される通常の合金と比較すると70%を超える増加を示す。更に、本発明のアルミニウムストリップの圧延された硬質の状態及び焼込みされた状態の両方で、1850超の見込まれる反復曲げサイクルの多さは、圧延方向に対する横断又は長手方向に固定されるリソグラフ印刷プレート支持体において、機械的応力によるプレート破損の傾向が低いことを示す。
【0014】
好ましくは、アルミニウムストリップは、圧延された硬質の状態で、圧延方向に対する長手方向で測定される200MPa以下の引張強度を有する。その結果、本発明のアルミニウムストリップの巻き取り設定を容易に修正することができる。引張強度値における増加は、焼込み処理後での、圧延方向に対する長手又は横断方向の少なくとも145MPaの引張強度を明白に示す良好な熱安定性を伴うことが好ましい。アルミニウムストリップから製造されるリソグラフ印刷プレート支持体の取り扱いは、焼込み処理後も良好である。リソグラフ印刷プレート支持体が非常に大型である場合であっても、焼込み処理後の増加した強度によって、印刷プレートの取り扱いはより容易になることができる。Mg含有量が増加する場合には、中間焼鈍厚さを減少させる(例えば、1.1mm未満)ことによって、圧延された硬質の状態での最大200MPaまでの引張強度値を得ることができる。反復曲げ疲労強度は、この影響を受けない。
【0015】
0.25重量%〜0.6重量%、好ましくは0.3重量%〜0.4重量%のMg含有量を有するアルミニウムストリップは、圧延された硬質の状態での、十分に高い引張強度値を提供することができる。なぜなら、例えば、アルミニウムストリップに対する所望の強度値は、中間焼鈍後の低い圧下率で既に得られているからである。0.4重量%〜0.6重量%のMg含有量を有するアルミニウムストリップは、粗面性ついての不変の特性と、改良された引張強度特性と共に、圧延方向に対する横断方向の反復曲げ疲労強度での更なる増加を示す。
【0016】
本発明のアルミニウムストリップの代替の実施態様は、0.4重量%〜1.0重量%、好ましくは、0.6重量%〜1.0重量%のMg含有量を有する。これらの高いMg含有量を有するアルミニウムストリップは、圧延方向に対する横断方向での、並外れて良好な反復曲げ疲労強度を特徴としており、そして、当業者の予想に反して、粗面化の間で、縞状のむらを生じない傾向を示す。最大の反復曲げ疲労強度特性を伴う200MPa未満の最適引張強度値を得るためには、中間焼鈍厚さを調節する必要がある。
【0017】
本発明のアルミニウムストリップの他の実施態様によると、完成したアルミニウムストリップの特性は、アルミニウム合金が、最大で0.05重量%、好ましくは、最大で0.015重量%のTi含有量、最大で0.05重量%のZn含有量、及び、100ppm未満、好ましくは、最大で10ppmのCr含有量を有することにより、確実に得られる。
【0018】
本発明のアルミニウムストリップの最後の実施態様によると、標準外サイズの印刷プレート支持体は、0.25〜0.5mmの厚さを有し、そして、容易に処理及び取り扱いすることのできるアルミニウムストリップから、特に良好に製造することができる。
【0019】
本発明の第3の教示によると、開示された前記目的は、本発明のアルミニウムストリップから製造される印刷プレート支持体によって達成される。本発明の印刷プレート支持体の利点に関しては、アルミニウムストリップを製造する方法について、及び、本発明によるアルミニウムストリップについての前記説明を参照されたい。
【0020】
リソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップを製造する本発明の方法と、リソグラフ印刷プレート支持体用の前記アルミニウムストリップと、前記リソグラフ印刷プレート支持体とを改良及び展開する多くの可能性がある。これに関して、本明細書の請求項1及び請求項7に従属する請求項を、そして、図面と併せて模範的な実施態様の記載を、参照されたい。図面において、図1は反復曲げ疲労強度を試験するための反復曲げ試験の模式図を示す。
【0021】
リソグラフ印刷プレート支持体を製造するための従来のアルミニウムストリップと、リソグラフ印刷プレート支持体の製造に適当な2つの本発明によるアルミニウムストリップと、比較例のアルミニウムストリップとの比較が以下に示されている。種々の、試験されたアルミニウムストリップの合金成分を表1に示す。
【表1】

【0022】
表1は、試験されたアルミニウムストリップの必須合金成分を示し、更には、種々の試験合金が、0.015重量%未満のTi含有量、0.05重量%未満のZn含有量、及び100ppm未満のCr含有量を有していた。種々のアルミニウム合金から鋳造される圧延インゴットは、圧延前に均熱化処理を施され、そこでは、圧延インゴットを、4時間を超えて約580℃の温度まで焼鈍した。次に、熱間圧延を250℃〜550℃の温度で実施し、ここで、熱間圧延最終温度は280℃〜350℃の間であった。Vref合金からなるアルミニウム熱間圧延ストリップには、冷間圧延の間に、厚さ2〜2.4mmにおける中間焼鈍を施した。中間焼鈍では、冷間圧延ストリップを300〜450℃の温度に1〜2時間さらした。V581、V582、及びVF583アルミニウムストリップでは、同じ中間焼鈍温度で、表2に示されるように中間焼鈍厚さは0.9〜1.2mmであった。それに対して、V580合金からなるアルミニウムストリップは、中間焼鈍を施されなかった。中間焼鈍されたストリップを、最終焼鈍を実施することなく最終厚さまで更に冷間圧延したので、これらは、圧延された硬質の状態で巻き取られた。
【表2】

【0023】
リソグラフ印刷プレート支持体又はリソストリップ用に製造された相当するアルミニウムストリップに、追加の試験を施した。5つのアルミニウムストリップ全ては、非常に良好な粗面性を有していた。更に、引張強度を圧延された硬質の状態で試験した。印刷プレート(特に、標準外サイズのリソグラフ印刷プレートの)の実際の取り扱いを試験するために、240℃で10分間の焼込み処理の後で、引張強度も測定した。更に、反復曲げ試験を実施した。ここでは、図1に模式的に示される試験装置を使用した。
【0024】
図1aは、模式的な断面図において、使用される反復曲げ試験装置1の構造を示す。前記装置を使用して、本発明のアルミニウムストリップの反復曲げ疲労強度を試験した。製造されたリソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップからの試験片2を、反復曲げ試験装置1上の移動可能な部分3と、固定された部分4とへ取り付ける。反復曲げ試験において、前記部分を、回転移動によって、固定された部分4上で前後に移動させ、その結果、試験片2を、試験片2の程度まで垂直に曲げる。図1bは、種々の曲げ状態を示す。試験片2は、圧延方向に対する長手又は横断方向のいずれかで、製造されるリソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップから切り出された。部分3、4の半径は、30mmであった。
【0025】
引張強度は、ドイツ工業標準規格(DIN)に従って測定された。圧延された硬質の状態での又は焼込み処理後の引張強度測定の結果と、反復曲げ試験結果とを、表3a及び3bに示す。
【表3a】

【表3b】

【0026】
従来のアルミニウムストリップは、確かに、焼込み処理前に巻き取り設定を修正するために、及び、焼込み処理後にリソグラフ印刷プレート支持体を取り扱うために、十分な引張強度と、圧延方向に対する長手方向の十分な反復曲げ疲労強度とを有していたことがわかった。圧延方向に対する横断方向では、従来法により製造されたアルミニウムストリップ(Vref)は、1500曲げサイクルのみを達成した。一方で、本発明のV582及びV581アルミニウムストリップは、巻き取り設定修正に対する及び焼込み処理後の印刷プレートの取り扱いに対する非常に良好な引張強度、並びに、非常に高い反復曲げ疲労強度を示した。78%以下の多くの曲げサイクルを達成した(参照V582合金)。これと比較すると、V580比較アルミニウムストリップも、実際には、反復曲げ疲労試験に関する良好な値を示した。圧延方向に対する長手及び横断方向のそれぞれでの、218及び228MPaの非常に高い引張強度は、リソグラフ印刷プレート支持体の感光層を焼込み処理する前での、巻き取り設定の修正を難しくする。
【0027】
VF583アルミニウム合金からなるアルミニウムストリップも、圧延方向に対する長手及び横断方向のそれぞれで、212MPa及び223MPaの高い引張強度値を示した。しかしながら、焼込み処理後での、圧延方向に対する横断方向での参照材料と比較すると、反復曲げ疲労強度における増加は、約2.47という因数(Faktor)で非常に目立っていた。焼込み処理後での、圧延方向に対する長手方向に対しても、1.27という因数による反復曲げ疲労強度の増加が生じる。問題のない粗面性とともに、このことは、圧延方向に対する横断方向に対して固定される標準外サイズの印刷プレート支持体用のVF583アルミニウム合金の並外れた安定性をつくるものである。改良された反復曲げ疲労強度特性は、VF583合金における0.97重量%の高いMg割合によってもたらされると考えられる。しかしながら、VF583合金の引張強度値は、例えば、0.9mm以上1.1mm未満まで中間焼鈍厚さを更に減少させることによって、反復曲げ疲労強度特性を損なうことなく、更に減少させることができる。
【0028】
ネガティブ印刷プレート(negativ Druckplatten)用に使用される、圧延された硬質の状態では、特に圧延方向に対する長手方向で、反復曲げ疲労強度での著しい改善が生じた。これら値は、圧延方向に対する横断方向でも同様に増加した。このことは、特に、圧延された硬質の状態であっても、圧延方向に対する横断方向の最大の曲げサイクル数を可能としたVF583合金について当てはまる。
【0029】
選択された方法パラメーターと併せて、大型のリソグラフ印刷プレート支持体の要件に特に適合するアルミニウム合金を選択することによって、著しく改善されたリソグラフ印刷プレート支持体を製造することが可能であり、それによって、標準外サイズのものを使用する場合、すなわち、これらが圧延方向に対する横断方向で固定される場合であっても、容易に取り扱うことができ、プレート破損を防ぐことができる。
【図1a)】

【図1b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップを製造する方法であって、
ここで、前記アルミニウムストリップは、圧延インゴットから製造され、場合により実施する均熱処理の後に、厚さ2〜7mmまで熱間圧延され、そして、熱間圧延ストリップを冷間圧延することによって、前記アルミニウムストリップを最終厚さ0.15〜0.5mmまで冷間圧延するものとする、前記方法において、
前記アルミニウムストリップが、以下の合金成分(重量%で表示):
0.3 %≦Fe≦0.4 %、
0.2 %≦Mg≦1.0 %、
0.05%≦Si≦0.25%、
Mn≦0.1 %、場合により、Mn≦0.05%、
Cu≦0.04%、
残余アルミニウム及び不可避の不純物(それぞれ最大で0.05%、合計最大で0.15%)
を有するアルミニウム合金からなること;そして、
冷間圧延の間に、厚さ1.5mm〜0.5mmにおいて中間焼鈍を実施し、そして、前記アルミニウムストリップを、次に、最終厚さ0.15mm〜0.5mmまで冷間圧延によって圧延して、リソグラフ印刷プレート支持体へ追加加工するために、圧延された硬質の状態で巻き取ることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
アルミニウム合金が、0.4重量%〜1.0重量%のMg含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルミニウム合金が、0.25重量%〜0.6重量%のMg含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アルミニウム合金が、最大0.05重量%のTi含有量、最大0.05重量%のZn含有量、及び100ppm未満のCr含有量を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
熱間圧延を250℃〜550℃の温度で実施することを特徴とし、ここで、最終熱間圧延温度が、280℃〜350℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
中間焼鈍の間で、金属温度は200℃〜450℃であり、そして、アルミニウムストリップを、前記金属温度で少なくとも1〜2時間保持することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
特に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法により製造され、厚さ0.15mm〜0.5mmを有する、リソグラフ印刷プレート支持体用のアルミニウムストリップであって、
前記アルミニウムストリップが、以下の合金成分(重量%で表示):
0.3 %≦Fe≦0.4 %、
0.2 %≦Mg≦1.0 %、
0.05%≦Si≦0.25%、
Mn≦0.1 %、場合により、Mn≦0.05%、
Cu≦0.04%、
残余アルミニウム及び不可避の不純物(それぞれ最大で0.05%、合計最大で0.15%)
を有するアルミニウム合金からなること、そして、反復曲げ試験において少なくとも1850サイクルの、圧延方向に対して横断方向の反復曲げ疲労強度を有していることを特徴とする、前記アルミニウムストリップ。
【請求項8】
アルミニウムストリップが、圧延された硬質の状態で、圧延方向に対して長手方向の引張強度200MPa以下を有すること、そして、焼込み処理後で、圧延方向に対する長手方向又は横断方向の引張強度少なくとも145MPaを有することを特徴とする、請求項7に記載のアルミニウムストリップ。
【請求項9】
アルミニウム合金が、0.25重量%〜0.6重量%のMg含有量を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載のアルミニウムストリップ。
【請求項10】
アルミニウム合金が、0.4重量%〜1.0重量%のMg含有量を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載のアルミニウムストリップ。
【請求項11】
アルミニウム合金が、最大0.05重量%のTi含有量、最大0.05重量%のZn含有量、及び50ppm未満のCr含有量を有することを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載のアルミニウムストリップ。
【請求項12】
アルミニウム合金が、厚さ0.25〜0.5mmを有していることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一項に記載のアルミニウムストリップ。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか一項に記載のアルミニウムストリップから製造される印刷プレート支持体。

【公表番号】特表2011−505493(P2011−505493A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535350(P2010−535350)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066086
【国際公開番号】WO2009/068502
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510141822)ハイドロ アルミニウム ドイチュラント ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】Hydro Aluminium Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】