説明

リゾホスホリパーゼD活性の測定に有効な新規化合物およびその測定方法

【課題】リゾホスホリパーゼD活性の測定に使用される新規化合物およびその測定法を提供すること。
【解決手段】リゾリン脂質のリン酸ジエステルのグリセロール骨格とは反対側の酸素原子を硫黄原子に置換した新規化合物が提供される。本発明の方法によれば、リゾホスホリパーゼDを含有する試料に、該新規硫黄置換化合物とジスルフィド化合物とを加え、一定時間反応させた後、ジスルフィド交換により生成したチオール化合物に由来する吸光度を測定することによって、試料中のリゾホスホリパーゼD活性が測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規硫黄置換リン脂質化合物およびリゾホスホリパーゼD活性の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リゾホスホリパーゼDは、リゾリン脂質のリン酸ジエステルのグリセロール骨格とは反対側の結合を切断して、主にリゾホスファチジン酸(以下、LPAと称する)を産生する酵素である。この酵素活性は、以前から動物の血液中に存在することが知られていた。LPAは、癌細胞の浸潤促進、細胞増殖の制御、平滑筋収縮、血小板凝集、神経突起の退縮、ストレスファイバーの形成、細胞接着因子の誘導などの種々の生理活性を有する脂質である。近年、LPAをリガンドとする受容体が相次いで発見されており、上記の生理活性の多くは、これらの受容体を介して示されるものと考えられる。さらに、卵巣癌、子宮体癌、および子宮頚癌の患者の血漿中LPAレベルが、健常者と比して高値であることも報告されている。
【0003】
2002年に初めて、血清成分からリゾホスホリパーゼD活性を示すタンパク質が精製・同定された(非特許文献1および2)。このタンパク質は、既に同定されていたオートタキシンであり、以前から癌細胞運動性亢進因子として知られていたタンパク質である。オートタキシンは、ヌクレオチドを分解するヌクレオチドホスホジエステラーゼ/ホスファターゼ活性を有することが知られていたが、リン脂質を分解することは知られていなかった。その後、オートタキシンは、LPAだけでなく、環状ホスファチジン酸やスフィンゴシン−1−リン酸の産生にも寄与していることが報告されている(非特許文献3および4)。
【0004】
ところで、これまでに報告されているリゾホスホリパーゼD活性の測定方法は、放射標識したリゾホスファチジルコリン(以下、LPCと称する)を試料と混合し、一定時間反応させ、脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィーにて分離して、目的のバンドの放射活性を測定する方法;試料とLPCとを混合して一定時間反応させ、生じた遊離コリンを測定する方法などがある。しかしながら、これらの方法は、放射性物質の使用、煩雑な手順などのため、簡便な方法ではない。
【0005】
また、リゾリン脂質のリン酸ジエステルのグリセロールとは反対側に発色基を付加した基質を用い、酵素反応による生成物、すなわち、遊離した発色性物質を測定することによって、リゾホスホリパーゼDの活性測定方法が開発されている(特許文献1)。しかし、このような基質は、その構造が生理的な内在性基質の構造とはかなり異なっており、必ずしも生理的な反応を反映しているとは言い難い。
【0006】
一方、他の種類の酵素の活性の測定方法として、硫黄化合物と5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)とを競合させ、生じた5−チオ−2−ニトロ安息香酸に依存した吸光度を測定する方法があり、例えば、コリンエステラーゼ活性測定法などに利用されている。また、スフィンゴミエリンの硫黄置換体を用いた、スフィンゴミエリナーゼ活性の測定方法についても記載されている(特許文献2)。しかし、これまでのところ、LPCのリン酸基の酸素分子を硫黄分子に置換した化合物、およびこのような化合物を利用したリゾホスホリパーゼDの活性測定方法は知られていない。
【特許文献1】国際公開第2002/053569号パンフレット
【特許文献2】特開2006−14606号公報
【非特許文献1】A. Tokumuraら、J. Biol. Chem.,2002年,277巻,pp.39436-39442
【非特許文献2】M. Umezu-Gotoら、J. Cell Biol., 2002年, 158巻, pp.227-233
【非特許文献3】J. Dennisら、J. Neurosci. Res.,2005年,82巻,pp.737-742
【非特許文献4】S. Tsudaら、J. Biol. Chem., 2006年, 281巻, pp.26081-26088
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より簡便で迅速な試料中のリゾホスホリパーゼD活性の測定方法、およびこのような測定を可能にするための新たなリゾリン脂質の硫黄置換化合物、さらにその化合物を含有するリゾホスホリパーゼD活性の測定試薬およびその測定キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、リゾリン脂質のリン酸ジエステルのグリセロール骨格とは反対側の酸素原子を硫黄原子に置換した新規化合物の合成に成功した。そして、リゾホスホリパーゼDを含有する試料に、該新規硫黄置換化合物とジスルフィド化合物とを加え、生成したチオール化合物に由来する吸光度を測定することによって、試料中のリゾホスホリパーゼD活性を測定することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の式(I)または(II):
【0010】
【化1】

【0011】
(該式(I)および(II)において、RまたはRのいずれか一方が脂肪酸残基であり、他方が水素原子であり、そしてXが極性基である)で表されるリゾリン脂質の硫黄置換化合物を提供する。
【0012】
1つの実施態様では、上記Xを含むX−OHは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、グリセロール、およびスレオニンを含む群から選択される。
【0013】
さらなる実施態様では、上記X−OHは、コリンである。
【0014】
ある実施態様では、上記RまたはRで表される脂肪酸残基は、飽和脂肪酸の脂肪酸残基である。
【0015】
さらなる実施態様では、上記飽和脂肪酸は、炭素数8から20である。
【0016】
好適な実施態様では、上記飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキジン酸からなる群より選択される。
【0017】
ある実施態様では、上記RまたはRで表される脂肪酸残基は、不飽和脂肪酸の脂肪酸残基である。
【0018】
さらなる実施態様では、上記不飽和脂肪酸は、炭素数8から22である。
【0019】
好適な実施態様では、上記不飽和脂肪酸は、パルミトイル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群より選択される。
【0020】
別の実施態様では、上記RまたはRは、アルキル基およびアルケニル基からなる群より選択される脂肪族基を含む脂肪酸残基である。
【0021】
本発明はまた、リゾホスホリパーゼDの活性の測定方法を提供し、該方法は、
リゾホスホリパーゼDを含有する試料に、上記いずれかのリゾリン脂質の硫黄置換化合物とジスルフィド化合物とを加えて反応させる工程、および
生成したチオール化合物に由来する吸光度を測定する工程、
を包含する。
【0022】
1つの実施態様では、上記ジスルフィド化合物は、以下の式(III):
【0023】
【化2】

【0024】
で表される化合物であり、そして上記生成したチオール化合物は、以下の式(IV):
【0025】
【化3】

【0026】
で表される化合物であり、該式(III)および(IV)において、Rが、水素原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルケニル基、またはハロゲン原子である。
【0027】
さらなる実施態様では、上記Rは、水素原子である。
【0028】
1つの実施態様では、上記リゾホスホリパーゼDを含有する試料は、血清、血漿、尿、唾液、涙液、精液、糞便溶解液、脊髄液、細胞培養液、細胞抽出液、および組換えオートタキシン溶解液からなる群より選択される。
【0029】
さらなる実施態様では、上記リゾホスホリパーゼDの活性は、癌、腫瘍、および動脈硬化性疾患からなる群より選択される疾患の診断に用いる指標である。
【0030】
本発明はさらに、上記のいずれかのリゾリン脂質の硫黄置換化合物を含む、リゾホスホリパーゼDの活性測定用キットを提供する。
【0031】
1つの実施態様では、上記キットは、さらに、ジスルフィド化合物を含む。
【0032】
さらなる実施態様では、上記ジスルフィド化合物は、以下の式(III):
【0033】
【化4】

【0034】
で表される化合物(式(III)において、Rが、水素原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルケニル基、またはハロゲン原子である)を含む。
【0035】
ある実施態様では、上記キットは、癌、腫瘍、および動脈硬化性疾患からなる群より選択される疾患の診断に用いる指標の測定に用いられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、試料中のリゾホスホリパーゼD活性をより簡便で迅速に測定することができる。また、試料中のリゾホスホリパーゼD活性をリアルタイムで活性を測定することもできる。そのため、リゾホスホリパーゼD活性が関与する様々な疾患の診断や治療効果の判定、あるいは被験物質のリゾホスホリパーゼD活性に及ぼす影響または効果を調べるためのスクリーニングに利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(新規硫黄置換化合物)
本発明の新規硫黄置換化合物は、リゾリン脂質のリン酸ジエステルのグリセロール骨格とは反対側の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物であり、以下の式(I)または(II):
【0038】
【化5】

【0039】
(該式(I)および(II)において、RまたはRのいずれか一方が脂肪酸残基(アシル基)であり、他方が水素原子であり、そしてXが極性基である)で表される化学構造を有する。
【0040】
ここで、Xは、極性基であればよく、好ましくは、通常のリン脂質の親水性部分を構成する基が挙げられる。具体的には、このXを含むX−OHが、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、グリセロール、およびスレオニンを含む群から選択される。さらに好ましくは、X−OHはコリンである。
【0041】
また、RまたはRで表される脂肪酸残基は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の脂肪酸残基であり、アルキル基およびアルケニル基からなる群より選択される脂肪族基を含む脂肪酸残基であり得る。
【0042】
またはRで表される脂肪酸残基が飽和脂肪酸の脂肪酸残基である場合、この飽和脂肪酸は、好ましくは、炭素数8から20であり、より好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキジン酸からなる群より選択される飽和脂肪酸である。
【0043】
またはRで表される脂肪酸残基が不飽和脂肪酸の脂肪酸残基である場合、この不飽和脂肪酸は、好ましくは、炭素数8から22であり、より好ましくは、パルミトイル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群より選択される不飽和脂肪酸である。
【0044】
本発明の新規硫黄置換化合物は、以下で詳述するリゾホスホリパーゼD活性の測定方法に用いられる新規な試薬として有用である。
【0045】
本発明において、リゾホスホリパーゼDとは、リゾリン脂質のリン酸ジエステルのグリセロール骨格とは反対側の結合を切断して、主にリゾホスファチジン酸(以下、LPAと称する)を産生する酵素である。リゾホスホリパーゼDの活性とは、オートタキシン活性をいう場合がある。好ましくは、リゾホスホリパーゼDは、リゾホスファチジルコリンを分解し、リゾホスファチジン酸およびコリンを産生する活性を有する。また、好ましくは、リゾホスホリパーゼDは、リゾホスファチジルコリンを分解し、環状ホスファチジン酸およびコリンを産生する活性を有する。また、好ましくは、リゾホスホリパーゼDは、スフィンゴシルホスホリルコリンを分解し、スフィンゴシン−1−リン酸およびコリンを産生する活性を有する。
【0046】
(新規硫黄置換化合物の合成)
本発明の新規硫黄置換化合物(I)または(II)は、例えば、以下のスキーム1または2で示される製造工程で合成され得る。スキーム1は、Rが水素原子であり、そしてRが脂肪酸残基である場合の製造工程を示し、一方、スキーム2はRが脂肪酸残基であり、そしてRが水素原子である場合の製造工程を示す。スキーム1において、RはR’−CO−として、そしてスキーム2において、RはR’−CO−として表されている。
【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
なお、上記スキーム1および2において、Bn、TBS、およびTESは、それぞれ、ベンジル基、tert−ブチルジメチルクロロシリル基、およびトリエチルシリル基を表す。これらはいずれも、水酸基の保護基の例であり、これらに限定されない。水酸基の保護に用いられる試薬としては、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリド、tert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、トリエチルシリルトリフルオロメタンスルホネートなどのハロゲン化シリル、およびシリルスルホン酸エステル試薬が挙げられる。
【0050】
また、上記スキーム1および2は、出発物質である化合物1がR体の場合を例示するが、立体異性体であるS体の場合も、同様に合成可能である。
【0051】
(リゾホスホリパーゼDの活性の測定方法)
本発明のリゾホスホリパーゼDの活性の測定方法は、
リゾホスホリパーゼDを含有する試料に、上記の新規硫黄置換化合物とジスルフィド化合物(I)または(II)とを加えて反応させる工程、および
生成したチオール化合物に由来する吸光度を測定する工程、
を包含する。
【0052】
まず、リゾホスホリパーゼDを含有する試料と上記式(I)または(II)で表される新規硫黄置換化合物とを混合し、一定時間反応させると、リゾホスホリパーゼDの作用によって、新規硫黄置換化合物(I)または(II)からX−SHで表されるチオール化合物が遊離される。さらに、リゾホスホリパーゼDの作用によって遊離したチオール化合物X−SHが、共存しているジスルフィド化合物と選択的に反応し(チオール−ジスルフィド交換)、新たなチオール化合物を定量的に生成する。生成した新たなチオール化合物に由来する吸光度を測定することによって、試料中に含まれるリゾホスホリパーゼD活性を測定することができる。
【0053】
上記反応工程は、すべての反応を一つの反応系で行っても、二工程以上の複数の工程に分けて行ってもよい。例えば、試料中のリゾホスホリパーゼDによる新規硫黄置換化合物の切断反応工程;切断により生じたチオール化合物とジスルフィド化合物とのジスルフィド交換工程;および、新たに生成されたチオール化合物に由来する波長での比色工程を単一工程内で行ってもよい。あるいは、リゾホスホリパーゼDによる新規硫黄置換化合物の切断反応のみを最初に行い、その後、残りの比色に関わる工程を一工程内で行ってもよい。また、リゾホスホリパーゼD活性に関わる工程と比色に関わる工程とを同一工程で行う場合には、反応時間に依存して吸光度が経時的に増加するため、単位時間あたりの吸光度変化率をリゾホスホリパーゼD活性の指標として用いることが一般的である。一方、リゾホスホリパーゼD活性に関わる工程と比色に関わる工程とを別々の工程で行う場合には、リゾホスホリパーゼD活性に関わる工程によって合成されたチオール化合物を、続いて行われる比色に関わる工程によって定量するため、吸光度変化量をリゾホスホリパーゼD活性の指標として用いることが一般的である。
【0054】
(試料)
本発明における「試料」とは、リゾホスホリパーゼDの存在の有無、あるいはその活性の程度を測定する対象すべてを意味し、リゾホスホリパーゼD活性が存在する可能性がある各種生体試料、および当該測定のための標準試料や管理試料もこれに含まれる。具体的には、全血、血清、血漿、尿、糞便、唾液、腹水、涙液、精液、精漿、髄液などの体液成分;動物細胞、植物細胞、細菌などの微生物の細胞培養上清および細胞抽出液;動物の組織培養液などが挙げられる。例えば、組換えオートタキシン溶解液も含まれる。
【0055】
(ジスルフィド化合物)
上記のリゾホスホリパーゼDの活性の測定方法に用いられるジスルフィド化合物は、チオールとのジスルフィド交換が可能であり、そしてジスルフィド結合の切断により遊離されるチオール化合物が、特徴的な吸収極大を有する化合物であれば、特に限定されない。本発明においては、式(III)で表されるジスルフィド化合物:
【0056】
【化8】

【0057】
(式中、Rは、水素原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルケニル基、またはハロゲン原子である)が好適に用いられる。この場合、リゾホスホリパーゼDの作用によって遊離したチオール化合物X−SHが、ジスルフィド化合物(III)と選択的に反応し、式(IV)で表される新たなチオール化合物:
【0058】
【化9】

【0059】
(式中、Rは、水素原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルケニル基、またはハロゲン原子である)を定量的に生成する。そして、生成した新たなチオール化合物(IV)に由来する吸光度を測定することによって、試料中に含まれるリゾホスホリパーゼD活性を測定することができる。
【0060】
上記式(III)で表されるジスルフィド化合物としては、例えば、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB、エルマン試薬とも呼ばれる)が挙げられる。この場合、ジスルフィド結合が切断されて遊離するチオール化合物は、2−ニトロ−5−チオ安息香酸であり、この化合物はキノイド構造をとり、412nmに強い吸収を有する。そのため、この波長の近傍の吸光度を測定することによって、リゾホスホリパーゼD活性を測定することができる。他のジスルフィド化合物として、2,2’−ジチオジピリジン、4,4’−ジチオジピリジン、6,6’−ジチオジニコチン酸などが挙げられる。
【0061】
(反応温度)
上記の測定方法において、新規硫黄置換化合物、ジスルフィド化合物などの各試薬が安定であり、かつリゾホスホリパーゼD活性を維持し得る温度であれば、反応温度は特に限定されない。また、反応温度は、リゾホスホリパーゼD活性に関わる工程と、比色に関わる工程で異なっていてもよい。簡便性や自動化測定機器の利用を考慮すれば、全工程を通して一定であることが好ましく、通常25〜40℃、好ましくは35〜40℃である。
【0062】
(反応時間)
上記の測定方法において、反応時間は、試料中のリゾホスホリパーゼD活性によって、検出するに十分なチオール化合物が最終的に生成される時間であれば特に限定されない。通常、リゾホスホリパーゼD活性の測定に要する反応時間は、約5分〜3時間、好ましくは約5分〜30分間である。
【0063】
(反応pH)
上記の測定方法において、リゾホスホリパーゼD活性に関わる工程、および比色に関わる工程を実施し得るpHであれば反応pHは特に限定されない。リゾホスホリパーゼD活性に関わる工程と比色に関わる工程とが別工程で行われる場合には、各工程に適した、異なったpHで実施してもよい。例えば、リゾホスホリパーゼD活性に関わる工程では弱アルカリ性(例えば、pH7.5〜9.5)、および比色に関わる工程では中性付近(例えば、pH6〜8)で実施してもよい。
【0064】
(測定機器)
本発明の方法によれば、リゾホスホリパーゼD活性は、用手法によって測定することができる。より簡便に、かつ再現性よく測定するためには、自動分析装置を用いることもできる。ここで使用される自動分析装置は、測定に関わるすべての工程が自動化されているものでもよく、一部の工程のみが自動化されているものであってもよい。望ましくは、臨床検査で使用される生化学用自動分析装置が用いられる。具体的には、株式会社日立ハイテクノロジーズ製H7070型、H7170型、H7180型自動分析装置、東芝メディカルシステムズ株式会社製TBA−200FR、TBA−80FR NEOなどが挙げられる。
【0065】
(疾患の診断に用いる指標)
本発明のリゾホスホリパーゼD活性の測定方法は、リゾホスホリパーゼD活性が関与する様々な疾患、あるいはリゾホスホリパーゼDによって合成または分解される物質の変化に関与する様々な疾患の診断またはリスクの評価に利用できる。このような疾患としては、例えば、癌、腫瘍、および動脈硬化性疾患が挙げられる。例えば、リゾホスホリパーゼD活性によって合成されるLPAは癌細胞浸潤促進因子として知られている。そのため、血中リゾホスホリパーゼD活性が高いという測定結果が得られたヒトにおいては、何らかの癌に罹患している可能性があることが予測される。したがって、本発明の方法により測定されるリゾホスホリパーゼDの活性は、これらの疾患の指標となり得る。
【0066】
(治療の効果判定)
本発明のリゾホスホリパーゼD活性の測定方法は、リゾホスホリパーゼD活性が関与する様々な疾患、あるいはリゾホスホリパーゼDによって合成または分解される物質の変化に関与する様々な疾患の治療効果判定に利用できる。例えば、リゾホスホリパーゼD活性が高い患者に対して、リゾホスホリパーゼD活性阻害を作用機序とする治療薬を投与し、経時的に患者の血中リゾホスホリパーゼD活性を測定する。その結果、治療薬の投与によってリゾホスホリパーゼD活性が低下していれば改善に向かっており、一方、リゾホスホリパーゼD活性が上昇もしくは変化していなければ治療が不十分であると評価することが可能である。したがって、本発明の方法により測定されるリゾホスホリパーゼDの活性は、これらの疾患治療効果の判定のための指標となり得る。
【0067】
(スクリーニング)
本発明のリゾホスホリパーゼD活性の測定方法は、被験物質のリゾホスホリパーゼD活性に及ぼす影響あるいは効果を調べるためのスクリーニングにも利用できる。例えば、このスクリーニング方法によって見いだされたリゾホスホリパーゼD活性を阻害あるいは減少させる物質は、LPA、環状ホスファチジン酸、スフィンゴシン−1−リン酸、コリンなどの産生を抑制することができ、これらの過剰な産生に起因すると考えられる種々の疾患に好適な予防薬あるいは治療薬として有用であると考えられる。また、このスクリーニング方法によって見いだされたリゾホスホリパーゼD活性を惹起あるいは増加させる物質は、LPA、環状ホスファチジン酸、スフィンゴシン−1−リン酸、コリンなどの産生を高めることができ、これらの不足に起因すると考えられる種々の疾患に好適な予防薬あるいは治療薬として有用であると考えられる。
【0068】
(リゾホスホリパーゼD活性の測定用キット)
本発明においては、上記のリゾホスホリパーゼD活性の測定方法に利用可能なリゾホスホリパーゼD活性の測定用キットも提供される。このキットは、上記の新規硫黄置換化合物(I)または(II)を含む。さらに、ジスルフィド化合物、好ましくは式(III)で表されるジスルフィド化合物を含むことが好ましい。
【0069】
このキットは、測定方法の各工程に応じて、一試薬のみであってもよく、あるいは二試薬以上の試薬から構成されてもよい。例えば、試料中のリゾホスホリパーゼDによる硫黄置換化合物の切断反応工程、切断により生じたチオール化合物とジスルフィド化合物とのジスルフィド交換工程、および新たに合成されたチオール化合物に由来した比色工程を単一工程内で行う場合には、一試薬系であり得る。あるいは、リゾホスホリパーゼDによる硫黄置換化合物の切断反応工程のみを最初に行い、その後、残りの比色に関わる工程を一工程内で行う場合には、二試薬系であり得る。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
なお、実施例において、無水条件を必要とする反応、および酸素または水分に敏感な試薬の取り扱いは、不活性ガス(アルゴンまたは窒素)雰囲気下で行った。ジクロロメタンおよびメタノールMeOHは、市販のものを必要に応じて蒸留して使用した。その他の試薬および溶媒は、市販の試薬および無水溶媒(和光純薬工業株式会社)を使用した。
【0072】
測定機器は、以下のものを用いた:
NMR:日本電子 400MHz NMR、
IR:日本分光 FT/IR−5300、
旋光度:日本分光 DIP−370、および
シリカゲルクロマトグラフィー:富士シリシア BW−200。
【0073】
(実施例1:化合物K01の合成)
【0074】
【化10】

【0075】
(実施例1−1:化合物2の合成)
【0076】
【化11】

【0077】
S−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(化合物1:5g,37.833mmol)のジメチルホルムアミド(DMF:70ml)溶液に、0℃で水素化ナトリウム(1.816g,45.40mmol)を加え、30分撹拌した後、ベンジルブロミド(5.40ml,45.40mmol)を加えて室温に昇温し、20分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え中和した後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜10%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物2(7.779g,収率93%)を得た。
【0078】
化合物2の物性データ:[α]24.0 +19.7(c=1.11,CHCl);IR(NaCl,neat):H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.26−7.37(m,5H),4.60(d,J=12.1Hz,1H),4.55(d,J=12.1Hz,1H),4.30(tt,J=6.2,6.2Hz,1H),4.05(dd,J=6.4,8.2Hz,1H),3.74(dd,J=6.4,8.5Hz,1H),3.55(dd,J=5.7,9.8Hz,1H),3.47(dd,J=5.7,9.8Hz,1H),1.42(s,3H),1.36(s,3H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:138.1,110.0,74.9,73.7,71.2,67.0,26.9,25.5;ESI−HRMS m/z 計算値:C1318Na(M+Na) 245.1154,実測値:245.1156。
【0079】
(実施例1−2:化合物3の合成)
【0080】
【化12】

【0081】
化合物2(23.541g,105.907mmol)のメタノール(200ml)溶液に、室温でp−トルエンスルホン酸一水和物(2.014g,10.591mmol)を加えて12時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜16%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物3(14.481g,収率75%)を得た。
【0082】
化合物3の物性データ:[α]25.0 −0.6(c=1.14,CHCl);IR(NaCl,neat):3387,2870,1639,1454,1209,698cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:7.23−7.36(m,5H),4.54(s,2H),3.79(tt,J=5.0,6.0Hz,1H),3.59(dd,J=5.0,11.2Hz,1H),3.54(dd,J=4.8,9.8Hz,1H),3.52(dd,J=6.0,11.2Hz,1H),3.47(dd,J=6.0,9.8Hz,1H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:137.6,128.5,127.9,127.8,73.6,71.7,70.6,64.0;ESI−HRMS m/z 計算値:C1014Na(M+Na) 205.0841,実測値:205.0849。
【0083】
(実施例1−3:化合物4の合成)
【0084】
【化13】

【0085】
化合物3(14.481g,79.470mmol)のジクロロメタン(200ml)溶液に、0℃でイミダゾール(14.373g,95.364mmol)およびtert−ブチルジメチルクロロシラン(10.820g,158.940mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物に水を加えた後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中2%(v/v)〜9%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物4(21.348g,収率91%)を得た。
【0086】
化合物4の物性データ:[α]25.0 +1.2(c=1.06,CHCl);IR(NaCl,neat):3452,2930,1464,1255,1097,839cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.26−7.37(m,5H),4.55(s,2H),3.82−3.88(m,1H),3.68(dd,J=4.8,10.1Hz,1H),3.64(dd,J=5.7,10.1Hz,1H),3.54(dd,J=5.0,9.4Hz,1H),3.50(dd,J=6.0,9.6Hz,1H),2.47(d,J=5.3Hz,2H),0.89(s,1H),0.06(s,1H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:138.0,128.3,127.7,127.6,73.4,70.9,70.7,64.0,25.8,18.3,−5.4;ESI−HRMS m/z 計算値:C1628SiNa(M+Na) 319.1705,実測値:319.1716。
【0087】
(実施例1−4:化合物5の合成)
【0088】
【化14】

【0089】
化合物4(7.913g,26.690mmol)のジクロロメタン(80ml)溶液に、0℃でミリスチン酸(6.950g,34.697mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(1.630g,13.345mmol)、および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(6.140g,32.028mmol)を順次加えて1時間撹拌後、室温に昇温して2時間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜3%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物5(10.661g,収率79%)を得た。
【0090】
化合物5の物性データ:[α]24.0 −4.0(c=1.02,CHCl);IR(NaCl,neat):3456,2926,1739,1253,1111,839cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.26−7.36(m,5H),5.05(tt,J=5.3,5.3Hz,1H),4.56(d,J=12.1Hz,1H),4.52(d,J=12.1Hz,1H),3.76(dd,J=5.3,10.8Hz,1H),3.73(dd,J=5.3,10.8Hz,1H),3.64(dd,J=4.6,10.5Hz,1H),3.60(dd,J=5.5,10.5Hz,1H),2.31(t,J=7.3Hz,2H),1.58−1.64(m,2H),1.24−1.30(m,20H),0.88(t,J=6.9Hz,3H),0.87(s,9H),0.04(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.3,138.1,128.3,127.6,73.2,72.9,68.5,61.6,34.5,31.9,29.7,29.5,29.4,29.3,29.1,25.8,25.0,22.7,18.2,14.1,−5.40,−5.43;ESI−HRMS m/z 計算値:C3054SiNa(M+Na) 529.3689,実測値:529.3683。
【0091】
(実施例1−5:化合物6の合成)
【0092】
【化15】

【0093】
化合物5(10.661,21.035mmol)に、活性化パラジウム炭素(1.600g)およびテトラヒドロフラン(THF:42ml)を順次加え、水素ガス雰囲気下室温で13時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、酢酸エチルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜16%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物6(2.322g,収率27%)を得た。
【0094】
化合物6の物性データ:[α]24.0 −9.7(c=1.01,CHCl);IR(NaCl,neat):3452,2928,1739,1466,1253,1111,839cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:4.89(tt,J=4.8,4.8Hz,1H),3.80−3.83(m,2H),3.82(dd,J=4.8,10.8Hz,1H),3.77(dd,J=5.5,10.8Hz,1H),2.34(dt,J=1.1,7.3Hz,2H),2.20(br s,1H),1.63(tt,J=7.3,7.3Hz,2H),1.29(s,20H),0.89(s,9H),0.88(t,J=7.1Hz,3H),0.07(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.7,74.3,62.8,62.5,34.4,31.9,29.7,29.6,29.5,29.4,29.3,29.1,25.8,25.0,22.7,18.2,14.1,−5.46,−5.51;ESI−HRMS m/z 計算値:C2348SiNa(M+Na) 439.3220,実測値:439.3212。
【0095】
(実施例1−6:化合物8の合成)
【0096】
【化16】

【0097】
メチルジクロロホスファイト(0.65ml,6.687mmol)のTHF(30ml)溶液に、−78℃でジイソプロピルエチルアミン(2.92ml)および化合物6(2.322g,5.572mmol)を順次加えて1時間撹拌後、同温でメタノール(0.45ml,11.144mmol)を加えて40分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジエチルエーテルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。濃縮後に析出する白色沈殿物を自然ろ過で除去し、沈殿物をヘキサンで数回洗浄後、再び減圧濃縮を行った。得られた化合物を精製することなく次の反応に用いた。
【0098】
モレキュラーシーブMS4Å(0.3g)およびジクロロメタン(20ml)の入った反応容器に、0℃で四臭化炭素(2.217g,6.686mmol)および先ほど調製した化合物のジクロロメタン(10ml)溶液を順次加え、30分間撹拌した。次に、同温でジメチルアミノエタンチオール塩酸塩(1.184g,8.358mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(3.89ml,22.288mmol)、および2,6−ルチジン(0.19ml,1.672mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジクロロメタンで数回洗浄後、0℃で減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中33%(v/v)の酢酸エチルからクロロホルム中%(v/v)のメタノール)で精製し、化合物8(1.811g,収率54%)を得た。
【0099】
化合物8の物性データ:[α]24.0 −4.0(c=0.93,CHCl);IR(NaCl,neat):3464,2928,1741,1462,1257,1018,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.03(ddt,J=3.7,5.5,5.5Hz,1H),4.12−4.33(m,2H),3.81(d,J=12.8Hz,2/3H),3.81(d,J=12.8Hz,2/3H),3.78(m,2H),2.93−3.01(m,2H),2.63(t,J=7.8Hz,2H),2.36(dt,J=1.1,7.3Hz,2H),2.27(s,6H),1.57(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.29(s,20H),0.91(s,9H),0.90(t,J=6.9Hz,3H),0.09(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.4,73.6(d,JC−P=7.7Hz),73.6(d,JC−P=7.7Hz),67.0(d,JC−P=5.7Hz),62.2(d,JC−P=4.8Hz),60.4(d,JC−P=5.7Hz),54.9(d,JC−P=5.7Hz),45.3,35.1,33.1,30.8,30.7,30.6,30.5,30.4,30.2,29.0(d,JC−P=3.8Hz),26.3,26.0,23.8,19.1,14.5,−5.3;ESI−HRMS m/z 計算値:C2860Si(M+H) 598.3726,実測値:598.3700。
【0100】
(実施例1−7:化合物9の合成)
【0101】
【化17】

【0102】
化合物8(1.811g,3.029mmol)のアセトニトリル(30ml)溶液に、室温で炭酸カリウム(2.093g,15.145mmol)およびヨードメタン(1.89ml,30.289mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中2%(v/v)のメタノールからクロロホルム中2%(v/v)の水および38%(v/v)のメタノール)で精製し、化合物9(1.964g,収率72%)を得た。
【0103】
化合物9の物性データ:[α]23.5 −6.9(c=0.98,CHCl);IR(KBrディスク):3398,2926,1739,1467,1251,1020,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.09−5.16(m,1H),4.31−4.39(m,1H),4.23−4.29(m,1H),3.86(d,J=13.0Hz,2/3H),3.85(d,J=13.0Hz,2/3H),3.79(d,J=5.0Hz,2H),3.68(m,2H),3.31(m,2H),3.21(s,9H),2.37(t,J=7.3Hz,2H),1.63(tt,J=7.3Hz,2H),1.29(s,20H),0.91(s,9H),0.9(t,J=7.1Hz,3H),0.09(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.6,73.6(d,JC−P=6.7Hz),73.5(d,JC−P=6.7Hz),67.5(d,JC−P=5.7Hz),67.5(d,JC−P=4.8Hz),66.9,62.3(d,JC−P=1.9Hz),55.5(d,JC−P=6.7Hz),53.8,35.2,33.0,30.7,30.7,30.5,30.4,30.4,30.1,26.3,26.0,24.0(d,JC−P=2.9Hz),23.7,19.1,14.5,−5.2;ESI−HRMS m/z 計算値:C2963Si(M) 612.3883,実測値:612.3883。
【0104】
(実施例1−8:化合物10の合成)
【0105】
【化18】

【0106】
化合物9(1.274g,1.965mmol)のメタノール(20ml)溶液に、−78℃でトリメチルアミン(3ml)を加え、室温に昇温して4時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮後、酢酸エチルに溶解してセライトろ過を行い、濾液を再び減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中0.5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中3%(v/v)水および27%(v/v)のメタノール)で精製し、化合物10(1.015g,収率87%)を得た。
【0107】
化合物10の物性データ:[α]25.0 +1.7(c=1.08,CHCl);IR(KBrディスク):3381,2926,1728,1649,1249,1076,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.10(tt,J=5.5,5.5Hz,1H),4.06−4.12(m,1H),3.96−4.03(m,1H),3.82(dd,J=4.3,11.0Hz,1H),3.78(dd,J=5.7,11.2Hz,1H),3.63−3.67(m,2H),3.17(s,9H),2.99−3.13(m,2H),2.35(t,J=7.6Hz,2H),1.62(tt,J=7.3Hz,2H),1.29(s,20H),0.91(s,9H),0.90(t,J=7.3Hz,3H),0.09(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.8,74.6(d,JC−P=9.6Hz),67.6,65.4(d,JC−P=4.8Hz),63.1,53.7(d,JC−P=2.9Hz),53.7(d,JC−P=3.8Hz),35.2,33.0,30.7,30.5,30.4,30.4,30.2,26.3,26.0,23.9(d,JC−P=2.9Hz),23.7,19.1,14.5,−5.2;ESI−HRMS m/z 計算値:C2860Si(M+Na) 620.3546,実測値:620.3527。
【0108】
(実施例1−9:化合物K01(2−O−テトラデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホチオコリン)の合成)
【0109】
【化19】

【0110】
化合物10(0.405g,0.678mmol)のメタノール溶液(6.7ml)に室温でp−トルエンスルホン酸一水和物(0.064g,0.339mmol)を加え、20分間撹拌した。反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中0.5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中4%(v/v)水および38%(v/v)のメタノール)で精製し、K01(0.284g,収率87%)を得た。
【0111】
化合物K01の物性データ:[α]24.5+6.8(c=1.05,CHCl);H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.04(tt,J=5.5,5.5Hz,1H),4.05(ddd,J=4.8,7.6,11.0Hz,1H),3.98(ddd,J=6.0,6.6,11.0Hz,1H),3.70(m,2H),3.64(m,2H),3.16(s,9H),3.00−3.09(m,2H),2.36(t,J=7.3Hz,2H),1.62(tt,J=7.3,7.3Hz,2H),1.29(s,20H),0.90(t,J=7.1Hz,3H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:175.0,74.5(d,JC−P=8.6Hz),67.8,64.9(d,JC−P=5.7Hz),61.3,53.6(d,JC−P=3.8Hz),53.6(d,JC−P=3.8Hz),35.1,33.1,30.8,30.7,30.6,30.5,30.2,26.0,23.9(d,JC−P=2.9Hz),23.7,14.5;ESI−HRMS m/z 計算値:C2246(M+Na) 506.2681,実測値:506.2690。
【0112】
(実施例2:化合物K02合成)
【0113】
【化20】

【0114】
(実施例2−1:化合物18の合成)
【0115】
【化21】

【0116】
R−(−)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(化合物17:5g,37.833mmol)のDMF(113ml)溶液に、0℃で水素化ナトリウム(1.816g,45.40mmol)を加え、30分間撹拌した後、ベンジルブロミド(5.40ml,45.40mmol)を加えて室温に昇温し、30分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え中和した後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜10%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物18(7.633g,収率91%)を得た。
【0117】
化合物18の物性データ:[α]23.5 −21.7(c=1.07,CHCl);IR(NaCl,neat):2988,2856,1381,1097,738cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.26−7.36(m,5H),4.59(d,J=12.1Hz,1H),4.55(d,J=12.1Hz,1H),4.30(tt,J=6.2,6.2Hz,1H),4.05(dd,J=6.4,8.2Hz,1H),3.74(dd,J=6.4,8.2Hz,1H),3.55(dd,J=5.7,9.8Hz,1H),3.47(dd,J=5.5,9.8Hz,1H),1.42(s,3H),1.36(s,3H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:137.9,128.4,127.7,109.4,74.7,73.5,71.1,66.9,26.8,25.4;ESI−HRMS m/z 計算値:C1318Na(M+Na) 245.1154,実測値:245.1152。
【0118】
(実施例2−2:化合物19の合成)
【0119】
【化22】

【0120】
化合物18(5.257g,23.650mmol)のメタノール(46ml)溶液に、室温でp−トルエンスルホン酸一水和物(0.900g,4.730mmol)を加えて15時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え中和した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中16%(v/v)〜1%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物19(2.811g,収率65%)を得た。
【0121】
化合物19の物性データ:[α](c=,CHCl);IR(NaCl,neat):3387,2868,1655,1454,1207,698cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:7.24−7.36(m,5H),4.54(s,2H),3.79(tt,J=5.0,6.0Hz,1H),3.59(dd,J=5.0,11.2Hz,1H),3.54(dd,J=4.8,9.8Hz,1H),3.52(dd,J=6.0,11.2Hz,1H),3.47(dd,J=6.2,9.8Hz,1H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:137.6,128.4,127.9,127.7,73.5,71.7,70.6,64.0;ESI−HRMS m/z 計算値:C1014Na(M+Na) 205.0841,実測値:205.0839。
【0122】
(実施例2−3:化合物20の合成)
【0123】
【化23】

【0124】
化合物19(2.811g,15.426mmol)のジクロロメタン(45ml)溶液に、0℃でイミダゾール(2.100g,30.852mmol)およびtert−ブチルジメチルクロロシラン(2.790g,18.511mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物に水を加えた後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中2%(v/v)〜9%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物20(4.304g,収率94%)を得た。
【0125】
化合物20の物性データ:[α]24.5 −1.7(c=1.46,CHCl);H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.26−7.36(m,5H),4.55(s,2H),3.82−3.88(m,1H),3.67(dd,J=4.8,10.1Hz,1H),3.64(dd,J=5.7,10.1Hz,1H),3.54(dd,J=5.0,9.6Hz,1H),3.50(dd,J=6.0,10.1Hz,1H),2.54(d,J=4.8Hz,2H),0.89(s,9H),0.06(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:138.0,128.4,127.7,127.6,73.4,70.9,70.7,64.0,25.8,18.3,−5.4;ESI−HRMS m/z 計算値:C1628SiNa(M+Na) 319.1705,実測値:319.1695。
【0126】
(実施例2−4:化合物21の合成)
【0127】
【化24】

【0128】
化合物20(23.788g,80.235mmol)のジクロロメタン(240ml)溶液に、0℃でラウリン酸(20.894g,104.305mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(4.901g,40.118mmol)、およびジシクロへキシルカルボジイミド(19.866g,96.282mmol)を順次加え、1時間撹拌後、室温に昇温して4時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜3%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物21(34.578g,収率90%)を得た。
【0129】
化合物21の物性データ:[α]24.5 +3.7(c=1.05,CHCl);IR(NaCl,neat):3454,2928,1739,1464,1253,1111,841cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.27−7.36(m,5H),5.05(tt,J=5.3,5.3Hz,1H),4.56(d,J=12.1Hz,1H),4.52(d,J=12.1Hz,1H),3.76(dd,J=5.3,10.8Hz,1H),3.73(dd,J=5.3,10.8Hz,1H),3.64(dd,J=4.6,10.5Hz,1H),3.60(dd,J=5.5,10.5Hz,1H),2.31(t,J=7.3Hz,2H),1.62(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.25(s,16H),0.86−0.90(m,12H),0.04(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.3,138.1,128.3,127.6,73.2,72.9,68.4,61.6,34.5,31.9,29.6,29.5,29.3,29.3,29.1,25.8,25.0,22.7,18.2,14.1,−5.4,−5.4;ESI−HRMS m/z 計算値:C2850SiNa(M+Na) 501.3376,実測値:501.3363。
【0130】
(実施例2−5:化合物22の合成)
【0131】
【化25】

【0132】
化合物21(10.000g,20.886mmol)に活性化パラジウム炭素(2.000g)およびTHF(40ml)を順次加え、水素ガス雰囲気下室温で24時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、酢酸エチルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜16%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物22(6.915g,収率85%)を得た。
【0133】
化合物22の物性データ:[α]24.5 +8.8(c=1.02,CHCl);IR(NaCl,neat):3447,2928,1740,1458,1255,1109,837cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:4.89(tt,J=4.8,4.8Hz,1H),3.81−3.84(m,2H),3.82(dd,J=5.0,10.5Hz,1H),3.77(dd,J=5.3,10.8Hz,1H),2.34(dt,J=1.1,7.3Hz,2H),1.63(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.26(s,16H),0.89(s,9H),0.88(t,J=6.9Hz,3H),0.07(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.7,74.3,62.8,62.5,34.4,31.9,29.6,29.5,29.3,29.3,29.1,25.8,25.0,22.7,18.2,14.1,−5.46,−5.51;ESI−HRMS m/z 計算値:C2144SiNa(M+Na) 411.2907,実測値:411.2897。
【0134】
(実施例2−6:化合物24の合成)
【0135】
【化26】

【0136】
メチルジクロロホスファイト(0.40ml,4.106mmol)のTHF(17ml)溶液に、−78℃でジイソプロピルエチルアミン(1.79ml,10.266mmol)および化合物22(1.330g,3.422mmol)を順次加え、1時間撹拌後、同温でメタノール(0.28ml,6.844mmol)を加えて35分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジエチルエーテルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。濃縮後に析出する白色沈殿物を自然ろ過で除去し、沈殿物をヘキサンで数回洗浄後、再び減圧濃縮を行った。得られた化合物を精製することなく次の反応に用いた。
【0137】
モレキュラーシーブMS4Å(0.266g)およびジクロロメタン(12ml)の入った反応容器に、0℃で四臭化炭素(1.362g,4.106mmol)および先ほど調製した化合物のジクロロメタン溶液(5ml)を順次加え、30分間撹拌した。次に、同温でジメチルアミノエタンチオール塩酸塩(0.727g,5.133mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(1.79ml,10.266mmol)、および2,6−ルチジン(0.11ml,1.027mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジクロロメタンで数回洗浄後、0℃で減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中33%(v/v)酢酸エチルからクロロホルム中2%(v/v)メタノール)で精製し、化合物24(0.844g,収率43%)を得た。
【0138】
化合物24の物性データ:[α]24.5 +4.8(c=1.12,CHCl);IR(NaCl,neat):3447,2928,1734,1458,1252,1020,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.07(ddt,J=3.7,5.5,5.5Hz,1H),4.20−4.34(m,2H),3.81(d,J=12.8Hz,2/3H),3.81(d,J=12.8Hz,2/3H),3.78(m,2H),2.93−3.01(m,2H),2.63(t,J=7.8Hz,2H),2.36(dt,J=1.4,7.3Hz,2H),2.28(s,6H),1.63(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.29(s,16H),0.91(s,9H),0.90(t,J=6.9Hz,3H),0.09(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.5,73.7(d,JC−P=6.7Hz),73.6(d,JC−P=7.7Hz),67.0(d,JC−P=5.7Hz),62.2(d,JC−P=4.8Hz),60.4(d,JC−P=4.8Hz),54.9(d,JC−P=5.7Hz),45.2,35.2,33.1,30.7,30.6,30.5,30.4,30.2,28.9(d,JC−P=3.8Hz),26.3,26.0,23.8,19.1,14.5,−5.3;ESI−HRMS m/z 計算値:C2656SiNa(M+Na) 592.3233,実測値:592.3207。
【0139】
(実施例2−7:化合物25の合成)
【0140】
【化27】

【0141】
化合物24(0.798g,1.400mmol)のアセトニトリル(7.0ml)溶液に、室温で炭酸カリウム(0.967g,7.000mmol)およびヨードメタン(0.87ml,14.003mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中2%(v/v)メタノールからクロロホルム中2%(v/v)水および38%(v/v)メタノール)で精製し、化合物25(0.753g,収率87%)を得た。
【0142】
化合物25の物性データ:[α]23.0 +5.7(c=1.02,CHCl);IR(KBrディスク):3393,2928,1734,1458,1252,1115,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.09−5.15(m,1H),4.31−4.39(m,1H),4.22−4.31(m,1H),3.86(d,J=12.8Hz,2/3H),3.85(d,J=13.0Hz,2/3H),3.79(d,J=5.3Hz,2H),3.67(m,2H),3.30(m,2H),3.20(s,9H),2.37(t,J=7.3Hz,2H),1.63(tt,J=7.1,7.1,Hz,2H),1.29(s,16H),0.92(s,9H),0.90(t,J=7.1Hz,3H),0.09(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.6,73.6(d,JC−P=7.7Hz),73.5(d,JC−P=6.7Hz),67.6(d,JC−P=5.7Hz),67.5(d,JC−P=4.8Hz),66.9,62.3(d,JC−P=2.8Hz),55.5(d,JC−P=5.7Hz),53.7,35.2,33.1,30.7,30.6,30.5,30.5,30.4,30.1,26.3,26.0,24.0(d,JC−P=2.9Hz),23.7,19.1,14.5,−5.3;ESI−HRMS m/z 計算値:C2759Si(M) 584.3570,実測値:584.3542。
【0143】
(実施例2−8:化合物26の合成)
【0144】
【化28】

【0145】
化合物25(0.719g,1.010mmol)のメタノール(10ml)溶液に、−78℃でトリメチルアミン(1.5ml)を加え、室温に昇温して4時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮後、酢酸エチルに溶解してセライトろ過を行い、濾液を再び減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中0.5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中3%(v/v)水および27%(v/v)メタノール)で精製し、化合物26(0.564g,収率98%)を得た。
【0146】
化合物26の物性データ:[α]23.5 −2.7(c=1.09,CHCl);IR(NaCl,neat):3399,2928,1734,1473,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.08(tt,J=4.6,6.0Hz,1H),4.06(ddd,J=4.6,8.0,11.2Hz,1H),3.97(ddd,J=6.4,6.4,11.0Hz,1H),3.81(dd,J=4.3,11.0Hz,1H),3.77(dd,J=5.7,11.2Hz,1H),3.62−3.66(m,2H),3.15(s,9H),2.99−3.08(m,2H),2.35(dt,J=1.1,7.6Hz,2H),1.62(tt,J=7.3,7.3Hz,2H),1.29(s,16H),0.90(s,9H),0.90(t,J=7.1Hz,3H),0.08(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:175.0,74.7(d,JC−P=8.6Hz),67.9,65.3(d,JC−P=5.7Hz),63.1,53.6(d,JC−P=3.8Hz),53.6(d,JC−P=3.8Hz),35.3,33.1,30.7,30.6,30.5,30.4,30.2,26.3,26.0,23.9(d,JC−P=2.9Hz),23.7,19.1,14.5,−5.2;ESI−HRMS m/z 計算値:C2656SiNa(M+Na) 592.3233,実測値:592.3220。
【0147】
(実施例2−9:化合物K02(2−O−ドデカノイル−sn−グリセロ−1−ホスホリオコリン)の合成)
【0148】
【化29】

【0149】
化合物26(0.459g,0.805mmol)のメタノール(8.1ml)溶液に、室温でp−トルエンスルホン酸一水和物(0.077g,0.403mmol)を加え、20分間撹拌した。反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中0.5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中4%(v/v)水および38%(v/v)メタノール)で精製し、化合物K02(0.268g,収率73%)を得た。
【0150】
化合物K02の物性データ:[α]23.5 −6.8(c=1.05,CHCl);H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.04(tt,J=5.5,5.5Hz,1H),4.04(ddd,J=4.8,7.8,11.2Hz,1H),3.98(ddd,J=6.4,6.4,11.0Hz,1H),3.70(m,2H),3.64(m,2H),3.15(s,9H),3.00−3.08(m,2H),2.36(t,J=7.3Hz,2H),1.62(tt,J=6.9,6.9Hz,2H),1.29(s,16H),0.89(t,J=6.2Hz,3H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.9,74.5(d,JC−P=8.6Hz),67.7,64.9(d,JC−P=4.8Hz),61.3,53.6(d,JC−P=3.8Hz),53.6(d,JC−P=3.8Hz),35.1,33.0,30.7,30.6,30.4,30.2,26.0,23.9(d,JC−P=2.9Hz),23.7,14.5;ESI−HRMS m/z 計算値:C2042Na(M+Na) 478.2368,実測値:478.2359。
【0151】
(実施例3:化合物K03の合成)
【0152】
【化30】

【0153】
(実施例3−1:化合物27の合成)
【0154】
【化31】

【0155】
化合物4(10.000g,33.729mmol)のジクロロメタン(165ml)溶液に、0℃でアラキジン酸(8.784g,43.848mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(2.060g,16.865mmol)、およびジシクロへキシルカルボジイミド(8.351g,40.475mmol)を順次加え、1時間撹拌後、室温に昇温して2時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、濾液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をヘキサンに溶かし、セライトろ過後、再び減圧濃縮を行った。残査をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜3%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物27(14.947g,収率75%)を得た。
【0156】
化合物27の物性データ:[α]23.0 −4.9(c=1.30,CHCl);IR(NaCl,neat):3456,2928,1739,1253,1111,837cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.26−7.36(m,5H),5.05(tt,J=5.3,5.3Hz,1H),4.56(d,J=12.1Hz,1H),4.52(d,J=12.4Hz,1H),3.76(dd,J=5.3,10.8Hz,1H),3.73(dd,J=5.5,10.8Hz,1H),3.64(dd,J=4.6,10.5Hz,1H),3.60(dd,J=5.5,10.5Hz,1H),2.31(t,J=7.3Hz,2H),1.62(tt,J=7.3,7.3Hz,2H),1.25(s,32H),0.86−0.88(m,12H),0.04(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.3,138.1,128.3,127.6,73.2,72.9,68.4,61.6,34.5,31.9,29.7,29.7,29.6,29.4,29.3,29.1,25.8,25.0,22.7,18.2,14.1,−5.40,−5.43;ESI−HRMS m/z 計算値:C3666SiNa(M+Na) 613.4628,実測値613.4608。
【0157】
(実施例3−2:化合物28の合成)
【0158】
【化32】

【0159】
化合物27(4.790,8.105mmol)に活性化パラジウム炭素(1.437g)およびTHF(16ml)を順次加え、水素ガス雰囲気下室温で13時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、酢酸エチルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜16%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物28(2.661g,収率66%)を得た。
【0160】
化合物28の物性データ:[α]24.0 −7.2(c=1.25,CHCl);H NMR(CDCl,400MHz),δ:4.89(tt,J=4.8,4.8Hz,1H),3.81(m,2H),3.82(dd,J=4.8,10.8Hz,1H),3.77(dd,J=5.3,10.8Hz,1H),2.34(t,J=6.9Hz,2H),2.24(t,J=6.0Hz,1H),1.63(tt,J=7.3,7.3Hz,2H),1.25(s,32H),0.89(s,9H),0.88(t,J=7.1Hz,3H),0.07(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.7,74.3,62.8,62.5,34.4,31.9,29.7,29.7,29.6,29.5,29.4,29.3,29.1,25.8,25.0,22.7,18.2,14.1,−5.46,−5.51;ESI−HRMS m/z 計算値:C2960SiNa(M+Na) 523.4159,実測値:523.4155。
【0161】
(実施例3−3:化合物30の合成)
【0162】
【化33】

【0163】
メチルジクロロホスファイト(0.46ml,4.792mmol)のTHF(20ml)溶液に、−78℃でジイソプロピルエチルアミン(2.09ml)および化合物28(2.000g,3.993mmol)を順次加え、1時間撹拌後、同温でMeOH(0.32ml,7.986mmol)を加えて30分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジエチルエーテルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。濃縮後に析出する白色沈殿物を自然ろ過で除去し、沈殿物をヘキサンで数回洗浄後、再び減圧濃縮を行った。得られた化合物を精製することなく次の反応に用いた。
【0164】
モレキュラーシーブMS4Å(0.4g)およびジクロロメタン(15ml)の入った反応容器に、0℃で四臭化炭素(1.589g,4.792mmol)および先ほど調製した化合物のジクロロメタン溶液(5ml)を順次加え、20分間撹拌した。次に、同温でジメチルアミノエタンチオール塩酸塩(1.131g,7.986mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(3.49ml,19.965mmol)、および2,6−ルチジン(0.13ml,1.198mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジクロロメタンで数回洗浄後、0℃で減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中33%(v/v)酢酸エチルからクロロホルム中2%(v/v)メタノール)で精製し、化合物30(1.721g,収率63%)を得た。
【0165】
化合物30の物性データ:[α]23.5 −4.1(c=0.98,CHCl);IR(NaCl,neat):3387,2924,1734,1467,1248,1076,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.07(ddt,J=3.7,5.5,5.5Hz,1H),4.20−4.34(m,2H),3.81(d,J=12.8Hz,2/3H),3.81(d,J=12.8Hz,2/3H),3.78(m,2H),2.93−3.00(m,2H),2.63(t,J=7.8Hz,2H),2.37(dt,J=1.1,7.3Hz,2H),2.27(s,6H),1.63(tt,J=6.9,6.9Hz,2H),1.29(s,32H),0.91(s,9H),0.90(t,J=7.1Hz,3H),0.09(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.3,73.6(d,JC−P=7.7Hz),73.6(d,JC−P=7.7Hz),66.9(d,JC−P=5.7Hz),62.2(d,JC−P=4.8Hz),60.4(d,JC−P=5.7Hz),54.9(d,JC−P=5.7Hz),45.3,35.2,33.1,30.8,30.6,30.6,30.5,30.4,30.2,29.0(d,JC−P=3.8Hz),26.3,26.0,23.8,19.1,14.6,−5.2;ESI−HRMS m/z 計算値:C3472Si(M+H) 682.4665,実測値:682.4675。
【0166】
(実施例3−4:化合物31の合成)
【0167】
【化34】

【0168】
化合物30(1.811g,1.261mmol)のメタノール(20ml)溶液に、室温で炭酸カリウム(0.871g,6.302mmol)およびヨードメタン(0.79ml,5.566mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中2%(v/v)メタノールからクロロホルム中2%(v/v)水および38%(v/v)メタノール)で精製し、化合物31(0.715g,収率78%)を得た。
【0169】
化合物31の物性データ:H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.09−5.15(m,1H),4.31−4.39(m,1H),4.22−4.29(m,1H),3.86(d,J=12.8Hz,2/3H),3.85(d,J=12.8Hz,2/3H),3.79(d,J=5.0Hz,2H),3.65−3.69(m,2H),3.26−3.35(m,2H),3.20(s,9H),2.37(t,J=7.3Hz,2H),1.63(tt,J=7.1Hz,2H),1.29(s,32H),0.91(s,9H),0.9(t,J=7.1Hz,3H),0.09(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.6,73.6(d,JC−P=6.7Hz),67.6(d,JC−P=5.7Hz),67.6(d,JC−P=5.7Hz),67.0,62.3(d,JC−P=2.9Hz),55.5(d,JC−P=6.7Hz),53.7,35.2,33.1,30.8,30.6,30.5,30.4,30.2,26.3,26.0,24.0(d,JC−P=3.8Hz),23.8,19.1,14.5,−5.3;ESI−HRMS m/z 計算値:C3575Si(M) 696.4822,実測値:696.4802。
【0170】
(実施例3−5:化合物32の合成)
【0171】
【化35】

【0172】
化合物31(0.715g,1.026mmol)のメタノール(5ml)およびトルエン(1ml)溶液に、−78℃でトリメチルアミン(1.5ml)を加え、室温に昇温して3時間30分間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮後、酢酸エチルに溶解してセライトろ過を行い、濾液を再び減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中3%(v/v)水および27%(v/v)メタノール)で精製し、化合物32(0.588g,収率84%)を得た。
【0173】
化合物32の物性データ:H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.09(tt,J=4.6,5.7Hz,1H),4.06(ddd,J=4.6,7.8,11.2Hz,1H),3.97(ddd,J=6.6,6.6,11.0Hz,1H),3.81(dd,J=4.3,11.0Hz,1H),3.77(dd,J=5.7,11.2Hz,1H),3.62−3.66(m,2H),3.15(s,9H),2.99−3.08(m,2H),2.36(dt,J=0.9,7.6Hz,2H),1.62(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.29(s,32H),0.90(s,9H),0.90(t,J=7.1Hz,3H),0.08(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.7,74.6(d,JC−P=9.6Hz),67.8,65.2(d,JC−P=5.7Hz),63.1,53.6(d,JC−P=3.8Hz),53.6(d,JC−P=3.8Hz),35.3,33.1,30.8,30.6,30.5,30.5,30.3,26.4,26.0,23.9(d,JC−P=3.8Hz),23.8,19.1,14.6,−5.1。
【0174】
(実施例3−6:化合物K03(2−O−エイコサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホチオコリン)の合成)
【0175】
【化36】

【0176】
化合物32(0.100g,0.147mmol)のメタノール(2.0ml)溶液に室温でDowex 50WをpH=4になるまで加え、2分間撹拌した。反応混合物をろ過してDowexを除去し、ろ液をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中0.5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中4%(v/v)水および38%(v/v)メタノール)で精製し、化合物K03(0.025g,収率30%)を得た。
【0177】
化合物K03の物性データ:H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.04(tt,J=5.3,5.3Hz,1H),4.05(ddd,J=4.8,7.6,11.0Hz,1H),3.98(ddd,J=6.0,6.9,11.2Hz,1H),3.70(m,2H),3.64(m,2H),3.15(s,9H),3.01−3.09(m,2H),2.36(t,J=7.6Hz,2H),1.62(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.28(s,32H),0.90(t,J=7.1Hz,3H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:175.0,74.5(d,JC−P=8.6Hz),67.8,64.9(d,JC−P=5.7Hz),61.4,53.6(d,JC−P=3.8Hz),53.6(d,JC−P=3.8Hz),35.2,33.1,30.8,30.7,30.6,30.5,30.2,26.0,23.9(d,JC−P=2.9Hz),23.7,14.5;ESI−HRMS m/z 計算値:C2858(M+Na) 590.3620,実測値:590.3618。
【0178】
(実施例4:化合物K04の合成)
【0179】
【化37】

【0180】
(実施例4−1:化合物11の合成)
【0181】
【化38】

【0182】
化合物3(4.348g,23.861mmol)のジクロロメタン(69ml)溶液に、0℃でミリスチン酸(5.994g,26.247mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(1.458g,11.931mmol)、および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(5.032g,26.247mmol)を加えて3時間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜3%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物11(4.857g,収率52%)を得た。
【0183】
化合物11の物性データ:[α]25.5 +1.8(c=0.94,CHCl);IR(NaCl,neat):3454,2924,1738,1456,1113,736cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.28−7.38(m,5H),4.56(s,2H),4.19(dd,J=4.6,11.7Hz,1H),4.14(dd,J=6.2,11.7Hz,1H),4.03(m,1H),3.56(dd,J=4.3,9.6Hz,1H),3.49(dd,J=6.2,9.6Hz,1H),2.50(br s,1H),2.32(t,J=7.6Hz,2H),1.25(s,20H),0.88(t,J=6.9Hz,3H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.9,137.6,128.5,127.9,127.7,73.5,70.9,68.9,65.3,34.2,31.9,29.7,29.7,29.6,29.5,29.4,29.3,29.1,24.9,22.7,14.1;ESI−HRMS m/z 計算値:C2440Na(M+Na) 415.2824,実測値:415.2808。
【0184】
(実施例4−2:化合物12の合成)
【0185】
【化39】

【0186】
化合物11(4.580g,11.667mmol)のジクロロメタン(50ml)溶液に、室温でイミダゾール(2.383g,35.001mmol)およびトリエチルシリルクロライド(2.34ml,14.000mmol)を順次加えて10分間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜3%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物12(5.856g,収率99%)を得た。
【0187】
化合物12の物性データ:[α]25.5 +9.8(c=1.37,CHCl);IR(NaCl,neat):2926,1741,1458,1114,1006,740cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:7.26−7.36(m,5H),4.53(s,2H),4.19(tt,J=6.9,6.9Hz,1H),4.00−4.06(m,2H),3.45(d,J=5.3Hz,2H),2.28(t,J=7.6Hz,2H),1.60(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.25(s,20H),0.94(t,J=7.8Hz,9H),0.88(t,J=6.9Hz,3H),0.61(q,J=8.0Hz,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.7,138.1,128.3,127.6,73.4,71.7,69.5,66.1,34.3,31.9,29.7,29.6,29.5,29.4,29.3,29.2,24.9,22.7,14.1,6.7,4.8;ESI−HRMS m/z 計算値:C3054SiNa(M+Na) 529.3689,実測値:529.3674。
【0188】
(実施例4−3:化合物13の合成)
【0189】
【化40】

【0190】
化合物12(3.929g,7.752mmol)に活性化パラジウム炭素(0.786g)およびTHF(20ml)を順次加え、水素ガス雰囲気下室温で13時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、酢酸エチルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜16%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物13(2.622g,収率81%)を得た。
【0191】
化合物13の物性データ:[α]25.0 −6.1(c=1.27,CHCl);IR(NaCl,neat):3472,2926,1741,1460,1116,1005,744cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:4.11(dd,J=6.0,11.4Hz,1H),4.06(dd,J=5.5,11.2Hz,1H),3.93(tt,J=4.6,5.7Hz,1H),3.61(ddd,J=4.1,5.3,9.8Hz,1H),3.55(ddd,J=4.8,7.3,11.7Hz,1H),2.32(t,J=7.6Hz,2H),2.01−2.05(m,1H),1.62(tt,J=6.2,6.2Hz,2H),1.26(s,20H),0.97(t,J=7.8Hz,9H),0.88(t,J=6.9Hz,3H),0.64(q,J=7.8Hz,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.8,70.4,64.8,63.9,34.2,31.9,29.7,29.6,29.5,29.4,29.3,29.2,24.9,22.7,14.1,6.7,4.8;ESI−HRMS m/z 計算値:C2348SiNa(M+Na) 439.3220,実測値:439.3208。
【0192】
(実施例4−4:化合物15の合成)
【0193】
【化41】

【0194】
メチルジクロロホスファイト(0.35ml,3.591mmol)のTHF(10ml)溶液に、−78℃でジイソプロピルエチルアミン(1.57ml)および化合物13(1.247g,2.992mmol)のTHF(5ml)溶液を順次加え、1時間撹拌後、同温でメタノール(0.24ml,5.984mmol)を加えて40分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジエチルエーテルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。濃縮後に析出する白色沈殿物を自然ろ過で除去し、沈殿物をヘキサンで数回洗浄後、再び減圧濃縮を行った。得られた化合物を精製することなく次の反応に用いた。
【0195】
モレキュラーシーブMS4Å(0.24g)およびジクロロメタン(10ml)の入った反応容器に、0℃で四臭化炭素(1.191g,3.590mmol)、先ほど調製した化合物のジクロロメタン溶液(5ml)を順次加え、30分間撹拌した。次に、同温でジメチルアミノエタンチオール塩酸塩(0.848g,5.984mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(2.61ml,14.960mmol)、および2,6−ルチジン(0.10ml,0.898mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジクロロメタンで数回洗浄後、0℃で減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中33%(v/v)酢酸エチルからクロロホルム中2%(v/v)メタノール)で精製し、化合物15(1.126g,収率63%)を得た。
【0196】
化合物15の物性データ:[α]24.5 +6.9(c=1.22,CHCl);IR(NaCl,neat):2926,2773,1741,1460,1263,1145,1022,746cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:4.02−4.20(m,5H),3.83(d,J=12.8Hz,2/3H),3.83(d,J=12.8Hz,2/3H),2.98(m,2H),2.63(t,J=6.9Hz,2H),2.35(t,J=7.3Hz,2H),2.27(s,6H),1.63(t,J=6.9Hz,2H),1.29(s,20H),1.00(t,J=7.8Hz,9H),0.90(t,J=6.9Hz,3H),0.68(q,J=7.8Hz,6H);ESI−HRMS m/z 計算値:C2860SiNa(M+Na) 598.3726,実測値:598.3718。
【0197】
(実施例4−5:化合物16の合成)
【0198】
【化42】

【0199】
化合物15(0.575g,0.962mmol)のアセトニトリル(12ml)溶液に、室温で炭酸カリウム(0.665g,4.812mmol)およびヨードメタン(0.60ml,9.617mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中2%(v/v)メタノールからクロロホルム中2%(v/v)水および38%(v/v)メタノール)で精製し、化合物16(0.503g,収率71%)を得た。
【0200】
化合物16の物性データ:IR(KBrディスク):3389,2924,1736,1466,1238,1074,740cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:4.06−4.21(m,5H),3.87(d,J=12.8Hz,2/3H),3.87(d,J=12.8Hz,2/3H),3.67(m,2H),3.26−3.34(m,2H),3.20(s,9H),2.36(t,J=7.3Hz,2H),1.62(tt,J=6.9,6.9Hz,2H),1.29(s,20H),1.00(t,J=8.0Hz,9H),0.90(t,J=7.1Hz,3H),0.67(q,J=8.0Hz,6H);ESI−HRMS m/z 計算値:C2963Si(M) 612.3883,実測値:612.3891。
【0201】
(実施例4−6:化合物K04(1−O−テトラデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホチオコリン)の合成)
【0202】
【化43】

【0203】
化合物16(0.503g,0.680mmol)のメタノール(10ml)溶液に、−78℃でトリメチルアミン(2ml)を加え、室温に昇温して4時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮後、酢酸エチルに溶解してセライトろ過を行い、濾液を再び減圧濃縮した。残渣をメタノール(5ml)に溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.013g,0.068mmol)を加え、10分間撹拌した。反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中0.5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中3%(v/v)水および27%(v/v)メタノール)で精製し、化合物K04(0.250g,収率76%)を得た。
【0204】
化合物K04の物性データ:IR(KBrディスク):3410,2924,1736,1477,1224,1072cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:4.18(dd,J=4.8,11.2Hz,1H),4.12(dd,J=6.0,11.2Hz,1H),4.00(tt,J=5.3,5.3Hz,1H),3.87−3.95(m,2H),3.65(m,2H),3.14(s,9H),3.04(m,2H),2.36(t,J=7.3Hz,2H),1.62(tt,J=7.1Hz,2H),1.29(s,20H),0.90(t,J=6.9Hz,3H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:175.3,69.6(d,JC−P=8.6Hz),67.7−67.8(m,2C),66.3,53.6,53.6,53.6,34.9,33.1,30.8,30.6,30.5,30.4,30.2,26.0,23.9(d,JC−P=3.8Hz),23.7,14.5;ESI−HRMS m/z 計算値:C2246Na(M+Na) 506.2681,実測値:506.2657。
【0205】
(実施例5:化合物K06の合成)
【0206】
【化44】

【0207】
(実施例5−1:化合物39の合成)
【0208】
【化45】

【0209】
化合物4(6.578g,22.187mmol)に活性化パラジウム炭素(0.987g)およびTHF(45ml)を順次加え、水素ガス雰囲気下室温で77時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、酢酸エチルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中3%(v/v)〜50%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物39(2.582g,収率56%)を得た。
【0210】
化合物39の物性データ:IR(NaCl,neat):3387,2858,1464,1257,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:3.59−3.63(m,2H),3.59−3.63(m,2H),3.47−3.53(m,1H),0.91(s,9H),0.08(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:73.9,65.5,64.4,26.4,−5.3。
【0211】
(実施例5−2:化合物40の合成)
【0212】
【化46】

【0213】
化合物39(2.450g,11.873mmol)のジクロロメタン(25ml)溶液に、0℃でイミダゾール(1.617g,23.746mmol)およびトリエチルシリルクロライド(2.19ml,13.060mmol)を順次加えて、室温で20分間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残査をシリカゲルクロマトグラフィー(3%(v/v)トリエチルアミンを含むヘキサン中0%(v/v)〜2%(v/v)の酢酸エチル)で精製し、化合物40(2.714g,収率71%)を得た。
【0214】
化合物40の物性データ:[α]24.0 −1.9(c=1.10,CHCl);IR(NaCl,neat):3395,2955,1464,1095,837 cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:3.59−3.69(m,2H),3.59−3.69(m,2H),3.65(m,1H),2.49(d,J=4.8Hz,1H),0.96(t,J=8.0Hz,9H),0.90(s,9H),0.61(q,J=7.8Hz,6H),0.07(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:71.9,63.6,63.3,25.9,6.7,4.4,−5.4;ESI−HRMS m/z 計算値:C1536SiNa(M+Na) 343.2101,実測値:343.2108。
【0215】
(実施例5−3:化合物41の合成)
【0216】
【化47】

【0217】
化合物40(0.781g,2.436mmol)のジクロロメタン(7.3ml)溶液に、0℃でリノール酸(0.97ml,3.167mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.149g,1.218mmol)、および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(0.560g,2.923mmol)を順次加え、1時間撹拌後、室温に昇温して2時間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中1%(v/v)〜3%(v/v)酢酸エチル)で精製し、化合物41(1.263g,収率89%)を得た。
【0218】
化合物41の物性データ:[α]22.5 −0.4(c=1.05,CHCl);IR(NaCl,neat):2955,1740,1464,1252,1103,837cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:5.29−5.40(m,4H),4.88(tt,J=5.3,5.3Hz,1H),3.76(dd,J=5.0,10.8Hz,1H),3.76(dd,J=5.0,10.8Hz,1H),3.71(dd,J=5.0,10.8Hz,2H),2.77(dd,J=6.2,6.2Hz,2H),2.30(t,J=7.6Hz,2H),2.05(dt,J=6.9,6.9Hz,4H),1.62(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.25−1.37(m,14H),0.95(t,J=7.8Hz,9H),0.88−0.89(m,12H),0.59(q,J=7.8Hz,6H),0.05(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.6,130.5,130.3,128.3,128.2,75.1,61.6,61.4,34.8,31.9,29.9,29.7,29.6,29.5,29.4,27.5,26.1,25.9,25.3,22.9,18.6,14.4,7.0,4.7,−5.09,−5.13;ESI−HRMS m/z 計算値:C3366SiNa(M+Na) 605.4397,実測値:605.4394。
【0219】
(実施例5−4:化合物42の合成)
【0220】
【化48】

【0221】
化合物41(1.263,2.166mmol)のメタノール(10ml)およびクロロホルム(1ml)溶液に、室温でPPTS(0.054g,0.217mmol)を加え、同温で10分間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中2%(v/v)〜16%(v/v)酢酸エチル)で精製し、化合物42(0.810g,収率80%)を得た。
【0222】
化合物42の物性データ:[α]25.5 −9.2(c=1.15,CHCl);IR(NaCl,neat):3456,2955,1740,1464,1253,1103,837cm−1H NMR(CDCl,400MHz),δ:5.30−5.42(m,4H),4.89(tt,J=4.8,4.8Hz,1H),3.80−3.82(m,2H),3.81(dd,J=4.8,10.8Hz,1H),3.77(dd,J=5.5,10.8Hz,1H),2.77(dd,J=6.2,6.2Hz,2H),2.34(dt,J=0.9,7.6Hz,2H),2.21(t,J=5.5Hz,1H),2.05(dt,J=6.9,6.9Hz,4H),1.62(m,2H),1.26−1.39(m,14H),0.89(s,9H),0.89(m,3H),0.07(s,6H);13C NMR(CDCl,100MHz),δ:173.6,130.2,130.0,128.0,127.9,74.3,62.9,62.5,34.4,31.5,29.6,29.4,29.2,29.1,27.2,25.8,25.6,25.0,22.6,18.2,14.1,−5.46,−5.50;ESI−HRMS m/z 計算値:C2752SiNa(M+Na) 491.3533,実測値:491.3513。
【0223】
(実施例5−5:化合物44の合成)
【0224】
【化49】

【0225】
メチルジクロロホスファイト(0.20ml,2.073mmol)のTHF(8.5ml)溶液に、−78℃でジイソプロピルエチルアミン(0.91ml)および化合物42(0.810g,1.728mmol)を順次加え、1時間撹拌後、同温でメタノール(0.14ml,5.184mmol)を加えて40分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジエチルエーテルで数回洗浄後、減圧濃縮を行った。濃縮後に析出する白色沈殿物を自然ろ過で除去し、沈殿物をヘキサンで数回洗浄後、再び減圧濃縮を行った。得られた化合物を精製することなく次の反応に用いた。
【0226】
モレキュラーシーブMS4Å(0.160g)存在下、四臭化炭素(0.688g,2.074mmol)のジクロロメタン(5.0ml)溶液に、先ほど調製した化合物のジクロロメタン(5.0ml)溶液を加え、30分間撹拌した。次に、同温でジメチルアミノエタンチオール塩酸塩(0.367g,2.592mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(1.06ml,6.048mmol)、および2,6−ルチジン(0.06ml,0.518mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ジクロロメタンで数回洗浄後、0℃で減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中33%(v/v)酢酸エチルからクロロホルム中2%(v/v)メタノール)で精製し、化合物44(0.753g,収率67%)を得た。
【0227】
化合物44の物性データ:[α]25.0 −4.5(c=1.27,CHCl);IR(NaCl,neat):3470,2856,1743,1464,1257,1118,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.28−5.39(m,4H),5.07(ddt,J=3.7,5.5,5.5Hz,1H),4.21−4.33(m,2H),3.81(d,J=12.6Hz,3/2H),3.81(d,J=12.6Hz,3/2H),3.78(d,J=5.3Hz 2H),2.93−3.00(m,2H),2.77(dd,J=6.2,6.2Hz,2H),2.62(t,J=7.8Hz,2H),2.36(t,J=7.1Hz,2H),2.27(s,6H),1.63(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.32−1.38(m,14H),0.91(s,9H),0.90(m,3H),0.09(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.4,130.9,130.8,129.1,129.0,73.6(d,JC−P=7.7Hz,1/2C),73.6(d,JC−P=6.7Hz,1/2C),67.0(d,JC−P=5.7Hz),62.2(d,JC−P=4.8Hz),60.4(d,JC−P=5.7Hz),54.9(d,JC−P=5.7Hz),45.3,35.1,32.7,30.7,30.5,30.3,30.2,29.0(d,JC−P=3.8Hz),28.2,26.6,26.3,26.0,23.7,19.1,14.5,−5.3;ESI−HRMS m/z 計算値:C3264Si(M+H) 672.3859,実測値:672.3832。
【0228】
(実施例5−6:化合物45の合成)
【0229】
【化50】

【0230】
化合物44(0.753g,1.158mmol)のアセトニトリル(12ml)溶液に、室温で炭酸カリウム(0.800g,5.790mmol)、ヨードメタン(0.72ml,11.580mmol)を順次加え、10分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中2%(v/v)メタノールからクロロホルム中2%(v/v)水および38%(v/v)メタノール)で精製し、化合物45(0.529g,収率65%)を得た。
【0231】
化合物45の物性データ:[α]25.0 −3.3(c=0.87,CHCl);IR(NaCl,neat):3379,2928,1740,1466,1252,1020,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.32−5.39(m,2H),5.09−5.16(m,1H),4.31−4.39(m,1H),4.22−4.29(m,1H),3.86(d,J=13.0Hz,3/2H),3.85(d,J=12.8Hz,3/2H),3.79(d,J=5.0Hz,2H),3.64−3.68(m,2H),3.30−3.32(m,2H),3.21(s,9H),2.77(dd,J=6.2,6.2Hz,2H),2.37(t,J=7.6Hz,2H),2.06(dt,J=6.6,6.6Hz,2H),1.63(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.32−1.38(m,14H),0.91(s,9H),0.89(m,3H),0.09(s,6H);ESI−HRMS m/z 計算値:C3367Si(M) 664.4196,実測値:664.4167。
【0232】
(実施例5−7:化合物46の合成)
【0233】
【化51】

【0234】
化合物45(0.411g,0.519mmol)のメタノール(10ml)溶液に、−78℃でトリメチルアミン(1ml)を加え、室温に昇温して4時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮後、酢酸エチルに溶解してセライトろ過を行い、濾液を再び減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中0.5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中3%(v/v)水および27%(v/v)メタノール)で精製し、化合物46(0.274g,収率81%)を得た。
【0235】
化合物46の物性データ:[α]25.0 +2.7(c=1.02,CHCl);IR(NaCl,neat):3393,2928,1732,1466,1250,1078,837cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.30−5.39(m,4H),5.09(tt,J=4.6,6.0Hz,1H),4.06(dd,J=4.6,8.0,11.2Hz,1H),3.97(dd,J=6.6,6.6,11.0Hz,1H),3.81(dd,J=4.3,11.0Hz,1H),3.77(dd,J=5.7,11.2Hz,1H),3.62−3.66(m,2H),3.15(s,9H),2.99−3.08(m,2H),2.77(dd,J=6.2,6.2Hz,2H),2.36(dt,J=1.1,7.3Hz,2H),2.06(dt,J=6.9,6.9Hz,2H),1.63(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.32−1.38(m,14H),0.90(s,9H),0.90(m,2H),0.08(s,6H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:175.0,130.9,130.8,129.1,129.0,74.7(d,JC−P=8.6Hz),67.9,65.3(d,JC−P=5.7Hz),63.1,53.6,53.6,53.6,35.3,32.7,30.7,30.5,30.3,30.2,28.6,26.6,26.3,26.0,23.9(d,JC−P=3.8Hz),23.6,14.5,−5.2;ESI−HRMS m/z 計算値:C3264Si(M+Na) 672.3859,実測値:672.3842。
【0236】
(実施例5−8:2−O−(シス−9,シス−12−オクタデカジエノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホチオコリン(K06)の合成)
【0237】
【化52】

【0238】
化合物46(0.274g,0.422mmol)のメタノール(4.2ml)溶液に、室温でp−トルエンスルホン酸一水和物(0.040g,0.211mmol)を加え、20分間撹拌した。反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中0.5%(v/v)水および20%(v/v)メタノールからクロロホルム中4%(v/v)水および38%(v/v)メタノール)で精製し、化合物K06(0.150g,収率66%)を得た。
【0239】
化合物K06の物性データ:[α]25.0 +6.3(c=1.13,CHCl);IR(NaCl,neat):3339,2926,1728,1481,1240,1072,812cm−1H NMR(CDOD,400MHz),δ:5.28−5.39(m,4H),5.04(tt,J=5.3,5.3Hz,1H),4.04(ddd,J=5.7,7.3,11.4Hz,1H),3.98(ddd,J=6.6,6.6,11.4Hz,1H),3.70(m,2H),3.65(m,2H),3.16(s,9H),3.01−3.09(m,2H),2.77(dd,J=6.2,6.2Hz,2H),2.37(t,J=7.3Hz,2H),2.06(dt,J=6.4,6.4Hz,4H),1.62(tt,J=7.1,7.1Hz,2H),1.36−1.40(m,14H),0.91(t,J=6.9Hz,3H);13C NMR(CDOD,100MHz),δ:174.9,130.9,130.8,129.1,129.0,74.6(d,JC−P=9.6Hz),67.8,64.9(d,JC−P=5.7Hz),61.4,53.6,35.1,32.7,30.7,30.5,30.3,30.2,30.2,28.2,26.5,26.0,23.9(d,JC−P=2.9Hz),23.6,14.5;ESI−HRMS m/z 計算値:C2650(M+Na) 558.2994,実測値:558.2968。
【0240】
(実施例6:反応時間および吸光度変化の検討)
以下の試薬AおよびBを調製した:
試薬A(pH8.5):
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 100mmol/L;
トリトンX−100 0.01%(w/v);
塩化マグネシウム 5mmol/L;および
DTNB 0.5mmol/L。
試薬B(pH6.5):
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン 10mmol/L;
トリトンX−100 0.01%(w/v);
メタノール 1%(v/v);および
1−ヒドロキシ−2−ミリストイル−3−グリセロホスホリルコリンの硫黄置換体(化合物K01) 10mmol/L。
【0241】
試料として生理食塩水、組換えオートタキシン(rATX:特許文献1参照)、または市販管理血清である液状コントロール血清IIワコー(和光純薬工業)を10μLずつマイクロプレートに取り、試薬Aを160μL加えて、37℃で15分間加温した。これに試薬Bを40μL加えて反応を開始し、37℃で15分間反応させた。生化学用自動分析装置TBA−80FR NEO(東芝メディカルシステムズ株式会社)を使用し、主波長412nmおよび副波長548nmの吸光度を約1分ごとに測定した。図1に、試薬Bを加えて反応を開始した後の吸光度の変化を示す。
【0242】
図1に示すように、rATXおよび血清では、吸光度は、反応時間とともに直線的に大きく上昇した。一方、リゾホスホリパーゼDの活性を全く有していない生理食塩水の吸光度は、直線的にわずかに変化することがわかった。そこで、1分間当たりの吸光度変化率を算出した。結果を図2に示す。
【0243】
図2に示す各試料の吸光度変化率から、リゾホスホリパーゼDの活性を全く有していない生理食塩水の吸光度変化率を差し引いた値が、真のリゾホスホリパーゼD活性を表す値となることがわかった。
【0244】
(実施例7:pHの検討)
次に、上記実施例6の試薬Aにおいて種々のpHを有する試薬Aを調製した、pHは、それぞれ7.0、7.5、8.0、8.5、および9.0に調整した。
【0245】
試料として生理食塩水およびrATXを用い、上記実施例6と同様の操作を行って、各pHでの吸光度変化率を算出した。結果を図3に示す。
【0246】
図3においては、各pHにおいてrATXの吸光度変化率から生理食塩水の吸光度変化率を差し引いた値をプロットした。その結果、pHが高い方が、吸光度変化率が高いことがわかった。
【0247】
(実施例8:基質の検討)
上記実施例6の試薬Bにおいて、以下の4種類のいずれかの基質を10mmol/L含む試薬Bを調製した:
基質1:1−ヒドロキシ−2−ミリストイル−3−グリセロホスホリルコリンの硫黄置換体(化合物K01);
基質2:1−ヒドロキシ−2−ラウロイル−3−グリセロホスホリルコリンの硫黄置換体の立体異性体(化合物K02);
基質3: 1−ミリストイル−2−ヒドロキシ−3−グリセロホスホリルコリンの硫黄置換体(化合物K04);および
基質4:1−ヒドロキシ−2−リノレオイル−3−グリセロホスホリルコリンの硫黄置換体(化合物K06)。
【0248】
試料として生理食塩水およびrATXを用い、上記実施例6と同様の操作を行って、吸光度変化を測定した。rATXの吸光度変化率から生理食塩水の吸光度変化率を差し引いたものを図4に示す。
【0249】
図4に示すように、基質の脂肪酸の位置、脂肪酸の種類、あるいは立体構造の違いに関わらず、リゾホスホリパーゼD活性の測定が可能であることがわかった。
【0250】
(実施例9:基質濃度の検討)
以下の試薬を調製した:
試薬A(pH8.5):
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 100mmol/L;
トリトンX−100 0.01%(w/v);
塩化マグネシウム 5mmol/L;および
DTNB 0.5mmol/L。
試薬B(pH6.5):
ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン 10mmol/L;
トリトンX−100 0.01%(w/v);
メタノール 1%(v/v);
基質1(化合物K01) 10mmol/Lあるいは基質3(化合物K04) 10mmol/L
【0251】
試料として生理食塩水、ならびにrATXの原液および1/2希釈液を用い、上記実施例6と同様の操作を行って、吸光度変化を測定した。rATXの吸光度変化率から生理食塩水の吸光度変化率を差し引いたものを図5に示す。
【0252】
図5に示すように、各基質とも、rATXの濃度依存的に吸光度変化率が上昇し、リゾホスホリパーゼD活性の定量が可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0253】
本発明によれば、リゾホスホリパーゼD活性の測定に有用な新規硫黄置換化合物が提供される。この新規化合物を用いることにより、試料中のリゾホスホリパーゼD活性をより簡便で迅速に測定することができ、リアルタイムで活性を測定することもできる。したがって、本発明のリゾホスホリパーゼD活性の測定方法は、リゾホスホリパーゼD活性が関与する様々な疾患、あるいはリゾホスホリパーゼDによって合成または分解される物質の変化に関与する様々な疾患の診断またはリスクの評価に利用できる。このような疾患としては、例えば、癌、腫瘍、および動脈硬化性疾患が挙げられる。さらに、本発明の方法は、これらの疾患の治療効果判定の判定や、被験物質のリゾホスホリパーゼD活性に及ぼす影響あるいは効果を調べるためのスクリーニングにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】各試料に本発明の硫黄置換化合物を添加した後の吸光度の経時変化を示すグラフである(実施例6)。
【図2】各試料における1分間当たりの吸光度変化率を示すグラフである(実施例6)。
【図3】pHと吸光度変化率との関係を示すグラフである(実施例7)。
【図4】種々の基質における吸光度変化率を示すグラフである(実施例8)。
【図5】rATXの希釈率と吸光度変化率との関係を示すグラフである(実施例9)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)または(II):
【化1】

(該式(I)および(II)において、RまたはRのいずれか一方が脂肪酸残基であり、他方が水素原子であり、そしてXが極性基である)で表されるリゾリン脂質の硫黄置換化合物。
【請求項2】
前記Xを含むX−OHが、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、グリセロール、およびスレオニンを含む群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記X−OHが、コリンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記RまたはRで表される脂肪酸残基が、飽和脂肪酸の脂肪酸残基である、請求項1から3のいずれかの項に記載の化合物。
【請求項5】
前記飽和脂肪酸が、炭素数8から20である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記飽和脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキジン酸からなる群より選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記RまたはRで表される脂肪酸残基が、不飽和脂肪酸の脂肪酸残基である、請求項1から3のいずれかの項に記載の化合物。
【請求項8】
前記不飽和脂肪酸が、炭素数8から22である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記不飽和脂肪酸が、パルミトイル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群より選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記RまたはRが、アルキル基およびアルケニル基からなる群より選択される脂肪族基を含む脂肪酸残基である、請求項1から3のいずれかの項に記載の化合物。
【請求項11】
リゾホスホリパーゼDの活性の測定方法であって、
リゾホスホリパーゼDを含有する試料に、請求項1から10のいずれかの項に記載の化合物とジスルフィド化合物とを加えて反応させる工程、および
生成したチオール化合物に由来する吸光度を測定する工程、
を包含する、方法。
【請求項12】
前記ジスルフィド化合物が、以下の式(III):
【化2】

で表される化合物であり、そして前記生成したチオール化合物が、以下の式(IV):
【化3】

で表される化合物であり、該式(III)および(IV)において、Rが、水素原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルケニル基、またはハロゲン原子である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Rが、水素原子である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リゾホスホリパーゼDを含有する試料が、血清、血漿、尿、唾液、涙液、精液、糞便溶解液、脊髄液、細胞培養液、細胞抽出液、および組換え型オートタキシン溶解液からなる群より選択される、請求項11から13のいずれかの項に記載の方法。
【請求項15】
前記リゾホスホリパーゼDの活性が、癌、腫瘍、および動脈硬化性疾患からなる群より選択される疾患の診断に用いる指標である、請求項11から13のいずれかの項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から10のいずれかの項に記載の化合物を含む、リゾホスホリパーゼDの活性測定用キット。
【請求項17】
さらに、ジスルフィド化合物を含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記ジスルフィド化合物が、以下の式(III):
【化4】

で表される化合物(式(III)において、Rが、水素原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルケニル基、またはハロゲン原子である)を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記キットが、癌、腫瘍、および動脈硬化性疾患からなる群より選択される疾患の診断に用いる指標の測定に用いられる、請求項17または18に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−149582(P2009−149582A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330106(P2007−330106)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【出願人】(000231394)アルフレッサファーマ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】