説明

リチウム−硫黄電気化学的電池のための電解質

電気化学的電池のための電解質が開示され、その電解質は、ジオキソランと5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンとを含む溶媒混合物を含む。また、この電解質を備える電池およびバッテリーが開示される。この電解質を備える電気化学的電池は、好ましくは、リチウムを含むアノードおよび電気活性な硫黄含有材料を含むカソードを備える。代表的な電解質は、1,3−ジオキソランと1−エトキシ−2−メトキシエタン(EME)との混合物中のリチウムイミド溶液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、非水電解質を備える電気化学的電池の分野に関する。より具体的には、本発明は、(a)リチウムを含むアノード;(b)電気活性な硫黄含有材料を含むカソード;ならびに(c)液体非水電解質であって、この電解質は、ジオキソランと、1以上の1,2−ジアルコキシアルカンまたは1,3−ジアルコキシアルカンとを含む溶媒混合物を含む、液体非水電解質を備える電気化学的電池に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
近年、リチウム含有アノードを備える高エネルギー密度バッテリーの開発においてかなりの関心が存在する。リチウム金属は、例えば、非電気活性材料の存在が、アノードの重量および容積を増加させ、それによって、アノードのエネルギー密度を減少させる、リチウム挿入炭素アノードのようなアノード活性材料と比較した場合、その軽重量および高エネルギー密度のために、電気化学的電池のアノード活性材料として特に魅力がある。リチウム金属アノードの使用またはリチウム金属を含むアノードの使用は、リチウムイオン電池、ニッケル金属水素化物電池またはニッケルカドミウム電池のような電池より、重さがより軽く、より高いエネルギー密度を有する電池を構築する機会を提供する。これらの特徴は、例えば、非特許文献1およびSandbergらによる特許文献1(このそれぞれの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような携帯電話およびラップトップコンピューターのような携帯用電子デバイスにおけるバッテリーに関して非常に望まれる。
【0003】
薄膜バッテリー設計は、高表面積の電極と組み合わせたそれらの軽量が、高率性能を可能にし、そして充電中の電流密度および/またはより短い充電時間を減少させるので、携帯用電子デバイスに特に適切である。高率とは、バッテリーが、20分(3C率)またはそれ未満(>3C率)においてその完全な容量を放電し得ることを意味する。薄膜リチウムバッテリーのためのカソード材料のうちの数種は、公知であり、硫黄−硫黄結合を含む硫黄含有カソード材料が挙げられ、高エネルギー容量および再充電能力は、(還元による)電気化学的開裂および硫黄−硫黄結合の(酸化による)再形成から達成される。リチウムアノードまたはナトリウムアノードを備える電気化学的電池における使用のための硫黄含有カソード材料の例としては、硫黄組成物、有機硫黄組成物、または炭素−硫黄組成物が挙げられる。
【0004】
非水電気化学的電池におけるリチウムアノードは、例えば、カソードから電解質に入る電解質塩および電解質材料のような溶媒に溶解した電解質系および電解質材料の非水溶媒を含む電池成分との反応から界面フィルムを発生させる。カソードから電界質に入る材料は、カソード調合物の成分および電池放電によって形成されるカソードの還元生成物を含み得る。硫黄含有材料を含むカソードを備える電気化学的電池において、還元生成物は、硫化物およびポリ硫化物を含み得る。リチウム電極上の界面フィルムの組成および特性は、広範に研究されており、それらの研究のうちのいくつかは、非特許文献2に概要を述べられている。この界面フィルムは、非特許文献3によって固体電解質界面(SEI)と呼ばれている。
【0005】
非特許文献4に記載されるリチウムバッテリーのための非水電解質溶液の例としては、ジオキソランおよびグリムがある。グリムファミリーのメンバーとしては、ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグリム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、エチレングリコールジエチルエーテル(DEE)、およびジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられ、これらは、多くの場合、例えば、Suzukiらによる特許文献2、Konoらによる特許文献3、およびTakahashiによる特許文献4に適切な電解質溶媒であると記載されている。ジオキソランおよびグリムを含む電界質溶媒は、種々のアノードおよびカソードを備える非水電気化学的電池における使用のために記載されている。例えば、Kegelmanによる非特許文献5、Whittinghamらによる特許文献6、Hovsepianによる特許文献7、およびWebberによる特許文献8において、ジオキソランおよびジメトキシエタン(DME)は、電解質溶媒を含む。Nimonらによる特許文献9は、ゲル状態または固体状態の電解質を含むバッテリー電池を記載しており、それらは、グリムおよび30容量%未満のジオキソランを含む。
【0006】
再充電可能なリチウム/硫黄(Li/S)電池に関して、例えば、電解質溶液系における改良による、電池性能のさらなる増強のための必要性が存在する。理想的には、電池は、多くのサイクルにわたって、実用的な放電率で高利用率を有するべきである。20分(3C)〜3時間(C/3)の範囲の時間にわたる電池の完全な放電は、代表的に実用的な放電率とみなされる。サイクル寿命は代表的に、電池がもはや受容可能なレベルの充電容量(例えば、バッテリーの最初の容量の80%)を維持し得ない時点までのサイクルの数であるとみなされる。
【0007】
本明細書中で使用される場合、「100%利用率」(「硫黄利用率」ともいわれる)とは、電極に存在する全ての硫黄が完全に利用される場合、その電極が、電極に最初に存在する硫黄1グラムにつき1675mAhを産生することを想定する。硫黄利用率、放電率、およびサイクル寿命のようなパラメーターを含む、Li/S電池における性能を議論および教示している先行技術の参考文献の中には、以下がある:(1)非特許文献5は、ジオキソラン電解質溶媒混合物を含むLi/S電池が、0.1mA/cmおよび0.01mA/cmの放電率において50%以下の硫黄利用率を達成することを開示しており;(2)Chuによる特許文献10は、30℃および0.02mA/cmの低い放電率で54%利用率を送達する高分子電解質を含むLi/S電池を記載している。90℃で、0.1mA/cmの放電率で、90%の利用率が達成された;(3)Chuらによる特許文献11は、0.09mA/cm(90μA/cm)および0.5mA/cm(500μA/cm)の放電率で70回より多いサイクルの間、約40%の硫黄利用率を有する液体電解質のLi/S再充電可能電池を記載している。別の例(実施例4)は、0.09mA/cmの低い放電率であるが、35回より多いサイクルにわたって60%の硫黄利用率を記載しており;(4)Mukherjeeらによる特許文献12は、0.57mA/cmの放電率で60回より多いサイクルの間、約36%の硫黄利用率を有する液体電解質のLi/S再充電可能電池を記載しており;(5)Zhangらによる特許文献13は、0.33mA/cmの放電率で100回より多いサイクルの間、約38%および200回より多いサイクルの間、約19%の硫黄利用率を有する液体電解質のLi/S再充電可能電池を記載しており;(6)Chengによる特許文献14は、0.42mA/cmの放電率で100回より多いサイクルの間、約45%の硫黄利用率を有する液体電解質のLi/S再充電可能電池を記載しており;そして(7)Geronovによる特許文献15は、0.41mA/cmの放電率で275回のサイクルより多い間、約21%の硫黄利用率を有する液体電解質のLi/S再充電可能電池を記載している。
【0008】
リチウム電池の性能に対する電解質における異なるグリコールエーテルの効果を議論および教示している先行技術の参考文献の中には、以下がある:(1)非特許文献6は、プロピレンカーボネート(PC)とエーテルDME、エトキシメトキシエタン(EME)、またはDEE(1:1体積比)との電解質溶媒混合物におけるMnO/Li電池の放電容量は、DME/PC>EME/PC>DEE/PCの順で容量を減少させることを示すと開示しており;そして(2)Takamiらによる特許文献16は、電解質がグリムDME、DEE、およびEMEと混合されるカーボネートを含むリチウムイオンバッテリーを開示している。DMEとジエチルカーボネートおよびプロピレンカーボネートとの電解質溶媒混合物を含む電池のサイクル寿命は、EMEおよびそれらのカーボネートで得られるサイクル寿命より長い。要約すると、これらの一対一での比較において、DME含有電解質溶媒混合物は、当量のEME含有溶媒混合物より優れている。
【0009】
Bakosらによる特許文献17において、1,2−ジメトキシプロパンは、リチウムアノードおよびMnOカソードまたはFeSカソードを備える電気化学的電池においてプロピレンカーボネートを含む電解質調合物中のDMEと匹敵する性能を提供することが、報告されている。
【特許文献1】米国特許第6,406,815号明細書
【特許文献2】米国特許第6,051,343号明細書
【特許文献3】米国特許第6,019,908号明細書
【特許文献4】米国特許第5,856,039号明細書
【特許文献5】米国特許第4,084,045号明細書
【特許文献6】米国特許第4,086,403号明細書
【特許文献7】米国特許第3,877,983号明細書
【特許文献8】米国特許第6,218,054号明細書
【特許文献9】米国特許第6,225,002号明細書
【特許文献10】米国特許第5,686,201号明細書
【特許文献11】米国特許第6,030,720号明細書
【特許文献12】米国特許第5,919,587号明細書
【特許文献13】米国特許第6,110,619号明細書
【特許文献14】米国特許第6,544,688号明細書
【特許文献15】米国特許第6,344,293号明細書
【特許文献16】米国特許第5,272,022号明細書
【特許文献17】米国特許第4,804,595号明細書
【非特許文献1】Linden、「Handbook of Batteries」、McGraw−Hill、New York、1995年、第2版、第14章、75−76頁および第36章、2頁
【非特許文献2】Aurbach、「Nonaqueous Electrochemistry」、Marcel Dekker、New York、1999年、第6章、289−366頁
【非特許文献3】Peled、「J.Electrochem.Soc.」、1979年、第126巻、2047−2051頁
【非特許文献4】Dominey、「Lithium Batteries,New Materials,Developments and Perspectives」、1994年、第4章、137−165頁、Elsevier、Amsterdam
【非特許文献5】Peledら、「J.Electrochem.Soc.」、1989年、第136巻、1621−1625頁
【非特許文献6】Nishioら、「J.Power Sources」、1995年、第55巻、115−117頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、(a)リチウムを含むアノード;(b)電気活性な硫黄含有材料を含むカソード;ならびに(c)液体非水電解質であって、この電解質は、(i)1以上のリチウム塩および(ii)10重量%〜90重量%のジオキソランと、10重量%〜90重量%の5個もしくは6個の炭素原子の1以上の1,2−ジアルコキシアルカンまたは1,3−ジアルコキシアルカンとを含む、液体非電解質を備える、電気化学的電池に関する。この電池は、放電および充電の実用的な率で多くの放電−充電サイクルにわたって高い硫黄利用率を示す。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つの局面は、(a)リチウムを含むアノード;(b)電気活性な硫黄含有材料を含むカソード;ならびに(c)液体非水電解質であって、この電解質は、(i)1以上のリチウム塩および(ii)1以上の1,2−ジアルコキシアルカンまたは1,3−ジアルコキシアルカンとを含む、液体非水電解質を備える、電気化学的電池を提供する。
【0012】
液体電解質リチウム/硫黄電池は代表的に、例えば、Gorkovenkoらによる米国特許第6,210,831号およびMukherjeeらによる米国特許第5,919,587号(このそれぞれの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、リチウムを含むアノード、電気活性な硫黄含有材料を含むカソード、非水電解質、およびアノードとカソードとの間に挿入されるセパレータを備える。以下は、本発明に従う電気化学的電池の好ましいアノード、カソード、セパレータ、および電解質の説明である。
【0013】
(アノード)
アノードは、所定の電気化学的電池において、そして所定のカソードとともに使用するために適切な任意の構造であり得る。本発明のアノードのためのリチウムを含む適切なアノード活性材料としては、リチウム金属(例えば、リチウムホイルおよび基板の上に析出されるリチウム(例えば、プラスチックフィルム))およびリチウム合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金およびリチウム−スズ合金)が挙げられるが、これらに限定されない。Skotheimらによる米国特許出願第09/721,578号および同第09/864,890号(リチウムアノードを記載するこの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような多層コーティングを含むリチウムアノードもまた、使用され得る。
【0014】
(カソード)
本発明に従う電池のカソードは、電気活性な硫黄含有材料を含むカソード活性層を含む。好ましいカソード活性層は、基板(例えば、電流コレクター)の上にコーティングされて、複合カソードを形成するが、電気活性な硫黄含有材料を含む任意のカソード構築物が、使用され得る。本明細書中で使用される場合、用語「電気活性な硫黄含有材料」とは、任意の形態における元素状態で存在する硫黄を含むカソード活性材料に関し、電気化学的活性には、硫黄−硫黄共有結合の分解または形成が関与する。適切な電気活性な硫黄含有材料の例としては、元素状態で存在する硫黄ならびに高分子であっても高分子でなくてもよい硫黄原子および炭素原子の両方を含む有機材料が挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機材料としては、ヘテロ原子、導電性高分子セグメント、複合材、および導電性ポリマーをさらに含むものが挙げられる。
【0015】
1つの実施形態において、電気活性な硫黄含有材料は、元素状態で存在する硫黄を含む。別の実施形態において、電気活性な硫黄含有材料は、元素状態で存在する硫黄と、硫黄含有ポリマーとの混合物を含む。
【0016】
適切な硫黄含有有機ポリマーとしては、Skotheimらによる米国特許第5,601,947号;同第5,690,702号;同第5,529,860号;および同第6,117,590号;ならびにGorkovenkoらによる米国特許第6,201,100号(各々のそれぞれの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の電気活性な硫黄含有カソードは、例えば、Mukherjeeらによる米国特許第5,919,587号およびGorkovenkoらによる米国特許第6,201,100号に記載されるように、電気活性な金属カルコゲニド、電気活性な導電性ポリマー、およびそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0018】
カソード活性層は、例えば、Geronovらによる米国特許第6,194,099号およびGorkovenkoらによる米国特許第6,210,831号(このそれぞれの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、1以上の導電性充填材さらに含み得、増強された電気伝導率を提供する。カソード活性層はまた、結合剤を含み得る。結合剤材料の選択は、カソード活性層の化学組成に依存して、変化し得る。有用な結合剤は、これらの材料であり、通常、バッテリー電極複合材の容易な加工を可能にする材料であり、電極製造の分野において当業者に公知である。
【0019】
(セパレータ)
本発明の電気化学的電池はさらに、カソードとアノードとの間に置かれたセパレータを備え得るが、セパレータは任意のものである。代表的には、セパレータは、アノードとカソードとを互いに分離または隔離し、アノードとカソードとの間でセパレータを介するイオンの輸送を可能にする多孔性の非導電性材料または絶縁材料である。
【0020】
種々のセパレータ材料が当該分野で公知である。適切な固体の多孔性セパレータ材料の例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ガラス繊維濾紙およびセラミック材料が挙げられるが、これらに限定されない。本発明における使用に適切なセパレータおよびセパレータ材料のさらなる例は、多孔性擬似ベーマイト層を含むものであり、この多孔性擬似ベーマイト層は、Carlsonらによる米国特許第6,153,337号(セパレータの構造およびセパレータ材料に関する開示が参考として本明細書中に援用される)に記載されるように、自立膜としてかまたは電極の一方への直接コーティング適用によって提供され得る。広範な厚さのセパレータが使用され得、例えば、約5μm〜約50μm、好ましくは約5μm〜約25μmである。
【0021】
(非水電解質)
電気化学的電池で使用される電解質は、イオンの蓄積および輸送のための媒体として機能し、固体電解質およびゲル状電解質の場合では、これらの材料はさらに、アノードとカソードとの間でセパレータ材料として機能する。イオンを蓄積および輸送し得る任意の液体材料、固体材料またはゲル状材料は、その材料がアノードおよびカソードに対して実質的に電気化学的にも化学的にも非反応性であり、かつアノードとカソードとの間でリチウムイオンの輸送を促進する限り、本発明の電解質として使用され得る。電解質はまた、アノードとカソードとの間の短絡を防止するために電気的に非導電性でなければならない。
【0022】
代表的には、電解質はイオン導電性を提供するための1以上のイオン性電解質塩、および1以上の非水液体電解質溶媒、ゲル状ポリマー材料または固体ポリマー材料を含む。
【0023】
1つの実施形態において、電解質は、
(a)1以上のリチウム塩;ならびに
(b)10重量%〜90重量%のジオキソランと、10重量%〜90重量%の1以上の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンとを含む溶媒混合物
を含む。
【0024】
適切な1,2−ジアルコキシアルカンおよび1,3−ジアルコキシアルカンとしては、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、1,2−ジメトキシプロパン、1−エトキシ−2−メトキシプロパン、2−エトキシ−1−メトキシプロパン、1−メトキシ−2−プロポキシエタン、1−メトキシ−2−イソプロポキシエタン、1,2−ジメトキシブタン、1,3−ジメトキシブタン、および2,3−ジメトキシブタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
好ましい1,2−ジアルコキシアルカンおよび1,3−ジアルコキシアルカンは、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1−メトキシ−2−プロポキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、1−エトキシ−2−メトキシプロパン、2−エトキシ−1−メトキシプロパン、1,3−ジメトキシプロパンおよび1,3−ジメトキシブタンである。より好ましい1,2−ジアルコキシアルカンおよび1,3−ジアルコキシアルカンは、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、および1,3−ジメトキシプロパンである。最も好ましいのは、1−エトキシ−2−メトキシエタンである。
【0026】
本発明の電解質に適切なジオキソランとしては、1,3−ジオキソラン、ならびに4−メチル−1,3−ジオキソラン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソランおよび2−メチル−1,3−ジオキソランのようなアルキル置換1,3−ジオキソランが挙げられる。好ましいジオキソランは、4−メチル−1,3−ジオキソランおよび1,3−ジオキソランである。最も好ましいのは、1,3−ジオキソランである。
【0027】
本発明の電解質溶媒混合物は、ジオキソラン 対 1以上のジアルコキシアルカンに関して一定範囲の割合を有し得る。1つの実施形態において、電解質溶媒混合物は、10重量%〜90重量%のジオキソランと、10重量%〜90重量%の1以上の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または1,3−ジアルコキシアルカンとを含む。好ましい実施形態において、電解質溶媒混合物は、30重量%〜80重量%のジオキソランと、20重量%〜70重量%の1以上の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または1,3−ジアルコキシアルカンとを含む。より好ましい実施形態において、電解質溶媒混合物は、50重量%〜75重量%のジオキソランと、25重量%〜50重量%の1以上の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または1,3−ジアルコキシアルカンとを含む。
【0028】
電解質溶媒混合物はさらに、本発明の1つの実施形態において、フラン、2−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2−メチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、および1−メチルピロールからなる群のうちの1以上から選択される添加物を含み得る。1つの実施形態において、添加物は、電解質溶媒の2重量%〜15重量%を占める。別の実施形態において、添加物は、電解質溶媒の3重量%〜10重量%を占める。
【0029】
ジオキソランと1以上の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンを含む本発明の溶媒混合物はさらに、さらなる電解質共溶媒を含み得、この電解質共溶媒としては、例えば、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、スルホラン、脂肪族エーテル、環状エーテル、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、N−アルキルピロリドン、上記のものの置換形態およびそれらのブレンドのような非水有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。電解質共溶媒として用いられ得るポリエーテルの例としては、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、および1,2−ジメトキシシクロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の電解質は、イオン導電性を増大させるために電解質に添加されるリチウム塩を含む。本発明の電解質中の1以上のリチウム塩の濃度は、数種の因子(例えば、電解質溶媒混合物の正確な組成、その塩の溶解度、溶解した塩の導電性、そのセルの充電および放電状態、操作温度、およびリチウムバッテリーの分野で公知の他の因子)に依存して、約0.2M〜2.0Mであり得る。本発明における使用のためのリチウム塩の例としては、LiSCN、LiBr、LiI、LiSOCF、LiSOCH、LiB(Ph)、LiC(SOCF、およびLiN(SOCFからなる群のうちの1以上が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい電解質塩は、LiBr、LiI、LiSCN、LiSOCF、およびLiN(SOCFである。
【0031】
ジオキソランと1以上の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンとを含む本発明の電解質溶媒が、リチウムアノードと硫黄含有カソードとを備える電気化学的電池において増強されたサイクル寿命を提供することは予期されない。
【0032】
いかなる理論にも束縛されないが、本発明の電解質は、カソードの成分またはカソード放電種からの望ましくない反応に抵抗性のリチウムアノード表面において固体電解質界面(SEI)を形成するのに驚くほど有効であると考えられる。この望ましくない反応(例えば、腐食反応)の減少は、電池のサイクル寿命を増大させる。SEIは、すべてではないにしてもほとんどの電解質に接触するリチウムで形成されることが一般的に考えられる。しかし、多くの場合、SEIはこれらの望ましくない反応からの保護を提供し得ない。ジオキソランと1以上の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンとを含む本発明の電解質溶媒は、硫黄含有カソード活性材料またはそれらの放電生成物の存在下で、リチウムに抵抗性のSEIを形成するようである。
【0033】
用語「良度指数」(FOM)は、本明細書で使用される場合、サイクル寿命の終わりまでの累積放電容量(mAh単位)をアノードのリチウムの理論容量(リチウム1gあたり3860mAh)で除算することによって計算される。
【0034】
ジオキソランとEMEとの混合物を電解質溶媒として1:5〜5:1の種々のモル比(本発明はこれらの比に限定されないが)で含む実施例1〜5の電池は、それぞれ、ジオキソランとDMEとの混合物を電解質溶媒として同じモル比で含む比較例1〜5よりも良好なサイクル寿命およびFOMを示す。EME電解質を対応するDME電解質と直接比較した場合(実施例1〜5 対 比較例1〜5)、FOM増加の範囲は、13%〜600%より上である。実施例4および実施例5(それぞれ、電解質溶媒が59重量%および78重量%のジオキソラン含量を有する)は、最も高いFOMを有する。
【0035】
本発明の電解質は、Li/S電池が、実施例で示される試験において実用的な放電率で高い硫黄利用率を伴う高いサイクル寿命を提供することを可能にする。表2における結果の概要は、比較例7の電池のようなDMEベースの電解質と比べて、5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンを有する電解質が非常に長いサイクル寿命を示すことを示す。例えば、実施例8、実施例9および実施例13の電池は、比較例7と比較して40%〜80%を超えるサイクル寿命の増加を示す。
【0036】
(電池およびバッテリー)
本発明の一局面は、(a)リチウムを含むアノード;(b)電気活性な硫黄含有材料を含むカソード;ならびに(c)液体非水電解質を備える電気化学的電池に関係し、上記電解質は、(i)1以上のリチウム塩;および(ii)10重量%〜90重量%のジオキソランと、10重量%〜90重量%の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび/または5もしくは6個の炭素の1,3−ジアルコキシアルカンの1以上とを含む溶媒混合物を含む。
【0037】
本発明のアノード、カソードおよび電解質は、当業者に公知の任意の方法(例えば、ワインディングまたはスタッキング)により電池またはバッテリーに組み立てられ得る。本発明の電池またはバッテリーは、当業者に公知の種々の大きさおよび構造に作製され得る。これらのバッテリーの設計の構造としては、平面状、角柱状、ゼリーロール状、二層折畳み状、積み重ね状などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法は、薄膜電極との使用に特に適しているが、それにも関わらず、厚膜設計に有益であり得る。あるいは、低表面領域および高表面領域を組み込んだ設計(Spillmanらの米国特許第5,935,724号および同第5,935,728号に記載されている)は、ゼリーロール状の構造および他の構造に組み込まれ得る。
【0038】
薄膜電極は、角柱状の設計に構成され得る。重量を節約するための推進力とともに、薄膜障壁材料(例えば、ホイルなど)は特に好ましい。例えば、Thibaultらの米国特許第6,190,426号(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に、密閉したケーシングに適したバリア材料を備えた角柱状電池を作製するための方法、電池を電解質で満たす方法、およびケーシングを密閉する方法が記載されている。角柱状設計に構成した薄膜電極を使用する場合、その電極が、寸法安定性を保有することが重要である。
【0039】
バッテリーは、任意のサイズまたは形態であり得、本発明に従った1つ以上の電池を備え得る。例えば、Thibaultらの米国特許第6,190,426号に記載される1つ以上の角柱状電池が、バッテリーを形成するために接続され得る。1つ以上の電池を備えるバッテリーは、例えば、Jacobsらの米国特許第6,296,967号に記載される堅いケーシングに入れられ得る。
【0040】
本発明の電流を生じる電池は、広範な種々の一次バッテリーおよび広範な種々の二次バッテリーに利用され得るが、これらの電池を二次(すなわち再充電可能な)バッテリーに利用することが好ましい。
【実施例】
【0041】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例に記載され、それらは、限定のためではなく、例証のために提供される。
【0042】
(比較例1)
17ミクロンの厚さの導電性炭素をコーティングしたアルミ箔基材上に、75部の硫黄元素、15部の導電性炭素顔料およびイソプロパノールに分散した10部のPYROGRAF−III炭素繊維の混合物をコーティングすることによって、カソードを作製した。乾燥後、コーティングしたカソード活性層の厚さは、約25ミクロンであり、カソード活性層中の硫黄の充填量は、1.2mg/cmであった。アノードは、約50ミクロンの厚さのリチウム箔であった。電解質は、1,3−ジオキソランと1,2−ジメトキシエタン(DME)との混合物中のリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(リチウムイミド)溶液であり、リチウムイミド:ジオキソラン:DMEのモル比は、1:1:5であった。使用した多孔性のセパレータは、16ミクロンのポリオレフィンセパレータであった。
【0043】
上記構成要素を、層構造のカソード/セパレータ/アノードに合わせ、セパレータの間隙領域を満たす液体電解質(1.6mL)、および約420cmの電極領域を有する角柱状電池を形成するためのカソードと一緒に、これを巻き、いわゆるゼリーロール状に圧縮した。電池のホイルパウチ内への密閉後、それらを24時間保存し、次いで、再密閉し、その後、放電−充電サイクルをこれらの電池に対して175mA/100mAにて、放電のカットオフは、1.25Vの電圧で、充電のカットオフは、最後の半分のサイクルの容量の120%でそれぞれ行なった。5回目のサイクルの放電容量は、508mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに30回の放電−充電サイクルを行なった。放電容量カットオフでの良度指数(FOM)は、6.5であった。
【0044】
(実施例1)
電解質が、1,3−ジオキソランと1−エトキシ−2−メトキシエタン(EME)との混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:EMEのモル比は、1:1:5)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行なった。5回目のサイクルでの放電容量は、515mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに48回の放電−充電サイクルを行なった。放電容量カットオフでのFOMは、10.2であった。このFOMは、比較例1のFOMより57%大きい。
【0045】
(比較例2)
電解質が、1,3−ジオキサンとDMEとの混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:DMEのモル比は、1:2:4)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行なった。5回目のサイクルでの放電容量は、505mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに59回の放電−充電サイクルを行なった。放電容量カットオフでのFOMは、12.7であった。
【0046】
(実施例2)
電解質が、1,3−ジオキソランとEMEとの混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:EMEのモル比は、1:2:4)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行なった。5回目のサイクルでの放電容量は、512mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに67回の放電−充電サイクルを行なった。放電容量カットオフでのFOMは、14.4であった。このFOMは、比較例2のFOMより13%大きい。
【0047】
(比較例3)
電解質が、1,3−ジオキソランとDMEとの混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:DMEのモル比は、1:3:3)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行なった。5回目のサイクルでの放電容量は、523mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに32回の放電−充電サイクルを行なった。放電容量カットオフでのFOMは、6.5であった。
【0048】
(実施例3)
電解質が、1,3−ジオキソランとEMEとの混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:EMEのモル比は、1:3:3)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行なった。5回目のサイクルでの放電容量は、582mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに59回の放電−充電サイクルを行なった。放電容量カットオフでのFOMは、13.2であった。このFOMは、比較例3のFOMより103%大きい。
【0049】
(比較例4)
電解質が、1,3−ジオキソランとDMEとの混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:DMEのモル比は、1:4:2)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行なった。5回目のサイクルでの放電容量は、541mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに53回の放電−充電サイクルを行なった。放電容量カットオフでのFOMは、11.2であった。
【0050】
(実施例4)
電解質が、1,3−ジオキソランとEMEとの混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:EMEのモル比は、1:4:2)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行った。5回目のサイクルでの放電容量は、550mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに80回の放電−充電サイクルを行った。放電容量カットオフでのFOMは、17.0であった。このFOMは、比較例4のFOMより52%大きい。
【0051】
(比較例5)
電解質が、1,3−ジオキソランとDMEとの混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:DMEのモル比は、1:5:1)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行った。5回目のサイクルでの放電容量は、419mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに12回の放電−充電サイクルを行った。放電容量カットオフでのFOMは、2.5であった。
【0052】
(実施例5)
電解質が、1,3−ジオキソランとEMEとの混合物中のリチウムイミド溶液(リチウムイミド:ジオキソラン:EMEのモル比は、1:5:1)であったことを除いては、比較例1の方法により電池を作製した。これらの電池に比較例1の方法により放電−充電サイクルを行った。5回目のサイクルでの放電容量は、516mAhであった。300mAhの放電容量カットオフまでに90回の放電−充電サイクルを行った。放電容量カットオフでのFOMは、18.4であった。このFOMは、比較例5のFOMより635%大きい。
【0053】
表1は、実施例1〜5のモル比に対するDOL/EME混合物の重量パーセントの計算を要約する。
【0054】
【表1】

(実施例6)
電気化学的電池を作製するための方法。6ミクロンの厚さの導電性炭素をコーティングしたアルミニウム/ポリエステル(PET)フィルム基質上に、60重量部の硫黄元素、17.5重量部の導電性炭素、17.5重量部のグラファイトおよびイソプロパノールに分散した5重量部のポリエチレン粉末の混合物をコーティングすることによって、カソードを作製した。乾燥後、コーティングしたカソード活性層の厚さは、約28〜29ミクロンであった。アノードは、約50ミクロンの厚さのリチウム箔であった。使用した多孔性のセパレータは、9ミクロンのポリオレフィンセパレータであった。上記構成要素を、層構造のカソード/セパレータ/アノードに組み立て、これを巻き、そして圧縮して、液体電解質(約4.7g)と一緒にホイルパウチ内へ配置した。角柱状電池は、約846cmの電極領域を有していた。この電池の硫黄含量は、1.13gであり、1884mAh(1675mAh/g×1.13g)の容量と等価である。電池をホイルパウチ内に密閉した後、それを24時間保存し、次いで再密閉した。電池の放電−充電サイクルを、それぞれ放電のカットオフは1.8Vの電圧で、充電のカットオフは2.5Vで、350mA/200mAにて行った。350mAの放電率は、この電池に対して0.414mA/cm(350mA/846cm)であり、200mAの充電率は、0.236mA/cm(200mA/846cm)である。他に示さなければ、このような充電工程および放電工程の後の中断は2分間であった。電池の評価のための温度は、22℃と25℃との間であった。以下の実施例および比較例は、これらのLi/S電池における電極の評価を記載する。
【0055】
(比較例6)
実施例6の電池を、電解質として1,3−ジオキサン(34.6ml)とDME(30.4ml)との溶媒混合物中のリチウムイミド(32g;0.11モル)溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、58.2重量%の1,3−ジオキサンと41.8重量%のDMEとである)。5回目のサイクルでの5個の電池の平均放電容量は、856mAhであり、比容量は、760mAh/gであり、硫黄の利用率は、45.4%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、36.3%)までのサイクル寿命は、167サイクルであった。
【0056】
(比較例7)
実施例6の電池を、電解質として1,3−ジオキソラン(34.6ml)とDME(30.4ml)と2−メチルフラン(6.0ml)との溶媒混合物中のリチウムイミド(32g;0.11モル)溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、53.5重量%の1,3−ジオキソランと38.5重量%のDMEと8.0重量%の2−メチルフランとである)。5回目のサイクルでの4個の電池の平均放電容量は、847mAhであり、比容量は、753mAh/gであり、硫黄の利用率は、44.9%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、35.9%)までのサイクル寿命は、204サイクルであった。
【0057】
(実施例7)
カソードを、イソプロパノールに分散した65重量部の硫黄元素、15重量部の導電性炭素と15部重量部のグラファイトと5重量部のポリエチレン粉末との混合物をコーティングすることによって形成したことを除いては、実施例6に記載されるように、電池を作製し、放電−充電サイクルを行った。この電池の硫黄含量は、0.81gであり、1360mAh(1675mAh/g×0.81g)の容量と等価であった。電池を、電解質として1,3−ジオキサン(34.6ml)とEME(30.4ml)との溶媒混合物中のリチウムイミド(32g;0.11モル)溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、58.7重量%の1,3−ジオキソランと41.3重量%のEMEとである)。5回目のサイクルでの5個の電池の平均放電容量は、675mAhであり、比容量は、831mAh/gであり、硫黄の利用率は、49.6%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、39.7%)までのサイクル寿命は、248サイクルであった。
【0058】
(実施例8)
カソードを、イソプロパノールに分散した65重量部の硫黄元素と15重量部の導電性炭素と15重量部のグラファイトと5重量部のポリエチレン粉末との混合物をコーティングすることによって形成したことを除いては、実施例6に記載されるように、電池を作製し、放電−充電サイクルを行った。この電池の硫黄含量は、1.07gであり、1787mAh(1675mAh/g×1.07g)の容量と等価であった。電池を、電解質として1,3−ジオキサン(34.6ml)とEME(30.4mL)と2−メチルフラン(6.0mL)との溶媒混合物中のリチウムイミド(32g;0.11モル)溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、54.0重量%の1,3−ジオキソランと38.0重量%のEMEと8.0重量%の2−メチルフランとである)。5回目のサイクルでの5個の電池の平均放電容量は、806mAhであり、比容量は、755mAh/gであり、硫黄の利用率は、45.1%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、36.1%)までのサイクル寿命は、292サイクルであった。
【0059】
(実施例9)
実施例6の電池を、電解質として1,3−ジオキソラン(34.6ml)とEME(30.4ml)と2−メチルフラン(6.0ml)との溶媒混合物中のリチウムイミド(32g;0.11モル)溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、54.0重量%の1,3−ジオキソランと38.0重量%のEMEと8.0重量%の2−メチルフランとである)。5回目のサイクルでの13個の電池の平均放電容量は、812mAhであり、比容量は、761mAh/gであり、硫黄の利用率は、45.4%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、36.3%)までのサイクル寿命は、378サイクルであった。
【0060】
(実施例10)
実施例6の電池を、電解質として1,3−ジオキソラン(34.6ml)と1,2−ジメトキシプロパン(1,2−DMP)(30.4ml)と2−メチルフラン(6.0ml)との溶媒混合物中のリチウムイミド(32g;0.11モル)溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、53.8重量%の1,3−ジオキソランと38.2重量%の1,2−ジメトキシプロパンと8.0重量%の2−メチルフランとである)。5回目のサイクルでの4個の電池の平均放電容量は、856mAhであり、比容量は、761mAh/gであり、硫黄の利用率は、45.4%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、36.3%)までのサイクル寿命は、231サイクルであった。
【0061】
(実施例11)
実施例6の電池を、電解質として1,3−ジオキソラン(34.6ml)と1,3−ジメトキシプロパン(1,3−DMP)(30.4ml)と2−メチルフラン(6.0ml)との溶媒混合物中のリチウムイミド(32g;0.11モル)溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、54.0重量%の1,3−ジオキソランと38.0重量%の1,3−ジメトキシプロパンと8.0重量%の2−メチルフランとである)。5回目のサイクルでの4個の電池の平均放電容量は、860mAhであり、比容量は、765mAh/gであり、硫黄の利用率は、45.7%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、36.6%)までのサイクル寿命は、244サイクルであった。
【0062】
(実施例12)
実施例6の電池を、電解質として1,3−ジオキソラン(34.6ml)と1,4−ジメトキシブタン(30.4ml)と2−メチルフラン(6.0ml)との溶媒混合物中のリチウムイミド(32g;0.11モル)溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、53.6重量%の1,3−ジオキソランと38.4重量%の1,4−ジメトキシブタンと8.0重量%の2−メチルフランとである)。5回目のサイクルでの2個の電池の平均放電容量は、857mAhであり、比容量は、761mAh/gであり、硫黄の利用率は、45.4%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、36.3%)までのサイクル寿命は、178サイクルであった。
【0063】
(実施例13)
実施例6の電池を、電解質として1,3−ジオキソラン(31.1ml)と4−メチル−1,3−ジオキソラン(4.5ml)とEME(30.4ml)と2−メチルフラン(6.1ml)との溶媒混合物中のリチウムイミド(24g;0.08モル)とリチウムトリフレート(4.4g;0.03モル)との溶液を用いて組み立てた(溶媒混合物は、48.0重量%の1,3−ジオキソランと6.4重量%の4−メチルジオキソランと37.6重量%のEMEと8.0重量%の2−メチルフランとである)。5回目のサイクルでの10個の電池の平均放電容量は、789mAhであり、比容量は、749mAh/gであり、硫黄の利用率は、44.7%であった。放電−充電サイクルは、放電容量が5回目のサイクル(Q)の放電容量の80%に到達するまで継続した。80%のQの放電容量(硫黄の利用率は、35.8%)までのサイクル寿命は、331サイクルであった。
【0064】
表2は、本発明の電解質を含む電池のサイクル寿命の向上を要約する。
【0065】
【表2】

本発明は、その具体的な実施形態を参照して詳細に記載されたきたが、種々の変化および改変が、本発明の精神および範囲を逸脱することなくなされ得ることが当業者に明らかである。従って、本発明は、本明細書中に開示される実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲およびその法的な等価物に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的電池であって、
(a)リチウムを含むアノード;
(b)電気活性な硫黄含有材料を含むカソード;ならびに
(c)液体非水電解質であって、該電解質は、
(i)1以上のリチウム塩;および
(ii)10重量%〜90重量%のジオキソランと、10重量%〜90重量%の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上とを含む、液体非水電解質
を備える、電池。
【請求項2】
前記溶媒混合物が、30重量%〜80重量%のジオキソランと、20重量%〜70重量%の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上とを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記溶媒混合物が、50重量%〜75重量%のジオキソランと、25重量%〜50重量%の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上とを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上が、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1−メトキシ−2−プロポキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、1−エトキシ−2−メトキシプロパン、2−エトキシ−1−メトキシプロパンおよび1,3−ジメトキシプロパンからなる群のうちの1以上から選択される、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記1,2−ジアルコキシアルカンおよび1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上が、1−エトキシ−2−メトキシエタンである、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記ジオキソランが、1,3−ジオキソランおよび4−メチル−1,3−ジオキソランからなる群のうちの1以上から選択される、請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記ジオキソランが1,3−ジオキソランである、請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記電気活性な硫黄含有材料が、硫黄元素を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記電解質溶媒混合物がさらに、フラン、2−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2−メチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェンおよび1−メチルピロールからなる群のうちの1以上から選択される添加物を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項10】
前記添加物が、前記電解質溶媒の2重量%〜15重量%を占める、請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記添加物が、前記電解質溶媒の3重量%〜10重量%を占める、請求項9に記載の電池。
【請求項12】
前記1以上のリチウム塩が、LiBr、LiI、LiSOCF、LiN(SOCF、およびLiC(SOCFからなる群のうちの1以上から選択される、請求項1に記載の電池。
【請求項13】
前記アノードがリチウム金属を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項14】
ケーシング、および請求項1に記載の1以上の電池を備える、バッテリー。
【請求項15】
電気化学的電池の電解質であって、該電解質は、
(a)1以上のリチウム塩;ならびに
(b)10重量%〜90重量%のジオキソランと、10重量%〜90重量%の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上とを含む溶媒混合物
を含む、電解質。
【請求項16】
前記溶媒混合物が、50重量%〜75重量%のジオキソランと、25重量%〜50重量%の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上とを含む、請求項15に記載の電解質。
【請求項17】
前記溶媒混合物がさらに、フラン、2−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2−メチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、および1−メチルピロールからなる群から選択される添加物を含む、請求項15に記載の電解質。
【請求項18】
前記添加物が、前記電解質溶媒の3重量%〜10重量%を占める、請求項17に記載の電解質。
【請求項19】
前記1以上のリチウム塩が、LiBr、LiI、LiSOCF、LiN(SOCF、およびLiC(SOCFからなる群のうちの1以上から選択される、請求項15に記載の電解質。
【請求項20】
電気化学的電池であって、
(a)電気活性な硫黄含有材料を含むカソード;
(b)リチウムを含むアノード;ならびに
(c)非水電解質であって、該電解質は、
(i)1以上のリチウム塩;および
(ii)10重量%〜90重量%のジオキソランと、10重量%〜90重量%の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上とを含む溶媒混合物を含む、非水電解質
を備え、そして該電池は、約0.4mA/cmの放電率で少なくとも200サイクルにわたり、少なくとも35%の該電気活性な硫黄含有材料の利用率を示す、電池。
【請求項21】
約0.4mA/cmの放電率で少なくとも250サイクルにわたり、少なくとも35%の前記電気活性な硫黄含有材料の利用率を示す、請求項20に記載の電池。
【請求項22】
前記溶媒混合物が、50重量%〜75重量%のジオキソランと、25重量%〜50重量%の5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび5もしくは6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上とを含む、請求項20に記載の電池。
【請求項23】
前記5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上が、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1−メトキシ−2−プロポキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、1−エトキシ−2−メトキシプロパン、2−エトキシ−1−メトキシプロパンおよび1,3−ジメトキシプロパンからなる群のうちの1以上から選択される、請求項20に記載の電池。
【請求項24】
前記5もしくは6個の炭素原子の1,2−ジアルコキシアルカンおよび1,3−ジアルコキシアルカンからなる群のうちの1以上が、1−エトキシ−2−メトキシエタンである、請求項20に記載の電池。
【請求項25】
前記ジオキソランが、1,3−ジオキソランおよび4−メチル−1,3−ジオキソランからなる群のうちの1以上から選択される、請求項20に記載の電池。
【請求項26】
前記溶媒混合物がさらに、フラン、2−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2−メチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェンおよび1−メチルピロールからなる群のうちの1以上から選択される添加物を含む、請求項20に記載の電池。
【請求項27】
前記添加物が、前記電解質溶媒の3重量%〜10重量%を占める、請求項26に記載の電池。
【請求項28】
ケーシングおよび請求項20に記載の1以上の電池を備える、バッテリー。

【公表番号】特表2007−522638(P2007−522638A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553246(P2006−553246)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/004307
【国際公開番号】WO2005/078851
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506225927)サイオン パワー コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】