説明

リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法

【課題】 オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を有し、特性の良好なリチウムイオン二次電池を構成可能な正極活物質を製造する方法を提供する。
【解決手段】 オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、上記正極活物質は、二次凝集体を形成せずに単一粒子として存在しており、上記オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子は、平均粒子径が5〜50nmであり、全個数中90%以上の微粒子の粒子径が3〜70nmの範囲内にあり、平均粒子径が50nm以下である鉄酸化物微粒子を成長核に用い、該鉄酸化物微粒子とリチウム源およびリン酸源を含む溶液とを混合し、得られた混合物を加熱することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯用電子機器やハイブリッド自動車などに用いるための電池として、急速に開発が進められている。この場合の負極活物質としては主に炭素材料が用いられ、正極活物質としては、金属酸化物、金属硫化物、各種ポリマーなどが用いられる。特に、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどのリチウム複合酸化物は、高エネルギー密度で高電圧の電池を実現できることから、現在、リチウムイオン二次電池の活物質として、一般的に用いられている。
【0003】
一方、特許文献1や特許文献2にあるように、オリビン構造を持つ遷移金属リン酸化合物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の提案もされており、中でも特許文献2には、原料が安価である材料としてリン酸鉄リチウム(LiFePO)を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池が提案されている。
【0004】
リン酸鉄リチウムを作製する方法としては、主に次のような方法が挙げられる。
(1)原料となるリチウム化合物、鉄化合物、およびリン酸化合物を、ボールミルあるいは乳鉢などで機械的に粉砕・混合し、固相反応させた後、還元雰囲気下で加熱処理する方法。
(2)原料となるリチウム塩、鉄塩、リン酸を溶解させた溶液を蒸発乾固させた後、還元雰囲気下で加熱処理する方法。
(3)原料となるリチウム塩、鉄塩、リン酸を溶解させた溶液を噴霧乾燥させた後、還元雰囲気下で加熱処理する方法。
(4)原料となるリチウム塩、鉄塩、リン酸を溶解させた溶液に水熱処理を施す方法。
【0005】
これらの合成法のうち、(1)の方法は最も一般的に行われており、簡便かつ安価にリン酸鉄リチウムを製造することができる。しかしながら、(1)の方法で得られるオリビン型リン酸鉄リチウムは、数〜数十μmサイズの、小さくともサブミクロンサイズの粒子となり、製法上の特徴から粒子サイズ分布が広く、形状が一定ではない。オリビン型リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオン二次電池としては、例えば、オリビン型リン酸鉄リチウムを導電助剤や結着剤などと混合して正極合剤とし、これにより集電体上に正極合剤層を形成して正極を作製し、該正極を組み込んでリチウムイオン二次電池とされたものが挙げられるが、(1)の方法により製造されるような形態のオリビン型リン酸鉄リチウムでは、導電助剤などと均一に混合することが難しく、このような均一性の低い正極合剤を用いて構成したリチウムイオン二次電池では、特性が劣るものとなる。
【0006】
また、(2)や(3)のように溶液を特定の状態で乾燥させる方法を用いた公知例としては、例えば特許文献3や特許文献4があり、いずれも数百nmサイズのオリビン型リン酸鉄リチウム粒子が得られている。このうち特に特許文献4では、噴霧乾燥を行う際に、溶液中に反応遅延剤を加えることにより数十nmのリン酸鉄リチウム粒子の合成が可能とされており、実施例では最小で数百nmサイズの粒子が得られている。そして、これらの粒子は二次凝集体を形成しており、一次粒子に分散した微粒子は得られていない。二次凝集体を形成しているオリビン型リン酸鉄リチウムでは、均一性の高い正極合剤を調製することは難しく、(1)の方法により得られたオリビン型リン酸鉄リチウムを用いて電池を構成した場合と同様の問題が生じてしまう。
【0007】
更に、(4)の製造方法については特許文献5に開示があり、この特許文献5では、結晶成長を抑制させるための有機添加物の存在下で水熱処理を施す例が記載されており、数十nmのリン酸鉄リチウム粒子の合成が可能とされている。また、特許文献5に開示されているような水熱合成法を用いた場合には、より低温での処理により結晶性の良好な粒子を得ることができ、一次粒子に分散した粒子を得ることができるというメリットがある。しかしながら、特許文献5に開示の方法であっても、例えば実施例に記載されているように、実際には最小で約100nmサイズの粒子しか得ることができておらず、数nmから数十nm程度の粒子を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−134724号公報
【特許文献2】特開平9−171827号公報
【特許文献3】特開2003−157845号公報
【特許文献4】特開2005−116393号公報
【特許文献5】特開2005−276476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
正極活物質として使用するリン酸鉄リチウム粒子の粗大化は、すなわち比表面積の低下につながり、電池の充放電時の電流密度を低下させ、その結果、高出力化を妨げる要因となる。かかる理由からリン酸鉄リチウム粒子の更なる微粒子化が望まれているが、現状では高々100nm程度の大きさが得られる最小粒径であり、例えば特許文献3、4に記載されている方法を用いた場合であっても、より微粒子化させたオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を得ることができなかった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を有し、特性の良好なリチウムイオン二次電池を構成可能な正極活物質を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、あらかじめ微細な鉄酸化物微粒子を合成し、これを核としてオリビン型リン酸鉄リチウムを結晶化させることにより、微細かつ粒径の分布が狭く、二次凝集体を形成せずに一次粒子が良好に分散したリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、上記目的を達成し得た本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、上記正極活物質は、二次凝集体を形成せずに単一粒子として存在しており、上記オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子は、平均粒子径が5〜50nmであり、全個数中90%以上の微粒子の粒子径が3〜70nmの範囲内にあり、平均粒子径が50nm以下である鉄酸化物微粒子を成長核に用い、該鉄酸化物微粒子とリチウム源およびリン酸源を含む溶液とを混合し、得られた混合物を加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を有し、特性の良好なリチウムイオン二次電池を構成可能な正極活物質を製造する方法を提供できる。本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて構成されるリチウムイオン二次電池では、より多くの電流が流れ、充放電時に高い電流密度が得られることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の正極活物質の粉末X線回折スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1の正極活物質のTEM写真である。
【図3】実施例4の正極活物質のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」という場合がある)は、二次凝集体を形成せずに単一粒子として分散しており、かつオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を有していて、該オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子は、平均粒子径が5〜50nmであり、全個数中90%以上の微粒子の粒子径が3〜70nmの範囲内にあり、微細かつ粒径分布の狭いものである。本発明の正極活物質はこのような形態を有することにより、リチウムイオン二次電池用正極を製造する際に使用する正極合剤層中において、導電性を確保するために使用される導電助剤との分散がより均一になるため、正極合剤層の導電性を高めることができ、この作用によって、特性の良好なリチウムイオン二次電池を構成することができる。また、正極活物質自体が微細であることで、Li(リチウム)の拡散速度が大きくなるため、この作用によってもリチウムイオン二次電池の特性を高めることができる。
【0016】
本発明の正極活物質の有するオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径は、大きすぎると上記の作用を発揮できなくなることから、50nm以下であり、二次凝集体の形成が阻害され易いことから、20nm以下であることが好ましい。また、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径は、あまり小さすぎると、リン酸鉄リチウムの結晶構造上、格子点の数が少なすぎるために安定な結合が起こらず、オリビン構造を保持し難くなり、正極活物質の製造自体が困難となることから、5nm以上であり、8nm以上であることが好ましい。
【0017】
正極活物質の有するオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子は、喩え上記の平均粒子径を満たすものであっても、粒子径の分布が広く、例えば中に粗大な粒子が存在しているような場合には、正極活物質に係るオリビン型リン酸鉄リチウムを微細にすることによる上記作用が損なわれる虞がある。本発明に係るオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子は、全個数中の90%以上の微粒子の粒子径が3〜70nmの範囲内にあり、極めて微細な粒子や粗大な粒子を含まず、上記作用を十分に発揮できるものである。本発明に係るオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子は、全個数中の90%以上の微粒子が、5nm以上の粒子径を有していることが好ましく、また、50nm以下の粒子径を有していることが好ましい。
【0018】
また、本発明の正極活物質に係るオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の個々の微粒子は、単結晶であることが好ましい。オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子が単結晶の場合には、多結晶の場合よりも導電性が良好であるため、これを用いた正極の導電性をより高めて、より特性の良好なリチウムイオン二次電池を構成できるようになる。よって、本発明に係るオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子は、その平均結晶子サイズが平均粒子径とほぼ同等であることが好ましく、具体的には、平均結晶子サイズが、5nm以上、より好ましくは8nm以上であって、50nm以下、より好ましくは20nm以下であることが望ましい。なお、正極活物質の有するオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子が全て単結晶のときには、実際には、微粒子の最表面付近では結晶構造が曖昧になる場合もあるため、平均結晶子サイズは平均粒子径よりも若干小さいが、ほぼ同等サイズの測定値となる。
【0019】
本発明の正極活物質は、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子のみで構成されていてもよいが、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の周囲に、アモルファス状の物質(例えば、ガラス質構造の物質)が存在していてもよく、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子が上記物質により覆われていてもよい。オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の周囲に、このような物質が存在することにより、正極活物質の二次凝集体の形成がより良好に阻害され、単一粒子の分散体となる。オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の周囲に存在する物質としては、アルミニウムまたはイットリウムが好ましい。
【0020】
本明細書でいう正極活物質に係るオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径および粒子径分布は、正極活物質を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子100個について求めた値であり、平均粒子径は、上記100個の粒子の数平均粒子径である。なお、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の形状が真球状でない場合(TEM画像では真円状でない場合)には、個々の微粒子の粒子径は、その長径(最も長い径)と短径(最も短い径)との平均値とする。また、本明細書でいう正極活物質に係るオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の平均結晶子サイズは、正極活物質について、Cu−Kα線を用い、スキャン速度2°/minで測定されるX線回折スペクトルにおけるピークの半値幅から求められる値である。なお、X線回折スペクトルは集中法で測定し、測定範囲は2θ=20〜80°とする。
【0021】
なお、ガラス質構造の物質がオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の周囲に存在している場合には、TEM写真ではバックグラウンドの濃淡として観測され、また、リン酸鉄リチウム微粒子自体を覆う形でガラス質構造の物質が存在している場合には、TEM写真撮影の際にリン酸鉄リチウム粒子の粒子境界がくっきりとした線で観測されないという特徴がある。粉末X線回折のような構造解析においても、上記物質がガラス質構造(アモルファス状)である場合には回折線が現れない。これらの理由により、ガラス質構造の物質の存在を分析する際には、まず蛍光X線分析(XRF)または誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析などの組成分析により相当量のアルミニウムなどの元素の存在を必ず確認し、更に、粉末X線回折(XRD)により、含有元素由来のいずれの構造も現れずアモルファス構造をとっていることを確認した上で、TEM観察により状態を確認する必要がある。なお、アモルファス状であってもガラス質構造でない場合には、正極活物質のTEM観察の際にバックグラウンドの濃淡としてではなく、不定形粒子など可視の物質として観察される。
【0022】
上記のような本発明の正極活物質は、本発明法、すなわち、平均粒子径が50nm以下である鉄酸化物微粒子を成長核に用い、該鉄酸化物微粒子とリチウム源およびリン酸源を含む溶液とを混合し、得られた混合物を加熱してリン酸鉄リチウム微粒子を合成する製造方法により製造することができる。以下、「鉄酸化物微粒子の合成」、「リン酸鉄リチウム微粒子の合成」の順に詳細に説明する。
【0023】
<鉄酸化物微粒子の合成>
まず、オリビン型リン酸鉄リチウムの成長核として作用する鉄酸化物微粒子を合成する。鉄酸化物としては、Fe、FeOOH、Feなどが好ましい。また、これらの鉄酸化物(Fe、FeOOH、Feなど)の含有するFeの一部を他の元素で置換した一部置換体でもよい。上記鉄酸化物の一部置換体に係る他の元素(置換元素)は、オリビン構造を形成した際に、かかるオリビン構造を破壊することなく、鉄酸化物結晶におけるFeサイトを置換し得る金属元素であればよく、例えば、アルミニウムやイットリウムが挙げられる。また、アルミニウムやイットリウムは、焼結防止剤や表面処理剤として一般的に含有されるものであり、このような形態で鉄酸化物微粒子に存在していても構わない。
【0024】
上記のアルミニウムやイットリウムは3価の元素であり、オリビン構造の中に取り込まれ難く、多くは合成されるオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の周囲に析出し、アモルファス状(例えばガラス質構造)の形態を取る。よって、オリビン型リン酸鉄リチウムの周囲に、アモルファス状(例えばガラス質構造)のアルミニウムまたはイットリウムが存在する態様の正極活物質を製造するには、上記の鉄酸化物の一部置換体を用いて正極活物質を製造すればよい。
【0025】
なお、オリビン型リン酸鉄リチウムの周囲にアモルファス状(好ましくはガラス質構造)のアルミニウムやイットリウムが存在する場合には、特にオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の粒子径が小さいときに、その凝集を良好に防止できるが、鉄酸化物の一部置換体中にアルミニウムやイットリウムが多量に存在する場合には、オリビン型リン酸鉄リチウム合成時に不純物として析出することがある。そのため、鉄酸化物の一部置換体においては、アルミニウムまたはイットリウムで置換しているサイトは、全Feサイトの10%以下であることが好ましい。他方、鉄酸化物の一部置換体を使用することによるオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の二次凝集防止作用をより有効に発揮させる観点からは、鉄酸化物の一部置換体においてアルミニウムまたはイットリウムで置換しているサイトは、全Feサイトの3%以上であることが好ましい。
【0026】
鉄酸化物微粒子の作製方法は、結晶性が高く、平均粒子径が50nm以下の微粒子状の鉄酸化物を合成可能な方法であれば、いずれの合成方法でもかまわないが、微粒子を得るにあたっては、水熱合成法が最も好ましい。FeおよびFeについては、50nm以下の微粒子を作製する既存の方法が多く存在し、そのいずれの方法を用いてもよい。上記の鉄酸化物の中でもFeOOHは、反応性が高く最終的にオリビン構造のリン酸鉄リチウム微粒子を得やすいが、代わりに、FeOOHそのものの成長速度が非常に速くて針状に成長しやすく、巨大な針状粒子となる場合が多いため、微粒子を得ることが比較的難しい。そのような事情から、微粒子状のFeOOHの合成方法について、以下に詳細に示す。
【0027】
第一に、過剰の水酸化ナトリウムを溶解したアルカリ溶液を、硫酸鉄(II)水溶液中に攪拌しながら滴下し、黒緑色の沈殿を生成させる。この際、結晶成長抑制効果のあるものとしてアルミニウムを添加してもよく、その場合には水酸化ナトリウム溶液中にアルミン酸ナトリウムなどのアルミニウム化合物を溶解させて、同様に滴下すればよい。次いで、空気を巻き込むように強攪拌、または空気をバブリングしながら攪拌し、沈殿中のFe2価イオンが全て酸化されて3価になるまで、約2〜3時間の間攪拌を続ける。Feが完全に3価になると、沈殿の色はオレンジ色に変化する。この際、原料の硫酸鉄が、保存方法が悪いなどの原因で酸化されて一部3価の鉄が混合していると、溶液中で2価から3価に変化する工程を経ることがないため、その後も別の反応経路を辿ることとなり、最終生成物であるFeOOH微粒子に、粒子径の粗大なFe粒子が混合することとなり好ましくない。
【0028】
第二に、得られたオレンジ色の沈殿物を15〜20時間の間室温で静置し、130〜180℃の温度で水熱処理を施すことにより、FeOOH微粒子を得る。この際、室温静置の時間が短すぎれば、最終生成物であるFeOOH微粒子の結晶成長が不十分となり、粒子径分布の悪い粗悪なFeOOH微粒子となるため好ましくない。また、室温静置の時間が長すぎれば、FeOOH特有の針状成長が始まり、粒子径の大きな針状粒子となってしまうため、好ましくない。水熱処理の温度は130℃より低くても圧力のかかる温度であれば構わないが、FeOOH粒子の結晶性をよくするためにも、130℃以上とすることが好ましい。また、180℃以上であってもFeOOH微粒子を得ることは可能であるが、粒子サイズが大きくなってしまったり、処理温度が高くなれば圧力も高くなるため、使用する装置に制限が加わることなどを考慮して、180℃以下とすることが好ましい。水熱処理後の懸濁液は、よく洗浄した後ろ過・乾燥して、FeOOH微粒子を得る。
【0029】
上記のような方法により平均粒子径が50nm以下の鉄酸化物微粒子が得られるが、本発明法で使用する鉄酸化物微粒子の平均粒子径の下限は、例えば、5nmであることが好ましい。なお、本明細書でいう鉄酸化物微粒子の平均粒子径は、正極活物質に係るオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径と同じ測定方法により求められる値である。
【0030】
<リン酸鉄リチウム微粒子の合成>
次に、いわゆる含浸法により、リン酸鉄リチウム微粒子を合成する。まず、多数の鉄酸化物微粒子中に、リチウム源およびリン酸源であるリチウムイオンとリン酸イオンとを含む溶液を含浸させ、鉄酸化物微粒子と上記溶液とを混合する。上記溶液におけるリチウムイオン源およびリン酸イオン源としては、当量を溶解させた場合に沈殿を作らない組み合わせであれば特に限定されるものではなく、例えば炭酸リチウムとリン酸、水酸化リチウムとリン酸、などの組み合わせで溶解させることができる。リチウムイオン源としては、上記の炭酸リチウム、水酸化リチウムの他、硝酸リチウムなど、リン酸を溶解させた酸性水に溶解するリチウム塩であればよい。またリン酸イオン源としては、他種の金属元素が含有されていないリン酸(HPO)を用いることが最も好ましい。リチウムイオンとリン酸イオンとを含む溶液における溶媒には水を用いることが、最も低コストかつ簡便であり好ましいが、エタノールなどの親水性有機溶媒については、分布を整える効果もあるため、水に加えて溶媒として使用しても構わない。
【0031】
なお、鉄酸化物微粒子と上記溶液との混合処理の後水熱処理を行う場合には、上記溶液におけるリチウムイオンおよびリン酸イオンの濃度は、モル基準で、リチウムとリン酸が当量であればよく、鉄に対して過剰であっても構わない。また、鉄酸化物微粒子と上記溶液との混合処理の後水熱処理を行わずに乾燥加熱処理を行う場合には、リチウムイオン:リン酸イオン:鉄=1:1:1(モル比)となるように精密に秤量する。以上の組成により、リチウムイオンおよびリン酸イオンを含む溶液を調製し、溶液中に鉄酸化物微粒子を分散させることで両者を混合する。分散させる方法としては、超音波やモータによる攪拌など、鉄酸化物微粒子を良好に分散させ得るものであればいずれの方法を用いても構わない。
【0032】
鉄酸化物微粒子と上記溶液との混合処理の後、得られた混合物に加熱処理を施して、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を合成し、本発明の正極活物質とする。加熱処理方法としては、リチウム源およびリン酸源の水溶液(リチウムイオンとリン酸鉄イオンとを含む溶液)に係る水が存在する状態で、加圧下で加熱する水熱処理を行う方法;上記水熱処理の後に、更に不活性雰囲気または還元雰囲気中で乾燥加熱処理する方法;上記水熱処理を経ずに、リチウム源およびリン酸源を含浸させた鉄酸化物微粒子から水を乾燥除去し、不活性雰囲気または還元雰囲気中で乾燥加熱処理する方法;が挙げられる。
【0033】
加熱処理方法として水熱処理のみを行うか、水熱処理を施した後に乾燥加熱処理を施す場合には、鉄酸化物微粒子とリチウム源およびリン酸源を含む溶液との混合物を耐圧容器などに入れて150〜200℃の温度で水熱処理を行い、リン酸鉄リチウム微粒子を得る。
【0034】
加熱処理方法として水熱処理を施さない方法を採用する場合には、鉄酸化物微粒子とリチウム源およびリン酸源を含む溶液との混合物から、60〜100℃の温度で溶媒を蒸散させ、完全に乾燥させて、リン酸鉄リチウム微粒子の前駆体を得る。
【0035】
乾燥加熱処理は、上記の水熱処理により得られたリン酸鉄リチウム微粒子、または、上記の乾燥により得られたリン酸鉄リチウム微粒子の前駆体に対して行う。加熱処理としては、不活性雰囲気または還元雰囲気中で、500〜700℃の温度で熱処理を行うことが好ましい。リン酸鉄リチウム微粒子を正極活物質として用いる際には、導電助剤となるカーボン粉末を混合する場合があるが、その際にはカーボン粉末自体の持つ還元性を利用できるため、不活性雰囲気で加熱処理することが好ましい。カーボンの混合量によっては還元雰囲気での加熱処理が好ましい場合もあるが、リン酸鉄リチウムの前駆体は還元が進みすぎると分解が始まり、リン酸鉄リチウムが得られないことがあるため、雰囲気を調整する必要がある。また、カーボン粉末を混合せずに乾燥加熱処理を行う場合には、還元雰囲気中での加熱処理が好ましい。この際には、不活性ガス中での加熱処理では3価のFeを含むリチウム、鉄、リン酸の化合物が生成し、オリビン構造にならないため好ましくない。加熱処理の温度は、500℃以下であっても約400℃以上であればオリビン構造を形成することは可能であるが、結晶が未発達となったり未反応成分などが残留したりすることがあり、好ましくない。また700℃以上の高温では、結晶性の高いオリビン構造が得られるものの、得られたリン酸鉄リチウム粒子の粒子径が大きくなってしまい、微粒子化できないため、好ましくない。
【0036】
なお、鉄酸化物微粒子として、アルミニウムやイットリウムなどを含有する一部置換体の微粒子を用いた場合には、詳細にどのような機構かは不明であるが、上記加熱処理の段階で、アルミニウムまたはイットリウムなどがリン酸鉄リチウム周辺にガラス質を形成すると考えられ、最終的にガラス質構造のアルミニウムまたはイットリウムなどが周囲に存在するオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子が得られる。
【0037】
以上のように、あらかじめ結晶成長の核となる結晶性の良好な鉄酸化物の微粒子を作製し、この微粒子をリチウムイオンおよびリン酸イオンを含む溶液中に分散させ、その後に加熱処理を施すことによって、平均粒子径が50nm以下というリン酸鉄リチウム微粒子を有する本発明の正極活物質を製造することが可能となる。
【0038】
このようにして得られた本発明の正極活物質を用い、常法に従って電極とし、更に該電極を正極に用いてリチウムイオン二次電池を構成することができる。本発明の正極活物質は微粒子状のオリビン型リン酸鉄リチウム、すなわち比表面積の大きなオリビン型リン酸鉄リチウムを有しており、これにより、正極の導電性を高めることが期待できることから、本発明の正極活物質を用いて構成されるリチウムイオン二次電池は、優れた特性を有するものとなる。また、本発明の正極活物質は、従来公知のオリビン型リン酸鉄リチウムと同様に、原料が安価であり、しかも安全性の高いものである。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0040】
実施例1
まず、成長核となる水酸化酸化鉄(FeOOH)微粒子を作製した。硫酸鉄(II)七水和物22.23gを水400mlに溶解し、これとは別に10質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を調製し、硫酸鉄水溶液に攪拌しながら滴下した。pH8になるまで滴下を続け、溶液中の鉄2価イオンが全て鉄3価イオンになり、沈殿物の色が黄色になるまで約3時間の間、強攪拌した。その後室温で19時間静置し、160℃で水熱処理を施した後、水洗、ろ過、乾燥し、10〜20nmサイズ(平均粒子径14nm)のFeOOH微粒子を得た。
【0041】
次に、水酸化リチウム一水和物0.53gおよび85%リン酸溶液1.46gを水50mlに溶解して、リチウムイオンとリン酸イオンとを含む水溶液を調製した。このリチウムイオンとリン酸イオンとを含む水溶液に、先に作製したFeOOH微粒子1.11gを加え、超音波で分散させた後、攪拌し、リチウムイオンとリン酸イオンとを含む水溶液中にFeOOH微粒子をよく分散させた。その後90℃で乾燥させ、リン酸鉄リチウムの前駆体微粒子を得た。
【0042】
次に、上記のリン酸鉄リチウムの前駆体微粒子について、水素10%−窒素90%雰囲気中500℃で2時間の加熱処理を行い、オリビン型リン酸鉄リチウムを合成して、正極活物質を得た。
【0043】
このようにして得られた正極活物質について、粉末X線回折スペクトル測定を行い、図1に示すようにオリビン構造の明確なピークが現れていることが確認された。この際、回折ピークの半値幅から求めた正極活物質中のリン酸鉄リチウムの平均結晶子サイズは18.1nmであった。また、正極活物質のTEM写真を図2に示す。このTEM観察により、リン酸鉄リチウム微粒子は、全粒子の粒子径が5〜30nmの範囲にあり、二次凝集体を形成しておらず、一次粒子の状態で存在することが確認された。このTEM写真から求めたリン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径は、19.2nmであった。
【0044】
実施例2
リチウムイオンとリン酸イオンとを含む水溶液を、水酸化リチウム一水和物1.06gおよび85%リン酸溶液2.92gを水50mlに溶解して調製したものに変更した以外は、実施例1と同様にして、上記水溶液中にFeOOH微粒子をよく分散させた。その後、上記水溶液とFeOOH微粒子との分散物を耐熱容器に入れ、180℃で5時間の水熱処理を施し、得られた懸濁液を水洗、ろ過、乾燥して、リン酸鉄リチウムの前駆体微粒子を得た。
【0045】
次に、上記のリン酸鉄リチウムの前駆体微粒子について、水素10%−窒素90%雰囲気中600℃で2時間の加熱処理を行い、オリビン型リン酸鉄リチウムを合成して、正極活物質を得た。
【0046】
このようにして得られた正極活物質について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様にオリビン構造の明確なピークが現れ、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは42.9nmであった。また、TEM観察を行った結果、リン酸鉄リチウム微粒子は、全粒子の粒子径が30〜50nmの範囲にあり、実施例1と同様に一次粒子の状態で存在することが確認された。なお、TEM写真から求めたリン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径は45.5nmであった。
【0047】
実施例3
リチウムイオンとリン酸のイオンとを含む水溶液に、FeOOH微粒子1.11gと共にカーボン粉末1.9gを分散させた以外は、実施例1と同様にして、リン酸鉄リチウムの前駆体微粒子を得た。
【0048】
次に、上記のリン酸鉄リチウムの前駆体微粒子について、窒素雰囲気中500℃で2時間の加熱処理を行い、オリビン型リン酸鉄リチウムを合成して、正極活物質を得た。
【0049】
このようにして得られた正極活物質について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、カーボンに起因するブロードなバックグラウンド強度の上にオリビン構造の明確なピークが現れ、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは28.6nmであった。また、TEM観察を行った結果、カーボン粒子とリン酸鉄リチウム微粒子との混合物が観測され、リン酸鉄リチウム微粒子は、全粒子の粒子径が15〜40nmの範囲にあり、実施例1と同様に一次粒子の状態で存在することが確認された。なお、TEM写真から求めたリン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子サイズは32.5nmであった。
【0050】
実施例4
FeOOH微粒子を1.11g用いる代わりに、Feの10原子%をAlで置換した(すなわち、Feサイトの10%をAlで置換した)マグネタイト(Fe)粒子(平均粒子径20nm)0.93gを用いた以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。
【0051】
このようにして得られた正極活物質について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様にオリビン構造の明確なピークが現れ、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは12.7nmであった。アルミニウムに起因する粉末X線回折ピークは現れなかったが、蛍光X線分析による組成分析の結果、アルミニウムは約8質量%存在することが確認された。また、TEM観察を行った結果、リン酸鉄リチウム微粒子は、全粒子の粒子径が8〜20nmの範囲にあり、その大部分をガラス状構造の物質が覆い、一次粒子の状態で存在することが確認された。TEM写真から求めたリン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子サイズは15.9nmであった。このTEM写真を図3に示す。ガラス状構造の物質が微粒子周辺を覆っている様子が良く分かるように、敢えてその境界部分の写真を示した。写真右上半分では粒子の境界線がはっきりと見えているのに対し、写真左下半分では靄がかかったように覆われていることが分かる。
【0052】
比較例1
硫酸鉄(II)七水和物3.49g、および85%リン酸溶液1.46gを水30ml中に溶解し、N−メチル−2−ピロリジノン60mlを加えて、鉄およびリン酸を含む溶液を調製した。これとは別に、水酸化リチウム一水和物1.59gを水50mlに溶解し、鉄およびリン酸を含む溶液中に攪拌しながら滴下し、懸濁液を調製した。得られた懸濁液に160℃の水熱処理を6時間施してリン酸鉄リチウムを合成し、正極活物質を得た。
【0053】
このようにして得られた正極活物質について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様にオリビン構造の明確なピークが現れ、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは>100nmであった。また、TEM観察を行った結果、リン酸鉄リチウム微粒子は、全粒子の粒子径が90〜150nmの範囲にあり、一次粒子の状態で存在することが確認された。また、TEM写真から求めたリン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径は124nmであった。
【0054】
比較例2
硝酸鉄(II)七水和物6.98g、炭酸リチウム1.87g、およびリン酸ニ水素アンモニウム2.91gを、φ1mmのジルコニアビーズを用いてボールミルにより粉砕・混合し、前駆体を作製した。その後、水素10%−窒素90%の雰囲気中600℃で加熱処理を行ってリン酸鉄リチウムを合成し、正極活物質を得た。
【0055】
このようにして得られた正極活物質について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様にオリビン構造の非常に鋭い明確なピークが現れ、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは>100nmであった。また、TEM観察を行った結果、リン酸鉄リチウム微粒子の粒子径は数百nm〜約10μmと分布が広く、強固な二次凝集体を形成しており、平均粒子径は3.8μmであった。
【0056】
比較例3
FeOOH微粒子を用いる代わりに、平均粒子径500nmのFe粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸鉄リチウムを合成し、正極活物質を得た。
【0057】
このようにして得られたリン酸鉄リチウム粒子について、粉末X線回折スペクトル測定を行った結果、実施例1と同様にオリビン構造の明確なピークが現れ、回折ピークの半値幅から求めた平均結晶子サイズは<100nmであった。また、TEM観察を行った結果、リン酸鉄リチウム微粒子の粒子径は150〜400nmであり、粒子の形状は不定形であり、加熱による分解・分裂が起こったと見られる破片状の粒子が観測された。また、リン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径は350nmであった。
【0058】
表1に、各実施例および比較例の評価結果をまとめて示す。なお、表1に示す「平均粒子径」、「粒子径の範囲」、および「平均結晶子サイズ」は、全て正極活物質に係るリン酸鉄リチウム微粒子に関するものであり、また、「粒子径の範囲」の欄には、各実施例、比較例の正極活物質のTEM観察により確認された全リン酸鉄リチウム微粒子に関する値を示している。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、実施例1〜4の正極活物質は、オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の平均粒子径が5〜50nmで、全微粒子の粒子径が3〜70nmの範囲にあり、また、平均結晶子サイズが平均粒子径と同等程度の大きさの5〜50nmである。それと共に、平均粒子径が50nm以下といった微粒子であるにも関わらず、一次粒子の状態で存在している。
【0061】
一方、比較例1のように、成長抑制剤となる有機化合物(N−メチル−2−ピロリジノン)を添加して水熱合成を行った場合には、比較的小さな粒子が得られ、結晶性も良好であるが、これ以上の微粒子を得ることができなかった。また比較例2では、最も一般的に広く行われているメカニカル・アロイによる製法を行っているが、この場合には非常に強固な二次凝集体を形成し、また一次粒子径も数μm程度と粗大なものになってしまうことが分かる。更に比較例3では原料として粗大な酸化鉄粒子を用いたために、最終生成物であるリン酸鉄リチウム粒子の粒子径も大きなものとなってしまうことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子を有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
上記正極活物質は、二次凝集体を形成せずに単一粒子として存在しており、
上記オリビン型リン酸鉄リチウム微粒子は、平均粒子径が5〜50nmであり、全個数中90%以上の微粒子の粒子径が3〜70nmの範囲内にあり、
平均粒子径が50nm以下である鉄酸化物微粒子を成長核に用い、該鉄酸化物微粒子とリチウム源およびリン酸源を含む溶液とを混合し、得られた混合物を加熱することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項2】
鉄酸化物微粒子とリチウム源およびリン酸源を含む溶液との混合物の加熱を、
不活性雰囲気または還元雰囲気中で乾燥加熱処理するか、
水熱処理するか、または
水熱処理した後に、不活性雰囲気または還元雰囲気中で乾燥加熱処理することにより行う請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項3】
鉄酸化物微粒子に係る鉄酸化物は、Fe、FeOOH、Fe、またはこれらの含有するFeの一部を他の元素で置換した一部置換体である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項4】
鉄酸化物の一部置換体におけるFeを置換する他の元素が、アルミニウムまたはイットリウムである請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項5】
製造されるリチウムイオン二次電池用正極活物質に含まれるオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の周囲に、ガラス質構造のアルミニウムまたはイットリウムが存在している請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項6】
製造されるリチウムイオン二次電池用正極活物質に含まれるオリビン型リン酸鉄リチウム微粒子の平均結晶子サイズが5〜50nmである請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−77571(P2013−77571A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262072(P2012−262072)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2006−348787(P2006−348787)の分割
【原出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】