説明

リチウムイオン組電池の管理装置および管理方法

【課題】 リチウムイオン組電池の充電時におけるリチウムイオンセルの電圧を均等化する際の電力損失を抑制する。
【解決手段】 リチウムイオンセル2が複数直列に接続されたリチウムイオン組電池20の管理装置3であって、セル電圧V2を計測する電圧計4と、各セル2にそれぞれ接続されるバイパス回路5aと、計測されたセル電圧V2に基づいて、各セル2のセル電圧V2の調整の要否を判断するセル電圧調整判定手段と、バイパス回路5aと組電池20との間で電力を移送する電力移送手段と、セル電圧調整判定手段が、セル電圧の調整が必要と判断した場合は、当該セル2のセル電圧V2が指定された基準値となるよう、電力移送手段を動作させる制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リチウムイオンセルを複数直列に接続して構成されるリチウムイオン組電池の管理装置および管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンセルは、エネルギー密度が高い、自己放電量が少ない、などという利点を有し、自動車用蓄電池や電気・電子機器用蓄電池などとして広く使用されている。また、使用目的に応じた電圧や容量を得るために、リチウムイオンセルを複数接続して組電池を構成し、使用する場合がある。このようにしてリチウムイオン組電池として使用する場合、リチウムイオンセルに電圧のバラツキが生じてしまい、電圧の高いリチウムイオンセルと電圧の低いリチウムイオンセルとが混在してしまう。そこで、組電池におけるセルの電圧バラツキを防ぐために、各リチウムイオンセルに並列に電圧均等化回路を接続し、所定電圧に達したリチウムイオンセルの電圧上昇を抑制するために充電電流をバイパスさせるようにしている。この電圧均等化回路には、例えば抵抗が使用されており、バイパスされた充電電流は熱として消費されるようになっている。
【0003】
また、短時間で組電池を構成する各単位セルの電圧の均等化を行う充電状態調整方法に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、複数の単位セルのうち、両端電圧が最大となるものを最大単位セル、両端電圧が最小となるものを最小単位セルとし、コンデンサからの電荷の移動を利用して、各単位セルの両端電圧を均等化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−120871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の抵抗を用いた電圧均等化回路ではバイパスされた充電電流は熱として消費されてしまい、充電電流の損失となっている。リチウムイオン組電池は、例えば停電に備えた非常用電源として使用される場合は、常時フロート充電されることになり、抵抗を用いた電圧均等化回路を用いたリチウムイオン組電池では、電力損失が大きくなるという問題がある。また、リチウムイオン組電池は、非常用電源だけでなく、充放電を繰り返す他の用途にも使用され、放電後は必ず充電を行う必要があることから、他の用途におけるリチウムイオン組電池においても、充電時の電力損失を抑制することは重要となる。
【0006】
そこでこの発明は、リチウムイオン組電池の充電時におけるリチウムイオンセルの電圧を均等化する際の電力損失を抑制することが可能なリチウムイオン組電池の管理装置および管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、リチウムイオンセルが複数直列に接続されたリチウムイオン組電池の管理装置であって、前記各リチウムイオンセルの電圧を計測する電圧監視部と、前記各リチウムイオンセルにそれぞれ接続されるバイパス回路と、前記電圧監視部で計測された前記リチウムイオンセルの電圧計測値に基づいて、各リチウムイオンセルのセル電圧の調整の要否を判断するセル電圧調整判定手段と、前記バイパス回路と前記リチウムイオン組電池との間で電力を移送する電力移送手段と、前記セル電圧調整判定手段が、セル電圧の調整が必要と判断した場合は、当該リチウムイオンセルのセル電圧が指定された基準値となるよう、前記電力移送手段を動作させる制御手段と、を備えることを特徴とするリチウムイオン組電池の管理装置である。
【0008】
この発明によれば、セル電圧調整判定手段が、セル電圧の調整が必要と判断した場合は、当該リチウムイオンセルのセル電圧が指定された基準値とされる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリチウムイオン組電池の管理装置において、前記電力移送手段が、前記バイパス回路にそれぞれ設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のリチウムイオン組電池の管理装置において、前記セル電圧調整判定手段は、前記リチウムイオンセルのセル電圧が上限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断し、前記バイパス回路には、前記リチウムイオンセルの充電電流がバイパスされ、前記電力移送手段は、昇圧式変換装置で構成され、前記バイパス回路を経由して入力される電圧を前記リチウムイオン組電池の充電電圧まで昇圧し、前記バイパス回路に流れる前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給し、前記制御手段は、前記セル電圧調整判定手段が、前記リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、前記バイパス回路に当該リチウムイオンセルの前記充電電流をバイパスさせ、前記電力移送手段で昇圧された前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給するように制御する、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、セル電圧調整判定手段が、リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、バイパス回路に当該リチウムイオンセルの充電電流をバイパスさせ、電力移送手段で昇圧された充電電流がリチウムイオン組電池に供給される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のリチウムイオン組電池の管理装置において前記セル電圧調整判定手段は、前記リチウムイオンセルのセル電圧が上限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断し、前記リチウムイオンセルのセル電圧が下限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電が必要と判断し、前記バイパス回路には、前記リチウムイオンセルの充電電流、または前記リチウムイオン組電池の充電電流が供給され、前記電力移送手段は、双方向型変換装置で構成され、前記バイパス回路に入力される電圧を前記リチウムイオン組電池の充電電圧まで昇圧し、前記バイパス回路に流れる前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給、もしくは、前記リチウムイオン組電池の充電電圧を前記リチウムイオンセルの充電電圧まで降圧して前記リチウムイオン組電池の充電電流を前記リチウムイオンセルに供給し、前記制御手段は、前記セル電圧調整判定手段が、前記リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、前記バイパス回路に当該リチウムイオンセルの前記充電電流をバイパスさせ、前記電力移送手段で昇圧された前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給し、前記セル電圧調整判定手段が、前記リチウムイオンセルの充電が必要と判断した場合は、前記電力移送手段で降圧された前記リチウムイオン組電池の充電電流を、前記バイパス回路を経由して当該リチウムイオンセルに供給する、ことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、セル電圧調整判定手段が、リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、バイパス回路に当該リチウムイオンセルの充電電流をバイパスさせ、電力移送手段で昇圧された充電電流が前記リチウムイオン組電池に供給され、セル電圧調整判定手段が、リチウムイオンセルの充電が必要と判断した場合は、電力移送手段で降圧されたリチウムイオン組電池の充電電流が、バイパス回路を経由して当該リチウムイオンセルに供給される。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のリチウムイオン組電池の管理装置において、前記セル電圧調整判定手段は、前記リチウムイオンセルのセル電圧が上限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断し、前記電力移送手段は、一台の昇圧式変換装置で構成され、前記リチウムイオンセルに接続されている複数の前記バイパス回路を入力可能とする入力切替器が配置され、前記バイパス回路を経由して入力される電圧を前記リチウムイオン組電池の充電電圧まで昇圧し、前記バイパス回路に流れる前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給し、前記制御手段は、前記セル電圧調整判定手段が、前記リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、当該リチウムイオンセルに接続されている前記バイパス回路を、入力切替器を介して前記電力移送手段に入力し、前記電力移送手段で昇圧された前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給するように制御する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のリチウムイオン組電池の管理装置において、前記セル電圧調整判定手段は、前記リチウムイオンセルのセル電圧が上限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断し、前記電力移送手段は、複数の前記バイパス回路を入力とし、前記バイパス回路の電圧を前記リチウムイオン組電池の充電電圧まで昇圧させる多入力昇圧回路から構成され、前記制御手段は、前記セル電圧調整判定手段が、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、前記バイパス回路に当該リチウムイオンセルの前記充電電流をバイパスさせ、前記電力移送手段で昇圧された前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給するように制御する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、リチウムイオンセルが複数直列に接続されたリチウムイオン組電池の管理方法であって、前記各リチウムイオンセルの電圧を電圧監視部によって計測し、前記電圧監視部で計測された前記リチウムイオンセルの電圧計測値に基づいて、各リチウムイオンセルのセル電圧の調整の要否を判断し、セル電圧の調整が必要と判断された場合は、当該リチウムイオンセルのセル電圧が指定された基準値となるように、前記バイパス回路と前記リチウムイオン組電池との間で電力を移送する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および7に記載の発明によれば、セル電圧の調整が必要な場合は、当該リチウムイオンセルのセル電圧を指定された基準値にすることができるので、セル電圧を適切な値に保つことができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、電力移送手段を各バイパス回路にそれぞれ設けられているので、リチウムイオンセルと電力移送手段は常に対応することになり、充電回路の設計が容易となる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、リチウムイオンセルの電圧を均等化するためのバイパス充電電流は、抵抗を用いた従来技術のように熱となって消費されることがなくなり、リチウムイオン組電池の充電時におけるリチウムイオンセルの電圧を均等化する際の電力損失を抑制することができる。また、バイパス充電電流による電力は、電力移送手段を介してリチウムイオン組電池の充電系統に還流されるので、バイパス充電電流をリチウムイオン組電池の充電に有効利用することができ、リチウムイオン組電池の運用時における省エネルギーを図ることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、各リチウムイオンセルに個別充電が必要である場合は、当該リチウムイオンセルを個別充電することができるので、より早く、適切にリチウムイオンセルの電圧を均等化することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、各バイパス回路は、電圧監視部によって計測された電圧に基づき、前記セル電圧調整判定手段が充電電流のバイパスが必要になったと判定した場合に、該当するリチウムイオンセルを接続する入力切替器を介して一つの電力移送手段と接続されているので、電力移送手段を各バイパス回路毎にそれぞれ設ける場合に比べて、電力移送手段の数を大幅に削減することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、電力移送手段は、各リチウムイオンセルからの入力電圧をリチウムイオン組電池の充電系統の電圧までそれぞれ昇圧可能な多入力昇圧回路から構成されているので、電力移送手段を各バイパス回路にそれぞれ設ける構成に比べて、電力移送手段をコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1に係るリチウムイオン組電池の管理装置を用いたリチウムイオン組電池システムを直流電力供給装置に適用した状態を示す概略構成図である。
【図2】図1における昇圧コンバータの概略構成図である。
【図3】図1のリチウムイオン組電池の管理装置におけるセル電圧調整部の概略構成図である。
【図4】図1のリチウムイオン組電池の管理装置における監視装置の概略構成図である。
【図5】図1のリチウムイオン組電池システムにおけるバイパス電流が流れない場合(モード1)の各セルの挙動を示す特性図であり、(a)は各セル電圧を示す図であり、(b)は充電電流とバイパス電流を示す図である。
【図6】図1のリチウムイオン組電池システムにおけるバイパス電流が流れる場合(モード2)の各セルの挙動を示す特性図であり、(a)は各セル電圧を示す図であり、(b)は充電電流とバイパス電流を示す図である。
【図7】図1のリチウムイオン組電池システムにおけるリチウムイオン組電池の充電電流を示す特性図である。
【図8】図1のリチウムイオン組電池の管理装置を用いたリチウムイオン組電池システムを交流電力供給装置に適用した状態を示す概略構成図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る図1における電力移送手段としての双方向コンバータの概略構成図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る図1における電力移送手段の他の構成を示す概略構成図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係るリチウムイオン組電池の管理装置を用いたリチウムイオン組電池システムを示す概略構成図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係るリチウムイオン組電池の管理装置を用いたリチウムイオン組電池システムを示す概略構成図である。
【図13】図12における多入力昇圧コンバータの概略構成図である。
【図14】図12のリチウムイオン組電池システムにおけるリチウムイオンセルの電圧の変化を示す特性図であり、(a)は1セルのみの充電電流がバイパスされた場合の特性図であり、(b)は複数セルの充電電流がバイパスされた場合の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1ないし図8は、この発明の実施の形態1を示している。図1は、リチウムイオン組電池20を負荷設備102のバックアップ用電源とし、リチウムイオン組電池20をフロート充電で運用するリチウムイオン組電池システム1を示している。ここで、商用電源100は、整流器101を介して直流負荷設備(負荷設備)102に接続されるとともに、整流器101を介してリチウムイオン組電池20に接続されている。つまり、商用電源100からの交流電力は、整流器101によって直流電力に変換された後、負荷設備102とリチウムイオン組電池20とに供給されるようになっている。リチウムイオン組電池20には、負荷設備102が接続されており、商用電源100の停電時などにはリチウムイオン組電池20に貯蔵された直流電力が、負荷設備102に供給されるようになっている。
【0026】
リチウムイオン組電池システム1は、リチウムイオンセル2が複数直列に接続されてリチウムイオン組電池20と、このリチウムイオン組電池20の充電を管理するリチウムイオン組電池の管理装置3を備えている。この実施の形態1においては、リチウムイオン組電池20は、リチウムイオンセル2を直列に12個接続したものから構成されている。ここで、充電系統電圧は例えば、セル電圧が4.1Vで、12セル直列で構成されている場合は49.2Vである。
【0027】
管理装置3は、リチウムイオンセル2の数に対応した複数のセル電圧調整回路3aと、リチウムイオン組電池20の電圧を計測する組電池総電圧計7と、制御手段としての監視装置8を有している。各セル電圧調整回路3aは、主として、電圧監視部としての電圧計4と、バイパス用スイッチ5と、バイパス回路5aと、電力移送手段としての昇圧式変換装置(昇圧回路、昇圧コンバータ)60とを有している。各セル電圧調整回路3aは、それぞれ監視装置8に接続されており、監視装置8によって制御されている。
【0028】
電圧計4は、リチウムイオンセル2のセル電圧を計測し、計測結果をリアルタイムに監視装置8に送信するものである。
【0029】
バイパス回路5aは、図1に示すように、リチウムイオンセル2に並列に接続され、必要に応じて前記リチウムイオンセルの充電電流がバイパスされる。リチウムイオンセル2と昇圧コンバータ60は、バイパス用スイッチ5が設けられたパイパス回路5aを介して接続されている。バイパス用スイッチ5は、パイパス回路5aを開閉するものであり、バイパス用スイッチ5の閉動作によってリチウムイオンセル2の充電電流Ichの一部(バイパス電流Iby)がバイパス回路5a側に供給されるようになっている。
【0030】
管理装置3における監視装置8は、電圧計4で測定した各リチウムイオンセル2のセル電圧V2が、基準電圧V1以上となった場合に、バイパス用スイッチ5を閉動作させ、バイパス回路5aを介してバイパス電流Ibyを昇圧コンバータ60に供給する機能を有している。そして、昇圧コンバータ60は、図2に示すように、リチウムイオンセル2の電圧をリチウムイオン組電池20の充電系統電圧まで昇圧し、電圧が昇圧されたバイパス電流Ibyによる電力をリチウムイオン組電池2の充電系統20aに還流(回生)させるようになっている。
【0031】
図3に示すように、セル電圧調整回路3aは、バイパス電流測定素子31を備えている。バイパス電流測定素子31は、測定したバイパス電流Ibyの信号を監視装置8に入力する機能を有している。また、セル電圧調整部3aは、電池電圧誤差増幅器81aと、電池電圧測定用誤差増幅器81bとを備えている。電池電圧誤差増幅器81aは、監視装置8の基準セル電圧指示制御部81からの制御指令信号S1を増幅し、バイパス用スイッチ5に出力する機能を有している。電池電圧測定用誤差増幅器81bは、バイパス電流Ibyの測定信号を増幅し、基準セル電圧指示制御部81に入力する機能を有している。
【0032】
昇圧コンバータ60は、バイパス回路と前記リチウムイオン組電池との間で電力を移送するものであり、ここでは上述したように、バイパス回路5aに入力されるリチウムイオンセル2の電圧をリチウムイオン組電池20の充電系統電圧まで昇圧し、バイパス回路5aに流れるバイパス電流Ibyをリチウムイオン組電池20に供給するものである。昇圧コンバータ60は、図2に示すように、リアクトル61と、スイッチング素子62と、ダイオード63と、コンデンサ64から構成されている。リアクトル61は、入力側に位置しており、プラス側回路6aに直列に接続されている。リアクトル61には、ダイオード63が直列に接続されている。プラス側回路6aのリアクトル61とダイオード63との間には、スイッチング素子62の一方が接続されている。スイッチング素子62の他方は、マイナス側回路6bに接続されている。コンデンサ64は、出力側に位置しており、一方がプラス側回路6aに接続されており、他方がマイナス側回路6bに接続されている。昇圧コンバータ60は、スイッチング素子62を高速で断続的にオンオフさせることにより、リチウムイオンセル2から入力される電圧をリチウムイオン組電池20の充電系統電圧まで昇圧する機能を有している。
【0033】
各昇圧コンバータ60の出力側は、プラス側回路6aとマイナス側回路6bでそれぞれまとめられている。これにより、各昇圧コンバータ60は多入力昇圧コンバータ6として機能している。また、各昇圧コンバータ60に入力されるバイパス電流Ibyは、昇圧コンバータ60の仕様に適合するように制限されている。また、セル電圧調整回路3aにおいては、バイパス電流Ibyの上限値は、リチウムイオン組電池20の充電電流Ichの上限値を超える値に設定されている。
【0034】
監視装置8は、例えばパーソナルコンピュータなどから構成されている。監視装置8は、リチウムイオンセル2のセル電圧V2やリチウムイオン組電池20の総電圧などの監視データを受信して、リチウムイオン組電池20の充電状態を監視するとともに、セル電圧調整回路3aのバイパス用スイッチ5に対して開閉指令信号を出力するものである。ここで、制御指令信号S1は、スイッチ5の開閉を行うためのオンオフ信号である。
【0035】
監視装置8は、図4に示すように、主として基準セル電圧指示制御部81と、制御条件設定値入力部82と、データ入力部83と、セル電圧調整判定手段としての演算部84と、表示部85と、電源部86と、各リチウムイオンセル2に接続されたセル電圧調整回路3aの一部を有している。
【0036】
基準セル電圧指示制御部81は、演算部84がセル電圧の調整が必要と判断した場合は、当該リチウムイオンセル2のセル電圧V2が指定された基準値(基準電圧)V1となるよう、バイパス用スイッチ5を動作させる。つまり、演算部84の判定結果に基づいて、セル電圧調整回路3aのバイパス用スイッチ5に制御指令信号S1を出力するようになっている。
【0037】
演算部84は、リチウムイオンセル2の基準電圧V1などを記憶し、基準電圧V1と計測されたリチウムイオンセル2のセル電圧V2とから、各リチウムイオンセルのセル電圧V2の調整の要否、つまり、バイパス回路5aの動作の必要性の判定を行う。つまり、セル電圧V2と上限基準値(基準電圧)V1とを比較し、セル電圧V2が基準電圧V1より大と判断した場合に、当該リチウムイオンセル2の充電電流のバイパスが必要と判断し、バイパス回路5aに当該リチウムイオンセル2のバイパス電流Ibyをバイパスさせ、昇圧コンバータ60で昇圧されたバイパス電流Ibyをリチウムイオン組電池20に供給するようにセル電圧指示制御部81が制御指令信号S1を出力するように制御するプログラムを記憶、実行するものである。
【0038】
ここで、基準電圧V1は、キーボードやマウスなどの入力装置で構成された制御条件設定値入力部82によって入力され、例えば4.1Vに設定されている。または、総電圧計7が測定し、データ入力部83を介して入力された組電池総電圧V0を、演算部84によってセル数で除した値を算出し、基準電圧V1としてもよい。このように制御条件設定値入力部82やデータ入力部83に入力されたデータや基準電圧V1などは、演算部84が記憶している。
【0039】
このような監視装置8は、いずれかのリチウムイオンセル2のセル電圧V2が基準電圧V1よりも高い場合に、当該リチウムイオンセル2のセル電圧調整回路3aのバイパス用スイッチ5に対して、オン指令信号を出力する。これにより、このセル電圧調整回路3aのバイパス用スイッチ5が閉動作し、リチウムイオンセル2の充電電流の一部がバイパス回路5a側にバイパスされる。また、表示部85は、LCDなどのディスプレイであり、入力、算出された基準電圧V1や、セル電圧調整回路3aのバイパス用スイッチ5の開閉状態などが表示され、リチウムイオン組電池20の状態を容易に確認できるようになっている。
【0040】
次に、上述の管理装置3を用いたリチウムイオン組電池20の管理方法および作用について説明する。
【0041】
まず、通常のフロート充電時においては、スイッチ5がオフ状態となっていて、商用電源100からの電力が、変換器101を介して負荷設備102に供給されるとともに、変換器101およびスイッチ5を介してリチウムイオン組電池20に供給される。このときの組電池充電電流は、図7に示すようにIchで一定である。
【0042】
このようなフロート充電状態では、常に各電圧計4によってリチウムイオンセル2のセル電圧V2が計測され、その計測結果がリアルタイムに監視装置8に送信される。図5は、充電時における各リチウムイオンセル2のセル電圧および充電電流の状態を示している。図5に示すように、各リチウムイオンセル2のセル電圧が基準電圧V1(電圧4.1V)に到達していない場合は、バイパス電流Ibyは流れない。
【0043】
そして、時刻tにおいて、図6に示すように、電池番号1nのリチウムイオンセル2のセル電圧V2が基準電圧V1よりも高くなった場合は、当該リチウムイオンセル2のセル電圧調整回路3aのバイパス用スイッチ5に対して、監視装置8から制御指令信号S1が出力される。これにより、バイパス用スイッチ5が閉動作し、当該リチウムイオンセル2の充電電流の一部が昇圧コンバータ60側にバイパスされる。そして、バイパス電流Ibyが流れるリチウムイオンセル2からの電圧が昇圧コンバータ60によって昇圧される。そして、昇圧コンバータ60によって電圧が昇圧されたバイパス電流Ibyによる電力は、リチウムイオン組電池20の充電系統20aに還流される。
【0044】
このような昇圧コンバータ60による電力の還流時には、リチウムイオン組電池20の充電電流として整流器101側から供給されていた電流は、図7に示すように、バイパス電流Ibyの分だけ低下し、IchからIch´に変化する。その後、時間の経過とともに、リチウムイオン組電池20の充電用に整流器101から供給される電流はIch´から徐々に上昇する。すなわち、昇圧コンバータ60による電力の還流時には、リチウムイオン組電池20に供給される充電電流が減少し、リチウムイオン組電池20の充電に使用される電力が抑制され、整流器101から供給される電流も減少する。ここで、リチウムイオン組電池20は、直流負荷設備102に並列に接続されているので、昇圧コンバータ60からの電力はリチウムイオン組電池20の充電と直流負荷設備102で使用されることになる。
【0045】
基準電圧V1を超えていたリチウムイオンセル2のセル電圧V2が、充電電流のバイパスにより基準電圧V1以下になった場合には、監視装置8から対応するセル電圧調整回路3aのバイパス用スイッチ5に対して、オフ指令が出力される。これにより、リチウムイオンセル2のセル電圧の調整が終了し、各リチウムイオンセル2のセル電圧V2はほぼ均一な状態となる。
【0046】
このようなフロート充電状態において、商用電源100からの電力供給が停止(停電)すると、瞬時に(無瞬断で)リチウムイオン組電池20が放電を開始し、リチウムイオン組電池20からの電力が負荷設備102に供給される。なお、この放電状態においても、各リチウムイオンセル2のセル電圧V2がリアルタイムに監視装置8に送信される。
【0047】
以上のように、この監視装置8を用いた管理方法によれば、リチウムイオンセル2の電圧を均等化するためのバイパス電流Ibyは、抵抗を用いた従来技術のように熱となって消費されることがなくなり、リチウムイオン組電池20の充電時におけるリチウムイオンセル2の電圧を均等化する際の電力損失を抑制することができる。また、バイパス電流Ibyによる電力は、昇圧コンバータ60を介してリチウムイオン組電池20の充電系統に還流されるので、バイパス電流Ibyをリチウムイオン組電池20の充電に有効利用することができ、リチウムイオン組電池20の運用時における省エネルギーを図ることができる。
【0048】
また、昇圧コンバータ60を各バイパス回路5aにそれぞれ接続するようにしているので、リチウムイオンセル2と昇圧コンバータ60は常に対応することになり、充電回路の設計が容易となる。
【0049】
図8は、この実施の形態に係るリチウムイオン組電池システム1を交流電力供給装置に適用した状態を示す概略構成図であり、後述する実施の形態においても同様に、リチウムイオン組電池システム1は直流電力供給装置にも交流電力供給装置にも適用することができる。
【0050】
(実施の形態2)
図9は、この発明の実施の形態2を示し、リチウムイオン組電池20の管理装置3の電力移送手段としての双方向変換回路(双方向コンバータ)610を示す概略構成図である。この実施の形態は、双方向コンバータ610が、実施の形態1の図1に示す電力移送手段60として適用され、その他の部分は実施の形態1に準じるので、準じる部分は説明を省略する。
【0051】
バイパス回路5aには、リチウムイオンセル2のバイパス電流Iby、またはリチウムイオン組電池20の充電電流Ichが供給される。
【0052】
双方向コンバータ610は、バイパス回路5aに入力される電圧をリチウムイオン組電池20の充電電圧まで昇圧し、バイパス回路5aに流れるバイパス電流Ibyをリチウムイオン組電池20に供給、もしくは、リチウムイオン組電池20の充電電圧Ichをリチウムイオンセル2の充電電圧まで降圧してリチウムイオン組電池20からの充電電流Ichをリチウムイオンセル2に供給するものである。
【0053】
双方向コンバータ610は、図9に示すように、トランス611と、第1のスイッチング素子612と、第2のスイッチング素子613と、コンデンサ614とから構成されている。トランス611は、一次巻線がリチウムイオンセル2と接続され、かつ、一次巻線の巻き始めはプラス側となっており、二次巻線がコンデンサ614と接続され、かつ、二次巻線の巻き始めはマイナス側となっている。トランス611の一次巻線には、第1のスイッチング素子612が接続されている。トランス611の二次巻線は、一方が第2のスイッチング素子613を介してプラス側回路61aと接続され、他方がマイナス側回路61bに接続されている。コンデンサ614は、二次巻線側に位置しており、一方がプラス側回路61aに接続されており、他方がマイナス側回路61bに接続されている。
【0054】
セル電圧調整判定手段は、演算部84に記憶されたプログラムであり、計測されたリチウムイオンセル2のセル電圧V2が上限基準値V1に達した場合は、実施の形態1と同様に当該リチウムイオンセル2の充電電流のバイパスが必要と判断し、バイパス回路5aに当該リチウムイオンセル2のバイパス電流Ibyをバイパスさせ、昇圧コンバータ60で昇圧されたバイパス電流Ibyをリチウムイオン組電池20に供給するようにセル電圧指示制御部81が制御指令信号S1を出力するように制御するプログラムを記憶、実行するものである。また、リチウムイオンセル2のセル電圧V2が下限基準値V3に達した場合は、当該リチウムイオンセル2の充電が必要(個別充電が必要)と判断し、当該リチウムイオンセル2にセル充電電流Ichを流すように双方向コンバータ610を制御するプログラムを記憶、実行するものである。
【0055】
このような双方向コンバータ610によれば、個別充電が必要と判断された場合は、スイッチング素子612がオンされ、スイッチング素子613がスイッチングされることにより、リチウムイオンセル2には、プラス側回路61aからバイパス充電電流Ichがトランス611を介して降圧されて供給される。つまり、各リチウムイオンセル2に個別充電が必要である場合は、当該リチウムイオンセル2を個別充電することができるので、より早く、適切にリチウムイオンセル2の電圧を均等化することができる。
【0056】
(実施の形態3)
図10は、この発明の実施の形態3を示し、リチウムイオン組電池20の管理装置3の電力移送手段としての絶縁型の昇圧回路(昇圧コンバータ)620を示す概略構成図である。この実施の形態は、昇圧コンバータ620が、実施の形態1の図1に示す電力移送手段60として適用され、その他の部分は実施の形態1に準じるので、準じる部分は説明を省略する。
【0057】
この昇圧コンバータ620は、絶縁型回路で構成され、スイッチング素子622のオンオフによって、リチウムイオンセル2からの放電が行われるものである。スイッチング素子622がオン状態の場合は、トランス621に通電され、オフ状態の場合は、トランス621から出力側に通電されるようになっている。
【0058】
(実施の形態4)
図11は、この発明の実施の形態4を示しリチウムイオン組電池20の管理装置3の電力移送手段として1台の昇圧式変換装置(昇圧回路、昇圧コンバータ)130と、入力切替器140とを備えたリチウムイオン組電池システム1を示している。その他の部分は実施の形態1に準じるので、準じる部分は説明を省略する。
【0059】
昇圧コンバータ130は、リチウムイオンセル2に接続されている複数のバイパス回路5aを入力可能とする入力切替器140が配置され、バイパス回路5aを経由して入力される電圧をリチウムイオン組電池20の充電電圧まで昇圧し、バイパス回路5aに流れる充電電流(バイパス電流)Ibyをリチウムイオン組電池20に供給するものである。つまり、昇圧コンバータ130は、入力切替器140で選択されたセル電圧調整回路3aからの電流を昇圧するものであり、その構成は、実施の形態1に係る昇圧コンバータ60と同等である。
【0060】
入力切替器140は、電圧計4によって計測されたセル電圧V2に基づきバイパス電流Ibyのバイパスが必要になったリチウムイオンセル2(バイパス回路)を選択するものであり、例えばバイパス用スイッチ(図示略)で構成されている。この入力切替器140は、セル電圧調整回路3aからの電流の中から、所定条件に基づいて昇圧コンバータ130に入力する電流を選択するものである。ここで、所定条件とは、セル電圧V2が基準電圧V1を超えたリチウムイオンセル2を選択する優先順位であり、例えば、セル電圧V2が最も高いセルを優先したり、セル温度計(図示略)の測定結果によって温度の高いセルを優先したりするように設定する。この所定条件は、監視装置8の制御条件設定値入力部82によって入力されて、演算部84に記憶されている。
【0061】
基準セル電圧指示制御部81は、演算部84がセル電圧の調整が必要と判断した場合は、当該リチウムイオンセル2のセル電圧V2が指定された基準値(基準電圧)V1となるよう、入力切替器140を動作させるように制御指令信号S1を出力するようになっている。
【0062】
また、演算部84は、当該リチウムイオンセル2の充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、当該リチウムイオンセル2のバイパス電流Ibyをバイパスさせ、入力切替器140を介して昇圧コンバータ130で昇圧されたバイパス電流Ibyをリチウムイオン組電池20に供給するようにセル電圧指示制御部81が制御指令信号S1を出力するように制御するプログラムを記憶、実行するものである。
【0063】
監視装置8は、各セル電圧調整回路3aから出力されたセル電圧V2や充電電流Ichなどに基づいて、所定条件を満たすセルを選択して、当該リチウムイオンセル2の入力切替器140のバイパス用スイッチにオン指令を出力して、バイパスを開始させる。バイパス電流Ibyは昇圧コンバータ130によって昇圧されて、リチウムイオン組電池20に還流される。
【0064】
このように、この実施の形態によれば、電圧計4によって計測された電圧に基づき、前記セル電圧調整判定手段が充電電流のバイパスが必要になったと判定した場合に、該当するリチウムイオンセル2を選択する入力切替器140を介して一つの昇圧コンバータ130と接続されているので、昇圧コンバータ130を各バイパス用回路毎にそれぞれ設ける場合に比べて、昇圧コンバータ130の数を大幅に削減することができる。
【0065】
なお本実施例における充電電流のバイパス動作については、後述する図14と同様になる。
【0066】
(実施の形態5)
図12ないし図14は、この発明の実施の形態5を示し、図12は、リチウムイオン組電池20の管理装置3の電力移送手段として多入力昇圧手段(多入力昇圧コンバータ)120を備えたリチウムイオン組電池システム1を示している。その他の部分は実施の形態1に準じるので、準じる部分は説明を省略する。
【0067】
多入力昇圧コンバータ120は、複数のバイパス回路を入力とし、バイパス回路の電圧をリチウムイオン組電池20の充電電圧まで昇圧させる多入力昇圧回路である。つまり、多入力昇圧コンバータ120は、複数のセル電圧調整回路3aのバイパス電流Ibyを同時に昇圧可能となっているものである。この実施の形態のリチウムイオンセル2の出力側は、図13に示すように、プラス側回路とマイナス側回路でそれぞれまとめられ、多入力昇圧コンバータ120と接続されている。多入力昇圧コンバータ120は、主としてリアクトル121と、ダイオード122と、コンデンサ123とを有し、入力されたバイパス電流Ibyを充電系統電圧まで昇圧するように設定されている。また、ダイオード122によって、バイパス電流Ibyを一方向とすることで他のリチウムイオンセル2が短絡することを防止するようになっている。
【0068】
このような多入力昇圧コンバータ120を備えたリチウムイオン組電池システム1において、1セルのみがバイパスされる場合(ケース1)について説明する。この場合は、図14(a)に示すように、セル1のリチウムイオンセル2のセル電圧V2が基準電圧V1に達し、セル1に対応するスイッチ5がオンされて充電電流のバイパスが開始されると、所定時間まで、セル電圧V2はバイパス開始電圧Vbで一定で、その後セル電圧V2は徐々に減少する。許容電圧値まで低下したら、先にオンされたスイッチ5はオフされる。
【0069】
つぎに、2セルがバイパスされる場合(ケース2)は、図14(b)に示すように、時間t0においてセル1のリチウムイオンセル2のセル電圧V2が基準電圧V1に達し、セル1に対応するスイッチ5がオンされて充電電流のバイパスが開始される。バイパス電流Ibyは多入力昇圧コンバータ120によって昇圧されて、リチウムイオン組電池20に還流される。このとき、バイパス開始電圧をVbとすると、所定時間まではセル電圧V2はバイパス開始電圧Vbで一定で、その後セル電圧V2は徐々に減少する。そして、時間t1において、セル1のセル電圧V2がVbeとなり、この時刻t1において、セル2のセル電圧V2が基準電圧V1に達するので、セル1に対応するスイッチ5がオフされて充電電流のバイパスが停止され、セル2に対応するスイッチ5がオンされてセル2の充電電流のバイパスが開始される。さらに、時間t2において、セル2のセル電圧V2がVbeとなり、セル1のセル電圧V2と等しくなるので、セル1に対応するスイッチ5がオンされて充電電流のバイパスが再開されて、セル1とセル2からの充電電流が同時にバイパスされ、多入力昇圧コンバータ120によって昇圧されて、リチウムイオン組電池20に還流される。なお、各セルの電圧が許容電圧値まで低下したら、先にオンされたスイッチ5はオフされる。
【0070】
このように、この実施の形態によれば、電力移送手段は、各リチウムイオンセル2からの入力電圧をリチウムイオン組電池20の充電系統の電圧までそれぞれ昇圧可能な多入力昇圧コンバータ120から構成されているので、電力移送手段を各バイパス回路5aにそれぞれ接続する構成に比べて、多入力昇圧コンバータ120をコンパクト化することができる。また、多入力昇圧コンバータ120は、リチウムイオン組電池20内の複数のリチウムイオンセル2のセル電圧V2が基準電圧V1以上となった場合であっても、複数のセル電圧調整回路3aからのバイパス電流Ibyを同時に昇圧させることができる。つまり、複数のセル電圧が高いリチウムイオンセル2の電圧を短時間で降下することが可能となる。
【0071】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、リチウムイオンセル2を直列に12個接続したものとして説明したが、セルの数は12個に限定されるものでないことはもちろんである。
【0072】
また、1組のリチウムイオン組電池20を有するシステムについて説明したが、複数のリチウムイオン組電池20を並列接続したシステムにも適用することができる。また、これまでに述べた実施例において、セルの充電電圧の上限基準値として、4.1Vの値を示しているが、この電圧値は適用される電池の特性に応じて決定されるものであり、前述の値に固定されるものではないことは言うまでもない。
【0073】
さらに、リチウムイオン組電池20を負荷設備102のバックアップ用電源に用いるものとして説明したが、バックアップ電源に限定されるものではなく、例えば、電気自動車用、電力貯蔵用などにも適用できることはもちろんである。
【0074】
さらにまた、実施の形態1では、演算部84に記憶したプログラムによって、セル電圧V2を基準電圧V1と比較し、セル電圧V2が基準電圧V1を超えたリチウムイオンセル2をバイパスが必要と判断し、当該リチウムイオンセル2をバイパス放電させる方法について説明したが、セル電圧調整判定手段の判断および判断に基づく制御は、これに限定されるものではない。例えば、バイパスが必要と判断するのは、一個のリチウムイオンセル2ではなく、複数のリチウムイオンセル2でもよい。また、基準電圧V1を超えたリチウムイオンセル2ではなく、「V1−α(αは正の値)」で表される電圧を超えたリチウムイオンセル2でもよい。さらにまた、各リチウムイオンセル2のセル電圧V2を測定し、セル電圧V2の最大値と最小値との差分が所定値を超えたリチウムイオンセル2や、セル電圧V2が所定値以下となり、低電圧状態が継続したリチウムイオンセル2などを、バイパスが必要であると判断してもよい。また、バイパス放電させるのは、セル電圧V2の平均値を超えたリチウムイオンセル2や、セル電圧V2が高い複数のリチウムイオンセル2でもよい。このような、セル電圧調整判定手段の判断および判断に基づく制御は、演算部84にプログラミングするプログラムを変えることによって実現可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 リチウムイオン組電池システム
2 リチウムイオンセル
20 リチウムイオン組電池
3 管理装置
4 電圧計(電圧監視部)
5a バイパス回路
60 昇圧コンバータ(電力移送手段)
7 組電池総電圧計
8 監視装置(制御手段)
84 演算部(セル電圧調整判定手段)
V1 基準電圧(基準値)
V2 セル電圧
Ich 充電電流
Iby バイパス電流(バイパス充電電流)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンセルが複数直列に接続されたリチウムイオン組電池の管理装置であって、
前記各リチウムイオンセルの電圧を計測する電圧監視部と、
前記各リチウムイオンセルにそれぞれ接続されるバイパス回路と、
前記電圧監視部で計測された前記リチウムイオンセルの電圧計測値に基づいて、各リチウムイオンセルのセル電圧の調整の要否を判断するセル電圧調整判定手段と、
前記バイパス回路と前記リチウムイオン組電池との間で電力を移送する電力移送手段と、
前記セル電圧調整判定手段が、セル電圧の調整が必要と判断した場合は、当該リチウムイオンセルのセル電圧が指定された基準値となるよう、前記電力移送手段を動作させる制御手段と、
を備えることを特徴とするリチウムイオン組電池の管理装置。
【請求項2】
前記電力移送手段が、前記バイパス回路にそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン組電池の管理装置。
【請求項3】
前記セル電圧調整判定手段は、前記リチウムイオンセルのセル電圧が上限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断し、
前記バイパス回路には、前記リチウムイオンセルの充電電流がバイパスされ、
前記電力移送手段は、昇圧式変換装置で構成され、前記バイパス回路を経由して入力される電圧を前記リチウムイオン組電池の充電電圧まで昇圧し、前記バイパス回路に流れる前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給し、
前記制御手段は、前記セル電圧調整判定手段が、前記リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、前記バイパス回路に当該リチウムイオンセルの前記充電電流をバイパスさせ、前記電力移送手段で昇圧された前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給するように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のリチウムイオン組電池の管理装置。
【請求項4】
前記セル電圧調整判定手段は、前記リチウムイオンセルのセル電圧が上限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断し、前記リチウムイオンセルのセル電圧が下限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電が必要と判断し、
前記バイパス回路には、前記リチウムイオンセルの充電電流、または前記リチウムイオン組電池の充電電流が供給され、
前記電力移送手段は、双方向型変換装置で構成され、前記バイパス回路に入力される電圧を前記リチウムイオン組電池の充電電圧まで昇圧し、前記バイパス回路に流れる前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給、もしくは、前記リチウムイオン組電池の充電電圧を前記リチウムイオンセルの充電電圧まで降圧して前記リチウムイオン組電池の充電電流を前記リチウムイオンセルに供給し、
前記制御手段は、前記セル電圧調整判定手段が、前記リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、前記バイパス回路に当該リチウムイオンセルの前記充電電流をバイパスさせ、前記電力移送手段で昇圧された前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給し、前記セル電圧調整判定手段が、前記リチウムイオンセルの充電が必要と判断した場合は、前記電力移送手段で降圧された前記リチウムイオン組電池の充電電流を、前記バイパス回路を経由して当該リチウムイオンセルに供給する、
ことを特徴とする請求項2に記載のリチウムイオン組電池の管理装置。
【請求項5】
前記セル電圧調整判定手段は、前記リチウムイオンセルのセル電圧が上限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断し、
前記電力移送手段は、一台の昇圧式変換装置で構成され、前記リチウムイオンセルに接続されている複数の前記バイパス回路を入力可能とする入力切替器が配置され、前記バイパス回路を経由して入力される電圧を前記リチウムイオン組電池の充電電圧まで昇圧し、前記バイパス回路に流れる前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給し、
前記制御手段は、前記セル電圧調整判定手段が、前記リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、当該リチウムイオンセルに接続されている前記バイパス回路を、入力切替器を介して前記電力移送手段に入力し、前記電力移送手段で昇圧された前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給するように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン組電池の管理装置。
【請求項6】
前記セル電圧調整判定手段は、前記リチウムイオンセルのセル電圧が上限基準値に達した場合は、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断し、
前記電力移送手段は、複数の前記バイパス回路を入力とし、前記バイパス回路の電圧を前記リチウムイオン組電池の充電電圧まで昇圧させる多入力昇圧回路から構成され、
前記制御手段は、前記セル電圧調整判定手段が、当該リチウムイオンセルの充電電流のバイパスが必要と判断した場合は、前記バイパス回路に当該リチウムイオンセルの前記充電電流をバイパスさせ、前記電力移送手段で昇圧された前記充電電流を前記リチウムイオン組電池に供給するように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン組電池の管理装置。
【請求項7】
リチウムイオンセルが複数直列に接続されたリチウムイオン組電池の管理方法であって、
前記各リチウムイオンセルの電圧を電圧監視部によって計測し、
前記電圧監視部で計測された前記リチウムイオンセルの電圧計測値に基づいて、各リチウムイオンセルのセル電圧の調整の要否を判断し、
セル電圧の調整が必要と判断された場合は、当該リチウムイオンセルのセル電圧が指定された基準値となるように、前記バイパス回路と前記リチウムイオン組電池との間で電力を移送する、
ことを特徴とするリチウムイオン組電池の管理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−5459(P2013−5459A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130450(P2011−130450)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(000128083)株式会社 NTTファシリティーズ総合研究所 (42)
【Fターム(参考)】