説明

リチウムマンガン複合酸化物及びリチウム二次電池

【課題】本発明の目的は、リチウム二次電池の正極活物質とした場合、放電容量およびサイクル特性に優れる高エネルギー密度を与えることができるリチウム二次電池用正極活物質として有用なリチウムマンガン複合酸化物及び該リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池を提供することにある。
【解決手段】本発明は、下記の一般式(1)
LiMn2−yMe4−z (1)
(式中、Meはマンガン以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を表し、xは0<x<2.0の範囲内にあり、yは0≦y≦0.6の範囲内にあり、zは0≦z<2.0の範囲内にある)
で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、X線回折によるリートベルト解析法による8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上で、かつ上記リチウムマンガン複合酸化物の純度が90%以上であることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムマンガン複合酸化物、特にリチウム二次電池用のエネルギー密度の優れる正極活物質として有用なリチウム複合酸化物、およびそれを用いたリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、民生用電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進むに従い、小型電子機器の電源としてリチウム二次電池が実用化されはじめている。このリチウム二次電池については、1980年に水島等によりコバルト酸リチウムがリチウム二次電池の正極活物質として有用であるとの報告(非特許文献1)がなされて以来、リチウム系複合酸化物に関する研究開発が活発に進められており、これまでに正極活物質としてコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム及びマンガン酸リチウムなどが知られている。
【0003】
マンガン酸リチウムは、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムなどと比べると原料が安価であることなどから製造コストの面から、今まで様々な開発が進んでいる。
【0004】
それらは、例えば、X線回折で回折角2θ=36.5°近傍に(110)面のピークを有する二酸化マンガンと炭酸リチウムとを400〜600℃で焼成したLiMnを正極活物質とする(特許文献1)、LiMnOを活物質とする(特許文献2)、LiMn(1.025≦x≦1.185)を活物質とする(特許文献3)、Cr含有LiMnを正極活物質とする(特許文献4)、LiMn2−y(但し、MはIIIa又はIIIbから選ばれた元素)の組成物を持つ複合酸化物を活物質とする(特許文献5)、針状のLiMn(特許文献6)、Li1−xMn(0≦x≦1)とLiMnOの複合酸化物を活物質とする(特許文献7)、硝酸リチウムと二酸化マンガンとを250〜470℃、500〜800℃で二段焼成して得られるLiMn(特許文献8)等が挙げられるが、他にも多くの提案がされている。
【0005】
【特許文献1】特開平1−173574号公報
【特許文献2】特開平1−209663号公報
【特許文献3】特開平2−270268号公報
【特許文献4】特開平2−60056号公報
【特許文献5】特開平2−278661号公報
【特許文献6】特開平4−206354号公報
【特許文献7】特開平6−111819号公報
【特許文献8】特開平7−245106号公報
【非特許文献1】マテリアル・リサーチブレイン」vol.115、783〜789頁(1980年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このLiMnなどは、充放電を繰り返すと放電容量が著しく低下するためサイクル特性に問題があり、4.5Vから3.5Vの作動領域で使用した場合、放電容量が、数10サイクルで初期の半分程度まで低下するといった問題が生じ、リチウムマンガン酸化物を正極活物質として使用する4V級のリチウム二次電池は、現在まで実現するのが困難な現状である。
【0007】
従って、本発明の目的は、リチウム二次電池の正極活物質とした場合、放電容量およびサイクル特性に優れる高エネルギー密度を与えることができるリチウム二次電池用正極活物質として有用なリチウムマンガン複合酸化物及び該リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の現状に着目して、鑑みたところ、リチウムマンガン複合酸化物のX線回折によるリートベルト解析法による8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上で、かつ上記リチウムマンガン複合酸化物の純度が90%以上である上記リチウムマンガン複合酸化物をリチウム二次電池の正極活物質として使用した場合、放電容量およびサイクル特性などの電池特性と関係が強いことを知見し本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)
LiMn2−yMe4−z (1)
(式中、Meはマンガン以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を表し、xは0<x<2.0の範囲内にあり、yは0≦y≦0.6の範囲内にあり、zは0≦z<2.0の範囲内にある)
で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、X線回折によるリートベルト解析法による8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上で、かつ上記リチウムマンガン複合酸化物の純度が90%以上であることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物に係る。
【0010】
更に、本発明は、前記リチウムマンガン複合酸化物を主成分として含有することを特徴とするリチウム二次電池正極活物質に係る。
【0011】
また、本発明は、前記リチウム二次電池正極活物質を用いたリチウム二次電池に係る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上であり、かつリチウムマンガン複合酸化物が90%以上であるリチウムマンガン複合酸化物が得られ、例えば、リチウム二次電池の正極活物質として使用した場合、放電容量およびサイクル特性に優れる高エネルギー密度を与える二次電池用正極活物質を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物は、下記の一般式(1)
LiMn2−yMe4−z (1)
(式中、Meはマンガン以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を表し、xは0<x<2.0の範囲内であり、yは0≦y≦0.6の範囲内であり、zは0≦z<2.0の範囲内である)
で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、(1)X線回折によるリートベルト解析法による8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上で、かつ(2)リチウムマンガン複合酸化物の純度が90%以上であることを構成上の特徴とする。
【0014】
なお、X線回折によるリートベルト解析法とは、文献「粉末X線回折による材料分析」(108〜122頁、1993年6月1日、株式会社講談社サイエンティフィク発行)などに記載されている方法であり、粉末X線回折の全パタ−ンデータの格子定数や構造パラメーター等の関数を精密化し、解析を行なうものである。リートベルト解析法の手順は後述の表1の評価方法に示す通りである。
【0015】
本発明に係るリチウム複合酸化物の一つの特徴は、上記の通り、(1)X線回折によるリートベルト解析法による8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上、好ましくは95〜100%であり、リチウムマンガン複合酸化物中の結晶欠陥が殆どないものである。8aサイトに占めるリチウム含有率が90%未満では、リチウムマンガン複合酸化物の8aサイト面にリチウム以外の他の金属イオン例えばマンガンイオンが混入してくるために、結晶構造に不規則配列を生じる傾向を示し、結晶欠陥が発生するようになるため好ましくない。
【0016】
また、本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物は、(2)該リチウムマンガン複合酸化物の純度が90%以上、好ましくは97〜100%であることが望ましく、純度が90%未満では、未反応の原料が多くなるために好ましくない。
【0017】
本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物が、上記の様に、8aサイトに占めるリチウム含有率が90%未満の場合、および該リチウムマンガン複合酸化物の純度が90%未満の場合のいずれにおいても、上記の欠陥が生じるために、リチウムマンガン複合酸化物をリチウム二次電池の正極活物質に適用すると、放電容量およびサイクル特性が低くなるために好ましない。
【0018】
また、本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物は、スピネル構造を有するものである。
【0019】
本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物は、上記の一般式(1)で示され、上記の特性を有する。したがって、本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、上記の特性を有するマンガン酸リチウムである場合は勿論のこと、更に、マンガン酸リチウムの結晶構造中のマンガン(Mn)の一部をマンガン以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素で置換した化合物、例えば、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、モルブデン(Mo)などより選ばれる1種以上の元素で置換した置換体であってもよく、この置換体はリチウムイオンのインターカレーション、デインターカレーション反応をより円滑に、より高い電位範囲で行なうことができる。
【0020】
次に、本発明のリチウムマンガン複合酸化物の製造方法について説明する。
本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物の製造方法は、マンガン原料もしくはマンガン原料とマンガンを除く原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素原料(以下「金属又は遷移金属」という。)の原子比が各々2−yおよびy(式中、yは0≦y≦0.6の範囲内にある)にあるマンガンもしくはマンガンとマンガンを除く原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び有機酸塩からなる群から選択された1種または2種以上より構成される出発原料に対して原子比でx(式中、xは0<x<2.0の範囲内にある)のリチウム原料を少なくとも2回以上に分けて添加して焼成することを特徴とする前記一般式(1)で表されるリチウムマンガン複合酸化物を製造する方法である。
【0021】
出発原料として使用されるリチウム原料、マンガン原料並びに金属又は遷移金属原料は、工業的に入手できるものであれば何れのものでもよいが、例えばそれぞれの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩および有機酸塩などが挙げられる。
【0022】
また、本発明で使用する出発原料は、いずれにおいても製造履歴は問わないが、可及的に不純物含有量が少ないものを選定することが好ましい。
【0023】
リチウム原料の添加割合は、反応系に使用するリチウム原料の全量を、例えば2回で分けて添加する場合は、初めに全量の2/3を添加して焼成し、2回目に1/3を添加して焼成する。また、初めに1/2、1/2と均等に添加する方法などである。また、3回に分けて行う場合は、全量の4/7、2/7、1/7に分けて添加する方法か、または1/3、1/3、1/3と均等に分ける方法などである。
【0024】
本発明のリチウムマンガン複合酸化物の製造方法の一例を示すと、所定量のマンガン原料またはマンガン原料と金属又は遷移金属原料量に対して必要量のリチウム原料の4/7重量部を乾式で混合し、400〜500℃で、5〜24時間焼成する。この時、混合を湿式で行う場合には、リチウム原料水溶液にマンガン原料またはマンガン原料と金属又は遷移金属原料を混合し、撹拌し、水分を除去して乾燥することができる。
【0025】
焼成後、冷却し、再度混合し、必要に応じて粉砕し、再度焼成する。この時、焼成温度は、前回の焼成温度より高温で行うのが良く、例えば500〜1100℃、5〜24時間焼成する。この操作パターンを1回として、2回焼成であれば、リウチム原料の残部を添加して上記焼成操作を繰り返し、3回焼成であれば、リウチム原料の添加及び焼成操作をあと2回繰り返す。
【0026】
また、他の焼成方法としては、始めに、所定量のマンガン原料またはマンガン原料と金属又は遷移金属原料量に対して必要量のリチウム原料の4/7重量部を乾式で混合し、400〜500℃で、5〜24時間焼成する。この時、前記と同ように混合は乾式又は湿式の何れでも良い。焼成後、冷却し、リチウム原料の2/7重量部を添加して再度混合し、必要に応じて粉砕混合する。次いで、500〜1100℃で、5〜24時間同様に焼成する。この時、焼成温度は、1回目の焼成温度より高温で行うことが好ましい。焼成終了後、通常の方法で冷却し、リチウム原料の残余即ち1/7重量部を添加し、再度混合し、必要に応じて粉砕混合する。次いで、再度400〜500℃、5〜24時間程度焼成する。焼成後、冷却し、混合し、必要に応じて粉砕混合することにより、リチウムマンガン複合酸化物を得ることができる。
【0027】
この方法において、2回焼成の場合は、上記方法で初めの1回と2回の焼成条件で行えば良いものである。
【0028】
上記製造方法での焼成雰囲気は、大気中又は酸素雰囲気中であるが、好ましくは酸素雰囲気中である。
【0029】
なお、上述のようにリチウムマンガン複合酸化物を製造する際に、リチウム原料を分割して添加することにより、リチウム原料を全量一度に添加して焼成する場合よりも得られるリチウムマンガン複合酸化物のサイクル特性が良くなる。
【0030】
リチウム原料、マンガン原料およびマンガン以外の金属又は遷移金属原料の配合比は、リチウム(Li)、マンガン(Mn)およびマンガン以外の金属又は遷移金属(Me)の原子比が各々x(Li)、2−y(Mn)、y(Me)(但し、xは0<x<2.0の範囲内にあり、yは0≦y≦0.6の範囲内にある)を満足するように選択される。例えば、配合比は(Mn又はMn+Me)/Li比として2付近に設定する場合、原料の性状や焼成条件などにより前記配合比は2前後で多少の幅をもたせることは許容される。
【0031】
上記反応の冷却は、通常は炉内で徐々に冷却するが、好ましくは空気中で放冷するのがよく、さらには冷水中で急冷してもよい。
【0032】
また、上記のマンガン原料およびリチウム原料、若しくはマンガン原料、金属又は遷移金属原料およびリチウム原料を均一に混合して加圧成形して成形体を作製し、この成形体を上記と同様の方法で焼成し、焼成後、冷却する方法でもよい。
【0033】
上記の方法により製造される本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、X線回折によるリートベルト解析法による8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上で結晶中の欠陥が極めて少なく、且つリチウムマンガン複合酸化物の純度が90%以上と不純物の少ないものである。かかる化合物は、スピネル型を有する。
【0034】
また、上記の方法により得られた本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、リチウム二次電池正極活物質として有用である。
【0035】
更に、本発明のリチウムマンガン複合酸化物を主成分として含有するリチウム二次電池正極活物質で導電性基板を被覆してリチウム二次電池用正極板を得ることができ、また、その正極板を用いることによりリチウム二次電池を提供することができる。
【0036】
次に、本発明に係るリチウム二次電池の基本的な構成の一例を示す。
上記のようにして製造した本発明のリチウムマンガン複合化合物粉末を主成分として、黒鉛粉末、ポリフッ化ビニリデンなどを混合加工して正極剤(リチウム二次電池正極活物質)とし、これを有機溶媒に分散させて混練ペーストを調製する。該混練ペーストをアルミ箔などの導電性基板に塗布した後、乾燥し、加圧して適宜の形状に切断して正極板を得る。
【0037】
従来、リチウム二次電池用正極活物質に用いられるマンガン酸リチウムの合成は難しく、その結果、得られるマンガン酸リチウムは8aサイトのリチウム含有率が小さく、リチウムの欠損が大きいことにより電池性能に悪影響を及ぼしていた。
【0038】
本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、結晶中の欠陥が少ない極めて化学量論的な化合物である。かかる化合物中の結晶中の欠陥は、X線回折によリートベルト解析法により確認できるが、それは結晶構造中の8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上、上記リチウムマンガン複合酸化物の純度が90%以上であり、例えばリチウム二次電池の正極活物質として使用する場合、放電容量に優れ、およびサイクル特性に優れた高エネルギー密度を有するものである。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明にかかる実施例を詳細に説明する。
製造例1
電解合成二酸化マンガン8.69gと炭酸リチウム1.06gを粉砕混合し、アルミナるつぼに入れ、450℃まで100℃/時間で昇温し、その後8時間空気雰囲気下で焼成し、100℃/時間で室温まで冷却した。次に、得られたリチウムマンガン酸化物を粉砕した後、725℃で8時間焼成した。この時の昇温速度及び冷却速度は100℃/時間であった。
この様にして得られたリチウムマンガン酸化物に更に炭酸リチウム0.53gを加えて粉砕混合し、前記と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。
更に、得られたリチウムマンガン酸化物に炭酸リチウム0.26gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。
この様にして得られたリチウムマンガン複合酸化物はLiMnの組成を有するものであった。このリチウムマンガン複合酸化物の8aサイトのリチウム含有率及び純度、初期容量、サイクル特性を表1に示す。また、得られたリチウムマンガン複合酸化物のX線回折の結果を図1に示す。
【0040】
製造例2
電解合成二酸化マンガン8.69gと炭酸リチウム1.85gを粉砕混合し、アルミナるつぼに入れ、450℃まで100℃/時間で昇温させ、その後12時間空気雰囲気下で焼成し、100℃/時間で室温まで冷却した。得られたリチウムマンガン酸化物を粉砕した後、再び725℃で12時間焼成した。この時の昇温速度及び冷却速度は100℃/時間であった。
この様にして得られたリチウムマンガン酸化物に炭酸リチウム0.62gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で12時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で12時間焼成を行った。得られたリチウムマンガン複合酸化物はLiMnの組成を有するものであった。この化合物の8aサイトのリチウム含有率及び純度、初期容量、サイクル特性を表1に示す。
【0041】
製造例3
炭酸マンガン11.50gと水酸化リチウム一水和物1.20gを粉砕混合し、アルミナるつぼに入れ、450℃まで100℃/時間で昇温し、その後8時間空気雰囲気下で焼成し、100℃/時間で室温まで冷却した。得られたリチウムマンガン酸化物を粉砕した後、再び725℃で8時間焼成した。この時の昇温速度及び冷却速度は100℃/時間であった。
この様にして得られたリチウムマンガン酸化物に水酸化リチウム一水和物0.60gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し,冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。
更に、得られたリチウムマンガン酸化物に水酸化リチウム一水和物0.30gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し,冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。得られたリチウムマンガン複合酸化物はLiMnの組成を有するものであった。この化合物の8aサイトのリチウム含有率及び純度、初期容量、サイクル特性を表1に示す。
【0042】
製造例4
電解合成二酸化マンガン8.26gと水酸化アルミニウム3.90gと炭酸リチウム1.06gを粉砕混合し、アルミナるつぼに入れ、450℃まで100℃/時間で昇温し、その後8時間空気雰囲気下で焼成し、100℃/時間で室温まで冷却した。得られたリチウムマンガン複合酸化物を粉砕した後、再び725℃で8時間焼成した。この時の昇温速度及び冷却速度は100℃/時間であった。
この様にして得られたリチウムマンガン複合酸化物に炭酸リチウム0.53gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。
更に、得られたリチウムマンガン複合酸化物に炭酸リチウム0.26gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。得られたリチウムマンガン複合酸化物はLiMn1.9Al0.1の組成を有するものであった。この化合物の8aサイトのリチウム含有率及び純度、初期容量、サイクル特性を表1に示す。また、得られたリチウムマンガン複合酸化物のX線回折の結果を図2に示す。
【0043】
製造例5
電解合成二酸化マンガン8.26gと水酸化コバルト4.65gと炭酸リチウム1.06gを粉砕混合し、アルミナるつぼに入れ、450℃まで100℃/時間で昇温し、その後8時間空気雰囲気下で焼成し、100℃/時間で室温まで冷却した。得られたリチウムマンガン複合酸化物を粉砕した後,再び725℃で8時間焼成した。この時の昇温速度及び冷却速度は100℃/時間であった。
この様にして得られたリチウムマンガン複合酸化物に炭酸リチウム0.53gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。
更に、得られたリチウムマンガン複合酸化物に炭酸リチウム0.26gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。得られたリチウムマンガン複合酸化物はLiMn1.9Co0.1の組成を有するものであった。この化合物の8aサイトのリチウム含有率及び純度、初期容量、サイクル特性を表1に示す。また、得られたリチウムマンガン複合酸化物のX線回折の結果を図3に示す。
【0044】
製造例6
電解合成二酸化マンガン8.26gと水酸化ニッケル4.64gと炭酸リチウム1.06gを粉砕混合し、アルミナるつぼに入れ、450℃まで100℃/時間で昇温し、その後8時間空気雰囲気下で焼成し、100℃/時間で室温まで冷却した。得られたリチウムマンガン複合酸化物を粉砕した後、再び725℃で8時間焼成した。この時の昇温速度及び冷却速度は100℃/時間であった。
この様にして得られたリチウムマンガン複合酸化物に炭酸リチウム0.53gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。
更に、得られたリチウムマンガン複合酸化物に炭酸リチウム0.26gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。得られたリチウムマンガン複合酸化物はLiMn1.9Ni0.4の組成を有するものであった。この化合物の8aサイトのリチウム含有率及び純度、初期容量、サイクル特性を表1に示す。
【0045】
製造例7
電解合成二酸化マンガン8.69gと炭酸リチウム0.62gを粉砕混合し、アルミナるつぼに入れ、450℃まで100℃/時間で昇温し、その後8時間空気雰囲気下で焼成し、100℃/時間で室温まで冷却した。得られたリチウムマンガン酸化物を粉砕した後、再び725℃で8時間焼成する。この時の昇温速度及び冷却速度は100℃/時間であった。
この様にして得られたリチウムマンガン酸化物に炭酸リチウム0.62gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。
更に、得られたリチウムマンガン酸化物に炭酸リチウム0.62gを加えて粉砕混合し、先程と同様に450℃で8時間焼成し、冷却粉砕後再び725℃で8時間焼成を行った。得られたリチウムマンガン複合酸化物はLiMnの組成を有するものであった。この化合物の8aサイトのリチウム含有率及び純度、初期容量、サイクル特性を表1に示す。
【0046】
製造例8
実施例1の空気雰囲気下での焼成を、酸素雰囲気下で行った他は、実施例1と同様の操作にてリチウムマンガン複合酸化物を得た。この化合物の8aサイトのリチウム含有率及び純度、初期容量、サイクル特性を表1に示す。
【0047】
(1)リチウム二次電池の作製:
上記のように製造したリチウムマンガン複合酸化物70重量%、黒鉛粉末20重量%、ポリフッ化ビニリデン10重量%を混合して正極剤とし、これを2−メチルピロリドンに分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥し、2トン/cmの圧力によりプレスして2cm角に打ち抜いて正極板を得た。
この正極板を用いて、セパレーター、負極、集電板、取り付け金具、外部端子、電解液等の各部材を使用してリチウム二次電池を製作した。このうち、負極は結晶化度の高いカーボンを用い、電解液にはジエチルカーボネートとエチレンカーボネートの1:1混合液1リットルにLiClO1モルを溶解したものを使用した。
【0048】
(2)リチウム二次電池の性能評価:
作製したリチウム二次電池を作動させ、初期放電容量および容量保持率を測定して電池性能を評価した。その結果を、焼成条件、X線回折によるリートベルト解析法による8aサイトに占めるリチウム含有率、およびリチウムマンガン複合酸化物の純度と対比させて表1に示した。
【0049】
(3)評価方法
A.リートベルト解析法の手順は次の通りである。
始めに化合物中のLi含有量をICP分析法により、また、該化合物中のMn含有量を下記のBにより測定した。次いで、Mnの価数を求めた後、下記のリートベルト解析法を行った。
(1)粉末X線回折パタ−ンのピークを指数づけし、空間群を絞り込む;
(2)最小2乗法あるいはPawley法により格子定数を精密化する;
(3)結晶学的な知見及び化学組成等から大まかな原子配置を推定する;
(4)(3)で構築した構造モデルに基づいて、粉末X線回折図形をシュミレートする;
(5)リートベルト解析を行ない、8aサイトに占めるリチウム含有量を測定する。
【0050】
B.リチウムマンガン複合酸化物の純度測定
得られた試料を塩酸等の鉱酸に溶解させ、ロッセル塩を加えて、NH−NHCl緩衝液でpHを8に調整する。さらにアスコルビン酸を加え、エリオクローム・ブラックT(BT)指示薬で、EDTAにより滴定を行い全マンガン量を測定した。この値より、 LiMnの純度を換算した。(BT指示薬による直接滴定「キレート滴定法、342〜344頁、上野著、南江堂出版、昭和31年6月15日初版)
【0051】
C.放電容量
放電容量は正極に対して1mA/cmで4.3Vまで充電した後、3.0Vまで放電させる充放電を繰り返すことにより測定し、サイクル特性は前記の充放電を反復した結果から、下記の式により算出した。
サイクル特性(%)=(10サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)
×100
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】製造例1で得られたリチウムマンガン複合酸化物のX線回折の結果を示す図である。
【図2】製造例4で得られたリチウムマンガン複合酸化物のX線回折の結果を示す図である。
【図3】製造例5で得られたリチウムマンガン複合酸化物のX線回折の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)
LiMn2−yMe4−z (1)
(式中、Meはマンガン以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を表し、xは0<x<2.0の範囲内にあり、yは0≦y≦0.6の範囲内にあり、zは0≦z<2.0の範囲内にある)
で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、X線回折によるリートベルト解析法による8aサイトに占めるリチウム含有率が90%以上で、かつ上記リチウムマンガン複合酸化物の純度が90%以上であることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
【請求項2】
リチウムマンガン複合酸化物は、スピネル構造である請求項1記載のリチウムマンガン複合酸化物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のリチウムマンガン複合酸化物を主成分として含有することを特徴とするリチウム二次電池正極活物質。
【請求項4】
請求項3記載のリチウム二次電池正極活物質を用いたリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−50259(P2008−50259A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247452(P2007−247452)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【分割の表示】特願平9−346648の分割
【原出願日】平成9年12月16日(1997.12.16)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】