説明

リチウム二次電池

【課題】 安価で放電容量が大きく、充放電を繰り返しても充放電容量の低下が少ないリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】 正極、負極、非水電解質を有するリチウム二次電池であって、該正極を構成する正極活物質が一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 (式中、Mは元素周期律表で13族元素、14族元素、Fe,Co,Niから成る群から選択される1種類以上の元素、DはTi,V,Y,Zr,Mo,Pdから成る群から選択される1種類以上の元素を表す。x,yは0<x<0.5,0<y<0.5、x+y<0.5である。)で表されるリチウム銅複合酸化物からなるリチウム二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池に関するもので、さらに詳しくはその正極活物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、大気中に含まれるCO2 ガス量が増加しつつある為、温室効果により地球の温暖化が生じる可能性が指摘されている。火力発電所は化石燃料などを燃焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換しているが、燃焼によりCO2 ガスを多量に排出するためあらたな火力発電所を建設することが難しくなって来ている。したがって、火力発電所などの発電機にて作られた電力の有効利用として、余剰電力である夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて、これを電力消費量が多い昼間に使用して負荷を平準化する。いわゆるロードレベリングが提案されている。
【0003】
また、CO2 、NOx 、炭化水素などを含む大気汚染にかかわる物質を排出しないという特徴を有する電気自動車用途では、高エネルギー密度の二次電池の開発が期待されている。さらに、ブック型パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサー、ビデオカメラ及び携帯電話等のポータブル機器の電源用途では、小型・軽量で高性能なリチウム二次電池の開発が急務になっている。
【0004】
このような小型・軽量で高性能なリチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoO2 )が現在最も多用されている。しかしLiCoO2 の原料であるコバルトは高価であり、これを用いた二次電池は必然的にコストが高くなるため、原料が安価なリチウム−ニッケル複合酸化物(LiNiO2 )やリチウム−マンガン複合酸化物(LiMn24 )を正極活物質とする二次電池が研究されてきた。しかし、これらの材料は合成が難しくまた二次電池として充放電を繰り返した場合に容量の劣化が大きいといった問題があったため、この問題を改善するための研究が盛んに行われてきた。しかし、未だ十分な改善は得られていない。
【0005】
また、非特許文献1でリチウム−銅複合酸化物(Li2 CuO2 )がLiCoO2 に代わる正極活物質として提案されている。
Li2 CuO2 は、原料となる銅化合物が比較的安価であり、また組成式上、単位重量あたりではLiCoO2 ,LiNiO2 の約2倍、LiMn24 の約4倍のリチウムが含まれているため、組成式Li2 CuO2 とCuO2 の間で2個分のリチウムが可逆的に充放電できれば、LiCoO2 ,LiNiO2 の約2倍、LiMn24 の約4倍の容量が期待できる材料である。しかし、実際にLi2 CuO2 を二次電池の正極材料として使用した場合、Li2 CuO2 とLiCuO2 の間で1個分のリチウムしか可逆的な充放電反応に寄与することができず、期待された程の容量を得ることができていない。また充放電を繰り返すと充電容量、放電容量が共に低下するという問題がある。1個分のリチウムしか可逆的な充放電反応に寄与することができない原因は、LiCuO2 からLiを電気化学的に取り除いた場合にCuO2 ではなくCuOに構造変化してしまうためであり、充放電を繰り返すと充電容量、放電容量が共に低下する原因は、Li2 CuO2 とLiCuO2 間で構造変化が起こるためだと考えられている。さらに、Li2 CuO2 は平均放電電位がLiCoO2 ,LiNiO2 ,LiMn24 に比べて約1V以上低いという問題もある。
【0006】
上記のLi2 CuO2 の問題を改善するために、Li2 CuO2 に異種元素を混合させる技術が出願されている。例えば、特許文献1ではLi2 CuO2 のCuの一部を遷移金属、半金属元素で置換した材料LiX Cu1-yyz が開示されていが、この改良では放電容量が不十分であり、また充放電を繰り返すことによる充放電容量の低下の改善に関する開示はない。
【特許文献1】特開平9−147861号公報
【非特許文献1】“Solid State Ionics”Vol 106、p.45−53、1998年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のLi2 CuO2 の充電時におけるCuOへの構造変化とLi2 CuO2 とLiCuO2 間での構造変化を抑制することで、安価で放電容量が大きく、充放電を繰り返しても充放電容量の低下が少ないリチウム二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、正極、負極、非水電解質を有するリチウム二次電池であって、該正極を構成する正極活物質が一般式Li2(Cu1-x-yxy)O2(式中、Mは元素周期律表で13族元素、14族元素、Fe,Co,Niから成る群から選択される1種類以上の元素、DはTi,V,Y,Zr,Mo,Pdから成る群から選択される1種類以上の元素を表す。x,yは0<x<0.5、0<y<0.5、x+y<0.5である。)で表されるリチウム銅複合酸化物からなることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【0009】
Li2 CuO2 の結晶構造は、図1に示すように平面4配位のCuO4 が稜を共有して直鎖状ユニットを形成していて、リチウムがこのCuO4 直鎖状ユニット間に配置した構造をしている。
【0010】
本発明者達は、この様な結晶構造を持つLi2 CuO2 が、充電時にCuO2 ではなくCuOに構造変化してしまうのは、CuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接原子である銅との結合力が充電時に弱くなり、酸素が結晶から脱離してしまうためだと考え、酸素と酸素に近接する原子との結合を強くすることでCuOへの構造変化を抑制できると推察した。また、Li2 CuO2 とLiCuO2 間での構造変化に関しては、リチウムの挿入と脱離に伴いCuO4 直鎖状ユニット間の配列が変化してしまうためだと考え、CuO4 直鎖状ユニット間の結合を強くすることでLi2 CuO2 とLiCuO2 間の構造変化を抑制できると推察した。
【0011】
上記推察を基に、CuO4 直鎖状ユニット内の酸素と酸素に近接する原子との結合力とCuO4 直鎖状ユニット間の結合力の計算を行った結果、Li2 CuO2 の銅の一部を特定元素Mで置換することでCuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接元素との結合力を強くすることができ、また特定元素Dで置換することでCuO4 直鎖状ユニット間の結合力を強くすることができることを見出した。
【0012】
以下の計算に基づいて本発明に至った経過について説明する。
(結合力の算出方法)
原子間の結合力の算出は、図2に示す流れで進めた。計算は文献「Phys.Soc.jpn,」Vol 875,45ページ(1978)のDv−Xα分子軌道法と、「J.Chem.Phys,」Vol 23,1833−1846ページ(1955)のマリケンの方法を用いた。計算は、ステップ(1)においてLi2 CuO2 の結晶構造から原子集合体(クラスター)モデルを切り出し、ステップ(2)〜(5)においてDv−Xα分子軌道法を用いてモデル内の分子軌道と電子密度を計算し、ステップ(6)において計算した分子軌道と電子密度からマリケンの方法を用いて原子間の結合力を算出する流れとなっている。以下に各ステップを詳細に説明する。
【0013】
ステップ(1)(原子集合体モデル)
計算に用いた原子集合体モデルは、図3に示すようにLi2 CuO2 の結晶の一部を切り出して中心の銅原子を他の原子(置換元素M,D)で置換したものである。
そして、モデル周辺に1千程度の電荷を配置して静電ポテンシャルを考慮することで結晶の状態を近似した。
【0014】
ステップ(2)〜(5)(分子軌道と電子密度の計算)
ステップ(2)〜(5)でDv−Xα分子軌道法を用いて上記モデル内の分子軌道と電子密度を計算した。Dv−Xα分子軌道法では、ステップ(2)においてモデル内の電子密度分布の初期値を仮定してモデル内の各原子の原子軌道を計算し、ステップ(3)においてステップ(2)で計算した原子軌道を基底関数として永年方程式を解くことでモデル内の分子軌道と固有エネルギー計算し、ステップ(4)においてステップ(3)で計算した分子軌道から電子密度分布(出力値)を求め、ステップ(5)において電子密度分布の出力値と初期値を比較して、出力値と初期値が同じ値ならば出力値を電子密度の最終値とし、異なれば出力値をステップ(2)の電子密度の初期値として再度計算して、出力値と初期値が同じになるまでステップ(2)〜(5)を繰り返す流れとなっている。以下にステップ(2)〜(5)を詳細に説明する。
【0015】
ステップ(2)(原子軌道の計算)
モデル内の電子密度の初期値が位置
【0016】
【数1】

【0017】
の関数で
【0018】
【数2】

【0019】
である場合、孤立原子νの位置
【0020】
【数3】

【0021】
におけるi番目の電子に関する軌道
【0022】
【数4】

【0023】
とその固有エネルギーεi は、(1)式のハミルトニアン
【0024】
【数5】

【0025】
と(2)式のシュレディンガー方程式を用いて求める。
【0026】
【数6】

【0027】
v は原子核の電荷、
【0028】
【数7】

【0029】
は原子核の位置で、αは係数で0.7とする。(1)式の右辺第一項は、電子の運動エネルギー、第二項は原子核から受けるポテンシャル、第三項は電子系のポテンシャル、第四項は、交換ポテンシャルで補正項である。
【0030】
ステップ(3)(分子軌道の計算)
モデル内の分子軌道をステップ(2)で計算した各原子軌道の線形結合で表現する。つまり、l番目の電子の位置
【0031】
【数8】

【0032】
における分子軌道を(3)式のように
【0033】
【数9】

【0034】
と表わす。ここで、Cilは定数である。Cilの値(0≦Cil≦1)により、どの原子軌道が大きく分子軌道に関与しているかを調べることが出来る。この関係を用いて分子軌道
【0035】
【数10】

【0036】
とその固有エネルギーεl を求める。そのために以下の(4)式のハミルトニアン
【0037】
【数11】

【0038】
と(5)式のシュレディンガー方程式を用いる。
【0039】
【数12】

【0040】
ここで(4)式の右辺第一項は、電子の運動エネルギー、第二項は系全ての原子核から受けるポテンシャル、第三項は電子系のポテンシャル、第四項は、交換ポテンシャルで補正項である。
【0041】
分子軌道の式(3)式にシュレディンガー方程式(5)式を代入すると、(6)式または(9)式が得られるため、実際には成分表示の(6)式または行列表示の(9)式の永年方程式解くことで固有エネルギーεlとその分子軌道
【0042】
【数13】

【0043】
を求める。
【0044】
【数14】

【0045】
ijは重なり積分、Sijはクーロン積分(i=j)と共鳴積分(i≠j)であり、(7)式と(8)式で表される。
【0046】
【数15】

【0047】
また、式(7)の成分表示を整理し、行列表記したものが(9)式で表わされる。
【0048】
【数16】

【0049】
記号の上の∧は、それが行列であることを表わす。
ステップ(4)(電子密度の計算)
電子密度
【0050】
【数17】

【0051】
は、ステップ(3)で求めた分子軌道
【0052】
【数18】

【0053】
の自乗の和で求まり、以下(10)式で表わされる。
【0054】
【数19】

【0055】
ステップ(5)(電子密度の初期値と出力値の比較)
次に電子密度の計算初期値と出力値の差Zを(11)式から求める。
【0056】
【数20】

【0057】
電子密度の差Z≠0のとき、電子密度の出力値を再度初めに入力した初期値、すなわち、
【0058】
【数21】

【0059】
としてステップ(2)へ戻る。
Z=0のとき、最終的な電子密度
【0060】
【数22】

【0061】
として求め、そのときの分子軌道
【0062】
【数23】

とその固有エネルギーεl を得る。
【0063】
ステップ(6)(結合力の計算)
上記で計算された分子軌道と電子密度を用いて原子間の結合力を計算する。計算はマリケンの方法を用いた。ここでの結合力は共有結合性の強さを表わす。マリケンの方法では、原子Aと原子B間の結合力の強さは以下の式で表される。
【0064】
【数24】

【0065】
ここで、fl は分子軌道lを占有する電子の占有数である。また、i,jについての和はA原子、B原子に属するもののみについて行うことを意味する。このQABの大きさにより、結合力の強さを評価する。
【0066】
上記のマリケンの方法を用いて、CuO4 直鎖状ユニット内の酸素と酸素に近接する原子との結合力とCuO4 直鎖状ユニット間の結合力を計算した。CuO4 直鎖状ユニット内の酸素と酸素に近接する原子との結合力は、酸素と置換元素、酸素と銅原子との結合力をたし合わせたもので表現した。CuO4 直鎖状ユニット間の結合力は、置換元素を中心とした酸素の平面4配位中の原子群(図3中の点線内の原子)と銅を中心とした酸素の平面4配位中の原子群(図3中の実線内の原子)との結合力を総和したもので表現した。
【0067】
図4は、上記の方法で計算したLi2 CuO2 の銅の一部を他元素Mで置換した場合のCuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接原子間との結合力を、元素を置換していないLi2 CuO2 の結合力に対する変化率で示したものである。図4から明らかなように、CuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接原子間との結合力を強くする置換元素は、Al,Si等の元素周期律表で13族元素,14族元素、Fe,Co,Niであり、より好ましくはAl,Siであることが分かった。
【0068】
図5は、Li2 CuO2 の銅の一部を他元素Dで置換した場合のCuO4 直鎖状ユニット間の結合力を、元素を置換していないLi2 CuO2 の場合の結合力に対する変化率で示したものである。図5から明らかなように、CuO4 直鎖状ユニット間の結合力を強くする置換元素は、Ti,V,Y,Zr,Mo,Pdであることが分かった。
【0069】
本発明者達は上記計算を基に実験を行った結果、一般式がLi2 (Cu1-x-yxy )O2 (0<x<0.5,0<y<0.5、x+y<0.5)で表されるリチウム銅複合酸化物において、M元素としてCuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接原子間との結合力を強くすることができる元素である元素周期律表の13族元素、14族元素、Fe,Co,Niから成る群から選択される1種類以上の元素、より好ましくはAl,Siから成る群から選択される1種類以上の元素を用い、D元素としてCuO4 直鎖状ユニット間の結合力を強くすることができる元素であるTi,V,Y,Zr,Mo,Pdから成る群から選択される1種類以上の元素を用いることで、従来のリチウム銅複合酸化物よりも放電容量が大きく充放電を繰り返しても充放電容量の低下が小さい正極活物質を得られることを見出した。
【発明の効果】
【0070】
本発明によると、一般式がLi2 (Cu1-x-yxy )O2 (0<x<0.5,0<y<0.5、x+y<0.5)で表され、M元素が元素周期律表の13族元素、14族元素、Fe,Co,Niから成る群から選択される1種類以上の元素、D元素がTi,V,Y,Zr,Mo,Pdから成る群から選択される1種類以上の元素であるリチウム銅複合酸化物を正極活物質として用いることで、Li2 CuO2 の充電時におけるCuOへの構造変化と充放電時におけるLi2 CuO2 とLiCuO2 間での構造変化を抑制することができ、安価で放電容量が大きく、充放電の繰り返しによる充放電容量の低下が少ないリチウム二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、非水電解質を有するリチウム二次電池であって、該正極を構成する正極活物質が一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 で表されるリチウム銅複合酸化物からなることを特徴とする。
【0072】
〔正極活物質〕
本発明に係る正極活物質は、斜方晶系Li2 CuO2 型構造を有するLi2 (Cu1-x-yxy )O2 で表わされるリチウム銅複合酸化物である。
【0073】
前記正極活物質は斜方晶系Li2 CuO2 型構造を有し、また空間群Immに属する構造を有することが好ましい。
置換元素MはCuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接原子間の結合力を強くすることができる元素であり、元素周期律表の13族元素、14族元素、Fe,Co,Niから成る群から選択される1種類以上の元素、より好ましくはAl,Siから成る群から選択される1種類以上の元素である。
【0074】
置換元素Dは、CuO4 直鎖状ユニット間の結合力を強くすることができる元素であり、Ti,V,Y,Zr,Mo,Pdから成る群から選択される1種類以上の元素である。
【0075】
xとyの範囲は、0<x<0.5,0<y<0.5で2種類の置換元素M、Dが必ず含まれる。これは、元素Mのみを置換した場合にはCuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接原子間の結合力を強くすることができるが、CuO4 直鎖状ユニット間の結合力が弱く、充放電時におけるCuO4 直鎖状ユニット間の配列変化を十分に抑制することができないためであり、元素Dのみを置換した場合には、CuO4 直鎖状ユニット間の結合力を強くすることはできるが、CuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接原子間の結合力が弱くなり、充電時に酸素の脱離が著しく生じてCuOに構造が変化してしまうためである。つまり、2種類の置換元素M,Dを適度に置換することで、充放電時におけるCuO4 直鎖状ユニット間の配列変化と酸素の脱離の両方を抑制することができ、放電容量が高く充放電を繰り返しても容量の低下が小さい正極活物質を得ることができる。さらに、xとyの間にはx≧yの関係があることがより好ましい。これは、置換元素Dが置換元素Mより多いと、CuO4 直鎖状ユニット内の酸素と近接原子間の結合力が弱くなることがあるためである。
【0076】
x+yの範囲は、x+y<0.5である。これは、x+yが0.5以上では、斜方晶系Li2 CuO2 型構造を維持できないまたは構造が不安定となり、放電容量の低下を引き起こすためである。
【0077】
(正極活物質の作製方法)
正極活物質の作製方法の一例としては、リチウム化合物、銅化合物、置換元素化合物の各原料を所定の組成に秤量後、所定の混合方法にて混合し、温度400〜1000℃の温度範囲、焼成時間72時間以内で加熱焼成することにより、所望の正極活物質を得る。
【0078】
(リチウム及び銅の原料)
リチウム及び銅の原料としては、前記元素の金属と金属の塩と酸化物、水酸化物、窒化物、硫化物、ハロゲン化物、有機金属化合物などを用いるがこれらに限定されるものではない。
【0079】
(リチウム及び銅の塩)
リチウム及び銅の塩の代表例としては、炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩,スルファミン酸塩,酢酸塩,シュウ酸塩,クエン酸塩,酒石酸塩,ギ酸塩,アンモニウム塩などが使用できるがこれらに限定されるものではない。
【0080】
(M,D置換元素の原料)
遷移金属の原料(Ti,V,Fe,Co,Ni,Y,Zr,Mo,Pd)としては、前記遷移金属元素の金属と遷移金属の塩、酸化物、水酸化物、窒化物、硫化物、ハロゲン化物、有機遷移金属化合物などを用いるがこれらに限定されるものではない。Al,Siの原料には、アルミニウム、シリコン金属とアルミニウム、ケイ素の塩、酸化物、水酸化物、窒化物、硫化物、ハロゲン化物、有機金属化合物などを用いるがこれらに限定されるものではない。
【0081】
(M,D元素の塩)
M,D元素の塩の代表例としては、炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩,スルファミン酸塩,酢酸塩,シュウ酸塩,クエン酸塩,酒石酸塩,ギ酸塩,アンモニウム塩などが使用できるがこれらに限定されるものではない。
【0082】
(原料の混合方法)
原料の混合方法としては、粉体状の原料を所望の組成に秤量後、そのまま乾式にて混合する方法、粉体状の原料を所望の組成に秤量後、水溶液あるいは有機溶媒中に原料を溶解あるいは分散後、水分または有機溶媒を飛散させ、乾燥した均一な混合物を得る方法、粉体状の原料を所望の組成に秤量後、酸性溶液に原料を溶解後、アルカリ溶液を滴下し、均一な沈殿物を得る方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
(乾式による混合方法)
乾式による混合方法としては、ボールミル等による機械的混合方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
(湿式による混合方法)
湿式による混合方法の具体的な方法して、粉体状の原料を所望の組成に秤量後、クエン酸を所定の濃度で溶解させた水溶液中に原料を溶解あるいは分散後、スプレードライヤーを用いて水分を飛散させ、乾燥した均一な前駆体を得る方法、より好ましくは、原料およびクエン酸を溶解させた水溶液の水分をスプレードライヤーにて飛散させる際に、400℃以上1000℃以下の高い温度で瞬間的に熱を加えることにより直接的に目的物を得る方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
〔電極構造体の作製法〕
(電極構造体)
図6は、本発明における正極活物質粉末から成る電極構造体602の一実施様態の断面を模式的に示す概念図である。図6(a)は集電体600上に、正極活物質粉末603からなる電極材料層601が設けられた電極構造体602である。図6(b)では、電極構造体602には、正極活物質粉末603と導電補助材604と結着剤605から構成されている電極材料層601が設けられている。なお、同図では、集電体600の片面のみに電極材料層601が設けられているが、電池の形態によっては集電体600の両面に設けることができる。
【0086】
(電極構造体602の作製)
本発明における正極活物質粉末603に、結着剤605、導電補助材604を混合して、集電体600とともに形成して作製する。詳しくは、正極活物質粉末603に、結着剤605、導電補助材604を混合し、適宜、溶媒を添加して粘度を調節して、ペーストを集電体600上に塗布し、乾燥して電極構造体602を形成する。必要に応じてロールプレス等で厚みを調整して形成させる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記形成工程は、水分を十分除去した乾燥空気中で行うのが好ましく、さらには不活性ガス雰囲気下で行うのがより好ましい。さらに、電極構造体602を形成した後、マイクロ波加熱によって脱水し真空乾燥機で脱水するのも良い。結着剤の正極活物質に対する混合比率は、0.1以下が好ましい。
【0087】
(導電補助材604)
導電補助材の役割は、前記正極活物質の電子伝導性が小さいため、電子導電を補助し、集電を容易にすることである。導電体粉としては、アセチレンブラック,ケッチェンブラック,グラファイト粉などの各種炭素材、ニッケル,チタン,銅,ステンレススチール,などの金属材料が使用できる。導電体粉の正極活物質に対する混合重量比率は1以下が好ましい。
【0088】
(結着剤605)
結着剤は、正極活物質粉同士を接着し、充放電サイクルにおいてクラックが生じて集電体から脱落するのを防ぐ役割を有している。結着剤の材料としては、有機溶媒に安定な、フッ素樹脂,ポリフッ化ビリニデン,スチレン−ブタジエンラバー,ポリエチレン,ポリプロピレン,シリコン樹脂,ポリビニルアルコールから選択される一種類以上の樹脂を使用することができる。
【0089】
(正極集電体600)
正極集電体としては、電池反応に不活性なもので、繊維状,多孔状あるいはメッシュ状のアルミニウム,チタン,ニッケル,ステンレス,白金などを使用する。
【0090】
〔二次電池の構成〕
図7は、本発明の二次電池(リチウム二次電池)の一実施態様の断面を模式的に示す概念図であり、本発明の電極構造体である正極703と負極701がイオン伝導体(電解質)702を介して対向し電池ハウジング(ケース)706内に収容され、負極701、正極703は、それぞれ負極端子704、正極端子705に接続されている。
【0091】
(正極703)
前述した本発明のリチウム二次電池の正極703は、前述した本発明の電極構造体602を使用する。
【0092】
(負極701)
前述した本発明の電極構造体を正極に用いたリチウム二次電池の対極となる負極701は、少なくともリチウムイオンのホスト材となる負極材料からなり、好ましくはリチウムイオンのホスト材となる負極材料から形成された層と集電体からなる。さらに該負極材料から形成された層は、リチウムイオンのホスト材となる負極材料と結着剤、場合によってはこれらに導電補助材を加えた材料からなるのが好ましい。
【0093】
(負極材料)
本発明のリチウム二次電池に用いるリチウムイオンのホスト材となる負極材料としては、黒鉛等の炭素材料,リチウムと電気化的に合金化する金属材料,リチウム金属,遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、遷移金属窒化物、リチウム―遷移金属酸化物、リチウム―遷移金属硫化物、リチウム−遷移金属窒化物から選択される一種類以上の物質から少なくとも構成される。リチウムと電気化的に合金化する金属材料としては、シリコン,錫,リチウム,マグネシウム,アルミニウム,カリウム,ナトリウム,カルシウム,亜鉛,鉛,から選択される一種類以上の元素を含有する金属材料が好適に用いられる。また、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、遷移金属窒化物の遷移金属元素としては、部分的にd殻あるいはf殻を有する元素で、Sc,Y,ランタノイド,アクチノイド,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Wn,Tc,Re,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Auが好適に用いられる。高いエネルギー密度の電池を得るためには、負極活物質にリチウム金属を使用するのが好ましい。
【0094】
(負極集電体)
上記負極に用いる集電体材料としては、繊維状,多孔状あるいはメッシュ状のカーボン,ステンレススチール,チタン,ニッケル,銅,白金,金などを使用する。
【0095】
(イオン伝導体702)
本発明のリチウム二次電池のイオン伝導体には、電解液(電解質を溶媒に溶解させて調製した電解質溶液)を保持させたセパレータ、固体電解質、電解液を高分子ゲルなどでゲル化した固形化電解質、などのリチウムイオンの伝導体が使用できる。
【0096】
本発明のリチウム二次電池のイオン伝導体は、導電率が高いほど好ましく、少なくも25℃での導電率は1×10-3S/cm以上あることが望ましく、5×10-3S/cm以上あることがより好ましい。
【0097】
(電解質)
電解質は、リチウムイオン(Li+)とルイス酸イオン(BF4-,PF6-,AsF6-,ClO4-,PF6-,CF3 SO3-,(CF3 SO23- ,(CF3 SO22- ,B(C654-,C49 SO3-)から成る塩、およびこれらの混合塩を用いる。上記支持電解質のほかには、ナトリウムイオン,カリウムイオン,テトラアルキルアンモニウムイオン,などの陽イオンとルイス酸イオンとの塩も使用できる。上記塩は、減圧下で加熱したりして、十分な脱水と脱酸素を行っておくことが望ましい。電解液の漏洩を防止するために、ゲル化することが好ましい。ゲル化剤としては電解液の溶媒を吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望ましく、ポリエチレンオキサイドやポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル,ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーが用いられる。
【0098】
(電解質の溶媒)
上記電解質の溶媒としては、アセトニトリル:CH3 CN,ベンゾニトリル:C65 CN,プロピレンカーボネイト:PC,エチレンカーボネート:EC,ジメチルホルムアミド:DMF,テトラヒドロフラン:THF,
ニトロベンゼン:C65 NO2 ,ジクロロエタン,ジエトキシエタン,クロロベンゼン,γ−ブチロラクトン,ジオキソラン,スルホラン,ニトロメタン,ジメチルサルファイド,ジメチルサルオキシド,ジメトキシエタン,ギ酸メチル,3−メチル−2−オキダゾリジノン,2−メチルテトラヒドロフラン,二酸化イオウ、塩化ホスリル,塩化チオニル,塩化スルフリル,など、およびこられの混合液が使用できる。
【0099】
上記溶媒は、活性アルミナ,モレキュラーシーブ,五酸化リン,塩化カルシウムなどで脱水するか、溶媒によっては、不活性ガス中でアルカリ金属共存下で蒸留して不純物除去と脱水をも行うのがよい。
【0100】
電解液の漏洩を防止するために、固体電解質もしくは固形化電解質を使用することが好ましい。固体電解質としては、リチウム元素とケイ素元素と酸素元素とリン元素もしくはイオウ元素からなる酸化物などのガラス,エーテル構造を有する有機高分子の高分子錯体、などが挙げられる。固形化電解質としては、前記電解液をゲル化剤でゲル化して固形化したものが好ましい。ゲル化剤としては、電解液の溶媒を吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望ましい。このようなポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、各種ビニルモノマーのポリマーなどが用いられる。
【0101】
(セパレータ)
前記セパレータは、二次電池内で負極701と正極703の短絡を防ぐ役割がある。また、電解液を保持する役割を有する場合もある。
【0102】
セパレータとしては、リチウムイオンが移動できる細孔を有し、かつ、電解液に不溶で安定である必要があるため、ガラス,ポリプロピレン,ポリエチレンなどのポリオレフィン、フッ素樹脂などの不織布あるいはミクロポア構造の材料のものが好適である。また、微細孔を有する金属酸化物フィルム、または、金属酸化物を複合化した樹脂フィルムも使用できる。
【0103】
〔電池の形状と構造〕
本発明の二次電池の具体的な形状としては、例えば、扁平形、円筒形、直方体形、シート形などがある。また、電池の構造して、例えば、単層式、多層式、スパイラル式などがある。その中でも、スパイラル式円筒形の電池は、正極と負極の間にセパレータを挟んで巻くことによって、電極面積を大きくすることができ、充放電時に大電流を流すことができるという特徴を有する。また、直方体形やシート形の電池は、複数の電池を収納して構成する機器の収納スペースを有効に利用することができる特徴を有する。
【0104】
以下では、図8、図9において、801と903は負極、803と906は正極、804と908は負極端子(負極キャップまたは負極缶)、805と909は正極端子(正極缶または正極キャップ)、802と907はイオン伝導体、806と910はガスケット、901は負極集電体、907は正極集電体、911は絶縁板、912は負極リード、913は正極リード、914は安全弁である。
【0105】
(扁平形)
図8に示す単層式偏平型(コイン型)の二次電池では、正極材料層を含む正極803と負極材料層を備えた負極801が例えば少なくとも電解液を保持したセパレータで形成されたイオン伝導体802を介して積層されており、この積層体が正極端子としての正極缶805内に正極側から収容され、負極側が負極端子としての負極キャップ804より被覆されている。そして正極缶内の他の部分にはガスケット806が配置されている。
【0106】
(スパイラル式円筒形)
図9に示すスパイラル式円筒型の二次電池では、正極集電体904上に形成された正極(材料)層905を有する正極906と、負極集電体901上に形成された負極(材料)層902を有した負極903が、例えば少なくとも電解液を保持したセパレータで形成されたイオン伝導体907を介して対向し、多重に巻回された円筒状構造の積層体を形成している。当該円筒状構造の積層体が、負極端子としての負極缶908内に収容されている。また、当該負極缶908の開口部側には正極端子としての正極キャップ909が設けられており、負極缶内の他の部分においてガスケット910が配置されている。円筒状構造の電極の積層体は絶縁板911を介して正極キャップ側と隔てられている。正極906については正極リード913を介して正極キャップ909に接続されている。また負極903については負極リード912を介して負極缶908と接続されている。正極キャップ側には電池内部の内圧を調整するための安全弁914が設けられている。
前述したように正極803の活物質層、正極906の活物質層905に、前述した本発明の正極材料粉末からなる層を用いている。
【0107】
(電池の組立)
以下では、図8、図9に示した電池の組立方法の一例を説明する。
(1)負極(801、903)と成形した正極(803、906)の間に、セパレータ(801、907)を挟んで、正極缶(805)または負極缶(908)に組み込む。
(2)電解液を注入した後、負極キャップ(804)または正極キャップ(909)とガスケット(806、910)を組み立てる。
(3)上記(2)をかしめることによって、電池は完成する。
【0108】
なお、上述したリチウム電池の材料調製、および電池の組立は、水分が十分除去された乾燥空気中、または乾燥不活性ガス中で行うのが望ましい。
上述のような二次電池を構成する部材について説明する。
【0109】
(ガスケット)
ガスケット(806,910)の材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂,ポリスルフォン樹脂、各種ゴムが使用できる。電池の封口方法としては、図8と図9のようにガスケットを用いた「かしめ」以外にも、ガラス封管,接着剤,溶接,半田付けなどの方法が用いられる。また、図9の絶縁板(911)の材料としては、各種有機樹脂材料やセラミックスが用いられる。
【0110】
(外缶)
電池の外缶として、電池の正極缶または負極缶(805、908)、及び負極キャップまたは正極キャップ(804、909)から構成される。外缶の材料としては、ステンレススチールやアルミニウム合金が好適に用いられる。特に、チタンクラッドステンレス板や銅クラッドステンレス板、ニッケルメッキ鋼板などが多用される。
【0111】
図8では、正極缶(805)が図9では負極缶(908)が電池ハウジング(ケース)と端子を兼ねているため、上記のステンレススチールが好ましい。ただし、正極缶または負極缶が電池ハウジングと端子を兼用していない場合には、電池ケースの材質は、ステンレススチール以外にも亜鉛などの金属、ポリプロピレンなどのプラスチック、または、金属もしくはガラス繊維とプラスチックの複合材を用いることができる。
【0112】
(安全弁)
リチウム二次電池には、電池の内圧が高まったときの安全対策として、安全弁が備えられている。安全弁としては、例えば、ゴム、スプリング、金属ボール、破裂箔などが使用できる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
(Li2 Cu0.8 Al0.1 Zr0.12 の作製)
Li、Cu、Al、Zrの原子比が2:0.8:0.1:0.1になるように、水酸化リチウム、酸化銅、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウムを秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することにより、一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 において、MがAl、DがZr、x=y=0.1の正極活物質を得た。
【0114】
(XRD分析)
作製した正極活物質の粉末X線回折のピークから、斜方晶系Li2 CuO2 型構造を有する単一の結晶構造であることを確認した。
【0115】
(電池の作製)
(正極703)
この正極活物質を以下のようにしてコイン型リチウム二次電池を作製した。正極活物質と導電補助材としての黒鉛粉末と結着材としてのポリフッ化ビリニデン粉末を重量比70:25:5で混合し、n−メチル−2−ピロリドンを加え十分混練してスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体である厚さ30μmのアルミニウム箔の片面に均一に塗布、乾燥後ロールプレス機にて加圧成型しシート状の電極をえた。この電極を直径5mmの円盤状に打ち抜くことにより、正極活物質層を形成し、真空乾燥機中で、温度80℃で3時間乾燥して正極703を作製した。
【0116】
(負極701)
負極701としては、厚さ0.5mmの金属リチウム箔を負極集電体である厚さ30μmの圧延銅箔上に圧着し直径5mmの円盤状に打ち抜くことにより負極701を作製した。
【0117】
(イオン伝導体702)
イオン伝導体702としては、電解液(電解質を溶媒に溶解させて調製した電解質溶液)を保持させたセパレータを用いた。電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比3:7で混合した液媒を、電解質には、四フッ化ホウ酸リチウム塩を1M(mol/l)を使用した。セパレータは、ポリプロピレン不織布でポリプロピレンの微孔セパレータをサンドイッチしたものを用いた。
【0118】
(電池組立)
電池組立は、負極701と正極703の間にイオン伝導体702をはさみ、チタンクラッドのステンレス材の正極缶805に挿入して、電解液を注入した後、チタンクラッドのステンレス材の負極キャップ804とフッ素ゴムのガスケット806で密閉して、リチウム二次電池を作製した。
【0119】
(電池評価)
電池評価は、電流密度0.2mA/cm2 で電圧1.5−4.0Vの範囲で充放電を行った。放電容量の評価は、充放電反応が比較的安定した5サイクル目の値を採用し、充放電を繰り返した場合の容量の低下を15サイクル目の容量維持率[容量維持率(%)={15サイクル目の放電容量/5サイクル目の放電容量}×100]で評価した。
【0120】
実施例2
(Li2 Cu0.7 Al0.1 Zr0.22 の作製)
Li、Cu、Al、Zrの原子比が2:0.7:0.1:0.2になるように、水酸化リチウム、酸化銅、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウムを秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することにより、一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 において、MがAl、DがZr、x=0.1、y=0.2の正極活物質を得た。その後、電池作製、充放電試験は実施例1と同じである。
【0121】
実施例3
(Li2 Cu0.7 Al0.2 Zr0.12 の作製)
Li、Cu、Al、Zrの原子比が2:0.7:0.2:0.1になるように、水酸化リチウム、酸化銅、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウムを秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することにより、一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 において、MがAl、DがZr、x=0.2、y=0.1の正極活物質を得た。その後、電池作製、充放電試験は実施例1と同じである。
【0122】
実施例4
(Li2 Cu0.6 Al0.2 Zr0.22 の作製)
Li、Cu、Al、Zrの原子比が2:0.6:0.2:0.2になるように、水酸化リチウム、酸化銅、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウムを秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することにより、一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 において、MがAl、DがZr、x=0.2、y=0.2の正極活物質を得た。その後、電池作製、充放電試験は実施例1と同じである。
【0123】
比較例1
(Li2 CuO2 の作製)
Li、Cuの原子比が2:1になるように、水酸化リチウム、酸化銅を秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することによりLi2 CuO2 を合成し、正極活物質とした。その後、電池作製、充放電試験は実施例1と同じである。
【0124】
比較例2
(Li2 Cu0.9 Al0.12 の作製)
Li、Cu、Alの原子比が2:0.9:0.1になるように、水酸化リチウム、酸化銅、硝酸アルミニウム、を秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することにより、一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 において、MがAl、Dが含まれない、x=0.1、y=0の正極活物質を得た。その後、電池作製、充放電試験は実施例1と同じである。
【0125】
比較例3
(Li2 Cu0.8 Al0.22 の作製)
Li、Cu、Alの原子比が2:0.8:0.2になるように、水酸化リチウム、酸化銅、硝酸アルミニウム、を秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することにより、一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 において、MがAl、Dが含まれない、x=0.2、y=0の正極活物質を得た。その後、電池作製、充放電試験は実施例1と同じである。
【0126】
比較例4
(Li2 Cu0.9 Zr0.12 の作製)
Li、Cu、Zrの原子比が2:0.9:0.1になるように、水酸化リチウム、酸化銅、硝酸ジルコニウムを秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することにより、一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 において、Mが含まれない、DがZr、x=0、y=0.1の正極活物質を得た。その後、電池作製、充放電試験は実施例1と同じである。
【0127】
比較例5
(Li2 Cu0.8 Zr0.22 の作製)
Li、Cu、Zrの原子比が2:0.8:0.2になるように、水酸化リチウム、酸化銅、硝酸ジルコニウムを秤量後、ボールミルにて十分混合し、750℃、12時間、酸素雰囲気中(10L/min)で焼成することにより、一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 において、Mが含まれない、DがZr、x=0、y=0.2の正極活物質を得た。その後、電池作製、充放電試験は実施例1と同じである。
【0128】
実施例と比較例の電池試験の結果を表1にまとめた。
【0129】
【表1】

【0130】
表1から明らかなように、Li2 CuO2 の銅を一部AlとZrの両方で置換することで、放電容量及び容量維持率が向上することが分かる。また、Alだけを置換した場合には、放電容量は向上するが容量維持率が低下することが、Zrだけを置換した場合には、容量維持率は向上するが放電容量が低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明のリチウム二次電池は、一般式がLi2(Cu1-x-yxy)O2で表されるリチウム銅複合酸化物を正極活物質として用いることで、LiCuOの充電時におけるCuOへの構造変化と充放電時におけるLiCuOとLiCuO間での構造変化を抑制することができ、安価で放電容量が大きく、充放電の繰り返しによる充放電容量の低下が少ないリチウム二次電池を提供することができる。本発明のリチウム二次電池は、動作電圧が従来の一次電池であるアルカリ乾電池及びマンガン乾電池等と同等であり、従来の一次電池に比べて放電時における電圧の低下が小さく安定している。また放電容量は、従来の一次電池に比べて大きく、充放電の繰り返しによる充放電容量の劣化が少ない。したがって、従来の一次電池の代替品としてデジタルカメラや携帯情報機器等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】Li2 CuO2 の結晶構造を示す図である。
【図2】本発明に用いた結合力の算出方法のフロートチャートである。
【図3】本発明の結合力の算出に用いた原子集合体モデルを示す図である。
【図4】CuO4 直鎖状ユニット内の酸素と酸素の近接原子間の結合力の変化の計算結果を示すグラフである。
【図5】CuO4 直鎖状ユニット間の結合力の変化の計算結果を示すグラフである。
【図6】本発明における電極構造体の断面構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明のリチウム二次電池の一例を示す断面図である。
【図8】単層式偏平型電池の構造を示す断面図である。
【図9】スパイラル式円筒型電池の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0133】
600 集電体
601 電極材料層
602 電極構造層
603 正極活物質
604 導電補助材
605 結着材
701、801、903 負極
702、802、907 イオン伝導体
703、803、906 正極
704 負極端子
705 正極端子
706 電槽(ハウジング)
804 負極キャップ
805 正極缶
806、910 ガスケット
901 負極集電体
902 負極活物質層
904 正極集電体
905 正極活物質層
908 負極缶(負極端子)
909 正極キャップ(正極端子)
911 絶縁板
912 負極リード
913 正極リード
914 安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、非水電解質を有するリチウム二次電池であって、該正極を構成する正極活物質が一般式Li2 (Cu1-x-yxy )O2 (式中、Mは元素周期律表で13族元素、14族元素、Fe,Co,Niから成る群から選択される1種類以上の元素、DはTi,V,Y,Zr,Mo,Pdから成る群から選択される1種類以上の元素を表す。x,yは0<x<0.5、0<y<0.5、x+y<0.5である。)で表されるリチウム銅複合酸化物からなることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項2】
前記x,yが、0<x<0.5、0<y<0.5、x+y<0.5、x≧yであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記正極活物質は斜方晶系Li2 CuO2 型構造を有することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記正極活物質は空間群Immに属する構造を有することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記MはAl,Si,Fe,Co,Niから成る群から選択される1種類以上の元素、DはTi,V,Y,Zr,Mo,Pdから成る群から選択される1種類以上の元素であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記MはAl,Siから成る群から選択される1種類以上の元素、Dの元素は、Ti,V,Y,Zr,Mo,Pdから成る群から選択される1種類以上の元素であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−127911(P2006−127911A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314640(P2004−314640)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】