説明

リチウム硫黄セルのための電解質

リチウムアノードおよび硫黄含有カソードおよび非水性電解質を含む電気化学セルが開示される。このセルは、カソードの電気活性硫黄含有材料の高度な利用および高い充電−放電効率を示す。1つの実施形態において、電気化学セルであって、以下:(a)電気活性硫黄含有材料を含むカソード;(b)リチウムを含むアノード;および(c)非水性電解質、を含み、ここで、該セルが、少なくとも60%の電気活性硫黄含有材料の利用を示し、そして約0.2mA/cmの充電率および約0.4mA/cmの放電率の少なくとも10サイクルにわたって少なくとも80%の充電−放電効率を示す、セルが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的に、電気化学セルおよび電気化学バッテリーの分野に関し、電気化学セルにおいて使用するための電解質に関する。より詳細には、本発明は、カソードが好ましくは電気活性硫黄含有材料を含み、そしてアノードが好ましくはリチウムを含み、そしてセルが高い割合の理論的な放電容量を送達し、高い充電−放電効率を示し、そして/または低い自己放電率を示す、電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム含有アノードを備える高エネルギー密度バッテリーの開発において近年かなり関心がある。リチウム金属は、例えば、リチウムインターカレート炭素アノードのようなアノード活性材料(非電気活性材料の存在がアノードの重量および体積を増加し、それによって、アノードのエネルギー密度を減少させる)と比較して、その軽い重量および高いエネルギー密度に起因して、電気化学電池のアノード活性材料として特に魅力的である。リチウム金属アノード、またはリチウム金属を含むアノードの使用は、重量がより軽く、リチウムイオン、ニッケル金属ヒドリドまたはニッケルカドミウムセルのようなセルよりもより高いエネルギー密度を有するセルを構築するための機会を提供する。これらの特徴は、非特許文献1、およびSandbergらの特許文献1(これらのそれぞれの開示は、本明細書中において参考として援用される)に記載されるように、携帯電話およびラップトップコンピューターのような携帯用電子デバイスにおけるバッテリーのために非常に望ましい。
【0003】
薄膜バッテリー設計は、重量を軽くし、高い表面積によって、充電における高率の能力ならびに減少した電流密度が可能になる点で、携帯用電子デバイスに特に適切である。薄膜リチウムバッテリーの製造のための数種のカソード材料が公知であり、これには、硫黄−硫黄結合を含むカソード材料が挙げられ、高エネルギー容量および再充電可能性が、硫黄−硫黄結合の電気化学的切断(還元による)および再形成(酸化による)により達成される。リチウムアノードまたはナトリウムアノードを有する電気化学セルにおける使用のための硫黄含有カソード材料(硫黄−硫黄結合を有する)としては、元素状硫黄組成物、有機硫黄組成物、または炭素−硫黄組成物が挙げられる。
【0004】
再充電可能リチウム/硫黄(Li/S)セルについて、セルの性能のさらなる向上が必要である。理想的には、セルは、多くのサイクルにわたって実用的な放電率での高い利用を有するべきである。20分(3C)〜3時間(C/3)の範囲の期間にわたるセルの完全な放電は、代表的に、実用的な放電率を考慮する。利用、自己放電、充電−放電の効率、および過充電保護のような性能および性質の改善について多くのアプローチが探求されている。
【0005】
非水性電気化学セルにおけるリチウムアノードは、電解質系の溶媒および溶媒中に溶解した材料(例えば、電解質塩およびカソードから電解質に入る材料)を含むセル構成要素との反応から表面フィルムを開発する。カソードから電解質に入る材料は、カソード処方物の構成要素およびセル放電の際に形成されるカソードの還元生成物を含み得る。硫黄含有材料を含むカソードを備える電気化学セルにおいて、還元生成物は、スルフィドおよびポリスルフィドを含み得る。リチウム電極上の表面フィルムの組成および特性は、広範囲に研究されており、これらの研究のいくつかは、非特許文献2によって要約されている。表面フィルムは、非特許文献3によって固体電解質インターフェース(SEI)と呼ばれている。
【0006】
SEIは、SEIの組成に依存して電気化学セルの機能に対して望ましい影響または望ましくない影響を有し得る。リチウムアノードを含む電気化学セルにおけるSEIの望ましい特性としては、リチウムイオンに対して伝導性があること、および同時にリチウム消費反応(例えば、電解質塩、電解質溶媒、または溶解性カソード還元(放電)生成物との反応)を妨げることまたは最小化することが挙げられる。SEIの望ましくない特性としては、セルの低下した放電電圧および低下した容量が挙げられ得る。硫黄含有カソード材料からの可溶性カソード還元生成物は、Li/Sセルにおいて形成される任意のSEIが代表的にリチウム消費反応(これらの反応は、しばしば、リチウム腐食と呼ばれる)を妨げるかまたは最小にする際に無効であることを示すリチウムアノードに対して非常に反応性であることが公知である。
【0007】
Li/Sセルにおけるリチウムを保護するためのアプローチは、Viscoらの特許文献2;Nimonらの特許文献3、および特許文献4;ならびにSkotheimらの米国特許出願番号09/721,578号および同第09/864,890号によって記載されている。
【0008】
Li/Sセルにおける硫黄の利用は、多くの因子(とりわけ、カソードの処方、放電率、温度、および電解質組成を含む)に依存する。本明細書中で使用される場合、「100%利用」(「硫黄利用」と呼ばれる)は、電極における全ての原子硫黄が十分に利用される場合、電極が、電極中に最初に存在する硫黄1g当たり1675mAhを生じることを想定する。硫黄利用を考察および教示する先行技術の参考文献には、以下がある:
(1)特許文献5のPeledらは、THFまたはTHF/トルエン電解質溶媒を使用するLi/Sセル中、約90%の硫黄利用を達成していることを主張しているが、非常に低い放電率のみであった(単回放電について2ヶ月)。
【0009】
(2)非特許文献4は、ジオキソラン溶媒混合物中で、類似のLi/Sセルが、0.1mA/cmおよび0.01mA/cmの放電率で50%以下の硫黄利用を達成することを見出した。
【0010】
(3)特許文献6のChuは、30℃および0.02mA/cmの低放電率での54%利用を送達するポリマー電解質を備えるLi/Sセルを記載する。90℃において、0.1mA/cmの放電率での90%の利用を達成した。
【0011】
(4)特許文献7のChuらは、0.09mA/cm(90μA/cm)および0.5mA/cm(500μA/cm)の放電率で70より多いサイクルについて約40%の硫黄利用を有する液体電解質Li/S再充電可能セルを記載する。別の例(実施例4)は、35より多いサイクルについて60%の硫黄利用を記載するが、0.09mA/cmの低い放電率である。
【0012】
(5)非特許文献5は、再充電可能Li/Sセルの率容量およびサイクル特性を含む種々の特性を記載する。図5において、Li/Sセルについての放電プロフィールおよび充電プロフィールが示され、電解質としてのテトラグリム中の0.5Mリチウムトリフレートであり、これから充電−放電効率が推定され得る。約67%の30回のサイクルでの充電−放電効率が、0.26mA/cmで充電され、0.26mA/cmで放電されるセルについて推定され、セルについて約48%の効率が0.26mA/cmで充電され、1.74mA/cmで放電された。これらの同じセルの硫黄利用は、それぞれ、30サイクルで、37%および28%であることが示される。
【0013】
多くのリチウムベースの電気化学セル(Li/Sセルを含む)は、外部電流をセルに適用することによって再充電され得る。多くのリチウム再充電セルを再充電するための一般的な機構は、非特許文献6によって、そしてLi/Sセルについて非特許文献7によって記載されている。セルが再充電される場合、意図しない過充電がされ得、これは、セル電解質の破壊、電流コレクターの腐食、セルセパレーターの分解、および正電極または負電極に対する不可逆な損傷のような種々の望ましくない反応を導き得る。過充電保護は、例えば、非特許文献8、非特許文献9および非特許文献10に記載されるように、酸化還元シャトル添加剤の使用によってリチウムセルにおいて提供されている。酸化還元シャトル添加剤種は、過充電の間、カソードで酸化され、アノード電極に拡散し、ここで、これは、元の種に還元され、戻るように拡散する。
【0014】
Li/Sセルにおいて、内在する酸化還元シャトルは、例えば、Chuらの特許文献6に記載されるように、過充電耐性または過充電保護を提供することが公知である。非特許文献11は、第134頁の図4に示されるように、Li/Sセルのシャトルが過充電を制限し、長期の過充電の間のセル電圧の保持定数の例を提供する。
【0015】
Viscoらの特許文献8は、過充電による損傷に対して再充電可能電気化学エネルギー変換デバイスの保護方法を記載する。詳細には、このようなデバイスは、以下の要素:(1)負電極;(2)過充電の間に1つ以上の酸化種に酸化される1つ以上の中間種を含む正電極;および(3)酸化種が還元される率を調節し、それによって過充電保護が提供される電圧を調節する、チューニング種を含むとして特徴付けられ得る。過充電の間に生成される酸化種は、負電極に移動し、ここで、これらは、通常酸化還元シャトルにおいて中間種に戻るように還元する。過充電保護システムは、多くの異なるセル、特に、アルカリ金属負電極を有するセル(リチウム/有機硫黄セル、リチウム/(無機硫黄)セル、リチウム/(金属酸化物)セル、リチウム/(金属スルフィド)セル、および炭素アノードセルを含む)に適用可能であるとして記載されている。記載されるチューニング種は、有機硫黄化合物、および表面活性剤(トリメチルボレートのような有機ボラン、トリメチルボロキンのようなボロキシン;ポリフォスファゼンおよびLiPOのようなホスフェートを含むリン含有化合物;LiCOのようなカルボネート;LiNOのようなニトレートを含む窒素含有化合物;およびフェニルヒドラジンのような有機窒素化合物を含む)を含む。
【0016】
Ganらの特許文献9および10は、第1サイクル不可逆容量を減少させるためにリチウムイオンセル中の電解質の添加剤としてニトレートおよびニトライトを記載する。特許文献11において、Ganらは、例えば、SVO(銀−バナジウムオキシド)正電極を有するアルカリ金属セル)中の電流パルス放電における増加した放電電圧および減少した電圧遅延を提供する非水性電解質のためのニトレート添加剤を記載する。
【0017】
しかし、電気化学セルにおける酸化還元シャトルはまた、セル特性に対して望ましくない影響(例えば、自己放電を導く)を有することが示されている。非特許文献12(この開示は、本明細書中において参考として援用される)は、酸化還元シャトル機構を通して作用する、元素状硫黄不純物の存在に起因するLi/TiSセルの自己放電を記載する。硫黄不純物は、ポリスルフィドシャトルの一部になる。スルフィドイオンまたは低鎖ポリスルフィドは、カソードにおいて、電解質中で可溶であるより高次のポリスルフィドへと酸化される。これらの高次のポリスルフィドは、電解質を通してアノードに拡散し、ここで、これは、より低次のポリスルフィドに還元され、次いで、電解質を通してカソードへと戻るように拡散し、より高次のポリスルフィドに再酸化される。この酸化還元シャトルによって、セル中の連続的電流を引き起こし、セルの保存容量の枯渇を生じる。この現象は、自己放電と呼ばれる。特許文献12において、Holleckらは、リチウムセル(例えば、Li/TiSセル(これは、不純物として硫黄を含むカソードを含む))中の自己放電を減少させる方法を記載する。この方法は、硫黄不純物と反応して安定なスルフィドを形成し、自己放電を減少させるスカベンジャー(例えば、金属または金属イオン)を使用する。
【0018】
再充電可能バッテリーについて、充電を終わらせる時点を決定することが、効率的な充電、バッテリーの寿命、および安全性のために重要である。多くの方法が、バッテリーの充電のため、および充電の終了の時点を決定するために公知である。Tsenterらの特許文献13およびNutzらの特許文献14は、ニッケルバッテリー(例えば、ニッケル−カドミウム、ニッケル−水素およびニッケル金属−ヒドリド)に特に有用なこれらの充電および放電の停止方法のうちのいくつかを要約する。Δ温度/Δ時間(dT/dt)、Δ電圧/Δ時間(dV/dt)、および所定電圧での停止が、停止方法において顕著である。
【特許文献1】米国特許第6,406,815号明細書
【特許文献2】米国特許第6,025,094号明細書
【特許文献3】米国特許第6,017,651号明細書
【特許文献4】米国特許第6,225,002号明細書
【特許文献5】米国特許第4,410,609号明細書
【特許文献6】米国特許第5,686,201号明細書
【特許文献7】米国特許第6,030,720号明細書
【特許文献8】米国特許第5,882,812号明細書
【特許文献9】米国特許第6,136,477号明細書
【特許文献10】米国特許第6,210,839号明細書
【特許文献11】米国特許第6,060,184号明細書
【特許文献12】米国特許第4,816,358号明細書
【特許文献13】米国特許第5,900,718号明細書
【特許文献14】米国特許第5,352,967号明細書
【非特許文献1】Linden、Handbook of Batteries,1995,第2版、第14章、75〜76頁、および第36章、第2頁、McGraw−Hill,New York
【非特許文献2】Aurbach、Nonaqueous Electrochemistry、1999、第6章、第289頁〜第366頁、Marcel Dekker、New York。
【非特許文献3】Peled、J.Electrochem.Soc.,1979,第126巻、第2047頁〜第2051頁
【非特許文献4】Peledら、J.Electrochem.Soc.,1989,第136巻、第1621頁〜第1625頁
【非特許文献5】Cheonら、J.Electrochem.Soc.,2003,第150巻、第A800頁〜第A805頁
【非特許文献6】Hossain、Handbook of Batteries,1995,第2版、第36章、第1頁〜第28頁、McGraw−Hill、New York
【非特許文献7】Mikhaylikら、J.Electrochem.Soc.,2003、第150巻、第A306頁〜第A311頁
【非特許文献8】Narayananら、J.Electrochem.Soc.,1991,第138巻、第2224頁〜第2229頁
【非特許文献9】Golovinら、J.Electrochem.Soc.,1992,第139巻、第5頁〜第10頁
【非特許文献10】Richardsonら、J.Electrochem.Soc.,1996,第143巻、第3992頁〜第3996頁
【非特許文献11】Chuら、Proceedings of the 12th Annual Battery Conference on Applications & Advances,1997、第133頁〜第134頁
【非特許文献12】Raoら、J.Electrochem.Soc.,1981、第128巻、第942頁〜第945頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、(1)低自己放電率、(2)高カソード利用率、(3)高充電−放電効率、および/または(4)高比容量のうちの1つを示すリチウム/硫黄電気化学セルのための電解質を提供する。この電解質は、約0.02m〜約2.0mの濃度の1種以上のN−O化合物を含む。驚くべきことに、本発明のN−O電解質添加剤を含むLi/S電気化学セルの例示的実施形態は、セル構成要素とアノードのリチウム金属との低い反応速度、改善された放電容量、および高充電−放電効率を示す。
【0020】
本発明はまた、上記の電解質を含む電気化学セルおよびバッテリー、改善された充電/放電効率を有するバッテリー、ならびに上記電解質を含み、そして/または改善された充電/放電効率を有するセルまたはバッテリーを充電する方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つの局面は、(a)リチウムを含むアノード;(b)電気活性硫黄含有材料を含むカソード;および(c)非水性電解質を含む電気化学セルを提供し、ここで、この電解質は、(i)1種以上の非水性溶媒;および(ii)1種以上のN−O添加剤を含む。
【0022】
液体電解質リチウム/硫黄セルは、代表的に、リチウムを含むアノード、電気活性硫黄含有材料を含むカソード、非水性電解質、およびアノードとカソードとの間に挟まれたセパレーターを備える(例えば、Gorkovenkoらに対する米国特許第6,210,831号、およびMukherjeeらに対する米国特許第5,919,587号に記載され、これらそれぞれの開示は、本明細書中に参考として援用される)。本発明に従う好ましいアノード、カソード、セパレーター、電解質、および電気化学セルの電解質添加剤の説明は、以下である。
【0023】
(アノード)
アノードは、所定の電気化学セルでの使用に適し、所定のカソードを備える任意の構造であり得る。本発明のアノードについての適切なアノード活性材料(リチウムを含む)としては、リチウム金属(例えば、リチウム箔および基材上に堆積されたリチウム(例えば、プラスチックフィルム))、およびリチウム合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金およびリチウム−スズ合金)が挙げられるが、これらに限定されない。Skotheimらに対する米国特許出願番号09/721,578(リチウムアノードを記載する開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載される多層コーティングを備えるリチウムアノードもまた使用され得る。
【0024】
(カソード活性層)
本発明に従うセルのカソードは、電気活性硫黄含有材料を含むカソード活性層を備える。好ましいカソード活性層は、電気活性硫黄含有材料を含む任意のカソード構造が使用され得るものの、複合材カソードを形成するために、基材(例えば、集電装置)上にコーティングされる。用語「電気活性硫黄含有材料」は、本明細書中に使用される場合、任意の形態で元素状硫黄を含むカソード活性材料に関し、ここで、電気化学活性は、硫黄−硫黄共有結合を切断または形成することを含む。適切な電気活性硫黄含有材料の例としては、高分子であっても高分子でなくてもよい、硫黄原子および炭素原子の両方を含む元素状硫黄および有機材料が挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機材料としては、ヘテロ原子、伝導性ポリマーセグメント、複合材、および伝導性ポリマーをさらに含む材料が挙げられる。
【0025】
1つの実施形態において、電気活性硫黄含有材料は、元素状硫黄を含む。別の実施形態において、電気活性硫黄含有材料は、元素状硫黄および硫黄含有ポリマーの混合物を含む。
【0026】
適切な硫黄含有有機ポリマーとしては、Skotheimらに対する米国特許第5,601,947号;同第5,690,702号;同第5,529,860号;および同第6,117,590号;ならびにGorkovenkoらに対する米国特許第6,201,100号(全て同一の譲受人であり、全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
b.本発明の電気活性硫黄含有カソードは、電気活性金属カルコゲニド、電気活性伝導性ポリマー、およびこれらの組み合わせ(例えば、Mukherjeeらに対する米国特許第5,919,587号、およびGorkovenkoらに対する米国特許第6,201,100号に記載され、硫黄含有カソードを記載するこれらのそれぞれの開示は、本明細書中に参考として援用される)をさらに含み得る。
【0028】
カソード活性層は、さらに、例えば、Geronovらに対する米国特許第6,194,099号、およびGorkovenkoらに対する米国特許第6,210,831号(硫黄含有カソードを記載するこれらのそれぞれの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載される向上した電子伝導性を提供するために1つ以上の伝導性フィラーを備え得る。カソード活性層はまた、結合剤を含み得る。結合剤材料の選択は、非常に幅広くあり得る。有用な結合剤は、バッテリー電極複合材の処理を容易にし得る材料(通常、高分子)であり、電極作製の分野の当業者に公知である。
【0029】
カソード活性層は、さらに、本発明の1種以上のN−O添加剤を含み得る。
【0030】
(セパレーター)
本発明の電気化学セルは、セパレーターが任意であるものの、カソードとアノードとの間に挟まれたセパレーターをさらに含み得る。代表的に、セパレーターは、アノードとカソードとを互いに分離または絶縁し、アノードとカソードとの間のセパレーターを通るイオンの輸送を可能にする多孔性の非伝導性または絶縁性材料である。
【0031】
種々のセパレーター材料は、当該分野で公知である。適切な固体多孔性セパレーター材料の例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ガラス繊維濾紙、およびセラミック材料が挙げられるが、これらに限定されない。本発明での使用のために適切なセパレーターおよびセパレーター材料のさらなる例は、Carlsonらによる米国特許第6,153,337号(セパレーターの構造およびセパレーター材料のこの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、独立(free standing)フィルムとして、または電極の1つの上での直接的なコーティング適用による、のいずれかで提供され得る、微細孔偽ベーマイト(pseudo−boehmite)層を備えるものである。本発明の添加剤は、セル組み立ての間にセパレーターに添加され得るか、またはコーティングプロセスで組み込まれ得る。幅広い範囲の厚みのセパレーターは、例えば、約5μm〜約50μm、好ましくは、約5μm〜約25μmで使用され得る。
【0032】
(非水性電解質)
電気化学セルにおいて使用される電解質は、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能し、固体電解質およびゲル電解質の場合において、これらの材料は、さらに、アノードとカソードとの間のセパレーター材料として機能する。イオンを保存および輸送を可能にする任意の液体材料、固体材料またはゲル材料は、この材料がアノードおよびカソードに関して実質的に電気化学的および化学的に非反応性であり、そしてその材料がアノードとカソードとの間でリチウムイオンの輸送を容易にする限り、本発明における電解質として使用され得る。電解質はまた、アノードとカソードとの間での短絡を妨げるために電気的に非伝導性でなければならない。
【0033】
代表的に、電解質は、イオン伝導性を提供するための1種以上のイオン電解質塩および1種以上の非水性液体電解質溶媒、ゲルポリマー材料、または固体ポリマー材料を含む。本発明における使用のために適切な非水性電解質としては、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質からなる群より選択される1種以上の材料を含む有機電解質が挙げられるが、これらに限定されない。リチウムバッテリーのための非水性電解質の例は、Dominey in Lithium Batteries,New Materials,Developments and Perspectives,Chapter 4,pp.137−165,Elsevier,Amsterdam(1994)によって記載され、ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質の例は、Alamgirら、Lithium Batteries,New Materials,Developments and Perspectives,Chapter 3,pp.93−136,Elsevier,Amsterdam(1994)(このそれぞれの開示は、本明細書中に参考として援用される)によって記載される。
【0034】
本発明に従う非水性電解質における使用のための有機溶媒としては、アセタール、ケタール、スルホン、アクリルエーテル、環式エーテル、グリム、ポリエーテル、ジオキソラン、上記の置換形態、およびこれらの混合物のようなファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
使用され得る非環式エーテルの例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、および1,3−ジメトキシプロパンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
使用され得る環式エーテルの例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、およびトリオキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
使用され得るポリエーテルの例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、より高次のグリム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびブチレングリコールエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
使用され得るスルホンの例としては、スルホラン、3−メチルスルホラン、および3−スルホレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
特定のセルの溶媒の特定の選択は、いくつかの因子のうちの1つ以上(アノードおよびカソードの組成、およびカソードの電気活性硫黄含有材料の放電の間に生成されるアニオンのリチウム塩の溶解度)に依存する。単一溶媒が使用され得るものの、非環式エーテル、グリムおよび関連するポリエーテル、ならびに環式エーテル(例えば、1,3−ジオキソラン)から選択される2つ以上の溶媒を含む溶媒混合物が好ましい。溶媒の好ましい混合物としては、1,3−ジオキソランおよびジメトキシエタン、1,3−ジオキソランおよびジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソランおよびトリエチレングリコールジメチルエーテル、および1,3−ジオキソランおよびスルホランが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい2成分混合物中の2つの溶媒の重量比は、約5:95〜95:5で種々であり得る。ジオキソランを含む混合物が好ましい。40重量%を超えるジオキソランを含む混合物が最も好ましい。
【0040】
イオン性電解質リチウム塩は、イオン伝導性を増加させるための電解質に添加され得る。本発明における使用のためのイオン性電解質リチウム塩の例としては、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO、LiAsF、LiSOCF、LiSOCH、LiBF、LiB(Ph)、LiPF、LiC(SOCF、およびLiN(SOCFのうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいイオン性電解質リチウム塩は、LiSCN、LiSOCF、およびLiN(SOCFである。溶媒中のイオン性リチウム塩の濃度の範囲は、例えば、約0.2m〜約2.0mで使用され得る(mは、1kgの溶媒当たりのモル)。好ましい濃度は、約0.5m〜約1.5mである。溶媒に対するイオンリチウム塩の添加は、Li/Sセルの放電において、形成される硫化リチウムまたはポリスルフィドは、代表的に、電解質へのイオン伝導性を提供し、これは、イオンリチウム塩の添加を不必要にし得る点で任意である。
【0041】
さらに、本発明のイオン性N−O添加剤が、例えば、無機ニトレート、有機ニトレート、または無機ニトライトである場合、さらなるイオン性リチウム電解質塩が必要でない電解質に対するイオン性伝導性を提供し得る。
【0042】
(添加剤)
本発明の電解質における添加剤として使用するためのN−O化合物としては、無機ニトレート、有機ニトレート、無機ニトライト、有機ニトライト、有機ニトロ化合物、および他の有機N−O化合物のようなファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
使用され得る無機ニトレートの例としては、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸バリウム、および硝酸アンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
使用され得る有機ニトレートの例としては、ジアルキルイミダゾリウムニトレート、硝酸グアニジン、硝酸イミダゾリウムおよび硝酸ピリジニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
使用され得る無機ニトライトの例としては、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸セシウム、および亜硝酸アンモニウムが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0046】
使用され得る有機ニトライトの例としては、亜硝酸エチル、亜硝酸プロピル、亜硝酸ブチル、亜硝酸ペンチル、および亜硝酸オクチルが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0047】
使用され得る有機ニトロ化合物の例としては、ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、およびジアルキルイミアゾリウム挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0048】
使用され得る他の有機N−O化合物の例としては、ピリジンN−オキシド、アルキルピリジンN−オキシド、およびテトラメチルピペリジンN−オキシ(TEMPO)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0049】
電解質中のN−O添加剤の濃度は、約0.02m〜約2.0mである。好ましい濃度は、約0.1m〜約1.5mである。最も好ましい濃度は、0.2m〜1.0mである。添加されるリチウム塩を含まない実施形態において使用される場合、イオン性N−O添加剤の濃度は、約0.2m〜約2.0mで変動し得る。
【0050】
作製の間にリチウム/硫黄セルに添加される電解質中にN−O添加剤を組み込むことが好ましいが、N−O添加剤は、最初に、電解質に入り得る他のセル成分の一部としてセル内に導入され得る。N−O添加剤は、液体電解質、ゲル電解質、または固体ポリマー電解質中に組み込まれ得る。N−O添加剤は、十分な濃度で電解質に入る様式で含まれる限り、カソード処方物内に組み込まれ得るか、または作製プロセス中にセパレーター内に組み込まれ得る。従って、セルの放電および充電の間、カソード処方物またはセパレーター内に組み込まれるN−O添加剤は、電解質中に溶解する。
【0051】
(利用)
本明細書中で使用される場合、「利用」とは、電極中の全ての元素状硫黄が完全に利用される場合、電極が1gの硫黄当たり1675mAhを生じることを推定する。すなわち、100%の利用は、セル中の硫黄1g当たり1675mAhに対応し、90%利用は、1507.5mAh/gに対応し、60%利用は、1005mAh/gに対応し、そして50%利用は、セル中の硫黄1g当たり837.5mAhに対応する。
【0052】
硫黄利用は、とりわけ、セルに適用される放電電流とともに変化する。低放電率での硫黄利用は、高放電率におけるよりも高く、例えば、一次電池についてPeledら、米国特許第4,410,609号に記載され、二次電池についてChuら、米国特許第6,030,720号およびCheonら、J.Electrochem.Soc.,2003,vol.150,pp.A800−A805に記載される。
【0053】
代表的に、本発明の二次電池は、少なくとも10回、好ましくは、少なくとも20回、より好ましくは、少なくとも50回サイクルし、各サイクルは、硫黄1g当たり340mAの中程度の高い放電電流(実施例の846cmセルについて0.41mA/cm)で放電される場合、少なくとも約60%の硫黄利用(サイクルの放電相の間、1gの硫黄当たり1675mAhの出力のフラクションとして測定される)を有する。この放電率は、本発明のセル(例えば、実施例2〜12のセル)について4時間未満の好ましい放電時間を生じる。実施例27および表4に示されるように、本発明のセルは、3600mA(3495mA/g)(4.26mA/cmに等しい)までの非常に高い放電電流で65%を越える硫黄利用を行う。この放電電流において、これらのセルは、20分未満で完全に放電される(3Cレート(rate))。
【0054】
本発明の添加剤は、実施例に記載される試験において、約20%以上、利用を増加させる。代表的に、利用における増加は、放電率、N−O添加剤組成、およびN−O添加剤濃度に依存して、約20%〜約35%より上である。例えば、実施例2のセルの5回のサイクルにおける放電容量は、比較例1のセルと比較して、36%の利用の増加を示す(1226mAh/g 対 901mAh/g)。実施例9、実施例13、および実施例19のセルは、比較例1のセルと比較して、それぞれ、24%、23%、および32%の利用における増加を示す。
【0055】
本発明の添加剤は、ある範囲の添加剤濃度について硫黄利用を向上させる。低濃度(例えば、0.1m未満)が使用され得るが、向上した硫黄利用は、低濃度において限られた回数のサイクルについて得られるのみであり得る。
【0056】
(自己放電)
バッテリーが周囲条件下における長期保管の間、それらの能力を保持することが非常に望ましい。しかし、バッテリー保管が代表的に電荷保持の損失(しばしば、自己放電と呼ばれる)を導く。「自己放電」は、本明細書中で使用される場合、N回目のサイクルでのセルの放電容量と充電状態での保管期間後の(N+1)回目のサイクルでの放電容量との間の違いに関係する:
自己放電(%)=(C−CN+1)/C×100%
ここで、Cは、セルのN回目のサイクルの放電容量(mAh)であり、CN+1は、保管期間後のセルの(N+1)回目のサイクルの放電容量(mAh)である。
【0057】
Linden、Handbook of Batteries,2nd Edition,pp.3.18−3.19,McGraw Hill,New York,1995によって要約されるように、電荷保持に影響する因子としては、例えば、温度のような保管条件、保管の長さ、セル設計、電気化学システム、および放電条件が挙げられる。
【0058】
Li/Sセルにおける保管の間の自己放電を減少させるための1つのアプローチは、Mikhaylikに対する米国特許第6,436,583号に記載され、ここで、電解質は、一種以上の有機スルファイトを含む。自己放電抑制有機スルファイトは、新しいセルにおいて特に有効であるが、セル放電の間に生成されるポリスルフィドとの反応によって除去され得る。
【0059】
表1に要約されるように、本明細書中に記載される例の自己放電は、5回目の放電サイクル(充電の2分後)での放電容量と、約25℃で24時間の完全充電状態での保管後に測定された6回目のサイクルでの放電容量を比較することによって決定された。添加剤無しでの比較例1のセルについて、自己放電は、(901−775)/901×100%=14%である。実施例4のセルについて、自己放電は、(1155−1109)/1155×100%=4%である。実施例13のセルについて、自己放電は、(1107−1023)/1107×100%=7.6%である。さらに、N−O添加剤の含有に起因する低下した自己放電の結果として、本発明のセルが保管された後の硫黄利用は、高いままであったことが表1から分かる。保管後、実施例4、5、6、および8のセルは、少なくとも60%の硫黄利用を示したが、比較例1のセルは、46%のみの硫黄利用を示した。
【0060】
自己放電はまた、保管の間の完全充電セルの開放セル電圧(OCV)を測定することによって測定され得る。OCVは、容量が自己放電に起因して減少するにつれて、減少する。図3に示されるように、本発明の実施例16のセルは、34回の放電−充電サイクル後のに保管された場合、完全充電状態における30日間の保管の際にOCVにおいてほとんど変化がないことを示し、これは、非常に低い自己放電率を示す。また図3に示されるように、本発明の添加剤の無いセルは、同じ条件下で保管された場合、20時間未満でOCVにおいて迅速な変化を示し、これは、高い自己放電率を示す。
【0061】
(充電−放電効率)
用語「充電−放電効率」は、本明細書中で使用される場合、放電において得られる容量を、先の充電工程で供給された容量で割った比を示す。言い換えると、充電−放電効率は、Ceff=Dn+1/C×100%であり、ここで、Dは、放電容量であり、Cは、充電容量であり、そしてnは、サイクル数である。本発明の添加剤は、Li/Sセルの充電−放電効率を増加する。例えば、添加剤が硝酸リチウム(LiNO)である実施例4のセルは、表1に示されるように、98.8%の充電−放電効率を示すが、添加剤の無い比較例1のセルは、66.3%のもの充電−放電効率を示す(ともに、4回目の充電サイクルおよび5回目の放電サイクルで測定した)。高い充電−放電効率は、図4に示されるようにさらなるサイクルの間で維持される。
【0062】
任意の特定の理論によって束縛されないものの、優れた充電−放電効率は、とりわけ以下の理由のために達成されることが考えられる。充電プロセスの間、Li/Sセルにおいて、スルフィドイオンまたは低次の鎖のポリスルフィドは、カソードにおいてより高次のポリスルフィドに酸化され、これは、電解質中において可溶性である。これらの高次のポリスルフィドは、アノードに拡散し、ここで、これらは、より低次のポリスルフィドに還元され、これは次いで、カソードに拡散して戻り、再酸化される。この酸化還元シャトルによって、セルにおける連続的な電流が生じ、セル保管能力の低下および低下した充電−放電効率が生じる。類似の酸化還元プロセスが自己放電の間に生じる。本発明の添加剤は、Li/Sセルにおけるこのシャトルを本質的に不活性化すると考えられ、これは、かなり高い充電−放電効率を生じる。
【0063】
(電圧による充電終了)
再充電可能セルの充電プロセスにおいて、過充電は、セルに対する損傷および時間の浪費があるので、セルを完全充電する場合、決定し得ることが重要である。セルは、完全充電に達する点において温度または電圧における鋭い変化を示し得る。例えば、充電の終わりにおいて、リチウムイオンセルは、Golovinら、J.Electrochem.Soc.,1992,vol.139,pp5−10によって記載されるように、電圧の鋭い増加を示す。対照的に、図5Aに示されるように、N−O添加剤を欠いている比較例1のLi/Sセルは、約2.3ボルトでプラトーに達する電圧プロフィールを示し、延期された充電とともに増加しない。この曲線は、例えば、Golovinらによって記載されるように、酸化還元シャトル添加剤を添加された充電下のリチウムイオンセルについての電圧曲線の形状に似ている。図5C−Fにおいて示されるように、N−O添加剤を含む本発明のセル(実施例2、3、4および5)は、セルが完全容量に達する場合に電圧の鋭い増加を示す一定電流での充電の際の電圧プロフィールを示す。セルがN−O添加剤を含む本発明のセルにおいて完全容量に達するときの電圧の迅速な増加は、充電プロセスを終わらせるために使用され得る。例えば、電圧の迅速な増加のこの領域内の所定の電圧において、充電プロセスは、停止され得る。
【0064】
本発明の1つの方法において、Li/Sセルは、一定電流で電気エネルギーを供給すること;(b)充電の間、電圧をモニタリングすること;および(c)モニターされた電圧が約2.35ボルト〜約2.7ボルトの範囲である場合、充電を終了することによって充電される。この方法の1つの実施形態において、充電は、約2.4ボルト〜約2.6ボルトの範囲で終了する。この方法のさらなる実施形態において、充電は、約2.5ボルトの電圧で終了する。代表的に、充電は、約1〜6時間、セルを充電するために一定電流を供給することによって実行される。実施例のセルについて、電流は、約200mA〜約1200mA、または約0.24mA/cm〜約1.44mA/cmである。電流の供給は、代表的に、1〜5%の範囲で正確に提供される;すなわち、電流は、±1〜5%で変動し得る。電圧は、代表的に、とりわけ、例えば、電流の大きさおよび充電の長さに依存して、約10秒〜1秒未満で変化する間隔のモニタリング工程でモニターされる。代替の充電終了方法において、セルは、所定の電圧まで一定電流で充電され;充電電流密度が約0.025mA/cm〜約0.01mA/cmの範囲の値で減少するまで、この電圧で充電が続けられる。本発明の1つの方法において、Li/Sセルは、(a)電気エネルギーを一定電流で供給すること;(b)充電の間、電圧をモニタリングすること;(c)モニターされた電圧が約2.5ボルトになるまで一定電流で電気エネルギーを供給すること;(d)充電電流密度をモニタリングしながら約2.5ボルトでセル電圧を保持すること;および(e)電流密度が0.025mA/cm未満になる場合、充電を終了することによって充電される。この方法の別の実施形態において、充電は、0.012mA/cm未満の電流密度で終了する。0.025mA/cmの電流密度は、実施例のセルにおいて、1gの硫黄当たり21mAの電流に等しく、0.012mA/cmの電流密度は、1gの硫黄当たり10mAの電流に等しい。
【0065】
充電中断を決定するための電圧の使用が充電終了のために好ましいものの、デルタ電圧/デルタ時間(dV/dt)もまた使用され得る。例えば、充電が進むにつれて、dV/dtは、迅速に完全充電で増加し、この迅速な増加点は、充電終了のために適切なエレクトロニクスを用いて使用され得る。図28に示されるように、dV/dtの大きさは、約2.5Vにおいて8倍より大きく増加し、2.5Vより上においてさらなるオーダーの大きさで増加する。本発明の別の方法において、Li/Sセルは、(a)一定電流で電気エネルギーを供給すること;(b)充電の間、電圧をモニタリングすること;(c)時間に伴う電圧の変化の速度(dV/dt)を計算すること;および(d)dV/dtの値が5倍より大きく増加する場合、充電を終了することによって充電される。別の実施形態において、充電は、dV/dtの値が10倍より大きく増加する場合、終了する。N−O添加剤を欠いているLi/Sセルの平坦電圧プロフィールで、セルの過充電が、不変に生じ、さらに、より複雑な充電終了方法(これは、より信頼性が無く、より非効率的であり、かなり正確でなく、セルに損傷を与え得、より高価である)を必要とする。
【0066】
本発明の添加剤は、約0.1m〜約2.0mの濃度範囲にわたって完全充電の点における電圧において鋭い増加で充電プロフィールを提供することにおいて有効である。1つの実施形態において、本発明の添加剤の濃度は、約0.1m〜約1.0mである。好ましい実施形態において、本発明の添加剤の濃度は、0.1m〜0.5mである。低濃度(例えば、0.1m未満)が使用され得るが、完全充電の点における電圧の鋭い増加を有する充電プロフィールは、低い濃度での制限された回数のサイクルについて得られ得るのみであり得る。
【0067】
任意の特定の理論によって束縛されないものの、本発明の添加剤が、Li/Sセルにおけるシャトルを本質的に不活性化(停止)させ、これは、添加剤の無いLi/Sセルの平坦電圧充電プロフィールを排除し、完全充電の点での鋭い電圧増加に代えることが考えられる。
【0068】
(セルおよびバッテリー)
本発明のセルは、当業者に公知の任意の適切な様式で種々のサイズおよび構成で作製され得る。これらのバッテリーの設計の構成としては、平面状、プリズム状、ジェリーロール状、wフォルド(w−fold)状、積み重ね状(stacked)などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法が薄膜電極とともに使用するのに特に適しているものの、これらは、それにもかかわらず、薄膜設計において有利であり得る。あるいは、Spillmanらに対する米国特許第5,935,724号および同第5,935,728号に記載されるような、低表面積領域および高表面積領域の両方を含む設計が、ジェリーロール状および他の構成に組み込まれ得る。
【0069】
薄膜電極は、プリズム状設計に構成され得る。重量を節約するために、薄膜バリア材料(例えば、箔)は、特に好ましい。例えば、Thibaultらに対する米国特許第6,190,426号は、シールされたケーシングのための適切なバリア材料、電解質でセルを満たす方法、およびケーシングをシールする方法が記載されるプリズム状セルを調製するための方法を記載する(この開示は、本明細書中において参考として援用される)。プリズム設計に構成される薄膜電極を使用する場合、電極が寸法安定性を有することが重要である。
【0070】
バッテリーは、任意のサイズまたは形状であり得、本発明に従って一種以上のセルを含み得る。例えば、Thibaultらに対する米国特許第6,190,426号に記載される一種以上のプリズム状セルが、バッテリーを形成するために接続され得る。一種以上のセルを含むバッテリーが、例えば、Jacobsらに対する米国特許第6,296,967号に記載されるように、剛性のケーシング内に入れられ得る。
【実施例】
【0071】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例において記載され、これらは、説明のために提供され、制限のためではない。
【0072】
以下の実施例および比較例において、セルは、以下の方法によって調製された。このカソードは、イソプロパノール中に分散された73重量部の元素状硫黄、22重量部の伝導性カーボン、および5重量部のポリエチレン粉末の混合物を、6ミクロンの厚みの伝導性カーボンコーティングアルミニウム/ポリエステル(PET)フィルム基材上にコーティングすることによって調製された。乾燥後、コーティングされたカソード活性層の厚みは、約28〜29ミクロンであった。アノードは、約50ミクロンの厚みのリチウム箔であった。使用された多孔性セパレーターは、9ミクロンポリオレフィンセパレーターであった。上記構成要素を、カソード/セパレータ/アノードの層状構造に組み立て、巻き付け圧縮し、液体電解質(約4.7g)を有する箔ポーチに配置した。プリズム状セルは、約846cmの電極面積を有した。セルの硫黄含有量は、1.03gであり、1725mAh容量(1675mAh/g×1.03g)に等しい。箔ポーチにおいてセルをシールした後、それを24時間保管し、次いで再びシールした。セルの放電−充電サイクルを、350mA/200mAのそれぞれで、1.8Vの電圧での放電中断および2.5Vの充電中断(または、それが最初に達成された場合、7時間)で行った。350mAの放電率は、このセルについて0.414mA/cm(350mA/846cm)であり、そして200mAでの充電率は、0.236mA/cm(200mA/846cm)である。他に記載しない限り、各充電工程および放電工程の後に停止が2分であった。セル評価についての温度は、22℃と25℃との間であった。以下の実施例および比較例は、これらのLi/Sセルにおいて評価された電解質を記載する。
【0073】
(比較例1)
電解質は、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(リチウムイミド)の50:50重量比の1,3−ジオキソラン(DOL)とジメトキシエタン(DME)との混合物中の0.5m溶液であった。5回目のサイクルの放電容量は、928mAhであり、比容量は、901mAh/gであった。引き続く充電サイクル(5回目の充電サイクル)の後に、セルは、放電(6回目の放電サイクル)の前に、周囲温度(25℃)で24時間休止された。6回目のサイクルの放電容量は、799mAhであり、比容量は、1gの硫黄当たり775mAhであった。充電工程および放電工程は、それぞれの後に通常2分の休止で再開した。7回目のサイクルの放電容量は、933mAhであり、比容量は、1gの硫黄当たり906mAhであった。充電−放電サイクルは、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで、続けられ、これは、15サイクルであり、14.1Ahの累積容量であった。
【0074】
(実施例1)
電解質は、0.002mの濃度の硝酸リチウムが、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。言い換えると、DOL/DME溶媒1kg当たり0.002モルの硝酸リチウム(0.14g)が添加された(0.14mg/gの溶媒)。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、34サイクルであり、33.7Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に9サイクルを達成した。
【0075】
(実施例2)
電解質は、0.1mの濃度の硝酸リチウム(1gの溶媒当たり6.9mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh)に減少するまで続け、これは、33サイクルであり、37.1Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に25サイクルを達成した。
【0076】
(実施例3)
電解質は、0.2mの濃度の硝酸リチウム(1gの溶媒当たり13.8mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、46サイクルであり、51.6Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に39サイクルを達成した。
【0077】
(実施例4)
電解質は、0.4mの濃度の硝酸リチウム(1gの溶媒当たり27.6mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、63サイクルであり、69.2Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に50サイクルを達成した。
【0078】
(実施例5)
電解質は、1.55mの濃度の硝酸リチウム(1gの溶媒当たり107mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、102サイクルであり、105.8Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に70サイクルを達成した。
【0079】
(実施例6)
電解質は、50:50重量比のDOLとDMEとの混合物中のリチウムトリフルオロメチルスルホネート(リチウムトリフレート)の0.5m溶液中の0.4mの濃度の硝酸リチウム(1gの溶媒当たり27.6mg)を含むことによって作製された以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、54サイクルであり、56.6Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に35サイクルを達成した。
【0080】
(実施例7)
電解質は、約0.1mの濃度の硝酸カリウム(1gの溶媒当たり10mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、28サイクルであり、30.3Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に26サイクルを達成した。
【0081】
(実施例8)
電解質は、約0.1mの濃度の硝酸セシウム(1gの溶媒当たり19mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、23サイクルであり、24.8Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に22サイクルを達成した。
【0082】
(実施例9)
電解質は、0.013mの濃度の硝酸アンモニウム(1gの溶媒当たり1mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、44サイクルであり、45.3Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に19サイクルを達成した。
【0083】
(実施例10)
電解質は、0.02mの濃度の硝酸グアニジニウム(1gの溶媒当たり2.4mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、36サイクルであり、35.5Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に10サイクルを達成した。
【0084】
(実施例11)
電解質は、約0.1mの濃度の亜硝酸カリウム(KNO)(1gの溶媒当たり8mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、17サイクルであり、18.1Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に16サイクルを達成した。
【0085】
(実施例12)
電解質は、0.4mの濃度の3,4−ジニトロ−トルエン(1gの溶媒当たり73mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、39サイクルであり、38.8Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に13サイクルを達成した。
【0086】
(実施例13)
電解質は、0.4mの濃度のニトロメタン(1gの溶媒当たり24mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、39サイクルであり、41.6Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に28サイクルを達成した。
【0087】
(実施例14)
電解質は、0.02mの濃度のニトロメタン(1gの溶媒当たり1.2mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、23サイクルであり、22.2Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に1サイクルを達成した。
【0088】
(実施例15)
電解質は、0.5mの濃度の硝酸リチウムが、電解質溶液としてのリチウムイミドを含まないDOL/DME混合物(50/50(重量による))中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、71サイクルであり、76.1Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に47サイクルを達成した。
【0089】
(実施例16)
電解質は、1.24mの濃度の硝酸リチウムが、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.77m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを15回の放電および充電サイクルの間、比較例1の手順によって実行した。15回目の充電サイクルの後に、セルを、16回目の放電サイクルの前に8日間、25℃で保管した。15回目のサイクルにおける放電容量は、1249mAh(1gの硫黄当たり1213mAhの比容量)であり、そして16回目のサイクルの放電容量は、1195mAh(1gの硫黄当たり1160mAhの比容量)であった。15回目のサイクルにおける硫黄利用は、72.4%であり、16回目のサイクルは、69.3%であった。8日の保管の間の自己放電は、(1249−1195)/1249×100%=4.3%であった。サイクリングを再開し、34回目の充電サイクル後に、セルは、30日間保管された。図3は、30日間の保管期間の間の開放セル電圧を示し、非常に小さな電圧変化を示す。
【0090】
(実施例17)
電解質は、0.4mの濃度の1−ニトロプロパン(1gの溶媒当たり35.6mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、30サイクルであり、30.2Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に17サイクルを達成した。
【0091】
(実施例18)
電解質は、0.09mの濃度のTEMPO(テトラメチルピペリジンN−オキシル)(1gの溶媒当たり14.0mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、19サイクルであり、17.8Ahの累積容量であった。
【0092】
(実施例19)
電解質は、0.12mの濃度の硝酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(1gの溶媒当たり20.8mg)が、50/50のDOLとDMEの混合物中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表2および3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、26サイクルであり、29.4Ahの累積容量であった。利用が60%(1gの硫黄当たり1005mAh)以下に落ちる前に25サイクルを達成した。
【0093】
【表1】

セルを、6回目の放電サイクルの前に25℃で24時間保管した。
【0094】
【表2】

(比較例2)
電解質は、0.25mの濃度のチオシアン酸リチウム(LiSCN)が、DOL中のリチウムイミドの0.5m電解質溶液中に含まれた以外、比較例1の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、18サイクルであり、17.4Ahの累積容量であった。
【0095】
(実施例20)
電解質は、0.25mの濃度の硝酸リチウム(1gの溶媒当たり17.3mg)が、電解質溶液中に含まれた以外、比較例2の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、56サイクルであり、63Ahの累積容量であった。
【0096】
(実施例21)
電解質は、0.45mの濃度の硝酸リチウム(1gの溶媒当たり31.1mg)が、電解質溶液中に含まれた以外、比較例2の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、52サイクルであり、57.4Ahの累積容量であった。
【0097】
(実施例22)
電解質は、電解質溶媒が、DOLの代わりに、80/20(重量による)のDOLとDMEとの混合物であった以外、実施例20の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、37サイクルであり、40Ahの累積容量であった。
【0098】
(実施例23)
電解質は、電解質溶媒が、DOLの代わりに、80/20(重量による)のDOLとDMEとの混合物であった以外、実施例21の電解質であった。セルのサイクリングを比較例1の手順によって実行し、結果を表3に示す。充電−放電サイクルを、放電容量が900mAh(1gの硫黄当たり874mAh;52%利用)に減少するまで続け、これは、63サイクルであり、68.6Ahの累積容量であった。
【0099】
【表3】

(実施例24)
電解質は、電解質溶液が、ジオキソラン/トリグリム混合物(50/50(重量による))の混合物中の3.6m硝酸リチウム溶液であった以外、比較例1の電解質であった。セルの放電−充電サイクリングを50mA/50mAそれぞれで実行し、1.2Vの電圧での放電中断および2.5Vの充電中断を伴った。5回目のサイクルにおける放電容量は、1725mAhであり、100%の利用を示す、1gの硫黄当たり1675mAhの比容量であった。
【0100】
(実施例25)
電解質は、電解質溶液が、ジオキソラン/ジグリム混合物(50/50(重量による))の混合物中の2.7m硝酸リチウム溶液であった以外、比較例1の電解質であった。セルの放電−充電サイクリングを50mA/50mAそれぞれで実行し、1.2Vの電圧での放電中断および2.5Vの充電中断を伴った。5回目のサイクルにおける放電容量は、1520mAhであり、88.7%の利用を示す、1gの硫黄当たり1485mAhの比容量であった。
【0101】
(実施例26)
電解質は、電解質溶液が、ジオキソラン/ジメトキシエタン/トリグリム混合物(50/25/25(重量による))の混合物中の1.5m硝酸リチウム溶液であった以外、比較例1の電解質であった。セルの放電−充電サイクリングを350mA/200mAそれぞれで実行し、1.8Vの電圧での放電中断および2.5Vの充電中断を伴った。5回目のサイクルにおける放電容量は、1316mAhであり、76.3%の利用を示す、1gの硫黄当たり1278mAhの比容量であった。
【0102】
(実施例27)
電解質は、0.75mの濃度の硝酸リチウムが、電解質として50/50のDOLとDMEとの混合物中の0.75mリチウムイミド溶液に含まれたこと以外、比較例1の電解質であった。比較例1の方法によって、5回の放電−充電サイクルを、350mA/200mAそれぞれで実行し、1.8Vの電圧での放電中断および2.5Vの充電中断を伴った。引き続く充電サイクルを2.5Vの中断まで、200mAの充電電流で実行した。放電サイクル6〜13を、表4に示すように、100mA(サイクル6)から8400mA(サイクル13)に放電電流を増加させて実行した。硫黄利用は、3600mA(3.6A)、4.26mA/cmの電流密度の非常に高い放電率でさせ、65%過剰で高いままであった。
【0103】
(実施例28)
電解質は、0.75mの濃度の硝酸リチウムが、電解質として50/50のDOLとDMEとの混合物中の0.75mリチウムイミド溶液に含まれたこと以外、比較例1の電解質であった。比較例1の方法によって、5回の放電−充電サイクルを、350mA/200mAそれぞれで実行し、1.8Vの電圧での放電中断および2.5Vの充電中断を伴った。6回目の充電サイクルにおいて、200mAの充電電流で、電圧を5分毎に測定し、時間に伴う電圧の変化(dV/dt)(ボルト/分)を、それぞれ5分の間隔で計算した。セル電圧が約2.4Vに達するまでのdV/dtの値は、0.002V/分未満であった。セルが約2.5Vに達した場合、dV/dtの値は、0.017V/分に増加し、2.5Vより上では、dV/dtは、約0.18V/分より上に増加した。
【0104】
【表4】

(比較例3)
電解質は、純粋なDOLであった。セルを1時間、20オームの一定外部抵抗に放電させた。次いで、セルのサイクリングを、比較例1の手順によって実行した。5回目のサイクルでの放電容量は、845mAhであり、比容量は、820mAh/gであり、49%の利用を示す。5回目のサイクルの充電−放電効率は、60%であった。セルは、2.5Vの充電電圧中断に達しなかった。
【0105】
(実施例29)
電解質は、0.1mの濃度の硝酸ピリジニウムがこの溶液に含まれたこと以外、比較例3の電解質であった。セルの試験を、比較例3の手順によって実行した。5回目のサイクルでの放電容量は、1074mAhであり、比容量は、1042mAh/gであり、62.2%の利用を示す。5回目のサイクルの充電−放電効率は、95.2%であった。セルは、2.5Vの充電電圧中断に達した。
【0106】
本発明が詳細に、特定の実施形態およびその一般的な実施形態を参照して記載されているが、種々の変更および改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされ得ることが明らかである。従って、本発明は、本明細書中に開示される実施形態に制限されず、代わりに、添付の特許請求の範囲およびその法律上の均等物に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、実施例4のセル(白四角) 対 比較例1のセル(添加剤無し)(黒丸)の放電を示す。
【図2】図2は、100%硫黄利用を示す、実施例24のセルの放電を示す。
【図3】図3は、添加剤LiNOを有するセル(B)(実施例16)および添加剤を有さないセル(A)についての開放セル電圧(OCV)を示す。
【図4】図4は、充電−放電効率 対 サイクル数を示す:A 比較例1(添加剤無し)のセルについて;B 実施例1のセルについて;C 実施例12のセルについて;D 実施例4のセルについて;およびE 実施例5のセルについて。
【図5】図5は、5回目の充電サイクルにおける充電プロフィールを示す;A 比較例1(添加剤無し)のセルについて;B 実施例1のセル(0.002m LiNO)について;C 実施例2のセル(0.1m LiNO)について;D 実施例3のセル(0.2m LiNO)について;E 実施例4のセル(0.4m LiNO)について;およびF 実施例5のセル(1.55m LiNO)について。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルであって、以下:
(a)電気活性硫黄含有材料を含むカソード;
(b)リチウムを含むアノード;および
(c)非水性電解質、
を含み、ここで、該セルが、少なくとも60%の電気活性硫黄含有材料の利用を示し、そして約0.2mA/cmの充電率および約0.4mA/cmの放電率の少なくとも10サイクルにわたって少なくとも80%の充電−放電効率を示す、
セル。
【請求項2】
前記電解質が、以下:
(i)非環式エーテル、環式エーテル、ポリエーテル、およびスルホンからなる群より選択される一種以上の非水性溶媒;および
(ii)一種以上のN−O添加剤
を含む、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記電解質が、一種以上のリチウム塩をさらに含む、請求項2に記載のセル。
【請求項4】
少なくとも90%の充電−放電効率を示す、請求項1に記載のセル。
【請求項5】
約0.4mA/cmの放電率の少なくとも20サイクルにわたって少なくとも60%の電気活性硫黄含有材料の利用を示す、請求項1に記載のセル。
【請求項6】
約0.4mA/cmの放電率の少なくとも50サイクルにわたって少なくとも60%の電気活性硫黄含有材料の利用を示す、請求項1に記載のセル。
【請求項7】
約0.4mA/cmの放電率において少なくとも90%の充電−放電効率を示す、請求項6に記載のセル。
【請求項8】
約2.8mA/cmの放電率の少なくとも20サイクルにわたって少なくとも60%の電気活性硫黄含有材料の利用を示す、請求項3に記載のセル。
【請求項9】
前記一種以上のN−O添加剤が、無機ニトレート、有機ニトレート、および無機ニトライトからなる群の一種以上より選択される、請求項2に記載のセル。
【請求項10】
前記一種以上のN−O添加剤が、無機ニトレート、有機ニトレート、無機ニトライト、および有機ニトロ化合物からなる群の一種以上より選択される、請求項3に記載のセル。
【請求項11】
前記無機ニトレートが、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸バリウム、および硝酸アンモニウムからなる群の一種以上より選択される、請求項10に記載のセル。
【請求項12】
前記無機ニトライトが、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸セシウム、および亜硝酸アンモニウムからなる群の一種以上より選択される、請求項10に記載のセル。
【請求項13】
前記有機ニトレートが、硝酸グアニジン、硝酸イミダゾリウム、および硝酸ピリジニウムからなる群の一種以上より選択される、請求項3に記載のセル。
【請求項14】
前記有機ニトロ化合物が、ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、ニトロピリジン、ニトロブタン、およびジアルキルイミアゾリウムからなる群の一種以上より選択される、請求項10に記載のセル。
【請求項15】
前記一種以上のリチウム塩が、LiSCN、LiCFSO、およびLiN(CFSOからなる群の一種以上より選択される、請求項3に記載のセル。
【請求項16】
前記一種以上のリチウム塩が、LiSCNおよびLiN(CFSOからなり、前記N−O添加剤が硝酸リチウムを含む、請求項3に記載のセル。
【請求項17】
前記電解質中の一種以上のN−O添加剤の濃度が、約0.02m〜2.0mである、請求項2に記載のセル。
【請求項18】
前記電解質中の一種以上のN−O添加剤の濃度が、約0.1m〜1.5mである、請求項2に記載のセル。
【請求項19】
前記電解質中の一種以上のN−O添加剤の濃度が、約0.2m〜1.0mである、請求項2に記載のセル。
【請求項20】
前記電解質中の一種以上のリチウム塩の濃度が、約0.2m〜2.0mである、請求項2に記載のセル。
【請求項21】
前記電気活性硫黄含有材料が、元素状硫黄を含む、請求項1に記載のセル。
【請求項22】
前記アノードが、リチウム金属を含む、請求項1に記載のセル。
【請求項23】
前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレーターをさらに備える、請求項1に記載のセル。
【請求項24】
ケーシングおよび請求項1に記載の一種以上のセルを含む、バッテリー。
【請求項25】
前記一種以上のN−O添加剤が硝酸リチウムである、請求項2に記載のセル。
【請求項26】
前記非水性溶媒が、ジオキソランを含む、請求項2に記載のセル。
【請求項27】
前記一種以上の溶媒が、ジメトキシエタンおよびジオキソランからなる、請求項2に記載のセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−518230(P2007−518230A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547631(P2006−547631)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/000494
【国際公開番号】WO2005/069409
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506225927)サイオン パワー コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】