説明

リナロール合成酵素をコードするポリヌクレオチドおよびその用途

【課題】植物への芳香性の付与または芳香性の改変に利用できる、新たな遺伝子、より詳細には、リナロール合成酵素をコードするポリヌクレオチドおよびその用途を提供する。
【解決手段】ポリヌクレオチドは、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードする、特定の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。これらのポリヌクレオチドを植物体に導入することによって、前記植物体に芳香性を付与したり、または、前記植物体の芳香性を改変する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リナロール合成酵素をコードするポリヌクレオチドに関し、さらに、これを用いた形質転換体、植物体の芳香性の改変方法および芳香性改変植物体の製造方法等の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
花において、香りは、色および形と並ぶ花の魅力の1つである。特に、野生種には、香りを有するものが多いが、品種改良の過程において、色、形、耐病性および日持ち等が優先された結果、その代償に、本来の香りが弱くなったものや、香りを失ったものも多く存在する。香りの感じ方および嗜好には、個人差があり、また、栽培による香りのバラつきも大きいことから、色や形に比べて特にその取り扱いが難しい。この理由から、これまで、色および形と比較して、芳香性品種の育種についての試みは、ほとんど報告されていない。
【0003】
しかしながら、近年、ニーズの多様化に伴って、香りに対する理解および消費が高まってきており、香りは、生花における大きな魅力の一つとして捉えられている。また、香りは、人の感性にとって、重要な役割も有している。このような状況において、色、形および日持ち性に加えて、優れた芳香性を示す園芸植物は、高い商品価値を有することが期待され、その開発が望まれている。これまでに、ツバキやスイトピー、シクラメン等に関して、交雑育種による芳香性品種の開発が行われている。この場合、通常、片親には香りの強い野生種または比較的野生種に近い品種が使用されるが、これら野生種またはこれに近い品種は、一般に、園芸種に比べて花が小さく、花色も限られている。このため、得られる交雑種では、花の大きさが既存の品種よりも小さくなる傾向にあり、色のバリエーションも制限されるという問題があった。
【0004】
他方、花の香りは、多種類の香気成分の混合物であり(非特許文献1)、前記香気成分は、大きく、芳香族化合物、テルペノイド、脂肪族化合物、含窒素化合物等に分類される。花は、例えば、含有される香気成分の違いだけなく、含有される香気成分が同じであっても、その割合によって、香りの質が大きく変化する。このように、様々な香気成分がブレンドされることで、多様な花の香りが生まれている。中でも、リナロールは、バラおよびスズラン等の甘いフローラルな香りを有する花の多くに含まれている。
【0005】
また、これら植物の主要な香気成分であるリナロールは、花の香気成分としての利用に限定されず、例えば、これらの植物を原料とする食品、酒類等のフレーバーや、化粧品および香水に至る工業製品にまで、幅広く利用されている。
【0006】
前記リナロールの生合成経路は、植物の場合、細胞質に存在するメバロン酸(MVA)経路と、プラスチドに存在するメチルエリトリトール(MEP)経路の2種類が知られている。前記メバロン酸経路では、アセチルCoAが他の2分子のアセチルCoAと反応し、還元されて生じるメバロン酸を介して、モノテルペンが合成される。具体的には、メバロン酸が脱炭酸して、イソペンテニルピロリン酸(以下、IPPと表す)およびジメチルアリルピロリン酸(以下、DMAPPと表す)となり、これら2つが、テルペノイド芳香性化合物の基本構造であるイソプレン骨格の起源となる。一方、メチルエリトリトール経路では、3−ホスホグリセルアルデヒドとピルビン酸から、脱炭酸および異性化を経て生じる2−メチル−エリトリトール−4−リン酸(MEP)を介して、IPPとDMAPPが合成される。そして、ゲラニルピロリン酸合成酵素(以下、GPPSと表す)の作用により、DMAPPに、一分子のIPPが付加することで、ゲラニルピロリン酸(以下、GPPと表す)となり、GPPにリナロール合成酵素(以下、LISと表す)等のモノテルペン合成酵素が作用し、リナロールが生成する。
【0007】
前記LIS遺伝子は、以下に示すように、これまでに多数の植物から取得されている。前記LIS遺伝子は、例えば、Clarkia breweri由来(S)−LIS遺伝子(非特許文献2)、アルテミシア由来(3R)−LIS遺伝子(非特許文献3)、オウシュウトウヒ由来LIS遺伝子(非特許文献4)、ラベンダー由来(R)−LIS遺伝子(非特許文献5)、トマト由来(R)−LIS遺伝子(非特許文献6)、キンギョソウ由来NES/LIS遺伝子1,2(非特許文献7)、サルナシ由来LIS遺伝子(非特許文献8)、トラノオジソ由来LIS遺伝子(非特許文献9)、マタタビ由来LIS遺伝子(非特許文献10)、シトカトウヒ由来LIS遺伝子(accession番号 HQ426164.1)、カナダトウヒ由来LIS遺伝子(accession番号 HQ426151.1)等がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Dudareva N et al., Curr. Opin. Biotechnol..181−189, 2008
【非特許文献2】Plant Cell, 8, 1137−1148, 1996
【非特許文献3】Arch. Biochem, Biophys., 372, 143−149, 1999
【非特許文献4】Plant Physiol., 135, 1908−1927, 2004
【非特許文献5】Arch. Biochem. Biophys., 465, 417−429, 2007
【非特許文献6】Plant Mol. biol., 64, 251−263, 2007
【非特許文献7】Plant J, 55, 224−239, 2008
【非特許文献8】Funct. Plant Biol., 37, 232−243, 2010
【非特許文献9】Phytochem,71,1068−1075,2010
【非特許文献10】Funct. Plant Biol.,37,232−243,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、交雑育種によると、種々の問題が生じるため、優良な形質を維持したまま、芳香性の付与または改変を行うには、遺伝子組換え技術の適用が有用と考えられる。そこで、本発明は、植物への芳香性の付与または芳香性の改変に利用できる、新たな遺伝子、より詳細には、リナロール合成酵素をコードするポリヌクレオチドおよびその用途の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明のポリヌクレオチドは、下記(a)〜(g)からなる群から選択された少なくとも一つのポリヌクレオチドであることを特徴とする。
(a)配列番号1、3、5、7、9または11の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(c)前記(a)のいずれかの塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(d)前記(a)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(e)配列番号2、4、6、8、10または12のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(f)前記(e)のいずれかのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(g)前記(e)のいずれかのアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【0011】
本発明の発現ベクターは、前記本発明のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の形質転換体は、前記本発明のポリヌクレオチドまたは前記本発明の発現ベクターが導入された非ヒト宿主であることを特徴とする。
【0013】
本発明の形質転換体の子孫、栄養繁殖体、器官、組織または細胞は、前記本発明の形質転換体と同一の性質を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の加工品は、前記本発明の形質転換体、または、前記形質転換体の子孫、栄養繁殖体、器官、組織もしくは細胞の加工品であることを特徴とする。
【0015】
本発明の芳香性の改変方法は、非ヒト宿主に、前記本発明のポリヌクレオチドまたは前記本発明の発現ベクターを導入する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の芳香性非ヒト宿主の製造方法は、前記本発明の芳香性の改変方法により、非ヒト宿主の芳香性を改変する工程を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のタンパク質は、下記(A)〜(C)からなる群から選択された少なくとも一つのタンパク質であることを特徴とする。
(A)配列番号2、4、6、8、10または12のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)前記(A)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質
(C)前記(A)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリヌクレオチドによれば、遺伝子工学的手法によりリナロール合成酵素の発現が可能である。このため、前記本発明のポリヌクレオチドを、例えば、植物に導入して形質転換体を作製することで、前記形質転換体において、リナロール合成酵素が発現し、これによって香気成分であるリナロールの合成が可能となる。このため、本発明によれば、例えば、植物に芳香性を付与したり、その芳香性の改変を行うことができるため、生花等の園芸植物の栽培において、商品価値の高い園芸植物を提供できることから、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施例3における、FA25 cDNA由来の組換えタンパク質による生成成分のガスクロマトグラムである。
【図2】図2は、本発明の実施例3における、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質による生成成分のガスクロマトグラムである。
【図3】図3は、本発明の実施例3における、SS19 cDNA由来の組換えタンパク質による生成成分のガスクロマトグラムである。
【図4】図4は、本発明の実施例4における、FA25 cDNA由来の組換えタンパク質による生成成分のガスクロマトグラムである。
【図5】図5は、本発明の実施例4における、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質による生成成分のガスクロマトグラムである。
【図6】図6は、本発明の実施例4における、SS19 cDNA由来の組換えタンパク質による生成成分のガスクロマトグラムである。
【図7】図7は、本発明の実施例5における、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質による生成成分のガスクロマトグラムである。
【図8】図8は、本発明の実施例5における、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質による生成成分のガスクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ポリヌクレオチド>
本発明のポリヌクレオチドは、前述のように、下記(a)〜(g)からなる群から選択された少なくとも一つのポリヌクレオチドであることを特徴とする。
(a)配列番号1、3、5、7、9または11の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(c)前記(a)のいずれかの塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(d)前記(a)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(e)配列番号2、4、6、8、10または12のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(f)前記(e)のいずれかのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(g)前記(e)のいずれかのアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【0021】
これらのポリヌクレオチドは、例えば、後述するように、フリージアおよびスイトピーより取得できる。これまで取得されたリナロール合成酵素遺伝子は、いずれも双子葉植物由来であり、単子葉植物由来のリナロール合成酵素遺伝子については、本発明により初めて明らかにされたものである。
【0022】
本発明のポリヌクレオチドは、前述のように、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードする。このため、例えば、前記ポリヌクレオチドからタンパク質を発現させることで、リナロール合成活性を有するタンパク質を製造できる。前記タンパク質の発現は、例えば、非ヒト宿主への導入によって行ってもよいし、いわゆる無細胞タンパク質合成系において行ってもよい。また、前記ポリヌクレオチドからタンパク質を発現させ、発現した前記タンパク質のリナロール合成活性によって、リナロールを合成できる。前記リナロールは、例えば、前記発現したタンパク質を基質として含む反応系に添加して、合成することができ、また、前記非ヒト宿主に前記ポリヌクレオチドを導入し、前記非ヒト宿主において、前記タンパク質の発現および発現した前記タンパク質によるリナロール合成を行うこともできる。前記非ヒト宿主内で前記リナロール合成を行うことによって、前記非ヒト宿主について、例えば、非芳香性から芳香性への改変、芳香性の増強、香りの改変等が可能となる。前記ポリヌクレオチドによって芳香性を改変する場合、後述するように、前記非ヒト宿主は、例えば、植物体またはその部分が好ましい。
【0023】
本発明において、以下、リナロール合成活性をLIS活性という。本発明のポリヌクレオチドは、LIS活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであることから、リナロール合成酵素遺伝子(以下、「LIS遺伝子」ともいう)と表わすこともできる。本発明のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質は、後述する本発明のタンパク質であり、LIS活性を有することから、リナロール合成酵素(以下、「LIS」または「LISタンパク質」ともいう)と表わすこともできる。
【0024】
前記LIS活性は、基質からのリナロールの生成を触媒する活性である。前記基質は、特に制限されず、例えば、ゲラニルピロリン酸(GPP)があげられる。
【0025】
前記LIS活性により生成される前記リナロールは、例えば、他の酵素の働きや自動的な化学変換により、配糖体やアルデヒド体、ケトン体、エステル体等に変換できる。
【0026】
リナロールは、3位に不斉炭素をもち、(3S)−リナロールと(3R)−リナロールとの1組の光学異性体が存在する。(3S)−リナロールは、例えば、プチグレイン、ラベンダー様香気を有し、(3R)−リナロールは、例えば、フローラル、ラベンダーおよびウッディ様香気を有する。特に、(3R)−リナロールは、(3S)−リナロールに比べて、におい閾値が約80倍低いことから、微量でも香ることが知られている。このため、本発明において、前記リナロール合成活性は、例えば、(3R)−リナロール合成活性および(3S)−リナロール合成活性のいずれでもよく、また、両方でもよく、好ましくは、(3R)−リナロール合成活性である。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドがコードするタンパク質は、例えば、LIS活性のみを有してもよいし、さらに、その他の触媒機能を有してもよい。
【0028】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、前記(a)〜(g)のポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドでもよい。本発明のポリヌクレオチドは、例えば、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。後者の場合、例えば、センス鎖として、前記(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドと、アンチセンス鎖として、前記ポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとを含む。
【0029】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、デオキシリボヌクレオチドから構成されるDNAでもよいし、リボヌクレオチドから構成されるRNAでもよい。後者の場合、例えば、DNAの塩基配列に対応する塩基配列、具体的には、塩基Tが塩基Uに置換された塩基配列からなるRNAがあげられる。
【0030】
前記(a)において、配列番号1および配列番号3の塩基配列からなるポリヌクレオチドは、例えば、フリージア(Freesia refracta)から得られ、具体的には、品種アラジン(Freesia refracta cv. Aladdin)から得られる。配列番号1の塩基配列は、シグナルペプチドを含むタンパク質をコードする全長cDNA配列であり、1〜234位の下線領域が、シグナルペプチドのコード配列であり、235〜1779位が、成熟タンパク質の全長コード配列である。配列番号1の塩基配列でコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2で表わされ、1〜78位の下線領域が、シグナルペプチドのアミノ酸配列であり、79〜592位が、成熟タンパク質の全長アミノ酸配列である。前記シグナルペプチドは、例えば、前記フリージアにおいては、クロロプラスト トランジット ペプチド(cTP)配列として存在する。また、配列番号3の塩基配列は、配列番号1において、前記シグナルペプチドのコード配列を除く、前記成熟タンパク質の全長コード配列を示す。配列番号3の塩基配列でコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4で表わされる。
【0031】
FA25遺伝子(s+:シグナルペプチドのコード配列を含む)
1779bp(配列番号1)
ATGGCTCTCTTGCCGTGTCTTCCATCTCAGTTTCCATGTTCTCCAGTAACAGGCTTCGTGCGATTGCCTCTTCTCTCTTCCCGTAGGTCATCCAAAGGAGTTCAAAGCTCTAACTATCGTTTTCGCTGTTGTATCAACACTGGAACTTCAGTGTCTCAGCCTTTGCGACGGGCGGCAAGCTATCCACAGAACATATGGGATGATAGCTACATTCAAGCACTCAATTGTGGCTACATGGGTGATGAACAGGTCAATGAAATTAGGAAGTTAAAGGAGGAAGTGGGGCAACTATTTAGTGACTCGAAAGAGATTCTGTATCAAATTGAGCTCATTGATGAGCTGCAGCAGCTTGGGGTGGCATATCACTTTCAGGATGAGATCAAGGATAAATTATCCACCATATTTTGCTCACTAGAGAAGACAAGCTTATTTATGGAGAATGATCTTAAGGCAACATCCCTAGTCTTTAGGCTTCTAAGGGAGCATGGTTTTCATGCCTCAGCAGATATATTCAACAACTTCAGAGAAAACAAAGGAAATTTCAAGTCTTGCCTAAAGAATGATATGGAAGGCATGATAAACTTGTATGAAGCTTCATTTTTTGCGGTGGAAGGAGAAAATCAACTGGATGAGGCTAGGGTGTTTGCAACTGAACATCTAAGACATCTGTCAGAGTCATTAGTGGAGGCATCACTTAGGGAACGCGTGGCTCATGCCTTGGAGCTTCCACTACATTTTAGGATGTCGAGGTTGCATACTCGTTGGTTCATAGATTGGTATGAGAAGAAGGTGGACAAGAATTCCAACTTGTGTAGATTGGCCAAGCTAGATTTCAACTTTGTGCAGAACATTTACAAGAGAGAGTTGAAGGAATTGTCAAGGTGGTGGACCAATTTGGGTCTTGGACAAAAACTGAGCTTTGCTAGAGACAGGTTGGTGGAGAATTACTTGTTTGTTATAGGTTGGGCCTTCGAGCCGAAACTATGGCAAAATAGGGAAGCAATGACAATGGCAAATTGTTTGGTAACAACATTAGATGACATTTATGACGTCTATGGCTCCTTGGATGAACTAGAACTCTTTACTGATGCTGTCAACAGATGGGATGCAGAAGCAATTGAACAGCTTCCAGATTATATGAAGACATGCATTATGGCACTCTTCAACACTACAAACCTTACCGCCAACAAAATTATGTACTCGAAGGGTGTCAACATAATTCCACAACTAAGGAGATCGTGGGCAGATCTTTGTAAAGCATACCTAGTGGAGGCCAAGTGGTATCACAGCGGATACATGCCTACTCTCGAGGAATATCTAGACACTGCATGGATATCAATATCAGGTCCTGTGGTACTAACTCAGGCTTACTGTACAAGTGAGAATATAACAGATGAAGCCCTCAAATGCTACAACTTTTATCCAGATGTAGTACGCCAGTCCTCCATGATTTCTCGGTTATGGAACGATTTGGCAACGTCAACGGCCGAAATGGAGAGGGGTGATGTTCCAAAATCAATTCAATGCTACATGCACGAGAAAGGAGTTTCAGAAGAAGTAGCCAGAGAGCACATAAGGGACATGATTGTTTCCATTTCAAAGAAGTTCGATTATGATTGCATTTCTAATTCCTCCATTGCCGAATCACTGAAATCGGTAGCACTTGATGTCCATAGAATGTCACAATGCGTATATCAATATGAAGATGGATATGGAGAACAGGGACATCAAAAGAGGGAACAAGTCATCTCATTACTTTTTGAACCCATTCCCCTCTAA
FA25タンパク質(s+:シグナルペプチドを含む)
592aa(配列番号2)
MALLPCLPSQFPCSPVTGFVRLPLLSSRRSSKGVQSSNYRFRCCINTGTSVSQPLRRAASYPQNIWDDSYIQALNCGYMGDEQVNEIRKLKEEVGQLFSDSKEILYQIELIDELQQLGVAYHFQDEIKDKLSTIFCSLEKTSLFMENDLKATSLVFRLLREHGFHASADIFNNFRENKGNFKSCLKNDMEGMINLYEASFFAVEGENQLDEARVFATEHLRHLSESLVEASLRERVAHALELPLHFRMSRLHTRWFIDWYEKKVDKNSNLCRLAKLDFNFVQNIYKRELKELSRWWTNLGLGQKLSFARDRLVENYLFVIGWAFEPKLWQNREAMTMANCLVTTLDDIYDVYGSLDELELFTDAVNRWDAEAIEQLPDYMKTCIMALFNTTNLTANKIMYSKGVNIIPQLRRSWADLCKAYLVEAKWYHSGYMPTLEEYLDTAWISISGPVVLTQAYCTSENITDEALKCYNFYPDVVRQSSMISRLWNDLATSTAEMERGDVPKSIQCYMHEKGVSEEVAREHIRDMIVSISKKFDYDCISNSSIAESLKSVALDVHRMSQCVYQYEDGYGEQGHQKREQVISLLFEPIPL
【0032】
FA25遺伝子(s−:シグナルペプチドのコード配列を含まない)
1545bp(配列番号3)
ATGGGTGATGAACAGGTCAATGAAATTAGGAAGTTAAAGGAGGAAGTGGGGCAACTATTTAGTGACTCGAAAGAGATTCTGTATCAAATTGAGCTCATTGATGAGCTGCAGCAGCTTGGGGTGGCATATCACTTTCAGGATGAGATCAAGGATAAATTATCCACCATATTTTGCTCACTAGAGAAGACAAGCTTATTTATGGAGAATGATCTTAAGGCAACATCCCTAGTCTTTAGGCTTCTAAGGGAGCATGGTTTTCATGCCTCAGCAGATATATTCAACAACTTCAGAGAAAACAAAGGAAATTTCAAGTCTTGCCTAAAGAATGATATGGAAGGCATGATAAACTTGTATGAAGCTTCATTTTTTGCGGTGGAAGGAGAAAATCAACTGGATGAGGCTAGGGTGTTTGCAACTGAACATCTAAGACATCTGTCAGAGTCATTAGTGGAGGCATCACTTAGGGAACGCGTGGCTCATGCCTTGGAGCTTCCACTACATTTTAGGATGTCGAGGTTGCATACTCGTTGGTTCATAGATTGGTATGAGAAGAAGGTGGACAAGAATTCCAACTTGTGTAGATTGGCCAAGCTAGATTTCAACTTTGTGCAGAACATTTACAAGAGAGAGTTGAAGGAATTGTCAAGGTGGTGGACCAATTTGGGTCTTGGACAAAAACTGAGCTTTGCTAGAGACAGGTTGGTGGAGAATTACTTGTTTGTTATAGGTTGGGCCTTCGAGCCGAAACTATGGCAAAATAGGGAAGCAATGACAATGGCAAATTGTTTGGTAACAACATTAGATGACATTTATGACGTCTATGGCTCCTTGGATGAACTAGAACTCTTTACTGATGCTGTCAACAGATGGGATGCAGAAGCAATTGAACAGCTTCCAGATTATATGAAGACATGCATTATGGCACTCTTCAACACTACAAACCTTACCGCCAACAAAATTATGTACTCGAAGGGTGTCAACATAATTCCACAACTAAGGAGATCGTGGGCAGATCTTTGTAAAGCATACCTAGTGGAGGCCAAGTGGTATCACAGCGGATACATGCCTACTCTCGAGGAATATCTAGACACTGCATGGATATCAATATCAGGTCCTGTGGTACTAACTCAGGCTTACTGTACAAGTGAGAATATAACAGATGAAGCCCTCAAATGCTACAACTTTTATCCAGATGTAGTACGCCAGTCCTCCATGATTTCTCGGTTATGGAACGATTTGGCAACGTCAACGGCCGAAATGGAGAGGGGTGATGTTCCAAAATCAATTCAATGCTACATGCACGAGAAAGGAGTTTCAGAAGAAGTAGCCAGAGAGCACATAAGGGACATGATTGTTTCCATTTCAAAGAAGTTCGATTATGATTGCATTTCTAATTCCTCCATTGCCGAATCACTGAAATCGGTAGCACTTGATGTCCATAGAATGTCACAATGCGTATATCAATATGAAGATGGATATGGAGAACAGGGACATCAAAAGAGGGAACAAGTCATCTCATTACTTTTTGAACCCATTCCCCTCTAA
FA25タンパク質(s−:シグナルペプチドを含まない)
514aa(配列番号4)
MGDEQVNEIRKLKEEVGQLFSDSKEILYQIELIDELQQLGVAYHFQDEIKDKLSTIFCSLEKTSLFMENDLKATSLVFRLLREHGFHASADIFNNFRENKGNFKSCLKNDMEGMINLYEASFFAVEGENQLDEARVFATEHLRHLSESLVEASLRERVAHALELPLHFRMSRLHTRWFIDWYEKKVDKNSNLCRLAKLDFNFVQNIYKRELKELSRWWTNLGLGQKLSFARDRLVENYLFVIGWAFEPKLWQNREAMTMANCLVTTLDDIYDVYGSLDELELFTDAVNRWDAEAIEQLPDYMKTCIMALFNTTNLTANKIMYSKGVNIIPQLRRSWADLCKAYLVEAKWYHSGYMPTLEEYLDTAWISISGPVVLTQAYCTSENITDEALKCYNFYPDVVRQSSMISRLWNDLATSTAEMERGDVPKSIQCYMHEKGVSEEVAREHIRDMIVSISKKFDYDCISNSSIAESLKSVALDVHRMSQCVYQYEDGYGEQGHQKREQVISLLFEPIPL
【0033】
前記(a)において、配列番号5および配列番号7の塩基配列からなるポリヌクレオチドは、例えば、フリージア(Freesia refracta)から得られ、具体的には、品種アラジン(Freesia refracta cv. Aladdin)から得られる。配列番号5の塩基配列は、シグナルペプチドを含むタンパク質をコードする全長cDNA配列であり、1〜234位の下線領域が、シグナルペプチドのコード配列であり、235〜1779位が、成熟タンパク質の全長コード配列である。配列番号5の塩基配列でコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号6で表わされ、1〜78位の下線領域が、シグナルペプチドのアミノ酸配列であり、79〜592位が、成熟タンパク質の全長アミノ酸配列である。前記シグナルペプチドは、例えば、前記フリージアにおいては、クロロプラスト トランジット ペプチド(cTP)配列として存在する。また、配列番号7の塩基配列は、配列番号5において、前記シグナルペプチドのコード配列を除く、前記成熟タンパク質の全長コード配列を示す。配列番号7の塩基配列でコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号8で表わされる。
【0034】
FA26遺伝子(s+:シグナルペプチドのコード配列を含む)
1779bp(配列番号5)
ATGGCTTTCTTGCCGTGTCTTCCATCTCAGTTTTCATGTTCTCCAGTAACGGGCTTCGTCCGATTGCCTCTTCTCTCTACCCGTAGGTCATCCCAAGGAGTTCAAAGCTCTAACTATCGTTTTCACTGTTGTATCAACACTGGAACTTCAGTGTCTCAGCCTTTGCGACGGACGGCAAGCTATCCACAGAACATATGGGATGATAGCTACATTCAAGCACTCAATTGTGGCTACATGGGTGATGAACAGGTCAATGAAATTAGGAAGTTAAAGGAGGACGTGAGGCAACTATTTAGTGACTCGAAAGAGATTTTGTATCAAATTGAGCTCATTGATGAGCTGCAGCAGCTTGGGGTGGCATATCACTTTCAGGATGAGATCAAGGATAAATTATCCACCATATTTTGCTCACTAGAGAAGACAAGCTTATTTATGGACAATGATCTTAAGGCAACATCCCTAATCTTTAGGCTTCTAAGGGAGCATGGTTTTCATGCCTCAGCAGATATATTCAACAACTTCATAGAAAACAAAGGAAATTTCAAGTCTTGCCTAAAGGATGATATAGAAGGCATGATAAACTTGTATGAAGCTTCATTTTTTGCCATGGAAGGAGAAAATCAACTGGATGAGGCTAGGGTGTTTGCAACTGAACATCTAAGACAATTGTCGGAGTCATTAGTAGAGGCATCACTTAGGGAACGCGTGGCTCATGCCTTGGAGCTTCCACTGCATTTTAGGATGTCGAGGCTGCATACTCGTTGGTTCATAGATTGGTATGAGAAGAAGGTGGACAAGAATTCCAACTTGTGTAGATTGGCCAAGCTAGATTTCAACTTTGTTCAAAACATTTACAAGAGAGAGTTGAAGGAATTGTCAAGGTGGTGGACCAATCTGGGTCTTGGACAAAAGCTGAGCTTTGCTAGAGATAGGTTGGTGGAAAATTACTTGTTTGTTATTGGTTGGGCCTTCGAGCCGAAACTATCGCAAAATAGGGAAGCAATGGCAATGGCAAATTGTTTGGTAACAACATTAGATGACATTTATGACGTCTATGGCTCCTTGGATGAACTAGAGCTCTTTACTGATGCTGTCAACAGATGGGATGCAGAAGCAATTGAACAACTTCCAGATTATATGAAGATATGCTTTATGGCACTCTTCAACACTACAAACCTTACCGCCTACAAAATTATGTACTCAAAGGGTGTCAACATAATTCCACAACTAAGGAGATCGTGGGCAGATCTTTGTAAAGCATACCTAGTGGAGGCCAAGTGGTATCACAACGGATACATGCCTACTCTCGAGGAATATCTAGACACGGCATGGATATCAATATCAGGTCCTGTGGTACTAACTCAGGCTTATTGTACAAATGGGAATATAACAGATGAAGCCCTCAAATGCTACAACTTTTATCCAGATGTCGTACGCCAGTCCTCCATGATTTCTCGGTTATGGAACGATTTGGCAACCTCAACGGCCGAAATGGAGAGAGGTGATGTTCCAAAATCAATTCAATGCTACATGCACGAGAAAGGAGTTTCAGAAGAAGTAGCCAGAGAGCACATAAGGGACATCATTGTTTCCATTTCAAAGAAGTTCGATTATGATTGCATTTCTAATTCCTCAATTGCCGAATCACTGAAATCGGTAGCACTTGATGTCCATAGAATGTCACAATGCGTATATCAAAATGAAGATGGATATGGAGAACAGGGAAATGAAAAAAGGAAACAAGTCATCTCATTACTTATTGAACCCATTCCCCTCTAA
FA26タンパク質(s+:シグナルペプチドを含む)
592aa(配列番号6)
MAFLPCLPSQFSCSPVTGFVRLPLLSTRRSSQGVQSSNYRFHCCINTGTSVSQPLRRTASYPQNIWDDSYIQALNCGYMGDEQVNEIRKLKEDVRQLFSDSKEILYQIELIDELQQLGVAYHFQDEIKDKLSTIFCSLEKTSLFMDNDLKATSLIFRLLREHGFHASADIFNNFIENKGNFKSCLKDDIEGMINLYEASFFAMEGENQLDEARVFATEHLRQLSESLVEASLRERVAHALELPLHFRMSRLHTRWFIDWYEKKVDKNSNLCRLAKLDFNFVQNIYKRELKELSRWWTNLGLGQKLSFARDRLVENYLFVIGWAFEPKLSQNREAMAMANCLVTTLDDIYDVYGSLDELELFTDAVNRWDAEAIEQLPDYMKICFMALFNTTNLTAYKIMYSKGVNIIPQLRRSWADLCKAYLVEAKWYHNGYMPTLEEYLDTAWISISGPVVLTQAYCTNGNITDEALKCYNFYPDVVRQSSMISRLWNDLATSTAEMERGDVPKSIQCYMHEKGVSEEVAREHIRDIIVSISKKFDYDCISNSSIAESLKSVALDVHRMSQCVYQNEDGYGEQGNEKRKQVISLLIEPIPL
【0035】
FA26遺伝子(s−:シグナルペプチドのコード配列を含まない)
1545bp(配列番号7)
ATGGGTGATGAACAGGTCAATGAAATTAGGAAGTTAAAGGAGGACGTGAGGCAACTATTTAGTGACTCGAAAGAGATTTTGTATCAAATTGAGCTCATTGATGAGCTGCAGCAGCTTGGGGTGGCATATCACTTTCAGGATGAGATCAAGGATAAATTATCCACCATATTTTGCTCACTAGAGAAGACAAGCTTATTTATGGACAATGATCTTAAGGCAACATCCCTAATCTTTAGGCTTCTAAGGGAGCATGGTTTTCATGCCTCAGCAGATATATTCAACAACTTCATAGAAAACAAAGGAAATTTCAAGTCTTGCCTAAAGGATGATATAGAAGGCATGATAAACTTGTATGAAGCTTCATTTTTTGCCATGGAAGGAGAAAATCAACTGGATGAGGCTAGGGTGTTTGCAACTGAACATCTAAGACAATTGTCGGAGTCATTAGTAGAGGCATCACTTAGGGAACGCGTGGCTCATGCCTTGGAGCTTCCACTGCATTTTAGGATGTCGAGGCTGCATACTCGTTGGTTCATAGATTGGTATGAGAAGAAGGTGGACAAGAATTCCAACTTGTGTAGATTGGCCAAGCTAGATTTCAACTTTGTTCAAAACATTTACAAGAGAGAGTTGAAGGAATTGTCAAGGTGGTGGACCAATCTGGGTCTTGGACAAAAGCTGAGCTTTGCTAGAGATAGGTTGGTGGAAAATTACTTGTTTGTTATTGGTTGGGCCTTCGAGCCGAAACTATCGCAAAATAGGGAAGCAATGGCAATGGCAAATTGTTTGGTAACAACATTAGATGACATTTATGACGTCTATGGCTCCTTGGATGAACTAGAGCTCTTTACTGATGCTGTCAACAGATGGGATGCAGAAGCAATTGAACAACTTCCAGATTATATGAAGATATGCTTTATGGCACTCTTCAACACTACAAACCTTACCGCCTACAAAATTATGTACTCAAAGGGTGTCAACATAATTCCACAACTAAGGAGATCGTGGGCAGATCTTTGTAAAGCATACCTAGTGGAGGCCAAGTGGTATCACAACGGATACATGCCTACTCTCGAGGAATATCTAGACACGGCATGGATATCAATATCAGGTCCTGTGGTACTAACTCAGGCTTATTGTACAAATGGGAATATAACAGATGAAGCCCTCAAATGCTACAACTTTTATCCAGATGTCGTACGCCAGTCCTCCATGATTTCTCGGTTATGGAACGATTTGGCAACCTCAACGGCCGAAATGGAGAGAGGTGATGTTCCAAAATCAATTCAATGCTACATGCACGAGAAAGGAGTTTCAGAAGAAGTAGCCAGAGAGCACATAAGGGACATCATTGTTTCCATTTCAAAGAAGTTCGATTATGATTGCATTTCTAATTCCTCAATTGCCGAATCACTGAAATCGGTAGCACTTGATGTCCATAGAATGTCACAATGCGTATATCAAAATGAAGATGGATATGGAGAACAGGGAAATGAAAAAAGGAAACAAGTCATCTCATTACTTATTGAACCCATTCCCCTCTAA
FA26タンパク質(s−:シグナルペプチドを含まない)
514aa(配列番号8)
MGDEQVNEIRKLKEDVRQLFSDSKEILYQIELIDELQQLGVAYHFQDEIKDKLSTIFCSLEKTSLFMDNDLKATSLIFRLLREHGFHASADIFNNFIENKGNFKSCLKDDIEGMINLYEASFFAMEGENQLDEARVFATEHLRQLSESLVEASLRERVAHALELPLHFRMSRLHTRWFIDWYEKKVDKNSNLCRLAKLDFNFVQNIYKRELKELSRWWTNLGLGQKLSFARDRLVENYLFVIGWAFEPKLSQNREAMAMANCLVTTLDDIYDVYGSLDELELFTDAVNRWDAEAIEQLPDYMKICFMALFNTTNLTAYKIMYSKGVNIIPQLRRSWADLCKAYLVEAKWYHNGYMPTLEEYLDTAWISISGPVVLTQAYCTNGNITDEALKCYNFYPDVVRQSSMISRLWNDLATSTAEMERGDVPKSIQCYMHEKGVSEEVAREHIRDIIVSISKKFDYDCISNSSIAESLKSVALDVHRMSQCVYQNEDGYGEQGNEKRKQVISLLIEPIPL
【0036】
前記(a)において、配列番号9および配列番号11の塩基配列からなるポリヌクレオチドは、例えば、スイトピー(Lathyrus odoratus)から得られ、具体的には、品種スイートスノー(Lathyrus odoratus cv.Sweet Snow)から得られる。配列番号9の塩基配列は、シグナルペプチドを含むタンパク質をコードする全長cDNA配列であり、1〜252位の下線領域が、シグナルペプチドのコード配列であり、253〜1692位が、成熟タンパク質の全長コード配列である。配列番号9の塩基配列でコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号10で表わされ、1〜84位の下線領域が、シグナルペプチドのアミノ酸配列であり、85〜563位が、成熟タンパク質の全長アミノ酸配列である。前記シグナルペプチドは、例えば、前記スイトピーにおいては、クロロプラスト トランジット(cTP)配列として存在する。また、配列番号11の塩基配列は、配列番号9において、前記シグナルペプチドのコード配列を除く、前記成熟タンパク質の全長コード配列を示す。配列番号11の塩基配列でコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号12で表わされる。
【0037】
SS19遺伝子(s+:シグナルペプチドのコード配列を含む)
1692bp(配列番号9)
ATGGCTGTTACTTCTCAACTACGAGTTTCATATCTCACAAACTCAATTCCTCGTTGCAACTCTTGGACTTCTACGTATCACTCACGGAATTTGTCGCTTAAAACTTCAAATTCAAGGATGGTTCATATTAAGTCCATTGCTTTTAATGATAAGTTGCCACCTTTACAGAAAGTTGACAAGACAAGAAGTTTGGAGCAAGTCAAACGAAGAAGCCGAGACTCATTGTTAAATTCGAGTGATCCTATTGAAACGATGAAGATGATTGACTCAATCCAAGGGCTAGGAATTAGCCACCATTTGGAAGATGAGGTCAATATACAACTTGAGAGGATATGTGATTGGGATGCTTCTACAAACCTCTTTGCAACATCTCTTCAATTTCGTTTACTTAGGCATAATGGTTGGCCTACATGTTCTGACATATTCAGAGACTTCTTGGACAAAAGTGGCAATTTCAAAGAATCACTCGCCAAAGACATTTTTGGTATGTTGAGCCTATATGAGGCATCATATTTAGGGACAGAAGATGAAGAAATATTAAAGAAGGCCATGCAATTTTCTAAGGATCATTTAAATGAGTCAATCCCACACCTTAGTCCTGAAGTTGGTAAACATATTGATAGAGCTTTAACACTTCCAAAGCACCTAAGAATGGCAAGGTTAGAAGCTAGAAACTACATGGATGAATATAGACATGCAAGTAAGCAAATACCAGCTCTTTGGGAATTGGCAAAGTTAGACAATGACATGATTCAATCACTACATCAGACAGAATTAAGAGAAATATGCAGGTGGTGGAAAGAGTTGGGACTTGTGGAAAAACTAAGTTTTGCCAGAGATAGACCAACAGAGTGCTTCTTATGGACAGTTGGAATTTTTCCAGAACCATGTTATACAAATTGTCGAATCGAACTTACAAAAACTATATGCATTTTGGATGTTATTGATGACATCTTTGACAATTACGGCACATTAGATGAACTTATTCTTTTCACAAATGCAATCAAAAGGTGGGACCTTGATTCAATGGAGCAACTTCCTGAGTATATGAAGATATGTTACATGGCATTATATAACACCACAAATGAAATTTCCTATAAAATTCAAACAGTGCATGGGATAAATGGTCTTTCATACTTAAAAAGAACATGGATGGACATGTTTGATGCATATTTGGAAGAAGCGAAATGGTTCAATAGTGGATATGTGCCAAGTTTTAGGACATATTTGGATAATGGAACAATTTCTGTTGGATCATGCATGGCTATGGTGCATGCTACTTTCCTCATTGGTAATGGTTTATCAAAGGAAACTATTTCCATGATGAGGCCATATCCTAGACTCTTCACTTGTACCGGAGAAATTCTTCGATTATGGGATGACTTAGGAACATCAACGGAGGAACGTGAAAGAGGGGATAATGCTTCTAGCATAGAATGCTTGATGGAAGAGAATAATATTTTGGATGAAAATGAGAGTAGGAAACACATAAGACTGTTAATAAGGAACTTGTGGCGAGAACTCAATGGCCTTGCCATGAACAAAACCATGCCATTGTCTGTTGTTAAATCTTCTCTTAACATGGCTAGAACTGCTCAAGTTATTTATCAACATGGAGATGATCAAAGCACTTTTACTGTTGATGATTATGTGCAAACACTGATTTTCTCATCATTACCCACTAGCCATTAA
SS19タンパク質(s+:シグナルペプチドを含む)
563aa(配列番号10)
MAVTSQLRVSYLTNSIPRCNSWTSTYHSRNLSLKTSNSRMVHIKSIAFNDKLPPLQKVDKTRSLEQVKRRSRDSLLNSSDPIETMKMIDSIQGLGISHHLEDEVNIQLERICDWDASTNLFATSLQFRLLRHNGWPTCSDIFRDFLDKSGNFKESLAKDIFGMLSLYEASYLGTEDEEILKKAMQFSKDHLNESIPHLSPEVGKHIDRALTLPKHLRMARLEARNYMDEYRHASKQIPALWELAKLDNDMIQSLHQTELREICRWWKELGLVEKLSFARDRPTECFLWTVGIFPEPCYTNCRIELTKTICILDVIDDIFDNYGTLDELILFTNAIKRWDLDSMEQLPEYMKICYMALYNTTNEISYKIQTVHGINGLSYLKRTWMDMFDAYLEEAKWFNSGYVPSFRTYLDNGTISVGSCMAMVHATFLIGNGLSKETISMMRPYPRLFTCTGEILRLWDDLGTSTEERERGDNASSIECLMEENNILDENESRKHIRLLIRNLWRELNGLAMNKTMPLSVVKSSLNMARTAQVIYQHGDDQSTFTVDDYVQTLIFSSLPTSH
【0038】
SS19遺伝子(s−:シグナルペプチドのコード配列を含まない)
1440bp(配列番号11)
ATGAAGATGATTGACTCAATCCAAGGGCTAGGAATTAGCCACCATTTGGAAGATGAGGTCAATATACAACTTGAGAGGATATGTGATTGGGATGCTTCTACAAACCTCTTTGCAACATCTCTTCAATTTCGTTTACTTAGGCATAATGGTTGGCCTACATGTTCTGACATATTCAGAGACTTCTTGGACAAAAGTGGCAATTTCAAAGAATCACTCGCCAAAGACATTTTTGGTATGTTGAGCCTATATGAGGCATCATATTTAGGGACAGAAGATGAAGAAATATTAAAGAAGGCCATGCAATTTTCTAAGGATCATTTAAATGAGTCAATCCCACACCTTAGTCCTGAAGTTGGTAAACATATTGATAGAGCTTTAACACTTCCAAAGCACCTAAGAATGGCAAGGTTAGAAGCTAGAAACTACATGGATGAATATAGACATGCAAGTAAGCAAATACCAGCTCTTTGGGAATTGGCAAAGTTAGACAATGACATGATTCAATCACTACATCAGACAGAATTAAGAGAAATATGCAGGTGGTGGAAAGAGTTGGGACTTGTGGAAAAACTAAGTTTTGCCAGAGATAGACCAACAGAGTGCTTCTTATGGACAGTTGGAATTTTTCCAGAACCATGTTATACAAATTGTCGAATCGAACTTACAAAAACTATATGCATTTTGGATGTTATTGATGACATCTTTGACAATTACGGCACATTAGATGAACTTATTCTTTTCACAAATGCAATCAAAAGGTGGGACCTTGATTCAATGGAGCAACTTCCTGAGTATATGAAGATATGTTACATGGCATTATATAACACCACAAATGAAATTTCCTATAAAATTCAAACAGTGCATGGGATAAATGGTCTTTCATACTTAAAAAGAACATGGATGGACATGTTTGATGCATATTTGGAAGAAGCGAAATGGTTCAATAGTGGATATGTGCCAAGTTTTAGGACATATTTGGATAATGGAACAATTTCTGTTGGATCATGCATGGCTATGGTGCATGCTACTTTCCTCATTGGTAATGGTTTATCAAAGGAAACTATTTCCATGATGAGGCCATATCCTAGACTCTTCACTTGTACCGGAGAAATTCTTCGATTATGGGATGACTTAGGAACATCAACGGAGGAACGTGAAAGAGGGGATAATGCTTCTAGCATAGAATGCTTGATGGAAGAGAATAATATTTTGGATGAAAATGAGAGTAGGAAACACATAAGACTGTTAATAAGGAACTTGTGGCGAGAACTCAATGGCCTTGCCATGAACAAAACCATGCCATTGTCTGTTGTTAAATCTTCTCTTAACATGGCTAGAACTGCTCAAGTTATTTATCAACATGGAGATGATCAAAGCACTTTTACTGTTGATGATTATGTGCAAACACTGATTTTCTCATCATTACCCACTAGCCATTAA
SS19タンパク質(s−:シグナルペプチドを含まない)
479aa(配列番号12)
MKMIDSIQGLGISHHLEDEVNIQLERICDWDASTNLFATSLQFRLLRHNGWPTCSDIFRDFLDKSGNFKESLAKDIFGMLSLYEASYLGTEDEEILKKAMQFSKDHLNESIPHLSPEVGKHIDRALTLPKHLRMARLEARNYMDEYRHASKQIPALWELAKLDNDMIQSLHQTELREICRWWKELGLVEKLSFARDRPTECFLWTVGIFPEPCYTNCRIELTKTICILDVIDDIFDNYGTLDELILFTNAIKRWDLDSMEQLPEYMKICYMALYNTTNEISYKIQTVHGINGLSYLKRTWMDMFDAYLEEAKWFNSGYVPSFRTYLDNGTISVGSCMAMVHATFLIGNGLSKETISMMRPYPRLFTCTGEILRLWDDLGTSTEERERGDNASSIECLMEENNILDENESRKHIRLLIRNLWRELNGLAMNKTMPLSVVKSSLNMARTAQVIYQHGDDQSTFTVDDYVQTLIFSSLPTSH
【0039】
前記(b)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(b)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、前記LIS活性を有する範囲であればよい。前記(a)のいずれかの塩基配列において、塩基は、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個、欠失、置換および/または付加されてもよい。付加は、例えば、配列内への挿入の意味も含む。本発明において、塩基数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1〜3個」との記載は、「1、2、3塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0040】
前記(c)において、「同一性」は、例えば、前記(c)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、前記LIS活性を有する範囲であればよい。前記同一性は、90%以上であり、好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0041】
前記(d)において、「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」は、例えば、前記(a)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、サザンハイブリダイゼーションアッセイ、コロニーハイブリダイゼーションアッセイ、プラークハイブリダイゼーションアッセイ等の公知の方法があげられる。ハイブリダイゼーションアッセイは、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0042】
前記(d)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度および長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
【0043】
前記(e)のポリヌクレオチドは、例えば、前記(e)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、前記LIS活性を有する塩基配列であればよい。前記(e)のポリヌクレオチドの塩基配列は、例えば、配列番号2、4、6、8、10または12のアミノ酸配列に基づいて、対応するコドンに置き換えることで設計可能である。具体的として、配列番号2または4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は、例えば、前記(a)における配列番号1または3の塩基配列があげられる。配列番号6または8のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は、例えば、前記(a)における配列番号5または7の塩基配列があげられる。配列番号10または12のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は、例えば、前記(a)における配列番号9または11の塩基配列があげられる。
【0044】
前記(f)において、アミノ酸に関する「1もしくは数個」は、例えば、前記(f)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、前記LIS活性を有する範囲であればよい。前記(e)のいずれかのアミノ酸配列において、アミノ酸は、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個、欠失、置換および/または付加されてもよい。
【0045】
前記(g)において、アミノ酸配列に関する「同一性」は、例えば、前記(g)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、前記LIS活性を有する範囲であればよい。前記同一性は、90%以上であり、好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。前記同一性は、例えば、前述のように、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、公知の遺伝子工学的手法または合成手法によって製造できる。
【0047】
本発明のポリヌクレオチドの使用目的は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにコードされる本発明のLISタンパク質の製造、前記LISタンパク質を発現する発現ベクターの製造、前記LISタンパク質を発現する形質転換体の製造、前記LISタンパク質のリナロール合成活性によるリナロールの合成等である。前記本発明のポリヌクレオチドから本発明のLISタンパク質を製造する場合、前記ポリヌクレオチドは、例えば、無細胞タンパク質合成系に使用してもよいし、前記非ヒト宿主に導入して使用してもよい。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドの使用方法は、特に制限されず、例えば、非ヒト宿主(以下、宿主ともいう)に導入することが好ましい。前記宿主に前記ポリヌクレオチドを導入することで、例えば、前記本発明のLISタンパク質の製造、前記本発明のLISタンパク質を発現する形質転換体の製造、本発明のLISタンパク質を発現してリナロールを合成する形質転換体の製造等が可能である。前記宿主は、特に制限されず、例えば、前述した本発明のポリヌクレオチドの使用目的に応じて、適宜選択できる。前記宿主は、例えば、植物体またはその部分、微生物、動物細胞、昆虫細胞、これらの培養細胞等があげられる。
【0049】
本発明において、「植物体」は、植物全体を示す植物個体を意味し、「植物体の部分」は、前記植物個体の部分であり、例えば、器官、組織または細胞等があげられ、いずれでもよい。前記器官は、例えば、花弁、花冠、花、葉、種子、果実、茎(地下茎)、根、むかご等があげられる。前記茎は、例えば、球根等の鱗茎、塊茎、球茎、根茎、ライナー等があげられ、前記根は、例えば、塊根、横走根等があげられる。前記組織は、例えば、前記器官の部分である。前記植物体の部分は、例えば、一種類の器官、組織および/または細胞でもよいし、二種類以上の器官、組織および/また細胞でもよい。
【0050】
前記本発明のポリヌクレオチドによって、前記非ヒト宿主の芳香性を改変する場合、前記非ヒト宿主は、例えば、前記植物体またはその部分が好ましい。前記植物体の種類および前記植物体の部分の種類は、特に制限されない。前記非ヒト宿主に、前記本発明のポリヌクレオチドを導入することによって、例えば、前記非ヒト宿主の非芳香性を芳香性に改変したり、リナロールに由来する芳香性をより増強できる。また、導入前の非ヒト宿主が本来有する芳香化合物とは異なる芳香化合物としてリナロールを合成し、異なる芳香性に改変したり、リナロールのさらなる合成によって、異なる芳香性に改変することが可能である。前記非ヒト宿主に前記本発明のポリヌクレオチドを導入することにより得られる形質転換体は、後述する本発明の形質転換体であり、芳香性改変形質転換体ともいう。また、前記非ヒト宿主が、植物体またはその部分の場合、例えば、芳香性改変植物体ともいう。
【0051】
芳香性の改変の対象となる植物は、特に制限されず、例えば、ナス科植物(例えば、カリブラコア、ニーレンベルギア等)、ナデシコ科植物(カーネーション、カスミソウ等)、キク科植物(キク、ガーベラ、ヒマワリ、デイジー等)、サクラソウ科植物(シクラメン等)、リンドウ科植物(トルコギキョウ、リンドウ等)、ゴマノハグサ科植物(トレニア等)、ベンケイソウ科植物(カランコエ)、ユリ科植物(チューリップ等)、ヒルガオ科植物(アサガオ、モミジヒルガオ、ヨルガオ等)、アジサイ科植物(アジサイ等)、ウリ科植物(ユウガオ等)、モクセイ科植物(レンギョウ等)等があげられる。前記芳香性植物は、特に制限されず、例えば、バラ、ゴマノハグサ科植物(キンギョソウ等)、ナス科植物(例えば、ペチュニア等)、バラ科植物(例えば、バラ等)、ラン科植物(ラン等)、アヤメ科植物(フリージア、アヤメ、グラジオラス等)、ユリ科植物(ユリ等)、フロウソウ科植物(ペラルゴニウム、ゼラニウム等)、ツバキ科植物(ツバキ、チャノキ等)等があげられる。これらの中でも、好ましくは、カーネーションおよびトレニアである。
【0052】
前記本発明のポリヌクレオチドによって、前記本発明のLISタンパク質を製造する場合、前記非ヒト宿主は、特に制限されない。前記非ヒト宿主は、前述と同様であるが、中でも、微生物、動物細胞、昆虫細胞、またはこれらの培養細胞等が好ましい。前記微生物は、例えば、原核生物および真核生物等があげられる。前記原核生物は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バシラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバシラス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属等の細菌があげられる。前記真核生物は、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母等があげられる。前記動物細胞は、例えば、COS細胞、CHO細胞等があげられ、前記昆虫細胞は、例えば、Sf9、Sf21等があげられる。前記非ヒト宿主に、前記本発明のポリヌクレオチドを導入することで、例えば、前記本発明のLISタンパク質を製造できる。前記非ヒト宿主に本発明のポリヌクレオチドを導入することにより得られる形質転換体は、前述と同様に、本発明の形質転換体である。
【0053】
前記本発明のポリヌクレオチドを前記宿主に導入する方法は、特に制限されず、公知の方法により行うことができる。前記導入方法は、例えば、前記宿主の種類に応じて、適宜設定できる。
【0054】
前記導入方法は、例えば、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン等の遺伝子銃による導入法、リン酸カルシウム法、ポリエチレングリコール法、リポソームを用いるリポフェクション法、エレクトロポレーション法、超音波核酸導入法、DEAE−デキストラン法、微小ガラス管等を用いた直接注入法、ハイドロダイナミック法、カチオニックリポソーム法、導入補助剤を用いる方法等があげられる。前記リポソームは、例えば、リポフェクタミンおよびカチオニックリポソーム等があげられ、前記導入補助剤は、例えば、アテロコラーゲン、ナノ粒子およびポリマー等があげられる。前記宿主が、植物体またはその部分の場合、例えば、中でも、アグロバクテリウムを介する方法が好ましい。前記本発明のポリヌクレオチドは、例えば、後述するような本発明の発現ベクターにより前記宿主に導入してもよい。
【0055】
前記宿主が、植物体またはその部分の場合、前記ポリヌクレオチドの導入は、例えば、前記植物体およびその部分のいずれに行ってもよく、好ましくは、前記植物体の部分であり、より好ましくは、前記組織または細胞であり、さらに好ましくは細胞である。前記組織は、例えば、前記植物体から切り出した切片等があげられ、具体的には、葉、茎、根等の切片である。前記細胞は、例えば、前記植物体またはその組織から採取した細胞、前記細胞の培養細胞、プロトプラスト、カルス等があげられる。
【0056】
<発現ベクター>
本発明の発現ベクターは、前述のように、前記本発明のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする。本発明の発現ベクターによれば、例えば、前記本発明のポリヌクレオチドを容易に前記宿主へ導入でき、また、前記宿主における前記本発明のポリヌクレオチドの発現を、容易に制御できる。
【0057】
本発明の発現ベクターの使用目的および使用方法は、特に制限されず、前述の本発明のポリヌクレオチドと同様である。
【0058】
本発明の発現ベクターは、例えば、前記宿主において、前記本発明のポリヌクレオチドがコードする前記本発明のLISタンパク質を発現可能なように、前記本発明のポリヌクレオチドを含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。前記宿主は、特に制限されず、前述のように、例えば、前記本発明のポリヌクレオチドの使用目的に応じて、適宜選択できる。前記宿主は、前記本発明のポリヌクレオチドの説明と同様に、例えば、植物体またはその部分、微生物、動物細胞、昆虫細胞、または、これらの培養細胞等があげられる。
【0059】
本発明の発現ベクターは、例えば、骨格となるベクター(以下、「基本ベクター」ともいう)に、前記本発明のポリヌクレオチドを挿入することで作製できる。前記ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、前記宿主の種類に応じて、適宜決定できる。前記ベクターは、アグロバクテリウム法を用いて形質転換を行う場合、例えば、バイナリーベクターが好ましく、例えば、pBI121、pPZP202、pBINPLUSおよびpBIN19等があげられる。大腸菌等の細菌に形質転換を行う場合、前記ベクターとして、例えば、pETベクター(Merck社)、pColdベクター(タカラバイオ株式会社)、PQEベクター(QIAGEN社)等があげられる。酵母等の真核生物に形質転換を行う場合、前記ベクターとして、例えば、pYE22m等があげられ、また、pYES(Invitrogen社)、pESC(Stratagene社)等の市販の酵母発現用ベクターを用いることもできる。
【0060】
本発明の発現ベクターは、例えば、前記ポリヌクレオチドの発現および前記ポリヌクレオチドがコードする前記本発明のLISタンパク質の発現を調節する、調節配列を有することが好ましい。前記調節配列は、例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル配列、複製起点配列(ori)等があげられる。前記プロモーターの由来は、特に制限されず、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、シミアンウイルス−40(SV−40)、筋βアクチンプロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)等があげられる。前記プロモーターは、この他に、例えば、チミジンキナーゼプロモーター等の組織特異的プロモーター、成長ホルモン調節性プロモーター等の調節性プロモーター、lacオペロン配列の制御下にあるプロモーター、亜鉛誘導性メタロチオネインプロモーター等の誘導性プロモーター等があげられる。本発明の発現ベクターにおいて、前記調節配列の配置は、特に制限されない。前記本発明の発現ベクターにおいて、前記調節配列は、例えば、前記本発明のポリヌクレオチドの発現およびこれがコードする前記本発明のLISタンパク質の発現を、機能的に調節できるように配置されていればよく、公知の方法に基づいて配置できる。前記調節配列は、例えば、前記基本ベクターが予め備える配列を利用してもよいし、前記基本ベクターに、さらに、前記調節配列を挿入してもよいし、前記基本ベクターが備える調節配列を、他の調節配列に置き換えてもよい。
【0061】
本発明の発現ベクターは、例えば、さらに、選択マーカーのコード配列を有してもよい。前記選択マーカーは、例えば、薬剤耐性マーカー、蛍光タンパク質マーカー、酵素マーカー、細胞表面レセプターマーカー等があげられる。
【0062】
本発明の発現ベクターを前記宿主に導入する方法は、特に制限されず、公知の方法により行うことができる。前記導入方法は、例えば、宿主の種類、前記発現ベクターの種類等に応じて、適宜決定できる。
【0063】
前記導入方法は、例えば、前記本発明のポリヌクレオチドの説明と同様であり、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン等の遺伝子銃による導入法、リン酸カルシウム法、ポリエチレングリコール法、リポソームを用いるリポフェクション法、エレクトロポレーション法、超音波核酸導入法、DEAE−デキストラン法、微小ガラス管等を用いた直接注入法、ハイドロダイナミック法、カチオニックリポソーム法、導入補助剤を用いる方法等があげられる。前記宿主が植物体またはその部分の場合、例えば、中でも、アグロバクテリウムを介する方法が好ましい。
【0064】
前記発現ベクターの導入は、例えば、本発明のポリヌクレオチドの説明と同様である。前記宿主は、例えば、前述の通りである。前記宿主が、植物体またはその部分の場合、例えば、植物体およびその部分のいずれに行ってもよく、好ましくは前記植物体の部分であり、より好ましくは前記組織または前記細胞であり、さらに好ましくは細胞である。前記組織は、例えば、前記植物体から切り出した切片等があげられ、具体的には、葉、茎、根等の切片である。前記細胞は、例えば、前記植物体またはその組織から採取した細胞、前記細胞の培養細胞、プロトプラスト、カルス等があげられる。本発明の発現ベクターの導入により得られる形質転換体は、後述する本発明の形質転換体であり、芳香性改変形質転換体または芳香性改変植物体ともいう。
【0065】
前記本発明のポリヌクレオチドまたは発現ベクターを導入して得られる形質転換体は、例えば、さらに、生育させてもよい。本発明において、「形質転換体」は、例えば、さらに、これらを生育させた生育体の意味も含む。例えば、前記本発明のポリヌクレオチドを、前記非ヒト宿主に導入して前記形質転換体を得た場合、前記非ヒト宿主を生育させて、さらに、組織、器官または個体に再生させてもよい。このようにして得られた、培養細胞、組織、器官または個体は、本発明において、前述のように、形質転換体に含まれる。前記非ヒト宿主が、前記植物体またはその部分の場合、前記形質転換体は、さらに、組織、器官または植物個体に再生することが好ましい。
【0066】
<形質転換体等>
本発明の形質転換体は、前記本発明のポリヌクレオチドが導入された非ヒト宿主であることを特徴とする。また、本発明の形質転換体は、前記ポリヌクレオチドを有する前記本発明の発現ベクターが導入された非ヒト宿主でもよい。以下、「本発明のポリヌクレオチドの導入」は、特に示さない限り、「本発明の発現ベクターの導入」の意味も含む。
【0067】
本発明の形質転換体は、前記本発明のポリヌクレオチドが発現可能に導入された非ヒト宿主であればよく、その他の構成は、何ら制限されない。「ポリヌクレオチドが発現可能」は、前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質が発現可能であるとの意味を含む。前記非ヒト宿主に対する、前記本発明のポリヌクレオチドおよび前記本発明の発現ベクターの導入方法は、特に制限されず、前記本発明のポリヌクレオチドおよび前記本発明の発現ベクターにおける説明を引用できる。
【0068】
本発明の形質転換体の使用方法は、特に制限されない。前記本発明の形質転換体は、前述のように、前記本発明のポリヌクレオチドの発現によって、前記本発明のLISタンパク質を発現可能である。このため、前記形質転換体は、本発明のLISタンパク質の製造に使用できる。前記形質転換体により製造された本発明のLISタンパク質は、リナロール合成活性を示すことから、前述のようにリナロール合成に使用できる。前記リナロールは、例えば、前記形質転換体から回収した前記LISタンパク質を、基質を含む反応液に添加して、合成することもできるし、前記形質転換体において、前記LISタンパク質の発現および前記LISタンパク質によるリナロール合成を行うこともできる。前記形質転換体内で前記リナロール合成を行うことによって、例えば、前記形質転換体について、非芳香性から芳香性への改変、芳香性の増強、香りの改変等が可能となる。このような形質転換体は、例えば、芳香性改変形質転換体ということもできる。
【0069】
前記本発明の形質転換体は、例えば、前記非ヒト宿主に前記本発明のポリヌクレオチドまたは前記本発明の発現ベクターを導入した後、さらに生育させて得られた生育体でもよい。具体例として、前記本発明のポリヌクレオチドを、前記細胞に導入して前記形質転換体を得た場合、例えば、前記細胞を生育させて、さらに、組織、器官または個体に再生させてもよい。このようにして得られた組織、器官または個体は、本発明において、前述のように、形質転換体に含まれる。
【0070】
本発明の形質転換体は、導入された前記本発明のポリヌクレオチドに基づいて、LIS活性を有する前記本発明のLISタンパク質が発現されていることが好ましい。また、本発明の形質転換体は、例えば、さらに生育させることで、前記導入された前記本発明のポリヌクレオチドに基づいて、前記本発明のLISタンパク質が発現されてもよい。
【0071】
芳香性を改変する場合、前記形質転換体は、例えば、前記本発明のポリヌクレオチドが導入された植物体またはその部分が好ましい。前記形質転換体は、例えば、芳香性改変植物体ということもできる。前記形質転換体は、より好ましくは、前記植物体の部分であり、さらに好ましくは、組織または細胞であり、特に好ましくは細胞である。前記非ヒト宿主が、前記植物体またはその部分の場合、前記形質転換体は、さらに、組織、器官または植物個体に再生することが好ましい。
【0072】
本発明の形質転換体において、前記リナロールが合成される部位は、特に制限されない。前記形質転換体が、前記植物体またはその部分の場合、前記合成される部位は、例えば、花弁、花冠、花、葉、茎、根等があげられる。
【0073】
本発明の形質転換体は、例えば、さらに繁殖させることができる。この際、本発明の形質転換体は、前記繁殖材料として使用できる。前記繁殖材料は、特に制限されず、例えば、前記形質転換体の全体でもよいし、部分でもよい。前記形質転換体が、前記植物体またはその部分の場合、前記繁殖材料は、例えば、種子、果実、シュート、塊茎等の茎、塊根等の根、株、カルス、プロトプラスト等があげられる。
【0074】
本発明の形質転換体の繁殖方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。前記繁殖方法は、例えば、有性生殖および無性生殖のいずれでもよく、好ましくは無性生殖である。前記無性生殖による繁殖は、例えば、栄養繁殖(vegetative propagation)があげられ、栄養生殖(vegetative reproduction)ともいう。前記栄養繁殖の方法は、特に制限されず、前記植物体またはその部分の場合、例えば、挿し芽、挿し木による繁殖、器官からの植物個体への細分化、カルスによる増殖等があげられる。前記器官は、例えば、前述したような葉、茎、根等が利用できる。
【0075】
前記形質転換体を栄養繁殖することにより得られる繁殖体を、以下、本発明の栄養繁殖体という。本発明の栄養繁殖体は、前記本発明の形質転換体と同一の性質を有することが好ましい。本発明の栄養繁殖体は、前記形質転換体と同様に、特に制限されず、例えば、植物体またはその部分があげられる。
【0076】
また、前記形質転換体を有性生殖した場合、例えば、種子、これから生育した生育体等の子孫が得られる。本発明の子孫は、前記本発明の形質転換体と同一の性質を得ることが好ましい。本発明の子孫は、例えば、前記形質転換体と同様に、例えば、植物体またはその部分のいずれでもよい。
【0077】
本発明の形質転換体は、例えば、さらに加工してもよい。加工する前記形質転換体の種類は、特に制限されず、例えば、花、葉、枝等があげられる。前記形質転換体の加工品は、特に制限されず、例えば、花、葉、枝等を乾燥させたポプリ、押し花、ドライフラワー、プリザーブドフラワー、樹脂密封品等があげられる。また、本発明の加工品は、例えば、前記形質転換体の子孫、栄養繁殖体、器官、組織または細胞の加工品でもよい。
【0078】
<非ヒト宿主の芳香性の改変方法および芳香性改変非ヒト宿主の製造方法>
本発明の非ヒト宿主の芳香性の改変方法は、前述のように、前記非ヒト宿主に、前記本発明のポリヌクレオチドを導入する工程を含むことを特徴とする。また、本発明の非ヒト宿主の芳香性の改変方法は、前記非ヒト宿主に、前記ポリヌクレオチドを含む前記本発明の発現ベクターを導入する工程を含むことを特徴としてもよい。
【0079】
本発明によれば、例えば、前記非ヒト宿主に前記本発明のポリヌクレオチドまたは発現ベクターを導入することで、前述した本発明の形質転換体が得られる。前記形質転換体は、前述のように、LIS活性を有する前記本発明のタンパク質が発現することによって、リナロールを合成できる。このため、本発明の改変方法によれば、例えば、前記非ヒト宿主の芳香性を、未導入の場合と比較して、非芳香性から芳香性に改変、未導入よりも芳香性を増強、未導入とは異なる芳香性等に改変できる。本発明の改変方法により得られる本発明の形質転換体は、前述のように、例えば、前記芳香性改変形質転換体ということもできる。
【0080】
本発明において、前記非ヒト宿主は、特に制限されず、前述のものがあげられるが、中でも前記植物体またはその部分が好ましい。前記非ヒト宿主が、前記植物体またはその部分の場合、前記形質転換体は、前記芳香性改変植物体ということもできる。前記本発明のポリヌクレオチドは、例えば、前述と同様に、植物体およびその部分のいずれに導入してもよく、好ましくは、前記植物体の部分であり、より好ましくは、組織および細胞であり、さらに好ましくは、細胞である。前記本発明のポリヌクレオチドを導入する方法は、何ら制限されず、前述の方法が引用できる。
【0081】
本発明の改変方法は、前記導入工程の後、さらに、前記ポリヌクレオチドが導入された前記非ヒト宿主、すなわち、前記本発明の形質転換体を生育する工程を有することが好ましい。前記導入工程で得られる前記形質転換体が前記器官、前記組織または細胞の場合、この生育工程において、前記器官は個体に、前記組織は器官または個体に、前記細胞は組織、器官または個体に、再生することが好ましい。前記生育の条件は、特に制限されず、前記形質転換体の種類に応じて、適宜設定できる。前記形質転換体が、例えば、前記植物体の部分、具体的に、前記器官、前記組織または細胞の場合、この生育工程において、前記器官は植物個体に、前記組織は器官または植物個体に、前記細胞は組織、器官または植物個体に、再生することが好ましい。
【0082】
前記形質転換体は、前述のように、導入された前記本発明のポリヌクレオチドに基づいて、LIS活性を有する前記本発明のタンパク質が発現されていることが好ましい。また、前記形質転換体は、例えば、前記生育工程において生育させることで、前記導入された前記本発明のポリヌクレオチドに基づいて、前記本発明のタンパク質が発現されてもよい。
【0083】
前記芳香性が改変する部位は、特に制限されない。前記形質転換体が植物体またはその部分の場合、例えば、植物体全体でもよいし、花弁、花冠、花、葉、茎、根等でもよい。
【0084】
次に、本発明の芳香性改変非ヒト宿主の製造方法は、前述のように、前記本発明の芳香性の改変方法により、前記非ヒト宿主の芳香性を改変する工程を含むことを特徴とする。本発明の製造方法は、前記本発明の芳香性の改変方法を実施することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の製造方法は、特に示さない限り、前記本発明の芳香性の改変方法を引用できる。
【0085】
本発明において、芳香性の改変は、例えば、非芳香性から芳香性への改変、芳香性の増強、香りの改変等のいずれでもよい。
【0086】
<LISタンパク質>
本発明のタンパク質は、前述のように、下記(A)〜(C)からなる群から選択された少なくとも一つのタンパク質であることを特徴とする。
(A)配列番号2、4、6、8、10または12のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)前記(A)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、LIS活性を有するタンパク質
(C)前記(A)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、LIS活性を有するタンパク質
【0087】
本発明のタンパク質は、前述のように、LIS活性を有するタンパク質であり、LISまたはLISタンパク質ということもできる。本発明のLISタンパク質は、特に示さない限り、前記本発明のポリヌクレオチドの説明を引用できる。本発明のLISタンパク質は、前述のようにLIS活性を有していればよく、例えば、ポリペプチドでもよい。
【0088】
前記(A)において、配列番号2、4、6、8、10または12のアミノ酸配列からなるタンパク質は、前述の通りである。
【0089】
前記(B)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(B)のアミノ酸配列からなるタンパク質が、前記LIS活性を有する範囲であればよい。前記(A)のいずれかのアミノ酸配列において、アミノ酸は、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個、欠失、置換および/または付加されてもよい。
【0090】
前記(C)において、「同一性」は、例えば、前記(C)のアミノ酸配列からなるタンパク質が、前記LIS活性を有する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。前記同一性は、例えば、塩基配列の同一性と同様であり、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる。
【0091】
本発明のLISタンパク質は、例えば、食品、酒類、化粧品および香水等の工業製品の香料として使用できるリナロールの合成に使用できる。
【0092】
<LISタンパク質の製造方法>
本発明のタンパク質の製造方法は、リナロール合成活性を有するタンパク質の製造方法であり、前記本発明のポリヌクレオチドを発現させることにより、前記ポリヌクレオチドがコードするリナロール合成活性を有するタンパク質を合成するタンパク質合成工程を含むことを特徴とする。
【0093】
本発明の製造方法は、前記本発明のポリヌクレオチドを発現させて、前記本発明のLISタンパク質を合成することが特徴であり、その他の方法および条件は、何ら制限されない。本発明の製造方法において、前記本発明のポリヌクレオチドの発現は、公知の方法が採用でき、例えば、宿主を使用してもよいし、無細胞タンパク質合成系を使用してもよい。
【0094】
前記タンパク質合成工程は、例えば、前記ポリヌクレオチドが導入された非ヒト宿主を使用し、前記非ヒト宿主の培養により、前記非ヒト宿主において前記ポリヌクレオチドを発現させる工程があげられる。前記非ヒト宿主は、例えば、前述と同様であり、好ましくは、微生物、動物細胞、昆虫細胞、または、これらの培養細胞等である。前記非ヒト宿主への導入方法は、特に制限されず、前述の記載が引用できる。前記ポリヌクレオチドは、例えば、前記本発明の発現ベクターにより導入されてもよく、前記非ヒト宿主は、例えば、前記発現ベクターが導入された非ヒト宿主があげられる。前記培養の方法は、特に制限されず、前記非ヒト宿主の種類に応じて適宜設定できる。
【0095】
また、前記タンパク質合成工程は、前述のように、無細胞タンパク質合成系において前記ポリヌクレオチドを発現させる工程でもよい。この場合、前記ポリヌクレオチドの発現には、前記本発明の発現ベクターを使用してもよい。前記無細胞タンパク質合成系は、例えば、細胞抽出液と、各種成分を含むバッファーと、目的のポリヌクレオチドが導入された発現ベクターとを用いて、公知の方法により行うことができ、市販の試薬キットが使用できる。
【0096】
本発明の製造方法は、例えば、さらに、前記LISタンパク質を精製する工程を含んでもよい。前記LISタンパク質の精製方法は、特に制限されず、例えば、塩析、各種カラムクロマトグラフィー等により行うことができる。
【0097】
<リナロールの製造方法>
本発明のリナロールの製造方法は、前記本発明のLISタンパク質を使用し、前記LISタンパク質のリナロール合成活性により、リナロールを合成するリナロール合成工程を含むことを特徴とする。
【0098】
本発明の製造方法は、前記本発明のLISタンパク質を使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。本発明の製造方法により得られるリナロールは、例えば、(3R)−リナロールおよび(3S)−リナロールがあげられ、好ましくは、(3R)−リナロールである。
【0099】
本発明の製造方法において、前記LISタンパク質は、例えば、予め製造したLISタンパク質を使用してもよいし、前記本発明のポリヌクレオチドの発現により合成してもよい。
【0100】
前者の場合、前記LISタンパク質は、例えば、本発明のLISタンパク質の製造方法により得ることができる。前記LISタンパク質は、例えば、非精製タンパク質でもよいが、精製タンパク質が好ましい。
【0101】
後者の場合、本発明の製造方法は、例えば、前記LISタンパク質を合成するタンパク質合成工程を含み、前記リナロール合成工程において、前記合成したLISタンパク質を使用することが好ましい。前記タンパク質合成工程は、特に制限されず、例えば、前記本発明のLISタンパク質の製造方法によりタンパク質を合成する工程があげられる。具体的には、例えば、前記タンパク質合成工程において、前記本発明のポリヌクレオチドが導入された前記非ヒト宿主を使用し、前記非ヒト宿主の培養により、前記非ヒト宿主において前記ポリヌクレオチドを発現させ、前記ポリヌクレオチドがコードするリナロール合成活性を有するタンパク質を合成することが好ましい。この際、前記非ヒト宿主において合成した前記LISタンパク質を単離して、前記リナロール合成工程に使用できる。また、例えば、前記非ヒト宿主において、前記タンパク質合成工程と前記リナロール合成工程とを行ってもよい。つまり、前記タンパク質合成工程が、前記非ヒト宿主において、前記LISタンパク質を合成する工程であり、前記リナロール合成工程が、前記非ヒト宿主において、前記合成したLISタンパク質のリナロール合成活性により、リナロールを合成する工程でもよい。
【0102】
このようにして得られたリナロールは、例えば、食品、酒類、化粧品および香水等の工業製品の香料として使用できる。
【実施例】
【0103】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例により制限されない。
【0104】
[実施例1]
単子葉植物フリージア花弁および双子葉植物スイトピー花弁から、LIS遺伝子のcDNAのクローニングを行った。
【0105】
(1)スクリーニング1
フリージア(品種アラジン)およびスイトピー(品種スイートスノー)の新鮮な花弁約2〜3gから、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)により、製造業者が推奨する方法で、トータルRNAを取得し、Oligotex−dT30(super)mRNA Purification Kit(Takara)を用いて、polyAを付加したpolyA+RNAを精製した。前記polyA+RNAから、Uni−Zap XR Vector Kit(Stratagene)およびGigapack III Gold−4 RXN(Agilent technology)を用いて、cDNAライブラリーを構築した。得られたライブラリーは、それぞれ、7.2×10plaque forming unitおよび7.1×10 plaque forming unitであった。
【0106】
そして、既知のラベンダー由来(R)−リナロール合成酵素(LaLIS)のcDNA(Arch. Biochem, Biophys. 465, 2007)をプローブとして、前記cDNAライブラリーを用いてスクリーニングを行った。
【0107】
前記プローブは、以下のようにして作製した。まず、PCRにより、LaLIS cDNAの全長領域のオリゴヌクレオチドを増幅するとともに、DIG標識システム(ロシュ・ダイアグノスティックス)を用い、製造者が推奨する条件に従って、前記オリゴヌクレオチドにラベルした。PCRには、鋳型として、LaLIS cDNAを含むプラスミド10ng、プライマーとして、以下に示す2種類のオリゴヌクレオチド各0.2μmol/Lを使用した。PCRの条件は、95℃で2分反応させた後、95℃で10秒、55℃で30秒、72℃で2分の反応を1サイクルとして、合計35サイクル行い、最後に72℃で7分間処理した。PCR後の反応物を、Quick Spin Columns(ロシュ)で精製し、精製物をスクリーニングのプローブとした。
(プライマー)
LaLISDIG−F(配列番号13)
5’-ATGTCGATCAATATCAACATGCCTGC-3’
LaLISDIG−R(配列番号14)
5’-TCATGCGTACGGCTCGAACAG-3’
【0108】
cDNAライブラリーのスクリーニングは、ノンラジオシステムDNA検出キット(ロシュ)を用いて行った。ハイブリダイゼーションは、0.02%SDSおよび30%ホルムアミドを含む5×SSC中、37℃で一晩行い、フィルターの洗浄は、2×SSC、1%SDSを用いて、65℃で30分間を2回行った。そして、約24万プラークをスクリーニングし、フリージアのcDNAライブラリーから45個、スイトピーのcDNAライブライリーから41個のポジティブシグナルを得た。しかしながら、合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法により、塩基配列を解析した結果、前記LaLIS遺伝子と有意な相同性を有するクローンは得られなかった。
【0109】
(2)スクリーニング2(フリージア由来LIS遺伝子cDNA)
前記(1)において、既知のLIS遺伝子の配列に基づく相同性を利用したスクリーニングでは、フリージアのLIS遺伝子のcDNAがクローニングできないことが明らかとなった。そこで、以下に示すディジェネレートプライマーを作製した。プライマーの組合せは、(i)LISdpF1とLISdpR1、(ii)LISdpF2とLISdpR1、(iii)LISdpF3とLISdpR1、(iv)LISdpF1とLISdpR2、(v)LISdpF2とLISdpR2、(vi)LISdpF3とLISdpR2の合計6通りとした。下記配列において、「I」はイノシンである。
(プライマー)
LISdpF1(配列番号15)
5’-GA(C/T)GA(C/T)GTITA(C/T)GA(C/T)AT(A/C/T)-3’
LISdpF2(配列番号16)
5’-GA(C/T)GA(C/T)GTITA(C/T)GA(C/T)GTITA(C/T)-3’
LISdpF3(配列番号17)
5’-GA(C/T)GA(C/T)AT(A/C/T)TT(C/T)GTITA(C/T)-3’
LISdpR1(配列番号18)
5’-IGTICCIA(A/G)(A/G)TC(A/G)TCIGG-3’
LISdpR2(配列番号19)
5’-ICCIA(A/G)(A/G)TC(A/G)TCCCA-3’
【0110】
フリージア(品種アラジン)の花弁より、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、トータルRNAを抽出し、このうち1μgから、SuperScript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を用いて、製造業者が推奨する方法でcDNAを合成した。次に、合成したcDNA 1μlを鋳型とし、前記組合せのディジェネレートプライマー2種類(各0.2μmol/L)およびTakara Ex Taqポリメラーゼ(Takara)1.25Uを用いて、製造業者の推奨する方法により、計50μlの反応液でPCR反応を行った。PCRの条件は、94℃で5分反応させた後、94℃で30秒、40℃で1分、72℃で1分を1サイクルとし、合計40サイクル繰り返した後、72℃で7分間保持した。
【0111】
PCR反応後、前記反応液をアガロースゲル電気泳動で分離した。その結果、フリージアについて、前記(v)LISdpF2とLISdpR2のプライマーに用いた反応液において、約0.5kbの増幅断片が得られた。前記増幅断片を回収し、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen)を用いて、pCR2.1 TOPOベクター(Invitrogen)に、製造者が推奨する方法でサブクローニングした。このプラスミドを、pCR2.1−FAF2R2#38とし、その塩基配列を決定した。
【0112】
前記クローンFAF2R2#38の完全長cDNAを取得するために、前記クローンをプローブとして、前記(1)のフリージア由来のcDNA ライブラリーを用いてスクリーニングを行った。
【0113】
前記プローブは、以下のようにして作製した。まず、PCRにより、前記クローンの全長領域のオリゴヌクレオチドを増幅すると共に、DIG標識システム(ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いて、製造者が推奨する条件に従って、前記オリゴヌクレオチドにラベルした。PCRには、鋳型として、10ngのそれぞれの前記クローンcDNAを含むプラスミド 10ng、プライマーとして、以下に示す2種類のオリゴヌクレオチド各0.2μmol/Lを使用した。PCRの条件は、95℃で2分反応させた後、95℃で10秒、55℃で30秒、72℃で2分の反応を1サイクルとして合計35サイクル行い、最後に72℃で7分間処理した。PCR後の反応物を、Quick Spin Columns(ロシュ)で精製し、精製物をスクリーニングのプローブとした。
(プライマー)
DIG−FA#38F(配列番号20)
5’-GATGATGTGTATGATGTGTATGGCTCCTT-3’
DIG−FA#38R(配列番号21)
5’-TGCCGAGGTCGTCCCATAACC-3’
【0114】
cDNAライブラリーのスクリーニングは、ノンラジオシステムDNA検出キット(ロシュ)を用いて行った。ハイブリダイゼーションは、0.02%SDSおよび30%ホルムアミドを含む5×SSC中、37℃で一晩行い、メンブレンは、2×SSCおよび1%SDSを用いて65℃で30分間洗浄した後、0.5×SSCおよび1%SDSを用いて65℃で30分間洗浄した。そして、約24万プラークをスクリーニングした。後述する実施例2と同様の方法により、得られたポジティブクローンについてタンパク質を発現させ、目的のLIS合成活性を確認したところ、配列番号1の塩基配列からなるLIS遺伝子のcDNA(FA25 cDNA)および配列番号5の塩基配列からなるLIS遺伝子のcDNA(FA26 cDNA)が取得できた。
【0115】
(3)スクリーニング3(スイトピー由来LIS遺伝子cDNA)
前述のように、前記(1)において、既知のLIS遺伝子の配列に基づく相同性を利用したスクリーニングでは、スイトピーのLIS遺伝子のcDNAがクローニングできないことが明らかとなった。そこで、前記(2)と同じディジェネレートプライマーを作製した。
【0116】
前記(2)と同様にして、スイトピー(品種スイートスノー)の花弁よりトータルRNAを抽出し、cDNAの合成、PCR反応、電気泳動を行った。その結果、スイトピーについて、前記(2)のフリージアとは異なり、前記(vi)LISdpF3とLISdpR3のプライマーに用いた反応液において、約0.5kbの増幅断片が得られた。この増幅断片を回収し、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen)を用いて、pCR2.1 TOPOベクター(Invitrogen)に、製造者が推奨する方法でサブクローニングした。このプラスミドを、pCR2.1−SSSt4F3R2−06およびpCR2.1−SSSt4F3R2−38とした。そして、得られたクローンSSSt4F3R2#06およびSSSt4F3R2#38の塩基配列を決定した。
【0117】
前記SSSt4F3R2#06およびSSSt4F3R2#38の完全長cDNAを取得するために、前記クローンをプローブとして前記(1)のスイトピー由来のcDNAライブラリーを用いて、スクリーニングを行った。スクリーニングの方法は、下記プライマーを使用した以外は、前記(2)と同様とした。
(プライマー)
DIG−SSst4#38F(配列番号22)
5’-GATGATATTTTCGTGTATGGAAAATTTGATG-3’
DIG−SSst4#38R(配列番号23)
5’-GCCTATGGGACGACCTCGGC-3’
DIG−SSst4#06F(配列番号24)
5’-GACGATATTTTTGTGTACGGCACATTAGAT-3’
DIG−SSst4#06R(配列番号25)
5’-GCCGAGGTCGTCCCATAATCG-3’
【0118】
そして、約24万プラークをスクリーニングした。後述する実施例2と同様の方法により、得られたポジティブクローンについてタンパク質を発現させ、目的のLIS合成活性を確認した。その結果、配列番号9の塩基配列からなるLIS遺伝子のcDNA(SS19 cDNA)が取得できた。
【0119】
[実施例2]
フリージアおよびスイトピーのLIS遺伝子のcDNAを、大腸菌に導入し、組換えLISタンパク質を発現させた。そして、基質としてゲラニルピロリン酸(GPP)を用いて、リナロール合成活性を確認した。
【0120】
(1)発現用ベクターの構築
シグナルペプチドのコード配列を含む配列番号1の塩基配列からなるFA25 cDNA(s+)を発現するための発現用ベクターpSPB5025を、以下の方法により構築した。前記発現ベクターは、In−Fusion Advantage PCR Cloning Kit(Clontech社)を用いて構築し、発現は、pET発現システム(Novagen社)を用いて行った。
【0121】
大腸菌タンパク発現ベクターpET15b(Novagen社)を、制限酵素NdeIおよびXhoIで消化後、GENECLEAN Turbo kit(フナコシ株式会社)で精製した。
【0122】
次に、配列番号1に示す前記FA25 cDNA(s+)のコーディング配列に対して、開始コドンの5’側にNdeI認識配列を、終止コドンの3’側にXhoI認識配列を導入するため、PCR反応を行った。前記PCR反応は、下記に示す2種のプライマーInF−pET−FA25full−FおよびInF−pET−FA25full−Rを含む下記組成のPCR反応液を使用し、98℃で10秒、65℃で15秒、72℃で1分30秒の反応を1サイクルとし、合計25サイクル行った。
(FA25用プライマー)
InF−pET−FA25full−F(配列番号26)
5’-CGCGGCAGCCATATGGCTCTCTTGCCGTGT-3’
InF−pET−FA25full−R(配列番号27)
5’-AGCCGGATCCTCGAGTTAGAGGGGAATGGGTTCA-3’
(PCR反応液)
pSPB5025 100pg
1x PrimeSTAR buffer(Takara社)
0.2mmol/L dNTPs(Takara社)
プライマー 各0.2μmol/L
PrimeSTAR HS DNA polymerase(Takara社) 1.25U
総体積 25μl
【0123】
得られたPCR産物5μlに、Cloning Enhancer 2μlを加え、37℃で15分反応後、さらに80℃で15分反応させた。この反応液に、1x In−Fusion Reaction buffer(Clontech社)、In−Fusion Enzyme(Clontech社) 1μl、NdeIおよびXhoIで処理した前記pET15bベクター 100ng、Cloning Enhancer−Treated PCR Insert 2μlを添加して、総体積10μlに調整した。そして、37℃で15分反応させた後、50℃で15分反応させ、さらに、TE40μlを添加した。この混合液のうち3μlを、Competent high DH5α(TOYOBO社)に形質転換した。
【0124】
そして、得られた4種の形質転換株よりプラスミドDNAを抽出し、合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法により全塩基配列を決定した。その結果、開始コドンの5’側にNdeI認識配列、終始コドンの3’側にXhoI認識配列がそれぞれ導入された、配列番号1に示す前記FA25 cDNA(s+)のコーディング配列を有していたクローンを、発現用ベクターpSPB5025とした。
【0125】
上記と同じ方法により、シグナルペプチドのコード配列を含む、配列番号5の塩基配列からなるFA26 cDNA(s+)および配列番号9の塩基配列からなるSS19 cDNA(s+)を発現するための発現用ベクターpSPB5026(FA26 cDNA)およびpSPB5046(SS19 cDNA)を、それぞれ構築した。なお、開始コドンの5’側にNdeI認識配列を、終止コドンの3’側にXhoI認識配列を導入するためのプライマーは、各cDNAについて、それぞれ以下のプライマーを使用した。
(FA26用プライマー)
InF−pET−FA26full−F(配列番号28)
5’-CGCGGCAGCCATATGGCTTTCTTGCCGTGT-3’
InF−pET−FA26full−R(配列番号29)
5’-AGCCGGATCCTCGAGTTAGAGGGGAATGGGTTCAATAAGT-3’
(SS19用プライマー)
InF−pET−SS19full−F(配列番号30)
5’-CGCGGCAGCCATATGGCTGTTACTTCTCAACTAC-3’
InF−pET−SS19full−R(配列番号31)
5’-AGCCGGATCCTCGAGTTAATGGCTAGTGGGTAATGAT-3’
【0126】
そして、得られた各4種の形質転換株よりプラスミドDNAを抽出し、前述と同様に全塩基配列を決定した。その結果、開始コドンの5’側にNdeI認識配列、終止コドンの3’側にXhoI認識配列がそれぞれ導入された、目的のcDNAのコーディング配列を有していたクローンを、発現用ベクターpSPB5026(FA26 cDNA)、pSPB5046(SS19 cDNA)とした。
【0127】
(2)組換えLISタンパク質の発現誘導
前記(1)で得られた各形質転換体を用いて、以下の方法により、組換えLISタンパク質の発現を誘導した。タンパク質の発現誘導は、Overnight Express Autoinduction System 1(Novagen社)を用いて行った。
【0128】
前記(1)の形質転換株を、OnEx Solution 1(Novagen社)40μl、OnEx Solution 2(Novagen社)100μl、OnEx Solution 3(Novagen社)2μl、アンピシリン50μg/mlおよび0.05%グルコースを含むLB培地5mlにより、37℃で4時間振とう培養した。そして、OnEx Solution 1 2ml、OnEx Solution 2 5ml、OnEx Solution 3 100μlおよびアンピシリン50μg/mlを含むLB培地 100mlに前記培養液の全量を加え、20℃で一晩振とう培養した。得られた培養液を遠心(5000×g、5分間、4℃)して、大腸菌を集菌した。前記菌体を、菌体1gあたり5mlの緩衝液[50mmol/L MOPSO緩衝液(pH7.0)、5mmol/L DTT、5mmol/L アスコルビン酸ナトリウム、0.1mmol/L APMSF、10%グリセロール]に懸濁した。前記懸濁液を超音波処理して、前記大腸菌を破砕した後、遠心分離(15,000rpm、15分、4℃)し、得られた上清を、粗酵素液とした。
【0129】
次に、前記粗酵素液を、Econo−Pac 10DG Desalting Columns(BIO RAD社)を用いて、緩衝液[20mmol/L MOPSO緩衝液(pH7.0)、1mmol/L DTT、0.1mmol/L APMSF、10%グリセロール]に置換後、以下の酵素反応に用いた。
【0130】
(3)LISタンパク質の活性測定
前記粗酵素液に、試薬[10μmol/L GPP、1mmol/L MgCl、0.5mmol/L MnCl、0.1mmol/L NaWO、0.05mmol/L NaF]を添加し、全量3mlの反応液に調整した。そして、この反応液を30℃で3時間反応させた。なお、反応中、容器内の上部にヘッドスペース成分の捕集剤としてMonoTrap DCC18(ジーエルサイエンス社)を1枚吊るしておき、前記ヘッドスペース中に揮発した生成成分を、前記捕集剤で採集した。
【0131】
次に、前記捕集剤を回収し、前記捕集剤に、ジクロロメタン 2mlを添加した後、超音波処理によって、揮発成分を抽出して回収した。ジクロロメタン中に抽出された、揮発成分を濃縮乾固し、さらに、ジクロロメタン 50μlに再溶解した。この溶解液を、生成成分の抽出液として、GC−MSで分析した。分析条件は、以下の通りとした。下記条件下において、リナロールは、保持時間32.8分に検出され、MSスペクトルで、m/z 154,121,93,71の特徴的なフラグメントイオンが検出されることを、標品により確認した。
キャピラリーカラム:HP INNOWax
(60m×0.25mm×0.25μm、Agilent社)
キャリアガス:He
温度条件:40℃で10分間保持後、5℃/minで240℃まで昇温し、最後に240℃で30分間保持
注入口温度:250℃
トランスファーライン温度:230℃
試料:スプリットレスモードで1μl注入
【0132】
その結果、保持時間32.8分のみに、リナロールのピークが認められ、リナロールのみが生成成分として検出された。この結果から、前記各種LIS遺伝子は、リナロール合成活性を示すことが確認された。
【0133】
[実施例3]
前記実施例2における、フリージア由来およびスイトピー由来のLIS cDNAを発現させた組換えLISタンパク質と、公知のラベンダー(Lavandula angustifolia)由来のリナロール合成酵素((R)−LIS)cDNAから発現させた組換えリナロール合成酵素とについて、それぞれの粗酵素タンパク質を用いてリナロール合成活性を比較した。
【0134】
前記実施例2と同様にして、フリージア由来のLIS遺伝子として、FA25 cDNAおよびFA26 cDNAを、スイトピー由来のLIS遺伝子として、SS19 cDNAを、大腸菌に導入し、それぞれ、組換えLISタンパク質を発現させ、粗酵素液を調製した。
【0135】
他方、ラベンダー由来の(R)−LIS遺伝子を発現するための発現ベクターとして、配列番号32の前記(R)−LIS cDNAの配列を含む発現ベクターpSPB5045を構築した。前記(R)−LIS cDNAにコードされる(R)−LISタンパク質のアミノ酸配列を配列番号33に示す。そして、前記cDNAの開始コドンの5’側にNdeI認識配列を導入し、終止コドンの3’側にXhoI認識配列を導入するためのプライマーとして、以下のプライマーを使用した以外は、前記実施例2と同様にして、前記発現ベクターを構築した。そして、前記実施例2と同様にして、形質転換株の取得、組換えタンパク質の発現誘導、粗酵素液の調製を行った。
【0136】
(R)−LIS cDNA
1695bp(配列番号32)
ATGTCGATCAATATCAACATGCCTGCAGCCGCCGTCCTCCGCCCTTTTCGCTGCTCACAACTACATGTCGATGAAACCCGACGCTCCGGAAACTACCGCCCCTCGGCTTGGGATTCCAACTACATCCAATCTCTCAATTCTCAGTATAAGGAAAAGAAGTGCTTGACAAGGCTAGAAGGGCTGATTGAGCAAGTGAAGGAACTGAAGGGGACAAAAATGGAGGCTGTTCAACAATTGGAGTTGATTGATGACTCGCAGAATCTGGGATTATCATATTATTTTCAAGATAAAATTAAACATATCTTGAATTTGATATATAATGATCACAAATATTTTTACGATAGTGAAGCTGAAGGAATGGATTTGTATTTTACAGCTCTTGGATTTAGACTCTTTAGACAACATGGTTTTAAAGTCTCCCAAGAAGTATTTGATCGTTTCAAGAACGAGAATGGTACGTATTTCAAGCACGACGATACAAAGGGATTGTTGCAGCTCTACGAAGCATCATTCCTAGTGCGAGAAGGCGAAGAGACACTCGAACAAGCACGAGAATTTGCCACCAAATCCCTACAAAGAAAACTTGATGAGGATGGTGATGGAATTGACGCCAATATCGAATCATGGATCCGCCACTCTCTGGAGATCCCACTTCATTGGAGGGCTCAGAGGCTAGAGGCGAGATGGTTCCTAGATGCTTATGCGAGAAGGCCCGACATGAACCCCGTTATCTTCGAGCTTGCTAAACTCAACTTCAATATTGTCCAAGCAACACAACAAGAAGAATTGAAAGCTCTCTCGAGGTGGTGGAGTAGTTTAGGCCTAGCTGAAAAACTCCCATTTGTGAGGGATAGGCTTGTGGAAAGCTACTTTTGGGCTATTCCACTCTTTGAGCCTCATCAATATGGATATCAAAGAAAAGTGGCCACCAAGATCATAACCCTAATCACATCTTTAGACGATGTTTACGATATCTATGGCACGTTAGATGAATTGCAACTATTTACGAACTTATTTGAAAGATGGGATAATGCATCAATCGGCCGACTTCCTGAATACTTGCAATTGTTCTATTTCGCAATCCACAACTTTGTTTCCGAGGTGGCTTACGACATTCTCAAAGAAAAGGGTTTCACTAGTATTGTATATTTACAGAGATCGTGGGTGGATTTGCTAAAAGGATACCTAAAAGAGGCAAAGTGGTACAATAGTGGATACACGCCAAGCCTCGAGGAATATTTCGACAACGCATTCATGACAATAGGGGCCCCTCCGGTACTATCGCAAGCTTATTTCACATTAGGAAGCTCGATGGAGAAACCGATCATCGAGAGCATGTACGAATATGACAACATACTTCGCGTTTCGGGAATGCTCGTGAGGCTTCCCGATGACCTAGGAACATCATCGTTCGAGATGGAGAGAGGCGACGTGCCGAAATCGGTCCAGCTATACATGAAGGAAACAAATGCTACGGAGGAGGAGGCGGTGGAGCACGTGAGGTTTTTGAATCGGGAGGCGTGGAAGAAGATGAACACGGCGGAGGCGGCCGGTGATTCTCCGTTAGTGAGTGACGTGGTGGCGGTGGCGGCGAATCTTGGAAGGGCGGCGCAGTTTATGTATTTCGACGGAGATGGTAACCAGTCTAGTTTGCAGCAGTGGATTGTGAGCATGCTGTTCGAGCCGTACGCATGA
(R)−LIS タンパク質
564aa(配列番号33)
MSININMPAAAVLRPFRCSQLHVDETRRSGNYRPSAWDSNYIQSLNSQYKEKKCLTRLEGLIEQVKELKGTKMEAVQQLELIDDSQNLGLSYYFQDKIKHILNLIYNDHKYFYDSEAEGMDLYFTALGFRLFRQHGFKVSQEVFDRFKNENGTYFKHDDTKGLLQLYEASFLVREGEETLEQAREFATKSLQRKLDEDGDGIDANIESWIRHSLEIPLHWRAQRLEARWFLDAYARRPDMNPVIFELAKLNFNIVQATQQEELKALSRWWSSLGLAEKLPFVRDRLVESYFWAIPLFEPHQYGYQRKVATKIITLITSLDDVYDIYGTLDELQLFTNLFERWDNASIGRLPEYLQLFYFAIHNFVSEVAYDILKEKGFTSIVYLQRSWVDLLKGYLKEAKWYNSGYTPSLEEYFDNAFMTIGAPPVLSQAYFTLGSSMEKPIIESMYEYDNILRVSGMLVRLPDDLGTSSFEMERGDVPKSVQLYMKETNATEEEAVEHVRFLNREAWKKMNTAEAAGDSPLVSDVVAVAANLGRAAQFMYFDGDGNQSSLQQWIVSMLFEPYA
【0137】
そして、各粗酵素液を用いて、前記実施例2と同様にして、活性測定を行った。なお、活性測定の反応液(3ml)における前記粗酵素のタンパク質使用量は、5〜5.5mgとした。
【0138】
これらの結果を、図1〜図3に示す。図1〜図3は、それぞれ、生成成分のガスクロマトグラムであり、図1は、FA25 cDNA由来の組換えタンパク質の結果(FA25)、図2は、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質の結果(FA26)、図3は、SS19 cDNA子由来の組換えタンパク質の結果(SS19)を示し、それぞれ、ラベンダー(R)−LIS cDNA由来の組換えタンパク質の結果(LaLIS)を合わせて示す。図1〜図3に示すように、FA25 cDNA由来およびFA26 cDNA由来の組換えタンパク質によれば、既知の(R)−LIS cDNA由来の組換えタンパク質よりも、リナロール生成量が多く、有意に強い活性を示した。また、SS19 cDNA由来の組換えタンパク質は、既知の(R)−LIS cDNA由来の組換えタンパク質と同等の生成量であり、同等の活性を示した。
【0139】
[実施例4]
リナロールは3位に不斉炭素をもち、(3S)−リナロールおよび(3R)−リナロールの1組の光学異性体が存在する。そこで、本発明のLISタンパク質により生成したリナロールがいずれの光学異性体であるかを確認した。
【0140】
前記実施例2で得られた、反応後に回収した抽出液を、GC−FIDにより分析した。分析条件は、以下の通りとした。下記条件下、(3S)−リナロールは、保持時間23.8分に、(3R)−リナロールは、保持時間24.0分に、それぞれ検出されることを、標品で確認した。
キャピラリーカラム:InertCap CHIRAMIX
(30m×0.25mm×0.25μm、ジーエルサイエンス社)
キャリアガス:He
温度条件:50℃で1分間保持後、3℃/minで180℃まで昇温し、最後に180℃で1分間保持
注入口温度:230℃
検出器温度:250℃
試料:スプリットモード10:1で1μl注入
【0141】
これらの結果を図4〜図6に示す。図4〜図6は、それぞれ、生成成分のガスクロマトグラムであり、図4は、FA25 cDNA由来の組換えタンパク質の結果(FA25)、図5は、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質の結果(FA26)、図6は、SS19 cDNA由来の組換えタンパク質の結果(SS19)を示し、それぞれ、コントロールとして、(3R)−リナロールおよび(3S)−リナロールの標品(STD)の結果を合わせて示す。図4〜図6に示すように、いずれの組換えタンパク質を使用した抽出液においても、(3R)−リナロールと保持時間が一致するシグナルが得られた。この結果から、フリージア由来のFA25タンパク質およびFA26タンパク質、スイトピー由来のSS19タンパク質は、いずれも、(3R)−リナロール合成活性を有することが確認できた。
【0142】
[実施例5]
フリージア由来のLIS cDNAを発現させた組換えLISタンパク質と、公知のラベンダー(Lavandula angustifolia)由来のリナロール合成酵素((R)−LIS) cDNAを発現させた組換えリナロール合成酵素とについて、それぞれの精製酵素タンパク質を用いてリナロール合成活性を比較した。
【0143】
(1)組換えLISタンパク質の発現誘導
前記実施例2および実施例3と同様にして、フリージア由来のLIS遺伝子としてFA26 cDNAと、前記ラベンダー由来の(R)−LIS cDNAを、それぞれ大腸菌に導入した。これらの形質転換体を用いて、以下の方法により、組換えLISタンパク質の発現を誘導した。タンパク質の発現誘導は、Overnight Express Autoinduction System 1(Novagen社)を用いて行った。
【0144】
前記の形質転換株を、アンピシリン50μg/mlおよび0.05%グルコースを含むLB培地10mlにより、37℃で4時間振とう培養した。そして、OnEx Solution 1 2ml、OnEx Solution 2 5ml、OnEx Solution 3 100μlおよびアンピシリン50μg/mlを含むLB培地 100mlに前記培養液のうち2mlを加え、16℃で24時間振とう培養した。これを各5本準備し、各合計500mlを培養した。得られた培養液を遠心(5000×g、5分間、4℃)し、大腸菌を集菌した。前記菌体を、菌体1gあたり10mlの緩衝液[50mmol/L MOPSO緩衝液(pH7.0)、5mmol/L DTT、5mmol/L アスコルビン酸ナトリウム、0.1mmol/L APMSF、10%グリセロール]に懸濁した。前記懸濁液を超音波処理して、前記大腸菌を破砕した後、遠心分離(15,000rpm、15分、4℃)し、さらに、0.45μm MILLEX−HPフィルター(MILLIPORE)でろ過後、得られた上清を、粗酵素液とした。
【0145】
次に、前記粗酵素を、Profinia Protein Purification System(BIO RAD社)を用いて、Bio−Scale Mini Profinity IMAC Cartridges 1ml(BIO RAD社)でHis Tag精製後、Bio−Scale Mini Bio−Gel P−6 Desalting Cartridges 10ml(BIO RAD社)にて脱塩した。
【0146】
次に、脱塩後の前記精製酵素液を、Econo−Pac 10DG Desalting Columns(BIO RAD社)を用いて、緩衝液[20mmol/L MOPSO緩衝液(pH7.0)、1mmol/L DTT、0.1mmol/L APMSF、10%グリセロール]に置換後、以下の酵素反応に用いた。
【0147】
(2)LISタンパク質の活性測定
前記精製酵素液に、試薬[10μmol/L GPP、1mmol/L MgCl、0.5mmol/L MnCl、0.1mmol/L NaWO、0.05mmol/L NaF]を添加し、全量3mlの反応液に調整した。なお、精製タンパク質の使用量は、0.3mgとした。そして、この反応液を30℃で3時間あるいは10時間反応させた。なお、反応中、容器内の上部にヘッドスペース成分の捕集剤としてMonoTrap DCC18(ジーエルサイエンス社)を1枚吊るしておき、前記ヘッドスペース中に揮発した生成成分を、前記捕集剤で採集した。
【0148】
次に、前記捕集剤を回収し、前記捕集剤に、ジクロロメタン 2mlを添加した後、超音波処理によって、揮発成分を抽出し、回収した。ジクロロメタン中に抽出された揮発成分を濃縮乾固し、さらに、ジクロロメタン 50μlに再溶解した。この溶解液を、生成成分の抽出液として、GC−MSで分析した。分析条件は、以下の通りとした。下記条件下において、リナロールは、保持時間32.8分に検出され、MSスペクトルで、m/z 154,121,93,71の特徴的なフラグメントイオンが検出されることを、標品により確認した。
キャピラリーカラム:HP INNOWax
(60m×0.25mm×0.25μm、Agilent社)
キャリアガス:He
温度条件:40℃で10分間保持後、5℃/minで240℃まで昇温し、最後に240℃で30分間保持
注入口温度:250℃
トランスファーライン温度:230℃
試料:スプリットレスモードで1μl注入
【0149】
これらの結果を、図7に示す。図7は、生成成分のガスクロマトグラムであり、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質(FA26)と、ラベンダー(R)−LIS cDNA由来の組換えタンパク質の結果(LaLIS)を合わせて示す。図7に示すように、3時間反応させた場合、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質によれば、既知のラベンダー(R)−LIS cDNA由来の組換えタンパク質よりも、リナロール生成量が約7.2倍多く、有意に強い活性を示した。さらに、図8に示すように、10時間反応させた場合、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質によるリナロール生成量は、ラベンダー(R)−LIS cDNA由来の組換えタンパク質によるリナロール生成量の約30.8倍であった。一方、10時間反応したラベンダー(R)−LIS cDNA由来の組換えタンパク質によるリナロール生成量は、3時間反応した場合とほとんど変化がなかった。このことから、ラベンダー(R)−LIS cDNA由来の組換えタンパク質に比べ、FA26 cDNA由来の組換えタンパク質は、安定性が高く、高い反応性を有することが明らかとなった。なお、cDNAを挿入していない空ベクターpET15bを導入した大腸菌では、リナロール活性は確認できなかった(図7、8におけるpET15b)。
【0150】
[実施例6]
フリージアおよびスイトピー由来のLIS遺伝子のcDNAを、それぞれバイナリーベクターに導入し、トレニアに形質転換した。そして、得られた組換え体におけるリナロール合成活性を確認した。また、対照として、既知のラベンダー(R)−LIS遺伝子のcDNAについても、同様に形質転換およびリナロール合成活性の確認を行った。
【0151】
1.各種バイナリーベクターの構築
(1)pSPB5083(El235Sp::FA25::Nost)の構築
植物においてFA25遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5083は、以下の方法で構築した。
【0152】
配列番号1に示すFA25 cDNA(s+)コーディング配列に対して、開始コドンの5’側にKpnI認識配列を、終止コドンの3’側にSalI認識配列を、それぞれ導入するため、PCR反応を行った。前記PCR反応は、下記に示す2種のプライマーtrFA25FWおよびtrFA/nos_RVを含む下記組成のPCR反応液を使用し、98℃で10秒、65℃で15秒、72℃で1分30秒の反応を1サイクルとし、合計25サイクル行った。
(FA25用プライマー)
trFA25_FW(配列番号34)
5’-ATTCGGAGAGGTACCATGGCTCTCTTGCCGTGT-3’
trFA25/nos_RV(配列番号35)
5’-GAAATTCGGGTCGACTTAGAGGGGAATGGGTTCAAA-3’
(PCR反応液)
pSPB5025 10pg
1x PrimeSTAR MasterMix(Takara社)
0.2mmol/L dNTPs(Takara社)
プライマー 各0.2μmol/L
総体積 20μl
【0153】
得られたPCR産物5μlに、Cloning Enhancer 2μlを加え、37℃で15分反応後、さらに80℃で15分反応させた。この反応液に、1x In−Fusion Reaction buffer(Clontech社)、In−Fusion Enzyme(Clontech)1μl、LaLIS遺伝子を除いたpSPB3593 100ng、Cloning Enhancer Treated PCR Insert 2μlを添加して、総体積10μlに調整した。前記pSB3593は、pUCPP(WO2005/017147)上に、El35Sプロモーター、ラベンダー由来リナロール合成酵素(LaLIS)遺伝子およびNosターミネーターを有するベクターであり、KpnIとSalIで消化することにより、LaLIS遺伝子を除いた。そして、37℃で15分反応させた後、50℃で15分反応させた。この混合液の全量2.5μlを、Competent high DH5α (TOYOBO社)に形質転換した。
【0154】
そして、得られた4種の形質転換株よりプラスミドDNAを抽出し、合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法により全塩基配列を決定した。その結果、開始コドンの5’側にKpnI認識配列、終始コドンの3’側にSalI認識配列がそれぞれ導入された、配列番号1に示すFA25 cDNA(s+)のコーディング配列を有するクローンが得られた。このクローンを、pSPB5079とした。
【0155】
次に、pBINPLUSをPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これにpSPB5079をPacIとDraIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上にカリフラワーモザイクウイルス由来El35Sプロモーター、フリージア由来FA25遺伝子、アグロバクテリウム由来Nosターミネーターを有する発現ベクターであり、pSPB5083とした。
【0156】
(2)pSPB5082(El235Sp::FA25::HSPt)の構築
植物において、FA25遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5082は、以下の方法で構築した。
【0157】
配列番号1に示すFA25 cDNA(s+)のコーディング配列に対して、開始コドンの5’側にKpnI認識配列を導入するため、PCR反応を行った。このPCR反応は、下記に示す2種のプライマーtrFA25_FWおよびtrFA25/HSP_RVを含む下記組成のPCR反応液を使用した。そして、さらに、植物体における目的遺伝子産物の高発現のため、シロイヌナズナ由来HSPターミネーター配列に対して、終止コドンの3’側にEcoRI認識配列を導入すべく、PCR反応を行った。このPCR反応は、下記に示す2種類のプライマーHSP/FA25_FWおよびTrHSPt_RV2を含む下記組成のPCR反応液を使用した。これらのPCRは、それぞれ、98℃で10秒、65℃で15秒、72℃で1分30秒の反応を1サイクルとし、合計25サイクル行った。
(FA25用プライマー)
trFA25 FW(配列番号34)
5’-ATTCGGAGAGGTACCATGGCTCTCTTGCCGTGT-3’
trFA25/HSP_RV(配列番号36)
5’-ATCTTCATCTTCATATTAGAGGGGAATGGGTTCAAAAAG-3’
(HSPターミネーター用プライマー)
HSP/FA25_FW(配列番号37)
5’-CCCATTCCCCTCTAATATGAAGATGAAGAT-3’
TrHSPt_RV2(配列番号38)
5’-GTTAATTAAGAATTCCTTATCTTTAATCATATTCCATAGT-3’
(PCR反応液)
pSPB5025あるいはpRI201-AN-GUS 10pg
1x PrimeSTAR MasterMix(Takara社)
0.2mmol/L dNTPs(Takara社)
プライマー 各0.2μmol/L
総体積 20μl
【0158】
得られた各PCR産物5μlについて、それぞれCloning Enhancer 2μlを加え、37℃で15分反応後、さらに80℃で15分反応させた。この反応液に、1x In−Fusion Reaction buffer(Clontech社)、In−Fusion Enzyme(Clontech社) 1μl、LaLIS遺伝子を除いたpSPB3593 100ng、Cloning Enhancer−Treated PCR Insert 2μlを添加して、総体積10μlに調整した。前記pSB3593は、前記(1)と同じであり、KpnIとSalIで消化することにより、LaLIS遺伝子を除いた。そして、37℃で15分反応させた後、50℃で15分反応させた。この混合液の全量2.5μlを、Competent high DH5 DH5α(TOYOBO社)に形質転換した。
【0159】
そして、得られた4種の形質転換株よりプラスミドDNAを抽出し、合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法により全塩基配列を決定した。その結果、FA25 cDNA(s+)配列の開始コドンの5’側にKpnI認識配列、HSPターミネーター配列の終始コドンの3’側にEcoRI認識配列がそれぞれ導入された、配列番号1に示すFA25 cDNA(s+)のコーディング配列およびHSPターミネーター配列を有するクローンが得られた。このクローンを、pSPB5078とした。
【0160】
次に、pBINPLUSをPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これにpSPB5078をPacIとDraIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、、pBINPLUS上にカリフラワーモザイクウイルス由来El35Sプロモーター、フリージア由来FA25遺伝子、シロイヌナズナ由来HSPターミネーターを有する発現ベクターであり、pSPB5082とした。
【0161】
(3)pSPB5091(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::FA25::Nost)の構築
植物において、FA25遺伝子およびAmGPPS.SSU、AmGPPS.LSU遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5091は、以下の方法で構築した。
【0162】
まず、キンギョソウ由来ゲラニルピロリン酸合成酵素について、スモールサブユニット(AmGPPS.SSU)遺伝子およびラージサブユニット(AmGPPS.LSU)遺伝子の取得を行った。
【0163】
キンギョソウ(品種メリーランドトゥルーピンク、株式会社ムラカミシード)の花から、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、トータルRNAを抽出した。前記トータルRNAのうち1μgから、SuperScript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を用いて、製造業者が推奨する方法により、cDNAを合成した。次に、合成したcDNA 1μlを鋳型とし、プライマーおよびPrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(Takara)1.25Uを用いて、製造業者の推奨する方法により計25μlの反応液でPCRを行った。スモールサブユニット遺伝子の増幅には、その既知配列(AmGPPS.SSU;GenBank Accesion No.AY34686.1)に基づいて作製した2種類のスモールサブユニット増幅用プライマー AmGPPS・SSU−F2とAmGPPS・SSU−R2を、各0.2μmol/Lの濃度で使用した。また、ラージサブユニット遺伝子の増幅には、その既知配列(AmGPPS.LSU;GenBank Accesion No.AY534687.1)に基づいて作製した2種類のラージサブユニット増幅用プライマー AmGPPS・LSU−FとAmGPPS・LSU−Rを、各0.2μmol/Lの濃度で使用した。PCRは、98℃10秒、55℃15秒、72℃2分を1サイクルとして合計30サイクル繰り返した後、72℃で4分間保持した。
【0164】
得られたPCR産物を、アガロースゲル電気泳動で分離した。そして、約0.95kbおよび1.3kbのバンドをそれぞれ回収し、Zero Blunt TOPO PCRクローニングキット(Invitrogen)を用いて、製造者が推奨する方法で、pCR4 Blunt TOPOベクター(Invitrogen)にサブクローニングした。得られたプラスミドの塩基配列を決定したところ、AmGPPS.SSUのアミノ酸配列(配列番号54)をコードする塩基配列(配列番号53)およびAmGPPS.LSUのアミノ酸配列(配列番号56)をコードする塩基配列(配列番号55)を含むプラスミドが得られた。前者のプラスミドをpSPB3506、後者のプラスミドをpSPB1400とした。AmGPPS.SSUは、例えば、GenBank AY534686.1に登録されており、AmGPPS.LSUは、例えば、GenBank AY534687.1に登録されている。
AmGPPS・SSU−F2(配列番号39)
5’-AAATGGCCCACGGCCTCAC-3’
AmGPPS・SSU−R2(配列番号40)
5’-CATCAGGGTTGTAGGTCTAATTACCCCT-3’
AmGPPS・LSU−F(配列番号41)
5’-TCAACAACAATGAGCCTGGTAAATC-3’
AmGPPS・LSU−R(配列番号42)
5’-TCACAAATGAAGTTGTGTTATACATGACAT-3’
【0165】
AmGPPS.SSU 遺伝子
894bp(配列番号51)
ATGGCCCACGGCCTCACCCATTTCAACACCAAATCGGGTTTATTCCCATCTATCACCAAATCAAAAACAACCCGTCCATCAACCCGACCCGTGATTCTCGCCATGACCCGGACCCAAACTTACCGGGCCACCATTGAATCCGACATTGAATCTTATCTCAAGAAGGCCATCCCAATCCGGGCACCTGAATCCGTATTCGAGCCCATGCACCACCTCACGTTTGCCGCCCCAAGAACCAGCGCATCGGCTTTATGCGTGGCAGCGTGCGAGCTCGTTGGCGGCGACCGAAGCGATGCCATGGCGGCGGCGGCGGCGGTGCATCTCATGCACGTGGCGGCGTACACACACGAGAACCTTCCTCTTACCGACGGGCCCATGTCCAAATCGGAAATCCAACACAAGTTCGATCCGAATATCGAACTTTTGACAGGAGACGGAATCATACCATTCGGGCTGGAGTTGATGGCGAGATCAATGGATCCGACCCGGAACAACCCGGATAGGATCCTAAGAGCGATAATCGAACTCACCCGGGTCATGGGCTCAGAGGGAATTGTAGAAGGGCAATACCATGAACTTGGTCTAAATCAATTAAACGATTTAGAACTCATCGAGTATGTTTGCAAGAAAAAAGAAGGGACACTACATGCATGTGGGGCCGCTTGTGGAGCAATTTTAGGTGGATGTGATGAAGATAAAATAGAAAAGTTGAGAAGATTCGGACTTTATGTGGGTACGGTTCAAGGGTTGTTGGGTAAAAATAGATCCGGATTTGAAGGAAGAATTAAGGAATTGAAGGAATTGGCTGTTAAGGAACTGGAGAGCTTTGGTGGTGAGAAAATTGAGCTGATTAGGGGCGTTTTTGAGCTAGAGCATAGTCTTGCTGGTGTTTAA
AmGPPS.SSU タンパク質
297aa(配列番号52)
MAHGLTHFNTKSGLFPSITKSKTTRPSTRPVILAMTRTQTYRATIESDIESYLKKAIPIRAPESVFEPMHHLTFAAPRTSASALCVAACELVGGDRSDAMAAAAAVHLMHVAAYTHENLPLTDGPMSKSEIQHKFDPNIELLTGDGIIPFGLELMARSMDPTRNNPDRILRAIIELTRVMGSEGIVEGQYHELGLNQLNDLELIEYVCKKKEGTLHACGAACGAILGGCDEDKIEKLRRFGLYVGTVQGLLGKNRSGFEGRIKELKELAVKELESFGGEKIELIRGVFELEHSLAGV
【0166】
AmGPPS.LSU 遺伝子
1119bp(配列番号53)
ATGAGCCTGGTAAATCCCATTACAACCTGGTCAACAACAACAACCTCAAAATCCCCAAAAAATGTCCAAACCACCACCAGATCCAGATCCATCATTCTCCCTCACAAAATCTCCCTTTTCCCATCAAACCCCAAATCAAAATCAAAAACCCACCTCAGATTCTCAATATCATCAATCCTGACGAAGAACCCACAAGAATCAAGCCAAAAAACCTCCAAAGATCCAACCTTTACCCTCGATTTCAAAACCTACATGCTAGAAAAAGCCAGCTCTGTTAACAAAGCCTTAGAACAAGCTGTTTTACTCAAAGAGCCCTTAAAAATCCACGAATCGATGAGGTACTCGCTTCTAGCCGGGGGCAAAAGGGTCAGACCAATGCTCTGCATCGCCGCTTGTGAGCTAGTTGGTGGGCTGGAATCCACTGCGATGCCCTCAGCTTGTGCTGTTGAAATGATCCATACCATGTCTTTGATCCACGATGATTTGCCCTGTATGGATAACGACGATTTACGACGTGGAAAGCCCACAAACCACAAGATTTATGGCGAAGACGTGGCGGTTTTAGCCGGGGATGCCCTGTTAGCGTTCTCGTTCGAGCACGTGGCAAAATCGACGAAAGGGGTGTCGTCGGATAGGATTGTTAGGGTGATTGGTGAATTGGCTAAGTGTATTGGCTCTGAGGGTTTAGTTGCAGGCCAAGTGGTTGATATAAGTTCTGAAGGAATGACTGAAGTTGGATTGGAGCATTTGGAGTTTATCCACGTGCACAAGACCGCGGCGTTGTTGGAGGCTTCGGTGGTTTTGGGCGCGATTGTGGGTGGTGCGGATGATGAGGATGTTGAGAAGTTGAGGAAATTCGCGAGGTGTATCGGGCTTTTGTTTCAAGTGGTTGATGATATTTTGGATGTTACTAAGTCTTCGCAAGAATTGGGGAAGACGGCGGGTAAAGACTTGGTTGCGGATAAGACTACGTATCCGAAGCTGCTTGGGATTGAGAAGTCGAGGGAGTTTGCGGAGAAGTTGAATAGGGAGGCGCAGGAGCAGCTCGAGGGGTTCGATTCGGTTAAGGCTGCGCCGTTGATCGCGTTGGCTAACTACATCGCTTATAGAGATAATTGA
AmGPPS.LSU タンパク質
372aa(配列番号54)
MSLVNPITTWSTTTTSKSPKNVQTTTRSRSIILPHKISLFPSNPKSKSKTHLRFSISSILTKNPQESSQKTSKDPTFTLDFKTYMLEKASSVNKALEQAVLLKEPLKIHESMRYSLLAGGKRVRPMLCIAACELVGGLESTAMPSACAVEMIHTMSLIHDDLPCMDNDDLRRGKPTNHKIYGEDVAVLAGDALLAFSFEHVAKSTKGVSSDRIVRVIGELAKCIGSEGLVAGQVVDISSEGMTEVGLEHLEFIHVHKTAALLEASVVLGAIVGGADDEDVEKLRKFARCIGLLFQVVDDILDVTKSSQELGKTAGKDLVADKTTYPKLLGIEKSREFAEKLNREAQEQLEGFDSVKAAPLIALANYIAYRDN
【0167】
次に、pUCAA(WO2004/018682参照)上に、Mac1プロモーター、カーネーション由来S12A2遺伝子およびmasターミネーターを有する、pSPB1477を準備した。前記pSPB1477を、XbaIとKpnIで消化して、カーネーション由来S12A2遺伝子を除き、これに、前記(3)のpSPB3506をXbaIとKpnIで消化して得られる約0.95kbのDNA断片(AmGPPS.SSU遺伝子)を連結した。得られたプラスミドは、そのpUCAA上に、Mac1プロモーター、AmGPPS.SSU遺伝子、およびmasターミネーターを有するプラスミドであり、pSPB3513とした。
【0168】
さらに、前記pSPB1400をXbaIとKpnIで消化して得られる約1.3kbのDNA断片(AmGPPS.LSU遺伝子)を、XbaIとKpnIで消化したpSPB2311(WO2007/049816参照)に連結した。得られたプラスミドは、そのpBINPLUS上に、Mac1プロモーター、AmGPPS.LSU遺伝子およびmasターミネーターを有するプラスミドであり、pSPB3514とした。次に、前記pSPB3513をAscIで消化し、得られる約3kbのDNA断片を、前記pSPB3514のAscI部位に連結した。このプラスミドを、pSPB3533とした。
【0169】
前記pSPB3533をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに、pSPB3560をPacIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。前記pSPB3560は、pUCPP(WO2005/017147)上に、El35Sプロモーター、クラーキア由来LIS遺伝子およびNosターミネーターを有するプラスミドである。前記DNA断片の連結により得られたプラスミドは、そのpBINPLUS上に、AmGPPS.SSU遺伝子、AmGPPS.LSU遺伝子およびクラーキア由来LIS遺伝子を有するプラスミドであり、pSPB3562とした。
【0170】
次に、pBINPLUSのマルチクローニングサイトにSgfIとFseIを付加したpSPB1840を、AscIとPacIで消化した。そして、pSPB3562をAscIで消化後、PacIで部分消化して得られた約9.5kbのDNA断片を、前記pBINPLUSの消化物に連結した。このプラスミドをpSPB5007とした。
【0171】
最後に、前記pSPB5007をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに前記(1)のpSPB5079をPacIとDraIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上に、AmGPPS.SSU遺伝子、AmGPPS.LSU遺伝子およびフリージア由来FA25遺伝子を有する発現ベクターであり、pSPB5091とした。
【0172】
(4)pSPB5090(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::FA25::HSPt)の構築
植物において、FA25遺伝子およびAmGPPS.SSU、AmGPPS.LSU遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5090は、以下の方法で構築した。
【0173】
前記(3)のpSPB5007をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに前記(2)のpSPB5078をPacIとDraIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上に、フリージア由来FA25遺伝子、キンギョソウ由来AmGPPS.SSU遺伝子およびAmGPPS.LSU遺伝子を有する発現ベクターであり、pSPB5090とした。
【0174】
(5)pSPB5074(El235Sp::FA26::Nost)の構築
植物において、FA26遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5074は、以下の方法で構築した。
【0175】
配列番号5に示すFA26 cDNA(s+)のコーディング配列に対して、開始コドンの5’側にKpnI認識配列を、終止コドンの3’側にSalI認識配列を導入するため、PCR反応を行った。前記PCR反応は、下記に示す2種のプライマーtrFA26_FW2およびtrFA26_RV−nos2を含む下記組成のPCR反応液を使用し、98℃で10秒、65℃で15秒、72℃で1分30秒の反応を1サイクルとし、合計25サイクル行った。
(FA26用プライマー)
trFA26_FW2(配列番号43)
5’-CATTCGGAGAGGTACCATGGCTTTCTTGCCGTGTC-3’
trFA26_RV−nos2(配列番号44)
5’-GAAATTCGGGTCGACTTAGAGGGGAATGGGTTCAATAA-3’
(PCR反応液)
pSPB5026 10pg
1x PrimeSTAR MasterMix(Takara社)
0.2mmol/L dNTPs(Takara社)
プライマー 各0.2μmol/L
総体積 20μl
【0176】
得られたPCR産物5μlに、Cloning Enhancer 2μlを加え、37℃で15分反応後、さらに80℃で15分反応させた。この反応液に、1x In−Fusion Reaction buffer(Clontech社)、In−Fusion Enzyme(Clontech社)1μl、LaLIS遺伝子を除いたpSPB3593 100ng、Cloning Enhancer−Treated PCR Insert 2μlを添加して、総体積10μlに調整した。前記pSPB3593は、前記(1)と同じであり、KpnIとSalIで消化することにより、LaLIS遺伝子を除いた。そして、37℃で15分反応させた後、50℃で15分反応させた。この混合液の全量2.5μlを、Competent high DH5α(TOYOBO社)に形質転換した。
【0177】
そして、得られた4種の形質転換株よりプラスミドDNAを抽出し、合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法により全塩基配列を決定した。その結果、FA26 cDNA(s+)配列の開始コドンの5’側にKpnI認識配列、終始コドンの3’側にSalI認識配列がそれぞれ導入された、配列番号5に示すFA26cDNA(s+)のコーディング配列を有するクローンが得られた。このクローンを、pSPB5070とした。
【0178】
次に、pSPB5001をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに、pSPB5070をPacIとDraIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。前記pSPB5001は、pBINPLUS上に、El35Sプロモーター、ラベンダー由来LIS遺伝子およびNosターミネーターを有するプラスミドである。前記pSPB5001への前記DNA断片の連結により、前記pBINPLUS上に、カリフラワーモザイクウイルス由来El35Sプロモーター、フリージア由来FA26遺伝子およびアグロバクテリウム由来Nosターミネーターを有するプラスミドが得られた。これをpSPB5074とした。
【0179】
(6)pSPB5073(El235Sp::FA26::HSPt)の構築
植物において、FA26遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5073は、以下の方法で構築した。
【0180】
配列番号5に示すFA26 cDNA(s+)のコーディング配列に対して、開始コドンの5’側にKpnI認識配列を導入するため、PCR反応を行った。このPCR反応は、以下に示す2種類のプライマーtrFA26_FW2およびtrFA26_RV−hspを含む下記組成のPCR反応液を使用した。そして、さらに、植物体における目的遺伝子産物の高発現のため、シロイヌナズナ由来HSPターミネーター配列に対して、終止コドンの3’側にEcoRI認識配列を導入すべく、PCR反応を行った。このPCR反応は、下記に示す各2種のプライマーtrHSPt_FWおよびtrHSPt_RV2を含む下記組成のPCR反応液を使用した。これらのpCRは、それぞれ、98℃で10秒、65℃で15秒、72℃で1分30秒の反応を1サイクルとし、合計25サイクル行った。
(FA26用プライマー)
trFA26_FW2(配列番号43)
5’-CATTCGGAGAGGTACCATGGCTTTCTTGCCGTGTC-3’
trFA26_RV−hsp(配列番号45)
5’-TCTTCATATTAGAGGGGAATGGGTTCAATAAG-3’
(HSPターミネーター用プライマー)
trHSPt_FW(配列番号46)
5’-CCCTCTAATATGAAGATGAAGATGAAATATTT-3’
trHSPt_RV2(配列番号38)
5’-GTTAATTAAGAATTCCTTATCTTTAATCATATTCCATAGT-3’
(PCR反応液)
pSPB5026あるいはpRI201-AN-GUS 10pg
1x PrimeSTAR MasterMix(Takara社)
0.2mmol/L dNTPs(Takara社)
プライマー 各0.2μmol/L
総体積 20μl
【0181】
得られた各PCR産物5μlに、それぞれCloning Enhancer 2μlを加え、37℃で15分反応後、さらに80℃で15分反応させた。この反応液に、1x In−Fusion Reaction buffer(Clontech社)、In−Fusion Enzyme(Clontech社) 1μl、LaLIS遺伝子を除いたpSPB3593 100ng、Cloning Enhancer−Treated PCR Insert 各2μlを添加して、総体積10μlに調整した。前記pSB3593は、前記(1)と同じであり、KpnIとSalIで消化することにより、LaLIS遺伝子を除いた。そして、37℃で15分反応させた後、50℃で15分反応させた。この混合液の全量2.5μlを、Competent high DH5α(TOYOBO社)に形質転換した。
【0182】
そして、得られた4種の形質転換株よりプラスミドDNAを抽出し、合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法により全塩基配列を決定した。その結果、FA26 cDNA(s+)配列の開始コドンの5’側にKpnI認識配列、HSPターミネーター配列の終始コドンの3’側にEcoRI認識配列がそれぞれ導入された、配列番号5に示すFA26−cDNA(s+)のコーディング配列およびHSPターミネーター配列を有するクローンが得られた。このクローンを、pSPB5069とした。
【0183】
次に、前記(5)と同様にして、pSPB5001をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに、前記pSPB5069をPacIとDraIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。これにより得られるプローブは、前記sPB5001のpBINPLUS上に、カリフラワーモザイクウイルス由来El35Sプロモーター、フリージア由来FA26遺伝子およびシロイヌナズナ由来HSPターミネーターを有するプラスミドであり、pSPB5073とした。
【0184】
(7)pSPB5075(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp ::FA26::Nost)の構築
植物において、FA26遺伝子およびAmGPPS.SSU、AmGPPS.LSU遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5075は、以下の方法で構築した。
【0185】
前記(3)のpSPB5007をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに前記(5)のpSPB5070をPacIとDraIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上に、フリージア由来FA26遺伝子、キンギョソウ由来AmGPPS.SSU遺伝子およびAmGPPS.LSU遺伝子を有する発現ベクターであり、pSPB5075とした。
【0186】
(8)pSPB5072(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::FA26::HSPt)の構築
植物において、FA26遺伝子およびAmGPPS.SSU、AmGPPS.LSU遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5072は、以下の方法で構築した。
【0187】
前記(3)のpSPB5007をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに前記(6)のpSPB5069をPacIとDraIで消化して得られる約2.9kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上に、フリージア由来FA26遺伝子、キンギョソウ由来AmGPPS.SSU遺伝子およびAmGPPS.LSU遺伝子を有する発現ベクターであり、pSPB5072とした。
【0188】
(9)バイナリーベクターpSPB5084(El235S::SS19::Nost)の構築
植物において、SS19遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5084は、以下の方法で構築した。
【0189】
配列番号9に示すSS19 cDNA(s+)のコーディング配列に対して、開始コドンの5’側にKpnI認識配列を、終止コドンの3’側にSalI認識配列を導入するため、PCR反応を行った。前記PCR反応は、下記に示す2種のプライマーtrSS19_FWおよびtrSS19/nos_RVを含む下記組成のPCR反応液を使用し、98℃で10秒、65℃で15秒、72℃で1分30秒の反応を1サイクルとし、合計25サイクル行った。
(SS19用プライマー)
trSS19_FW(配列番号47)
5’-ATTCGGAGAGGTACCATGGCTGTTACTTCTCAACTAC-3’
trSS19/nos_RV(配列番号48)
5’-GAAATTCGGGTCGACTTAATGGCTAGTGGGTAAT-3’
(PCR反応液)
pSPB5046 10pg
1x PrimeSTAR MasterMix(Takara社)
0.2mmol/L dNTPs(Takara社)
プライマー 各0.2μmol/L
総体積 20μl
【0190】
得られたPCR産物5μlに、Cloning Enhancer 2μlを加え、37℃で15分反応後、さらに80℃で15分反応させた。この反応液に、1x In−Fusion Reaction buffer(Clontech社)、In−Fusion Enzyme(Clontech社) 1μl、LaLIS遺伝子を除いたpSPB3593 100ng、Cloning Enhancer−Treated PCR Insert 2μlを添加して、総体積10μlに調整した。前記pSPB3593は、前記(1)と同じであり、KpnIとSalIで消化することにより、LaLIS遺伝子を除いた。そして、37℃で15分反応させた後、50℃で15分反応させた。この混合液の全量2.5μlを、Competent high DH5α(TOYOBO社)に形質転換した。
【0191】
そして、得られた4種の形質転換株よりプラスミドDNAを抽出し、合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法により全塩基配列を決定した。その結果、配列番号9に示すSS19 cDNA(s+)配列の開始コドンの5’側にKpnI認識配列、終始コドンの3’側にSalI認識配列がそれぞれ導入された、配列番号9に示すSS19 cDNA(s+)のコーディング配列を有するクローンが得られた。このクローンを、pSPB5081とした。
【0192】
次に、pBINPLUSをPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これにpSPB5081をPacIとScaIで消化して得られる約2.8kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上にカリフラワーモザイクウイルス由来El35Sプロモーター、スイトピー由来SS19遺伝子およびアグロバクテリウム由来Nosターミネーターを有する発現ベクターであり、pSPB5084とした。
【0193】
(10)pSPB5097(El235S::SS19::HSPt)の構築
植物において、SS19遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5097は、以下の方法で構築した。
【0194】
配列番号9に示すSS19 cDNA(s+)のコーディング配列に対して、開始コドンの5’側にKpnI認識配列を導入するため、PCR反応を行った。このPCR反応は、下記に示す各2種のプライマーtrSS19_FWおよびtrSS19/HSP_RVを含む下記組成のPCR反応液を使用した。そして、さらに、植物体における目的遺伝子産物の高発現のため、シロイヌナズナ由来HSPターミネーター配列に対して、終止コドンの3’側にEcoRI認識配列を導入するため、PCR反応を行った。このPCR反応は、下記に示す各2種のプライマーHSP/SS19_FWおよびTrHSPt_RV2を含む下記組成のPCR反応液を使用した。これらのPCR反応は、それぞれ、98℃で10秒、65℃で15秒、72℃で1分30秒の反応を1サイクルとし、合計25サイクル行った。
(SS19用プライマー)
trSS19_FW(配列番号47)
5’-ATTCGGAGAGGTACCATGGCTGTTACTTCTCAACTAC-3’
trSS19/HSP_RV(配列番号49)
5’-ATCTTCATCTTCATATTAATGGCTAGTGGGTAATGATGAG-3’
(HSPターミネーター用プライマー)
HSP/SS19_FW(配列番号50)
5’-CCCACTAGCCATTAATATGAAGATGAAGAT-3’
TrHSPt_RV2(配列番号38)
5’-GTTAATTAAGAATTCCTTATCTTTAATCATATTCCATAGT-3’
(PCR反応液)
pSPB5046あるいはpRI201-AN-GUS 10pg
1x PrimeSTAR MasterMix(Takara社)
0.2mmol/L dNTPs(Takara社)
プライマー 各0.2μmol/L
総体積 20μl
【0195】
得られた各PCR産物5μlに、それぞれCloning Enhancer 2μlを加え、37℃で15分反応後、さらに80℃で15分反応させた。この反応液に、1xIn−Fusion Reaction buffer(Clontech社)、In−Fusion Enzyme(Clontech社) 1μl、LaLIS遺伝子を除いたpSPB3593 100ng、Cloning Enhancer−Treated PCR Insert 各2μlを添加して、総体積10μlに調整した。前記pSPB3593は、前記(1)と同じであり、KpnIとSalIで消化することにより、LaLIS遺伝子を除いた。そして、37℃で15分反応させた後、50℃で15分反応させた。この混合液の全量2.5μlを、Competent high DH5α(TOYOBO社)に形質転換した。
【0196】
そして、得られた4種の形質転換株よりプラスミドDNAを抽出し、合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法により全塩基配列を決定した。その結果、SS19 cDNA(s+)配列の開始コドンの5’側にKpnI認識配列、HSPターミネーター配列の終始コドンの3’側にEcoRI認識配列がそれぞれ導入された、配列番号9に示すSS19cDNA(s+)のコーディング配列およびHSPターミネーター配列を有していたクローンが得られた。このクローンを、pSPB5080とした。
【0197】
次に、pBINPLUSをPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これにpSPB5080をPacIとScaIで消化して得られる約2.8kbのDNA断片を連結し、pBINPLUS上にカリフラワーモザイクウイルス由来カリフラワーモザイクウイルス由来El35Sプロモーター、スイトピー由来SS19遺伝子、シロイヌナズナ由来HSPターミネーターを有する発現ベクターpSPB5097を得た。
【0198】
(11)バイナリーベクターpSPB5619(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::SS19::Nost)の構築
植物において、SS19遺伝子およびAmGPPS.SSU、AmGPPS.LSU遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5619は、以下の方法で構築した。
【0199】
(3)で作製したpSPB5007をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに(9)で作製したpSPB5081をPacIとSacIで消化して得られる約2.8kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上に、スイトピー由来SS19遺伝子、キンギョソウ由来AmGPPS.SSU遺伝子およびAmGPPS.LSU遺伝子を有する発現ベクターであり、pSPB5619とした。
【0200】
(12)バイナリーベクターpSPB5098(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::SS19::HSPt)の構築
植物において、SS19遺伝子およびAmGPPS.SSU、AmGPPS.LSU遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5098は、以下の方法で構築した。
【0201】
(3)で作製したpSPB5007をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに(10)で作製したpSPB5080をPacIとScaIで消化して得られる約2.8kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上に、スイトピー由来SS19遺伝子、キンギョソウ由来AmGPPS.SSU遺伝子およびAmGPPS.LSU遺伝子を有する発現ベクターであり、pSPB5098とした。
【0202】
(13)pSPB5001(El235S::LaLIS::Nost)の構築
植物において、ラベンダー由来LIS(LaLIS)遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5001は、以下の方法で構築した。
【0203】
前記(3)のpSPB3560をKpnIとSalIで消化することによりクラーキア由来LIS遺伝子を除いた。他方、pSPB3591をKpnIとSalIで消化して、LaLIS遺伝子を有する約2.8kbのDNA断片を得た。そして、クラーキア由来LIS遺伝子を除いたpSPB3560に、前記DNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pUCPP上に、El35Sプロモーター、LaLIS遺伝子、Nosターミネーターを有するプラスミドであり、pSPB3593とした。
【0204】
次に、pBINPLUSをPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに、前記pSPB3593をPacIで消化して得られる約1.7kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、前記pBINPLUS上に、カリフラワーモザイクウイルス由来El35Sプロモーター、ラベンダー由来LIS遺伝子、アグロバクテリウム由来Nosターミネーターを有する発現ベクターであり、pSPB5001とした。
【0205】
(14)pSPB5003(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::LaLIS::Nost)の構築
植物において、LaLIS遺伝子およびAmGPPS.SSU、AmGPPS.LSU遺伝子を発現するためのバイナリーベクターpSPB5003は、以下の方法で構築した。
【0206】
前記(3)と同じ、pUCAA(WO2004/018682参照)上に、Mac1プロモーターおよびカーネーション由来S12A2遺伝子、masターミネーターを有するpSPB1477を使用した。前記pSPB1477を、XbaIとKpnIで消化して、カーネーション由来S12A2遺伝子を除き、これに、前記(3)のpSPB3506をXbaIとKpnIで消化して得られる約0.95kbのDNA断片(AmGPPS・SSU遺伝子)を連結した。得られたプラスミドは、そのpUCAA上に、Mac1プロモーター、AmGPPS.SSU遺伝子、masターミネーターを有するプラスミドであり、pSPB3513とした。
【0207】
さらに、前記(3)のpSPB1400をXbaIとKpnIで消化して得られる約1.3kbのDNA断片(AmGPPS.LSU遺伝子)を、XbaIとKpnIで消化したpSPB2311(WO2007/049816参照)に連結した。得られたプラスミドは、そのpBINPLUS上に、Mac1プロモーター、AmGPPS.LSU遺伝子、masターミネーターを有するプラスミドであり、pSPB3514とした。
【0208】
前記pSPB3514をAscIで消化後、脱リン酸化処理し、これに前記(3)のpSPB3513をAscIで消化して得られる約3kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドをpSPB3533とした。
【0209】
前記pSPB3533をPacIで消化後、脱リン酸化処理し、これに、前記(13)のpSPB3593をPacIで消化して得られる約2.8kbのDNA断片を連結した。得られたプラスミドは、pBINPLUS上に、ラベンダー由来LIS遺伝子、キンギョソウ由来AmGPPS.SSU遺伝子およびAmGPPS.LSU遺伝子を有する発現ベクターであり、pSPB5003とした。
【0210】
2.形質転換トレニアの作製
トレニア品種サマーウェーブブルー(SWB)の葉片を用い、国際公開公報WO2009/072542に記載された方法に基づき、形質転換を行った。得られた形質転換体は、それぞれ導入した発現ベクターごとに、以下に示す系統名とした。
pSPB5091(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::FA25::Nost):TT175
pSPB5090(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::FA25::HSPt):TT174
pSPB5074(El235Sp::FA26::Nost):TT166
pSPB5073(El235Sp::FA26::HSPt):TT165
pSPB5075(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::FA26::Nost):TT164
pSPB5072(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::FA26::HSPt):TT162
pSPB5001(El235Sp::LaLIS::Nost):TT144
pSPB5003(Mac1p::AmGPPS.SSU::Nost;Mac1p::AmGPPS.LSU::Nost;El235Sp::LaLIS::Nost):TT143
【0211】
3.各組換え体におけるリナロール合成量の測定
前記「2.」で取得した組換え体から開花した花5つをランダムに選択した。そして、これらの花弁の上に、1花あたり、ヘッドスペース成分の捕集剤MonoTrap DCC18(ジーエルサイエンス社)1枚、つまり、1個体あたり計5枚の捕集剤を設置し、ヘッドスペース中に揮発した生成成分を、前記捕集剤で24時間採集した。
【0212】
翌日、前記捕集剤を各個体から5枚まとめて回収し、前記捕集剤にジクロロメタン 2mlを添加した後、超音波処理によって、揮発成分を抽出し、回収した。ジクロロメタン中に抽出された揮発成分を濃縮乾固し、さらにジクロロメタン 100μlに再溶解した。この溶解液を、生成成分の抽出液として、GC−MSで分析した。分析条件は、前記実施例2(3)のGC−MSと同様とした。
【0213】
これらの結果を、下記表1に示す。下記表は、各組換え体について、各5つの花の結果およびその平均値を示す。下記表1に示すように、既知のラベンダー由来のリナロール合成酵素遺伝子を導入した組換え体TT144およびTT143では、いずれもリナロールの合成が認められなかった。これに対して、フリージア由来LIS遺伝子を導入した組換え体は、いずれも、保持時間32.8分にピークが認められ、リナロールが生成成分として検出された。一方、宿主であるSWBからはリナロールが検出されなかった。これらの結果から、前記フリージア由来LIS遺伝子は、植物体においてリナロール合成活性を示すことが確認された。
【0214】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0215】
以上のように、本発明のポリヌクレオチドによれば、遺伝子工学的手法によりリナロール合成酵素の発現が可能である。このため、前記本発明のポリヌクレオチドを、例えば、植物に導入して形質転換体を作製することで、前記形質転換体において、リナロール合成酵素を発現し、これにより香気成分であるリナロールの合成が可能となる。このため、本発明によれば、例えば、植物に芳香性を付与したり、その芳香性の改変を行うことができるため、生花等の園芸植物の栽培において、商品価値の高い園芸植物を提供できることから、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(g)からなる群から選択された少なくとも一つのポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、3、5、7、9または11の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(c)前記(a)のいずれかの塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(d)前記(a)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(e)配列番号2、4、6、8、10または12のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(f)前記(e)のいずれかのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(g)前記(e)のいずれかのアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項2】
前記リナロール合成活性が、(3R)−リナロール合成活性である、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドからなることを特徴とするリナロール合成酵素遺伝子。
【請求項4】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項5】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドまたは請求項4記載の発現ベクターが導入された非ヒト宿主であることを特徴する形質転換体。
【請求項6】
前記非ヒト宿主が、植物体またはその部分である、請求項5記載の形質転換体。
【請求項7】
前記植物が、カーネーションまたはトレニアである、請求項6記載の形質転換体。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一項に記載の形質転換体と同一の性質を有することを特徴とする、前記形質転換体の子孫、栄養繁殖体、器官、組織または細胞。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか一項に記載の形質転換体、もしくは、形質転換体の子孫、栄養繁殖体、器官、組織または細胞の加工品。
【請求項10】
非ヒト宿主に、請求項1または2記載のポリヌクレオチドまたは請求項4記載の発現ベクターを導入する工程を含むことを特徴とする非ヒト宿主の芳香性の改変方法。
【請求項11】
前記非ヒト宿主が、植物体またはその部分である、請求項10記載の改変方法。
【請求項12】
前記植物が、カーネーションまたはトレニアである、請求項11記載の改変方法。
【請求項13】
さらに、前記ポリヌクレオチドまたは前記発現ベクターが導入された前記非ヒト宿主を、生育させる工程を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の改変方法。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか一項に記載の芳香性の改変方法により、非ヒト宿主の芳香性を改変する工程を含むことを特徴とする、芳香性改変非ヒト宿主の製造方法。
【請求項15】
請求項5から7のいずれか一項に記載の形質転換体を、栄養繁殖する工程を含むことを特徴とする芳香性改変非ヒト宿主の製造方法。
【請求項16】
下記(A)〜(C)からなる群から選択された少なくとも一つのタンパク質。
(A)配列番号2、4、6、8、10または12のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)前記(A)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質(C)前記(A)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、リナロール合成活性を有するタンパク質
【請求項17】
前記リナロール合成活性が、(3R)−リナロール合成活性である、請求項16記載のタンパク質。
【請求項18】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドを発現させることにより、前記ポリヌクレオチドがコードするリナロール合成活性を有するタンパク質を合成するタンパク質合成工程を含むことを特徴とする、リナロール合成活性を有するタンパク質の製造方法。
【請求項19】
前記タンパク質合成工程が、前記ポリヌクレオチドが導入された非ヒト宿主を使用し、前記非ヒト宿主の培養により、前記非ヒト宿主において前記ポリヌクレオチドを発現させる工程である、請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
前記タンパク質合成工程において、前記非ヒト宿主が、請求項4記載の発現ベクターが導入された非ヒト宿主である、請求項19記載の製造方法。
【請求項21】
前記タンパク質合成工程が、無細胞タンパク質合成系において前記ポリヌクレオチドを発現させる工程である、請求項18記載の製造方法。
【請求項22】
請求項16または17記載のタンパク質を使用し、前記タンパク質のリナロール合成活性により、リナロールを合成するリナロール合成工程を含むことを特徴とするリナロールの製造方法。
【請求項23】
前記リナロールが、(3R)−リナロールである、請求項22記載の製造方法。
【請求項24】
さらに、請求項18から21のいずれか一項に記載のタンパク質の製造方法により、前記タンパク質を合成するタンパク質合成工程を含み、
前記リナロール合成工程において、前記合成したタンパク質を使用する、請求項22または23記載の製造方法。
【請求項25】
前記タンパク質合成工程が、前記ポリヌクレオチドが導入された非ヒト宿主を使用し、前記非ヒト宿主の培養により、前記非ヒト宿主において前記ポリヌクレオチドを発現させ、前記ポリヌクレオチドがコードするリナロール合成活性を有するタンパク質を合成する工程であり、
前記リナロール合成工程が、前記非ヒト宿主において、前記タンパク質のリナロール合成活性により、リナロールを合成する工程である、請求項24記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−13406(P2013−13406A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131250(P2012−131250)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】