説明

リニアエンコーダ

【課題】 ガラススケール固定用のひも状ないし円柱状の弾性部材が内在する応力による不具合を解消し、温度変化による測定誤差、あるいは測定精度のばらつきの少ないリニアスケールを提供する。
【解決手段】 ガラススケール3と、このガラススケール3を走査して位置測定値を得るスライダユニット4と、これらのガラススケール3とスライダユニット4とを収納する中空状のスケールベース11とを有し、前記ガラススケール3の一部がスケールベース11の取付溝内11aに収納され、この収納されたガラススケール3と取付溝11a側面とが対向する空間の一部領域に弾性部材7が配置され、かつその他の空間領域には接着剤6が配置されてガラススケール3が固定されており、前記弾性部材7は、球状または扁平な球状であり、これが複数並べて配置されている構成のリニアエンコーダとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の加工時における相対移動量を測定する際に好適な光学式のリニアエンコーダに関するものであり、特に熱膨張の影響による測定誤差を防止する構造を有する光学式リニアエンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械等において、被加工物に対する工具の相対移動量を正確に測定することは、精密加工を行う上で極めて重要であり、このための測定装置が種々製品化されている。
【0003】
その1つとして、光学格子を2枚重ね合わせることにより得られるモアレ縞を利用した光学式スケールが従来から知られている。この光学式スケールは、反射性のガラススケールの一面に透光部と非透光部が所定のピッチで配列するよう格子(刻線)を設けたメインスケールと、センサ部の表面に設けた透明ガラスの一面に透光部と非透光部が所定のピッチで配列するよう格子(刻線)を設けたインデックススケールを有し、このメインスケールとインデックススケールを微小な間隔を置いて対向させるとともに、メインスケールの格子に対し微小角度傾けられるようにインデックススケールの格子を配置している。
【0004】
そして、格子が1ピッチP移動すると、モアレ縞は縞の間隔だけ変位することになり、間隔内のスリットの透過光や反射光の変化を読み取ることにより、1ピッチ内の移動量を精密に測定することができるようになる。
【0005】
このような従来の光学式スケール、つまりリニアエンコーダの具体的構成を図6,7に示す。図6は従来のリニアエンコーダ1の正面図、図7はそのA−A’断面矢視図をそれぞれ示している。図示例のリニアエンコーダ1は、ガラススケール3を滑走するスライダユニット4、工作機械等の可動部(図示せず)に取り付けるためのヘッドキャリア6等から構成されている。
【0006】
スライダユニット4は、前記のようにガラススケール3と対向配置され格子(刻線)が設けられたインデックススケールと光学センサとを有するセンサ部41と、ガラススケール3の振れを少なく滑走させるための左右の側部ガイドローラ42、下部ガイドローラ43、および側部下ガイドローラ45とを有する。使用する際は、図7に示されるように、ガラススケール3とスライダユニット4をスケールベース11の内部に収納し、その開口部は第1のシール部材14および第2のシール部材15によって密封して油や埃等が侵入しないような構造となっている。
【0007】
ヘッドキャリア2は、被測定物である工作機械等の可動部に取り付けられ、連結支柱21を介してスライダユニット4と接続されると共に、被測定物の動作にある程度追従できるような自由度をもつ構造になっている。
【0008】
ヘッドキャリア2本体に支柱21を介して保持されるスライダ保持部22には、スライダ保持バネ44の一端側が固定され、その他端側がスライダユニット4に固定されている。このスライダ保持バネ44は、ピアノ線等のような弾性を有する針金状のバネであって、スライダ保持部22からスライダユニット4をガラススケール3側に押しつけるように付勢し保持している。このため、スライダユニット4のセンサ部41は、ガラススケール3に対して恒に一定の距離を保って対向しながら移動することができ、しかも工作機械からの振動に対し追従性をもたせることもできる。
【0009】
ガラススケール3は、図7に示されるように、ひも状ないし円柱状の丸ゴム5と接着剤6とにより、スケールベース11内部の取付溝11aに装着されている。すなわち、図示例の構造では、ガラススケール3を取付溝11aの図面左側面に押しつけるようにして収納し、その余った空間部分に接着剤6とひも状ないし円柱状の丸ゴム5とをそれぞれ埋め込むことで、ガラススケール3を前記右側面方向にゴムの弾性により付勢しながら接着・保持し、振動や熱膨張の影響にも適応できるようになっている。このとき、ガラススケール3はスケールベース11に対して真直性を維持した状態で取り付けられることが前提となる。
【0010】
この、ガラススケール3の取り付けは、通常製品の工場出荷時、工作機械、測長装置に装着後、振動や衝撃などにより、ガラススケール3が真直性を維持し、取付溝11aから脱落しないように取り付けられる。
【0011】
ひも状ないし円柱状の丸ゴム5は、この例ではガラススケール3の中央部と両端部の3箇所にそれぞれ埋め込まれ、その間の空間部分に接着剤が塗布され接着固定される。丸ゴムの取り付け位置や個数は、ガラススケール3の大きさや形状などにより異なる。
【0012】
リニアエンコーダ1は、図示しない工作機械の固定部にスケールベース11が中間サポート12、および両端の取付部13をネジ止め等することにより取り付けられ、また工作機械の可動部にはヘッドキャリア2が取り付けられる。そして、この可動部の移動量(変位)がガラススケール3とスライダユニット4のセンサ部41の相対移動量として検出される。
【0013】
しかし、このような構成のリニアエンコーダ1は、その構成部材であるスケールベース11、ガラススケール3、ひも状ないし円柱状の丸ゴム5、および接着剤6がそれぞれ異なった熱膨張係数を有している。このため、リニアエンコーダ1の取付環境の温度変化に伴い、各部材でそれぞれ異なった温度係数による伸縮が生じる。そして、この各部材毎の異なる伸縮は、以下のような問題を生じることとなる。
【0014】
すなわち、スケールベースの構成部材には、通常アルミニウムが用られるが、このアルミニウムは剛性が低く、温度変化による収縮を抑える機構もないため温度変化の影響を極めて受けやすい。このため、温度変化により、ガラススケールは熱膨張係数の大きなスケールベースの伸縮に引っ張られることになる。
【0015】
一方、ガラススケール3を面圧接固定する丸ゴムは、取付溝とガラススケールとの間に挿入される際にねじれてしまうことが多く、これが不要な応力を内部に蓄えることになる。そして、上記のようなスケールベースとガラススケールの温度係数の違いによる挙動の際、この内部応力により摩擦抵抗やストレスをより多く受けてしまう。
【0016】
その結果、温度変化域から安定域に移行した場合でも、ガラススケールが不規則な位置に挙動してしまうことがある。つまり、一旦温度が変化した後、元の温度に戻った場合でも、同じ精度を示さないという不具合を生じることがあった。また、ガラススケールの精度誤差が温度変化時に大きくなる場合もあり、精度誤差が安定しないといった問題もあった。
【0017】
なお、上記のようなひも状ないし円柱状の丸ゴムを用いてガラススケールを固定する構造は、例えば実開昭55−157713号公報(特許文献1)、特開昭58−174806号公報(特許文献2)、特開昭59−226807号公報(特許文献3)、特開昭59−226809号公報(特許文献4)等に開示されている。
【0018】
しかし、何れの文献も、上記丸ゴムのねじれによるストレスの影響について言及したものはなく、これを示唆する記述もない。
【特許文献1】実開昭55−157713号公報
【特許文献2】特開昭58−174806号公報
【特許文献3】特開昭59−226807号公報
【特許文献4】特開昭59−226809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、上記ガラススケール固定用の弾性部材が内在する応力による不具合を解消し、温度変化による測定誤差、あるいは測定精度のばらつきの少ないリニアスケールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち上記目的は、以下の本発明の構成により達成される。
(1) ガラススケールと、このガラススケールを走査して位置測定値を得るスライダユニットと、これらのガラススケールとスライダユニットとを収納する中空状のスケールベースとを有し、
前記ガラススケールの一部がスケールベースの取付溝内に収納され、
この収納されたガラススケールと取付溝側面とが対向する空間の一部領域に弾性部材が配置され、かつその他の空間領域には接着剤が配置されてガラススケールが固定されており、
前記弾性部材は、球状または扁平な球状であり、これが複数並べて配置されているリニアエンコーダ。
(2) 前記弾性部材は、球状のNBRゴムである上記(1)のリニアエンコーダ。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガラススケール固定用の弾性部材が内在する応力を極力少なくして、それによる不具合を解消し、温度変化による測定誤差、あるいは測定精度のばらつきの少ないリニアスケールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のリニアエンコーダは、例えば図1に示すように、ガラススケール3と、このガラススケール3を走査して位置測定値を得るスライダユニット(図示せず)と、これらのガラススケール3とスライダユニットとを収納する中空状のスケールベース11とを有し、前記ガラススケール3の一部がスケールベース11の取付溝内11aに収納され、この収納されたガラススケール3と取付溝側面11aとが対向する空間の一部領域に弾性部材7が配置され、かつその他の空間領域には接着剤が配置されてガラススケール3が固定されており、前記弾性部材7は、球状または扁平な球状であって、これが複数並べて配置されている。また、好ましくは前記弾性部材は、球状のNBRゴムである。ここで、図1は、本発明のリニアエンコーダの基本構成を示す概略断面斜視図である。
【0023】
このように、ガラススケール3を固定する弾性部材の形状を球状または扁平な球状とすることで、装着時に不要な応力を内在することなく、容易に装着でき、しかも熱膨張係数の違いによるガラススケールとスケールベースのずれ応力を円滑に解放することができ、所定の温度サイクル条件下でもスケールベース11とガラススケール3の位置関係を安定して維持することができる。このため、温度変化による測定誤差、あるいは測定精度のばらつきの少ないリニアエンコーダを提供することができる。
【0024】
本発明では、スケールベースの取付溝側面と収納されたガラススケールとが対向する空間領域の一部に弾性部材が配置される。このような弾性部材としては、金属板を折り曲げたようなバネやコイルバネなどの金属バネを用いることも可能であるが、本発明では価格や取り扱いの面からエラストマー等の弾性部材を用いる。またその形状としては球状または扁平な球状である。
【0025】
ここで、球状とは弾性体の何れの方向からの断面が全て円形となる球体であり、真球度が好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜100μm程度のものがよい。ここで、真球度は、球1個を真円度測定器で互いに90度をなす2または3赤道表面の輪郭を測定し、それぞれの最小外接円から鋼球表面までの半径方向の距離の最大の値として求めることができる。あるいは、球1個を90度および120度のV溝とこれに垂直な測定子との間に置き、方向を変えて測定したときの測定子の動きの最大の値を2で除した値としてもよい。なお、半径法の真円度は、最大半径−最小半径で求められる。l
【0026】
なお、本発明では一見して球状と認められる程度のものでもよく、さらには扁平な球状のものでもよい。ここで扁平な球状とは、例えばラグビーボールのように、断面が円形の部分と断面が楕円形の部分を有するような形状のものをいう。つまり、これらの弾性部材を用いることで、従来線状の接点であったものが点状の接点となり、接触している部材と、弾性部材自体の移動の自由度が増し、移動の際の抵抗も少なくなって、余分な応力を蓄積し難くなる。
【0027】
このような弾性部材としては、所定の弾性率を有する樹脂などの材料であれば特に限定されるものではないが、特にエラストマーとして分類されるものが好ましい。このようなエラストマーとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ネオプレンゴム(NR)、オレフィン系エラストマー、ナイロン系エラストマー、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッソゴム(FPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴムまたは少なくともこれらと同等程度の弾性力を有するものが挙げられる。これらの中でも特にエンコーダの固有振動数に対しかけ離れた固有振動数をもち減衰性に優れたものがよく、特にニトリルブタジエンゴム(NBR)が好ましい。
【0028】
弾性部材の断面(最小断面)の大きさは、隙間に挿入したときに有る程度変形して、その弾性によりガラススケールを固定できるだけの押圧力を生じる程度の大きさとすればよい。また、一箇所に配置される弾性部材の個数やその間隔は、ガラススケールの大きさや、ガラススケールを保持する上で必要な押圧力等を考慮して、最適な数、間隔に決めればよい。具体的な間隔としては、弾性部材同士が接触する程度の間隔または接触しない程度の間隔から弾性部材1個分までの間隔の間で選択することが望ましい。
【0029】
本発明では、スケールベースの取付溝側面と収納されたガラススケールとが対向する空間領域の弾性部材が配置される以外の領域には、少なくともその一部に接着剤が配置される。このような接着剤としては、スケールベースとガラススケールとのずれをある程度吸収するために接着強度が低いものが好ましい。具体的にはJIS K6850に準拠する引張せん断力が、好ましくは11Mpa(N/mm2)以下であり、より好ましくは10Mpa(N/mm2)以下であり、特に6Mpa(N/mm2)以下、場合によっては3Mpa(N/mm2)以下であることが望ましい。またその下限としてはスケールを規制し、保持できる強度を要求されるが、最低限0.6Mpa(N/mm2)程度であれば使用可能である。
【0030】
また、その硬さ(ショアD硬度)としては、好ましくは70未満10以上であり、より好ましくは50以下20以上である。接着剤が硬すぎるとガラススケールとスケールベースとの熱膨張の差を吸収することが困難になり、内部に応力が蓄積されやすくなる。
【0031】
このような接着剤としては、例えばシリコーン系接着剤がある。シリコーン系接着剤としては、例えばセメダイン株式会社(CEMEDINE CO.,LTD.)の「PM100」、「PM155」、「PM165」、「PM300」、「PM200」、「PM155」、「EP001」等が挙げられ、さらにThree・Bond・Co,Ltd.の「1220」、「1221」、「1230」、GE東芝シリコーン株式会社「TSE392」、「TSE3925」、「TSE397」「TSE3971」、「TSE3972」、「TSE3975」、「TSE399」等が挙げられる。
【0032】
このような光学式スケール、つまりリニアエンコーダのより具体的な構成を図2,3に示す。図2は本発明のリニアエンコーダ1の正面図、図3はそのA−A’断面矢視図をそれぞれ示している。図示例のリニアエンコーダ1は、ガラススケール3を滑走するスライダユニット4、工作機械等の可動部(図示せず)に取り付けるためのヘッドキャリア6等から構成されている。
【0033】
スライダユニット4は、周知のようにガラススケール3と対向配置され格子(刻線)が設けられたインデックススケールおよび光学センサを有するセンサ部41と、ガラススケール3を滑らかに滑走させるための左右の側部ガイドローラ42、下部ガイドローラ43、および側部下ガイドローラ45とを有する。使用する際は、図3に示されるように、ガラススケール3とスライダユニット4をスケールベース11の内部に収納し、その開口部は第1のシール部材14および第2のシール部材15によって密封して油や埃等が侵入しないような構造となっている。
【0034】
ヘッドキャリア2は、被測定物である工作機械等の可動部に取り付けられ、連結支柱21を介してスライダユニット4と接続されると共に、被測定物の動作にある程度追従できるような自由度をもつ構造になっている。
【0035】
ヘッドキャリア2本体に支柱21を介して保持されるスライダ保持部22には、スライダ保持バネ44の一端側が固定され、その他端側がスライダユニット4に固定されている。このスライダ保持バネ44は、ピアノ線等のような弾性を有する針金状のバネであって、スライダ保持部22からスライダユニット4をガラススケール3側に押しつけるように付勢し保持している。このため、スライダユニット4のセンサ部41は、ガラススケール3に対して恒に一定の距離を保って対向しながら移動することができ、しかも工作機械からの振動に対し追従性をもたせることもできる。
【0036】
ガラススケール3は、図3に示されるように、球状の弾性部材7と接着剤6とにより、スケールベース11内部の取付溝11aに装着されている。すなわち、図示例の構造では、ガラススケール3を取付溝11aの図面左側面に押しつけるようにして収納し、その余った空間部分に接着剤6と球状の弾性部材7とをそれぞれ埋め込むことで、ガラススケール3を前記右側面方向にゴムの弾性により付勢しながら接着・保持し、振動や熱膨張の影響にも適応できるようになっている。このとき、ガラススケール3はスケールベース11に対して真直性を維持した状態で取り付けられることが前提となる。
【0037】
この、ガラススケール3の取り付けは、通常製品の工場出荷時、工作機械、測長装置に装着後、振動や衝撃などにより、ガラススケール3が真直性を維持し、取付溝11aから脱落しないように取り付けられる。
【0038】
球状の弾性部材である球ゴムは、この例ではガラススケール3の両端部と中央部の3箇所にそれぞれ適当な間隔を置いて複数個埋め込まれ、その間の空間部分にはシリコーン系などの低接着強度で比較的硬度の低い接着剤が塗布され接着固定される。球ゴムの取り付け位置や個数は、上記のようにガラススケール3の大きさや形状などにより異なる。
【0039】
このようなリニアエンコーダ1は、例えば図示しない工作機械の固定部にスケールベース11が中間サポート12、および両端の取付部13をネジ止め等することにより取り付けられ、また工作機械の可動部にはヘッドキャリア6が取り付けられる。そして、この可動部の移動量(変位)がガラススケール3とスライダユニット4のセンサ部41の相対移動量として検出される。
【実施例1】
【0040】
発明サンプルとして図2,3に示すような構成のリニアエンコーダと、比較サンプルとして、図6,7に示すような構成のリニアエンコーダを用意した。ガラススケールの長さは公称読み取り長320mmとし、弾性部材には、NBRゴムの球状のもの(真球度:150〜100μm 以下)を用い、約3mm間隔で、3個をそれぞれ図示例の位置に収納した。接着剤として、シリコーン系接着剤〔1成分型シリコーンシーラント(アルコール型)〕、東レダウコーニング株式会社(旧東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)製、商品名SE 9176 CLEARを用いた。比較サンプルでは、円柱状のNBR丸ゴムを用いた。
【0041】
これら発明サンプルと比較サンプルを20℃→50℃→20℃→0℃→20℃の温度サイクル下において、スケールの位置ずれを調べた。ずれに検出には、ガラススケールの両端部と中央部にそれぞれスライダユニットを配置し、この3つのスライダユニットでスケールベースに対するガラススケールのずれを検出した。結果を図4,5に示す。
【0042】
図4,5から明らかなように、従来のサンプルの図4では、基準温度である20℃から50℃に上昇させたとき、スケール右側の変化量が左側に比べて大きく、中央部分も右側に10μm 以上変化している。また、再び20℃に戻した場合、特に左センサ部からの出力は元の位置から左側に十ミクロン程度ずれてしまっていることが判る。さらに、温度を0℃に下降させたときには、スケール右側の変化量が40ミクロン以上と大きいのに対し、左側では十数ミクロン程度でアンバランスであることが判る。また、中央部分も左側に数ミクロンずれている。そして、元の温度に戻したときには、全体的に数ミクロン〜20ミクロン左側にずれてしまっていることが判る。このように、従来の構成では、熱サイクルが加わった場合、スケールベースに対してガラススケールが位置ずれを起こしてしまって、元の状態には再現できない。
【0043】
これに対し、図5の発明サンプルでは、20℃→50℃→20℃→0℃→20℃の熱サイクル中およびサイクル後の変化量は、温度変化時には左右とも同程度の変化量であり、基準温度である20℃の位置では数ミクロン程度のずれしかなく、しかもずれの量は左右で略均等であり、極めて再現性に優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、工作機械等の加工時における相対移動量を測定するリニアエンコーダのみならず、種々の直線距離、移動量、変位量の測定が必要なリニアエンコーダに応用することが可能であり、スライダユニットも上記実施例等の構造に限定されることなく、種々の構造、方式に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のリニアエンコーダの具体的構成を示す正面図である。
【図2】本発明のリニアエンコーダの具体的構成を示す正面図である。
【図3】図1のA−A断面矢視図である。
【図4】比較サンプルの熱サイクルにおける左右検出ヘッドのずれを示したグラフである。
【図5】発明サンプルの熱サイクルにおける左右検出ヘッドのずれを示したグラフである。
【図6】従来のリニアエンコーダの具体的構成を示す正面図である。
【図7】図6のA−A断面矢視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 リニアエンコーダ
3 ガラススケール
4 スライダユニット
5 丸ゴム(ひも状ないし円柱状)
6 接着剤
7 弾性部材(球ゴム)
11 スケールベース
11a 取り付け溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラススケールと、このガラススケールを走査して位置測定値を得るスライダユニットと、これらのガラススケールとスライダユニットとを収納する中空状のスケールベースとを有し、
前記ガラススケールの一部がスケールベースの取付溝内に収納され、
この収納されたガラススケールと取付溝側面とが対向する空間の一部領域に弾性部材が配置され、かつその他の空間領域には接着剤が配置されてガラススケールが固定されており、
前記弾性部材は、球状または扁平な球状であり、これが複数並べて配置されているリニアエンコーダ。
【請求項2】
前記弾性部材は、球状のNBRゴムである請求項1のリニアエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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