説明

リバスチグミンまたはその誘導体を投与するための経皮治療システム

本発明は、
a)被覆層、
b)有効成分を含有するポリマーマトリックスを含む、前記被覆層上に設けられたリザーバー、
c)コンタクト型接着剤を含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、および
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含み、前記有効成分がリバスチグミンまたはその生理学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは誘導体であり、前記リザーバーのポリマーマトリックスがヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないことを特徴とする、有効成分を経皮投与するための経皮治療システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバスチグミンまたはその生理学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは誘導体を治療目的で経皮投与するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
リバスチグミンは、化学式Iで表されるフェニルカルバマートで、化合物名は(S)−N−エチル−3−[(1−ジメチルアミノ)エチル]−N−メチル−フェニル−カルバマートである。
【化1】

【0003】
リバスチグミンは、中枢神経系に作用するコリンエステラーゼ阻害薬であり、アルツハイマー病およびパーキンソン病の認知症の治療に用いられる活性物質である。
【0004】
リバスチグミンは、遊離塩基として存在し得るが、酸付加塩、水和物、溶媒和物またはその他の誘導体としても存在し得る。別段の定めがない限り、これらの誘導体も、本発明の目的における「リバスチグミン」の定義に包含されるものとする。
【0005】
リバスチグミンの好ましい投与形態として、経皮治療システム、すなわち経皮貼付剤を用いた経皮投与が挙げられる。一般に、経皮貼付剤とは、投与する活性成分を含有した粘着包帯を指す。このような粘着包帯には種々の形状や大きさのものがある。最も単純なタイプは、担体(被覆層)上に有効成分貯蔵部(リザーバー)を設けた粘着性の一枚ものである。通常、このようなタイプのリザーバーは、薬学的に許容される感圧接着剤の中に有効成分を含む形で形成されており、皮膚表面に接触すると、経皮拡散により有効成分が患者の体内へと放出される。
【0006】
より複雑なタイプの貼付剤としては、有効成分貯蔵部(リザーバー)を有し、このリザーバーと皮膚との間に配置されるさらなる接着層を備えることができる多層積層体または多層貼付剤が挙げられる。
【0007】
経皮貼付剤を用いたリバスチグミンの投与形態の1つは、リバスチグミンに関する基本特許である英国特許第2203040号に既に記載されている。この開示における経皮貼付剤は、被覆層およびリザーバーを構成する層からなる。このリザーバーには、有効成分であるリバスチグミンに加えて、親水性ポリマー、非膨張性アクリル酸エステルポリマーおよび皮膚軟化剤が含まれている。
【0008】
英国特許第2203040号の公開後、さらなる経皮治療システム(TTS)、特に、有効成分としてリバスチグミンを含むTTSの開発や報告がなされてきた。国際公開第02/03969号には、皮膚透過性を高めるために、有効成分を含むマトリックス層(リザーバー)に高分散二酸化ケイ素をさらに添加したTTSが記載されている。
【0009】
独国特許第199 18 106号では、酸性のポリアクリル酸コンタクト型接着剤の吸水性および耐水性を改善するために、アクリル酸またはメタクリル酸を構成単位とする、規定量のカルボキシル基を含有するコンタクト型接着ポリマーがリザーバーに含有されている。
【0010】
国際公開第2007/064407(A1)号には、リバスチグミン治療における接着性、忍容性および安全性を改善することを目的としたシリコーンベースの接着層を備えるTTSが開示されている。この国際公開第2007/064407(A1)号によれば、リザーバー層が酸化防止剤を含有することは特に好ましく(7ページ、第4段落)、そのため実施例の製剤すべてに、抗酸化剤であるビタミンEが含まれている。この公開公報で使用されている市販品Duro−tak(登録商標)387−2353は、カルボキシル基を有するポリアクリル酸エステルである。この国際公開第2007/064407(A1)号では、皮膚透過性を高めるために、例えばグリセリン、脂肪酸などの種々の物質をリザーバー層にさらに含有させることが示されている(7ページ、第5段落)。通常、これらの物質には遊離のヒドロキシル基または遊離のカルボキシル基が含まれるため、リザーバー層のポリマーマトリックスにも遊離のヒドロキシル基または遊離のカルボキシル基が存在すると言える。そして、この国際公開第2007/064407(A1)号では、リバスチグミンの安定性に関して特に対策は講じておらず、具体的には、リザーバー層のポリマーマトリックスを構成するポリマーとして、リバスチグミンの分解を防ぐことができるような特定のポリマーを選択する方法について何ら教示していない。
【0011】
米国特許公開第2008/0044461(A1)号には、ドネペジルを含有するTTS製剤が開示されている(実施例を参照のこと)。リバスチグミンについても同様に記載されている(請求項7)。しかし、ポリマーマトリックスを含む有効成分層に関する記載はない。むしろ、この開示における有効成分の放出機構は、膜によって制御されており(いわゆる膜貼付剤)、有効成分を内包したポリマー骨格によって制御されるもの(いわゆるマトリックス型貼付剤)ではない。さらに、米国特許公開第2008/0044461(A1)号の本質的特徴の1つとして、リザーバーにゲル化剤および透過促進剤を含有できることが示されている(請求項1を参照のこと)。透過促進剤としてアルコールが使用され(段落[0053]を参照のこと)、ゲル化剤としてセルロースポリマーが使用される(段落[0055]を参照のこと)ことから、この開示におけるゲル化剤と透過促進剤はいずれも、TTSのリザーバー層に存在する遊離のヒドロキシル基を有する化合物であると言える。
【0012】
米国特許公開第2007/0259028(A1)号には、ドネペジルを含有するTTS製剤が開示されている(実施例を参照のこと)。リバスチグミンについても同様に記載されている(請求項3)。米国特許公開第2007/0259028(A1)号の本質的特徴の1つとして、リザーバー層が例えばグリセリンなどの多価アルコールを含有することが示されている。この米国特許公開第2007/0259028(A1)号においては、遊離のヒドロキシル基がリザーバー層のポリマーマトリックスに必ず存在すると言える。
【0013】
米国特許公開第2004/0086552(A1)号には、非常に長いリストに記載の化合物の中から選択されてもよい有効成分を含むTTS製剤が開示されている(段落[0070]〜[0095]を参照のこと)。「膜貼付剤」やマトリックス型貼付剤も開示されている(段落[0057]および/または[0058]を参照のこと)。しかし、マトリックス型貼付剤に関して、米国特許公開第2004/0086552(A1)号は、マトリックスを構成するポリマーとして、有効成分を安定化させるような特定のポリマーを選択することは教示していない。
【0014】
米国特許第6,689,379(B1)号には、特別な接着層を備えるTTS製剤が開示されている。使用可能な有効成分としてリバスチグミンについても言及されている。この開示における有効成分層は、ヒドロキシル基を有する化合物を含有することが好ましい(請求項10を参照のこと)。そして、この米国特許第6,689,379(B1)号は、リザーバー層のポリマーマトリックスを構成するポリマーとして、リバスチグミンの分解を防ぐことができるような特定のポリマーを選択することは教示していない。
【0015】
一方、欧州特許第1 047 409号では、TTSを用いたリバスチグミン投与に伴う一般的な問題が報告されている。リバスチグミンは、特に酸素の存在下で分解する傾向が強いことが分かっている。欧州特許第1 047 409号によれば、英国特許第2203040号に開示された経皮吸収組成物中では、リバスチグミンを閉じ込めたポリマーマトリックスの形成および組成物の気密包装をもってしてもリバスチグミンの分解は起こる。欧州特許第1 047 409号では、リバスチグミンの安定性が低いという問題を、リバスチグミンの医薬組成物に酸化防止剤を加えることにより解決している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、リバスチグミンを含有し、酸化防止剤を添加せずとも十分な安定性を示す、経皮投与に用いる治療用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、リザーバーのポリマーマトリックスがヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有していなければ、経皮貼付剤中のリバスチグミンは十分な安定性を示すことが見出された。本発明は、特に、ポリマーマトリックスの構成に特別なポリマーを選択することによりリバスチグミンの分解を防ぎ、かつ/または最小限に抑えることに基づくものである。
【0018】
従って、本発明は、十分な安定性を示し、かつリバスチグミンを含有するTTSを提供するとともに、その製造方法も提供する。さらに本発明は、リバスチグミンを含有するTTSにおける、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないポリマーまたはコポリマーの使用に関し、アルツハイマー病およびパーキンソン病の認知症を治療するためのTTSにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
従って、本発明の第1の態様は、リバスチグミンを投与するためのTTSであって、
a)被覆層、
b)有効成分がリバスチグミンまたはその生理学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは誘導体であり、前記有効成分を内包したポリマーマトリックスを含む、前記被覆層上に設けられたリザーバー、
c)平均分子量が30,000〜100,000g/molである第1のポリイソブチレンポリマー、および平均分子量が300,000〜500,000g/molである第2のポリイソブチレンポリマーを含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、ならびに
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含み、前記リザーバーのポリマーマトリックスがヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないことを特徴とするTTSを提供することにある。
【0020】
本発明の第2の態様は、リバスチグミンを投与するためのTTSであって、
a)被覆層、
b)有効成分を内包したポリマーマトリックスを含む、前記被覆層上に設けられたリザーバー、
c)コンタクト型接着剤を含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、および
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含み、前記有効成分がリバスチグミンまたはその生理学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは誘導体であり、前記リザーバーのポリマーマトリックスがヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないことを特徴とするTTSである。
【0021】
「ポリマーマトリックス」とは、ポリマーまたはポリマー混合物を含む3次元構造を有する固体または半固体の組成物を指す。このポリマーまたはポリマー混合物は、通常、3次元の骨格構造を形成しているため、ポリマーマトリックスはポリマー骨格とも表記される。ポリマーマトリックスは、ポリマー以外の物質、例えばマトリックスに内包される有効成分などを含んでいてもよい。有効成分は、ポリマーマトリックス全体に均一に分散していることが好ましい。ポリマーマトリックスが有効成分の放出のための制御機構として働く、いわゆる「マトリックス貼付剤」は、当業者には周知のものである。
【0022】
本発明のTTSにおいて、有効成分であるリバスチグミンは十分な安定性を示す。本明細書における「十分な安定性」とは、温度40℃、相対湿度75%の状態で1ヶ月保存した後の製剤中の有効成分の不純物の総量が、所望の有効成分含有量に対して1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることを意味する。本明細書において、製剤中の有効成分の不純物は、有効成分であるリバスチグミンの分解産物、およびリバスチグミンと共に製剤に充填されたあらゆる混入物(例えば、リバスチグミンの調製時に生じた微量の中間産物)と定義される。
【0023】
有効成分の安定性および/または不純物の量は、実施例に記載の方法と同様にして測定することができる。温度40℃、相対湿度75%の状態で3ヶ月保存した後の分解産物/混入物の総量は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.6重量%未満である。また、温度40℃、相対湿度75%の状態で6ヶ月保存した後の分解産物/混入物の総量は、1重量%未満であることが好ましい。また、温度25℃、相対湿度60%の状態で1ヶ月保存した後の不純物の総量は、0.25重量%未満であることがさらに好ましい。また、温度25℃、相対湿度60%の状態で3ヶ月および6ヶ月保存した後の不純物の総量は、0.5重量%未満であることがさらに好ましい。不純物に関する「重量%」という記載は、別段の定めがない限りは常に製剤中の所望の有効成分含有量を基準とする。
【0024】
本発明のTTSの好ましい使用時間は約24時間であるが、さらに長時間使用することも可能である。
【0025】
酸化防止剤は、TTSのいずれの構成部分にも添加されないことが好ましい。しかし、TTSの作用機構に悪影響を与えなければ、本発明において酸化防止剤を使用することは十分に可能である。ただし、本発明においては、リバスチグミンを安定化させることを目的とした酸化防止剤は不要であることに留意されたい。別の目的であれば、本発明のTTSにおいて酸化防止剤を使用することは可能である。従って、本発明のTTSが酸化防止剤を含有することは、好ましくはないが可能である。
【0026】
本発明における「酸化防止剤」とは、酸化過程に対する遅延、阻害、遮断および/または停止作用を有する、薬学的に許容される化合物または組成物である。酸化防止剤として、具体的には、トコフェロールおよびそのエステル、ゴマ油のセサモール、安息香樹脂の安息香酸コニフェリル、ノルジヒドログアイアレチン酸樹脂およびノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)、没食子酸エステル(特に、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸アミル、没食子酸ブチル、没食子酸ラウリル)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA/BHTおよびブチル−p−クレゾール);アスコルビン酸ならびにその塩およびエステル(例えば、アスコルビン酸パルミテート)、エリソルビン酸(イソアスコルビン酸)ならびにその塩およびエステル、モノチオグリセロール、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、プロピオン酸等の物質が挙げられる。代表的な酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロールおよびそのエステルなどのトコフェロール、ブチルヒドロキシトルエンならびにブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。「トコフェロール」には、トコフェロールのエステルも包含される。公知のトコフェロールとしては、α−トコフェロールが挙げられる。「α−トコフェロール」には、α−トコフェロールのエステル(例えば、酢酸α−トコフェロール)も包含される。
【0027】
トコフェロールは、リザーバーに含有されないことが好ましく、TTS全体に一切含有されないことがより好ましい。さらに別の実施形態において、トコフェロールおよびブチルヒドロキシアニソール(BHA/BHTおよびブチルp−クレゾール)はいずれも、リザーバーに、好ましくはTTS全体に一切含有されない。さらに別の実施形態において、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、およびブチルヒドロキシトルエンはいずれも、リザーバーに、好ましくはTTS全体に一切含有されない。ある特別な実施形態において、トコフェロールおよびそのエステル、ゴマ油のセサモール、安息香樹脂の安息香酸コニフェリル、ノルジヒドログアイアレチン酸樹脂およびノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)、没食子酸エステル(特に、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸アミル、没食子酸ブチル、没食子酸ラウリル)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA/BHTおよびブチル−p−クレゾール);アスコルビン酸およびその塩、アスコルビン酸パルミテート、エリソルビン酸(イソアスコルビン酸)およびその塩およびそのエステル、モノチオグリセロール、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエンならびにプロピオン酸より選択される酸化防止剤はいずれも、リザーバーに、好ましくはTTS全体に一切含有されない。ある特別な好ましい実施形態においては、いかなる酸化防止剤もリザーバーに、より好ましくはTTS全体に一切含有されない。
【0028】
本発明のTTSにおける酸化防止剤の含有量は、(被覆層と剥離層を除く)製剤全体の重量に対して、通常1重量%未満または0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満である。
【0029】
本発明のTTSは多層構造である。被覆層は、使用時に皮膚とは反対側の、TTSの最も外側に位置する。被覆層の、使用時にヒトの皮膚側に向けられる面には、リザーバーが設けられている。さらに、TTSの、使用時にヒトの皮膚側に向けられる面には、接着層が設けられている。使用時まで、ヒトの皮膚側に向けられる面には剥離層が存在するが、これはTTSの使用直前に剥離される。
【0030】
本発明のTTSの面積には何ら特別な制限はない。通常、TTSの面積は5〜30cmであるが、これより大型であっても小型であってもよい。
【0031】
ある実施形態において、本発明のTTSの被覆層の面積は、少なくとも、リザーバーおよび/または接着層の面積に等しい。しかし、被覆層の面積がリザーバーの面積より大きくてもよく、この場合リザーバーは、その端部を越えてさらに広がる被覆層によって完全に覆われる。しかし、このような実施形態においては、接着層の面積を被覆層の面積と等しくするか、あるいは、被覆層の皮膚側に向けられる層に、使用時にTTSの面全体を確実に皮膚に接着させるためのさらなる接着層を設けるべきである。別の実施形態において、被覆層の面積はリザーバーの面積よりやや小さい。
【0032】
リザーバー
本発明のTTSのリザーバー層は、有効成分であるリバスチグミンをポリマーマトリックスに内包させた構造である。この態様におけるポリマーマトリックスの構成成分は、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないポリマーまたはコポリマーに限定される。このポリマーマトリックスを構成する、官能基を持たないポリマーまたはコポリマーの好ましい例としては、特定のポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレンおよびスチレン−ブタジエン共重合体が挙げられ、これらを単独で、または混合して使用することができる。
【0033】
遊離の官能基を本質的に持たない適切なポリアクリル酸エステルとしては、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを構成単位とするポリマー(単一重合体、共重合体およびブロック共重合体)を使用することができる。適切なポリアクリル酸エステルの調製に適したモノマーとしては、具体的には、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピルおよびこれらの混合物が挙げられる。これらのモノマーは、C−C12の直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族基を有し、その他の遊離の官能基を持たない、アクリル酸および/またはメタクリル酸のエステルである。ポリアクリル酸エステルの調製には、これらのモノマーの少なくとも1つと共に酢酸ビニルもコモノマーとして使用することができる。
【0034】
ポリマーマトリックスは、遊離の官能基を本質的に持たない1種または複数種のポリアクリル酸エステルからなることが好ましい。ポリマーマトリックスは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを重合して調製したポリアクリル酸エステルからなることがより好ましい。ある特別な実施形態において、ポリマーマトリックスは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを重合して調製したポリアクリル酸エステルからなり、前記アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルは、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピルおよびこれらの混合物からなる群より選択される。別の実施形態において、ポリマーマトリックスは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルと酢酸ビニルとを共重合して調製したポリアクリル酸エステルから本質的に成り、前記アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルは、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピルおよびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0035】
出発原料のモノマーであるアクリル酸2−エチルヘキシルおよび酢酸ビニルの含有量がそれぞれ約50%となるように製造されたアクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体Duro−Tak(登録商標)87−4098、およびアクリル酸エステルDuro−Tak(登録商標)87−9088(この化合物も官能基を持たないアクリル酸エステルポリマーである)が特に好ましく、両製品ともヘンケル社から入手可能である。ある特別な実施形態においては、アクリル酸エステルDuro−Tak(登録商標)87−900AまたはDuro−Tak(登録商標)87−9301をポリマーマトリックスに使用する。
【0036】
ポリマーマトリックスの調製において、その原料となるモノマー混合物中の遊離のヒドロキシル基または遊離のカルボキシル基を含有するモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸ならびに官能基を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル、具体的にはヒドロキシル基を含有するエステル)の割合は、合計で1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2未満重量%である。ある特別な実施形態において、これらのモノマーの割合は合計で0.1重量%未満である。ある特別な実施形態においては、ポリマーマトリックスの調製の原料となるモノマー混合物は遊離のヒドロキシル基と遊離のカルボキシル基をいずれも含有しない。
【0037】
有効成分を内包する、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないポリマーマトリックスとしてポリアクリル酸エステルを含有するTTSは、既に国際公開第03/017988(A1)号に記載されているが、これはリバスチグミンを有効成分とするものではない。この国際公開第03/017988号に記載されている解決すべき課題は、TTSにおける有効成分の利用率が低いという問題点を克服するための解決手段を提供することである。この開示内容によれば、この課題は、理想的なことに、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも一切含有しないポリマーマトリックスによって解決された。しかしこの明細書において、リバスチグミンを有効成分とする記載はなく、リバスチグミンの安定性を向上させるための処置に関する記載もない。
【0038】
本発明のある実施形態において、リザーバーは、遊離のヒドロキシル基または遊離のカルボキシル基を有するポリマーまたはコポリマーを本質的に含有しない。リザーバーは、遊離のヒドロキシル基と遊離のカルボキシル基をいずれも含有しないことが好ましく、遊離のアミノ基、遊離のヒドロキシル基、遊離のカルボキシル基をいずれも本質的に含有しないことがより好ましい。ある特別な実施形態においては、接着層も、遊離のヒドロキシル基または遊離のカルボキシル基を有するポリマーまたはコポリマーを本質的に含有しない。接着層は、遊離のヒドロキシル基と遊離のカルボキシル基をいずれも含有しないことが好ましく、遊離のアミノ基、遊離のヒドロキシル基、遊離のカルボキシル基をいずれも含有しないことがより好ましい。
【0039】
リザーバーは、リザーバー層の全重量に対して、20〜40重量%のリバスチグミンおよび60〜80重量%のポリマーマトリックスを含有することが好ましい。本発明のTTSのある特別な実施形態において、リザーバーは、25重量%のリバスチグミンおよび75重量%のポリマーマトリックスを含有する。リザーバーは、有効成分およびポリマーマトリックス以外に他の成分を含有しないことが好ましいが、先行技術で公知の添加剤をさらに含有してもよい。例えば、皮膚軟化剤またはゲル化剤がリザーバー中に存在してもよい。
【0040】
リバスチグミンの絶対量は、様々な要因によって異なり、具体的には、使用するTSSの大きさ、単位面積当たりの重量、およびリザーバー中の有効成分濃度によって異なる。乾燥したリザーバーマトリックスの単位面積当たりの重量は、好ましくは20〜100g/mの範囲、より好ましくは25〜80g/mの範囲、さらに好ましくは30〜70g/mの範囲である。リザーバーの厚さ(乾燥厚さ)としては、20〜400μm、30〜200μm、または40〜100μmの範囲が挙げられる。さらに、上記の数値以外の厚さであってもよい。
【0041】
接着層
本発明のTTSの接着層は、コンタクト型接着剤、好ましくはポリイソブチレンからなるコンタクト型接着剤を含有する。ポリイソブチレンは硬化しない感圧性のコンタクト型接着剤であるため、長期間にわたってその接着性が維持される。好ましくは、平均分子量の異なるポリイソブチレンを混合して使用する。様々な平均分子量のポリイソブチレンが入手可能である。本願において、ポリイソブチレンに関する「平均分子量」は、いわゆる粘度平均分子量(M)を意味する。粘度平均分子量(M)は、20℃におけるポリイソブチレンのイソオクタン溶液の溶液粘度から算出される。使用する測定機器はウベローデ(Ubbelohde)型粘度計である。粘度平均分子量(M)は下記式より計算される。
【数1】

【0042】
粘度平均分子量(M)の算出に必要な固有粘度のシュタウディンガー指数Jは、測定した比粘度ηSPおよび上記溶液の濃度からSchulz−Blaschke式により得られる。
【数2】

【0043】
比粘度はηSP=t/t−1で表され、式中、tおよびtは、それぞれ上記溶液および溶媒の流動時間(それぞれHagenbach−Couette式による補正値)であり、cはg/cmの単位で表される上記溶液の濃度である。必要であれば、補足的にドイツ工業規格(DIN)53728を用いてもよい。
【0044】
ポリイソブチレンの適切な平均分子量(M)は、例えば約40,000〜4,000,000g/molの範囲である。好ましいポリイソブチレン混合物としては、(1)平均分子量(M)が約40,000g/molであるポリイソブチレン(例えば、Oppanol(登録商標)B10(BASF社より入手可能))、および(2)平均分子量(M)が約1,000,000g/molを超えるポリイソブチレン(例えば、平均分子量(M)が約1,110,000g/molのOppanol(登録商標)B100(BASF社より入手可能))からなるものが挙げられる。接着層として所望の性質を得るために分子量の異なる化合物を適切な比率で混合することは、当業者が有する専門知識の範囲内である。
【0045】
接着層におけるポリイソブチレンの分子量分布は、第1の極大値が30,000〜100,000g/molに、第2の極大値が300,000〜500,000g/molにあってもよい。より好ましくは、第1の極大値が35,000〜50,000g/molに、第2の極大値が350,000〜450,000g/molにそれぞれ独立して存在し、最も好ましくは、第1の極大値が約40,000g/molに、第2の極大値が約400,000g/molにそれぞれ独立して存在する。
【0046】
コンタクト型接着剤を構成するポリイソブチレン混合物は、平均分子量(M)が30,000〜100,000g/molである第1のポリイソブチレンポリマーと、平均分子量(M)が300,000〜500,000g/molである第2のポリイソブチレンポリマーとを混合することにより得られる。第1のポリイソブチレンポリマーの平均分子量(M)は、好ましくは35,000〜50,000g/molの範囲であり、最も好ましくは約40,000g/molである。第2のポリイソブチレンポリマーの平均分子量(M)は、好ましくは350,000〜450,000g/molの範囲であり、最も好ましくは約400,000g/molである。
【0047】
最も好ましいポリイソブチレン混合物は、(1)平均分子量(M)が約40,000g/molであるポリイソブチレン(例えば、Oppanol(登録商標)B10 SFN(BASF社より入手可能))と、(2)平均分子量(M)が約400,000g/molであるポリイソブチレン(例えば、Oppanol(登録商標)B50 SF(BASF社より入手可能))との混合物である。
【0048】
上記の混合物中の2種のポリイソブチレンポリマーの割合は様々な値をとり得る。上記の混合物中の第1のポリイソブチレンポリマーと第2のポリイソブチレンポリマーの重量比は、10:1〜1:10であってもよく、好ましくは2:1〜1:2、最も好ましくは4:6である。ある特別な実施形態において、コンタクト型接着剤を構成するポリイソブチレンポリマーは、4重量部のOppanol(登録商標)B10(例えば、Oppanol(登録商標)B10 SFN)、および6重量部のOppanol(登録商標)B50 SFからなる。
【0049】
本発明の接着層におけるコンタクト型接着剤の含有量は、接着層の全重量に対して40〜100重量%、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは55〜80重量%、さらにより好ましくは60〜69.9重量%の範囲である。
【0050】
接着層の厚さ(乾燥厚さ)には何ら特別な制限はなく、約10〜300μmの範囲、または70〜140μmの範囲であってよい。接着層の絶対量としては、約10〜50g/mまたは約20〜40g/mの範囲が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
接着層は、皮膚軟化剤およびゲル化剤をさらに含有することが好ましい。適切な皮膚軟化剤は先行技術により公知であり、好ましくは鉱油、中性油、パラフィン、ポリブテン、アマニ油、パルミチン酸オクチル、スクワレン、スクワラン、シリコーン油、ミリスチン酸イソブチル、イソステアリルアルコールおよび/またはオレイルアルコールであり、特に好ましくは鉱油、中性油、ポリブテンおよび/またはパラフィンである。鉱油は無色透明の炭化水素であり、約300℃以上で煮沸し、固体の炭化水素が除去された粗油の蒸留画分を冷却することによって得られる。適切な分留を行うことによって、体温とほぼ同じ温度、すなわち約35〜37℃では液体であり、それより低温、具体的には20℃未満の温度では固体である鉱油を得ることができる。融点が約30〜35℃の鉱油を選択することが好ましく、欧州薬局方(EP)6および/または米国薬局方(USP)32−NF 27の規格に適合するパラフィンおよび鉱油が特に好ましい。
【0052】
接着層における皮膚軟化剤の含有量は、接着層の全重量に対して、好ましくは0〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは25〜39.9重量%であり、例えば35重量%である。
【0053】
ゲル化剤は、表面上に高濃度の極性基を有する粒子構造を持つゲル化剤であることが好ましい。このような高濃度の極性基により、上記の油類に対して強力な界面張力が生じ、この界面張力が粒子同士の凝集により部分的に打ち消されることによってゲル骨格が形成される。よって、上記の油類とゲル骨格形成粒子の表面との間の極性差が大きいほど、ゲル骨格はより強固なものとなる。本発明のゲル化剤としては、高分散二酸化ケイ素または発熱性ケイ酸を用いることが好ましい。粒子の大きさは、ナノ領域であることが好ましく、例えば400〜1500nmの範囲、特に500〜1000nmの範囲である。発熱性ケイ酸は、例えばCAB−O−SIL(登録商標)という商品名で市販されており、鉱油の増粘剤として知られている。適切なゲル化剤のその他の例としては、ベントナイトが挙げられる。ゲル化剤として当技術分野で公知のカルボマーナトリウムを使用することも可能である。ゲル化剤の使用量は、接着層の重量に対して、好ましくは0.1〜4.0重量%、より好ましくは0.1〜2.0重量%、さらに好ましくは0.5〜2.0重量%である。
【0054】
本発明のTTSの特に好ましい実施形態において、接着層は、その全重量に対して、60〜69.9重量%のコンタクト型接着剤、すなわちポリイソブチレン(上記の通り、分子量の異なるポリイソブチレンの混合物からなっていてもよい)、0.1〜2.0重量%のゲル化剤、すなわち高分散二酸化ケイ素または発熱性ケイ酸、および25〜39.9重量%の皮膚軟化剤、すなわち鉱油を含有する。
【0055】
本発明のTTSの被覆層は閉鎖性を有することが好ましく、閉鎖性を有するとは、被覆層がシステムを密閉していることを意味する。好ましい実施形態において、このような被覆層は、ポリオレフィン、特にポリエチレンからなっていてもよく、ポリエステルやポリウレタンからなっていてもよい。異なるポリマーを含有する複数の層が積層されているものを使用することも有利である。適切な素材としては、ポリオレフィン、セロハン、セルロースアセテート、エチルセルロース、軟化性を付与する酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、必要に応じてコーティングされていてもよい紙、織布、アルミホイルおよび高分子−金属複合素材などが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムが特に好ましい。裏打ち層の厚さは、例えば10〜100μmであってよく、先行技術において一般的な厚さである約40μm(呼び厚さ)などであってもよい。着色PE、着色PETPおよび着色アルミニウムを用いたフィルム状包帯が特別に好ましい。
【0056】
本発明において、剥離層は前記接着層上に設けられ、「剥離ライナー」とも呼ばれる。この剥離層は、高分子素材で作製されることが好ましく、該高分子素材は必要に応じて金属化されていてもよい。好ましく用いられる素材としては、例えば、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、必要に応じてこのようなポリマーで表面コーティングした紙などが挙げられる。剥離層として、片面または両面にシリコーン加工またはフッ素重合体コーティングが施された剥離層が好ましい。例えば、片面シリコーン加工が施された製品Primeliner 100μm(Loparex社、オランダ)およびPerlasic LF 75μm(Perlen Converting社、スイス)、または片面フッ素重合体コーティングが施された製品ScotchPak 1022(3M Drug Delivery Systems社)などのフッ素重合体コーティングまたはシリコーン加工が施された一般的に入手可能なポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0057】
本発明のTTSの特に好ましい実施形態の1つは、有効成分を経皮投与するためのTTSであって、
a)被覆層、
b)前記被覆層上に設けられたリザーバーであって、その全重量に対して、20〜30重量%の有効成分および70〜80%のポリマーマトリックスを含有し、前記ポリマーマトリックスが、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないアクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体から本質的に成り、前記有効成分がリバスチグミンまたはその生理学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは誘導体であるリザーバー、
c)二酸化ケイ素を0.1〜1重量%、軽油(流動パラフィン)を25〜39.9重量%、および平均分子量(M)が約40,000g/molであるポリイソブチレンポリマーと、平均分子量(M)が約400,000g/molであるポリイソブチレンポリマーとの混合物をコンタクト型接着剤として60〜79.9重量%含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、ならびに
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含み、前記被覆層と前記剥離層を除く製剤全体における酸化防止剤の含有量が0.1重量%未満、好ましくは0.01%未満であることを特徴とするTTSである。
【0058】
ある特別な実施形態において、本発明のTTSは、ビタミンEおよびそのエステル、ブチルヒドロキシトルエンならびにブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される酸化防止剤をいずれも含有しない。
【0059】
本発明の第3の態様は、有効成分を経皮投与するための経皮治療システムであって、
a)被覆層、
b)有効成分を含有するポリマーマトリックスを含む、前記被覆層上に設けられたリザーバー、
c)コンタクト型接着剤を含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、および
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含み、前記有効成分がリバスチグミンまたはその生理学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは誘導体であり、かついかなる酸化防止剤も含有しないことを特徴とする経皮治療システムである。
【0060】
本発明の第3の態様において記載したようなTTSのリザーバーのポリマーマトリックスは、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有していないことが好ましい。本発明の第1および/または第2の態様に関して記載した実施形態は、第3の態様にも同様に適用される。そのため説明は省略する。
【0061】
本発明の第4の態様は、本発明のTTSを製造する方法であって、
i)被覆層およびリザーバーで構成され、該リザーバーが該被覆層の皮膚側となる面に設けられるリザーバー含有部を作製する工程;
ii)剥離層および接着層で構成され、該接着層が該剥離層上に設けられる接着層含有部を作製する工程;および
iii)完成したTTSの横断面において前記被覆層および前記剥離層が最も外側に位置する2つの層となるように、i)およびii)で得られた構成部分を積層して結合させる工程
を含む方法を提供することにある。
【0062】
上記の製造方法の好ましい実施形態の1つは、
i)リザーバーを構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、被覆層の皮膚側となる面に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させ、次いで、必要であればシリコーン加工を施した剥離フィルム(ライナー)で被覆する工程、
またはリザーバーを構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、シリコーン加工を施した剥離フィルム(ライナー)に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させ、次いで、必要であれば被覆層で被覆する工程;
ii)接着層を構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、剥離層に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させる工程;および
iii)必要であれば前記ライナーを取り除き、完成したTTSの横断面において前記被覆層および前記剥離層が最も外側に位置する2つの層となるように、i)およびii)で得られた構成部分を積層する工程
を含む。
【0063】
好ましいTTSの調製においては、まず、リザーバーの構成成分、すなわち、リバスチグミンならびにマトリックス形成ポリマーおよび/もしくはコポリマーまたはその混合物を、(該ポリマーが溶解された状態で入手可能でない場合は)ヘプタンまたは酢酸エチルなどの有機溶媒に分散および/または溶解する。マトリックス形成ポリマーおよび/もしくはコポリマーまたはその混合物は、通常、溶媒に溶解した状態で入手可能である。本発明におけるポリマーおよび/またはコポリマーとして、上述した本発明のTTSにおいて定義した、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないポリマーおよび/またはコポリマーを使用する。上述したポリマーマトリックスの好ましい実施形態は、本発明の方法にも同様に適用される。このリザーバーの作製においては、揮発性の有機溶媒が好ましく用いられる。次いで、調製した混合物を被覆層上に均一な層状に塗布し乾燥させる。リザーバーの構成成分は、フィルム、好ましくはシリコーン加工を施したポリエステルフィルム(「中間ライナー」と言うこともある)によって保護されることが好ましく、このようなフィルムは、リザーバーの被覆層とは反対側の面に設けられる。また、代替の方法および/または同等な方法として、調製した混合物をまず「中間ライナー」に塗布し、次いで乾燥させた後、得られたリザーバーの「中間ライナー」とは反対側の面に被覆層を設けることも可能である。この「中間ライナー」は、リザーバー含有部と接着層含有部とを結合させる直前に取り除く。
【0064】
これとは別工程で、接着層を作製する。接着層の作製において、まず、コンタクト型接着剤を構成する(有機溶媒に溶解している)ポリマー混合物、好ましくは平均分子量の異なるポリイソブチレンの混合物を、ゲル化剤および皮膚軟化剤と共にヘプタンなどの有機溶媒に分散させる。好ましくは、コンタクト型接着剤および皮膚軟化剤を有機溶媒に溶解した後、この溶液にゲル化剤を分散させる。次いで、この調製した混合物を剥離フィルムに塗布して乾燥させる。
【0065】
次いで、上記2つの工程で得られた構成部分を積層するが、具体的には接着層がリザーバーに直接当たるように積層する。完成した積層フィルムは、その後、所望の大きさに打ち抜いて、包装する。
【0066】
各工程において構成成分の溶解および/または分散に要した有機溶媒は、必要であれば減圧しながら、生成物を高温に曝すことによって留去する。
【0067】
本発明の第5の態様は、リバスチグミン含有TTSにおける、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないポリマーまたはコポリマーの使用である。好ましくは、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレンまたはスチレン−ブタジエン共重合体の使用である。本発明において、これらのポリマーまたはコポリマーは、有効成分のリバスチグミンを内包するポリマーマトリックスである。
【0068】
本発明の使用は、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないポリアクリル酸エステルおよびポリアクリル酸エステルコポリマー、例えばアクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体などの使用であることが好ましい。
【0069】
本発明の特に好ましい実施形態においては、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体Duro−Tak(登録商標)87−4098が使用される。
【0070】
本発明の第6の態様は、本発明のTTSをアルツハイマー病およびパーキンソン病の認知症を治療するために提供することである。本発明のTTSは、約24時間使用できるように製造されることが好ましい。
【0071】
以下に本発明のTTSの好ましい実施形態について、さらに詳細に説明する。また、その実施形態の性能を安定性の面から判定する。
【実施例】
【0072】
<実施例1>
各種製剤の製造
リバスチグミン遊離塩基を含有するTTS製剤について、4つの異なるバッチA〜Dを製造した。リザーバーにおけるマトリックス形成ポリマーとして、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体を用いた。各バッチに含まれる成分の概略を表1にまとめて示す。
【0073】
【表1】

【0074】
各バッチに使用した成分の詳細は以下の通りである。
【0075】
【表2】

【0076】
製造方法
1.リザーバー層の作製
上記のアクリル酸エステル−酢酸ビニル接着剤を準備し、リバスチグミンおよび酢酸エチルを計り取る。次いで、これら2つの構成成分を十分量の酢酸エチルに加え、撹拌器を用いて混合し、延びのよい均一な塗工液を得る。
【0077】
この均一な塗工液をシリコーン加工フィルム(「中間ライナー」)に薄膜状に塗布する。このマトリックス薄膜を60℃で20分、次いで80℃で5分乾燥した後、PETからなる被覆層で被覆する。
【0078】
2.接着層の作製および積層体全体の製造
上記2種のポリイソブチレン接着剤を共に計り取り、これらを混合する。次いで、撹拌しながら、ヘプタン、Klearol(登録商標)およびCab−O−Sil(登録商標)を加える。さらに撹拌を続けて、均一な塗工液を得る。
【0079】
この塗工液を剥離層(「剥離ライナー」)に薄膜状に塗布し、60℃で20分、次いで80℃で5分加熱しながら、溶媒を留去する。乾燥させた後、得られた積層体を先に作製したリザーバー層で被覆する。このとき、最初にリザーバー層の「中間ライナー」を取り除く。
【0080】
完成した積層体を打ち抜いて適当な大きさの貼付剤を得る。
【0081】
安定性試験
バッチAおよびBを安定性試験に供した。この試験の実施にあたって、打ち抜いたTTSをアルミホイルバッグに密封し、温度25℃、相対湿度60%の状態で1ヶ月、または温度40℃、相対湿度75%の状態で1ヶ月保存した。その後、リバスチグミンの分解によりどの程度不純物が生じたかをHPLCおよび紫外吸光光度法により測定した。表3に試験の結果をまとめて示す。
【0082】
【表3】

【0083】
検出された不純物それぞれの保持時間(RT)を示す。不純物の割合(%)は、対象製剤の全重量に対する割合として表す。記載する測定値の下限値、すなわち報告閾値(RL:Reporting Limit)は0.1%とした。これは、それ以下の値については測定誤差の範囲内となるためである。
【0084】
この試験の結果より、本発明のTTS製剤は十分な安定性を示すことが明らかになった。すべての製剤例において、温度40℃、相対湿度75%の状態で1ヶ月経過した時点における、RTが46分を示す不純物の割合は0.4%未満であった。
【0085】
<実施例2>
各種製剤の製造
リバスチグミン遊離塩基を含有するTTS製剤について、2つの異なるバッチを製造した。リザーバーにおけるマトリックス形成ポリマーとして、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体を用いた。各バッチに含まれる成分の概略を表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
各バッチに使用した成分の詳細は以下の通りである。
【0088】
【表5】

【0089】
製造方法
1.リザーバー層の作製
上記のアクリル酸エステル−酢酸ビニル接着剤を準備し、リバスチグミンおよび酢酸エチルを計り取る。次いで、これら2つの構成成分を十分量の酢酸エチルに加え、撹拌器を用いて混合し、延びのよい均一な塗工液を得る。
【0090】
この均一な塗工液をシリコーン加工フィルム(「中間ライナー」)に薄膜状に塗布する。このマトリックス薄膜を60℃で20分、次いで80℃で5分乾燥した後、PETからなる被覆層で被覆する。
【0091】
2.接着層の作製および積層体全体の製造
上記2種のポリイソブチレン接着剤を共に計り取り、これらを混合する。次いで、撹拌しながら、ヘプタン、Pionier(登録商標)7028Pまたはパラフィン油(希薄溶液)、およびCab−O−Sil(登録商標)を加える。さらに撹拌を続けて、均一な塗工液を得る。
【0092】
この塗工液を剥離層(「剥離ライナー」)に薄膜状に塗布し、60℃で20分、次いで80℃で5分加熱しながら、溶媒を留去する。乾燥させた後、得られた積層体を先に作製したリザーバー層で被覆する。このとき、最初にリザーバー層の「中間ライナー」を取り除く。
【0093】
完成した積層体を打ち抜いて適当な大きさの貼付剤を得る。
【0094】
安定性試験
バッチAおよびBを安定性試験に供した。この試験の実施にあたって、打ち抜いたTTSをアルミホイルバッグに密封し、温度25℃、相対湿度60%の状態で1ヶ月、または温度40℃、相対湿度75%の状態で1ヶ月保存した。その後、リバスチグミンの分解によりどの程度不純物が生じたかをHPLCおよび紫外吸光光度法により測定した。表6および表7に試験の結果をまとめて示す。
【0095】
【表6】

【0096】
【表7】

【0097】
不純物の割合(%)は、対象製剤中の所望の有効成分含有量に対する割合として表す。各不純物の測定下限値、すなわち報告閾値(RL)は0.1%とした。これは、それ以下の値については測定誤差の範囲内となるためである。表6および表7で報告した不純物以外の不純物に関して、報告閾値である0.1%を超えるものは存在しなかった。
【0098】
この試験の結果より、本発明のTTS製剤は十分な安定性を示すことが明らかになった。
【0099】
本発明は、特に下記の(1)〜(17)の主題に関する。
(1)a)被覆層、
b)有効成分がリバスチグミンまたはその生理学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは誘導体であり、前記有効成分を内包したポリマーマトリックスを含む、前記被覆層上に設けられたリザーバー、
c)平均分子量が30,000〜100,000g/molである第1のポリイソブチレンポリマー、および平均分子量が300,000〜500,000g/molである第2のポリイソブチレンポリマーを含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、ならびに
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含み、前記リザーバーのポリマーマトリックスがヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないことを特徴とする、リバスチグミンを投与するための経皮治療システム。
(2)酸化防止剤を含有しない、主題(1)に記載の経皮治療システム。
(3)前記リザーバーが、その全重量に対して20〜30重量%の有効成分および70〜80重量%のポリマーマトリックスを含有する、主題(1)または(2)に記載の経皮治療システム。
(4)前記接着層が、ゲル化剤および皮膚軟化剤をさらに含有する、主題(1)〜(3)のいずれかに記載の経皮治療システム。
(5)前記接着層が、その全重量に対して、60.0〜74.9重量%のコンタクト型接着剤、0.1〜2.0重量%のゲル化剤、および25〜39.9重量%の皮膚軟化剤を含有する、主題(4)に記載の経皮治療システム。
(6)前記ポリマーマトリックスが、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーおよび/またはコポリマーを含有する、主題(1)〜(5)のいずれかに記載の経皮治療システム。
(7)前記第1のポリイソブチレンポリマーの平均分子量(M)が約40,000g/molであり、前記第2のポリイソブチレンポリマーの平均分子量(M)が約400,000g/molである、主題(1)〜(6)のいずれかに記載の経皮治療システム。
(8)前記第1のポリイソブチレンポリマーと前記第2のポリイソブチレンポリマーとの重量比が約4:6である、主題(1)〜(7)のいずれかに記載の経皮治療システム。
(9)前記ゲル化剤であるSiOが、高分散化された形態または発熱性ケイ酸の形態で含まれる、主題(4)〜(8)のいずれかに記載の経皮治療システム。
(10)前記皮膚軟化剤が、パラフィン、中性油、鉱油もしくはポリブテン、またはこれらの混合物である、主題(4)〜(9)のいずれかに記載の経皮治療システム。
(11)前記接着層の面積が前記リザーバーの面積に等しい、主題(1)〜(10)のいずれかに記載の経皮治療システム。
(12)a)被覆層、
b)前記被覆層上に設けられたリザーバーであって、その全重量に対して、20〜30重量%の有効成分および70〜80%のポリマーマトリックスを含有し、該ポリマーマトリックスが、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないアクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体から本質的に成るリザーバー、
c)二酸化ケイ素を0.1〜1重量%、流動パラフィン(欧州薬局方規格)を25〜39.9重量%、および平均分子量(M)が約40,000g/molであるポリイソブチレンと、平均分子量(M)が約400,000g/molであるポリイソブチレンとの混合物を60〜79.9重量%含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、ならびに
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含む、有効成分を経皮投与するための経皮治療システム。
(13)主題(1)〜(12)のいずれかに記載の経皮治療システム(TTS)を製造する方法であって、
i)被覆層およびリザーバーで構成され、該リザーバーが該被覆層の皮膚側となる面に設けられるリザーバー含有部を作製する工程;
ii)剥離層および接着層で構成され、該接着層が該剥離層上に設けられる接着層含有部を作製する工程;および
iii)完成したTTSの横断面において前記被覆層および前記剥離層が最も外側に位置する2つの層となるように、i)およびii)で得られた構成部分を積層して結合させる工程
を含む方法。
(14)i)リザーバーを構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、被覆層の皮膚側となる面に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させる工程;
ii)接着層を構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、剥離層に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させる工程;および
iii)完成したTTSの横断面において前記被覆層および前記剥離層が最も外側に位置する2つの層となるように、i)およびii)で得られた構成部分を積層する工程
を含む、主題(13)に記載の方法。
(15)i)リザーバーを構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、被覆層の皮膚側となる面に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させ、次いで、必要であればシリコーン加工を施した剥離フィルム(ライナー)で被覆する工程;
ii)接着層を構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、剥離層に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させる工程;および
iii)必要であれば前記ライナーを取り除き、完成したTTSの横断面において前記被覆層および前記剥離層が最も外側に位置する2つの層となるように、i)およびii)で得られた構成部分を積層する工程
を含む、主題(13)に記載の方法。
(16)リバスチグミンを含有する経皮治療システムを製造するための、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレンおよびスチレン−ブタジエン共重合体からなる群より選択される、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないポリマーまたはコポリマーの使用。
(17)アルツハイマー病およびパーキンソン病の認知症を治療するための、主題(1)〜(12)のいずれかに記載の経皮治療システム。
【0100】
上述した主題(1)〜(17)は、本願に記載の他の実施形態と組み合わせることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)被覆層、
b)有効成分を含有するポリマーマトリックスを含む、前記被覆層上に設けられたリザーバー、
c)コンタクト型接着剤を含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、および
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含み、前記有効成分がリバスチグミンまたはその生理学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは誘導体であり、前記リザーバーのポリマーマトリックスがヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないことを特徴とする、有効成分を経皮投与するための経皮治療システム。
【請求項2】
酸化防止剤を含有しない、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
前記リザーバーが、その全重量に対して20〜30重量%の有効成分および70〜80重量%のポリマーマトリックスを含有する、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
前記接着層が、ゲル化剤および皮膚軟化剤をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
前記接着層が、その全重量に対して、60.0〜74.9重量%のコンタクト型接着剤、0.1〜2.0重量%のゲル化剤、および25〜39.9重量%の皮膚軟化剤を含有する、請求項4に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
前記ポリマーマトリックスが、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーおよび/またはコポリマーを含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
前記コンタクト型接着剤がポリイソブチレンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
前記ポリイソブチレンが、分子量の異なる2種のポリイソブチレンポリマーの混合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
第1のポリイソブチレンポリマーの平均分子量(M)が約40,000g/molであり、第2のポリイソブチレンポリマーの平均分子量(M)が約400,000g/molである、請求項8に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
前記第1のポリイソブチレンポリマーと前記第2のポリイソブチレンポリマーとの重量比が約4:6である、請求項8または9に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
前記ゲル化剤であるSiOが、高分散化された形態または発熱性ケイ酸の形態で含まれる、請求項4〜10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
前記皮膚軟化剤が、パラフィン、中性油、鉱油またはこれらの混合物である、請求項4〜11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
a)被覆層、
b)前記被覆層上に設けられたリザーバーであって、その全重量に対して、20〜30重量%の有効成分および70〜80%のポリマーマトリックスを含有し、該ポリマーマトリックスが、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないアクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体から本質的に成るリザーバー、
c)二酸化ケイ素を0.1〜1重量%、流動パラフィン(欧州薬局方規格)を25〜39.9重量%、および平均分子量(M)が約40,000g/molであるポリイソブチレンと、平均分子量(M)が約400,000g/molであるポリイソブチレンとの混合物を60〜79.9重量%含む、前記リザーバー上に設けられた接着層、ならびに
d)前記接着層上に設けられた剥離層
を含む、有効成分を経皮投与するための経皮治療システム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の経皮治療システム(TTS)を製造する方法であって、
i)被覆層およびリザーバーで構成され、該リザーバーが該被覆層の皮膚側となる面に設けられるリザーバー含有部を作製する工程;
ii)剥離層および接着層で構成され、該接着層が該剥離層上に設けられる接着層含有部を作製する工程;および
iii)完成したTTSの横断面において前記被覆層および前記剥離層が最も外側に位置する2つの層となるように、i)およびii)で得られた構成部分を積層して結合させる工程
を含む方法。
【請求項15】
i)リザーバーを構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、被覆層の皮膚側となる面に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させる工程;
ii)接着層を構成する組成物を、必要であれば適切な媒質を用いて溶液または分散液の状態にして、剥離層に塗布して薄膜を形成させ、必要であれば乾燥させる工程;および
iii)完成したTTSの横断面において前記被覆層および前記剥離層が最も外側に位置する2つの層となるように、i)およびii)で得られた構成部分を積層する工程
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
リバスチグミンを含有する経皮治療システムを製造するための、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレンおよびスチレン−ブタジエン共重合体からなる群より選択される、ヒドロキシル基とカルボキシル基をいずれも含有しないポリマーまたはコポリマーの使用。
【請求項17】
経皮治療システム中の有効成分リバスチグミンを安定化させるため、および/または経皮治療システム中の有効成分リバスチグミンの分解を抑制するための、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレンおよびスチレン−ブタジエン共重合体からなる群より選択される、遊離のヒドロキシル基と遊離のカルボキシル基をいずれも含有しないポリマーまたはコポリマーの使用。
【請求項18】
アルツハイマー病およびパーキンソン病の認知症を治療するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。

【公表番号】特表2013−515025(P2013−515025A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545226(P2012−545226)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069654
【国際公開番号】WO2011/076621
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(510002350)アシノ アーゲー (7)
【Fターム(参考)】