説明

リパーゼ活性測定用組成物および活性測定法

【課題】植物由来及び/又は微生物由来製造の現場や植物由来及び/又は微生物由来リパーゼを用いる臨床検査薬の品質管理において簡便で操作性に優れ正確性と再現性に優れた酵素法によるリパーゼ活性測定試薬の提供。
【解決手段】非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリドを植物由来及び/又は微生物由来リパーゼの基質として用い、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ反応によって生成されるモノグリセリドを酵素法により検出することで精度・再現性に優れた試薬液状で長期保存安定性を確保し、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ反応で生成されるモノグリセリドを酵素的に検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリパーゼ製造および工業用用途・臨床検査診断試薬等のリパーゼ応用分野における植物由来及び/又は微生物由来リパーゼの活性測定用組成物および活性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂分解酵素であるリパーゼは動植物や微生物等に広く存在している。例えば、微生物由来リパーゼとしては、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・フェニクス、アスペルギルス・ウサミ等のアスペルギルス属、ペニシリウム・キャメンベルティ、ペニシリウム・クリソゲナム、ペニシリウム・ロッキェフェルティ等のペニシリウム属、ムコール・ジャバニクス、ムコール・ミエハイ等のムコール属、リゾプス・デレマー、リゾプス・ジャバニクス、リゾプス・ミエハイ、リゾプス・ニベウス、リゾプス・オリゼー等のリゾプス属、リゾムコール・ミエハイなどの糸状菌、キャンディダ・ルゴサ等のキャンディダ属の酵母、ストレプトマイセス属の放線菌、アルカリゲネス属、シュドモナス・フラジ、シュドモナス・フルオレッセンス等のシュドモナス属、クロモバクテリウム・ビスコサム、セラチア・マセランス等に存在しているもの等が知られており、これらの微生物等の培養液から製造されている。また、動物由来のリパーゼとしては、動物の膵臓等から得られるものが知られている。そして、植物由来のリパーゼとしては、植物種子、米ぬか、小麦胚芽等から得られるものが知られている。これらのリパーゼは、工業用用途、診断薬原料酵素等として広範囲に利用されている。例えば、工業用用途としては、医薬品・農薬等の原料として使用する光学活性体アルコール、光学活性体エステル化合物の製造用途等に用いられており、又、診断薬原料酵素としては、血中の中性脂質(トリグリセリド)診断薬原料酵素として用いられている。
【0003】
ところで、工業用用途、診断薬原料酵素等として広範囲に利用されているリパーゼは、品質、価格、安定供給等の面から、発酵法(微生物の培養物から抽出分離精製)により製造されており、実質的には、微生物由来リパーゼが用いられている。そして、リパーゼの製造プロセスの管理において、工程管理の観点からリパーゼ活性測定法は工程管理測定法として必須である。工程管理測定は、リパーゼを大量に製造する工程でも必要であるが、例えば、臨床検査薬などに使用する微量の試薬を製造する工程でも必要である。
通常リパーゼの活性測定に用いる基質はオリーブ油、トリオレインなどのトリグリセリドが使用されるが水に不溶性であるために乳化剤存在下でホモゲナイザーを用いて強制的に攪拌した基質が用いられている。この基質にリパーゼが作用して生成された遊離脂肪酸を水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液で滴定する方法が一般的に行われている(非特許文献1)。この方法においては基質エマルジョンの作製条件やリパーゼ反応後の滴定の個人差によりリパーゼ活性度測定の精度(同時測定再現性、日間測定再現性)の面で十分でない。特に中性脂肪測定検査薬に用いるリパーゼの原料管理、試薬の安定性等の品質管理においては前記方法では不十分であった。リパーゼを原料に用いた臨床検査薬は自動分析機器を用いて1検体あたり0.1ml程度の試薬量である。近年更なる試薬の微量化の要望があるが、このように微量の試薬を製造する品質管理においてリパーゼ活性を従来のトリグリセリドを基質にしてリパーゼ反応で生成した遊離の脂肪酸をアルカリで滴定するリパーゼ活性測定方法ではリパーゼ活性測定は現実的に不可能であった。
【0004】
こうしたトリグリセリド基質を用いる方法の課題解決を目的としてジグリセリドを基質に用いる方法が開発されてきている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら従来の膵リパーゼ活性を発現するために使用するジグリセリドを溶解する非イオン性界面活性剤濃度範囲では微生物由来リパーゼ活性発現が全く不十分であり正確に測定することはできなかった。
こうした状況下、品質、価格、供給等の面で優れている微生物由来リパーゼの酵素活性を正確、且つ高感度、さらに簡便に測定する技術開発、特に、微量の試薬を製造する工程の工程管理測定方法等を指向した十分に感度を有する新しい技術開発が望まれていた。
【特許文献1】特開昭59−91898号公報
【特許文献2】特開昭63−245672号公報
【非特許文献1】JIS K0601(工業用リパーゼの活性度測定方法)1988年制定
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡便かつ正確に植物由来及び/又は微生物由来リパーゼの酵素活性を測定するための組成物を提供することを課題とする。さらには、簡便かつ正確な植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用キット、及び植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法を提供することも課題とする。具体的にはリパーゼ製造および工業用用途・臨床検査診断試薬等のリパーゼ応用分野における従来の組成物よりも優れた精度及び簡便性を有する組成物を提供すること、及び該組成物を用いた植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法を提供すること、さらには長期保存安定性に優れたジグリセリドの水溶液を含有するキット、組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、先ず、リパーゼ活性を精度良く測定するという課題を解決するために、ジグリセリドおよびこれを溶解する界面活性剤に着目し鋭意検討した結果、ジグリセリドを非イオン性界面活性剤に溶解した基質を用いるとリパーゼの起源によらずに安定して正確なリパーゼ活性を測定することできることを見出した。次に、微生物由来リパーゼにおいて、非イオン性界面活性剤の濃度を高値にすることで安定して正確なリパーゼ活性を測定できることを見出し、さらには植物由来リパーゼについても、従来の膵リパーゼ活性を発現するために使用するジグリセリドを溶解する非イオン性界面活性剤濃度範囲では活性発現が全く不十分であるが、非イオン性界面活性剤の濃度を高値にすることで安定して正確に測定できることも合わせて見出した。その上、ジグリセリドの水溶液中における長期保存安定性の向上に着目して鋭意検討した結果、低濃度のpH緩衝剤を共存させると長期保存安定性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のような構成から成る。
1)少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリドを基質として用いることを特徴とする植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
2)少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、還元型NAD、ホスフォエノールピルビン酸、ピルビン酸キナーゼ、及びラクテートデヒドロゲナーゼを含有する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
3)少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、酸化型NAD又は酸化型NADP、グルコース、ADP−ヘキソキナーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを含有する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
4)少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、グリセロ−3−リン酸オキシダーゼ、及びペルオキシダーゼと過酸化水素発色試薬を含有する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
5)非イオン性界面活性剤の濃度が、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼのリパーゼ活性が発現する濃度である上記1)〜4)いずれかに記載の植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【0008】
6)試薬1と試薬2との組み合わせキットとして用いる上記2)〜5)のいずれかに記載の植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
7)試薬1及び/又は試薬2が液状である、上記6)記載の植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
8)1の試薬にグリセロールオキシダーゼを添加し、他のいずれかの試薬にグリセロールキナーゼ、アデノシン−3−リン酸のどちらか又は両方を添加することを特徴とする上記7)に記載の植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
9)上記1)〜8)に記載のリパーゼ活性測定用組成物の、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定の為の使用。
10)非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、ホスフォエノールピルビン酸、ピルビン酸キナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、及び低濃度pH緩衝剤を含有する試薬1と、還元型NAD又は還元型NADPと高濃度pH緩衝剤を含有する試薬2とからなる植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用キット。
【0009】
11)非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、グルコース、ADP−ヘキソキナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、及び低濃度pH緩衝剤を含有する試薬1と、酸化型NAD又は酸化型NADPと高濃度pH緩衝剤を含有する試薬2とからなる植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用キット。
12)非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、グリセロ−3−リン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、色原体、及び低濃度pH緩衝剤を含有する試薬1と、カップラーと高濃度pH緩衝剤とを含有する試薬2とからなる植物由来及び/又は微生物リパーゼ由来活性測定用キット。
13)少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリドを基質に用いてリパーゼ反応により生成されるモノグリセリドを酵素的に測定する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法。
14)上記2)に記載のリパーゼ活性測定用組成物を用いた、リパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、これをATP存在下にグリセロールキナーゼによりADPに変換し、次いでホスフォエノールピルビン酸存在下にピルビン酸キナーゼでピルビン酸に変換し、更に還元型NAD存在下にラクテートデヒドロゲナーゼを作用させ、還元型NADの340nm付近の波長における吸光度の減少速度を測定する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法。
【0010】
15)上記3)に記載のリパーゼ活性測定用組成物を用いた、リパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、これをATP存在下にグリセロールキナーゼによりADPに変換し、次いでグルコース存在下にADP−へキソキナーゼでグルコース−6−リン酸に変換し、更に酸化型NAD又はNADP存在下にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを作用させ、還元型NAD又は還元型NADPの340nm付近の波長における吸光度の増加速度を測定する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法。
16)上記4)に記載のリパーゼ活性測定用組成物を用いた、リパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、これをATP存在下にグリセロールキナーゼによりグリセロール−3−リン酸に変換し、次いでグリセロール−3−リン酸オキシダーゼを作用させ過酸化水素に変換し、更に過酸化水素発色色素存在下にペルオキシダーゼを作用させ発色反応を行い、540〜700nm付近の波長における吸光度の増加速度を測定する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法。
17)非イオン性界面活性剤の濃度が、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼのリパーゼ活性が発現する濃度である上記13)〜16)いずれかに記載の植物及び/又は微生物リパーゼ活性測定方法。
【発明の効果】
【0011】
取り扱いが簡便であり再現性及び正確性に優れた植物由来及び/又は微生物リパーゼ活性測定キット、リパーゼ活性測定用組成物を提供すること、さらには長期保存安定性に優れたジグリセリドの水溶液を含有するキット、組成物の提供が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の植物及び/又は微生物リパーゼ活性測定用組成物、植物及び/又は微生物リパーゼ活性測定試薬、植物及び/又は微生物リパーゼ活性測定用キット、及び植物及び/又は微生物リパーゼ活性測定方法は、植物由来及び/又は微生物由来のリパーゼの活性を正確且つ簡便に行うために有用である。
本発明のリパーゼ活性測定用組成物は、非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド基質を用いて植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性を測定することを特徴とする。
本発明のリパーゼ活性測定方法は、ジグリセリドに植物由来及び/又は微生物リパーゼが作用して遊離するモノグリセリドを酵素的に検出することを特徴とする。
【0013】
本発明に用いることができるリパーゼの基質としてのジグリセリドとしては、例えば、1,2−ジオレオルグリセリルコリン、1−パルミトイル−2−オレイルグリセリルコリン、卵黄由来精製レシチン、又は大豆由来精製レシチン等のリン脂質を予め調製し、これらのリン脂質にホスフォリパーゼCを作用して得ることができるが、レシチン等のリン脂質にホスフォリパーゼCを反応させることによって得られる1,2−ジグリセリドが好ましい例として挙げられる。また、該1,2−ジグリセリドを、非イオン界面活性剤存在下でアルカリ処理を施して一部1,3−ジグリセリドに変換させたジグリセリド(1、2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの混合物)も本発明のリパーゼ反応の基質として用いることができる。より安定したリパーゼ活性を得ることができる点で、該1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリド混合物の方がリパーゼ基質として好ましく、1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリド平衡状態付近の混合物であることが好ましい態様もある。このジグリセリド混合物は非イオン性界面活性剤を含有する緩衝液を用い温度と加温時間を変えてアルカリ処理を施すことで得ることができる。アルカリ処理温度とアルカリ処理時間は、1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの比率を測定して適宜設定できる。具体的には1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの比率が2:1〜2:3の範囲になるようにするのが好ましく、1:1〜2:3の範囲になるようにするのも好ましい。また、2:1〜1:1の範囲になるようにするのが好ましい別の態様もある。さらに、1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの比率が70:30〜30:70の範囲になるようにするのが好ましく、50:50〜30:70の範囲になるようにするのも好ましい。また、1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの比率が70:30〜50:50の範囲になるようにするのが好ましい別の態様もある。さらに1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの比率が50:50〜35:65の範囲になるようにするのが好ましい別の態様もある。1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの平衡状態を達成する条件としては、例えばpH8〜pH9の場合には37℃で5〜8時間、30℃で10〜20時間程度加温する方法、又、pH9〜pH11の場合には37℃で1時間程度加温する等の方法が挙げられる。pH9〜pH11の場合に37℃で1時間程度加温する方法がより好ましい。また、pH8〜pH9の場合に37℃で5〜8時間、30℃で10〜20時間程度加温する方法がより好ましい別の態様もある。pH8〜pH9の場合においては、pHの上限としてはpH9.0未満であることが好ましく、pH8.7以下であることがより好ましく、pH8.5以下であることがさらに好ましく、またpHの下限としてはpH8.0以上であることが好ましく、pH8.1以上であることがより好ましく、pH8.3以上であることがさらに好ましく、pH8.4以上であることが特に好ましい。又、pH9〜pH11の場合においてはpHの上限としてはpH11.0以下であることが好ましく、pH10.7以下であることがより好ましく、pH10.5以下であることがさらに好ましく、pH10.3以下であることが特に好ましく、pH10.25以下であることが最も好ましく、またpHの下限としてはpH9.0以上であることが好ましく、pH9.4以上であることがより好ましく、pH9.5以上であることがさらに好ましく、pH9.7以上であることが特に好ましく、pH9.8以上であることが最も好ましい。このようにして調製した基質溶液は長期保存するために冷蔵保存することが好ましい。この基質を後述するリパーゼ反応液に供する。
【0014】
また、本発明により、低濃度のpH緩衝液、及び非イオン性界面活性剤存在下で実質的に1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの平衡状態の濃度分布となっているジグリセリドを含有した液状であるリパーゼ活性測定用基質が提供される。平衡状態の濃度分布とは、1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの比率が一定温度条件下変化しない時点での1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの割合であれば特に限定されないが、具体的にはジグリセリド混合物に対して上記アルカリ処理を行い、その後4℃〜8℃で保存した状態が挙げられる。4〜8℃で保存した場合、1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの比率は変化しない。冷蔵保存する時のpHは5〜9.5範囲で使用することができるが、上限としてはpH9.5以下であることが好ましく、pH9.0以下であることがより好ましく、pH8.5以下であることがさらに好ましく、pH8.3以下であることが特に好ましく、pH8.1以下であることが最も好ましく、下限としてはpH5.0以上であることが好ましく、pH6.0以上であることがより好ましく、pH7.0以上であることがさらに好ましく、pH7.5以上であることが特に好ましく、pH7.8以上であることが最も好ましい。また冷蔵保存時のpHとして、pH8付近が好ましい別の態様もある。
【0015】
なお、1,2−ジグリセリドと1,3−ジグリセリドの割合を測定する方法としては、薄層クロマトにより展開(展開溶媒;クロロホルム95:アセトン5)した後ヤトロスキャン法(検出はFID;フレームイオナイズスキャン法による)を用いて分析を行った。
リパーゼ反応に最適な基質濃度は0.25mM〜2mMの範囲であるが0.5mM程度が安定性およびリパーゼに対する特異性を考慮した場合特に好ましい。本発明で用いる原料ジグリセリドの濃度としては、下限値は0.25mM以上が好ましく、0.30mM以上がさらに好ましく、0.32mM以上が特に好ましく、0.34mM以上が最も好ましい。また、上限値は2mM以下が好ましく、1mM以下がさらに好ましく、0.8mM以下が特に好ましく、0.6mM以下が最も好ましい。
特に、0.5mM程度が安定性を考慮した場合に好ましい。
【0016】
ジグリセリドを構成する高級脂肪酸残基としての脂肪酸としては炭素数12以上の高級脂肪酸であればよく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和高級脂肪酸やパルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和高級脂肪酸が挙げられる。これらの高級脂肪酸は1種類だけでもよく2種類の異なる高級脂肪酸の組み合わせであってもよいが、不飽和高級脂肪酸を含有するジグリセリドが基質として調製した際の溶液の澄明度が高くより好ましい。特に好ましいジグリセリドとしては1,2−ジオレイルグリセロール、1−パルミトイル−2−オレイルグリセロールを挙げることができる。これらのジグリセリドを得るには1,2−ジオレオルグリセリルコリン、1−パルミトイル−2−オレイルグリセリルコリン、卵黄由来精製レシチン、大豆由来精製レシチン等のリン脂質を予め調製し、これらのリン脂質にホスフォリパーゼCを作用させて調製すればよい。
【0017】
本発明において、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性を測定するための非イオン性界面活性剤としては、各種の非イオン性界面活性剤を使用することができる。例えば、ポリオキシエチレン(POE)高級アルコールエーテル、POE第2級アルコールエトキシレート、POEアルキルフェニルエーテル、POE脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル等から選択することができるが、溶解性、安定性の面でPOEアルキルフェニルエーテル系非イオン性界面活性剤が好ましい。POEアルキルフェニルエーテル系非イオン性界面活性剤としては、例えば、POEノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の使用濃度は、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性を最大に発現させ且つ阻害しない濃度範囲、具体的には、ジグリセリドに対して1.5倍モル比以上であればよい。基質溶解の点では2.5倍モル以上が好ましく、3倍モル以上がより好ましく、4倍モル以上がさらに好ましく、5倍モル以上が特に好ましい。実作業の観点からの具体的な下限値としては、0.08%(重量%)以上が好ましく、0.10%以上がより好ましく、0.15%以上がさらに好ましく、0.20%以上が特に好ましい。また、実作業の観点からの具体的な上限値としては、2%(重量%)以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.3%以下が特に好ましい。好適な範囲の一例としては、0.15%〜2%、特に0.2〜0.3%が挙げられる。
【0018】
本質的には、ジグリセリドと非イオン性界面活性剤のモル比によって形成される水に可溶性のミセル構造に着目し、ジグリセリド:非イオン性界面活性剤=1:2付近で形成されるミセル構造と異なるミセル構造を形成するのに必要な量以上の非イオン性界面活性剤濃度を、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼのリパーゼ活性が発現する濃度として用いればよい。ジグリセリドとの濃度比としての非イオン性界面活性剤の濃度としては、活性を発現する10〜30倍モル比の範囲で使用することができるが、特に15〜20倍モル比で使用することが好ましい。
本発明において、界面活性剤に溶解したジグリセリドの長期保存安定性を得るために用いるpH緩衝液としては、例えばトリス−塩酸、TES、HEPES、TAPSO、POPSO、Tricine、Bicine等のグッドの緩衝液やグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液等を使用することができるが、中でも、試薬ブランクが低いTricine、Bicineがより好ましく、Bicineが特に好ましい。使用する濃度はジグリセリド濃度と同倍モル〜2倍モル程度でよい。
【0019】
界面活性剤に溶解したジグリセリドの長期保存安定性は、共存するpH緩衝液の濃度に依存するためpH緩衝液濃度の選択は極めて重要である。非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリドに添加するpH緩衝液の濃度が、例えば10mM以上の高濃度条件では、ジグリセリドは室温において不安定であり冷蔵保存を行ったときですら長期保存により加水分解を受ける。ジグリセリドの長期保存安定性を維持するためには0.5〜9mMの範囲で使用することが好ましい。より好ましくは2〜7mM、特に好ましくは3〜5mMである。従って、リパーゼ測定用組成物においては、ジグリセリド、界面活性剤を含有する溶液の長期安定性や、測定対象リパーゼの種類等を考慮して、必要に応じて試薬を分割する等の工夫を施すことが大変に好ましい。
【0020】
植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定に用いる上記のジグリセリド濃度は0.1〜2mMの範囲で使用できるが、好ましくは0.2〜0.8mM、特に好ましくは0.3〜0.7mMである。ジグリセリドを基質にした際のリパーゼ反応の生成物は遊離脂肪酸とモノグリセリドである。遊離脂肪酸もしくはモノグリセリドを、酵素反応を共役させて分光学的手法でこれらの生成速度を測定することによりリパーゼ活性を測定することができるが、遊離脂肪酸は粗酵素抽出液中に存在している。このためモノグリセリドを酵素法により測定する方が好ましい。該モノグリセリドを定量する際は、関与する共役酵素を用いた酵素法を用いて測定するのが好ましい。
【0021】
モノグリセリドを酵素法により定量する方法として下記反応式に示す3つの方法がある。
下記反応式中MGLPはモノグリセリドリパーゼ、GKはグリセロールキナーゼ、ATPはアデノシン−3−リン酸、ADPはアデノシン−2−リン酸、PEPはホスフォエノールピルビン酸、PKはピルビン酸キナーゼ、NADHは還元型βジホスフォピリジンヌクレオチド、NADは酸化型βジホスフォピリジンヌクレオチド、ADP−HKはADP依存性のヘキソキナーゼ、G6PDHはグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼである。GPOはグリセロ−3−リン酸オキシダーゼ、PODはペルオキシダーゼ、4−AAは4−アミノアンチピリン、TOOSはエチル−N−(2−ヒドロオキシ−3−スルフォプロピル)−m−ルイジンナトリウムである。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
まず反応式1の場合について述べる。
本発明で用いるモノグリセリドリパーゼとしては、ジグリセリドに作用せずモノグリセリドに特異的に作用する酵素であれば特に起源は問わないが、安定供給の点で微生物由来酵素が好ましい。中でもバチルス属由来酵素が好ましい。リパーゼ反応における共役酵素として使用する濃度の下限値としては、0.5U/ml以上が好ましく、0.6U/ml以上がより好ましく、0.7U/ml以上がさらに好ましく、0.72U/ml以上が特に好ましく、0.74U/ml以上が大変に好ましい。上限値としては、5U/ml程度あれば充分であり、3U/ml以下が好ましく、1.13U/ml以下がより好ましく、1U/ml以下がさらに好ましく、0.8U/ml以下が特に好ましく、0.78U/ml以下が大変に好ましく、0.76U/ml以下が特に大変に好ましい。最も好ましいのは0.75U/ml付近である。
【0026】
本発明で用いるグリセロキナーゼは特にその起源は問わないが安定性に優れた酵素の使用が好ましい。中でもフラボバクテリウム属由来酵素が好ましい。植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ反応における共役酵素として使用する濃度は、下限値としては0.1U/ml以上が好ましく、0.15U/ml以上がより好ましく、0.18U/ml以上がさらに好ましく、0.2U/ml以上が特に好ましい。また、上限値としては2U/ml程度あれば充分であり、1U/ml以下が好ましく、0.5U/ml以下がより好ましく、0.3U/ml以下がさらに好ましく、0.22U/ml以下が特に好ましい。最も好ましいのは0.2U/ml付近である。
本発明で用いるピルビン酸キナーゼは、臨床検査試薬の原料として汎用される動物筋肉由来酵素を使用することができる。植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ反応における共役酵素としてのピルビン酸キナーゼは0.5〜10U/ml程度あればよく、1〜2U/mlの範囲が好ましく、0.8〜1.2U/mlの範囲が特に好ましい。最も好ましいのは1U/ml付近である。
【0027】
ピルビン酸キナーゼの基質である、本発明で用いるホスフォエノールピルビン酸は0.3〜2mMの範囲、好ましくは0.3〜0.4mM、或いは0.48〜0.52mMで使用することができるが好ましくは0.5mM付近である。
本発明で用いるラクテートデヒドロゲナーゼは、その起源は特に問わないが安定性に優れたトリ心臓由来酵素の使用がより好ましい。植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ反応における共役酵素としての本酵素は0.15〜1.5U/ml程度あればよく、好ましくは0.3〜0.4U/ml、或いは0.28〜0.32U/mlの範囲が挙げられる。好ましくは0.3U/ml付近である。
ラクテートデヒドロゲナーゼの基質である、本発明で用いる還元型NADは0.2〜0.4 mMの範囲が好ましく、0.2〜0.35mMの範囲がさらに好ましく、0.28〜0.32mMの範囲が特に好ましい。好ましくは0.3mM付近である。0.3〜0.4 mMの範囲が好ましい態様もある。
【0028】
グリセロキナーゼおよびピルビン酸キナーゼの活性化剤であるマグネシウムイオンを、本発明の組成物にさらに添加した組成物も大変に好ましい。該マグネシウムイオンは1.5〜4mMの範囲、好ましくは1.8〜2.2mMの範囲で使用することができるが、特に好ましくは2mM付近である。マグネシウムイオンは塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等の塩を使用することができるが中でも硫酸マグネシウムが特に好ましい。
リパーゼ反応のpHを一定に保つために緩衝液を使用することは大変に好ましい。HTGL、LPL共に活性の最適pHは7.7〜8.3であり、このpH範囲に緩衝能のある緩衝液、例えばトリス−塩酸、POPSO、HEPPSO,EPPS,Tricine、Bicine、TAPS,cHES等のグッドの緩衝液を使用することができるが、中でも、試薬ブランクが低いTricine、Bicineがより好ましく、トリス−塩酸緩衝液が特に好ましい。使用する濃度の下限値としては、50mM以上が好ましく、100mM以上がより好ましく、150mM以上が更に好ましく、180mM以上が特に好ましい。また上限値としては、500mM以下が好ましく、300mM以下がより好ましく、250mM以下が更に好ましく、220mM以下が特に好ましい。200mM付近が最も好ましい。
【0029】
次に反応式2について述べる。
反応式2を用いるリパーゼの測定試薬組成の中で、ジグリセリド、緩衝液、モノグリセリドリパーゼ、グリセロキナーゼおよびATPは前記反応式1の内容と同一である。グリセロキナーゼの生成物のひとつであるADPはグルコース存在下ADP依存性へキソキナーゼによりグルコース−6−リン酸に変換できる。
ADP−HKは特にその起源は問わないが、安定供給の点で微生物由来が好ましい。中でも保存安定性に優れたパイロコッカス属やサーモコッカス属等の高度好温菌由来酵素が特に好ましい。
【0030】
ADP−HKの基質であるグルコースは2〜50mMの範囲で使用することができるが中でも10〜30mM特に15〜25mMが特に好ましい。リパーゼ反応の共役酵素としての本酵素の濃度は0.2〜3U/mlの範囲で使用できるが0.4〜1U/mlが特に好ましい。
本酵素の生成物であるグルコース−6−リン酸は酸化型NADまたはNADP存在下でグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼによって還元型NADまたはNADPに変換できる。グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼは特にその起源は問わないが安定供給の点で微生物由来酵素が好ましい。なかでもロイコノストック属由来酵素が特に好ましい。リパーゼ反応の共役酵素としての本酵素の濃度は0.2〜3U/mlの範囲で使用できるが0.4〜1U/mlが特に好ましい。
【0031】
次に反応式3について述べる。
反応式1を用いるリパーゼの測定試薬組成の中で、ジグリセリド、緩衝液、モノグリセリドリパーゼ、グリセロキナーゼおよびATPは前記反応式1の内容と同一である。グリセロキナーゼの生成物のひとつであるグリセロール−3−リン酸はこれを特異的に酸化するグリセロ−3−リン酸オキシダーゼにより過酸化水素に変換することができる。
グリセロ−3−リン酸オキシダーゼは特にその起源は問わないが、安定供給の点で微生物由来が好ましい。中でも乳酸菌由来酵素が特に好ましい。膵臓由来リパーゼ反応の共役酵素としての本酵素の濃度は2〜50U/mlの範囲で使用できるが5〜20U/mlが特に好ましい。
【0032】
グリセロ−3−リン酸オキシダーゼ反応で生成される過酸化水素はペルオキシダーゼとトリンダー試薬の色原体とカップラーとの酸化縮合により色素を生成する。
トリンダー型試薬の色原体としては、フェノール誘導体、アニリン誘導体、トルイジン誘導体等が使用可能であり、具体例としてN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、2,4−ジクロロフェノール、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル) −3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメチルアニリン(MAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン(TOOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−m−アニシジン(ADPS)、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン(ALPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(DAPS)、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(HDAPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−m−トルイジン(TOPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−アニシジン(ADOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン(ALOS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−スルホプロピル−アニリン(HALPS)(以上同人化学研究所社製)等が挙げられる。
【0033】
植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定試薬中での濃度は0.02〜0.5%の範囲で使用することができるが0.05〜0.1%の範囲が特に好ましい。
カップラーとしては4−アミノアンチピリン若しくは3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)等のカップラーを使用することができる。植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定試薬中での濃度は0.02〜0.5%の範囲で使用することができるが0.05〜0.1%の範囲が特に好ましい。
また過酸化水素はパーオキシダーゼ存在下ロイコ型試薬を用いて発色することができる。この試薬の具体例としては、o−ジアニシジン、o−トリジン、3,3−ジアミノベンジジン、3,3,5,5−テトラメチルベンジジン;以上同人化学研究所社製、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニルアミン(DA64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン(DA67);以上和光純薬社製等が挙げられる。
【0034】
本発明で使用するペルオキシダーゼはその起源は特に問わないが、既に安定供給されている西洋わさび大根由来の酵素が特に好ましい。リパーゼ反応の共役酵素としては2〜50U/mlの範囲で使用できるが5〜20U/mlが特に好ましい。
また過酸化水素は蛍光法、化学発光を利用した分析法、アルコールから生じたアルデヒドを定量する方法、又は電極法でも定量することができる。蛍光法には、酸化によって蛍光を発する化合物、例えばホモバニリン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、チラミン、パラクレゾール、ジアセチルフルオレスシン誘導体等を、化学発光法には、触媒としてルミノール、ルシゲニン、イソルミノール、ピロガロール等を用いることが出来る。カタラーゼ等を用いてアルコールからアルデヒドを生成せしめて、生じたアルデヒドを定量する方法としては、ハンチ反応を用いる方法や、MBTHとの縮合反応により発色させる方法、若しくはアルデヒドデヒドロゲナーゼを用いる方法等が挙げられる。
【0035】
また過酸化水素を電極を用いて測定する場合、電極には、過酸化水素との間で電子を授受する事の出来る材料である限り特に制限されないが、例えば白金、金若しくは銀等が挙げられ電極測定方法としてはアンペロメトリー、ポテンショメトリー、クーロメトリー等の、公知の方法を用いることが出来、さらにオキシダーゼまたは基質と電極との間の反応に電子伝達体を介在させ、得られる酸化、還元電流或いはその電気量を測定しても良い。電子伝達体としては電子伝達機能を有する任意の物質が使用可能であり、例えばフェロセン誘導体、キノン誘導体等の物質が挙げられる。またオキシダーゼ反応により生成する過酸化水素と電極の間に電子伝達体を介在させ得られる酸化、還元電流またはその電気量を測定しても良い。
【0036】
本発明で測定することができるリパーゼとしては、植物由来及び/又は微生物リパーゼが挙げられる。
植物由来リパーゼとしては、植物種子由来、米ぬか由来、小麦胚芽由来リパーゼ等が挙げられ、小麦胚芽由来リパーゼが好ましい。
微生物由来リパーゼとしては、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・フェニクス、アスペルギルス・ウサミ等のアスペルギルス属由来、ペニシリウム・キャメンベルティ、ペニシリウム・クリソゲナム、ペニシリウム・ロッキェフェルティ等のペニシリウム属由来、ムコール・ジャバニクス、ムコール・ミエハイ等のムコール属由来、リゾプス・デレマー、リゾプス・ジャバニクス、リゾプス・ミエハイ、リゾプス・ニベウス、リゾプス・オリゼー等のリゾプス属由来、リゾムコール・ミエハイなどの糸状菌由来、キャンディダ・ルゴサ等のキャンディダ属の酵母由来、ストレプトマイセス属の放線菌由来、アルカリゲネス属由来、シュドモナス・フラジ、シュドモナス・フルオレッセンス等のシュドモナス属由来、クロモバクテリウム・ビスコサム、セラチア・マセランス等の細菌由来等が挙げられる。中でも、ムコール・ミエハイ等のムコール属由来、キャンディダ・ルゴサ等のキャンディダ属の酵母由来、クロモバクテリウム・ビスコサム等の細菌由来が好ましく、ムコール・ミエハイ由来、キャンディダ・ルゴサ由来、クロモバクテリウム・ビスコサム由来が特に好ましい。
【0037】
本発明のリパーゼ活性測定用組成物は、全てを含有する1つの試薬として用いてもよいが、試薬1(R1)と試薬2(R2)の2つに分けて使用することが好ましい。
反応式1の場合、R1としては、例えば、ATP、ホスフォエノールピルビン酸、モノグリセリドリパーゼ、グリセロキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、マグネシウムイオンなどを含有する試薬が好ましく、さらにカルシウムイオン、アンモニウムイオン、グッドのpH緩衝液等を含有してもよい。R2としては、例えばpH緩衝液、還元型NADまたはNADPなどを含有させる。R1,R2共に必要に応じて防腐剤や酵素の安定化剤などを含有させてもいい。
【0038】
反応式2の場合、R1としては、例えば、ATP、グルコース、酸化型NADまたはNADPモノグリセリドリパーゼ、グリセロキナーゼ、ADPヘキソキナーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリドなどを含有する試薬が好ましく、さらにカルシウムイオン、アンモニウムイオン、グッドのpH緩衝液等を含有してもよい。R2としては、例えばpH緩衝液、非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、マグネシウムイオンなどを含有させる。R1,R2共に必要に応じて防腐剤や酵素の安定化剤などを含有させてもいい。
反応式3の場合、R1としては、例えば、ATP、パーオキシダーゼ、TODB、モノグリセリドリパーゼ、グリセロキナーゼ、グリセロリン酸オキシダーゼ、非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、マグネシウムイオンなどを含有する試薬が好ましく、さらにカルシウムイオン、アンモニウムイオン、グッドのpH緩衝液等を含有してもよい。R2としては、例えばpH緩衝液、4−アミノアンチピリンなどを含有させる。R1,R2共に必要に応じて防腐剤や酵素の安定化剤などを含有させてもいい。
【0039】
植物由来及び/又は微生物由来リパーゼの粗酵素液(抽出液)には遊離のグリセロールが存在することがあり正誤差を生じる危険性が考えられるため被験液中の遊離のグリセロールを消去することが好ましい。消去する方法は反応式1、2と反応式3とでは異なる。
反応式1、2を利用する場合R1に遊離のグリセロールを消去する目的でグリセロールに作用する酸化酵素(グリセロールオキシダーゼ)を添加し遊離のグリセロールをアルデヒドに変換することで遊離のグリセロールの影響を回避することができる。この際にはグリセロールキナーゼ、ATPのどちらかまたは両方をR2に添加すればよい。該グリセロールオキシダーゼとしては、アスペルギルス属、ノイロスポラ属、ペニシリウム属由来のグリセロールオキシダーゼ等、の公知のグリセロールオキシダーゼを使用することができる(アグリカルチャル・バイオロジカル・ケミストリー 44巻、2号、399〜406頁、1980年を参照)。
【0040】
反応式3を利用する場合のグリセロールは、グリセロキナーゼ、グリセロ−3−リン酸オキシダーゼ、カタラーゼあるいはパーオキシダーゼとフェノール誘導体、アニリン誘導体、トルイジン誘導体等のトリンダー試薬の色原体とを含有する試薬1(R1)に被験液を添加し予め加温することでこの成分を消去することができる。トリンダー型試薬の色原体としては、反応式3で説明した色原体が挙げられる。
試薬2(R2)は4−アミノアンチピリン若しくは3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)等のカップラーからなる成分で構成される。R1とR2が混合されると同時にグリセロ−3−リン酸オキシダーゼ反応で生成される過酸化水素はトリンダー試薬の色原体とカップラーとの酸化縮合により色素を生成する。この色素の吸光度を分光学的に測定することができる。
【0041】
反応式1、2および反応式3を使用してリパーゼ活性測定試薬を調製する際には必要に応じて酵素の安定化剤、例えばシュクロース、マンニトール、ソルビトール、マルトース、ラクトース、サイクロデキストリン、トレハロース等の糖類、EDTA等のキレート剤を適宜添加してもよい。添加する糖類の濃度は1〜20%の範囲で使用できるが好ましくは3〜15%特に好ましくは4〜8%である。キレート剤を使用する場合にはその濃度範囲は0.02mM〜1mMであり、好ましくは0.05mM〜0.5mM、特に好ましくは0.1〜0.3mMである。更に各種の防腐剤、例えばアジ化ナトリウムの0.01〜10%、好適には0.05〜1%を適宜添加してもよい。
【0042】
さらに必要に応じて、3つ以上の試薬に分割して使用することも可能である。
また、これらのリパーゼ活性測定方法は、正確さや再現性に優れている。具体的には、反応式1の場合にはリパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、これをATP存在下にグリセロキナーゼによりADPに変換し、次いでホスフォエノールピルビン酸存在下にピルビン酸キナーゼでピルビン酸に変換し、更に還元型NAD存在下にラクテートデヒドロゲナーゼを作用させ還元型NADの吸光度の減少速度を測定する、リパーゼ活性の測定方法である。
還元型NADの吸光度を測定する際の波長としては、試料中の膵臓由来リパーゼ活性を正確に測定できる波長であれば何を用いてもよい(ある1波長でもよいし、ある範囲の波長の積算でもよい)が、例えば、300〜400nmから選択することが好ましく、320〜360nmから選択することがより好ましく、330〜350nmから選択することがさらに好ましく、340nm付近を選択することが大変に好ましい。340nm付近とは例えば、340nmに設定し、その誤差範囲が10nm以下であることが好適な例として挙げられ、その誤差範囲が5nm以下であることがより好適な例として挙げられ、その誤差範囲が3nm以下であることがさらに好適な例として挙げられ、その誤差範囲が1nm以下であることが大変に好適な例として挙げられる。
【0043】
反応式2の場合にはリパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、これをATP存在下にグリセロキナーゼによりADPに変換し、次いでグルコース存在下にADP依存性へキソキナーゼでグルコース−6−リン酸に変換し、更に酸化型NADまたは酸化型NADP存在下にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを作用させ還元型NADまたは還元型NADPの吸光度の増加速度を測定する、リパーゼ活性の測定方法である。
還元型NADの吸光度を測定する際の波長としては、試料中の膵臓由来リパーゼ活性を正確に測定できる波長であれば何を用いてもよい(ある1波長でもよいし、ある範囲の波長の積算でもよい)が、例えば、300〜400nmから選択することが好ましく、320〜360nmから選択することがより好ましく、330〜350nmから選択することがさらに好ましく、340nm付近を選択することが大変に好ましい。340nm付近とは例えば、340nmに設定し、その誤差範囲が10nm以下であることが好適な例として挙げられ、その誤差範囲が5nm以下であることがより好適な例として挙げられ、その誤差範囲が3nm以下であることがさらに好適な例として挙げられ、その誤差範囲が1nm以下であることが大変に好適な例として挙げられる。
【0044】
反応式3の場合にはリパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、次いでこれをATP存在下にグリセロキナーゼによりグリセロール−3−リン酸に変換し、次いで生成される過酸化水素をペルオキシダーゼとトリンダー試薬、カップラー試薬とにより可視部の波長をもつキノン色素に変換できる。波長は使用するトリンダー試薬によって異なるが540〜700nm付近の波長を選択(ある1波長でもよいし、ある範囲の波長の積算でもよい)すればよい。例えば、550nm付近とは例えば、550nmに設定し、その誤差範囲が10nm以下であることが好適な例として挙げられ、その誤差範囲が5nm以下であることがより好適な例として挙げられ、その誤差範囲が3nm以下であることがさらに好適な例として挙げられ、その誤差範囲が1nm以下であることが大変に好適な例として挙げられる。生成される色素の増加速度をレート法によって測定してもよく、または一定時間反応を行った後ラウリル硫酸ナトリウムのような酵素変性剤で反応を停止した後540〜700nm付近の波長でその吸光度を測定してもよい。
【実施例】
【0045】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
[実施例1;植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ基質ジグリセリドの調製]
【0046】
卵黄レシチン由来ホスファチジルコリン(旭化成ファーマ社製)1.5gを10mlのクロロホルムに溶解した。400UnitのホスフォリパーゼC(旭化成ファーマ社製)を溶解した5mlの0.5MPIPES−NaOH緩衝液(pH7.5)を加え37℃で攪拌しながら加水分解反応を行った。2時間後溶媒層と水槽とを分離しクロロホルム層を集め、予めクロロホルムに懸濁したシリカゲルカラム(3ml)に通しクロロホルムで展開しジグリセリド画分を得た。
ロータリーエバポレーターでクロロホルムを完全に留去しオイル状のジグリセリド1.1gを得た。
[実施例2;前記反応式1における植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用試薬の調製]
1)試薬1(R1)の調製
200mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0),2mM塩化カルシウム、2mM硫酸マグネシウム、3mMアデノシン−3−リン酸、0.3mM還元型NAD、2mMホスフォエノールピルビン酸、モノグリセリドリパーゼ(旭化成ファーマ社製)1125U/L、グリセロキナーゼ(旭化成ファーマ社製)600U/L、ピルビン酸キナーゼ(シグマ社製)600U/L、乳酸デヒドロゲナーゼ(オリエンタル酵母社製)900U/Lから成る試薬を調製した。
2)R2の調製
実施例1で得たジグリセリドを一定量秤量し、2.4mMになるように1.2%POEノニルフェニルエーテル(1.5mM MES−NaOH緩衝液、pH5.5)を一定量加え、37℃で1時間攪拌して完全に澄明な基質溶液を得た。
[実施例3;前記反応式2における植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用試薬の調製]
1)試薬1(R1)の調製
200mMBicine−NaOH(pH8.0)、2mM塩化カルシウム、2mM硫酸マグネシウム、3mMアデノシン−3−リン酸、30mMグルコース、3mMNADP、モノグリセリドリパーゼ(旭化成ファーマ社製)1125U/L、グリセロキナーゼ(旭化成ファーマ社製)600U/L、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(東洋紡社製)600U/L、ADP−HK(旭化成ファーマ社製)900U/Lから成る試薬を調製した。
2)R2の調製
実施例1で得たジグリセリドを一定量秤量し、1.2mMになるように0.6%POEノニルフェニルエーテル(1.5mM MES−NaOH緩衝液、pH5.5)を一定量加え、37℃で1時間攪拌して完全に澄明な基質溶液を得た。
[実施例4;前記反応式3における植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用試薬の調製]
1)試薬1(R1)の調製
300mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、2mM塩化カルシウム、3mM硫酸マグネシウム、アデノシン−3−リン酸3mM、モノグリセリドリパーゼ(旭化成ファーマ社製)1125U/L、グリセロキナーゼ(旭化成ファーマ社製)600U/L、グリセロリン酸オキシダーゼ(旭化成ファーマ社製)30000U/L、ペルオキシダーゼ(シグマ社)5000U/L、0.2%TOOSから構成される試薬を調製した。
2)試薬2(R2)の調製
実施例1で得たジグリセリドを一定量秤量し、2.4mMになるように1.2%POEノニルフェニルエーテル(1.5mM MES−NaOH緩衝液、pH5.5)、0.2%4−アミノアンチピリンを加え、37℃で1時間攪拌して完全に澄明な基質溶液を得た。
[実施例5]
【0047】
実施例2に示した組成の試薬1(R1)1000マイクロリットルにクロモバクテリウム・ビスコサム由来のリパーゼ(旭化成社製)を含有する検体0〜50マイクロリットルの酵素液を加え、37℃で3分間反応を行った後、実施例2に示した組成の試薬2(R2)500マイクロリットルを添加し37℃で反応をスタートさせた。340nmにおける吸光度の減少速度を連続的に測定した。
酵素量に対する吸光度変化量の直線性を図1に示した。
[図1]

[実施例6]
【0048】
実施例4に示した組成の試薬1(R1)1000マイクロリットルにキャンディダ・ルゴサ由来リパーゼ(シグマ社製)を含有する検体0〜50マイクロリットルの酵素液を加え、37℃で3分間反応を行った後、実施例2に示した組成の試薬2(R2)500マイクロリットルを添加し37℃で反応をスタートさせた。550nmにおける吸光度の増加速度を連続的に測定した。
酵素量に対する吸光度変化量の直線性を図2に示した。
0007
[図2]

[実施例7]
【0049】
実施例4に示した組成の試薬1(R1)1000マイクロリットルにムコール・ミエハイ(シグマ社製)由来リパーゼを含有する検体0〜50マイクロリットルの酵素液を加え、37℃で3分間反応を行った後、実施例2に示した組成の試薬2(R2)500マイクロリットルを添加し37℃で反応をスタートさせた。550nmにおける吸光度の増加速度を連続的に測定した。
【0050】
酵素量に対する吸光度変化量の直線性を図3に示した。
[図3]

[実施例8]
【0051】
実施例4に示した組成の試薬1(R1)1000マイクロリットルに小麦胚芽由来リパーゼ(シグマ社製)を含有する検体0〜50マイクロリットルの酵素液を加え、37℃で3分間反応を行った後、実施例2に示した組成の試薬2(R2)500マイクロリットルを添加し37℃で反応をスタートさせた。550nmにおける吸光度の増加速度を連続的に測定した。
酵素量に対する吸光度変化量の直線性を図4に示した。
[図4]

[実施例9]
【0052】
実施例3に示した組成の試薬1(R1)1000マイクロリットルにクロモバクテリウム・ビスコサム由来リパーゼ(旭化成社製)を含有する検体0〜50マイクロリットルの酵素液を加え、37℃で3分間反応を行った後、実施例3に示した組成の試薬2(R2)500マイクロリットルを添加し37℃で反応をスタートさせた。340nmにおける吸光度の増加速度を連続的に測定した。
酵素量に対する吸光度変化量の直線性を図5に示した。
[図5]

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のリパーゼ活性測定用組成物は、正確なリパーゼ活性を測定することができ、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリドを基質として用いることを特徴とする植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【請求項2】
少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、還元型NAD、ホスフォエノールピルビン酸、ピルビン酸キナーゼ、及びラクテートデヒドロゲナーゼを含有する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【請求項3】
少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、酸化型NAD又は酸化型NADP、グルコース、ADP−ヘキソキナーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを含有する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【請求項4】
少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、グリセロ−3−リン酸オキシダーゼ、及びペルオキシダーゼと過酸化水素発色試薬を含有する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【請求項5】
非イオン性界面活性剤の濃度が、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼのリパーゼ活性が発現する濃度である請求項1〜4いずれか1項に記載の植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【請求項6】
試薬1と試薬2との組み合わせキットとして用いる請求項2〜5のいずれか1項に記載の植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【請求項7】
試薬1及び/又は試薬2が液状である、請求項6記載の植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【請求項8】
1の試薬にグリセロールオキシダーゼを添加し、他のいずれかの試薬にグリセロールキナーゼ、アデノシン−3−リン酸のどちらか又は両方を添加することを特徴とする請求項7に記載の植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8に記載のリパーゼ活性測定用組成物の、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定の為の使用。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、ホスフォエノールピルビン酸、ピルビン酸キナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、及び低濃度pH緩衝剤を含有する試薬1と、還元型NAD又は還元型NADPと高濃度pH緩衝剤を含有する試薬2とからなる植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用キット。
【請求項11】
非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、グルコース、ADP−ヘキソキナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、及び低濃度pH緩衝剤を含有する試薬1と、酸化型NAD又は酸化型NADPと高濃度pH緩衝剤を含有する試薬2とからなる植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定用キット。
【請求項12】
非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリド、モノグリセリドリパーゼ、ATP、グリセロキナーゼ、グリセロ−3−リン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、色原体、及び低濃度pH緩衝剤を含有する試薬1と、カップラーと高濃度pH緩衝剤とを含有する試薬2とからなる植物由来及び/又は微生物リパーゼ由来活性測定用キット。
【請求項13】
少なくとも非イオン性界面活性剤に溶解したジグリセリドを基質に用いてリパーゼ反応により生成されるモノグリセリドを酵素的に測定する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法。
【請求項14】
請求項2項に記載のリパーゼ活性測定用組成物を用いた、リパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、これをATP存在下にグリセロールキナーゼによりADPに変換し、次いでホスフォエノールピルビン酸存在下にピルビン酸キナーゼでピルビン酸に変換し、更に還元型NAD存在下にラクテートデヒドロゲナーゼを作用させ、還元型NADの340nm付近の波長における吸光度の減少速度を測定する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法。
【請求項15】
請求項3項に記載のリパーゼ活性測定用組成物を用いた、リパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、これをATP存在下にグリセロールキナーゼによりADPに変換し、次いでグルコース存在下にADP−へキソキナーゼでグルコース−6−リン酸に変換し、更に酸化型NAD又はNADP存在下にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを作用させ、還元型NAD又は還元型NADPの340nm付近の波長における吸光度の増加速度を測定する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法。
【請求項16】
請求項4項に記載のリパーゼ活性測定用組成物を用いた、リパーゼ反応でジグリセリドから遊離されるモノグリセリドをモノグリセリドリパーゼの作用によりグリセロールに変換し、これをATP存在下にグリセロールキナーゼによりグリセロール−3−リン酸に変換し、次いでグリセロール−3−リン酸オキシダーゼを作用させ過酸化水素に変換し、更に過酸化水素発色色素存在下にペルオキシダーゼを作用させ発色反応を行い、540〜700nm付近の波長における吸光度の増加速度を測定する植物由来及び/又は微生物由来リパーゼ活性測定方法。
【請求項17】
非イオン性界面活性剤の濃度が、植物由来及び/又は微生物由来リパーゼのリパーゼ活性が発現する濃度である請求項13〜16いずれか1項に記載の植物及び/又は微生物リパーゼ活性測定方法。

【公開番号】特開2007−306821(P2007−306821A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137073(P2006−137073)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】