説明

リフター

【課題】リフターワイヤー39の弛みを矯正して円滑なスライドが可能であり、しかもリフターワイヤーが切断された場合に確実に落下防止がなされるリフターの提供。
【解決手段】このリフター24は、リフター本体36と、リフター本体36に設けられたワイヤーアーム37と、制動機構38と、リフターワイヤー39の弛みを吸収するワイヤー矯正機構40とを備えている。ワイヤーアーム37にリフターワイヤー39が連結されており、このリフターワイヤー39は、プーリ80に掛け回されている。リフターワイヤー39が切断されると、ワイヤーアーム37が左方向に回転し、制動機構38(具体的にはブレーキカム73)が作動する。リフターワイヤー39に瞬間的に弛みが発生した場合は、プーリ80が右側にスライドすることによって、リフターワイヤー39の弛みが除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梯子付き消防自動車等に搭載されるリフターの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から梯子付き消防自動車には、リフターが装備されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。図11は、従来の梯子付き消防自動車1の側面図であり、リフター2が梯子3に沿ってスライドされる要領が示されている。また、図12、図13及び図14は、それぞれ、従来のリフター2の正面図、側面図及び底面図である。
【0003】
図11が示すように、梯子3は、梯体フレーム4に支持され、この梯体フレーム4が起伏中心軸5を介して支持フレーム6に支持されている。梯体フレーム4は、起伏中心軸5を中心にして回動することができ、これにより、梯子3は、梯体フレーム4と共に起伏動作が可能となっている。一方、図12ないし図14が示すように、リフター2は、一般に複数の棒状部材が組み合わされた骨組構造を有し、箱状に形成されている。このリフター2は、梯子3に係合されており、梯子3の上面7に沿ってスライド自在となっている。(図11参照)。
【0004】
図12が示すように、リフターワイヤー9の一端部がリフター2に連結されている。このリフターワイヤー9の他端は、梯体フレーム4に設けられたワイヤードラム8に巻き付けられている(図11参照)。したがって、リフター2は、リフターワイヤー9によって吊り下げられた状態となっており、ワイヤードラム8が正転されることによりリフターワイヤー9が巻き取られると、リフター2は、図11が示すように、梯子3に沿って上昇する。また、ワイヤードラム8が逆転されることによりリフターワイヤー9が繰り出されると、リフター2は、梯子3に沿って下降するようになっている。
【0005】
ところで、図12及び図13が示すように、従来のリフター2は、落下防止用ブレーキ10を備えている。この落下防止用ブレーキ10は、主としてリフターワイヤー9が切断されたときにリフター2の落下を防止するためのものである。この落下防止用ブレーキ10は、扇形に形成されたブレーキカム11と、リフターワイヤー9が接続された回転アーム14と、回転アーム14とブレーキカム11とを連接する連接ロッド15と、この連接ロッド15に接続されたバネ16とを備えている。
【0006】
通常、リフターワイヤー9には、リフター2の吊下力に起因したテンションが発生している。このテンションによって回転アーム14が図13において支持軸17を中心にして右回りに回転する。これにより、上記バネ16が引き伸ばされると共に、連接ロッド15を介してブレーキカム11が左回りに回転する。したがって、この状態では、ブレーキカム11は、梯子3に接触することはない。
【0007】
ところが、リフターワイヤー9のテンションが所定の大きさよりも低下した場合(たとえば、リフターワイヤー9が切断された場合や、梯子3の起立角度が小さくなった場合)には、リフターワイヤー9のテンションに起因する回転アーム14の回転モーメント(図13において支持軸17を中心とする右回りのモーメント)よりも上記バネ16の弾性力に起因する回転アーム14の回転モーメント(図13において支持軸17を中心とする左回りのモーメント)が大きくなる。したがって、回転アーム14が支持軸17を中心に左回りに回転すると共に、連接ロッド15を介してブレーキカム11が右回りに回転する。ブレーキカム11が右回りに回転すると、当該ブレーキカム11の先端が梯子3側に突出し、当該ブレーキカム11の先端が梯子3の上面7に押圧される。これにより、梯子3の上骨12がブレーキカム11と挟持部材13とによって挟み込まれ(図14参照)、ブレーキカム11と梯子3との間に一定の摩擦力が発生する。この摩擦力は、リフター2の落下を確実に防止する。
【0008】
【特許文献1】特開2003−290375公報
【特許文献2】特開2004−67324公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、リフター2は、リフターワイヤー9によって吊り上げられた状態となっているから(図11参照)、リフターワイヤー9に発生するテンションは、梯子3の起立角度に比例し、起立角度が大きいほど当該テンションが大きくなる。そして、従来の落下防止用ブレーキ10は、リフターワイヤー9のテンションが所定の大きさより小さくなったときに作動するものであるから、梯子3の起立角度が所定の角度よりも小さい場合は、リフターワイヤー9のテンションが小さくなり、上記落下防止用ブレーキ10が作動することになる。そのため、従来の梯子付き消防自動車では、梯子は、その起立角度が上記所定の角度以上の範囲(以下、この範囲を「使用可能起立範囲」と称す。)で使用されるように設定されているものもある。
【0010】
図14が示すように、リフター2は、梯子3の上骨12に載置されているが、リフター2が昇降する際に梯子3に対して左右方向にスライドする場合がある。その場合、例えばリフター2の挟持部材13が上骨12の側面と摺動し、リフター2と上骨12との間に摩擦力が発生する。この摩擦力は、リフター2が昇降する際の抵抗力として当該リフター2に作用し、したがって、リフターワイヤー9に作用するリフター2の吊下力は、上記摩擦力に相当する分だけ低下する。そのため、梯子3が上記使用可能起立範囲内にあるにもかかわらずリフターワイヤー9のテンションが低下し、その結果、上記落下防止用ブレーキ10が作動してしまうおそれがある。
【0011】
さらに、リフター2は、梯子3に沿ってスライドするが、この梯子3は、一般に入子状に複数段編成(図14では5段編成)とされていることが多い。梯子3が複数段編成である場合には、梯子3の加工誤差や組立誤差が原因となって、隣り合う梯子3間において微小な段部が形成されることもある。そのため、下降中のリフター2がこの段差を通過する際に瞬間的に減速される場合がある。リフター2は、上記リフターワイヤー9がワイヤードラム8から繰り出されることによって下降するものであるから、下降中のリフター2が瞬間的に減速されることにより、リフターワイヤー9のテンションが急激に低下し、瞬間的にリフターワイヤー9に撓みが生じるおそれがある。また、消防活動の現場においては、リフター2は、梯子3に沿って上昇又は下降が繰り返される。前述のように、リフターワイヤー9がワイヤードラム8に巻き取られることによってリフター2が上昇し、リフターワイヤー9がワイヤードラム8から繰り出されることによってリフター2が下降するので、上昇中のリフター2が突然下降されると、リフターワイヤー9に瞬間的に撓みが生じるおそれがある。そして、リフターワイヤー9に瞬間的に撓みが生じた結果、上記落下防止用ブレーキ10が作動してしまうおそれがある。
【0012】
このように落下防止用ブレーキ10が作動してしまうと、リフター2が梯子3に固定されてしまい、円滑なリフター操作が困難となり、ひいては、火災現場における迅速な救助作業が困難となるおそれがある。
【0013】
そこで、本発明の一の目的は、梯子が使用可能起立範囲にあるときは、その起立角度にかかわらず円滑に昇降することができ、且つ万一リフターワイヤーが切断された場合には、確実に落下防止がなされるリフターを提供することである。また、本発明の他の目的は、梯子に対して摺動した場合であっても円滑に昇降することができ、且つ万一リフターワイヤーが切断された場合には、確実に落下防止がなされるリフターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 上記一の目的が達成されるため、本発明に係るリフターは、消防自動車に搭載された梯子の上面に係合し、当該梯子の上面に沿って昇降されるリフター本体と、リフター本体に設けられ、当該リフター本体を吊り下げた状態で梯子の上面に沿って昇降させるリフターワイヤーが接続されるワイヤー接続部と、ワイヤー接続部に連結され、リフターワイヤーの張力が一定値以上である場合に梯子の上面から離反してリフター本体の昇降を許容すると共にリフターワイヤーの張力が上記一定値よりも小さくなった場合に梯子の上面を押圧してリフター本体の昇降を規制する制動機構と、リフター本体に設けられ、制動機構が作動しないように所定範囲内のリフターワイヤーの弛みを矯正するワイヤー矯正機構とを備えている。
【0015】
このリフターは、消防自動車に搭載された梯子に取り付けられる。梯子は、例えば所定の駆動装置によって起伏され且つ伸縮される。リフター本体は、この梯子の上面に係合し、梯子の上面に沿って昇降される。リフター本体は、リフターワイヤーに吊り下げられた状態で昇降される。このリフターワイヤーは、リフター本体のワイヤー接続部に接続されており、例えば所定のワイヤー巻取装置によって巻き取られることによってリフター本体が梯子に沿って上昇し、また、当該ワイヤー巻取装置からリフターワイヤーが繰り出されることによってリフター本体が梯子に沿って下降する。
【0016】
一般にリフターの作動中においては、リフター本体の吊下力がリフターワイヤーに作用するから、リフターワイヤーには一定値以上の張力が発生している。このため、制動機構はリフター本体の昇降を許容し、したがって、リフターが自由に梯子に沿って昇降することができる。ただし、リフターの作動中にリフターワイヤーの張力が一定値よりも極端に小さくなった場合、例えば、リフターワイヤーが切断された場合等では、制動機構が作動して梯子の上面を押圧する。これにより、リフターの昇降が規制され、リフターの落下が防止される。
【0017】
ところで、火災現場の状況はさまざまであり、梯子はさまざまな起立角度及び伸長長さで使用され、且つリフターが使用されることがある。そして、梯子が複数段編成とされている場合に、隣り合う梯子間でリフター本体のスライドが瞬間的に減速されることもある。このような場合、リフターワイヤーに作用するリフター本体の吊下力が低下したり、瞬間的にリフターワイヤーに弛みが生じることも考えられる。このように、上記吊下力の変動等を理由として瞬間的にリフターワイヤーに弛みが生じたとしても、ワイヤー矯正機構が作動することによって、瞬間的に生じたリフターワイヤーの弛みが矯正される。すなわち、制動機構が作動しないようにリフターワイヤーの張力が確保される。したがって、使用可能起立範囲内において、梯子の起立角度が変動したとしても、また、隣り合う梯子間でリフターのスライドが瞬間的に減速ないし停止されたとしても、制動機構が作動することがなく、リフター本体は、梯子に沿って昇降することが可能である。
【0018】
(2) 上記ワイヤー矯正機構は、上記リフターワイヤーが掛け回されるプーリと、当該プーリを上記リフターワイヤーの弛みが吸収される方向に付勢する付勢部材とを備えて構成され得る。
【0019】
リフターワイヤーは、上記プーリに掛け回されており、このプーリは、付勢部材によってリフターワイヤーの弛みが吸収される方向に付勢されている。したがって、瞬間的にリフターワイヤーに弛みが生じたとしても、上記プーリが変位することによって当該弛みが直ちに吸収される。すなわち、制動機構が作動しないようにリフターワイヤーの張力が確保される。
【0020】
(3) 上記付勢部材は、コイルバネであるのが好ましい。
【0021】
上記付勢部材としてコイルバネが採用されることにより、付勢部材の構造がきわめて簡単であり、リフターの製造コストが低く抑えられる。
【0022】
(4) 上記他の目的が達成されるため、本発明に係るリフターは、消防自動車に搭載された梯子の上面に係合し、当該梯子の上面に沿って昇降されるリフター本体と、リフター本体に設けられ、当該リフター本体を吊り下げた状態で梯子の上面に沿って昇降させるリフターワイヤーが接続されるワイヤー接続部と、ワイヤー接続部に連結され、リフターワイヤーの張力が一定値以上である場合に梯子の上面から離反してリフター本体の昇降を許容すると共にリフターワイヤーの張力が上記一定値よりも小さくなった場合に梯子の上面を押圧してリフター本体の昇降を規制する制動機構と、リフター本体に設けられ、梯子とリフター本体との間に発生する摩擦力によって制動機構が作動しないようにリフターワイヤーの張力を補償する張力補償機構とを備えている。
【0023】
このリフターは、消防自動車に搭載された梯子に取り付けられる。梯子は、例えば所定の駆動装置によって起伏され且つ伸縮される。リフター本体は、この梯子の上面に係合し、梯子の上面に沿って昇降される。リフター本体は、リフターワイヤーに吊り下げられた状態で昇降される。このリフターワイヤーは、リフター本体のワイヤー接続部に接続されており、例えば所定のワイヤー巻取装置によって巻き取られることによってリフター本体が梯子に沿って上昇し、また、当該ワイヤー巻取装置からリフターワイヤーが繰り出されることによってリフター本体が梯子に沿って下降する。
【0024】
一般にリフターの作動中においては、リフター本体の吊下力がリフターワイヤーに作用するから、リフターワイヤーには一定値以上の張力が発生している。このため、制動機構はリフター本体の昇降を許容し、したがって、リフターが自由に梯子に沿って昇降することができる。ただし、リフターの作動中にリフターワイヤーの張力が一定値よりも極端に小さくなった場合、例えば、リフターワイヤーが切断された場合等では、制動機構が作動して梯子の上面を押圧する。これにより、リフターの昇降が規制され、リフターの落下が防止される。
【0025】
ところで、リフター本体は梯子の上面をスライドするものであるから、リフター本体が梯子に対して摺動することを原因として両者間に摩擦力が発生することがある。この摩擦力は、リフターの吊下力を低下させ、その結果、リフターワイヤーの張力が小さくなる。このように、リフターワイヤーの張力が小さくなったとしても、張力補償機構が作動することによって、制動機構が作動しないようにリフターワイヤーの張力が確保される。したがって、リフター本体と梯子との間に摩擦力が発生したとしても、制動機構が作動することがなく、リフター本体は、梯子に沿って昇降することが可能である。
【0026】
(5) 上記ワイヤー接続部は、基端部がリフター本体に設けられた所定の回動中心軸に連結されると共に先端部に上記リフターワイヤーが接続され、上記回動中心軸を中心としてリフター本体の吊下力の方向に回動した第1姿勢と上記吊下力の方向と反対方向に回動した第2姿勢との間で揺動可能なワイヤーアームを有し、上記張力補償機構は、上記ワイヤーアームと共に上記回動中心軸の回りに回動する回転プレートと、当該回転プレートの所定位置に連結され、上記ワイヤーアームが第1姿勢と第2姿勢との間の所定の中間姿勢よりも第1姿勢側にあるときは当該ワイヤーアームを第1姿勢側に回動させるように当該回転プレートに弾性力を付加し、上記ワイヤーアームが第1姿勢と第2姿勢との間の所定の中間姿勢よりも第2姿勢側にあるときは当該ワイヤーアームを第2姿勢側に回動させるように当該回転プレートに弾性力を付加する姿勢安定部材とを備えているのが好ましい。
【0027】
この構成では、リフターワイヤーが接続されたワイヤーアームは、常時(通常のリフターの使用時)において第1姿勢となっており、したがって、制動機構は作動しない。ただし、リフターワイヤーの張力が低下すると、これに応じてワイヤーアームが第2姿勢側へ回動する。具体的には、リフターワイヤーの張力が一定範囲内で低下したときは、ワイヤーアームが第2姿勢側へ変化すると共に回転プレートもワイヤーアームと共に回転する。リフターワイヤーの張力が極端に低下したとき(典型的にはリフターワイヤーが切断された場合)には、ワイヤーアームが第2姿勢になり、その結果、制動機構が作動してリフター本体の昇降が規制される。
【0028】
上記摩擦力を原因としてリフターワイヤーの張力が一定範囲内で低下した場合には、ワイヤーアームが第2姿勢側へ回動するが、姿勢安定部材が設けられているので、当該ワイヤーアームは、第2姿勢へ完全に姿勢を変化させることなく、第1姿勢と第2姿勢との間の所定の中間姿勢よりも第1姿勢側に位置し、しかも姿勢安定部材の弾性力によって、当該ワイヤーアームは再び第1姿勢へと戻される。換言すれば、姿勢安定部材の弾性力がリフターワイヤーを引っ張ることとなる。したがって、上記摩擦力によって低下したリフターワイヤーの張力が補償され、制動機構の作動が阻止される。ただし、リフターワイヤーの張力が極端に低下した場合には、ワイヤーアームが第2姿勢側へ回動し、ワイヤーアームが上記所定の中間姿勢よりもさらに第2姿勢側へ回動すると、上記姿勢安定部材は、このワイヤーアームを第2姿勢に安定させるべく当該ワイヤーアームに弾性力を付与する。したがって、ワイヤーアームは、瞬時に第2姿勢へと変化し、その結果、制動機構が作動すると共に当該制動状態が維持されることとなる。
【0029】
(6) 上記制動機構は、上記ワイヤーアームに連結され、リフターワイヤの張力が一定値よりも小さくなることに起因して上記ワイヤーアームが第2姿勢となったときに上記梯子の上面を押圧してリフター本体の昇降を規制する昇降規制姿勢とリフターワイヤの張力が上記一定値以上となることに起因して上記ワイヤーアームが第1姿勢となったときに上記梯子の上面から離反してリフター本体の昇降を許容する昇降許容姿勢との間で姿勢変化するブレーキカムを有するのが好ましい。また、上記制動機構は、上記回転プレートと上記ブレーキカムとを連結し、当該回転プレートの回転に伴って上記ブレーキカムの姿勢を変化させる連接ロッドを備えているのが好ましい。
【0030】
この構成では、連接ロッドが回転プレートの回転とブレーキカムの姿勢変化を連動させる。したがって、制動機構を作動させるための機構がきわめて簡単であり、制動機構が確実に作動され得るという利点がある。また、制動機構は、姿勢変化するブレーキカムが梯子を押圧する構造を有するから、制動機構の構造も簡単である。したがって、リフター本体の確実な制動が実現されるという利点もある。
【0031】
(7) 上記制動機構は、上記ワイヤーアームを第2姿勢側に回動させるべく上記回転プレートに所定の弾性力を付与する付勢部材を備えているのが好ましい。そして、上記ワイヤーアームが上記中間姿勢よりも第1姿勢側にあるときに当該ワイヤーアームを第1姿勢側に回動させるように、上記付勢部材によるワイヤーアームの回転力が上記姿勢安定部材によるワイヤーアームの回転力よりも大きく設定されているのが好ましい。
【0032】
上記付勢部材が設けられることにより、リフターワイヤーの張力が一定範囲内で低下することにより第2姿勢側へ回動したワイヤーアームは、再び第1姿勢へ戻され、また、リフターワイヤーの張力が極端に低下した場合に、ワイヤーアームが第2姿勢へと変化し得ることになる。このように、ワイヤーアームの姿勢変化が、上記付勢部材の弾性力によって簡単に制御される。
【0033】
(8) 上記姿勢安定部材及び付勢部材は、コイルバネからなるのが好ましい。
【0034】
上記姿勢安定部材及び付勢部材としてコイルバネが採用されることにより、姿勢安定部材及び付勢部材の構造がきわめて簡単であるという利点があり、ひいては、リフターの製造コストが低く抑えられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、リフターワイヤーに瞬間的に弛みが生じた場合であってもこれが矯正されるので、不用意に制動機構が作動することなく円滑なリフター操作が可能となる。また、リフターと梯子との間に摩擦力が生じた場合であっても、不用意に制動機構が作動することなく円滑なリフター操作が可能となる。しかも、リフターワイヤーが切断される等、リフターワイヤーの張力が極端に低下した場合には、確実に制動機構が作動し、リフターの落下が確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0037】
<第1の実施形態>
【0038】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリフターが装備された伸縮梯子付き消防自動車20の側面図である。
【0039】
この伸縮梯子付き消防自動車20は、車両本体21と、車両本体21に架装された伸縮梯子22とを備えている。この伸縮梯子22は、その先端にバスケット23が設けられており、また、伸縮梯子22の上面に上記リフター24が取り付けられている。リフター24は、折り畳み可能な構造を備えている。これにより、リフター24は、使用されないときには同図が示すように折り畳まれ、使用されるときには後述されるように展開され、消防隊員等が搭乗することができるようになっている。
【0040】
図2は、展開されたリフター24の底面図であって、当該リフター24が伸縮梯子22の上面35に係合している状態が図示されている。また、図3は、リフター24の側面図であり、図4は、リフター24の背面図である。
【0041】
図1が示すように、車両本体21は、フレーム25を有するシャシー26と、フレーム25に搭載されたエンジン及び駆動装置並びにボディと、サブフレーム34を介してフレーム25に取り付けられたブーム支持装置27及びブーム起伏装置28と、サブフレーム34とブーム支持装置27との間に介在され、ブーム支持装置27を旋回させる旋回装置29とを備えている。車両本体21は既知の構成である。上記伸縮梯子22は、梯体フレーム30を介してブーム支持装置27に支持されている。そして、ブーム起伏装置28は、起伏シリンダ31を備えており、この起伏シリンダ31が伸縮することによって梯体フレーム30が起伏中心軸32を中心に起伏する。起伏シリンダ31のストロークが所定の寸法に設定されることにより、伸縮梯子22の起伏角度が設定される。
【0042】
図2が示すように、伸縮梯子22は、本実施形態では6段編成である。すなわち、第1段梯子101ないし第5段梯子105が、それぞれ、隣り合う第2段梯子102ないし第6段梯子106の内側に入子型状に嵌め込まれており、第1段梯子101ないし第5段梯子105は、それぞれ、隣り合う第2段梯子102ないし第6段梯子106に対して長手方向にスライドすることができるようになっている。この伸縮梯子22は、第1段梯子101ないし第5段梯子105を、それぞれ、隣り合う第2段梯子102ないし第6段梯子106に対してスライドさせるための伸縮装置を装備している。この伸縮装置が作動することにより、伸縮梯子22が長手方向に伸縮される。この伸縮装置も既知の構造である。さらに、上記バスケット23も既知の構造を有する。バスケット23は、伸縮梯子22の先端に取り付けられており、火災現場において被災者の救助活動や消火活動に利用される。
【0043】
上記リフター24は、上記バスケット23と同様に、火災現場において被災者の救助活動や消火活動に利用される。具体的には、図2が示すように、リフター24は、伸縮梯子22の上面35に取り付けられており、伸縮梯子22に沿って昇降することができる。また、このリフター24にリフターワイヤーの一端が連結されている。このリフターワイヤーは、上記梯体フレーム30に設けられたワイヤードラム33(図1参照)に巻き掛けられている。すなわち、リフター24は、リフターワイヤーに吊り下げられた状態となっており、ワイヤードラム33が所定方向に回転されることによってリフターワイヤーが巻き取られ、その結果、リフター24が伸縮梯子22に沿って上昇する。また、ワイヤードラム33が反所定方向に回転されることによってリフターワイヤーが繰り出され、その結果、リフター24が伸縮梯子22に沿って下降する。本実施形態の特徴とするところは、上記リフター24の構造であって、リフター24が後述の構造を備えることにより、リフター24が円滑に昇降して迅速な救助活動が可能となっている点である。
【0044】
図3が示すように、このリフター24は、リフター本体36と、リフター本体36に設けられたワイヤーアーム37(ワイヤー接続部)と、制動機構38と、リフターワイヤー39の弛みを矯正するワイヤー矯正機構40とを備えている。
【0045】
リフター本体36は、略直方体状の骨組構造を有し、消防隊員等が乗り降りし易いように正面側(同図において上側)が開放されている。リフター本体36は、ベース部材41と、床部材42と、一対の手摺部材43と、この手摺部材43を折り畳むためのリンク44〜47とを備えている。リフター本体36は、例えば炭素鋼により構成され得る。ベース部材41は、矩形の平板状に形成されており、その裏面側に取付フレーム48が設けられている。上記制動機構38等は、この取付フレーム48に取り付けられるようになっている。この取付フレーム48の構造については、後述される。
【0046】
床部材42は、ベース部材41の下方(図3において右端)に取り付けられている。この床部材42は、矩形の板状に形成されており、リフター本体36に搭乗する消防隊員等が足を載置するようになっている。この床部材42は、ピン50を中心に回動自在となっている。また、リンク44〜47は、パイプ状の部材であって、それぞれ、ピン50〜53を介してベース部材41に連結されている。リンク44は、上記床部材42に固定されており、ピン50を中心にして床部材42と共に回動するようになっている。各リンク45〜47の下端部は、それぞれ、ピン51〜53を中心にして回動自在となっている。一対の手摺部材43もパイプ状の部材であって、ベース部材41の両側に配置されている。上記リンク44〜47の上端部は、ピン54〜57を介して手摺部材43と連結されている。したがって、各リンク44〜47が上記ピン50〜57を中心に回動することによって、上記手摺部材43、リンク44〜47及び床部材42がベース部材41に対して折り畳まれ(図1参照)、あるいは図3が示すように展開される。
【0047】
ベース部材41の裏面側に支持ピン58を介してローラ59が設けられている。このローラ59は、図3が示すように、リフター本体36の略中央部及び下端部に設けられており、図2が示すように、伸縮梯子22の上面35と当接し、当該上面35に対して転動することができる。すなわち、リフター24が伸縮梯子22に沿って昇降するときに、上記ローラ59が上記上面35を転動するので、リフター24が滑らかに昇降することができるようになっている。
【0048】
上記取付フレーム48は、図2ないし図4が示すように、主枠60、61と、これをベース部材41に固定する固定部材62と、主枠60、61の剛性を向上させるためのクロスメンバ63とを備えている。この取付フレーム48は、ベース部材41と同様に炭素鋼から構成され得る。図2及び図3が示すように、この取付フレーム48は、ベース部材41の裏面側に突出するように形成されている。したがって、リフター24が伸縮梯子22に係合したときは、上記取付フレーム48は、伸縮梯子22の内側に進入する。そのため、この取付フレーム48に取り付けられる制動機構38等も伸縮梯子22の内側に配置されることになる。これにより、伸縮梯子22に沿って昇降するリフター24がコンパクトに設計され得る。
【0049】
図5は、図3の要部拡大図であり、上記ワイヤーアーム37の構造が詳細に図示されている。また、図6は、図4におけるVI−VI断面図である。
【0050】
図4及び図5が示すように、ワイヤーアーム37は、上記主枠60、61に取り付けられている。具体的には、軸64が主枠60、61間に架け渡されるように配置されており、この軸64の両端部に一対のワイヤーアーム37が連結されている。各ワイヤーアーム37は、細長平板状に形成されており、その基端部65が軸64に固定されている。この軸64の両端部は、主枠60、61によって軸方向を中心として回動自在に支持されている。したがって、各ワイヤーアーム37は、軸64を中心として当該軸64の回りに回動することができるようになっている。
【0051】
各ワイヤーアーム37の先端部66に上記リフターワイヤー39が連結されている。具体的には、各ワイヤーアーム37の先端部66に連結金具67が装着され、この連結金具67にリフターワイヤー39が連結されている(図4参照)。連結金具67は、既知の構造であり、各ワイヤーアーム37の先端部66に係止された連結環68と、これら連結環68に接続されたV字金具69とを備えている。そして、リフターワイヤー39は、このV字金具69の頂部に連結されている。
【0052】
図5及び図6が示すように、上記主枠60、61に位置決め部材70が取り付けられている。この位置決め部材70は、主枠60、61間に架け渡すように配置されている(図4参照)。本実施形態では、主枠60、61に一対の固定板72が設けられている。この固定板72は、主枠60、61と固定部材62との間の角部を覆うように配置されており、上記位置決め部材70の両端がこの固定板72に取り付けられている。したがって、位置決め部材70は、主枠60、61に確実に固定されている。
【0053】
この位置決め部材70に当接板71が固定されている。上記各ワイヤーアーム37は、この当接板71に当接するようになっている。詳述すると、前述のように、リフターワイヤー39は上記ワイヤードラム33(図1参照)に巻き取られており、且つその一端部が上記各ワイヤーアーム37に連結されているから、リフター24は、このリフターワイヤー39によって伸縮梯子22に沿った状態で吊り下げられていることになる。上記各ワイヤーアーム37が軸64を中心として当該軸64の回りに回動することができることから、リフターワイヤー39にリフター24の吊下力が作用した場合には、この吊下力の方向(図5において右回り)に上記各ワイヤーアーム37が回動する。すなわち、図5が示すように、各ワイヤーアーム37が当接板71に当接して位置決めされる。このときの各ワイヤーアーム37の姿勢は、「第1姿勢」と定義される。一方、各ワイヤーアーム37は、後に詳述されるように、図5において左回り(上記吊下力の方向と反対方向)に回動することも可能である。このように左方向に回動したときの各ワイヤーアーム37の姿勢は、「第2姿勢」と定義される。
【0054】
図3ないし図5が示すように、制動機構38は、ブレーキカム73と、連接ロッド74と、この連接ロッド74に連結されたコイルバネ75とを備えている。
【0055】
図3が示すように、ブレーキカム73は、上記ローラ59の後方(同図では右側)に配置されている。このブレーキカム73は、略扇形に形成されており、支持軸76によって支持されている。この支持軸76は、上記ベース部材41に固定されている。具体的には、支持軸76の両端部は、ベース部材41に設けられた軸受板77に支持されている。そして、ブレーキカム73は、この支持軸76の回りに回動可能となっており、同図が示すように横方向に向いた姿勢と、当該姿勢から図中右方向に回動して下方向に向いた姿勢との間で姿勢変化するようになっている。ブレーキカム73が横方向に向いた姿勢は、「昇降許容姿勢」と定義され、下方向に向いた姿勢は、「昇降規制姿勢」と定義される。
【0056】
連接ロッド74は、細長棒状の部材であって、図3が示すように、上記ワイヤーアーム37と上記ブレーキカム73とを接続している。したがって、ワイヤーアーム37の姿勢変化に連動してブレーキカム73が姿勢変化するようになっている。すなわち、図3が示すように、ワイヤーアーム37が第1姿勢となったときは、ブレーキカム73は、横方向に向いた姿勢(昇降許容姿勢)となり、反対に、ワイヤーアーム37が第1姿勢から上記第2姿勢側へ姿勢変化したときは、ブレーキカム73は、右方向に回動して下方向に向いた姿勢(昇降規制姿勢)へと変化するようになっている。
【0057】
コイルバネ75は、一端がブラケット79を介して連接ロッド74に取り付けられ、他端がブラケット78を介して主枠60、61に取り付けられている。このコイルバネ75は、いわゆる引張バネであって、図3において、連接ロッド74を常時左側へ弾性的に引っ張っている。つまり、このコイルバネ75によって、ワイヤーアーム37は、第2姿勢側へ回動するように弾性力を受け、ブレーキカム73は、下方向に向いた姿勢(昇降規制姿勢)となるように弾性力を受けていることになる。ただし、通常のリフター24の使用時においては、リフターワイヤー39に作用する上記吊下力がコイルバネ75の弾性力よりも大きいので、ワイヤーアーム37は、常時第1姿勢となり、ブレーキカム73は、横方向に向いた姿勢(昇降許容姿勢)となっている。
【0058】
ブレーキカム73が横方向に向いた姿勢(昇降許容姿勢)であるときは、当該ブレーキカム73は、伸縮梯子22の上面35から離反している。ただし、ブレーキカム73が下方向に向いた姿勢(昇降規制姿勢)となったときは、当該ブレーキカム73は、伸縮梯子22の上面35を押圧する。このように、ブレーキカム73が横方向に向いた姿勢(昇降許容姿勢)となったときは、リフター本体36が伸縮梯子22に沿って昇降可能であり、また、ブレーキカム73が下方向に向いた姿勢(昇降規制姿勢)となったときは、ブレーキカム73と伸縮梯子22の上面35との間に所定の摩擦力が発生し、この摩擦力によってリフター本体36が伸縮梯子22に沿ってスライドすることができなくなる。
【0059】
ワイヤー矯正機構40は、前述のようにリフターワイヤー39の弛みを矯正するものである。図3が示すように、このワイヤー矯正機構40は、リフターワイヤー39が巻き掛けられると共に図中左右方向にスライド可能なプーリ80と、このプーリ80を図中右方向へ弾性的に付勢するコイルバネ84(付勢部材)とを備えている。
【0060】
プーリ80は、円盤状に形成され、その周面に溝が形成されている。リフターワイヤー39は、この溝に嵌め込まれて当該プーリ80に巻き掛けられている。プーリ80は、支持フレーム81によって支持されており、その中心を回転中心として回転自在となっている。支持フレーム81は、スライド軸82を備えており、このスライド軸82が上記固定部材62に支持されている。具体的には、固定部材62に取り付けられたブラケット83に上記スライド軸82がスライド自在に支持されており、このスライド軸82は、図3及び図4において、左右方向にスライド可能となっている。
【0061】
スライド軸82と上記ブラケット83との間に上記コイルバネ84が配置されている。具体的には、コイルバネ84がスライド軸82に嵌め込まれた状態で固定ナット85、86がスライド軸82に掛けられている。つまり、コイルバネ84は、上記ブラケット83の端面と固定ナット85、86との間に配置されており、スライド軸82を常時図中右側へスライドさせるように弾性力を付与している。リフター24の通常の使用状態においては、前述のようにリフターワイヤー39に上記吊下力が作用しているから、この吊下力によって上記コイルバネ84が完全に収縮され、プーリ80が図中左側へ付勢されている。
【0062】
図7は、リフター24の要部側面図であり、ワイヤー矯正機構40が作動した状態が図示されている。なお、同図では、連接ロッド74の一部は図示されていない。
【0063】
リフター24の使用中においては、後述のような原因によってリフターワイヤー39が弛む場合もある。しかし、本実施形態では、図7が示すように、リフターワイヤー39が瞬間的に弛んだ場合であっても、上記コイルバネ84が伸長してプーリ80が図中右方向へスライドし、このリフターワイヤー39の弛みが矯正される。その結果、リフターワイヤー39に発生する張力が一定値以上に維持されることになる。
【0064】
本実施形態に係るリフター24は、図1及び図2が示すように、消防自動車20に搭載された伸縮梯子22に取り付けられる。火災現場において伸縮梯子22が所定角度に起立され且つ所定長さに伸縮される。リフター本体36は、この伸縮梯子22の上面35に沿って昇降される。前述のように、一般にリフター24の作動中においては、リフター本体36の吊下力がリフターワイヤー39に作用するから、図3が示すように、リフターワイヤー39に一定値以上の張力が発生している。このため、制動機構38が昇降許容位置に変位する。すなわち、ブレーキカム73が昇降許容姿勢となり、リフター24が自由に伸縮梯子22に沿って昇降することができる。
【0065】
この状態において、例えば、万一リフターワイヤー39が切断される等、リフター24の作動中にリフターワイヤー39の張力が一定値よりも極端に小さくなった場合には、ブレーキカム73が昇降規制姿勢となり、これにより、ブレーキカム73が伸縮梯子22の上面35を押圧してリフター本体36の昇降が規制される。つまり、リフター24の落下が防止される。
【0066】
ところで、火災現場の状況はさまざまであるから、伸縮梯子22はさまざまな起立角度(ただし、使用可能起立範囲内)及び伸長長さで使用されることが予想される。そして、本実施形態のように、伸縮梯子22が複数段編成とされている場合には、隣り合う梯子間に段差が生じるおそれがある。そのため、リフター24が伸縮梯子22の上面35をスライドして上記段差を通過する際に、リフター本体36のスライドが瞬間的に減速されることがある。このような場合、リフターワイヤー39に作用するリフター本体36の吊下力が低下したり、瞬間的にリフターワイヤー39に弛みが生じることも考えられる。また、上昇中のリフター24が突然下降され場合もあり、この場合にリフターワイヤー39に瞬間的に撓みが生じるおそれがある。しかし、瞬間的にリフターワイヤー39に弛みが生じたとしても、前述のように、ワイヤー矯正機構40が作動することによってリフターワイヤー39の弛みが矯正され、制動機構38の作動が回避される。したがって、伸縮梯子22に沿ってスライドするリフター24が瞬間的に減速ないし停止されたとしても、制動機構38が作動することがなく、リフター24の円滑な操作が可能となる。
【0067】
特に、本実施形態では、リフターワイヤー39が上記プーリ80に掛け回されており、このプーリ80は、コイルバネ84によってリフターワイヤー39の弛みが吸収される方向に付勢されている。したがって、瞬間的にリフターワイヤー39に弛みが生じたとしても、上記プーリ80がスライドすることによってリフターワイヤー39の弛みが直ちに吸収される。すなわち、リフターワイヤー39の弛みを矯正する機構がきわめて簡単であり、且つ確実である。加えて、プーリ80をスライドさせるために上記コイルバネ84が採用されているので、リフターワイヤー39の弛みを吸収する手段の構造がきわめて簡単になり、ひいては、リフター24の製造コストが低く抑えられるという利点がある。
【0068】
さらに、本実施形態では、上記連接ロッド74がワイヤーアーム37とブレーキカム73の姿勢変化を連動させる。したがって、制動機構38を作動させるための機構がきわめて簡単であり、制動機構38が確実に作動されるという利点がある。しかも、制動機構38は、姿勢変化するブレーキカム73が伸縮梯子22の上面35を押圧する構造を有するから、制動機構38の構造も簡単である。したがって、リフター本体36の確実な制動が実現されるという利点もある。
【0069】
<第2の実施形態>
【0070】
次に、本発明の第2の実施形態について説明される。
【0071】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るリフターの要部側面図である。図9は、このリフターの要部側面図であって、当該リフターに設けられた制動機構が作動した状態を示している。
【0072】
本実施形態に係るリフター90も上記第1の実施形態に係るリフター24と同様に、伸縮梯子22の上面35に取り付けられ、火災現場において被災者の救助活動や消火活動に利用される。このリフター90が上記第1の実施形態に係るリフター24と異なるところは、上記第1の実施形態では、リフターワイヤー39の瞬間的な弛みを矯正するワイヤー矯正機構40が設けられていたのに対し、本実施形態では、リフターワイヤー39の張力を補償する張力補償機構110が設けられている点である。そして、この張力補償機構110が設けられることにより、リフターワイヤー39の張力が一定範囲内で低下したとしても、リフターワイヤー39の張力が一定以上に確保されるようになっている。なお、本実施形態に係るリフター90のうち上記第1の実施形態に係るリフター24と同様の構成については、当該リフター24との構成と同様の参照符号が付される。
【0073】
図8が示すように、このリフター90は、リフター本体36と、リフター本体36に設けられたワイヤーアーム37(ワイヤー接続部)と、制動機構38と、リフターワイヤー39の張力を補償する張力補償機構110とを備えている。
【0074】
リフター90は、上記第1の実施形態に係るリフター24と同様にリフター本体36を備えている。すなわち、このリフター本体36は、図3が示すように、略直方体状の骨組構造を有し、消防隊員等が乗り降りし易いように正面側(同図において上側)が開放されている。リフター本体36は、ベース部材41と、床部材42と、一対の手摺部材43と、この手摺部材43を折り畳むためのリンク44〜47とを備えている。リフター本体36は、例えば炭素鋼により構成され得る。ベース部材41は、矩形の平板状に形成されており、その裏面側に取付フレーム48が設けられている。上記制動機構38等は、この取付フレーム48に取り付けられるようになっている。
【0075】
床部材42は、ベース部材41の下方(図3において右端)に取り付けられている。この床部材42は、矩形の板状に形成されており、リフター本体36に搭乗する消防隊員等が足を載置するようになっている。この床部材42は、ピン50を中心に回動自在となっている。また、リンク44〜47は、パイプ状の部材であって、それぞれ、ピン50〜53を介してベース部材41に連結されている。リンク44は、上記床部材42に固定されており、ピン50を中心にして床部材42と共に回動するようになっている。各リンク45〜47の下端部は、それぞれ、ピン51〜53を中心にして回動自在となっている。一対の手摺部材43もパイプ状の部材であって、ベース部材41の両側に配置されている。上記リンク44〜47の上端部は、ピン54〜57を介して手摺部材43と連結されている。したがって、各リンク44〜47が上記ピン50〜57を中心に回動することによって、上記手摺部材43、リンク44〜47及び床部材42がベース部材41に対して折り畳まれ(図1参照)、あるいは図3が示すように展開される。
【0076】
ベース部材41の裏面側に支持ピン58を介してローラ59が設けられている。このローラ59は、図3が示すように、リフター本体36の略中央部及び下端部に設けられており、図2が示すように、伸縮梯子22の上面35と当接し、当該上面35に対して転動することができる。すなわち、リフター24が伸縮梯子22に沿って昇降するときに、上記ローラ59が上記上面35を転動するので、リフター24が滑らかに昇降することができるようになっている。
【0077】
上記取付フレーム48は、図8及び図2ないし図4が示すように、主枠60、61と、これをベース部材41に固定する固定部材62と、主枠60、61の剛性を向上させるためのクロスメンバ63とを備えている。この取付フレーム48は、ベース部材41と同様に炭素鋼から構成され得る。図8が示すように、この取付フレーム48は、ベース部材41の裏面側に突出するように形成されている。したがって、リフター24が伸縮梯子22に係合したときは、上記取付フレーム48は、伸縮梯子22の内側に進入する。そのため、この取付フレーム48に取り付けられる制動機構38等も伸縮梯子22の内側に配置されることになる。これにより、伸縮梯子22に沿って昇降するリフター24がコンパクトに設計され得る。
【0078】
ワイヤーアーム37は、上記主枠60、61に取り付けられている。具体的には、軸64(回動中心軸)が主枠60、61間に架け渡されるように配置されており、この軸64の両端部に一対のワイヤーアーム37が連結されている。各ワイヤーアーム37は、細長平板状に形成されており、その基端部65が軸64に固定されている。この軸64の両端部は、主枠60、61によって軸方向を中心として回動自在に支持されている。したがって、各ワイヤーアーム37は、軸64を中心として当該軸64の回りに回動することができるようになっている。
【0079】
各ワイヤーアーム37の先端部66に上記リフターワイヤー39が連結されている。具体的には、各ワイヤーアーム37の先端部66に連結金具67が装着され、この連結金具67にリフターワイヤー39が連結されている。連結金具67は、既知の構造であり、各ワイヤーアーム37の先端部66に係止された連結環68と、これら連結環68に接続されたV字金具69とを備えている。そして、リフターワイヤー39は、このV字金具69の頂部に連結されている。
【0080】
上記第1の実施形態において開示されたように、リフターワイヤー39はワイヤードラム33(図1参照)に巻き取られており、且つその一端部が上記各ワイヤーアーム37に連結されているから、リフター90は、リフターワイヤー39によって伸縮梯子22に沿った状態で吊り下げられていることになる。上記各ワイヤーアーム37が軸64を中心として当該軸64の回りに回動することができることから、リフターワイヤー39にリフター24の吊下力が作用した場合には、この吊下力の方向(図8において右回り)に上記各ワイヤーアーム37が回動する。このときの各ワイヤーアーム37の姿勢は、「第1姿勢」と定義される。一方、各ワイヤーアーム37は、後に詳述されるように、図8において左回り(上記吊下力の方向と反対方向)に回動することも可能である。このように左方向に回動したときの各ワイヤーアーム37の姿勢は、「第2姿勢」と定義される。
【0081】
制動機構38は、ブレーキカム73と、連接ロッド74と、この連接ロッド74に連結されたコイルバネ75とを備えている。
【0082】
図8が示すように、ブレーキカム73は、上記ローラ59の後方(同図では右側)に配置されている。このブレーキカム73は、略扇形に形成されており、支持軸76によって支持されている。この支持軸76は、上記ベース部材41に固定されている。具体的には、支持軸76の両端部は、ベース部材41に設けられた軸受板77に支持されている。そして、ブレーキカム73は、この支持軸76の回りに回動可能となっており、同図が示すように横方向に向いた姿勢と、当該姿勢から図中右方向に回動して下方向に向いた姿勢(図9参照)との間で姿勢変化するようになっている。上記第1の実施形態と同様に、ブレーキカム73が横方向に向いた姿勢は、「昇降許容姿勢」と定義され、下方向に向いた姿勢は、「昇降規制姿勢」と定義される。
【0083】
連接ロッド74は、細長棒状の部材であって、図8が示すように、上記ワイヤーアーム37と上記ブレーキカム73とを接続している。したがって、ワイヤーアーム37の姿勢変化に連動してブレーキカム73が姿勢変化するようになっている。すなわち、ワイヤーアーム37が第1姿勢となったときは、ブレーキカム73は、昇降許容姿勢となり、反対に、ワイヤーアーム37が第1姿勢から上記第2姿勢側へ姿勢変化したときは、ブレーキカム73は、右方向に回動して昇降規制姿勢へと変化するようになっている。
【0084】
コイルバネ75は、一端がブラケット79を介して連接ロッド74に取り付けられ、他端がブラケット78を介して主枠60、61に取り付けられている。このコイルバネ75は、いわゆる引張バネであって、同図において、連接ロッド74を常時左側へ弾性的に引っ張っている。つまり、このコイルバネ75によって、ワイヤーアーム37は、第2姿勢側へ回動するように弾性力を受け、ブレーキカム73は、昇降規制姿勢となるように弾性力を受けていることになる。ただし、通常のリフター24の使用時においては、リフターワイヤー39に作用する上記吊下力がコイルバネ75の弾性力よりも大きいので、ワイヤーアーム37は、常時第1姿勢となり、ブレーキカム73は、昇降許容姿勢となっている。
【0085】
ブレーキカム73が昇降許容姿勢であるときは、当該ブレーキカム73は、伸縮梯子22の上面35から離反している。ただし、ブレーキカム73が昇降規制姿勢となったときは、当該ブレーキカム73は、伸縮梯子22の上面35を押圧する。このように、ブレーキカム73が昇降許容姿勢となったときは、リフター本体36が伸縮梯子22に沿って昇降可能であり、また、ブレーキカム73が昇降規制姿勢となったときは、ブレーキカム73と伸縮梯子22の上面35との間に所定の摩擦力が発生し、この摩擦力によってリフター本体36が伸縮梯子22に沿ってスライドすることができなくなる。
【0086】
張力補償機構110は、上記軸64に取り付けられた回転プレート92と、この回転プレート92に中間連結部材93を介して連結されたコイルバネ94(姿勢安定部材)とを備えている。
【0087】
回転プレート92は、三角形状に形成されている。この回転プレート92は、上記ワイヤーアーム37に連結されており、上記軸64を中心として上記ワイヤーアーム37と共に回転するようになっている。したがって、回転プレート92は、ワイヤーアーム37の姿勢変化に追従して軸64を中心にして回動する。上記連接ロッド74は、この回転プレート92の第1頂部95に連結されており、したがって、前述のように、この回転プレート92を介してワイヤーアーム37とブレーキカム73とが接続されている。本実施形態では、回転プレート92がワイヤーアーム37とは別の部材として構成されているが、両者が一体的に形成されていてもよいことは勿論である。
【0088】
回転プレート92の第2頂部96に上記中間連結部材93が連結されている。この中間連結部材93は、同図が示すようにU字状に形成されている。この中間連結部材93の一端部が回転プレート92の第2頂部96に連結されており、他端部に上記コイルバネ94が接続されている。なお、中間連結部材93がU字状に形成されているのは、上記軸64との干渉が回避されるためである。したがって、中間連結部材93の形状は、U字状に限定されるものではなく、適宜設定変更が施され得る。また、この中間連結部材93が省略され、コイルバネ94が直接に上記第2頂部96に接続されていてもよい。要するに、コイルバネ94による弾性力が上記第2頂部96に作用するように中間連結部材93の形状が決定されればよいし、この中間連結部材93が省略されて、コイルバネ94が直接に上記第2頂部96に連結されてもよい。
【0089】
コイルバネ94は、中間連結部材93の他端部と上記ベース部材41との間に配置されている。具体的には、コイルバネ94は、上記ベース部材41に取り付けられたブラケット97に固定されている。このため、コイルバネ94は、上記中間連結部材93を常時図中右側へ引っ張るように弾性力を付与している。ただし、前述のように、リフター90の通常の使用状態においては、リフターワイヤー39に上記吊下力が作用しているから、この吊下力によってワイヤーアーム37が上記第1姿勢となり、回転プレート92が右方向に回転する。したがって、ブレーキカム73が昇降許容姿勢となり、リフター90は、伸縮梯子22に沿って昇降可能となっている。加えて、本実施形態では、この状態において、コイルバネ94によって上記中間連結部材93が右側(図8参照)へ引っ張られている。したがって、上記回転プレート92は、さらに右方向に回転するように弾性力を受けることになる。その結果、ワイヤーアーム37は、安定的に第1姿勢となり、ブレーキカム73が安定的に昇降許容姿勢となる。
【0090】
図10は、張力補償機構110の要部拡大図であり、リフターワイヤー39の張力が補償される要領が図示されている。
【0091】
リフター90の使用中においては、リフターワイヤー39に作用する吊下力が低下する場合もある。その場合にリフターワイヤー39の張力が低下し、リフターワイヤー39が切断されていないにもかかわらず上記制動機構38が作動し、リフター90の円滑な昇降が妨げられてしまうおそれがある。このようにリフターワイヤー39が切断されていないにもかかわらずリフターワイヤー39の張力が低下する原因は、典型的には、リフター本体36と伸縮梯子22との間に発生する摩擦力である。詳述すれば、リフター24は、図2が示すように、第1段梯子101〜第6段梯子106のそれぞれの上面35に載置された状態となっている。この状態でローラ59が伸縮梯子22の上面35を転動するのであるが、このときに、伸縮梯子22の側面とリフター本体36の挟持部材111とが摺接することにより、上記摩擦力が発生する。特に、リフター90が下降中に上記摩擦力が発生すると、この摩擦力に相当する分だけ上記吊下力が低下し、リフターワイヤー39の張力が低下する。
【0092】
上記第1の実施形態と同様に、本実施形態に係るリフター90は、図1及び図2が示すように消防自動車20に搭載された伸縮梯子22に取り付けられる。火災現場において伸縮梯子22が使用可能起立範囲内の所定角度に起立され且つ所定長さに伸長される。リフター本体36は、この伸縮梯子22の上面35に沿って昇降される。一般にリフター90の作動中においては、リフター本体36の吊下力がリフターワイヤー39に作用するから、図8が示すように、リフターワイヤー39に一定値以上の張力が発生している。このため、ブレーキカム73が昇降許容姿勢となり、リフター90が自由に伸縮梯子22に沿って昇降することができる。
【0093】
この状態において、万一リフターワイヤー39が切断される等、リフター90の作動中にリフターワイヤー39の張力が一定値よりも小さくなった場合には、コイルバネ75の弾性力によって連接ロッド74が左側(図8参照)へ引っ張られると共に、コイルバネ94の弾性力によって中間連結部材93が右方向へ引っ張られる。換言すれば、回転プレート92がコイルバネ75によって左方向へ回転するように引っ張られると同時にコイルバネ94によって右方向へ回転するように引っ張られる。本実施形態では、コイルバネ75の弾性力による上記軸64を中心とするモーメントは、コイルバネ94の弾性力による上記軸64を中心とするモーメントよりも大きくなるように設定されている。したがって、回転プレート92は、コイルバネ94の弾性力に抗して左方向に回転し、これにより、ブレーキカム73は、昇降規制姿勢へと変化する。
【0094】
このときの回転プレート92、中間連結部材93及びコイルバネ94の姿勢が、図10において二点鎖線で示されている。同図が示すように、回転プレート92が軸64を中心に回転するときは、当該回転プレート92の第2頂部96は、軸64を中心とする円弧上を移動すると共に、コイルバネ92の端部98と軸64とを結ぶ仮想線ILを横切るように通過する。上記第2頂部96が上記仮想線ILよりも上側(図10参照)に位置するときは、コイルバネ94の弾性力は回転プレート92を右回りに回転させるように作用するが、上記第2頂部96が上記仮想線ILよりも下側に位置するときは、コイルバネ94の弾性力は回転プレート92を左回りに回転させるように作用する。つまり、回転プレート92によってトグル機構が構成されている。
【0095】
したがって、リフター90の作動中にリフターワイヤー39が切断された場合等、リフターワイヤー39の張力が一定値よりも小さくなった場合には、回転プレート92が左方向へ回転すると共にブレーキカム73が昇降規制姿勢へと変化し、しかも、上記コイルバネ94の弾性力が当該回転プレート92をさらに左方向に回転させるように作用するから、ブレーキカム73は、当該昇降規制姿勢に安定的に維持される。すなわち、ブレーキカム73が伸縮梯子22の上面35を押圧してリフター本体36の昇降が確実に規制され、リフター90の確実な落下防止が実現される。
【0096】
ところで、火災現場におけるリフター90の使用においては、前述のように、リフターワイヤー39に作用するリフター本体36の吊下力が低下し、リフターワイヤー39に発生する張力が低下する場合がある。この場合、ワイヤーアーム37が第2姿勢側へ姿勢変化し、ブレーキカム73が作動してリフター本体36の昇降が規制されるおそれがある。しかし、リフターワイヤー39に発生する張力が低下した場合であっても、次の要領にてリフターワイヤー39の張力が補償され、張力が一定値以上に維持される。
【0097】
リフターワイヤー39の張力が所定範囲内で低下した場合には、ワイヤーアーム37は、図8に示す第1姿勢から左方向へ回転して第2姿勢側へ姿勢変化しようとする。つまり、回転プレート92が左方向へ回転する。このとき、コイルバネ94が引き延ばされることになるから、このコイルバネ94の弾性力が大きくなり、当該弾性力が回転プレート92を右方向に回転させるように作用する。すなわち、このコイルバネ94の弾性力がリフターワイヤー39の張力低下を補填し、ワイヤーアーム37が第2姿勢へと変化することを抑制する。
【0098】
詳述すれば、図10が示すように、リフターワイヤー39の張力が一定範囲内で低下した場合には、回転プレート92が左方向へ回転すると共に、上記ワイヤーアーム37も同方向へ回動する。この「一定範囲」とは、回転プレート92の第2頂部96が同図において左方向へ変位するが、上記仮想線IL上よりも上側に位置する範囲である。そして、この第2頂部96が上記仮想線IL上にあるときの上記ワイヤーアーム37の姿勢は、第1姿勢と第2姿勢との間の「中間姿勢」と定義される。
【0099】
回転プレート92が上記トグル機構を構成しているから、リフターワイヤー39の張力の低下が一定範囲内であり、上記ワイヤーアーム37が上記中間姿勢よりも第1姿勢側にあるときは、当該ワイヤーアーム37は、完全に第2姿勢へと変化することなく、上記中間位置よりも第1姿勢側で静止する。このとき、回転プレート92は、上記コイルバネ75の弾性力と、上記コイルバネ94の弾性力及びリフターワイヤー39の張力の合力との力の釣り合いがとれる部位において静止する。その後、再びリフターワイヤー39の張力が大きくなれば、回転プレート92は右方向に回転する。
【0100】
このように、リフター本体36の吊下力が変化してリフターワイヤー39の張力が変動した場合であっても、回転プレート92の左方向への回転が抑制され、その結果、ブレーキカム73の昇降許容姿勢が維持されることになる。したがって、リフター90の使用中にリフター本体36と伸縮梯子22との間で摩擦力が発生したとしても、制動機構38の作動が抑制され、リフター90の円滑な操作が可能となる。一方、リフターワイヤー39の張力が極端に低下した場合には、前述のように上記ワイヤーアーム37が上記中間姿勢よりも第2姿勢側まで変位し、上記制動機構38が確実に且つ安定的に作動することになる。
【0101】
特に、本実施形態では、上記連接ロッド74が回転プレート92の回転とブレーキカム73の姿勢変化を連動させる。したがって、制動機構38を作動させるための機構がきわめて簡単であり、制動機構38が確実に作動され得るという利点がある。また、制動機構38は、姿勢変化するブレーキカム73が伸縮梯子22の上面35を押圧する構造を有するから、制動機構38の構造も簡単である。したがって、リフター本体36の確実な制動が実現されるという利点もある。
【0102】
さらに、リフターワイヤー39の張力が一定範囲内で低下することによりワイヤーアーム37が第2姿勢側へ回動しても、再び第1姿勢へ戻され、また、リフターワイヤー39の張力が極端に低下した場合に、ワイヤーアーム37が完全に第2姿勢へと変化する。このようなワイヤーアーム37の回動は、上記コイルバネ75により制御されている。すなわち、ワイヤーアーム37の姿勢変化が、上記コイルバネ75によって簡単且つ正確にしかも安価に制御されるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、伸縮梯子に搭載されるリフターに適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るリフターが装備された伸縮梯子付き消防自動車の側面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るリフターの底面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態に係るリフターの側面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態に係るリフターの背面図である。
【図5】図5は、図3の要部拡大図である。
【図6】図6は、図4におけるVI−VI断面図である。
【図7】図7は、本発明の第1の実施形態に係るリフターの要部側面図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係るリフターの要部側面図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施形態に係るリフターの要部側面図であって、制動機構が作動した状態を示している。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態に係るリフターの張力補償機構の要部拡大図である。
【図11】図11は、従来の梯子付き消防自動車の側面図である。
【図12】図12は、従来のリフターの正面図である。
【図13】図13は、従来のリフターの側面図である。
【図14】図14は、従来のリフターの底面図である。
【符号の説明】
【0105】
22・・・伸縮梯子
24・・・リフター
35・・・伸縮梯子の上面
36・・・リフター本体
37・・・ワイヤーアーム
38・・・制動機構
39・・・リフターワイヤ
40・・・張力調整機構
41・・・ベース部材
42・・・床部材
43・・・手摺部材
44〜47・・・リンク
48・・・取付フレーム
50〜57・・・ピン
58・・・支持ピン
59・・・ローラ
60・・・主枠
61・・・主枠
62・・・固定部材
63・・・クロスメンバ
64・・・軸
65・・・ワイヤーアームの基端部
66・・・ワイヤーアームの先端部
67・・・連結金具
68・・・連結環
69・・・V字金具
70・・・位置決め部材
71・・・当接板
72・・・固定板
73・・・ブレーキカム
74・・・連接ロッド
75・・・コイルバネ
76・・・支持軸
77・・・軸受板
80・・・プーリ
81・・・支持フレーム
82・・・スライド軸
84・・・コイルバネ
85・・・固定ナット
86・・・固定ナット
90・・・リフター
91・・・制動機構
92・・・回転プレート
93・・・中間連結部材
94・・・コイルバネ
95・・・第1頂部
96・・・第2頂部
101・・・第1段梯子
102・・・第2段梯子
103・・・第3段梯子
104・・・第4段梯子
105・・・第5段梯子
106・・・第6段梯子
110・・・張力補償機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
消防自動車に搭載された梯子の上面に係合し、当該梯子の上面に沿って昇降されるリフター本体と、
リフター本体に設けられ、当該リフター本体を吊り下げた状態で梯子の上面に沿って昇降させるリフターワイヤーが接続されるワイヤー接続部と、
ワイヤー接続部に連結され、リフターワイヤーの張力が一定値以上である場合に梯子の上面から離反してリフター本体の昇降を許容すると共にリフターワイヤーの張力が上記一定値よりも小さくなった場合に梯子の上面を押圧してリフター本体の昇降を規制する制動機構と、
リフター本体に設けられ、制動機構が作動しないように所定範囲内のリフターワイヤーの弛みを矯正するワイヤー矯正機構とを備えているリフター。
【請求項2】
上記ワイヤー矯正機構は、
上記リフターワイヤーが掛け回されるプーリと、
当該プーリを上記リフターワイヤーの弛みが吸収される方向に付勢する付勢部材とを備えている請求項1に記載のリフター。
【請求項3】
上記付勢部材は、コイルバネである請求項2に記載のリフター。
【請求項4】
消防自動車に搭載された梯子の上面に係合し、当該梯子の上面に沿って昇降されるリフター本体と、
リフター本体に設けられ、当該リフター本体を吊り下げた状態で梯子の上面に沿って昇降させるリフターワイヤーが接続されるワイヤー接続部と、
ワイヤー接続部に連結され、リフターワイヤーの張力が一定値以上である場合に梯子の上面から離反してリフター本体の昇降を許容すると共にリフターワイヤーの張力が上記一定値よりも小さくなった場合に梯子の上面を押圧してリフター本体の昇降を規制する制動機構と、
リフター本体に設けられ、梯子とリフター本体との間に発生する摩擦力によって制動機構が作動しないようにリフターワイヤーの張力を補償する張力補償機構とを備えているリフター。
【請求項5】
上記ワイヤー接続部は、
基端部がリフター本体に設けられた所定の回動中心軸に連結されると共に先端部に上記リフターワイヤーが接続され、上記回動中心軸を中心としてリフター本体の吊下力の方向に回動した第1姿勢と上記吊下力の方向と反対方向に回動した第2姿勢との間で揺動可能なワイヤーアームを有し、
上記張力補償機構は、
上記ワイヤーアームと共に上記回動中心軸の回りに回動する回転プレートと、
当該回転プレートの所定位置に連結され、上記ワイヤーアームが第1姿勢と第2姿勢との間の所定の中間姿勢よりも第1姿勢側にあるときは当該ワイヤーアームを第1姿勢側に回動させるように当該回転プレートに弾性力を付加し、上記ワイヤーアームが第1姿勢と第2姿勢との間の所定の中間姿勢よりも第2姿勢側にあるときは当該ワイヤーアームを第2姿勢側に回動させるように当該回転プレートに弾性力を付加する姿勢安定部材とを備えている請求項4に記載のリフター。
【請求項6】
上記制動機構は、
上記ワイヤーアームに連結され、リフターワイヤーの張力が一定値よりも小さくなることに起因して上記ワイヤーアームが第2姿勢となったときに上記梯子の上面を押圧してリフター本体の昇降を規制する昇降規制姿勢とリフターワイヤの張力が上記一定値以上となることに起因して上記ワイヤーアームが第1姿勢となったときに上記梯子の上面から離反してリフター本体の昇降を許容する昇降許容姿勢との間で姿勢変化するブレーキカム、及び上記回転プレートと上記ブレーキカムとを連結し、当該回転プレートの回転に伴って上記ブレーキカムの姿勢を変化させる連接ロッドを備えている請求項5に記載のリフター。
【請求項7】
上記制動機構は、上記ワイヤーアームを第2姿勢側に回動させるべく上記回転プレートに所定の弾性力を付与する付勢部材を備えており、
上記ワイヤーアームが上記中間姿勢よりも第1姿勢側にあるときに当該ワイヤーアームを第1姿勢側に回動させるように、上記付勢部材によるワイヤーアームの回転力が上記姿勢安定部材によるワイヤーアームの回転力よりも大きく設定されている請求項4から6のいずれかに記載のリフター。
【請求項8】
上記姿勢安定部材及び付勢部材は、コイルバネからなる請求項7に記載のリフター。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−68555(P2007−68555A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255349(P2005−255349)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【Fターム(参考)】