説明

リフレア加工装置、リフレア加工用金型及びリフレア加工方法

【課題】冷却洗浄液を用いるリフレア加工を行うリフレア加工装置の提供
【解決手段】リフレアパンチ11は、内部に冷却洗浄液が流れる冷却洗浄液供給路R1を有している。冷却洗浄液供給路R1は、供給路R3及び4本の供給路R5を有している。供給路R3は縦方向の中心軸に沿って、供給路R5は半径方向に向かって、それぞれ形成されている。リフレアパンチ11では、内部の冷却洗浄液供給路R1から、先端部T11の冷却洗浄液供給孔K11を介して冷却洗浄液を先端部T11の外周面S11に供給する。外周面S11から供給された冷却洗浄液は、嵌合部11がアルミプレート21の立ち上げ部C21と嵌合していくのにあわせて、立ち上げ部C21との隙間を通って中間部T13の外周面S13へと流れていく。よって、冷却洗浄液の流れと共に、先端部T11、中間部T13に付着している加工粉を除去することができ、加工粉に基づく金型の焼き付きを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工材料の立ち上げ部に対するリフレア加工を行うリフレア加工装置に関し、特に、冷却洗浄液を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリフレア加工装置としては、例えば、空調機の熱交換器に用いるアルミニウムプレートフィンを製造する際に用いるものがある。空調機における熱交換器では、多数のプレートフィンとチューブとを組み合わせて構成されるプレートフィンチューブ熱交換器が多用されている。プレートフィンは、アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材に、チューブを挿通して固定するための1〜4mm高さのフィンカラー部を形成し、さらに、チューブの挿通を容易にするためにフィンカラー部をリフレア加工することによって作製する。
【0003】
フィンカラーの加工方法には、ドロー方式、しごき方式、及びドロー・しごき併用方式がある。さらに、最近では、揮発性潤滑油に対応できるドロー・しごき併用方式が登場している。一例として、ドロー・しごき併用方式の加工方法を図10に示す。ドロー・しごき併用方式の加工方法では、アルミプレート109に対する加工として、張出し・絞り加工S101、S102→穴開け・バーリング加工S103→しごき加工S104→リフレア加工S105を実施する。リフレア加工装置では、リフレア加工S105を実施する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−143937公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のリフレア加工装置には、以下に示す改善すべき点がある。リフレア加工を行う前には、穴開け・バーリング加工S103、しごき加工S104といった前工程が存在する。このような前工程においては、大量のアルミ摩耗粉はじめとする加工粉が発生する。
【0006】
一方、近年、生産性の向上に対する要求がますます厳しくなっている。そこで、生産スピードをより一層高くすることによってこの要求に応えてきている。このため、プレートフィンを製造するにあたり、リフレア加工を行う前に大量の加工粉が発生する、という問題が生じてきた。この大量に発生した加工粉の一部は、穴開け・バーリング加工S103が終了したアルミプレートに付着した状態で、しごき加工S104を実行するアイアニング加工装置に供給される。このため、アイアニング加工装置の金型に加工粉が付着して、熱交換器用のプレートフィンに種々の品質問題を引き起こす、という改善すべき点がある。
【0007】
そこで、本発明は、冷却洗浄液を用いてリフレア加工を行うリフレア加工装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0009】
本発明に係るリフレア加工装置及びリフレア加工用金型は、前記金型と直接的若しくは間接的に接する前記立ち上げ部の面、及び、前記立ち上げ部と直接的若しくは間接的に接する前記金型の面の少なくとも一方に、水溶性の液体を供給すること、を特徴とする。
【0010】
これにより、加工材料、金型の少なくとも一方については、水溶性の液体によって洗浄することができる。また、水溶性の液体は比熱が高いことから、加工材料及び金型の間で発生した熱を効果的に除去することができる。なお、加工材料及び金型の両方に水溶性の液体を供給することが好ましい。
【0011】
本発明に係るリフレア加工装置及びリフレア加工用金型では、前記金型は、前記液体を供給する液体供給路を有すること、を特徴とする。これにより、簡単な構成で液体を供給することができる。
【0012】
本発明に係るリフレア加工装置及びリフレア加工用金型では、前記立ち上げ部と嵌合する嵌合部を有し、前記液体供給路は、前記嵌合部に連通していることを特徴とする。
【0013】
これにより、液体を加工材料と金型との間に供給することができる。よって、金型と直接的若しくは間接的に接する加工材料の面、及び、加工材料と直接的若しくは間接的に接する金型の面を、液体によって洗浄、冷却することができる。
【0014】
本発明に係るリフレア加工装置及びリフレア加工用金型では、前記金型は、前記嵌合部の先端側の表面に前記液体供給路が連通していること、を特徴とする。これにより、加工材料に対するリフレア加工を行う前に、加工部位を液体によって洗浄、冷却することができる。
【0015】
本発明に係るリフレア加工装置は、少なくとも前記金型が前記立ち上げ部と嵌合し始めてから前記立ち上げ部にリフレア部を形成するまで前記液体を供給すること、を特徴とする。これにより、少なくともリフレア加工を形成している間は、洗浄、冷却を行うことができる。
【0016】
本発明に係るリフレア加工装置は、前記立ち上げ部に対するリフレア部の形成が終了してから所定の期間、前記液体を供給すること、を特徴とする。これにより、リフレア加工を行った後、次の加工が始まる前までに、洗浄、冷却を行うことができる。
【0017】
本発明に係るリフレア加工装置では、 前記液体は、前記立ち上げ部及び前記金型との間を潤滑する水溶性の液体であること、を特徴とする。これにより、金型と直接的若しくは間接的に接する加工材料の面、及び/又は、加工材料と直接的若しくは間接的に接する金型の面を洗浄、冷却するだけでなく、両者の間の潤滑性を高めることもできる。
【0018】
ここで、特許請求の範囲における構成要素と実施例における構成要素との対応関係を示す。リフレア加工装置は、リフレア加工装置1に対応する。金型はリフレアパンチ11に対応する。水溶性の液体は、冷却洗浄液に対応する。加工材料は、アルミプレート21に対応する。液体供給路は冷却洗浄液供給路R1に、嵌合部はリフレアパンチ11の嵌合部T1に、それぞれ対応する。金型と直接的若しくは間接的に接する加工材料の面はアルミプレート21の立ち上げ部C21の内周面に、加工材料と直接的若しくは間接的に接する金型の面はリフレアパンチ11の嵌合部T1の先端部T11及び中間部T13のそれぞれの外周面S11、S13に、それぞれ対応する。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るリフレア加工装置の一実施例であるリフレア加工装置1の一部断面図である。
【図2】リフレアパンチ11の断面図であり、Aは縦方向の中心軸に垂直な断面を、Bは縦方向の中心軸に沿った断面を、それぞれ示している。
【図3】リフレア加工装置1におけるリフレア加工工程を示した図である。
【図4】リフレア加工装置1におけるリフレア加工工程を示した図である。
【図5】リフレア加工装置1におけるリフレア加工工程を示した図である。
【図6】リフレア加工装置1におけるリフレア加工工程を示した図である。
【図7】リフレア加工装置1におけるリフレア加工工程を示した図である。
【図8】リフレア加工装置1におけるリフレア加工工程を示した図である。
【図9】その他の実施例を示す図である。
【図10】従来のドロー・しごき併用方式によるフィンカラーの加工方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0021】
1.リフレア加工装置の構成
本実施例におけるリフレア加工装置1は、ピアシング加工により所定の孔を形成し、バーリング加工により形成した孔の周縁部に所定の立ち上げ部を形成し、さらに、立ち上げ部をしごくことによって薄く均一にするアイアニング加工を施した加工材料に対して、リフレアグ加工を施すものである。リフレア加工装置1は、アイアニング加工によって薄く均一に形成された立ち上げ部の先端部分を丸く外側に折り曲げたリフレア部を形成する。なお、リフレア加工装置1は、ピアシング工程、バーリング工程、アイアニング工程を経て所定の立ち上げ部がけ生成されアルミニウム製のプレート(以下、アルミプレートという。)を加工材料とするものである。リフレア加工されたアルミプレートは、エアーコンディショナー等に用いられる熱交換器に使用する冷却フィンを製造する際に用いられる。
【0022】
また、リフレア加工装置1は、リフレア加工に際して、所定の冷却洗浄液を用いる。ここで用いる冷却洗浄液としては、水性の液体であり、例えば、(A)金属防食剤、(B)両性界面活性剤、(C)水溶性ポリアルキレングリコールまたはその誘導体、及び水を必須成分とする冷却洗浄用組成物を、水を用いて希釈したものを用いる。
【0023】
ここで、(A)金属防食剤は、金属の防食性を付与するため成分である。(A)金属防食剤(A)としては、例えば、ベンゾトリアゾールがある。また、(B)両性界面活性剤は、金属の防食性を付与するための成分である。(B)両性界面活性剤としては、例えば、N−ラウリルグリシンナトリウムがある。(C)ポリアルキレングリコールまたはその誘導体は、金型と加工される加工材料、例えばアルミニウムとの間の潤滑性を付与するものである。(C)ポリアルキレングリコールまたはその誘導体としては、例えば、ポリエチレングリコールがある。なお、(A)金属防食剤、(B)両性界面活性剤、(C)水溶性ポリアルキレングリコールまたはその誘導体の成分比率は、それぞれ、1〜15重量%、5〜20重量%、5〜25重量%であり、最終的に水を用いて調整される。
【0024】
また、冷却洗浄用組成物を冷却洗浄液として用いる際には、水を用いて20〜100倍に希釈して使用する。
【0025】
このように、冷却洗浄液は多量の水を有しているため、冷却洗浄液には、高い冷却効果がある。これは、水の比熱が大きいことを利用したものである。
【0026】
なお、冷却洗浄液に、金型に用いられる超硬合金の結合相金属が潤滑液中に溶出するのを抑制する金属不活性化剤を加えるようにしてもよい。これにより、超硬合金の結合相溶出による腐食を抑制できる。
【0027】
リフレア加工装置1において、アルミプレートに対してリフレア加工を施す領域の一部断面拡大図を図1に示す。なお、図1には、リフレアパンチ11がアルミプレート21のチューブ挿通孔に対して最も深く嵌合した状態を示している。
【0028】
リフレア加工装置1は、少なくとも、リフレアパンチ11、リフレアダイ12、リフレアプレート13、及びブッシュ14を有している。
【0029】
リフレアパンチ11は、アルミプレート21の立ち上げ部C21の先端部分を押圧することによって、立ち上げ部C21の先端部分が丸く外側に折り曲げられたリフレア部F21を生成する。リフレアパンチ11には、冷却洗浄液を表面に供給するための冷却洗浄液供給孔K11が複数形成されている。リフレアパンチ11は、超硬合金により構成されている。リフレアパンチ11の詳細な構成については後述する。
【0030】
リフレアダイ12は、パンチ通過孔H12を有している。パンチ通過孔H12は、アイアニングパンチ11と嵌合の際にリフレアパンチ11の嵌合部T1(後述)を内包する。また、パンチ通過孔H12は、アルミプレート21の立ち上げ部C21の外形とほぼ等しい内径D12を有している。リフレアダイ12は、アルミプレート21を狭持する狭持面P12を有している。
【0031】
リフレアプレート13は、リフレアパンチ11及びブッシュ14が通過する孔H13を有している。リフレアプレート13は、リフレアパンチ11及びブッシュ14を位置決めするためのものである。
【0032】
ブッシュ14は、リフレアパンチ11の外周に位置する。ブッシュ14は、リフレアパンチ11とは独立して上下に摺動可能なように構成されている。また、ブッシュ14は、先端にアルミプレート21を狭持する狭持面P14を有している。
【0033】
リフレア加工装置1は、アルミプレート21の立ち上げ部C21内にリフレアパンチ11を嵌合させることによって、立ち上げ部C21に対するリフレア加工を施すものである。
【0034】
2.リフレアパンチ11の構成
リフレアパンチ11の構造を図2に示す断面図を用いて説明する。図2Aは、図2Bにおけるリフレアパンチ11のX−X断面を示した図である。図2Bは、リフレアパンチ11の縦断面図である。
【0035】
図2Bに示すように、リフレアパンチ11は、嵌合部T1及び押圧部T5を有している。嵌合部T1は、アルミプレート21のチューブ挿通孔H21に嵌合する。嵌合部T1は、先端部T1及び中間部T3を有している。先端部T11は、断面において下底が上底よりも短い台形形状を有する回転体形状を有している。先端部T11の端部は、チューブ挿通孔H21に滑らかに嵌合できるように面取りされている。中間部T13は、先端部T11に連続して形成されている。中間部T13は、円柱形状を有している。
【0036】
押圧部T5は、嵌合部T1の上方に位置している。押圧部T5は、リフレア加工溝M11を有している。リフレア加工溝M11は、断面半円状の円環形状の溝である。リフレア加工溝M11は、中間部T13と押圧部T5との接続面において、中間部T3の外周と基部T5の内周との間に形成されている。リフレア加工溝M11をアルミプレート21の立ち上げ部C21の先端に押圧することによって、アルミプレート21にリフレア部F21を形成する。
【0037】
リフレアパンチ11は、内部に冷却洗浄液が流れる冷却洗浄液供給路R1を有している。冷却洗浄液供給路R1は、供給路R3及び4本の供給路R5を有している。供給路R3は、縦方向の中心軸に沿って形成される。図2Aに示すように、供給路R5は、リフレアパンチ11の半径方向に向かって形成されている。また、供給路R5は、互いに90度の角度で位置している。
【0038】
図2Bに示すように、供給路R5の一端部は、供給路R3に連通している。また、供給路R3のもう一つの端部は、先端部T11の外周面S11まで連通している。なお、先端部T11の外周面S11には、供給路R5から供給される冷却洗浄液が排出される冷却洗浄液供給孔K11が形成される。リフレアパンチ11では、内部に冷却洗浄液供給路R1を設け、リフレアパンチ11の先端部T11の冷却洗浄液供給孔K11を介して冷却洗浄液を先端部T11の外周面S11に供給する。
【0039】
また、先端部T11の外周面S11から供給された冷却洗浄液が先端部T11の外周面S11を伝って中間部T13の外周面S13へと向かう流れを形成する。このように、冷却洗浄液を先端部T11から中間部T13へと流すことによって、冷却洗浄液の流れと共に、先端部T11及び中間部T13に付着している加工粉を除去することができる。これにより、精密加工において、加工粉に基づく金型の焼き付きを防止することができる。なお、冷却洗浄液の中間部T13への流れの形成及び加工粉の除去については後述する。
【0040】
また、冷却洗浄液を先端部T11から中間部T13へと流れるようにすることによって、リフレアパンチ11を冷却することができる。つまり、冷却洗浄液が先端部T11及び中間部T13のそれぞれの外周面を流れるようにすることによって、リフレア加工によって発生した摩擦熱等を先端部T11及び中間部T13から除去することができる。このように、リフレア加工により発生した熱をリフレアパンチ11から除去することによって、リフレアパンチ11とアルミプレート21との焼き付きを防止することができる。
【0041】
中間部T13は、アルミプレート21のチューブ挿通孔H21の内径と同じ長さよりも若干短い径を有している。このため、冷却洗浄液供給孔K11から共有された冷却洗浄液は、先端部T11の外周面S11、中間部T13の外周面S13、及びアルミプレート21の立ち上げ部C21の内周面にも供給される。これにより、先端部T11の外周面S11、中間部T13の外周面S13、及びアルミプレート21の立ち上げ部C21の内周面に付着する切削粉等の付着物を、冷却洗浄液によって除去することができる。
【0042】
なお、冷却洗浄液は、所定のタンク(図示せず)から配管を介して、ギアポンプ等の加圧供給手段(図示せず)によってアイアニング加工装置1へと供給される。
【0043】
3.リフレア加工装置1の動作
次に、リフレア加工装置1の動作の概略について図3〜図8を用いて説明する。なお、図3に示すように、リフレア加工装置1では、リフレアダイ12及びリフレアプレート13は所定の位置に固定されている。一方、リフレアパンチ11及びブッシュ14は、リフレアダイ12に対して上下に摺動可能となっている。
【0044】
図3に示すように、アイアニング加工が施された立ち上げ部C21を有するアルミプレート21は、リフレアダイ12の狭持面P12上に載置される。アルミプレート21は、チューブ挿通孔H21の中心とアイアニングダイ12のパンチ通過孔H12の中心とが、ほぼ一致するように載置される。
【0045】
アルミプレート21が載置された後、図4に示すように、ブッシュ14が矢印a3方向へ下降する。ブッシュ14は、先端の狭持面P14によって、リフレアダイ12の狭持面P12との間にアルミプレート21を狭持する。これにより、アルミプレート21をリフレアダイ12上に固定する。アルミプレート21を所定の位置に固定した後、リフレアパンチ11が矢印a3方向へ下降する。
【0046】
図5に示すように、リフレアパンチ11の嵌合部T1の先端部T11がアルミプレート21に対して所定の距離まで接近すると、リフレアパンチ11の内部に形成されている冷却洗浄液供給路R1(図示せず)を介して、冷却洗浄液が、冷却洗浄液供給孔K11からリフレアパンチ11の先端部T11の外周面S11に供給される。なお、この段階では、冷却洗浄液供給孔K11から供給された冷却洗浄液は、重力により、先端部T11の外周面S11沿って下に向かって流れていく。
【0047】
なお、冷却洗浄液の外周面への供給は、この後、リフレアパンチ11が最下端まで下降し、さらに、上昇して、図7の位置に到達するまで連続的に行われる。
【0048】
さらに、リフレアパンチ11が矢印a3方向へ下降すると、図6示すように、リフレアパンチ11の嵌合部T1の先端部T11が、アルミプレート21のチューブ挿通孔H21内に位置し、立ち上げ部C21と嵌合する。
【0049】
冷却洗浄液供給孔K11から供給された冷却洗浄液は、リフレアパンチ11の下降に従って、先端部T11の外周面S11から中間部T13の外周面S13に供給される。これにより、リフレアパンチ11全体を冷却することが可能となる。なお、リフレアパンチ11の中間部T13の外径D13は、アルミプレート21のチューブ挿通孔H21の内径D21よりも若干短い。また、冷却洗浄液供給孔K11から共有された冷却洗浄液は、アルミプレート21の立ち上げ部C21の内周面にも供給される。これにより、アルミプレート21の立ち上げ部C21の内周面に付着する切削粉等の加工粉を、冷却洗浄液によって除去することができる。
【0050】
図6に示すように、先端部T11は、アルミプレート21の立ち上げ部C21に対して直接的にリフレア加工を施すリフレア加工溝M11よりも下側に位置する。このため、リフレア加工溝M11によってリフレア加工を施す前に先端部T11から冷却洗浄液が立ち上げ部C21の内周面及びリフレアパンチ11の嵌合部T1の外周面に供給される。よって、冷却洗浄液が一種の潤滑液と機能し、リフレアパンチ11とアルミプレート21の立ち上げ部C21との間の潤滑性を向上させることが可能となる。ひいては、リフレア加工において、リフレアパンチ11に生ずる発熱を防止することが可能となる。
【0051】
さらに、リフレアパンチ11が矢印a3方向へ下降すると、リフレアパンチ11のリフレア加工溝M11がアルミプレート21の立ち上げ部C21の先端に到達する。それと同時に、アルミプレート21の立ち上げ部C21に対するリフレア加工が開始される。さらに、リフレアパンチ11が矢印a3方向に下降すると、図1に示すリフレアパンチ11が最下端まで移動した状態となる。リフレア加工は、リフレアパンチ11のリフレア加工溝M11をアルミプレート21の立ち上げ部C21に押圧することによって行われる。
【0052】
この後、リフレアパンチ11は上方向へ移動する。図7に示すように、リフレアパンチ11が、アルミプレート21の立ち上げ部C21に対して所定の位置に到達するまで、リフレアパンチ11の冷却洗浄液供給孔K11を介した冷却洗浄液の供給が行われる。このように、アルミプレート21の立ち上げ部C21に対するリフレア加工が終了した後の所定期間まで冷却洗浄液を供給し続けることによって、次のリフレア加工を開始するまでに、リフレアパンチ11を冷却することができる。また、リフレア加工によって生じ、リフレアパンチ11の外周面及び立ち上げ部C21の内周面に付着した加工粉を、次のリフレア加工までに除去することができる。
【0053】
さらに、リフレアパンチ11は矢印a7方向へ移動し、最上端まで到達する。このときの状態を図8に示す。図8に示す状態から、ブッシュ14のみが矢印a7方向に移動する。これにより、アルミプレート21の狭持状態が解放される。そして、アルミプレート21は、矢印a8方向へ移動する。以上により、リフレア加工装置1によるリフレア加工の1サイクルが終了する。

[その他の実施例]
【0054】
(1)冷却洗浄液供給路R1の構造 : 前述の実施例1においては、冷却洗浄液供給路R1は、リフレアパンチ11の縦方向の軸に沿った供給路R3及び供給路R3に垂直な供給路R5により構成されるとしたが、冷却洗浄液をリフレアパンチ11の外周面に供給できるものであれば、例示のものに限定されない。
【0055】
例えば、図9Aに示すように、供給路R3の先端部からY字状に分岐するように供給路R5を設けるようにしてもよい。また、図9Bに示すように、供給路R3の上側の先端部をリフレアパンチ11の先端部T1の頂面まで到達するように形成してもよい。先端部T1の頂面においてザグリを形成することによって、供給路R3形成することが容易となる。結果として、リフレアパンチ11の製造コストを押さえることができる。
【0056】
なお、この場合、供給路R3と供給路R5とが交差する部分には、供給路R3を下方向から流れてきた冷却洗浄液が供給路R5に流れるようにするための衝突部37を設けることが好ましい。
【0057】
さらに、前述の実施例1においては、4本の供給路R5を設けることとしたが、先端部T1の強度が確保できる範囲であれば、例示のものに限定されない。例えば、2本や6本等、適当な本数の供給路R5を設けるようにすればよい。
【0058】
(2)冷却洗浄液の供給 : 前述の実施例1においては、リフレアパンチ11とアルミプレート21の立ち上げ部C21との位置関係が図3〜図6〜図1〜図7に示す位置関係において、冷却洗浄液を間欠的に供給することとしたが、冷却洗浄液を供給するものであれば例示のものに限定されない。例えば、常時、冷却洗浄液を供給するようにしてもよい。また、例えば、図2〜図6〜図1に示す位置関係において、冷却洗浄液を供給するようにしてもよい。これにより、リフレアパンチ11によるアルミプレート21の立ち上げ部C21に対するリフレア加工が行われるまでの間、冷却洗浄液を供給できる。

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るリフレア加工装置は、例えば、エアーコンディショナーの熱交換器に用いられるアルミニウム製の放熱フィンの製造に用いることができる。

【符号の説明】
【0060】
1・・・・・リフレア加工装置
11・・・・・リフレアパンチ
T1・・・嵌合部
T11・・・先端部
S11・・・外周面
T13・・・中間部
S13・・・外周面
T5・・・押圧部
M11・・・リフレア加工溝
12・・・・・リフレアダイ
H12・・・パンチ通過孔
13・・・・・リフレアプレート
14・・・・・ブッシュ
K11・・・・・冷却洗浄液供給孔
R1・・・・・冷却洗浄液供給路
R3・・・供給路
R5・・・供給路
21・・・・・アルミプレート
C21・・立ち上げ部
R21・・リフレア部
H21・・チューブ挿通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の孔の外周に沿って形成された立ち上げ部を有する加工材料に対して、前記立ち上げ部に金型を勘合することによりリフレア加工を行うリフレア加工装置であって、
前記金型と直接的若しくは間接的に接する前記立ち上げ部の面、及び、前記立ち上げ部と直接的若しくは間接的に接する前記金型の面の少なくとも一方に、水溶性の液体を供給すること、
を特徴とするリフレア加工装置。
【請求項2】
請求項1に係るリフレア加工装置において、
前記金型は、
前記液体を供給する液体供給路を有すること、
を特徴とするリフレア加工装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に係るリフレア加工装置において、
前記金型は、
前記立ち上げ部と嵌合する嵌合部、
を有し、
前記液体供給路は、
前記嵌合部に連通していること、
を特徴とするリフレア加工装置。
【請求項4】
請求項3に係るリフレア加工装置において、
前記金型は、
前記嵌合部の先端側の表面に前記液体供給路が連通していること、
を特徴とするリフレア加工装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一つに係るリフレア加工装置において、
少なくとも前記金型が前記立ち上げ部と嵌合し始めてから前記立ち上げ部にリフレア部を形成するまで前記液体を供給すること、
を特徴とするリフレア加工装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一つに係るリフレア加工装置において、
前記立ち上げ部に対するリフレア部の形成が終了してから所定の期間、前記液体を供給すること、
を特徴とするリフレア加工装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一つに係るリフレア加工装置において、
前記液体は、
前記立ち上げ部及び前記金型との間を潤滑する水溶性の液体であること、
を特徴とするリフレア加工装置。
【請求項8】
所定の孔の外周に沿って形成された立ち上げ部を有する加工材料に対して、前記立ち上げ部に金型を勘合することによりリフレア加工を行うリフレア加工用金型であって、
前記金型と直接的若しくは間接的に接する前記立ち上げ部の面、及び、前記立ち上げ部と直接的若しくは間接的に接する前記金型の面の少なくとも一方に、水溶性の液体を供給すること、
を特徴とするリフレア加工用金型。
【請求項9】
請求項8に係るリフレア加工用金型において、
前記金型は、
前記液体を供給する液体供給路を有すること、
を特徴とするリフレア加工用金型。
【請求項10】
請求項8または請求項9に係るリフレア加工用金型において、
前記金型は、
前記立ち上げ部と嵌合する嵌合部、
を有し、
前記液体供給路は、
前記嵌合部に連通していること、
を特徴とするリフレア加工用金型。
【請求項11】
請求項10に係るリフレア加工用金型において、
前記嵌合部の先端側の表面に前記液体供給路が連通していること、
を特徴とするリフレア加工用金型。
【請求項12】
請求項8〜請求項11のいずれか一つに係るリフレア加工用金型を用いて、所定の孔の外周に沿って形成された立ち上げ部を有する加工材料に対するリフレア加工を行うリフレア加工方法であって、
前記加工材料に対するリフレア加工を行う際に、前記金型と直接的若しくは間接的に接する前記加工材料の面、及び、前記加工材料と直接的若しくは間接的に接する前記金型の面の少なくとも一方に、水溶性の液体を供給すること、
を特徴とするリフレア加工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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