説明

リボンレーザ

平面的に延びそれらの平坦面が対向して位置する一対の電極間にレーザガス(LG)が存在するリボンレーザは、各々細長い放電室(3a〜3d)を形成する多数の電極対(2a〜2d)を有している。それらの放電室は、折返しミラ(26)を経て光学的に連結され、電極の平坦面に対して平行に延びる放電室の中央平面が共通平面内に位置するように、互いに並べて配置されている。各々互いに直接連結された隣接する放電室間においてレーザビームを案内すべく、少なくとも1つの導波体(30)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば欧州特許出願公開第0275023号明細書および同第0305893号明細書で公知のスラブレーザ或いはリボンレーザに関する。
【0002】
このレーザの場合、平面的に延びそれらの平坦面が対向して位置する一対の電極間に、レーザガスが存在する。該電極間に細長い放電室が形成され、放電室内でレーザガス、特にCO2が、電極に印加された高電圧により励起される。電極により形成された細長い放電室の端面に対向して、レーザ作用を得るために、共振ミラが配置されている。
【0003】
この公知のリボンレーザの場合、放電中に生ずる熱は、熱伝導によって、通常銅から成る電極を経て排出され、従って高価なガス循環系統は不要である。そのようなリボンレーザの場合、電極が比較的大きな面積を有し、それらの相対間隔が比較的小さく、代表的には数mmであり、このため、電極間に封じ込まれたガス容積も冷却面積に比べて非常に小さいので、レーザガスは水冷式電極に熱伝達することで十分に冷却できる。
【0004】
スラブレーザ或いはリボンレーザで得られるレーザ出力は電極の面積に関係し、電極の単位面積cm2当たり、約1.5〜2.0Wの出力が生ずる。高出力を得るべく、大面積の電極が必要であるが、該電極は、それが均一に加熱されないため、相互の平行を十分に保てない。電極の内側に位置する平坦面、即ちガス室から放電室に向かう平坦面が加熱され、外側に位置する平坦面が冷却されるので、熱排出にとって必要な大きな温度勾配が生ずる。従って、電極の両側の平坦面は異なった熱膨張をする。このため曲げモーメントが生じ、これは、電極がその先端において中央部におけるより大きな電極相対間隔を有するように作用する。これによって引き起こされる電極の歪みはレーザ特性を悪化させ、モード安定性とモード純度を悪くする。曲がりが電極の長さの成長と共に増大するので、公知のレーザでは、数100Wのレーザ出力しか得られない。
【0005】
従って数kWの大きさのレーザ出力を得るべく、国際公開第94/15384号パンフレットは、大きな面積の電極を各々多数のセクションに分割することを提案している。該セクションは、少なくともその厚さの一部にわたって立体的に互いに分離され、放電室と反対側の平坦面の熱膨張によって引き起こされる運動に、微々たる機械的抵抗で対抗するように置かれている。かくして、電極全体の曲がりは、セクションの個別曲がりに分けられ、該曲がり自体は、レーザの運転性能に全く或いはほんの僅かしか影響しないほどに小さい。このため長さ1m、幅0.5m迄の電極が利用可能となる。
【0006】
より高い出力を得るべく、原理的には、電極の寸法を相応して高めることもできる。しかしそのような寸法づけは条件付きでしかできない。一方で非常に大きな電極の製造は、その平面性についての必要な精度に関し、製造技術的限界に突き当たる。他方でその寸法づけは、共振ミラに対し必要な製造費が横寸法の増大に伴って極端に増大する故、実際上の理由から、長手方向でしか考えられない、しかし、長手方向における寸法づけは、更に実際に不適当な長さ寸法のレーザ構造を生じてしまう。
【0007】
ガスレーザの出力を高めるべく、例えば旧東独特許第128966号明細書では、レーザガスを放電体内に配置した通常のガスレーザに対し、所謂折返し共振器を用いている。その際、2つ以上のガス放電体を並べて配置し、折返しミラで互いに連結している。
【0008】
かかる折返し式共振器構造は、リボンレーザででも公知である。欧州特許出願公開第0305893号や独国特許第19645093号明細書は、折返し構造を開示する。その場合、2つ以上の放電室を、折返しミラを経て互いに連結し、折返し平面が放電室の平坦面に対し垂直に又は鋭角を成して向くよう、互いに平行又は鋭角を成して配置している。しかし実際には、この折返しにより、放電容積に比例しない僅かな出力増大しか得られず、むしろこの公知の折返し方式では、不利な場合には出力の低下が観察される。
【0009】
本発明の課題は、是認できる構造的経費で、高い出力が得られるコンパクトなリボンレーザを提供することにある。
【0010】
この課題は、請求項1に記載の特徴によって解決される。リボンレーザでは、平面的に延びそれらの平坦面が対向して位置する一対の電極間にレーザガスが存在する。本発明に基づき、各々細長い放電室を形成している多数の電極対を設ける。それらの放電室を、折返しミラを経て光学的に連結し、電極の平坦面に対し平行に延びる放電室の中央平面が共通平面内に位置するよう、互いに並べて配置する。また、各々互いに直接連結された隣接する放電室間に、レーザビームを案内するための導波体を設ける。
【0011】
本発明に基づくリボンレーザは、共振器の内部に並べて配置し、光学的に互いに連結した多数の比較的短い電極対で形成する。従って、製造技術的および構造的費用が同じままである場合、抽出できる出力が、利用する電極の数に相応して増大する。更に放電区間の折返しが電極に対し平行に延びる放電室の中心平面に存在し、折返しミラ間に光線を案内するための導波体が存在するよう電極対を並べて配置するので、出力および入射損失がかなり減少する。この減少は、レーザビームが自由に伝播する、橋渡しすべき区間が、上述した欧州特許出願公開第0305893号および独国特許第19645093号明細書で公知の折返し構造と異なって非常に短くなり、この結果非冷却、未励起のレーザガスによるレーザビームの吸収が十分に防止されることで可能となる。
【0012】
本発明の特に有利な実施態様では、導波体は、高周波電を印加され互いに間隔を隔てられた金属板によって形成される。この処置によって、折返しミラ間でレーザビームが伝播する空間を、レーザ活動放電室として利用でき、一層の出力増大に貢献する。
【0013】
他の有利な実施態様において、導波体は電極対の一部である。
【0014】
本発明の他の有利な実施態様を、従属請求項4と5に示す。
【0015】
以下図示の実施例を参照し、本発明を詳細に説明する。
【0016】
図1において、リボンレーザは、平面的に延び互いに間隔を隔てられた各々2つの電極から成る2つの電極対2a、2bを備える。両電極の内、図1は上側電極のみを示す。各電極対2a、2bは、各々両側長手側面4a、4bと両側端面6a、6bとを有し、レーザガスLGが封入された細長い直方体状の放電室3a、3bを形成している。両放電室3a、3bは、電極の平坦面から放電室3a、3bの中心平面が紙面に平行な共通面に位置するよう、長手側面4a、4bを互いに平行にして配置している。
【0017】
電極対2aの一方の端面6aと、それに隣接する他方の電極対2bの端面6bに対し、各々湾曲共振ミラ8a、8bを配置している。一方の共振ミラ8aは出力ミラ、他方の共振ミラ8bは反射ミラとして働く。本実施例では、両共振ミラ8a、8bはネガティブブランチの非安定共振器を形成し、レーザビームLSが、共振器から紙面内で共振ミラ8aの横で出る。そのために必要な共振ミラ8a、8bの凹面曲率を、図1に概略的に示す。
【0018】
図1から明らかなように、この実施例では、電極対2a、2bの電極が、各々2つのセクション20a、22aと、20b、22bとを備える。これらセクション20a、22aと、20b、22bとを、上述の国際公開第94/15384号パンフレットにおけると同様に、溝24a、24bにより互いに分離している。またその代わりに、セクション20a、22aないし20b、22bを、隙間により互いに完全に分離できる。
【0019】
各電極対2a、2bの、共振ミラ8a、8bと反対側端面6a、6bに対向して、これらの端面6a、6bに対し45°の角度で、平らな折返しミラ26が配置されている。この各端面6a、6bにおいて放電室3a、3bから各々出るレーザビームは、これらの折返しミラ26によって、隣の放電室3b又は3a内で混合する。
【0020】
この実施例では、電極対2a、2bにより各々形成した放電室3a、3bの外側で、折返しミラ26間に、略台形の平らな中空導波体30を配置している。端面6a、6bで放電室3a、3bから出るレーザビームは、その導波体30内で折返し、平面に対し平行に伝播する。該導波体30は、互いに間隔を隔てた平らな金属板で形成している。本発明の有利な形態では、該金属板に、電極対2a、2bと同様に、高周波電圧HFを印加し、このため電極対2a、2b間に存在するレーザガスLGをレーザ媒質として用い、レーザ出力に貢献させる。電極対2a、2bに高周波電圧HFを印加していないとき、導波体30の金属板も電極対2a、2bと同様に冷却される。導波体30と電極対2a、2bとの間隔並びに導波体30と折返しミラ26との間隔は、できるだけ小さくせねばならず、数mmを超過してはならない。実際には、3〜4mmの範囲の値が適当である。
【0021】
基本的には、電極対2a、2bを折返しミラ26迄繰り出すこともできる。これに伴い導波体30は、図に破線で示すように、電極対2a、2bの互いに隣接する三角形セクションによって形成される。この実施例では、入射損失を最小にすべく、電極対2a、2bの長手側面4a、4bを互いに密に並べて配置せねばならない。
【0022】
平らな折返しミラ26に代えて、図2に応じて、隣接する放電室でレーザビームを集束させるべく、紙面に対し垂直な断面においてミラ表面28が湾曲した輪郭を有する折返しミラ26も利用できる。
【0023】
図1は、2つの電極対2a、2bを備えた構成を示す。しかし基本的には、図3の実施例において3つの電極対2a〜2cと、それらに各々付属する放電室3a〜3cを備えた配置構造を示すように、2つ以上の電極対を並べて配置してもよい。この構成でも、放電室3a〜3cを、それらの長手側面4a〜4cを互いに平行に並べて配置している。この場合、各々隣接する電極対2a、2b、2cを、対を成して付属する折返しミラ26で光学的に互いに連結し、その際、両外側に位置する電極対3a、3cの片側端面6a又は6cだけに、共振ミラ8a又は8cを配置できる。
【0024】
図4の実施例では、電極対2a〜2cおよび導波体30によって三角形の放電区間を構成した折返し方式用いている。この場合も、折返しミラ26のそばに配置した導波体30を電極により形成し、電極対2a〜2cと同じ高周波電圧HFを供給する。この結果、レーザ活動容積、即ち放電を生ずる空間が、各々電極対2a〜2cによって形成された放電室3a〜3cを越えて折返しミラ26の直近迄達し、レーザビームLSの共振器内部の伝播時における非励起区間を十分に防止できる。
【0025】
図5には、更に異なる実施例を示す。この場合、電極対2a〜2dで形成した放電室3a〜3dを、導波体30と共に、断面正方形又は矩形の放電区間の形に連結している。
【0026】
図2〜図5の実施例において、導波体30は電極対と一体部品の形にしてもよく、電極対自体は、電極対2c(図4)および電極対2d(図5)に関して示すように、溝によって小さなセクションに分割できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に基づくリボンレーザの電極の平坦側から見た概略平面図。
【図2】折返しミラの横断面図。
【図3】本発明に基づくリボンレーザの異なった実施例。
【図4】本発明に基づくリボンレーザの異なった実施例。
【図5】本発明に基づくリボンレーザの異なった実施例。
【符号の説明】
【0028】
2a〜2d 電極対、3a〜3d 放電室、8a、8b 共振ミラ、26 折返しミラ、30 導波体、HF 高周波電圧


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的に延び、平坦面が対向して位置する一対の電極間にレーザガス(LG)が存在するリボンレーザにおいて、
各々細長い放電室(3a〜3d)を形成する多数の電極対(2a〜2d)を備え、前記放電室(3a〜3d)が、折返しミラ(26)を経て光学的に連結され、電極の平坦面に対し平行に延びる放電室(3a〜3d)の中央平面が共通平面内に位置するよう互いに並べて配置され、各々互いに直接連結された隣接する放電室(3a〜3d)間においてレーザビームを案内する導波体(30)が設けられたことを特徴とするレーザ。
【請求項2】
導波体(30)が、高周波(HF)電圧を印加され互いに間隔を隔てた金属板によって形成されたことを特徴とする請求項1記載のレーザ。
【請求項3】
導波体(30)が、電極対(2a〜2d)の一部であることを特徴とする請求項2記載のレーザ。
【請求項4】
電極の平坦面に対し平行な平面内にネガティブブランチの非安定共振器を形成する共振ミラ(8a、8b)を備えることを特徴とする請求項1から3の1つに記載のレーザ。
【請求項5】
折返しミラ(26)が平坦であることを特徴とする請求項1から4の1つに記載のレーザ。
【請求項6】
折返しミラ(26)が、電極の平坦面に対して垂直な平面内において湾曲していることを特徴とする請求項1から4の1つに記載のレーザ。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−516807(P2006−516807A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518647(P2005−518647)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000548
【国際公開番号】WO2004/068655
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(598106511)ロフィン−ジナール レーザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】