説明

リボン形ビームを用いたイオン注入クラスターツール

【課題】1枚のウェハに対して複数種類のイオンを注入する装置において、装置経費を低減するとともに生産性を向上する。
【解決手段】複数のイオンビームラインアセンブリーが、共通処理チャンバーの周囲に配置される。複数のイオンビームラインアセンブリーの各々は、共通処理チャンバーから選択的に分離され、複数のイオンビームラインは、共通処理チャンバーの処理領域で交差する。共通処理チャンバー内に配置された走査装置は、加工物ホルダーが、処理領域中を複数のイオンビームラインのそれぞれを横切って1以上の方向に選択的に移動するように動作可能である。共通処理チャンバー内に配置された共通線量測定装置は、複数のイオンビームラインのそれぞれの1以上の特性を測定するように動作可能である。共通処理チャンバーと外部環境との間で加工物を交換するため、ロードロックチャンバーが共通処理チャンバーに動作可能に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、イオン注入システムおよび加工物にイオン注入するための方法に関し、より詳しくは、1つの共通処理チャンバーに結合された複数のイオンビームラインアセンブリーを有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、半導体に不純物をドーピングするためにイオン注入装置が使用される。このようなシステムでは、イオン源において所望のドーパント元素がイオン化され、そのドーパント元素はイオンビームの形でイオン源から引き出される。イオンビームは、典型的には、質量分析により所望の電荷対質量比を有するイオンが選択された後に、ウエハにドーパント元素を注入するために半導体の表面に導かれる。ビームのイオンは、ウエハの表面を貫通し、例えばウエハ中にトランジスタデバイスを製造する場合のように、所望の導電率を有する領域が形成される。典型的なイオン注入装置は、イオンビームを発生させるイオン源と、磁界を使用してイオンビームを質量別に分解するための質量分析装置を含むビームラインアセンブリーと、イオンビームによって注入される半導体ウエハまたは加工物を収容するターゲットチャンバーとを含んでいる。
【0003】
典型的には、イオン源から発生するイオンは、ビーム状に整形され、既定のビーム経路に沿って注入ステーションへと導かれる。イオンビーム注入装置は、さらに、イオン源と注入ステーションとの間に延在するビーム形成/整形構造体を含む場合もある。ビーム形成/整形構造体は、イオンビームを維持するとともに、細長い内部空洞またはビームが注入ステーションへと至る途中で通過する通路を形成するものである。イオン注入装置の動作時には、通常、この通路は排気され、空気分子との衝突の結果としてイオンが既定のビーム経路から逸れる確率を低減するものである。
【0004】
イオンの電荷に対する質量(すなわち、電荷対質量比)は、イオンが静電界または磁界によって軸方向および横方向の両方向に加速される度合いに影響を及ぼす。したがって、不要の分子量のイオンをビームから離れた位置に偏向することにより、半導体ウエハまたは他のターゲットの所望の領域に到達するビームの純度を大幅に向上させ、所望の材料以外の材料の注入を回避することができる。所望の電荷対質量比を有するイオンを、そうではないイオンと分離するこの処理は、質量分析として知られている。質量分析は、典型的には、質量分析磁石を使用して双極磁界を発生させ、弓形の通路において、磁気偏向によりイオンビーム中の様々なイオンを偏向することによって、様々な電荷対質量比を有するイオンを効果的に分離するものである。
【0005】
イオンビームは、ターゲットステーション内の加工物の所望の表面領域に集束されて導かれる。イオンビームの高エネルギーイオンは、加工物の内部に貫入する所定のエネルギーレベルにまで加速される。例えば、イオンは、所望の導電率を有する領域を形成するために材料の結晶格子中に埋め込まれ、その際、注入の深さは、イオンビームのエネルギーによってほぼ決定される。イオンビームは、スポットビーム(例えば、ペンシル形ビーム)であってもよく、この場合、加工物は、ほぼ静止しているスポットビームに直交する2次元方向に、機械的に走査される。また、イオンビームは、リボン形ビームであってもよく、この場合、ビームが加工物上を1方向に電磁的に走査され、その間、加工物が直交方向に機械的に走査される。また、イオンビームは、静止している加工物上を電磁的に2次元方向に走査される、電磁走査型ビームであってもよい。イオン注入システムの例には、米国マサチューセッツ州ベバリー(Beverly,Masachusetts)のアクセリステクノロジーズ社(Axcelis Technologies)から市販されているイオン注入システムが含まれる。
【0006】
従来、典型的なイオン注入システムは処理チャンバーを含んでおり、加工物は、注入の間に、処理チャンバー内の加工物ホルダー上に配置される。処理チャンバーは、典型的には他の環境から分離される処理環境を維持するものであり、通常、処理環境から他の環境への相互汚染は限定されている。加工物の機械的走査を使用するイオン注入システムでは、加工物ホルダーは、典型的には、処理チャンバー内の走査装置に結合されており、走査装置は、加工物ホルダーを、イオンビームに対して1以上の方向に移動させるように動作可能なものである。さらに、典型的には、処理のフィードバックのために、処理チャンバー内に、イオンビームと一直線上にビーム監視装置(例えば、ファラデーカップ)が設けられている。
【0007】
クラスターツールを使用して、1枚のウエハに対していくつかの異なる処理を施す処理方法もあり、この場合、加工物は、クラスターツール内の様々な処理環境の間を移送される。例えば、図1に示す従来のクラスターツール10は、加工物15上の様々な処理を実行するように構成されている。クラスターツール10は、例えば、中央の加工物移送ステーション45を囲む第1イオン注入装置20、第2イオン注入装置25、エッチングステーション30、レジストアッシャー35、およびロードロックチャンバー49を含んでいる。第1イオン注入装置20、第2イオン注入装置24、エッチングステーション30、レジストアッシャー35、およびロードロックチャンバー49は、それぞれの仕切弁55A−55Dによって加工物移送ステーション45から選択的に分離される固有の独立した処理チャンバー50A−50Dを含んでおり、各処理チャンバーは、加工物15を処理するための独立した処理環境60A−60Dを有している。さらに、各処理チャンバー50A−50Dは、固有の加工物ホルダー65A−65Dを含み、第1イオン注入装置20および第2イオン注入装置25の場合には、加工物ホルダー65A、65Bは、さらに、それぞれ対応する第1走査装置70Aおよび第2走査装置70Bに結合されている。さらに、第1イオン注入装置20および第2イオン注入装置25の場合には、それぞれの処理チャンバー50A、50B内に、それぞれ対応する第1ビーム監視装置75Aおよび第2ビーム監視装置75Bが配置されており、それぞれのイオン注入装置に対応する第1イオンビームライン80Aおよび第2イオンビームライン80Bを監視するものである。
【0008】
動作の間に、通常、加工物は、加工物への所望の処理に基づいて加工物ハンドラー80により複数の処理チャンバー50A−50Dの間を移送される。例えば、加工物15に異なる複数のイオン種を注入したい場合には、第1イオン注入装置20および第2イオン注入装置25に、それぞれ対応する第1イオンビームライン85Aおよび第2イオンビームライン85Bが、それぞれのイオンビームラインに関連する異なるイオン種を有するように構成される。そして、加工物15は、ロードロックチャンバー40から仕切弁55Aを通じて第1処理チャンバー50Aに移送され、処理チャンバー50A内の第1走査装置70Aに結合された加工物ホルダー65A上に配置される。次いで、仕切弁55Aが閉じられ、第1処理チャンバー50Aが排気されて、加工物15は、第1走査装置70Aにより第1ビームライン85Aを横切るように走査される。第1ビームラインは、処理チャンバー50A内の第1ビームライン監視装置75Aにより監視される。
【0009】
第1イオン注入装置20による所望のイオン注入が完了すると、仕切弁55Aが開き、加工物15は、第1イオン注入装置の処理チャンバー50Aから取り出されて、移送ステーション45に戻される。次いで、加工物15は、仕切弁55Bを通じて第2イオン注入装置25の処理チャンバー50B内に移送され、第2イオン注入装置の処理チャンバー50B内の第2走査装置70Bに結合する加工物ホルダー65B上に配置される。次いで、仕切弁55Bが閉じられれ、処理チャンバー50Bが排気される。その後、加工物15は、第2走査装置70Bにより、第2イオン注入装置25の第2ビームライン85Bを通じて走査される。ここで、第2ビームラインは、処理チャンバー50B内の第2ビームライン監視装置75Bにより監視される。第2イオン注入装置25による所望のイオン注入が完了すると、仕切弁55Bが開き、加工物15は、第2イオン注入装置の処理チャンバー50Bから取り出されて、移送ステーション45に戻される。ここで、場合によっては、さらに他の処理が実行される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したような従来のクラスターツールは、各イオン注入装置20、25が、それぞれ専用の処理チャンバー50A、50B、走査装置70A、70B、ビーム監視装置75A、75B、および、典型的には各イオン注入システムを制御するためのコントローラ(図示は省略する)を有しているため、高価なものとなる。したがって、複数のイオンビームラインの間で共通の構成要素を共有することによって効率性の向上を可能とし、それによって、複数のビームライン有することに伴う所有経費を低減させる、改善されたイオン注入システムクラスターツールを提供することに対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数のイオンビームラインが、共通処理チャンバー、走査装置、ビーム監視装置、加工物ハンドリング装置、およびコントローラのような構成要素を共有するイオン注入クラスターツールを提供することによって、先行技術の限界を克服するものである。ここで、本発明のいくつかの態様についての基本的理解に供するために、本発明の簡単な要約を以下に提示する。但し、この要約は、本発明全体の概要ではない。また、この要約は、本発明を特定する事項または必須の構成要素を示すものではなく、本発明の範囲を画定するものでもない。この要約の目的は、後述する詳細な説明の導入として、本発明のいくつかの概念を簡単に提示することである。
【0012】
本発明は、加工物にイオンを注入するためのイオン注入クラスターツールに関する。本発明の一態様に従って、複数のイオンビームラインの各々を有する複数のイオンビームラインアセンブリーが、共通処理チャンバーの周囲に配置される。共通処理チャンバーは、例えば、1以上の真空ポンプによって排気されるように動作可能なものである。例えば、複数のイオンビームラインアセンブリーの各々は、さらに、1以上の仕切弁によって共通処理チャンバーから選択的に分離され、それによって、共通処理チャンバー内の真空環境から選択的に分離される。
【0013】
本発明の例示的な一態様に従って、複数のイオンビームラインアセンブリーに関連する複数のイオンビームラインは、共通処理チャンバーの処理領域で交差する。共通処理チャンバー内には走査装置が配置されており、この走査装置は、加工物を保持する加工物ホルダーが、処理領域中を複数のイオンビームラインの各々を横切って1以上の方向に選択的に移動するように動作可能なものである。走査装置は、例えば、3以上の自由度を有するロボットを含むものであってもよい。また、走査装置に対してさらに2次元走査システムが結合されていていてもよく、この2次元走査システムは、選択されたイオンビームラインを横切る加工物の既定の走査を実施するように動作可能なものである。
【0014】
本発明の別の例示的な態様に従って、共通処理チャンバー内に、例えばファラデーのような共通線量測定装置が配置されており、この共通線量測定装置は、複数のイオンビームラインの各々の1以上の特性を測定するように動作可能なものである。共通線量測定装置は、例えば、走査装置に動作可能に結合されていてもよい。さらに、共通処理チャンバーに動作可能に結合されたロードロックチャンバーを備え、共通の加工物ハンドリング装置により、共通処理チャンバーと外部環境との間で加工物を交換するものであってもよい。
以上のように、本発明は、複数のイオンビームラインに対して共通の、処理チャンバー、走査装置、線量測定装置、および加工物ハンドリング装置を備えることによって、従来のものよりも効率的なイオン注入クラスターツールを提供するものである。
【0015】
上述した目的及び関連する目的を達成するために、本発明は、以下に詳細に説明され、また、添付特許請求の範囲に特に明示された特徴を含むものである。添付図面及び図面の説明には、本発明の特定の例示的な態様及び実施形態が詳細に記載されているが、これらは、本発明の原理を使用可能な様々な態様のごく一部を示すものである。本発明の他の態様、利点、及び新規な特徴は、以下に記載した本発明の詳細な説明を図面と共に考慮することによって、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、一般的には、複数のイオンビームラインを共通の処理チャンバーに効率的に供給するためのシステムに関するものである。以下、図面を参照して本発明を説明するが、以下の説明を通じて、同様の要素には同一の参照符号を付して参照する。また、それぞれの態様の記載は、単に例示的なものであり、限定的な意味に解すべきではない。以下の記載において、本発明の完全な理解に供することを目的として、説明のための多くの特定の詳細事項が記載されている。しかしながら、これらの特定の詳細事項を用いることなく本発明を実施可能なことは、当業者には明らかである。
【0017】
図2には、本発明に従って、例示的なイオン注入クラスターツール100の平面図が示されている。イオン注入クラスターツール100は、1つの共通処理チャンバー102を含んでおり、この共通処理チャンバーに、複数のイオンビームラインアセンブリー104A−104Cが動作可能に結合されている。尚、図2には、3つのイオンビームアセンブリー104A−104Cが示されているが、この共通処理チャンバーには、1より大きな任意の数のイオンビームアセンブリー104を結合することが可能であり、このような任意の数のイオンビームアセンブリーは、本発明の範囲に含まれるものである。各イオンビームアセンブリー104は、例えば、イオン源106、引出アセンブリー108(例えば、引出電極または引出光学系)、質量分析磁石110、および出口分解アパーチャまたは質量分解アパーチャ112を含み、それぞれ異なるイオンビーム114A−114C(例えば、ビームライン)を発生させるように動作可能なものである。各ビームラインアセンブリー104A−104Cは、例えば、チューニング用ファラデー115A−115Cをさらに含んでいてもよく、これによって、共通処理チャンバー102の上流のそれぞれのビームライン114A−114Cをチューニングするものである。各イオンビームラインアセンブリー104A−104Cによって発生するビームライン114A−114Cは、引き伸ばされたリボン形ビーム、スポットまたはペンシル形ビーム、または、それぞれのビームラインアセンブリーによって電磁的または静電的に走査された走査型ビームの断面形状を取るものであってもよい。各ビームラインアセンブリー104A−104Cは、例えば、それぞれ相異なるイオン種を有するものであってもよく、それによって、クラスターツール100によって様々な異なるドーピング処理を実施することができる。
【0018】
複数のイオンビームアセンブリー104は、上述したビームライン形状およびイオン種の1つまたは複数の任意の組み合せを提供するように構成可能なものである。例えば、ビームラインアセンブリー104A、104Bを、単一のイオン種からなるリボン形ビームが発生するように構成し、一方、ビームラインアセンブリー104Cを、異なるイオン種からなる走査型のペンシル形ビームが発生するように構成するものであってもよい。このように、本発明は、複数のビームラインアセンブリー104によって発生するイオンビームの形状によって限定されず、任意のビームライン形状またはそのビームラインの走査方法は、本発明の範囲に含まれるものである。複数のビームライン114A−114Cの形状または構成に関わらず、各ビームラインは、共通処理チャンバーの処理領域116を横切るものであり、その詳細は後述する。
【0019】
本発明における共通処理チャンバー102は、例えば、1つ以上の真空ポンプ120A−120B(例えば、低温ポンプ)に流体連通する中央真空チャンバー118を含んでおり、1つ以上の真空ポンプは、中央真空チャンバー内を実質的に真空化するものである。イオン注入クラスターツール100は、さらに、1つ以上の仕切バルブ124を介して共通処理チャンバー102に動作可能に連結されたロードロックチャンバー122を含んでいてもよく、ロードロックチャンバーの内部環境126が、共通処理チャンバー内の真空環境128に選択的に連通するように動作可能なものである。後述するように、ロードロックチャンバー122は、例えば、1つ以上の加工物130(例えば、半導体基板またはウエハ)を、共通処理チャンバー102の外部から内部へ、または、内部から外部へ移送するために使用することができる。
【0020】
本発明の1つの例示的な態様に従って、イオン注入クラスターツール100は、走査装置132をさらに含むものであってもよい。この走査装置は、共通処理チャンバー102内に配置されており、加工物を保持するとともに1以上の方向に移動させるように動作可能なものである。例えば、走査装置132は、加工物130を保持するための加工物ホルダー134(例えば、静電チャック)を含んでおり、加工物ホルダー(したがって、加工物)が、共通処理チャンバー102の処理領域116中を複数のイオンビームライン114A−114Cを横切って1以上の方向に選択的に移動するように動作可能なものである。
【0021】
図2に示す例では、加工物ホルダー134は、ビームライン114Cに対して、第1位置136Aと第2位置136Bとの間を移動するように示されている。ただし、複数のビームライン114A−114Cの各々と加工物130との間に形成される入射角(例えば、「傾斜角」)は、それぞれのビームラインに対して選択可能であり、走査装置132は、さらに、それぞれのビームラインに関して、加工物の一定焦点の走査を維持するように動作可能なものである。走査装置132の一例は、米国マサチューセッツ州ベバリーのアクセリステクノロジーズ社に付与された米国特許第6,900,444号明細書に記載されており、その内容は参考として本明細書に組み込まれる。
【0022】
例えば、走査装置132は、さらに、共通処理チャンバー102内の処理領域116とロードロックチャンバー122との間の加工物130の移動を行うように動作可能なものである。走査装置132は、少なくとも3自由度を有する中央ロボット138を含むものであってもよい。また、走査装置132は、2次元走査システム140を含むものであってもよく、この2次元走査システムは、加工物ホルダー134が、複数のイオンビームライン114A−114Cの各々に関して、略直交する2軸方向に処理領域116中を移動するように動作可能なものである。例えば、中央ロボット138は、加工物ホルダー134を、加工物130が各ビームライン114A−114Cに対してそれぞれ略直交するように配置するように動作可能であり、2次元走査システム140は、さらに、加工物ホルダーが、各ビームラインに関して、略直交する2軸に沿って移動するように動作可能なものである。これによって、加工物の、それぞれのビームラインを横切る2次元走査が実現される。また、別の例では、中央ロボット138は、加工物ホルダー134(したがって加工物130)を、それぞれのビームライン114A−114Cを横切って、略直交する2軸に沿って走査するだけでなく、ロードロックチャンバー122と処理領域116との間の加工物130の移動を行うように動作可能なものである。
【0023】
本発明の別の例示的な態様に従って、イオン注入クラスターツール100は、共通処理チャンバー102に関連する(共通)線量測定装置142を含んでおり、この線量測定装置は、複数のイオンビームライン114A−114Cの各々の1以上の特性(例えば、ビーム電流)を測定するように動作可能なものである。線量測定装置142は、例えば、各ビームライン114A−114Cの各々に関連するファラデーカップ143A−143Cを含むものであってもよく、各ファラデーカップは、共通処理チャンバー102に動作可能に結合される。また、線量測定装置142は、走査装置132に動作可能に結合されたファラデーカップ144を含むものであってもよく、この走査装置は、さらに、複数のビームライン114A−114Cを横切って線量測定装置を選択的に移動させるように動作可能なものである。
【0024】
本発明の別の例示的な態様に従って、イオン注入クラスターツール100は、共通処理チャンバー102に動作可能に結合された加工物ハンドリング装置146を備えている。加工物ハンドリング装置は、走査装置132の加工物ホルダー134とロードロックチャンバー122との間の加工物の移送を行うように構成されている。加工物ハンドリング装置146は、例えば、走査装置132(例えば、中央ロボット136)に組み込まれていてもよく、または、加工物ホルダー134とロードロックチャンバー122との間の加工物130の移送を行うように動作可能な、走査装置132に結合された別のロボットまたは移動機構(図示は省略する)であってもよい。
【0025】
上述したように、本発明に係るイオン注入クラスターツール100は、有利なことに、それぞれのビームライン114A−114Cが処理領域116で交差するように、共通処理チャンバー102の回りに配置された、複数のビームラインアセンブリー104A−104Cを備えており、加工物130は、それぞれのビームラインによってイオン注入される。例えば、複数のビームライン114A−114Cは、処理領域116中のターゲット位置148において互いに交差するものであり、この場合、加工物130を、各ビームラインに対してそれぞれ略直交するように、ターゲット位置に配置することができる。これによって、従来は無かった効率性がもたらされる。例えば、走査装置132は、すべてのビームラインアセンブリー104A−104Cに共有されており、共通の走査装置132により、それぞれのビームライン114A−114Cによる注入のために加工物ホルダー134を適切に配置することができる。さらに、線量測定装置142は、すべてのビームラインアセンブリー104A−104Cに共有されており、共通の線量走査装置142は、走査装置132によって適切に配置されることにより、すべてのビームラインアセンブリー104A−104Cの特性を示すことができるように動作可能なものである。またさらに、共通のコントローラ148を、ビームラインアセンブリー104A−104Cおよび走査装置132を制御することによってイオン注入クラスターツール100を制御するように構成するものであってもよい。共通のコントローラ148は、各ビームラインアセンブリー104A−104Cを制御するために、線量測定装置142を通じてフィードバック制御を実施するものであってもよく、さらに、走査装置132の制御(例えば、共通処理チャンバー102内の真空環境128とロードロックチャンバー122との間の加工物の移送を行う中央ロボット136の制御)を通じて、加工物130の操作を制御するものであってもよい。
【0026】
本発明によってもたらされる別の効率性は、2以上のビームラインアセンブリー(例えば、ビームラインアセンブリー104A、104B)を、同一のイオン種を有する同タイプのイオンビームを供給するように構成できるように、ビームラインアセンブリーに冗長性を持たせることである。これによって、一方のビームラインアセンブリー(例えば、ビームラインアセンブリー104A)に故障が生じた場合や整備が必要な場合、すぐに他方の余剰のビームラインアセンブリー(例えば、ビームラインアセンブリー104B)を注入用として使用することができ、処理中断時間を低減することができる。
【0027】
本発明の別の例示的な態様に従って、複数のビームラインアセンブリー104A−104Cは、それぞれ仕切弁150A−150Cを含んでいる。この仕切弁は、複数のビームラインアセンブリーを共通処理チャンバー102から選択的に分離するものである。例えば、ビームラインアセンブリー104Cに関連するイオン種が所望の場合、仕切弁150Cを開くとともに、仕切弁150A、150Bを閉じて、ビームラインアセンブリー104A、104Bを、共通処理チャンバー102の真空環境128から実質的に分離するものである。これによって、例えば、ビームラインアセンブリー104Cによる加工物130へのイオン注入を続行しながら、ビームラインアセンブリー104A、104Bの整備作業を実施することが可能となる。加えて、仕切弁150A−150Cは、ビームラインアセンブリー104A−104C間の環境保護壁を形成するものであり、これによって、ビームラインアセンブリー間の相互汚染を最小限にとどめることができる。
【0028】
このように、本発明は、効率的なイオン注入クラスターツール100を提供するものであり、共通の構成要素を使用することによって、従来のシステムと比較して所有経費が削減されるとともに、生産性と効率性が有利に向上する。
【0029】
以上、本発明を特定の態様及び実施形態に関連させて図示及び説明してきたが、本明細書及び添付された図面の理解に基づいて、当業者が同等な変更及び修正に想至し得ることは理解されるであろう。特に、上述した構成要素(アセンブリー、装置、デバイス、回路、システム等)によって実行される種々の機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用された用語(「手段」に対する参照を含む)は、特に明示されない限り、ここに示された本発明の例示的な実施形態において特定の機能を実行する上述した構成要素のその機能を実行する(すなわち、機能的に同等である)任意の構成要素に、たとえ開示された構成に構造的に同等でなくても、相当するものである。加えて、本発明の特定の特徴がいくつかの態様のうちの1つのみに関連して開示された場合であっても、所定の又は特定の用途のために望ましくかつ有利であるように、そのような特徴を他の態様の1つ又はそれ以上の特徴と組み合わせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、先行技術に従って加工物を処理するための、従来のクラスターツールの平面図である。
【図2】図2は、本発明の一態様に従うイオン注入クラスターツールの一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のイオンビームラインの各々を有する複数のイオンビームラインアンセブリーと、
前記複数のイオンビームラインの各々が処理領域で交差する共通処理チャンバーと、
前記共通処理チャンバー内に配置され、加工物ホルダーを含むとともに、前記加工物ホルダーが、前記処理領域中を前記複数のイオンビームラインを横切って1以上の方向に選択的に移動するように動作可能な走査装置と、
前記共通処理チャンバーに関連し、前記複数のイオンビームラインの各々の1以上の特性を測定するように動作可能な線量測定装置と、
前記共通処理チャンバーに動作可能に結合されたロードロックチャンバーと、
を含むことを特徴とするイオン注入クラスターツール。
【請求項2】
大部分が前記共通処理チャンバー内に存在し、前記加工物ホルダーと前記ロードロックチャンバーとの間の加工物の移送を行うように構成された加工物ハンドリング装置をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項3】
前記複数のイオンビームラインアセンブリーは、前記共通処理チャンバーの周囲に配置され、前記複数のイオンビームラインは、前記処理領域中のターゲット位置で互いに交差することを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項4】
前記共通処理チャンバーは、1以上の真空ポンプに動作可能に結合され、前記1以上の真空ポンプは、前記共通処理チャンバー内に実質的に真空化された環境を形成するように動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項5】
前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々に、それぞれ関連する複数の仕切弁をさらに含み、該複数の仕切弁は、前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々を、前記共通処理チャンバーから選択的に分離するように動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項6】
前記走査装置は、少なくとも3自由度を有するロボットを含むことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項7】
前記走査装置は、前記加工物ホルダーが、前記複数のイオンビームラインの各々に関して、略直交する2軸方向に前記処理領域中を移動するように動作可能な2次元走査システムを含むことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項8】
前記線量測定装置は、前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々に関連するファラデーカップを含み、それぞれの前記ファラデーカップは、前記共通処理チャンバーに動作可能に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項9】
前記線量測定装置は、前記走査装置に動作可能に結合されており、前記走査装置は、前記線量測定装置を、前記複数のイオンビームラインを横切るように選択的に移動させることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項10】
前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々は、イオン源、引出アセンブリー、質量分析装置、質量分解アパーチャ、および調整用ファラデーを含むことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項11】
前記複数のイオンビームラインアセンブリーの1つまたは複数は、リボン形イオンビームを形成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項12】
前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々は、前記共通処理チャンバーの上流に配置された調整用ファラデーを含むことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項13】
前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々は、それぞれ相異なるイオン種を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン注入クラスターツール。
【請求項14】
共通処理チャンバーと、
前記共通処理チャンバーに動作可能に結合されたロードロックチャンバーと、
前記共通処理チャンバーの周囲に配置されて前記共通処理チャンバーに動作可能に結合され、前記共通処理チャンバーの処理領域に向けて導かれる複数のイオンビームラインの各々を供給するように構成された複数のイオンビームラインアンセブリーと、
大部分が前記共通処理チャンバー内に配置され、加工物を保持するように動作可能な加工物ホルダーを含み、前記複数のイオンビームラインの各々を横切って前記加工物を移動させるように動作可能であるとともに、さらに、前記共通処理チャンバーと前記ロードロックチャンバーとの間の前記加工物の移動を行うように動作可能である加工物ハンドリング装置と、
前記加工物ハンドリング装置に関連し、前記複数のイオンビームラインの各々の1以上の特性を測定するように動作可能な共通線量測定装置と、
前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々を制御するように構成されたコントローラと、
を含むことを特徴とするイオン注入システム。
【請求項15】
前記複数のイオンビームラインの各々は、前記共通処理チャンバーの処理領域で交差することを特徴とする請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項16】
前記コントローラは、さらに、前記共通線量測定装置により測定された1以上の特性に基づいて、前記複数のイオンビームラインアセンブリーを制御するように動作可能であることを特徴とする請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項17】
前記共通線量測定装置は、前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々に関連するファラデーカップを含み、それぞれの前記ファラデーカップは、前記共通処理チャンバーに動作可能に結合されていることを特徴とする請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項18】
前記複数のイオンビームラインの各々に関連し、前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々を前記共通処理チャンバーから選択的に分離する複数の仕切弁を含むことを特徴とする請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項19】
前記複数のイオンビームラインアセンブリーの1つまたは複数は、リボン形ビームを用いたイオン注入装置からなることを特徴とする請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項20】
前記複数のイオンビームラインアセンブリーの各々は、前記共通処理チャンバーの上流に配置されたチューニング用ファラデーを含むことを特徴とする請求項14に記載のイオン注入システム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−81032(P2009−81032A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248999(P2007−248999)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(500266634)アクセリス テクノロジーズ インコーポレーテッド (101)
【Fターム(参考)】