説明

リポソーム、抗原、ポリヌクレオチド及び疎水性物質の連続相を含む担体を含む組成物

本発明は、抗原;リポソーム;polyI:Cポリヌクレオチド;及び疎水性物質の連続相を含む担体を含む組成物を提供する。前記組成物の製造方法及び使用方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年6月5日出願の米国特許仮出願第61/059,043号の利益及び優先権を主張する。
【0002】
本出願は、リポソーム、抗原、polyI:Cポリヌクレオチド及び疎水性物質の連続相を含む担体を含む組成物、ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のワクチンは、抗原、アジュバント及び製薬上許容される担体を含みうる。polyI:Cポリヌクレオチドがアジュバントとして有用であることは公知である。また、リポソームがワクチン組成物において有用であることも公知である(出願人らの取得した米国特許第6,793,923号参照)。しかし、出願人らの知る限り、当分野でワクチン組成物中で抗原、polyI:Cポリヌクレオチド、リポソーム及び疎水性担体を結合することを教示したものも示唆したものもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人らはここに、抗原、polyI:Cポリヌクレオチド、リポソーム及び疎水性物質の連続相を含む担体を含む組成物が、驚くことに、polyI:Cポリヌクレオチドを水性担体中に含有する従来のワクチン組成物か、又はリポソーム、疎水性担体及びミョウバンアジュバントを含む組成物よりも高い抗体力価及び高い割合の活性化又はメモリーCD8+T細胞をもたらし得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、一態様では、本発明は、(a)抗原;(b)リポソーム;(c)polyI:Cポリヌクレオチド;及び(d)疎水性物質の連続相を含む担体を含む組成物を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、組成物を製造するための方法を提供し、前記方法は、任意の順序で、(a)抗原;(b)リポソーム;(c)polyI:Cポリヌクレオチド;及び(d)疎水性物質の連続相を含む担体を結合することを含む。一実施形態では、抗原はリポソームの中に封入されている。一実施形態では、polyI:Cポリヌクレオチドはリポソームの中に封入されている。
【0007】
別の態様では、本発明は、上記の方法に従って調製された組成物を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、上記の組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、本方法は、被験体において抗原に対する抗体応答又は細胞性免疫応答を誘導するための方法である。
【0009】
本発明のその他の態様及び特徴は、以下の本発明の具体的な実施形態の記述を添付される図面と併せて再検討することで当業者に明らかとなる。
本発明の実施形態をほんの一例として説明する図を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】3つの群のマウス(n=9又は10)のワクチン接種の結果を示すグラフである。群1のマウスに、リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された30μlの用量中1μgのrHA及び4μgのpolyI:C(ワクチンB、本発明)を接種した。群2のマウスを、30μlの用量のリポソーム/ミョウバン/疎水性担体製剤中、1μgのrHA及び60μgのミョウバンを含むワクチンAで処置した。群3のマウスに、30μlの用量の対照ミョウバンワクチンあたり1μgのrHA及び60μgのミョウバンを接種した。本明細書に記載されるようにELISAで液性免疫応答を測定した。各処置群について、エンドポイント抗体力価のlog10値を平均し、各時点の標準偏差を算出した。スチューデントT検定を用いてP値を算出した。
【図2】2つの群のマウス(n=9又は10)のワクチン接種の結果を示すグラフである。群1のマウスに、リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された30μlの用量中1μgのrHA及び4μgのpolyI:C(ワクチンB、本発明)を接種した。群2のマウスを、30μlの用量の対照polyI:Cワクチンあたり1μgのrHA及び4μgのpolyI:Cで処置した。本明細書に記載されるようにELISAで液性免疫応答を測定した。各処置群について、エンドポイント抗体力価のlog10値を平均し、各時点の標準偏差を算出した。スチューデントT検定を用いてP値を算出した。
【図3】2つの群のマウス(n=8又は9)のワクチン接種の結果を示すグラフである。群1のマウスに、単回用量の、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された50μlの用量中1μgのrHA及び10μgのpolyI:C(ワクチンC、本発明)を接種した。群2のマウスを、50μlの用量の対照ミョウバンワクチンあたり1μgのrHA及び100μgのミョウバンで処置し、ワクチン接種後21日にマウスを追加免疫した。本明細書に記載されるようにELISAで液性免疫応答を測定した。各処置群について、エンドポイント抗体力価のlog10値を平均し、各時点の標準偏差を算出した。
【図4】リポソーム/polyI:C/油担体ワクチン中に処方されたrHA抗原によるワクチン接種の後の、増強された抗rHA抗体応答。2つの群のマウス(n=9又は10)を、次の通りワクチン接種した。群1のマウスに、リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された30μlの用量中1μgのrHA及び4μgのpolyI:C(ワクチンB、本発明)を接種した。群2のマウスを、ワクチンA、つまり30μlの用量のリポソーム/ミョウバン/疎水性担体製剤中、1μgのrHA及び60μgのミョウバンで処置した。本明細書に記載されるようにELISAで液性免疫応答を測定した。各処置群について、エンドポイント抗体力価のlog10値を平均し、各時点の標準偏差を算出した。スチューデントT検定を用いてP値を算出した。
【図5】リポソーム/polyI:C/油担体ワクチン中に処方されたrHA抗原によるワクチン接種の後の、増強された抗rHA抗体応答。2つの群のマウス(n=9又は10)を、次の通りワクチン接種した。群1のマウスに、リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された30μlの用量中1μgのrHA及び4μgのpolyI:C(ワクチンB、本発明)を接種した。群2のマウスを、30μlの用量の対照polyI:Cワクチンあたり1μgのrHA及び4μgのpolyI:Cで処置した。本明細書に記載されるようにELISAで液性免疫応答を測定した。各処置群について、エンドポイント抗体力価のlog10値を平均し、各時点の標準偏差を算出した。スチューデントT検定を用いてP値を算出した。
【図6】凍結乾燥リポソーム/polyI:C/油担体ワクチン中に処方されたrHA抗原によるワクチン接種の後の、増強された抗rHA抗体応答。2つの群のマウス(n=9又は10)を次の通り免疫した。群1のマウスに、単回用量の、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された50μlの用量中1.5μgのrHA及び12.5μgのpolyI:C(ワクチンD、本発明)を接種した。群2のマウスを、50μlの用量の対照ミョウバンワクチンあたり1.5μgのrHA及び100μgのミョウバンで処置し、ワクチン接種後28日(4週)にマウスを追加免疫した。本明細書に記載されるようにELISAで液性免疫応答を測定した。各処置群について、エンドポイント抗体力価のlog10値を平均し、各時点の標準偏差を算出した。スチューデントT検定を用いてP値を算出した。
【図7】ワクチン接種の後のCD8陽性(postive)T細胞集団内の抗原特異的CD8細胞の数。3つの群のBALB/cマウス(n=4)を、次の通りワクチン接種した。群1のマウスに、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された50μlの用量中1.5μgのrHA及び12.5μgのRNAに基づくpolyI:Cアジュバント(ワクチンD、本発明)を筋肉内に接種した。群2のマウスに、50μlのワクチンDを皮下に接種した。群3のマウスに、50μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)中、1.5μgのrHA及び100μgのImject Alumアジュバントを筋肉内に接種した。すべてのワクチンは追加免疫せずに一度に投与した。ワクチン接種後22日以内に、三色フローサイトメトリー分析を用いて動物の脾細胞において抗原特異的CD8+T細胞を検出した。細胞を、rHAの免疫優勢エピトープであるI9Lを有するH2−Ddに特異的な、抗CD8β−APC、抗CD19−FITC及びPE−ペンタマーで染色した。結果はCD8β陽性/CD19陰性細胞集団の集団中のペンタマー陽性細胞の平均の割合、+/−標準偏差で表される。ナイーブ細胞から単離された脾細胞で検出されたバックグラウンド染色を減算した。群3と比較して、p=<0.025、**p=<0.005。
【図8】本発明において処方される、rHAに対する単一のワクチン接種の後の赤血球凝集抑制(HAI)力価。1つの群のマウス及び1つの群のウサギ(n=5)を、次の通りワクチン接種した。マウスの群に、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された50μlの用量中0.5μgのrHA及び12μgのpolyI:C(ワクチンE、本発明)を接種した。ウサギの群を、ワクチンF(本発明)、つまり200μlの用量の凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤中2μgのrHA及び50μgのpolyI:Cで処置した。本明細書に記載されるように赤血球凝集抑制アッセイにより液性免疫応答を測定した(ワクチン接種より前に(ワクチン接種前)及び、接種後4週(ウサギ)又は5週(マウス))。各動物群について、HAI力価のlog10値を平均し、標準偏差を算出した。
【図9】リポソーム/polyI:C/油担体ワクチン中に処方されたβアミロイド及びF21Eペプチドの混合物でのワクチン接種の後の、増強された抗βアミロイド抗体応答。2つの群のマウス(n=9)を、次の通りワクチン接種した。群1のマウスに、リポソーム/ミョウバン/疎水性担体ワクチンとして処方された100μlの用量中10μgのβアミロイド、20μgのF21E及び200μgのミョウバン(ワクチンG)を接種した。群2のマウスを、リポソーム/polyI:C/疎水性担体として処方された100μlの用量あたり10μgのβアミロイド、20μgのF21E及び10μgのpolyI:C(ワクチンH、本発明)で処置した。本明細書に記載されるようにELISAで液性免疫応答を測定した。各処置群について、エンドポイント抗体力価のlog10値を平均し、各時点の標準偏差を算出した。スチューデントT検定を用いてP値を算出した。
【図10】リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤中に処方されたワクチンは、細胞性免疫応答及び液性免疫応答を上昇させることができる。2つの群のマウス(n=5)を、次の通りワクチン接種した。群1のマウスに、凍結乾燥リポソーム/polyI:C(高)/疎水性担体ワクチンとして処方された50μlの用量中0.5μgのrHA及び12μgのpolyI:C(ワクチンE、本発明)を接種した。群2のマウスを、凍結乾燥リポソーム/polyI:C(低)/疎水性担体として処方された50μlの用量あたり0.5μgのrHA及び2.5μgのpolyI:C(ワクチンI、本発明)で処置した。液性(IgG1)及び細胞性(IgG2A)免疫応答の指標を、本明細書に記載されるようにELISAで測定した。各処置群について、エンドポイント抗体力価のlog10値を平均し、各時点の標準偏差を算出した。
【図11】HPV16E7発現C3細胞を移植し、8日後に次の通りワクチン接種したC57BL/6マウスの平均腫瘍容積を示すグラフである。群1のマウスに、疎水性担体を含む乳濁液中で処方された、15μgのFP抗原及び150μgのRNAに基づくpolyI:Cを含有する100μl(対照乳濁液ワクチン)を接種した。群2のマウスに、リポソーム/polyI:C/疎水性担体中で処方された、15μgのFP抗原及び150μgのpolyI:Cを含有する100μl(ワクチンK、本発明)を接種した。群3のマウスには100μlのPBSのみを投与した。全ての群には8匹のマウスが含まれた。腫瘍サイズを移植後5週間、週に1回測定した。図11は、各群について算出した平均腫瘍容積+/−SEMを示す。P値はスチューデントT検定を用いて群1及び群2について算出した、p=<0.1、**p=<0.05。
【図12】HPV16E7発現C3細胞を移植し、5日後に次の通りワクチン接種したC57BL/6マウスの平均腫瘍容積を示すグラフである。群1のマウスに、リポソーム/polyI:C/疎水性担体中で処方された、10μgのFP抗原及び20μgのDNAに基づくpolyI:Cを含有する100μl(ワクチンL、本発明)を投与した。群2のマウスに、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体中で処方された、10μgのFP抗原及び20μgのDNAに基づくpolyI:Cを含有する50μl(ワクチンM、本発明)を投与した。群3のマウスに、凍結乾燥リポソーム/疎水性担体(アジュバント対照)中で処方された、10μgのFP抗原を含有する50μlを投与した。群4のマウスに、100μlのPBSのみを投与した。全ての群には十(10)匹のマウスが含まれた。腫瘍サイズを移植後5週間、週に1回測定した。図12は、各群について算出した平均腫瘍容積+/−SEMを示す。P値はスチューデントT検定を用いて群2及び群3について算出した、p=<0.05。
【図13】凍結乾燥リポソーム/polyI:C/油担体ワクチン中に処方されたrHA抗原によるワクチン接種の後の増強された抗rHA細胞応答。2つの群のマウス(n=9又は10)を次の通り免疫した。群1のマウスに、単回用量の、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンとして処方された50μlの用量中1.5μgのrHA及び12.5μgのpolyI:C(ワクチンD、本発明)を接種した。群2のマウスを、50μlの用量の対照ミョウバンワクチンあたり1.5μgのrHA及び100μgのミョウバンで処置し、マウスをワクチン接種後28日(4週)に追加免疫した。抗原特異的細胞応答を、H2−KdエピトープIYSTVASSLに特異的なCD8+T細胞のペンタマー染色、及びフローサイトメトリーにより測定した。記載されるように本発明によってワクチン接種したマウスは、持続性の抗原特異的細胞応答を生じた。スチューデントT検定を用いてP値を算出した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願は、リポソーム、抗原、polyI:Cポリヌクレオチド及び疎水性物質の連続相を含む担体を含む組成物ならびにそれらの使用に関する。
【0012】
抗原、polyI:Cポリヌクレオチド、リポソーム及び疎水性物質の連続相を含む担体を結合する本発明の組成物は、驚くことに、polyI:Cポリヌクレオチドを水性担体中に含有する従来のワクチン組成物か、又はリポソーム、疎水性担体及びミョウバンアジュバントを含む組成物よりも高い抗体力価をもたらした。
【0013】
本明細書の実施例1及び2に記載されるデータを表1に要約する:
【表1】

【0014】
上の表(表1)から分かることは、本発明の組成物(3)は、リポソームと疎水性担体の組合せ(1)か、又はpolyI:Cの使用(2)の相加作用よりも高い抗体力価をもたらすことである。(1)と(2)の相加作用は、対数化しない抗体力価の256,000+1,024,000=1,280,000となる。代わりに、(3)のミョウバンアジュバントをpolyI:Cに置き換えることにより、予想外に高い対数化しない抗体力価の8,192,000(予測した相加作用の6.4倍)が得られる。さらに、組成物(3)によって生じた抗体応答は長く続き、上記のより早い時点(ワクチン接種後4週)で観察された効果はワクチン接種後16週に維持された(実施例4及び5)。本明細書の実施例4及び5に記載されるデータを表2に要約する:
【表2】

【0015】
(1)及び(2)の相加作用は、対数化しない平均抗体力価の128,824+169,824=298,648となる。代わりに、(3)のミョウバンアジュバントをpolyI:Cに置き換えることにより、1,612,810(予測した相加作用の5.4倍)という予想外に高い対数化しない平均抗体力価が得られる。
【0016】
上記の組成物(3)で観察される結果は、抗原(rHA)、polyI:C、凍結乾燥リポソーム、及び疎水性担体からなる組成物を使用する別個の試験で2回実施され、実施例3に記載された。ワクチン接種後8週のこの組成物で観察される平均抗体力価は、その活性を増強するために2回送達される、標準的なミョウバンをアジュバントとした(alum-adjuvanted)ワクチンで観察される147,910の(対数化せず)平均力価と比較して、2,884,031(対数化せず)であった。この19.4倍の力価の平均増加は、記載される組成物の1回の免疫で観察された。
【0017】
polyI:C、リポソーム、及び疎水性担体を含有するワクチン組成物は、広範囲の抗原に対する抗体応答及び/又は細胞応答を生じる可能性を有する。実施例1から6ならびに実施例8及び9は、組成物の全ての成分を組み合わせた場合に、組換えタンパク質(rHA)又は短いペプチド(βアミロイド)に対して有意に高い抗体応答を起こす能力を実証する。これらの驚くほど高い抗体力価は、特にワクチン組成物中でpolyI:Cポリヌクレオチドを使用しない場合には観察されず(実施例1、4、及び9)、polyI:Cを単独で抗原とともに使用しているにもかかわらず、リポソーム及び疎水性担体の不在下でも、観察されなかった(実施例2及び5)。同様に、組成物の全ての成分の組合せは、公知のCTLエピトープを含有する組換えタンパク質又は短いペプチドに対して、実施例7及び実施例11〜13に説明される、有意により一層効果的かつより長く持続する細胞の免疫応答を生じた。著しい抗原特異的免疫応答は、少なくとも2つの免疫経路によって前記組成物で免疫する時に検出された(実施例7)。記載される本発明を用いて腫瘍増殖を制御することへの特異な有効性は、特に組成物中でpolyI:Cポリヌクレオチドを使用しない場合には観察されず(実施例12)、また、リポソームを使用しない場合には、polyI:Cポリヌクレオチド及び疎水性担体を抗原とともに使用したにもかかわらず、観察されなかった(実施例11)。記載される組成物の全ての成分(実施例6、7、10、及び13)を使用して、少なくとも1つの免疫によって頑丈かつ持続性の液性応答及び細胞応答を同時に起こす能力は、感染症及び癌を含む広い範囲の医学適用における組成物の特定の有用性を説明する。
【0018】
本明細書に記載される実施例の一群から、二以上の立体化学配置の、抗原、リポソーム、疎水性担体及びイノシン及びシトシン残基を含有するリボもしくはデオキシリボポリヌクレオチドからなるワクチン組成物が、異常に強い免疫応答を誘導することができることは明らかである。また、これらの実施例は、所望の組成物を製造する二以上の方法も記載する。
【0019】
抗原
本発明の組成物は1又はそれ以上の抗原を含む。本明細書において、用語「抗原」とは、抗体又はT細胞受容体に特異的に結合することのできる物質をさす。
【0020】
本発明の組成物において有用な抗原としては、限定されないが、ポリペプチド、微生物又はその部分、例えば生の、弱毒化された、不活化されたもしくは死滅した、細菌、ウイルス又は原生動物、あるいはその部分が挙げられる。
【0021】
本明細書及び請求項において、用語「抗原」にはまた、抗原として機能するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。核酸に基づくワクチン接種戦略は公知であり、この際、ポリヌクレオチドを含むワクチン組成物が被験体に投与される。ポリヌクレオチドによってコードされる抗原性ポリペプチドは、抗原性ポリペプチドが最終的に被験体に存在するように、ワクチン組成物自体がポリペプチドを含んでいたかのように、被験体で発現する。本発明の目的において、用語「抗原」は、文脈が指示する場合、抗原として機能するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。
【0022】
本発明において抗原として有用であり得るポリペプチド又はその断片としては、限定されないが、コレラトキソイド、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、B型肝炎表面抗原、血球凝集素、ノイラミニダーゼ、インフルエンザMタンパク質、PfHRP2、pLDH、アルドラーゼ、MSP1、MSP2、AMA1、Der−p−1、Der−f−1、アディポフィリン、AFP、AIM−2、ART−4、BAGE、αフェトタンパク質、BCL−2、Bcr−Abl、BING−4、CEA、CPSF、CT、サイクリンD1Ep−CAM、EphA2、EphA3、ELF−2、FGF−5、G250、ゴナドトロピン放出ホルモン、HER−2、腸カルボキシルエステラーゼ(iCE)、IL13Rα2、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MART−1、MART−2、M−CSF、MDM−2、MMP−2、MUC−1、NY−EOS−1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、p53、PBF、PRAME、PSA、PSMA、RAGE−1、RNF43、RU1、RU2AS、SART−1、SART−2、SART−3、SAGE−1、SCRN1、SOX2、SOX10、STEAP1、サバイビン(surviving)、テロメラーゼ、TGFβRII、TRAG−3、TRP−1、TRP−2、TERT及びWT1に由来するものが挙げられる。
【0023】
本発明において抗原として有用なウイルス又はその部分としては、限定されないが、牛痘ウイルス、ワクシニアウイルス、偽牛痘ウイルス、ヒトヘルペスウイルス1、ヒトヘルペスウイルス2、サイトメガロウイルス、ヒトアデノウイルスA〜F、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、オルトレオウイルス、ロタウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、ニューモウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、ハンタンウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、ポリオウイルス、ノロウイルス、フラビウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス及び水痘が挙げられる。
【0024】
本発明において抗原として有用な細菌又はその部分としては、限定されないが、炭疽菌、ブルセラ菌、カンジダ、クラミジア・ニューモニエ、クラミジア・シタッシ、コレラ、クロストリジウム・ボツリヌム、コクシジオイデス・イミティス、クリプトコッカス、ジフテリア、大腸菌O157:H7、腸管出血性大腸菌、毒素原性大腸菌、インフルエンザ菌、ヘリコバクター・ピロリ、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、髄膜炎菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、マイコバクテリウム、百日咳、肺炎、サルモネラ菌、赤痢菌、ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌及びエルシニア・エンテロコリチカが挙げられる。
【0025】
あるいは、抗原は、原生動物起源、例えばマラリアを引き起こす熱帯熱マラリア原虫のものであってもよい。
【0026】
用語「ポリペプチド」は、長さ(例えば、少なくとも6、8、10、12、14、16、18、又は20アミノ酸)又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)に関わらず、アミノ酸の任意の鎖を包含し、それには、例えば、天然のタンパク質、合成又は組換えポリペプチド及びペプチド、変性ポリペプチド及びペプチド、エピトープ、ハイブリッド分子、変異体、同族体、類似体、ペプトイド、ペプチドミメティクス、などが含まれる。そのため、変異体又は誘導体には、欠失(トランケーション及び断片を含む);挿入及び付加、例えば保存的置換、部位特異的変異及び対立遺伝子変異体;ならびにペプチドと共有結合している1又はそれ以上の非アミノアシル基(例えば、糖、脂質など)を有するペプトイドを含む修飾及び翻訳後修飾が含まれる。本明細書において、用語「保存されたアミノ酸置換」又は「保存的置換」とは、ペプチドの所定の位置での1つのアミノ酸でのもう一つのアミノ酸の置換をさし、ここで、置換は当該機能を実質的に失うことなく行われ得る。そのような変更を行う際に、同様のアミノ酸残基の置換は、側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、サイズ、電荷、疎水性、親水性などに基づいて行ってもよく、そのような置換は日常的な試験によりペプチドの機能へのそれらの影響についてアッセイすることができる。保存的置換の具体的な限定されない例としては、次の例が挙げられる。
元の残基 保存的置換
Ala Ser
Arg Lys
Asn Gln、His
Asp Glu
Cys Ser
Gln Asn
Glu Asp
His Asn;Gln
Ile Leu、Val
Leu Ile;Val
Lys Arg;Gln;Glu
Met Leu;Ile
Phe Met;Leu;Tyr
Ser Thr
Thr Ser
Trp Tyr
Tyr Trp;Phe
Val Ile;Leu
【0027】
好ましい抗原配列との実質的同一性を有するポリペプチド又はペプチドを使用してもよい。2つの配列は、最適に整列された場合(許容されるギャップを含む)にそれらが少なくとも約50%の配列同一性を共有するならば、又は、それらの配列が規定された機能モチーフを共有するならば、実質的同一性を有すると考えられる。代替実施形態では、最適に整列された配列は、特定の領域にわたって少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するならば、実質的に同一である(すなわち実質的同一性を有する)と考えられ得る。用語「同一性」とは、2つのポリペプチド分子間の配列類似性をさす。同一性は、整列された配列での各々の位置を比較することにより決定することができる。アミノ酸配列間の同一性の程度は、例えば、特定の領域にわたってそれらの配列が共有する位置での同一であるか又は匹敵するアミノ酸の数の関数である。同一性の比較のための配列の最適な整列は、当分野で公知のような多様なアルゴリズムを用いて行われてもよく、それには、http://clustalw.genome.ad.jpで利用可能なClustalWプログラム、Smith and Waterman, 1981, Adv. Appl. Math 2: 482の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman,1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性探索方法、ならびにこれらのアルゴリズムのコンピュータ化された実施(例えば、Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group、Madison、WI、U.S.A.中のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTAなど)が含まれる。配列同一性はまた、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-10に記載される、BLASTアルゴリズムを用いて(公開された初期設定を用いて)決定されてもよい。例えば、米国国立生物工学情報センターを通じて(インターネットのhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgiを通じて)利用可能な「BLAST2配列」ツールを用いてもよく、次の初期設定:expect threshold 10;word size 3;matrix BLOSUM62;gap costs existence 11、extension 1で「blastp」プログラムを選択する。もう一つの実施形態では、当業者は所与配列を容易かつ適当に整列させることができ、単なる目視検査により配列同一性及び/又は相同性を推定することができる。
【0028】
本発明を実行するために使用されるポリペプチド及びペプチドは、天然起源から単離されたものであってもよいし、合成されたものであってもよいし、又は組換え技術によって作製されたポリペプチドであってもよい。ペプチド及びタンパク質は、インビトロ又はインビボで組換えによって発現させることができる。本発明を実行するために使用されるポリペプチド及びペプチドは、当分野で公知の任意の方法を用いて作製及び単離されてもよい。本発明を実行するために使用されるポリペプチド及びペプチドはまた、当分野で周知の化学的方法を用いて全部又は一部を合成してもよい。例えば、Caruthers (1980) Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 215-223; Hom (1980) Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 225-232; Banga, A. K,Therapeutic Peptides and Proteins, Formulation, Processing and Delivery Systems (1995) Technomic Publishing Co., Lancaster, Paを参照されたい。例えば、ペプチド合成は様々な固相技術を用いて行うことができ(例えば、Roberge (1995) Science 269:202; Merrifield (1997) Methods Enzymol. 289:3-13参照)、自動合成は、例えば、ABI 431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を製造業者により提供される説明書に従って用いて実現することができる。
【0029】
一部の実施形態では、抗原は、例えば、約25%〜50%純粋な、約50%〜約75%純粋な、約75%〜約85%純粋な、約85%〜約90%純粋な、約90%〜約95%純粋な、約95%〜約98%純粋な、約98%〜約99%純粋な、又は99%を上回って純粋な、精製された抗原であってもよい。
【0030】
上記のように、用語「抗原」にはまた、抗原として機能するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。核酸に基づくワクチン接種戦略は公知であり、この際、ポリヌクレオチドを含むワクチン組成物が被験体に投与される。ポリヌクレオチドによってコードされる抗原性ポリペプチドは、抗原性ポリペプチドが最終的に被験体に存在するように、ワクチン組成物自体がポリペプチドを含んでいたかのように、被験体で発現する。本発明の目的において、用語「抗原」は、文脈が指示する場合、抗原として機能するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。
【0031】
本明細書及び請求項において、用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さ(例えば9、12、18、24、30、60、150、300、600、1500又はそれ以上のヌクレオチド)又は鎖数(例えば一本鎖又は二本鎖)のヌクレオチドの鎖を包含する。ポリヌクレオチドは、DNA(例えばゲノムDNA又はcDNA)又はRNA(例えばmRNA)あるいはそれらの組合せであってもよい。それらは天然に存在していてもよいし、合成されていてもよい(例えば化学的に合成されてもよい)。ポリヌクレオチドがヌクレオチド鎖中に1又はそれ以上の窒素含有塩基、ペントース糖又はリン酸基の修飾を含み得ることは企図される。そのような修飾は当分野で周知であり、例えばポリヌクレオチドの安定性の向上のためのものであり得る。
【0032】
ポリヌクレオチドは、様々な形態で送達されてもよい。一部の実施形態では、線状の形態であるか、又はプラスミド、例えば発現プラスミドなどに挿入された、裸のポリヌクレオチドが使用され得る。その他の実施形態では、ウイルスもしくは細菌ベクターなどの生ベクターが使用され得る。
【0033】
DNAのRNAへの転写及び/又はRNAのポリペプチドへの翻訳を助ける1又はそれ以上の調節配列が存在してもよい。場合によっては(ポリヌクレオチドがメッセンジャーRNA(mRNA)分子である場合など)、転写プロセスに関連する調節配列(例えばプロモーター)は必要でなく、タンパク質発現はプロモーターの不在下で達成され得る。当業者であれば、状況により必要とされる適した調節配列を含めることができる。
【0034】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは発現カセット中に存在し、発現カセットにおいてポリヌクレオチドは、本発明の組成物を投与する被験体においてポリヌクレオチドを発現させる調節配列と作動可能に連結されている。発現カセットの選択は、組成物を投与する被験体ならびに発現するポリペプチドに望まれる特徴によって決まる。
【0035】
一般に、発現カセットには、被験体において有効であり、構成的又は誘導性であるプロモーター;リボソーム結合部位;必要であれば、開始コドン(ATG);関心対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;停止コドン;及び所望により3’末端領域(翻訳及び/又は転写ターミネーター)が含まれる。シグナルペプチドをコードする領域などのさらなる配列を含めてもよい。関心対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、発現カセット中の他の調節配列のいずれかと相同であっても非相同であってもよい。関心対象のポリペプチドとともに発現する配列、例えばシグナルペプチドコード領域は、一般に、発現させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに隣接して位置し、適当なリーディングフレームに配置される。発現させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドによって単独で、又は発現させる任意の他の配列(例えばシグナルペプチド)とともに構成されるオープンリーディングフレームは、組成物を投与する被験体において転写及び翻訳が起こるように、プロモーターの制御下に配置される。
【0036】
関連実施形態では、抗原は、アレルゲンであってもよく、限定されないが、細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、多糖抱合体、多糖及びその他の分子のペプチド及び非ペプチド模倣物、小分子、脂質、糖脂質、及び植物、動物、真菌、昆虫、食物、薬物、粉塵、及びダニの炭水化物に由来してもよい。アレルゲンとしては、限定されるものではないが、環境空気アレルゲン;植物花粉(例えばブタクサ/季節性鼻アレルギー);雑草花粉アレルゲン;草花粉アレルゲン;ジョンソングラス;樹木花粉アレルゲン;ライグラス;クモ類アレルゲン(例えばチリダニアレルゲン);貯蔵ダニ(storage mite)アレルゲン;スギ花粉/季節性鼻アレルギー;カビ/菌類胞子アレルゲン;動物アレルゲン(例えば、イヌ、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ラット、マウスなどのアレルゲン);食物アレルゲン(例えば甲殻類;木の実;柑橘類;小麦粉;コーヒー);昆虫アレルゲン(例えばノミ、ゴキブリ);毒液:(ハチ類、スズメバチ(yellow jacket)、ミツバチ、カリバチ(wasp)、スズメバチ(hornet)、ヒアリ);細菌アレルゲン(例えば連鎖球菌抗原;回虫抗原などの寄生虫アレルゲン);ウイルス抗原;薬物アレルゲン(例えばペニシリン);ホルモン(例えばインスリン);酵素(例えばストレプトキナーゼ);及び、不完全抗原又はハプテンとして作用する能力のある薬物又は化学物質(例えば酸無水物及びイソシアネート)が挙げられる。
【0037】
polyI:Cポリヌクレオチド
polyI:Cポリヌクレオチドは、イノシン酸残基(I)及びシチジル酸残基(C)を含有する二重鎖ポリヌクレオチド分子(RNA又はDNA又はDNAとRNAの組合せのいずれか)であり、炎症性サイトカイン、例えばインターフェロンなどの産生を誘導する。それらは一般に、完全にシトシン含有ヌクレオチドからなる1本のストランド及び完全にイノシン含有ヌクレオチドからなる1本のストランドで構成されるが、その他の構成も可能である。例として、各々のストランドは、シトシン含有ヌクレオチドとイノシン含有ヌクレオチドの両方を含んでもよい。場合によっては、ストランドのいずれか又は両方は、1又はそれ以上の非シトシン又は非イノシンヌクレオチドをさらに含んでもよい。
【0038】
polyI:Cは、そのインターフェロン活性化能への影響なく16残基ごとに分割することができることが報告されている(Bobst, 1981)。さらに、ウリジン残基を12反復シチジル酸残基ごとに導入することによりミスマッチさせたpolyI:C分子のインターフェロン誘導能(Hendrix, 1993)は、最小の12残基の二重鎖polyI:C分子がインターフェロン産生を促進するために十分であることを示唆する。また、他の研究者らは、6〜12残基程度の小さい領域(二重鎖ポリヌクレオチドの0.5〜1回の螺旋回転に相当)が誘導プロセスを引き起こす能力があることをを示唆した(Greene, 1978)。合成によって作製する場合、polyI:Cポリヌクレオチドは、一般に約20又はそれ以上の残基長である(一般に22、24、26、28又は30残基長)。半合成によって作製する場合(例えば酵素を使用)、ストランドの長さは、500、1000又はそれ以上の残基であってもよい。
【0039】
polyI:Cは、ウイルスゲノムの模倣物の機能を果たし、インビボで免疫系を調節するために特に有用である。合成PolyI:polyCホモポリマーは、例えば静脈内又は筋肉内注射によりインビボで全身的に送達される場合、インターフェロンγを非特異的に誘導することにより自然免疫を増強することが報告されている(Krown 1985、Zhu 2007)。ポリイノシン酸及びポリシチジル酸ポリマーのいくつかの変異体は、数年にわたって記載され(de Clercq 1978、Bobst 1981、De Clercq 1975、Guschlbauer 1977、Fukui 1977、Johnston 1975、US3906092 1971、Kamath 2008、Ichinohe 2007)、その一部には共有結合的に修飾された残基の使用、リボ及びデオキシリボイノシン酸及びシチジル酸残基の使用、イノシン酸及びシチジル酸残基を含むホモポリマー及び代替コポリマーの使用、ならびにミスマッチポリマーを作出する特定の残基の導入が含まれていた。
【0040】
イノシン酸及びシチジル酸を含有する二重鎖ポリヌクレオチドの使用は、多数のウイルス性疾患(Kende 1987、Poast 2002、6,468,558 2002、Sarma 1969、Stephen 1977、Levy 1978)、癌(Durie 1985、Salazar 1996、Theriault 1986、Nakamura 1982、Talmadge 1985、Droller 1987)、多発性硬化症などの自己免疫疾患(Bever 1986)、及びマラリアなどのその他の感染症(Awasthi 1997、Puri 1996)の治療について報告されている。polyI:C分子の有効性は、一部の例では分子と正に帯電したポリ−リジン及びカルボキシメチル−セルロースとの錯体を形成し、ポリヌクレオチドをインビボでのヌクレアーゼ分解から効果的に保護することによるか(Stephen 1977、Levy 1985)、又はpolyI:Cと正に帯電した合成ペプチドとの錯体を形成することにより(Schellack 2006)さらに増強された。
【0041】
その自然免疫の非特異的エンハンサーとしての使用に加えて、polyI:Cはまた、ワクチン組成物中のアジュバントとしても有用である。自然免疫の増強は、おそらく、NK細胞、マクロファージ及び/又は樹状細胞を少なくとも一部分含む機構によって、増強された抗原特異的適応免疫を導き得る(Chirigos 1985、Salem 2006、Alexopoulou 2001、Trumpfheller 2008)。この文脈におけるpolyI:C分子の使用の証拠は、感染症を制御するための様々なワクチン研究(Houston 1976、Stephen 1977、Ichinohe 2007、Sloat 2008、Agger 2006、Padalko 2004)、及び多様なワクチン様式による癌の予防又は治療(Zhu 2007、Cui 2006、Salem 2005、Fujimura 2006、Llopiz 2008)が起源である。これらの研究は、特定の感染症抗原に対する増強された抗体応答から明らかなように、polyI:Cが液性応答を増強することを実証する。polyI:Cはまた抗原特異的細胞応答増強物質でもある(Zhu 2007、Zaks 2006、Cui 2006、Riedl 2008)。polyI:C分子のアジュバント作用は、少なくとも一部分、トル様受容体(TLR)例えばTLR3、TLR4、TLR7、TLR8及びTLR9などとのそれらの相互作用によってインターフェロンγを誘導することにより起こると考えられ(Alexopoulou 2001、Trumpfheller 2008、Schellack 2006、Riedl 2008)、TLR3は特に大部分のpolyI:C分子に関連する。また、証拠は、polyI:C分子が、少なくとも一部分、TLR以外の受容体、例えばRNAヘリカーゼレチノイン酸誘導タンパク質I(RIG−I)/黒色腫分化関連遺伝子5(MDA5)との相互作用によりその作用を発揮し得ることを示唆する。(Alexopoulou 2001、Yoneyama 2004、Gowen 2007、Dong 2008)。polyI:C分子の作用機序は、まだ完全に理解されていない。
【0042】
したがって、本明細書において、「polyI:C」又は「polyI:Cポリヌクレオチド」は、二本鎖ポリヌクレオチド分子(RNA又はDNA又はDNAとRNAの組合せ)であり、その各々のストランドは、少なくとも6つの隣接するイノシン酸もしくはシチジル酸残基、あるいは任意の順序でイノシン酸及びシチジル酸から選択される6つの隣接する残基(例えばIICIIC又はICICIC)を含み、哺乳類被験体において少なくとも1種類の炎症性サイトカイン、例えばインターフェロンなどの産生を誘導又は促進する能力がある。polyI:Cポリヌクレオチドは、一般に約8、10、12、14、16、18、20、22、24、25、28、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、500、1000又はそれ以上の残基の長さを有する。上限は重要であるとは考えない。好ましいpolyI:Cポリヌクレオチドの最小長は、約6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、又は30ヌクレオチドであってもよく、最大長は約1000、500、300、200、100、90、80、70、60、50、45又は40ヌクレオチドであってもよい。
【0043】
polyI:Cポリヌクレオチドの各々のストランドは、イノシン酸又はシチジル酸残基のホモポリマーであってもよいか、又は、各々のストランドは、イノシン酸及びシチジル酸残基を含有するヘテロポリマーであってもよい。いずれの場合も、ポリマーは、上記のように、6個のI、6個のC又は6個のI/C残基からなる少なくとも1つの隣接する領域があるならば、1又はそれ以上の非イノシン酸又は非シチジル酸残基(例えばウリジン)によって中断されてもよい。一般に、polyI:Cポリヌクレオチドの各々のストランドは、6個のI/C残基につき1以下の非I/C残基、より好ましくは、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28又は30個のI/C残基ごとに1以下の非I/C残基を含む。
【0044】
polyI:Cポリヌクレオチド中のイノシン酸又はシチジル酸(又はその他の)残基は、polyI:Cポリヌクレオチドの炎症性サイトカイン、例えばインターフェロンなどの産生を促進する能力が保持されるならば、当分野で公知のように誘導体化又は修飾されてもよい。誘導体又は修飾の限定されない例としては、例えばアジド修飾、フルオロ修飾、又はインビボで安定性を向上させるため天然のホスホジエステル結合の代わりにチオエステル(又は同様の)結合を使用することが挙げられる。polyI:Cポリヌクレオチドはまた、例えばそのインビボでの分解に対する抵抗性を増強するために、例えば、正に帯電したポリ−リジン及びカルボキシメチルセルロースとの、又は正に帯電した合成ペプチドとの分子の錯体形成により、修飾されてもよい。
【0045】
polyI:Cポリヌクレオチドは、一般に本発明の組成物中に組成物の単位用量あたり約0.001mg〜1mgの量で含まれる。
【0046】
リポソーム
リポソームは、封入された水性容積を含有する完全に閉じられた脂質二重層である。リポソームは、単層小胞(単一の二分子膜を有する)であってもよいし、多重膜二重層を特徴とする多層小胞であってもよく、各々の二重層は、隣の二重層と水層で分離されていてもいなくてもよい。リポソームの一般的な考察は、Gregoriadis G. Immunol. Today, 11 :89-97, 1990; 及び Frezard, F., Braz. J. Med. Bio. Res., 32:181-189, 1999に見出すことができる。本明細書及び請求項において、用語「リポソーム」は、上記のように全てのそのような小胞構造を包含することが意図され、それには、限定されないが、当分野で「ニオソーム」、「トランスファーソーム」及び「ビロソーム」として記載されるものが含まれる。
【0047】
本発明では、古細菌脂質から作られるリポソームを含むいずれのリポソームを使用してもよいが、特に有用なリポソームはリポソーム製剤中にリン脂質及び非エステル化コレステロールを使用する。コレステロールは、リポソームを安定化するために使用され、リポソームを安定化する任意のその他の化合物をコレステロールに置き換えてもよい。その他のリポソーム安定化化合物は当業者に公知である。例えば、飽和リン脂質は、安定性の増加を示す高い転移温度を有するリポソームを産生する。
【0048】
リポソームの調製で好ましく使用されるリン脂質は、ホスホグリセロール、ホスホエタノールアミン、ホスホセリン、ホスホコリン及びホスホイノシトールからなる群から選択される少なくとも1つの頭部基を有するリン脂質である。より好ましいものは、94〜100%ホスファチジルコリンである脂質を含むリポソームである。かかる脂質はレシチンホスホリポン(登録商標)90Gにおいて市販されている。非エステル化コレステロールもリポソーム製剤中で使用する場合、コレステロールはリン脂質の量の約10%に等しい量で使用する。コレステロール以外の化合物を使用してリポソームを安定化する場合、当業者は、組成物中に必要とされる量を容易に決定することができる。
【0049】
リポソーム組成物は、例えば、天然脂質、合成脂質、スフィンゴ脂質、エーテル脂質、ステロール、カルジオリピン、陽イオン性脂質ならびにポリ(エチレングリコール)及びその他のポリマーで修飾された脂質を使用することにより、得ることができる。合成脂質としては、次の脂肪酸成分:ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、アラキドイル、オレオイル、リノレオイル、エルコイル又はこれらの脂肪酸の組合せを挙げることができる。
【0050】
担体
組成物の担体は、疎水性物質、好ましくは液体疎水性物質の連続相を含む。連続相は、本質的に純粋な疎水性物質又は疎水性物質の混合物であってもよい。その上、担体は、該疎水性物質が連続相を構成するのであれば、疎水性物質中水型乳濁液又は疎水性物質混合物中水型乳濁液であってもよい。さらに、もう一つの実施形態では、担体はアジュバントとして機能することができる。
【0051】
本明細書に記載される組成物中で有用な疎水性物質は、製薬上及び/又は免疫学上許容される疎水性物質である。担体は液体であることが好ましいが、大気温度で液体でない特定の疎水性物質を例えば加温により液化してもよく、それも本発明において有用である。一実施形態では、疎水性担体は、リン酸緩衝生理食塩水/フロイント不完全アジュバント(PBS/FIA)乳濁液であってもよい。
【0052】
油又は油中水型乳濁液は、本発明での使用に特に適した担体である。油は製薬上及び/又は免疫学上許容されるべきである。適した油としては、例えば、鉱油(特に軽い又は低い粘度の鉱油、例えばDrakeol(登録商標)6VRなど)、植物油(例えば、ダイズ油)、堅果油(例えば、ピーナッツ油)、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、油は、鉱油溶液中のオレイン酸マンニドであり、Montanide(登録商標)ISA51として市販されている。動物性脂肪及び人工疎水性ポリマー材料、特に大気温度で液体であるか又は比較的簡単に液化できるもの、も使用してもよい。
【0053】
その他の成分
組成物は、当分野で公知のように、1又はそれ以上の製薬上許容されるアジュバント、賦形剤などをさらに含んでもよい。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA 1985) 及び1999年出版のThe United States Pharmacopoeia: The National Formulary (USP 24 NF19) published in 1999を参照されたい。
【0054】
用語「アジュバント」とは、抗原に対する免疫応答を強化する化合物又は混合物をさす。アジュバントは、抗原をゆっくりと放出する組織デポーとしての役割を果たすことができ、かつ免疫応答を非特異的に増強するリンパ様系活性化因子としての役割も果たすことができる(Hood et al, Immunology, 2d ed., Benjamin/Cummings: Menlo Park, C.A., 1984; see Wood and Williams, In: Nicholson, Webster and May (eds.), Textbook of Influenza, Chapter 23, pp. 317-323)。多くの場合、アジュバントの不在下での抗原単独による一次抗原投与は、液性免疫応答を引き出すことができない。
【0055】
適したアジュバントとしては、限定されるものではないが、ミョウバン、アルミニウムのその他の化合物、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、TiterMax(登録商標)、Ribi(登録商標)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、サポニン、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、コリネバクテリウム・パルバム、QS−21、フロイント完全アジュバント(FCA)、CpGなどのTLRアゴニストファミリーのアジュバント、フラジェリン(falgellin)、リポペプチド、ペプチドグリカン、イミダゾキノリン、一本鎖RNA、リポ多糖(LPS)、熱ショックタンパク質(HSP)、ならびにセラミド及びαGal−cerなどの誘導体が挙げられる。適したアジュバントにはまた、サイトカイン又はケモカインがそれらのポリペプチド又はDNAコード形で、例えば、限定されるものではないが、GM−CSF、TNF−α、IFN−γ、IL−2、IL−12、IL−15、IL−21などで含まれる。適したミョウバンアジュバントは、Imject Alum(登録商標)(Pierce,Rockford,IL)の商標名で販売されており、水酸化アルミニウム(45mg/ml)及び水酸化マグネシウム(40mg/ml)に不活性安定剤を加えたものの水溶液からなる。
【0056】
用いるアジュバントの量は、抗原の量及びアジュバントの種類によって決まる。当業者であれば、特定の適用に必要とされるアジュバントの量を容易に決定することができる。
【0057】
本発明の組成物を投与した被験体において引き出される免疫応答は、抗体又は細胞性免疫応答に対する免疫応答に偏って処方することができる。これは、Th1又はTh2応答を主に誘導する薬剤、例えばアジュバントなどを使用することにより達成されてもよい。例えば、CpG含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドはメチル化されていない)を用いて主にTh1応答を誘導することができる、従って細胞性応答に有利である。
【0058】
組成物
リポソームを作製する方法は当分野で周知である。例えば、両方とも既に引用したGregoriadis(1990)及びFrezard(1999)を参照されたい。リポソームを作製するための任意の適した方法を本発明の実践に用いてもよく、又は、リポソームを商業的供給源から入手してもよい。リポソームは一般に脂質二重層(例えばリン脂質及びコレステロール)を形成するリポソーム成分を水溶液で水和することにより調製され、その水溶液は、純水又は水に溶解した1又はそれ以上の成分の溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リン酸を含まない生理食塩水、又は任意のその他の生理学的に相溶性の水溶液であってもよい。
【0059】
一実施形態では、リポソーム成分又はリポソーム成分の混合物、例えばリン脂質(例えばホスホリポン(登録商標)90G)及びコレステロールは、有機溶媒、例えばクロロホルムとメタノールの混合物中で可溶化され、それに続いて濾過し(例えばPTFE0.2μmフィルタ)、乾燥させて(例えば回転蒸発により)溶媒を除去することができる。
【0060】
得られる脂質混合物の水和は、例えば脂質混合物を水溶液に注入することによるか又は脂質混合物と水溶液を超音波処理することにより達成することができる。リポソームの形成の間、リポソーム成分は、リポソーム成分を水和した水溶液の容積を取り囲む単一の二重層(単層)又は多重二重層(多重膜)を形成する。
【0061】
一部の実施形態では、リポソームは、次に、例えばフリーズドライ又は凍結乾燥により脱水される。
【0062】
リポソームは連続する疎水相を含む担体と組み合わされる。これは多様な方法で行うことができる。
【0063】
担体が疎水性物質単独又は疎水性物質の混合物からなる場合(例えば100%鉱油担体を使用)、リポソームは、単に疎水性物質と混合してもよいし、あるいは複数の疎水性物質が存在する場合は、それらのいずれか又はそれらの組合せと混合してもよい。
【0064】
代わりに、疎水性物質の連続相を含む担体が不連続の水相を含む場合、担体は一般に疎水相中水相の乳濁液、例えば油中水乳濁液の形態をとる。かかる組成物は、乳濁液を安定化させるため、及びリポソームの均一な分布を促進するために乳化剤を含んでもよい。この点で、乳化剤は、たとえ水を含まない担体を使用したとしても、担体中でのリポソームの均一な分布を促進するために有用であり得る。典型的な乳化剤としては、オレイン酸マンニド(Arlacel(商標)A)、レシチン、Tween(商標)80、ならびにSpans(商標)20、80、83及び85が挙げられる。一般に、疎水性物質の乳化剤に対する容積比(v/v)は、約5:1〜約15:1の範囲内であり、約10:1の比が好ましい。
【0065】
リポソームは完成した乳濁液に添加してもよいし、それらは乳化の前に水相か又は疎水相のいずれかに存在してもよい。
【0066】
抗原は、製剤プロセスの様々な異なる段階で導入することができる。1種類より多くの抗原を組成物の中に組み込んでもよい(例えば不活化ウイルス、弱毒生ウイルス、タンパク質又はポリペプチド)。
【0067】
一部の実施形態では、抗原は、リポソームの脂質二重層(例えばリン脂質及びコレステロール)を形成するために用いた成分を水和するために用いた水溶液中に存在する。この場合、抗原はリポソーム内に封入され、その水性の内部に存在する。得られるリポソームが洗浄されていないか又は乾燥している場合(例えば最終的に疎水性物質の連続相を含む担体と混合される残りの水溶液が存在するように)、さらなる抗原が最終生成物中のリポソームの外側に存在することも可能である。関連技術では、水溶液で水和する前に、抗原をリポソームの脂質二重層を形成するために使用する成分と混合することができる。
【0068】
代替アプローチでは、抗原は、その代わりに、担体をリポソームと結合する前、最中又は後に、疎水性物質の連続相を含む担体と混合してもよい。担体が乳濁液である場合、乳化の前に抗原を水相又は疎水相のいずれか又は両方と混合してもよい。あるいは、乳化後に抗原を担体と混合してもよい。
【0069】
抗原と担体を結合する技術は、リポソームの内部及び疎水性物質の連続相を含む担体中の両方に抗原が存在するように、上記のリポソーム中の抗原のカプセル封入と一緒に用いてもよい。
【0070】
上記の抗原を組成物の中に導入するための手順はpolyI:Cにも適用される。つまり、polyI:Cは、例えば任意の1又はそれ以上の:(1)リポソームの脂質二重層を形成するために使用する成分を水和するために使用する水溶液;(2)リポソームの脂質二重層を形成するために使用する成分;又は(3)担体をリポソームと結合する前、最中又は後に、疎水性物質の連続相を含む担体に導入されてもよい。担体が乳濁液である場合、乳化の前にpolyI:Cを水相又は疎水相のいずれか又は両方と混合してもよい。あるいは、乳化後にpolyI:Cを担体と混合してもよい。
【0071】
polyI:Cと担体を結合する技術は、polyI:Cがリポソームの内部及び疎水性物質の連続相を含む担体中の両方に存在するように、リポソーム中のpolyI:Cのカプセル封入と一緒に用いてもよい。
【0072】
polyI:Cは、抗原と一緒に、同じ処理段階で、又は別々に、異なる処理段階で組成物に組み込むことができる。例として、抗原及びpolyI:Cが両方ともにリポソームに封入されるように、抗原及びpolyI:Cは両方ともに脂質二重層形成リポソーム成分を水和するために使用する水溶液中に存在してもよい。あるいは、抗原をリポソームに封入し、polyI:Cを疎水性物質の連続相を含む担体と混合してもよい。多くのかかる組合せが可能であることは当然理解される。
【0073】
組成物が1又はそれ以上のアジュバントを含む場合、アジュバントは、抗原と一緒に、同じ処理段階で、又は別々に、異なる処理段階で組成物に組み込むことができる。例として、抗原及びアジュバントが両方ともにリポソームに封入されるように、抗原及びアジュバントは両方ともに脂質二重層形成リポソーム成分を水和するために使用する水溶液中に存在してもよい。あるいは、抗原をリポソームに封入し、アジュバントを疎水性物質の連続相を含む担体と混合してもよい。
【0074】
安定剤、例えば糖、抗酸化剤、又は、生物活性を維持するか又は化学安定性を向上させて、抗原の有効期間を延長する防腐剤など、アジュバント、リポソーム又は連続する疎水性担体を、かかる組成物に添加してもよい。
【0075】
一部の実施形態では、抗原/polyI:C混合物が使用されてもよく、その場合該抗原及びpolyI:Cポリヌクレオチドは同時に組成物に組み込まれる。「抗原/polyI:C混合物」とは、少なくとも組成物へ組み込むよりも前に抗原及びpolyI:Cポリヌクレオチドが同じ希釈剤中に存在する実施形態をさす。抗原/polyI:C混合物中の抗原及びpolyI:Cポリヌクレオチドは、必ずしも必要ではないが、例えば共有結合などによって化学的に結合されてもよい。
【0076】
同様に、一部の実施形態では、抗原/アジュバント混合物が使用されてもよく、その場合該抗原及びアジュバントは同時に組成物に組み込まれる。「抗原/アジュバント混合物」とは、少なくとも組成物へ組み込むよりも前に抗原及びアジュバントが同じ希釈剤中に存在する実施形態をさす。抗原/アジュバント混合物中の抗原及びアジュバントは、必ずしも必要ではないが、例えば共有結合などによって化学的に結合されてもよい。
【0077】
一部の実施形態では、疎水性物質の連続相を含む担体は、それ自体がアジュバント活性(adjuvanting-activity)を有してもよい。不完全フロイントアジュバントは、アジュバント作用(adjuvanting effect)をもつ疎水性担体の一例である。本明細書及び特許請求の範囲において、用語「アジュバント」が使用される場合、これは疎水性物質の連続相を含む担体により提供されるいずれかのアジュバント活性に加えてアジュバントが存在することを示すことが意図される。
【0078】
本明細書に記載される組成物は、経口、鼻腔、直腸又は非経口投与に適した形態に処方されてもよい。非経口投与には、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、経上皮、肺内、くも膜下腔内、及び局所の投与様式が含まれる。デポー作用を実現するために好ましい経路としては、筋肉内、皮下及び皮内投与が挙げられる。本発明の組成物が癌腫瘍の治療のためのものである実施形態では、組成物は、腫瘍又は腫瘍隣接部への直接注射による送達のために処方されてもよい。一部の実施形態では、組成物は、均一に腫瘍に又は腫瘍全体に送達されて体内分布を増強し、故に治療上の有用性を高め得る。
【0079】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、DNAに基づくpolyI:C、RNAに基づくpolyI:C又はRNA及びDNAに基づくpolyI:Cの混合物とともに処方されてもよい。これに関連して、RNA及びDNA混合物は、ヌクレオチドに(各々のストランドがDNAヌクレオチド及びRNAヌクレオチドを含むことができるように);ストランドに(各々の二重鎖ポリヌクレオチドが1本のDNAストランドと1本のRNAストランドを有するように);ポリヌクレオチドに(組成物がpolyI:Cポリヌクレオチドを含み、その各々は完全にRNAから構成されるか又は完全にDNAから構成されるように);又はそれらの組合せに関連する。
【0080】
その他の実施形態では、本発明の組成物は、T細胞エピトープ又はB細胞エピトープと組み合わせて使用するために処方されてもよい。T細胞エピトープは、普遍的T細胞エピトープであってもよく、B細胞エピトープは、普遍的B細胞エピトープであってもよい。本明細書において、「普遍的エピトープ」は、広く認識される任意のエピトープ、例えば、多数の系の動物のT細胞又はB細胞であってもよい。一実施形態では、T細胞エピトープは、破傷風トキソイドペプチド、例えばF21Eなどであってもよい。もう一つの実施形態では、T細胞エピトープは、PADRE、普遍的ヘルパーT細胞エピトープであってもよい。本発明の状況での使用に適し得るその他の普遍的エピトープは当業者に公知であり、通常の技法を用いて容易に同定することができる。
【0081】
関連実施形態では、本発明の組成物はpolyI:Cポリヌクレオチド及び抗原を含み、ここで、polyI:Cポリヌクレオチド及び抗原の存在は重量又は分子数に対して、1:1,000未満、1:900未満、1:800未満、1:700未満、1:500未満、1:400未満、1:300未満、1:200未満、1:100未満、1:50未満、1:10未満、1:5未満、1:2未満、約1:1、2:1より大きい、5:1より大きい、10:1より大きい、50:1より大きい、100:1より大きい、200:1より大きい、300:1より大きい、400:1より大きい、500:1より大きい、600:1より大きい、700:1より大きい、800:1より大きい、900:1より大きい、1,000:1より大きい比である。
【0082】
最適な免疫応答を誘発するためのpolyI:Cポリヌクレオチドの抗原に対する最適量は、多数の要素によって決まり、それには、限定されないが、組成物、疾患、被験体が含まれ、かつ、例えば、宿主における抗体力価及びその他の免疫原性応答の観察を含む、標準的な研究を用いて当業者により容易に確認することができる。
【0083】
キット及び試薬
本発明は、所望により使用者にキットとして提供される。例えば、本発明のキットは1又はそれ以上の本発明の組成物を含む。キットは、1又はそれ以上の追加の試薬、包装材料、キットの成分を保持するための容器、及び、キット成分の好ましい使用方法を詳述する説明書一式又はユーザーマニュアルをさらに含んでもよい。
【0084】
使用方法
本発明は、抗原を被験体に投与することが望まれるあらゆる場合において適用が見出される。被験体は、脊椎動物、例えば魚類、鳥類又は哺乳類、好ましくはヒトなどであってもよい。
【0085】
一部の実施形態では、本発明の組成物は抗原に対する抗体応答を誘発及び/又は増強するために被験体に投与されてもよい。
【0086】
本明細書において、免疫応答を「誘発する」とは、免疫応答を誘導する、及び/又は可能にすることである。本明細書において、免疫応答を「増強する」とは、従前の免疫応答状態、例えば、本発明の組成物の投与前と比較して、宿主の利益のために免疫応答を高め、改善し又は強化することである。
【0087】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子断片により実質的に又は部分的にコードされる1又はそれ以上のポリペプチドを含むタンパク質である。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κ又はλとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεとして分類され、それは次に免疫グロブリンのクラス、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEをそれぞれ規定する。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、4つのポリペプチドを含むタンパク質からなる。各々の抗体構造単位は、2本の同一ポリペプチド鎖対で構成され、各々が1本の「軽」鎖及び1本の「重」鎖を有する。各々の鎖のN末端は、抗原認識を主に担う可変領域を規定する。抗体構造単位(例えばIgA及びIgMクラスのもの)も、例えばJ鎖ポリペプチドと会合しているIgMペンタマーのように、相互に及びさらなるポリペプチド鎖と集まってオリゴマー形態を構築することができる。
【0088】
抗体は、Bリンパ球(B細胞)と呼ばれる白血球のサブセットの抗原特異的糖タンパク質産物である。抗原とB細胞の表面に発現した抗体との結合により、活性化され、有糸分裂を受け、抗原特異的抗体の合成及び分泌に特化した形質細胞に最終分化する、B細胞の刺激を含む抗体応答を誘導することができる。
【0089】
本明細書において、用語「抗体応答」とは、被験体の身体への抗原の導入に応答して被験体の身体において抗原特異的抗体の量が増加することをさす。
【0090】
抗体応答を評価する一方法は、特定の抗原に反応性の抗体の力価を測定することである。これは、多様な当分野で公知の方法、例えば動物から得た抗体含有物質の酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などを用いて行うことができる。例えば、特定の抗原に結合する血清抗体の力価は、抗原への曝露前及び曝露後の両方の被験体において測定され得る。抗原曝露後の抗原特異的抗体の力価の統計上有意な増加は、被験体が抗原に対する抗体応答を開始したことを示す。
【0091】
抗原特異的抗体の存在を検出するために用いることのできるその他のアッセイとしては、限定されないが、免疫学的アッセイ(例えば放射免疫アッセイ(RIA))、免疫沈降アッセイ、及びタンパク質ブロット(例えばウエスタンブロット)アッセイ;及び中和アッセイ(例えば、インビトロ又はインビボアッセイでのウイルス感染性の中和)が挙げられる。
【0092】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、抗原に対する細胞性免疫応答を誘発及び/又は増強するために被験体に投与することができる。本明細書において、用語「細胞性免疫応答」とは、被験体の身体への抗原の導入に応答して、被験体の身体中の抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、又はサイトカインの量が増加することをさす。
【0093】
歴史的に、免疫系は2つに分類された:体液性免疫(免疫の保護機能が体液(細胞を含まない、抗体を含む体液又は血清)で見出されたため)及び細胞性免疫(免疫の保護機能が細胞に関連していたため)である。細胞性免疫は、「非自己」抗原に応答して、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK)、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の活性化、及び様々なサイトカインの放出を伴う免疫応答である。細胞性免疫は、適応免疫応答の重要な構成要素であり、細胞による抗原提示細胞、例えば樹状細胞、Bリンパ球及び、程度は低いがマクロファージとの相互作用を通じての抗原認識を受けて、身体は様々な機構、例えば:
1.外来抗原のエピトープをその表面に提示する体細胞、例えばウイルス感染細胞、細胞内細菌を有する細胞、及び腫瘍抗原を提示する癌細胞においてアポトーシスを誘導する能力のある抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を活性化する機構;
2.マクロファージ及びナチュラルキラー細胞を活性化して、それらが細胞内病原体を破壊できるようにする機構;及び
3.細胞を刺激して、適応免疫応答及び自然免疫応答に関与するその他の細胞の機能に影響を及ぼす多様なサイトカインを分泌する機構
から保護される。
【0094】
細胞性免疫はウイルス感染細胞を除去するのに最も効果的であるが、真菌、原生動物、癌、及び細胞内細菌に対する防御にも関与する。また、それは移植拒絶においても重要な役割を果たす。
【0095】
ワクチン接種後の細胞性免疫応答の検出
細胞性免疫は、様々な細胞種の関与を伴い、異なる機構によって媒介されるので、いくつかの方法を用いてワクチン接種後の免疫性の誘導を実証することができる。これらは、i)特異的抗原提示細胞;ii)特異的エフェクター細胞及びそれらの機能、及びiii)可溶性メディエーター、例えばサイトカインなどの放出の検出:に広く分類することができる。
【0096】
i)抗原提示細胞:樹状細胞及びB細胞(及び程度は低いがマクロファージ)にはT細胞の活性化の増強を可能にする特別な免疫賦活性受容体が備わっており、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)と名付けられる。これらの免疫賦活性分子(共刺激分子とも呼ばれる)は、感染又はワクチン接種後、エフェクター細胞、例えばCD4及びCD8細胞傷害性T細胞などへの抗原提示のプロセスの間にこれらの細胞で上方制御される。かかる共刺激分子(例えばCD80、CD86、MHCクラスI又はMHCクラスIIなど)は、APCを特異的に同定する抗体(例えば樹状細胞に対するCD11cなど)とともに、これらの分子に対して産生された蛍光色素共役抗体を用いるフローサイトメトリーを使用することにより検出することができる。
【0097】
ii)細胞傷害性T細胞:(Tc、キラーT細胞、又は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)としても公知)は、T細胞のサブグループであり、ウイルス(及びその他の病原体)に感染したか、又は腫瘍抗原を発現している細胞の死を誘導する。これらのCTLは、細胞表面に特定の外来分子又は異常分子を有する他の細胞を直接攻撃する。かかる細胞傷害性の能力は、インビトロ細胞溶解アッセイ(クロム放出アッセイ)を用いて検出することができる。従って、適応的細胞性免疫の誘導は、かかる細胞傷害性T細胞の存在により実証することができ、この際、抗原を負荷した場合に標的細胞はワクチン接種又は感染後にインビボで産生される特異的CTLにより溶解される。
【0098】
ナイーブ細胞傷害性T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)がペプチドに結合したMHCクラスI分子と強く相互作用する時に活性化する。この親和性は抗原/MHC複合体の種類及び配向に依存し、CTLと感染細胞を一緒に結びつけておくものである。ひとたび活性化するとCTLはクローン増殖と呼ばれるプロセスを受け、そこでCTLは機能性を得、急速に分裂して、「武装した」エフェクター細胞の軍隊を産生する。活性化したCTLは、次に、その特有のMHCクラスI+ペプチドを有する細胞を探して全身を移動する。これは、フローサイトメトリーアッセイにおいてペプチド−MHCクラスI四量体を用いることによりかかるCTLをインビトロで同定するために使用することができる。
【0099】
これらの感染もしくは機能障害性体細胞に曝露されると、エフェクターCTLは、パーフォリン及びグラニュライシン(標的細胞の細胞膜に孔を形成し、イオン及び水を感染細胞に流入させ、その細胞をバーストさせるか又は溶解する細胞毒素)を放出する。CTLは、グランザイム(孔を経由して細胞に侵入してアポトーシス(細胞死)を誘導するセリンプロテアーゼ)を放出する。CTLからのこれらの分子の放出は、ワクチン接種後の細胞の免疫応答の誘導の成功の尺度として用いることができる。これは、CTLを定量的に測定することのできる酵素結合免疫吸着(immunosorbant)測定法(ELISA)又は酵素結合イムノスポットアッセイ(ELISPOT)により行うことができる。CTLも重要なサイトカイン、例えばIFN−γを産生する能力があるので、IFN−γ産生CD8細胞の定量的測定は、ELISPOTにより、かつ、これらの細胞での細胞内IFN−γのフローサイトメトリー測定により達成することができる。
【0100】
CD4+「ヘルパー」T細胞:CD4+リンパ球すなわちヘルパーT細胞は免疫応答メディエーターであり、適応免疫応答の能力を確立及び最大化する際に重要な役割を果たす。これらの細胞は細胞傷害活性又は食作用活性を持たない;さらに、感染細胞を死滅させることも病原体を取り除くこともできないが、他の細胞にこれらの任務を行うよう命令することによって本質的に免疫応答を「管理する」。Th1及びTh2と名付けられた、2種類のエフェクターCD4+Tヘルパー細胞応答をプロフェッショナルAPCにより誘導することができ、各々は異なる種類の病原体を排除するよう設計されている。
【0101】
ヘルパーT細胞は、クラスII MHC分子に結合した抗原を認識するT細胞受容体(TCR)を発現する。ナイーブヘルパーT細胞の活性化は、ヘルパーT細胞にサイトカインを放出させ、そのサイトカインはヘルパーT細胞を活性化させたAPCを含む多くの細胞種の活性に影響を及ぼす。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞よりもはるかに穏やかな活性化刺激を必要とする。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性細胞を活性化させるのを「助ける(help)」特別の(extra)シグナルをもたらすことができる。Th1及びTh2と名付けられた、2種類のエフェクターCD4+Tヘルパー細胞応答をプロフェッショナルAPCにより誘導することができ、各々は異なる種類の病原体を排除するよう設計されている。これら2つのTh細胞集団は、産生するエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンの点で異なる。一般に、Th1細胞は、マクロファージ及び細胞傷害性T細胞の活性化により細胞の免疫応答を補助する;一方、Th2細胞は、形質細胞への変換のためのB細胞の刺激により、かつ抗体の形成により液性免疫応答を促進する。例えば、Th1細胞により調節される応答は、マウスにおいてIgG2a及びIgG2b(ヒトにおいてIgG1及びIgG3)を誘導し、抗原に対する細胞性免疫応答を好む可能性がある。抗原に対するIgG応答がTh2型細胞により調節される場合、それは主にマウスにおけるIgG1(ヒトにおけるIgG2)の産生を増強するであろう。Th1又はTh2応答に関連するサイトカインの程度(measure)は、首尾よいワクチン接種の尺度(measure)となる。これは、Th1サイトカイン、例えばIFN−γ、IL−2、IL−12、TNF−αなど、又はTh2サイトカイン、例えば数ある中でもIL−4、IL−5、IL10のために設計された特異的ELISAにより達成することができる。
【0102】
iii)サイトカインの測定:所属リンパ節からの放出は免疫の成功の良い指標となる。抗原提示ならびにAPC及び免疫エフェクター細胞、例えばCD4及びCD8T細胞の成熟の結果として、数種類のサイトカインがリンパ節細胞により放出される。これらのLNCをインビトロで抗原の存在下で培養することにより、特定の重要なサイトカイン、例えばIFN−γ、IL−2、IL−12、TNF−α及びGM−CSFなどであれば、放出を測定することにより抗原特異的免疫応答を検出することができる。これは、ELISAにより培養上清及び標準品として組換えサイトカインを用いて行うことができる。
【0103】
免疫の成功は、当業者に公知の多数の方法で決定することができ、それには、限定されるものではないが、機能性抗体を検出するための赤血球凝集抑制(HAI)及び血清中和阻害アッセイ;ワクチン接種した被験体に関連する病原体を負荷してワクチン接種の有効性を決定する負荷試験(challenge studies);及び、例えば活性化リンパ球又は記憶リンパ球の同定において特異的細胞表面マーカーを発現する細胞の集団を決定する、蛍光活性化セルソーター(FACS)の使用が挙げられる。当業者はまた、免疫が本発明の組成物により抗体及び/又は細胞性免疫応答を誘発したかどうかを、その他の公知の方法を用いて決定してもよい。例えば、Current Protocols in Immunology Coligan et al., ed. (Wiley Interscience, 2007)を参照されたい。
【0104】
さらなる実施形態では、本発明の組成物を被験体に投与して、抗原に対する抗体及び細胞性免疫応答を誘発する、及び/又は増強することができる。
【0105】
本発明は、抗原の投与による予防及び/又は治療に感受性の高いあらゆる疾患の予防及び治療に広い適用が見出される。本発明の代表的な適用としては、癌の治療及び予防、遺伝子療法、アジュバント療法、感染症の治療及び予防、アレルギーの治療及び予防、自己免疫疾患の治療及び予防、ニューロン変性性疾患の治療、及びアテローム性動脈硬化症の治療、薬物依存の治療及び予防、疾患の治療及び予防のためのホルモン制御、避妊を目的とする生物学的プロセスの制御が挙げられる。
【0106】
疾患の予防又は治療には、臨床結果を含む、有益であるか又は望ましい結果を得ることが含まれる。有益であるか又は望ましい臨床結果には、限定されるものではないが、1又はそれ以上の症状又は状態の軽減又は寛解、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化、疾患の発症の予防、疾患の転移の予防、疾患の進行の遅延又は緩徐化、疾患の発症の遅延又は緩徐化、病原体に対する防御免疫の付与、ならびに疾患状態の寛解又は緩和が含まれる。予防又は治療はまた、治療の不在下で予測される以上に患者の生存を延長させることも意味し得、また、疾患の進行を一時的に阻害することも意味し得るが、より好ましくは、疾患の発生を予防することを含む(例えば被験体において感染を予防することなどによって)。
【0107】
当業者は、所望の結果を達成するために、任意の特定の適用に適した治療計画、投与経路、投薬量などを決定することができる。考慮され得る要因としては、例えば:抗原の性質;予防又は治療される疾患状態;被験体の年齢、物理的状態、体重、性別及び食事;ならびにその他の臨床要因が挙げられる。例えば、"Vaccine Handbook", edited by the Researcher's Associates (Gaku-yuu-kai) of The National Institute of Health (1994); "Manual of Prophylactic Inoculation, 8th edition", edited by Mikio Kimura, Munehiro Hirayama, and Harumi Sakai, Kindai Shuppan (2000); "Minimum Requirements for Biological Products", edited by the Association of Biologicals Manufacturers of Japan (1993)を参照されたい。
【0108】
免疫応答
本発明の組成物を用いて、組成物中に処方された抗原に対する抗体応答及び/又は細胞性免疫応答を、それを必要とする被験体において誘導することができる。免疫応答は、任意の抗原に対して、及び/又はそれを発現する細胞に対して、それを必要とする被験体において誘発及び/又は増強させることができる。従って、本発明の実施形態では、組成物は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、アレルゲン又は腫瘍細胞に由来する抗原を含んでもよく、かつ、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、アレルゲン又は腫瘍細胞によりそれぞれ引き起こされる疾患の治療及び/又は予防に使用するために処方されてもよい。
【0109】
本発明の組成物は、それを必要とする被験体において癌の治療及び/又は予防に使用するために適し得る。被験体は、癌を有するか、又は癌を発症するリスクがあり得る。本発明の組成物の使用又は投与により治療及び/又は予防することのできる癌としては、限定されないが、癌腫、腺癌、リンパ腫、白血病、肉腫、芽細胞腫、骨髄腫、及び胚細胞腫瘍が挙げられる。一実施形態では、癌は、病原体、例えばウイルスにより引き起こされ得る。癌の発症に関係のあるウイルスは当業者に公知であり、それには、限定されるものではないが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、John Cunninghamウイルス(JCV)、ヒト疱疹ウイルス8、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス、C型肝炎ウイルス及びヒトT細胞白血病ウイルス−1が挙げられる。本発明の組成物は、癌の治療か又は予防のいずれかのために、例えば、癌の重篤度の低下又は癌再発の予防において使用することができる。本発明の組成物から利益を受ける可能性のある癌としては、1又はそれ以上の腫瘍特異的抗原を発現する任意の悪性細胞が挙げられる。
【0110】
本発明の組成物は、それを必要とする被験体においてウイルス感染の治療及び/又は予防に使用するために適し得る。被験体は、ウイルスに感染しているか、又はウイルス感染を発症するリスクがあり得る。本発明の組成物の使用又は投与により治療及び/又は予防することのできるウイルス感染としては、限定されないが、牛痘ウイルス、ワクシニアウイルス、偽牛痘ウイルス、ヒトヘルペスウイルス1、ヒトヘルペスウイルス2、サイトメガロウイルス、ヒトアデノウイルスA〜F、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、オルトレオウイルス、ロタウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、ニューモウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、ハンタンウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、ポリオウイルス、ノロウイルス、フラビウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス及び水痘が挙げられる。
【0111】
一実施形態では、本発明の組成物は、それを必要とする被験体においてインフルエンザウイルス感染を治療及び/又は予防するために使用することができる。インフルエンザは、オルトミクソウイルス科の一本鎖RNAウイルスであり、多くの場合、ウイルス粒子の外側にある2つの大型の糖タンパク質、血球凝集素(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)に基づいて特徴付けられる。インフルエンザAの多数のHAサブタイプが同定されている(Kawaoka et al., Virology (1990) 179:759-767; Webster et al., "Antigenic variation among type A influenza viruses," p. 127-168. In: P. Palese and D. W. Kingsbury (ed.), Genetics of influenza viruses. Springer-Verlag, New York)。
【0112】
本発明の組成物は、それを必要とする被験体において神経変性疾患の治療及び/又は予防に使用するために適し得る(この際、神経変性疾患は抗原の発現に関連している)。被験体は、神経変性疾患を有するか、又は神経変性疾患を発症するリスクがあり得る。本発明の組成物の使用又は投与により治療及び/又は予防することのできる神経変性疾患としては、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられる。
【0113】
一実施形態では、本発明の組成物は、それを必要とする被験体においてアルツハイマー病を治療及び/又は予防するために使用することができる。アルツハイマー病は、アルツハイマー病の患者の脳内のβアミロイド斑及び/又はタウタンパク質の連合を特徴とする(例えば、Goedert and Spillantini, Science, 314: 777-781, 2006参照)。単純ヘルペスウイルス1型も、高感受性型のアポE遺伝子を有する人々において原因となる役割を果たすことが提唱されている(Itzhaki and Wozniak, J Alzheimers Dis 13: 393-405, 2008)。
【0114】
本発明の組成物を用いて投与又は治療される被験体は、対照組成物で治療した被験体と比較して、抗原に対する抗体及び/又は細胞性免疫応答の増加をもたらし得る。本明細書において、「対照組成物」とは、特許請求される組成物の少なくとも1つの成分も含まないあらゆる組成物をさし得る。従って、対照組成物は、1)抗原、2)リポソーム、3)polyI:C又は4)疎水性担体の少なくとも1つも含まない。一実施形態では、対照組成物は、polyI:Cを含まない。その他の実施形態では、対照組成物は、polyI:Cの代わりにミョウバンを含み得る。
【0115】
本発明の組成物を用いて投与又は治療される被験体は、対照組成物で治療した被験体と比較して、少なくとも1.50倍、少なくとも1.75倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、又は少なくとも5倍大きい抗体免疫応答を誘発することができる。一実施形態では、本発明の組成物で治療した被験体の血清の抗体力価(log10値に関して表される)は、対照組成物で治療した被験体のものよりも、少なくとも0.05、少なくとも0.10、少なくとも0.15、少なくとも0.20、少なくとも0.25又は少なくとも0.30大きい。
【0116】
本発明の組成物を用いて投与又は治療される被験体は、対照組成物で治療した被験体と比較して、少なくとも1.50倍、少なくとも1.75倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、又は少なくとも5倍大きい細胞性免疫応答を誘発することができる。
【0117】
本発明の組成物を用いて投与又は治療される被験体は、対照組成物で治療した被験体と比較して、少なくとも1.50倍、少なくとも1.75倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、又は少なくとも5倍大きいメモリーT細胞集団を誘発することができる。
【0118】
本発明の組成物を用いて投与又は治療される被験体は、対照組成物で治療した被験体と比較して、被験体において腫瘍の発生を予防し、及び/又は腫瘍の発症を遅延させることができる。
【0119】
以下の限定されない例により、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0120】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌CD1マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0121】
H5N1組換え赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質は、約72,000ダルトンの分子量を有し、H5N1インフルエンザウイルスの表面に存在する抗原性タンパク質である、赤血球凝集素糖タンパク質に相当する。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、30μlの用量あたり1μgで使用した。
【0122】
ワクチンの有効性を、免疫動物の血清中の抗原特異的抗体レベルの検出を可能にする方法である酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により評価した。免疫マウスから定期的な間隔で(例えば4週間ごとに)採取した血清でELISAを行うことは、所与ワクチン製剤に対する抗体応答をモニターするために有用である。手短に言えば、96ウェルマイクロタイタープレートを、抗原(rHA、1μg/ml)で4℃にて一晩コートし、3%ゼラチンで30分間ブロックし、その後に、一般に1/2000の希釈から始める血清の段階希釈とともに4℃にて一晩インキュベートする。第二の試薬(アルカリホスファターゼと共役したタンパク質G、EMD chemicals,Gibbstown,NJ,USA)を、次に各ウェルに1/500希釈で1時間37℃にて添加する。1mg/ml 4−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩六水和物(Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Switzerland)を含有する溶液とともに60分インキュベートした後、各ウェルの405nm吸光度をマイクロタイタープレートリーダー(ASYS Hitech GmbH,Austria)を用いて測定する。エンドポイント力価は、Frey A.らに記載されるように算出する(Journal of Immunological Methods, 1998, 221 :35-41)。算出した力価は、ナイーブ非免疫対照マウスからの血清試料に対して免疫マウスからの血清試料に統計上有意な吸光度の増加が観察される最大希釈を表す。力価は、エンドポイント希釈のlog10値として表される。
【0123】
本明細書に記載されるワクチンを処方するため、S100レシチンとコレステロールの10:1 w:wの均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)を、rHA溶液の存在下リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で水和して封入されたrHAを含むリポソームを形成した。手短に述べると、33μgのrHAを最初に300μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に懸濁し、次いで132mgのS100レシチン/コレステロール混合物に添加して、rHA抗原を封入する約450μlのリポソーム懸濁液を形成した。リポソーム調製物は、200nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)に材料を通過させることにより押出した。rHAを含有するリポソーム懸濁液450μlごとに、2mgのImject Alumアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。500μlのリポソーム/抗原/アジュバント懸濁液ごとに、フロイント不完全アジュバントと等価の等容積の鉱油担体(Seppic,Franceにより供給されるMontanide(商標)ISA51)を添加して、乳濁液の水相の中に含まれるリポソーム懸濁液及び連続する疎水相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、ミョウバンアジュバント、及び鉱油担体を含有する上記乳濁液30μlからなるものであった。このワクチン製剤を、リポソーム/ミョウバン/疎水性担体と称する。
【0124】
本発明に相当するワクチンを処方するため、上記と同じ手順を、以下を除いて使用した:rHAを封入しているリポソームの形成に続いて、かつ、リポソーム懸濁液を200nmポリカーボネート膜を通じて押出した後、133μgのpolyI:Cアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)を、450μlのリポソームごとに添加した。500μlのリポソーム/抗原/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Montanide(商標)ISA51、Seppic,France)を添加して、乳濁液の水相中に含まれるリポソーム懸濁液及び連続相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体を含有する上記乳濁液30μlからなるものであった。この特定の製剤を、リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0125】
上記の2種類の乳濁液製剤の有効性を、30μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中1μgのrHA及び60μgのミョウバンアジュバントからなる対照ワクチンの有効性と比較した。2つの群のマウス(1群あたり9又は10匹のマウス)に、リポソームワクチン製剤を1回(追加免疫なし)、次の通り筋肉内注射した:群1のマウスに、上記のように30μlのリポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された1μgのrHA抗原を含むワクチンBを接種した。各々のワクチン用量は、4μgのpolyI:Cを効果的に含んでいた。群2のマウスに、上記のように30μlのリポソーム/ミョウバン/疎水性担体中に処方された1μgのrHAを含むワクチンAを接種した。各々のワクチン用量は、60μgのミョウバンを効果的に含んでいた。対照群のマウス(群3、n=10)に、リン酸緩衝生理食塩水中に懸濁した1μgのrHA及び60μgのミョウバンからなる対照ミョウバンワクチンを筋肉内注射した。免疫後18日及び28日の全てのマウスから血清試料を採取した。これらの血清中の抗体力価を上記のようにELISAで調べた。
【0126】
群3のマウスは、ミョウバンをアジュバントとした対照ワクチンの投与後に予期したとおりの検出可能な抗原特異的抗体応答を生じた。驚くことではないが、リポソーム/ミョウバン/疎水性担体製剤を接種した群2のマウスは、相当に高い抗体応答を生じた。これらの結果は予期されたものであったが、リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤(群1マウス)においてミョウバンアジュバントの代わりにpolyI:Cアジュバントを使用することにより、いくつかの予期せぬ結果が生じた;抗体力価がリポソーム/ミョウバン/疎水性担体製剤(群2)によって生じた抗体力価よりも有意に高かった。
【0127】
上記の水性対照製剤を接種した群3マウスは、ワクチン接種後18及び28日に最大1/32,000及び1/64,000のエンドポイント力価を生じた(log10値はそれぞれ4.51及び4.81)。群2におけるワクチン接種後18及び28日のエンドポイント力価は、最大1/256,000(log10値は5.41)であった。ワクチン接種後18及び28日(4週)にそのような抗体応答が存在することは、本物の免疫応答がワクチン接種の結果として生じたことを裏付ける。本発明に相当する製剤を注射した群1マウスは、ワクチン接種後18日で1/1,024,000(log10値は6.01)及び免疫後4週で1/8,192,000(log10値は6.91)に達するエンドポイント力価で増強された免疫応答を生じることができた。これらの結果は、polyI:Cアジュバントを含有するリポソーム/疎水性担体製剤が、リポソーム/ミョウバン/疎水性担体及び水性/ミョウバン対照の接種と比較して有意に増強されたインビボ免疫応答を生じる能力があることを示す。
【実施例2】
【0128】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌CD1マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0129】
実施例1と同様に、H5N1インフルエンザウイルスの表面の赤血球凝集素糖タンパク質に相当する、H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、30μlの用量あたり1μgで使用した。
【0130】
本発明に相当するワクチンを処方するため、実施例1に記載されるものと同じ手順を用いた。手短に言えば、33μgのrHAを300μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に懸濁し、次いで132mgのS100レシチン/コレステロール混合物(Lipoid GmbH,Germany)に添加して、rHA抗原を封入する約450μlのリポソーム懸濁液を形成した。このリポソーム調製物を、200nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)にこの材料を通すことにより押出した。rHAを含有するリポソーム懸濁液450μlごとに、133μgのpolyI:Cアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。500μlのリポソーム/抗原/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Montanide(商標)ISA51、Seppic,France)を添加して、乳濁液の水相の中に含まれたリポソーム懸濁液及び連続する疎水相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体を含有する上記乳濁液30μlからなるものであった。この特定の製剤を、リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0131】
上記のリポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンの有効性を、polyI:Cアジュバントを含有する水性対照ワクチンの有効性と比較した。2つの群のマウス(1群あたり9又は10匹のマウス)に、1用量あたり30μlを1回筋肉内注射した。群1のマウスに、上記のように30μlのリポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された1μgのrHA及び4μgのpolyI:Cを含むワクチンBを接種した。群2のマウスに、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に処方された1μgのrHA及び4μgのpolyI:Cを含む30μlの対照polyI:Cワクチンを注射した。免疫後18日及び28日の全てのマウスから血清試料を採取した。これらの血清試料中のrHA抗体力価を実施例1に記載されるようにELISAで調べた。
【0132】
群2のマウスは、polyI:Cをアジュバントとした対照ワクチンの投与後に検出可能な抗原特異的抗体応答を生じた。リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤を接種した群1のマウスは、群2のものと比較して有意に増強されたエンドポイント力価を生じた。群2のマウスは、ワクチン接種後18日で最大1/128,000(log10値は5.11)及びワクチン接種後28日(4週)で最大1/1,024,000(log10は6.01に等しい)の力価を生じた。実施例1に記したように、そのような抗体応答が存在することは、本物の免疫応答がワクチン接種の結果として生じたことを裏付ける。本発明に相当するワクチンを接種した群1マウスは、ワクチン接種後18日で1/1,024,000(log10値は6.01)及び免疫後4週で1/8,192,000(log10値は6.91)に達するエンドポイント力価を生じることができた。これらの結果は、polyI:Cアジュバントを含有するリポソーム/疎水性担体製剤が、水性/polyI:C対照の接種と比較して有意に増強されたインビボ免疫応答を生じる能力があることを示す。
【実施例3】
【0133】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌CD1マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0134】
実施例1及び2と同様に、H5N1インフルエンザウイルスの表面の赤血球凝集素糖タンパク質に相当する、H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、50μlの用量あたり1μgで使用した。
【0135】
本発明に相当するワクチンを処方するため、S100レシチンとコレステロールの10:1 w:wの均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)を、rHA及びpolyI:Cアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)溶液の存在下リン酸緩衝液中で水和して封入されたrHA及びアジュバントを含むリポソームを形成した。手短に述べると、20μgのrHA及び200μgのpolyI:Cを最初に250μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.4)に懸濁し、次いで132mgのS100レシチン/コレステロール混合物に添加して、rHA抗原及びpolyI:Cアジュバントを封入する約400μlのリポソーム懸濁液を形成した。このリポソーム調製物を50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.4)を用いて半分に希釈し、次に、200nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)にこの材料を通すことにより押出した。次に、サイズの揃ったリポソームを、Virtis Advantage凍結乾燥機(SP Industries,Warminister,PA,USA)を用いて凍結乾燥した。rHA及びpolyI:Cを含有する、800μlの最初のリポソーム懸濁液ごとに、フロイント不完全アジュバント(Seppic,Franceにより供給されるMontanide(商標)ISA51として公知)に等しい1mlの鉱油担体を用いて凍結乾燥リポソームを再構成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体が結合した50μlの上記製剤からなるものであった。このワクチン製剤を、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0136】
上記の凍結乾燥リポソーム製剤の有効性を、50μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.4)中、1μgのrHA及び100μgのImject Alumアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)からなる対照ワクチンの有効性と比較した。群1のマウス(N=8)に、上記のように50μlの凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された1μgのrHA抗原及び10μgのpolyI:Cアジュバントを含むワクチンCを1回(追加免疫なし)注射した。群2のマウス(N=9)に、50ミリモル リン酸緩衝液に懸濁した1μgのrHA及び100μgのミョウバンアジュバントを含む対照ミョウバンワクチンを2回(0日及び21日)接種した。免疫後3、4、及び8週のすべてのマウスから血清試料を採取した。これらの血清中のrHA抗体力価を実施例1に記載されるようにELISAで調べた。
【0137】
群2のマウスは、ミョウバンをアジュバントとした対照ワクチンの投与後に検出可能な抗原特異的抗体応答を生じた。単回用量の凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤を接種した群1のマウスは、群2の動物にワクチン接種を2回(一次免疫に加えて追加免疫)したにもかかわらず、群2のものと比較して有意に増強されたエンドポイント力価を生じた。群2のマウスは、ワクチン接種後3週(追加免疫前)に最大1/128,000(log10値は5.11)、ならびに4及び8週に(追加免疫後)それぞれ最大1/1,024,000(log10は6.01に等しい)及び1/512,000(log10は5.71に等しい)の力価を生じた。実施例1に記したように、そのような抗体応答が存在することは、本物の免疫応答がワクチン接種の結果として生じたことを裏付ける。本発明に相当するワクチンを接種した群1マウスは、ワクチン接種後3週に1/2,048,000(log10値は6.31)ならびに免疫後4及び8週に1/8,192,000(log10値は6.91)に達するエンドポイント力価を生じることができた。これらの結果は、polyI:Cアジュバントを含有する単一用量の凍結乾燥リポソーム/疎水性担体製剤が、追加免疫した水性ミョウバン対照の接種と比較して有意に増強されたインビボ免疫応答を生じることができることを示す。この実施例で生じた免疫応答は、実施例1及び2に示した本発明のワクチンにより生じた免疫応答と同等である。
【実施例4】
【0138】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌CD1マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0139】
前の実施例と同様に、H5N1インフルエンザウイルスの表面の赤血球凝集素糖タンパク質に相当する、H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質(Protein Sciences,Meridien,CT,USA)(以降rHAと称する)を、ワクチン製剤の有効性を試験するためのモデル抗原として用いた。rHAは、30μlの用量あたり1μgで使用した。
【0140】
本明細書に記載されるワクチンを、実施例1に記載されるように処方した。手短に言えば、33μgのrHAを300μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に懸濁し、次いで132mgの均質な(10:1、w:w)S100レシチン/コレステロール混合物(Lipoid GmbH,Germany)に添加して、rHA抗原を封入する約450μlのリポソーム懸濁液を形成した。リポソーム調製物は、200nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)に材料を通過させることにより押出した。rHAを含有するリポソーム懸濁液450μlごとに、2mgのImject Alumアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。500μlのリポソーム/抗原/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Seppic,Franceにより供給されるMontanide(商標)ISA51)を添加して、乳濁液の水相の中に含まれたリポソーム懸濁液及び連続する疎水相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、ミョウバンアジュバント、及び鉱油担体を含有する30μlの上記乳濁液からなるものであった。このワクチン製剤を、リポソーム/ミョウバン/疎水性担体と称する。
【0141】
本発明に相当するワクチンを処方するため、上記と同じ手順を、以下を除いて使用した:rHAを封入しているリポソームの形成に続いて、かつ、リポソーム懸濁液を200nmポリカーボネート膜を通じて押出した後、133μgのRNAに基づくpolyI:Cアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)を、450μlのリポソームごとに添加した。500μlのリポソーム/抗原/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Montanide(商標)ISA51、Seppic,France)を添加して、乳濁液の水相中に含まれるリポソーム懸濁液及び連続相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体を含有する上記乳濁液30μlからなるものであった。この特定の製剤を、リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0142】
上記の2種類の乳濁液製剤の有効性を、実施例1に記載されるものと比較した。2つの群のマウス(1群あたり9又は10匹のマウス)に、リポソームワクチン製剤を1回(追加免疫なし)、次の通り筋肉内注射した:群1のマウスに、30μlのリポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された1μgのrHA抗原及び4μgのpolyI:Cアジュバントを含むワクチンB(本発明)を接種した。群2のマウスに、30μlのリポソーム/ミョウバン/疎水性担体中に処方された1μgのrHA及び60μgのミョウバンアジュバントを接種した。群2のワクチンは、一般的なアジュバントミョウバンを含有する対照製剤(ワクチンA)であった。免疫後18及び28日に、かつその後4週ごとに合計16週間、すべてのマウスから血清試料を採取した。これらの血清中の抗体力価を実施例1に記載されるようにELISAで調べた。
【0143】
群2のエンドポイント力価は、8及び12週で最大1/256,000、ならびに免疫後16週で1/512,000であった(log10値はそれぞれ5.41及び5.71)。本発明に相当する製剤を注射した群1マウスは、ワクチン接種後8、12及び16週に1/4,096,000(log10値は6.61)に達するエンドポイント力価で増強された免疫応答を生じることができた。これらの結果は、polyI:Cアジュバントを含有するリポソーム/疎水性担体製剤が、polyI:Cを欠く対照ワクチンを用いて達成するよりも平均して10倍大きい、有意に増強されたインビボ免疫応答を生じる能力があることを裏付ける(ワクチン接種後4週〜16週の間のすべての時点でP値<0.01)。生じた免疫応答の劇的な改善は、特に抗原/リポソーム/アジュバント/鉱油担体組成物中のミョウバンの代わりにpolyI:Cアジュバントを使用した結果であった。本発明のワクチンによって生じた、この強い免疫応答は、最低限の16週間ミョウバン含有ワクチンと比べて有意に優れたレベルで持続したので、強いものであった。
【実施例5】
【0144】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌CD1マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0145】
前の実施例と同様に、H5N1インフルエンザウイルスの表面の赤血球凝集素糖タンパク質に相当する、H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、30μlの用量あたり1μgで使用した。
【0146】
本発明に相当するワクチンを処方するため、実施例2に記載されるものと同じ手順を用いた。手短に言えば、33μgのrHAを300μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に懸濁し、次いで132mgのS100レシチン/コレステロール混合物(Lipoid GmbH,Germany)に添加して、rHA抗原を封入する約450μlのリポソーム懸濁液を形成した。このリポソーム調製物を、200nmポリカーボネート膜にこの材料を通過させることにより押出した。rHAを含有するリポソーム懸濁液450μlごとに、133μgのRNAに基づくpolyI:Cアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。500μlのリポソーム/抗原/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Montanide(商標)ISA51、Seppic,France)を添加して、乳濁液の水相の中に含まれたリポソーム懸濁液及び連続相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体を含有する上記乳濁液30μlからなるものであった。この特定の製剤を、リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0147】
上記のリポソーム/polyI:C/疎水性担体ワクチンの有効性を、rHA抗原及びRNAに基づくpolyI:Cアジュバントを含有する水性対照ワクチンの有効性と比較した。2つの群のマウス(1群あたり9又は10匹のマウス)に、1用量あたり30μlを筋肉内に1回注射した。群1のマウスに、上記のようにリポソーム/polyI:C/疎水性担体として処方された、1μgのrHA及び4μgのpolyI:Cを含むワクチンBを接種した。群2のマウスに、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に処方された1μgのrHA及び4μgのpolyI:Cを含む対照polyI:Cワクチンを注射した。免疫後18及び28日に、かつその後4週ごとに合計16週間、すべてのマウスから血清試料を採取した。これらの血清試料中のrHA抗体力価を実施例1に記載されるようにELISAで調べた。
【0148】
群2のマウスは、polyI:Cをアジュバントとした対照ワクチンの投与後に検出可能な抗原特異的抗体応答を生じた。リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤を接種した群1のマウスは、群2のものと比較して有意に増強されたエンドポイント力価を生じた。群2のマウスは、ワクチン接種後8週に最大1/512,000(log10値は5.71)、ワクチン接種後12及び16週に最大1/2,048,000(log10は6.31に等しい)の力価を生じた。既に記載したように、そのような抗体応答が存在することは、本物の免疫応答がワクチン接種の結果として生じたことを裏付ける。本発明に相当するワクチンを接種した群1マウスは、免疫後8、12及び16週で1/4,096,000(log10値は6.61)に達するエンドポイント力価を生じることができた。これらの結果は、polyI:Cアジュバントを含有するリポソーム/疎水性担体製剤が、水性/polyI:C対照の接種と比較して、長く続く実質的に高いインビボ免疫応答を生じる能力があることを裏付ける(ワクチン接種後4週及び16週でP値<0.02)。早い時点で(ワクチン接種後4週)平均して7倍高く、遅い時点で(ワクチン接種後16週)平均して9倍高い抗体力価が、ワクチン中リポソーム及び疎水性担体の存在下で実現された。このことは、リポソーム及び疎水性担体成分が、観察される強い免疫応答を生じるために重要であることを示唆する。
【実施例6】
【0149】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌BALB/cマウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0150】
実施例1から5と同様に、H5N1インフルエンザウイルスの表面の赤血球凝集素糖タンパク質に相当する、H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、50μlの用量あたり1.5μgで使用した。
【0151】
本発明に相当するワクチンを処方するため、S100レシチンとコレステロールの10:1 w:wの均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)を、rHAの存在下リン酸緩衝液中で水和して封入されたrHAを含むリポソームを形成し、それに続いてpolyI:C(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。手短に述べると、30μgのrHAを750μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、次いで132mgのS100レシチン/コレステロール混合物に添加して、rHA抗原を封入する約900μlのリポソーム懸濁液を形成した。このリポソーム調製物を、200nmポリカーボネート膜を装備した半自動式押出機(Avestin,Ottawa,ON,Canada)にこの材料を流速100ml/分で通過させることにより押出した。50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)中250μgのRNAに基づくpolyI:Cアジュバントを、サイズの揃ったリポソームに添加して調製物を1mlに希釈した。次に、Virtis Advantage凍結乾燥機(SP Industries,Warminister,PA,USA)を用いてリポソームを凍結乾燥した。rHA及びpolyI:Cを含有する、1mlの最初のリポソーム懸濁液ごとに、800μlの鉱油担体(Montanide(商標)ISA51、Seppic,France)を用いて凍結乾燥リポソームを再構成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体を含有する50μlの上記製剤からなるものであった。このワクチン製剤を、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0152】
上記の凍結乾燥リポソーム製剤の有効性を、50μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)中、1.5μgのrHA及び100μgのImject Alumアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)からなる対照ワクチンの有効性と比較した。群1のマウス(N=10)に、上記のように50μlの凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された1.5μgのrHA抗原及び12.5μgのRNAに基づくpolyI:Cアジュバントを含むワクチンDを、筋肉内に1回(追加免疫なし)注射した。群2のマウス(3週及び4週にはN=10、1匹の動物の予定外のワクチンに関連しない終結により、6週及び9週にはN=9に減少)に、50ミリモル リン酸緩衝液に懸濁した1.5μgのrHA及び100μgのミョウバンアジュバントを含む対照ミョウバンワクチンを2回接種した(0日及び28日)。免疫後3、4、6及び9週にすべてのマウスから血清試料を採取した。これらの血清中のrHA抗体力価を実施例1に記載されるようにELISAで調べた。
【0153】
群2のマウスは、2用量(一次免疫及び追加免疫)のミョウバンをアジュバントとした対照ワクチンの投与後のみ抗原特異的抗体応答を生じた。単回用量の凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤を接種した群1のマウスは、群2の動物が2回ワクチン接種されているにもかかわらず、試験したすべての時点で群2のものと比較して有意に増強されたエンドポイント力価を生じた。群2のマウスは、一次ワクチン接種3週後にバックグラウンド力価を記録し、一匹の個体は4週に1/8,000(log10値は3.39に等しい)の最大力価を生じた。追加免疫後、群2のマウスは免疫後6及び9週で最大1/64,000(log10値は4.81)の力価を生じた。本発明に相当するワクチンを接種した群1マウスは、ワクチン接種後3及び4週に最大1/128,000(log10は5.11)ならびに免疫後6及び9週に1/512,000(log10値は5.71)のエンドポイント力価を生じることができた。これらの結果は、実施例3で使用したマウス種とは異なるマウス種を用いて、polyI:Cアジュバントを含有する単回用量の凍結乾燥リポソーム/疎水性担体製剤が、追加免疫さえした水性/ミョウバン対照の接種と比較して有意に増強されたインビボ液性免疫応答を生じる能力があることを裏付ける。抗体レベルは、ワクチン接種後4週の単回用量の対照ワクチンよりも24倍高く(P値<0.001)、ワクチン接種後9週の遅い時点での2用量の対照ワクチンよりも9倍高かった(P値<0.01)。さらに、実施例3及び6の結果から、polyI:Cアジュバントが、リポソーム押出の前か又は後のいずれかに凍結乾燥リポソーム/疎水性担体製剤に組み込まれてもよいことが示される。
【実施例7】
【0154】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌BALB/cマウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0155】
実施例1から6と同様に、H5N1インフルエンザウイルスの表面の赤血球凝集素糖タンパク質に相当する、H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、50μlの用量あたり1.5μgで使用した。
【0156】
この実施例では、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体を筋肉内に1回(追加免疫なし)又は皮下に1回(追加免疫なし)投与して抗原特異的細胞傷害性リンパ球応答の発生を評価した。
【0157】
本発明に相当するワクチンを処方するため、実施例6に記載されるものと同じ手順を用いた。手短に言えば、S100レシチン及びコレステロールの10:1(w:w)の均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)をrHAの存在下リン酸緩衝液中で水和し、それに続いてRNAに基づくpolyI:C(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加することによりリポソームを処方した。このリポソーム懸濁液を凍結乾燥し、鉱油担体(Montanide ISA51(商標)、SEPPIC,France)に再懸濁した。各々のワクチン用量(ワクチンD)は、リポソーム(6.6mgのS100/コレステロール脂質)、rHA抗原(1.5μg)、polyI:Cアジュバント(12.5μg)、及び鉱油担体を含有する50μlの上記製剤からなるものであった。このワクチン製剤を、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。群1のマウス(n=4)に、この製剤を実施例6と同様に筋肉内投与した。群2のマウス(n=4)に、このワクチンを皮下投与した。
【0158】
群3のマウス(n=4)に、50μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)中、1.5μgのrHA及び100μgのImject Alumアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)からなる対照ミョウバンワクチンを接種した。マウスに1回(追加免疫なし)筋肉内注射した。群4のマウス(n=2)はナイーブで、免疫処置を受けなかった。
【0159】
ワクチン接種後22日に、二酸化炭素に誘導される窒息により動物を安楽死させた。脾臓を回収し、標準的な手順を用いて個々の単細胞懸濁液を調製した。赤血球を、ACK溶解バッファー(蒸留H2O中0.15M NH4Cl、10mM KHCO3、0.1mM Na2EDTA)を用いて溶解させた。抗原特異的T細胞を増大させるため、20単位/mlの組換え型ヒトIL−2(Sigma−Aldrich)及び10μg/ml rHAを添加した、1% ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン、0.1% 2−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)、及び10% ウシ胎児血清(Hyclone,Logan,UT,USA)を含有するRPMI 1640(Invitrogen,Burlington,ON,Canada)完全培地中、5%二酸化炭素下で37℃にて4日間、1×10^6細胞/mlで脾細胞を培養した。三色フローサイトメトリー分析を脾細胞について行って、抗原特異的CD8+T細胞を検出した。室温にて10分のFCブロック(eBioscience,San Diego,CA,USA)の処理によって細胞をブロックした。次に、Proimmune(Bradenton,FL,USA)から得たフィコエリトリン(PE)標識IYSTVASSL(I9L)/H2−Kdペンタマーで4℃にて20分間細胞を染色した。I9Lは、rHAのH2−Kd免疫優勢エピトープ(518−528)であり、このペンタマー試薬がマウスによるこのエピトープのMHCI提示を検出する。次に、細胞を、抗CD19−フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(eBioscience)及び抗CD8β−アロフィコシアニン(APC)(eBioscience)で4℃にて30分間、光から保護して染色し、洗浄し、0.1% パラホルムアルデヒドによって50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)に固定した。FACSCalibur(商標)フローサイトメーター(BD Bioscience,Missisauga,ON,Canada)で5×10^5細胞を取得し、WinList 6.0 ソフトウェア(Verity Inc,Topsham,ME,USA)を用いて解析した。結果を前方及び側方散乱に基づいてゲートし(gated)、抗原特異的CD8T細胞をペンタマー陽性、CD8β陽性及びCD19陰性として規定した。両側スチューデントT検定を用いて統計解析を行った。
【0160】
対照ミョウバンに基づく製剤を接種したマウスは、小さい抗原特異的CD8T細胞集団を生じた(0.045%)。本発明の凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤を接種した(筋肉内又は皮下経路により送達された)マウスは、有意に大きい抗原特異的CD8T細胞集団を生じた(それぞれ0.23%及び0.17%;両方についてミョウバン対照と比較して、p=<0.025)。これらの結果は、本発明において処方されたrHAが、筋肉内又は皮下に送達され得、ミョウバンを用いる従来のワクチン製剤と比較して有意に高い、細胞性免疫応答の代表である抗原特異的CD8+T細胞集団を生じることを実証する。
【実施例8】
【0161】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌CD−1マウス、及び体重2〜3kgの雌ニュージーランドシロウサギを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、濾過空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0162】
実施例1から7と同様に、H5N1インフルエンザウイルスの表面の赤血球凝集素糖タンパク質に相当する、H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、マウスにおいて50μlの用量あたり0.5μgで使用し、ウサギにおいて200μlの用量あたり2μgで使用した。
【0163】
ワクチンの有効性を、Benchmark Biolabs(Lincoln,NE,USA)により実施された赤血球凝集抑制アッセイ(HAI)により評価した。手短に言えば、血清試料を受容体破壊酵素で前処理し、ニワトリ赤血球を事前に吸収させて非特異的赤血球凝集抑制反応を回避した。次に、段階希釈の血清を0.7% ウマ赤血球、0.5% ウシ血清アルブミン及び8HA単位のA/ベトナム/1203/2004[H5N1]インフルエンザウイルスとともにインキュベートした。算出した力価は、血清試料が赤血球の赤血球凝集を完全に阻害することのできる最大希釈を表す。
【0164】
本発明に相当する第1のワクチンを処方するため、S100レシチン及びコレステロールの10:1(w:w)の均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)を、rHAの存在下、リン酸緩衝液中で水和して封入されたrHAを含むリポソームを形成し、それに続いてRNAに基づくpolyI:C(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。手短に言えば、10μgのrHAを最初に650μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、次いで132mgのS100レシチン/コレステロール混合物に添加して、rHA抗原を封入する約800μlのリポソーム懸濁液を形成した。次に、このリポソーム調製物を、200nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)にこの材料を通すことにより押出した。50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)中、240μgのpolyI:Cアジュバントをサイズの揃ったリポソームに添加した。次に、Virtis Advantage凍結乾燥機(SP Industries,Warminister,PA,USA)を用いてリポソームを凍結乾燥した。凍結乾燥した材料を、鉱油担体(Seppic,Franceにより供給されるMontanide(商標)ISA51)で元の1ml容積の可溶化されたリポソームに再構成した。マウスに送達される各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体が結合した50μlの上記製剤からなるものであった。これらのワクチン製剤を、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0165】
これも本発明に相当する第2のワクチンを処方するため、上記と同じ手順を、以下を除いて使用した:rHA抗原を封入するリポソームの形成に続いて、2枚の400nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機にこの材料を通過させることによりリポソーム調製物を押出した。50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)中250μgのRNAに基づくpolyI:Cアジュバントを、サイズの揃ったリポソームに添加して調製物を1mlに希釈した。次に、Virtis Advantage凍結乾燥機を用いてリポソームを凍結乾燥し、凍結乾燥した材料を鉱油担体(Montanide(商標)ISA51、Seppic,France)を用いて元の1mlに再構成した。ウサギに送達された各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体を含有する200μlの上記製剤からなるものであった。このワクチン製剤も凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0166】
上記の凍結乾燥リポソーム製剤の有効性を、2つの異なる動物モデルを用いて試験した。動物に、同程度の製剤を接種した;注入量は動物のサイズに適するように調節した。1つの群のマウス(N=5)に、上記のように50μlの凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された、0.5μgのrHA抗原及び12μgのpolyI:Cアジュバントを含むワクチンFを筋肉内注射した。1つの群のウサギ(N=5)に、上記のように200μlの凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された2μgのrHA抗原及び50μgのpolyI:Cアジュバントを含むワクチンEを皮下注射した。全ての動物を注射前に、次いで免疫後4週か又は5週のいずれかに再び出血させた。これらの血清中のHAI力価を、上記のH5N1赤血球凝集抑制アッセイで調べた。
【0167】
凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤の接種後4週又は5週までに、マウス及びウサギは両方ともインフルエンザH5N1に対する保護を示すHAI力価を生じた。40のHAI血清力価(log10は1.60に等しい)は、一般に個体がインフルエンザの特定の株を標的とする保護レベルの抗体を有することを意味すると容認される。ワクチン接種後5週に、マウスは128(log10は2.11)から512(log10は2.71)の範囲の力価を生じた。免疫後4週に、ウサギは64(log10は1.81に等しい)から1024(log10は3.01)までの範囲のHAI力価を生じた。上記の投薬量で使用されるrHAの単一のワクチン接種は、全てのワクチン接種した被験体において実現された高いHAI力価を誘導することができないことが一般に容認される。2つの異なる動物モデルで生じた、この大きさの力価は、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤が、ワクチン接種後4週程度の全てのワクチン接種した被験体において、保護範囲で強い抗体レベルを生じるのに(HAI>20又はlog値>1.3)特に効果的であることを示す。
【実施例9】
【0168】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌CD1マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0169】
アミロイドβタンパク質断片(1−43)を、Anaspec(San Jose,CA,USA)より購入し、ワクチン製剤の有効性を試験するためのモデル抗原として用いた。このペプチド(以降、βアミロイドと称する)は、分子量が約4,600ダルトンであり、アルツハイマー病患者の脳におけるプラーク形成に関連している。βアミロイドは100μlの用量あたり10μgで使用した。
【0170】
21アミノ酸ペプチドFNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(以降、F21Eを称する)を、NeoMPS(San Diego,CA,USA)より購入した。この破傷風トキソイドペプチド(アミノ酸947−967)は、Tヘルパーエピトープであると同定されている。F21Eを、ワクチン製剤の有効性を試験するためのモデルTヘルパーエピトープとして用いた;それは100μlの用量あたり20μgで使用した。
【0171】
実施例1から6と同様に、ワクチンの有効性を、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により評価した。実施例1に記載されるものと同じ手順をβアミロイド特異的抗体の検出を可能にするための変更とともに用いた。手短に言えば、96ウェルマイクロタイタープレートを抗原(βアミロイド、1μg/ml)で4℃にて一晩コートし、3%ゼラチンで30分間ブロックし、次いで一般に1/1000の希釈から始める血清の段階希釈とともに4℃にて一晩インキュベートした。二次試薬(アルカリホスファターゼと共役したタンパク質G、EMD chemicals,Gibbstown,NJ,USA)を、次に各ウェルに1/500希釈で37℃にて1時間添加する。1mg/ml 4−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩六水和物(Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Switzerland)を含有する溶液での60分のインキュベーションの後、各ウェルの405nm吸光度をマイクロタイタープレートリーダー(ASYS Hitech GmbH,Austria)を用いて測定する。エンドポイント力価は、Frey A.ら(Journal of Immunological Methods, 1998, 221 :35-41)に記載されるとおり算出する。算出した力価は、ナイーブ非免疫対照マウスからの血清試料に対して免疫マウスからの血清試料に統計上有意な吸光度の増加が観察される最大希釈を表す。力価は、エンドポイント希釈のlog10値として表される。
【0172】
本明細書に記載されるワクチンを処方するため、S100レシチンとコレステロールの10:1 w:wの均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)をβアミロイド及びF21E溶液の存在下、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で水和して、封入された抗原及びTヘルパーを含むリポソームを形成した。手短に述べると、100μgのβアミロイド及び200μgのF21Eを最初に300μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に懸濁し、次いで132mgのS100レシチン/コレステロール混合物に添加して、βアミロイド抗原及びF21E Tヘルパーを封入する約450μlのリポソーム懸濁液を形成した。リポソーム調製物は、400nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)に材料を通過させることにより押出した。βアミロイド及びF21Eを含有する450μlのリポソーム懸濁液ごとに、2mgのImject Alumアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。500μlのリポソーム/抗原/Tヘルパー/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Seppic,Franceにより供給されるMontanide(商標)ISA51として公知)を添加して、乳濁液の水相の中に含まれたリポソーム懸濁液及び連続する疎水相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、βアミロイド抗原、F21E Tヘルパー、ミョウバンアジュバント、及び鉱油担体を含有する100μlの上記乳濁液からなるものであった。このワクチン製剤を、リポソーム/ミョウバン/疎水性担体と称する。
【0173】
本発明に相当するワクチンを処方するため、上記と同じ手順を、以下を除いて使用した:βアミロイド及びF21Eを封入するリポソームの形成に続いて、リポソーム懸濁液を400nmポリカーボネート膜を通じて押出した後、100μgのRNAに基づくpolyI:Cアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)を、450μlのリポソームごとに添加した。500μlのリポソーム/抗原/Tヘルパー/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Montanide(商標)ISA51、Seppic,France)を添加して、乳濁液の水相中に含まれるリポソーム懸濁液及び連続相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、βアミロイド抗原、F21E Tヘルパー、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体を含有する100μlの上記乳濁液からなるものであった。この特定の製剤を、リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0174】
上記の2種類の乳濁液製剤の有効性を比較した。2つの群のマウス(1群あたり9匹のマウス)に、リポソームワクチン製剤を次の通り腹腔内に注射した:群2のマウスに、上記のように100μlのリポソーム/ミョウバン/疎水性担体中に処方された10μgのβアミロイド及び20μgのF21Eを含むワクチンGを接種した。各々のワクチン用量は、200μgのミョウバンを効果的に含んでいた。群1のマウスに、上記のように100μlのリポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された10μgのβアミロイド抗原及び20μgのF21Eを含むワクチンHを接種した。各々のワクチン用量は、10μgのpolyI:Cを効果的に含んでいた。免疫後4、8及び12週にすべてのマウスから血清試料を採取した。これらの血清中の抗体力価を上記のようにELISAで調べた。
【0175】
単回用量のリポソーム/ミョウバン/疎水性担体製剤を接種した群2のマウスは、予期したとおり検出可能な抗原特異的抗体応答を生じた。ワクチン接種後4及び8週のエンドポイント力価は、最大1/32,000(log10値は4.51)であり、12週には最大1/64,000(log10は4.81)であった。このような抗体応答の存在は、本物の免疫応答がワクチン接種の結果として生じたことを裏付ける。本発明に相当する製剤を1回注射した群1のマウスは、ワクチン接種後4、8及び12週に1/256,000(log10値は5.41)に達するエンドポイント力価で増強された免疫応答を生じることができた。本発明によって生じた力価は、一般的なアジュバントミョウバンを含有する対照製剤により生じる力価と比較して、あらゆる時点で平均して7倍高かった。本発明によって実現された力価の増大は、統計上有意であった(ワクチン接種後8及び12週でP値<0.01)。これらの結果は、異なる抗原モデルの使用を通じて、polyI:Cアジュバントを含有するリポソーム/疎水性担体製剤が、リポソーム/ミョウバン/疎水性ワクチン接種と比較して有意に増強されたインビボ免疫応答を生じる能力があることを裏付ける。
【実施例10】
【0176】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌CD1マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0177】
H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質は、約72,000ダルトンの分子量を有し、H5N1インフルエンザウイルスの表面に存在する抗原性タンパク質である、赤血球凝集素糖タンパク質に相当する。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、50μlの用量あたり0.5μgで使用した。
【0178】
液性(TH1)及び細胞(TH2)免疫応答の両方を、免疫動物の血清中の抗原特異的抗体レベルの検出を可能にする方法である、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により評価した。手短に言えば、96ウェルマイクロタイタープレートを、抗原(rHA、1μg/ml)で4℃にて一晩コートし、3%ゼラチンで30分間ブロックし、その後に、一般に1/2000の希釈から始める血清の段階希釈とともに4℃にて一晩インキュベートする。次に、二次抗体、抗IgGを各ウェルに1/2000希釈で1時間37℃にて添加する。TH1細胞応答の指標である、IgG2A抗体の検出のため、ヤギ抗マウスIgG2A(SouthernBiotech,Birmingham,AL,USA)を使用した。TH2液性応答の検出のため、ヤギ抗マウスIgG1(SouthernBiotech,Birmingham,AL,USA)二次試薬を使用した。1mg/ml 4−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩六水和物(Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Switzerland)を含有する溶液での60分のインキュベーションの後、各ウェルの405nm吸光度をマイクロタイタープレートリーダー(ASYS Hitech GmbH,Austria)を用いて測定する。エンドポイント力価は、Frey A.ら(Journal of Immunological Methods, 1998, 221 :35-41)に記載されるとおり算出する。算出した力価は、ナイーブ非免疫対照マウスからの血清試料に対して免疫マウスからの血清試料に統計上有意な吸光度の増加が観察される最大希釈を表す。力価は、エンドポイント希釈のlog10値として表される。
【0179】
本発明に相当するワクチンを処方するため、実施例8に記載されるように、S100レシチンとコレステロールの10:1 w:wの均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)を、rHA溶液の存在下リン酸緩衝液中で水和して、封入されたrHAを含むリポソームを形成し、それに続いてRNAに基づくpolyI:C(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。手短に述べると、10μgのrHAを最初に650μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、次いで132mgのS100レシチン/コレステロール混合物に添加して、rHA抗原を封入する約800μlのリポソーム懸濁液を形成した。次に、このリポソーム調製物を、200nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)にこの材料を通すことにより押出した。50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)中のpolyI:Cアジュバントをサイズの揃ったリポソームに添加して、調製物を1mlに希釈した。「高用量」のpolyI:C製剤のためには、リン酸緩衝液中240μgのpolyI:Cを添加し、「低用量」のpolyI:C製剤のためには、50μgのpolyI:Cを添加した。次に、Virtis Advantage凍結乾燥機(SP Industries,Warminister,PA,USA)を用いてリポソームを凍結乾燥した。凍結乾燥した材料を、鉱油担体(Seppic,Franceにより供給されるMontanide(商標)ISA51)で元の1ml容積の可溶化されたリポソームに再構成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体が結合した50μlの上記製剤からなるものであった。これらのワクチン製剤を、凍結乾燥リポソーム/polyI:C(高)/疎水性担体及び凍結乾燥リポソーム/polyI:C(低)/疎水性担体と称する。
【0180】
polyI:Cアジュバントを含有する凍結乾燥リポソーム製剤でのワクチン接種の結果として生じたTH1及びTH2応答を比較した。2つの群のマウス(1群あたりN=5)に、凍結乾燥リポソーム/polyI:C(高)/疎水性担体として処方された0.5μgのrHA及び12μgのpolyI:Cを含むワクチンE(群1)か、又は凍結乾燥リポソーム/polyI:C(低)/疎水性担体として処方された0.5μgのrHA及び2.5μgのpolyI:Cを含むワクチンI(群2)のいずれか50μlを筋肉内注射した。上記のように、免疫後5週に血清試料を採取し、IgG1及びIgG2A抗体力価を調べた。
【0181】
群1のマウスは、免疫後5週に、実施例3で使用した類似の凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤の液性応答結果に匹敵する、最大2,048,000(log10値は6.31)IgG1力価を生じた。細胞応答の指標であるIgG2A力価は、ワクチン接種後5週に最大4,096,000(log10は6.61に等しい)であった。より低用量のpolyI:Cを接種した群2のマウスは、ワクチン接種後5週に最大4,096,000(log10は6.61)のIgG1力価を生じ、また、最大4,096,000のIgG2A力価も生じた。結果は、凍結乾燥リポソーム/疎水性担体製剤中様々な濃度で処方されたpolyI:Cアジュバントが液性(TH2)及び細胞(TH1)免疫応答の両方を生じることができることを示す。これらの結果は、上記の製剤が、ワクチン接種した被験体において細胞及び液性免疫応答を生じる能力があることを示唆する。
【実施例11】
【0182】
病原体をもたない、4〜6週齢の雌C57BL6マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0183】
ワクチン製剤中で使用した抗原は、普遍的TヘルパーエピトープPADREに融合したHPV16E7(49−57;RAHYNIVTF)のH2−Db免疫優勢エピトープからなる融合タンパク質であった。この抗原(以降、FPと称する)を、Anaspec Inc.(San Jose,CA)で合成した。アジュバントは、Sigma−Genosys(St.Louis,MO)により提供されるRNAに基づくポリイノシン−シトシンRNA分子であった。
【0184】
リポソーム、RNAに基づくpolyI:C分子、及び疎水性担体を含む本発明の有効性をC3腫瘍負荷モデルを用いてインビボで試験した。C3細胞は、ヒトパピローマウイルス16(HPV16)ゲノム及び、結果としてその表面に存在する、ワクチン接種により標的とすることのできるHPV16E7エピトープ(アミノ酸49−57;RAHYNIVTF)を含んでいた。C3細胞は皮下に注射した場合に増殖して測定可能な固形腫瘍となった。0日に、3つの群のマウス(1群あたりn=8)に、HPV16E7発現腫瘍細胞株C3(5×10^5細胞/マウス)を側腹部の皮下に移植した。8日に、群1及び2のマウスの反対側の側腹部の皮下に100μlのワクチンを接種した。群3のマウスはPBSのみが投与され、腫瘍増殖対照となった。週に1回、カリパスを用いて腫瘍容積を測定して、移植後5週間の最短の直径と最長の直径を記録した。次式:最長測定値×(最短測定値)^2÷2、を用いて腫瘍容積を算出した。
【0185】
群1を免疫するために用いた対照ワクチン(従来の乳濁液)は、300μgのFP抗原及び3mgのpolyI:Cアジュバントを1mlのPBS中で混合することにより処方された。500μlの抗原/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Seppic,Franceにより供給されるMontanide(商標)ISA51)を添加して、油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、FP抗原(15μg)及びpolyI:Cアジュバント(150μg)及び鉱油担体を含有する、100μlの記載された乳濁液からなるものであった。このワクチン製剤を、polyI:C/疎水性担体と称する。
【0186】
群2のための本発明に相当するワクチン(ワクチンK)を処方するため、実施例1に記載されるものと同じ手順を用いた。手短に言えば、150μgのFP抗原を、tert−ブタノールに溶解し、凍結乾燥したDOPCレシチン/コレステロール混合物(10:1、w:w;Lipoid GmbH,Germany)と混合した。1.5mgのpolyI:Cを含有する1mlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)を添加することによりリポソームを処方した。リポソーム調製物は、200nmポリカーボネート膜を装備した手動小型押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)に材料を通過させることにより押出した。リポソームのサイズをMalvern粒径アナライザー(Worchestershire,United Kingdom)を用いて200nmで確認した。500μlのリポソーム/抗原/アジュバント懸濁液ごとに、等容積の鉱油担体(Seppic,Franceにより供給されるMontanide(商標)ISA51)を添加して、乳濁液の水相の中に含まれたリポソーム懸濁液及び連続する疎水相を形成する油を含む油中水乳濁液を形成した。各々のワクチン用量は、リポソーム(13.2mgのDOPC/コレステロール)、FP抗原(15μg)、polyI:Cアジュバント(150μg)、及び鉱油担体を含有する、100μlの記載された乳濁液からなるものであった。このワクチン製剤を、リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0187】
この実験の結果を図11に示す。群1のマウスは、腫瘍増殖から部分的に保護され、移植後4週までに測定可能な腫瘍を形成し始めた。本発明をワクチン接種した群2のマウスは、5週になってやっと検出可能な、有意に小さい腫瘍を形成した(p<0.1)。対照群のマウスは、予期した速度で、移植後3週から腫瘍を形成した。
【0188】
これらの結果は、リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤中に処方された腫瘍特異的抗原が、polyI:C/疎水性担体で処方された場合よりも、マウスにおいて定着腫瘍を治療的に処置するのにより効果的であったことを示す。最適な治療効果は、リポソームが製剤中に存在した場合にのみ実現することができ、リポソームが本発明の決定的に重要な成分であることを明白に示す。
【実施例12】
【0189】
病原体をもたない、4〜6週齢の雌C57BL6マウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0190】
実施例11と同様に、ワクチン製剤中で使用した抗原は、普遍的TヘルパーエピトープPADREに融合したHPV16E7(49−57;RAHYNIVTF)のH2−Db免疫優勢エピトープからなる融合タンパク質であった。この抗原(以降、FPと称する)を、Anaspec Inc.(San Jose,CA)で合成した。アジュバントは、13(IC)反復からなる、DNAに基づくポリイノシン−シトシンDNA分子であり、Operon MWG(Huntsville,AL,USA)で合成した。
【0191】
リポソーム、DNAに基づくpolyI:C及び疎水性担体を含む本発明の有効性を、前に記載したC3腫瘍負荷モデルを用いてインビボで試験した。0日に、4つの群のマウス(1群あたりn=8)に、HPV16E7発現腫瘍細胞株C3(5×10^5細胞/マウス)を側腹部の皮下に移植した。5日に、群1〜3のマウスの反対側の側腹部の皮下にワクチンを接種した。群4のマウスはPBSのみが投与され、腫瘍増殖対照となった。週に1回、カリパスを用いて腫瘍容積を測定して、移植後5週間の最短の直径と最長の直径を記録した。次式:最長測定値×(最短測定値)^2÷2、を用いて腫瘍容積を算出した。
【0192】
群1のマウスに、リポソーム/抗原/polyIC/疎水性担体を含むワクチンLを接種した。このワクチンは、実施例11として処方された。各々の用量容積は100μlであり、リポソーム、FP(10μg)、polyIC(20μg)を含み、鉱油担体で乳化されていた。群2のマウスに、凍結乾燥リポソーム/抗原/polyIC/疎水性担体を含むワクチンMを接種した。手短に言えば、DOPCレシチン及びコレステロールの10:1(w:w)の均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)を、200μgのFP及び400μgのpolyICの存在下、0.5% PEG/水中で水和して、封入された抗原及びアジュバントを含む1mlのリポソームを形成した。このリポソーム調製物を、2つの400nmポリカーボネート膜を装備した手動押出機(Avanti,Alabaster,AL,USA)にこの材料を20回通過させることにより押出した。リポソームのサイズをMalvern粒径アナライザー(Worchestershire,United Kingdom)を用いて200nmで確認した。抗原及びアジュバントを含有するリポソームを、Virtis Advantage凍結乾燥機(SP Industries,Warminister,PA,USA)を用いて凍結乾燥した。凍結乾燥した材料を、油中で、鉱油担体(Montanide(商標)ISA51、Seppic,France)によって元の容積の可溶化されたリポソームに再構成した。各々の用量容積は、50μlであり、リポソーム(6.6mgのDOPC/コレステロール)、FP(10μg)、polyI:C(20μg)及び鉱油担体を含んでいた。群3のマウスに、polyICアジュバントを含まずに群2用として処方された凍結乾燥リポソーム/抗原/疎水性担体(アジュバント対照)を接種した。
【0193】
この実験の結果を図12に示す。群1及び群2のマウスは、実験の期間を通して測定可能な腫瘍を形成しなかった。FPを含むがアジュバントを含まない凍結乾燥リポソーム製剤を接種した群3のマウスは、移植後3週に腫瘍の形成を開始した。PBS対照群のマウスは、予期した速度で、移植後3週から腫瘍を形成した。
【0194】
これらの結果は、本発明のワクチン製剤が、腫瘍負荷モデルにおいて有効となるためにpolyICアジュバントを必要とすることを示す。この実施例では、リポソーム/疎水性担体中又は凍結乾燥リポソーム/疎水性担体製剤中に処方されたDNAに基づくpolyI:Cアジュバントは、1回程度の少ない免疫で治療効果を有する、効果的な免疫応答を生じた。
【実施例13】
【0195】
病原体をもたない、6〜8週齢の雌BALB/cマウスを、Charles River Laboratories(St Constant,QC,Canada)より入手し、フィルター制御空気循環下、機関のガイドラインに従って水及び食物を自由に与えて飼育した。
【0196】
前の実施例と同様に、H5N1インフルエンザウイルスの表面の赤血球凝集素糖タンパク質に相当する、H5N1組換え型赤血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien,CT,USA)より購入した。この組換えタンパク質(以降、rHAと称する)をモデル抗原として用いてワクチン製剤の有効性を試験した。rHAは、50μlの用量あたり1.5μgで使用した。
【0197】
ワクチンの有効性を、実施例7に記載される方法に類似する、メモリーCD8細胞の免疫蛍光染色により評価した。BALB/cマウスからの同系脾細胞を、37℃にて48時間、10μg/mlのリポ多糖とともに活性化させ、得られる芽細胞を、50μg/mlのマイトマイシンCで室温にて20分間処置した。洗浄を繰り返した後、活性化した芽細胞を、ワクチン接種マウスからのインフルエンザ特異的CD8メモリー細胞を拡張させるための抗原提示刺激細胞として使用した。ナイーブ又は免疫マウスからの脾臓細胞を芽細胞とともに5:1の比で培養し、培養物を、5パーセント二酸化炭素下、0.1μg/mlのrHAで37℃にて6日間刺激した。収集した細胞を、抗CD8−フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(eBioscience,San Diego,CA,USA)抗体及びフィコエリトリン(PE)共役Pro5インフルエンザペンタマー試薬(H2−Kd、IYSTVASSL、Proimmune,Oxford,UK)を用いる免疫蛍光染色に使用した。抗CD19−アロフィコシアニン(APC)(eBioscience)も使用してペンタマーとB細胞の非特異的結合を排除した。染色細胞を、FACSCaliburフローサイトメーター(BD Bioscience,Mississauga,ON,Canada)で収集し、WinList 6.0ソフトウェア(Verity Software House,Topsham,ME,USA)を用いてデータ解析を行った。結果を前方及び側方散乱に基づいてゲートし、抗原特異的CD8T細胞をペンタマー陽性、CD8β陽性及びCD19陰性として規定した。スチューデントT検定を用いて統計解析を行った。
【0198】
本発明に相当するワクチンを処方するため、実施例6及び7に記載されるものと同じ手順を用いた。手短に言えば、S100レシチン及びコレステロールの10:1(w:w)の均質な混合物(Lipoid GmbH,Germany)を、rHAの存在下、リン酸緩衝液(pH7.0)中で水和して、rHAを封入しているリポソームを形成し、それに続いてRNAに基づくpolyI:C(Pierce,Rockford,IL,USA)を添加した。このリポソーム懸濁液を半自動式押出機(Avestin,Ottawa,ON,Canada)に通して押出し、サイズの揃ったリポソームを凍結乾燥し(Virtis Advantage凍結乾燥機、SP Industries,Warminister,PA,USA)、鉱油担体(Montanide ISA51(商標)、SEPPIC,France)中で再構成した。各々のワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、polyI:Cアジュバント、及び鉱油担体を含有する50μlの上記製剤からなるものであった。このワクチン製剤を、凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体と称する。
【0199】
上記の凍結乾燥リポソーム製剤の有効性を、50μlの50ミリモル リン酸緩衝液(pH7.0)中1.5μgのrHA及び100μgのImject Alumアジュバント(Pierce,Rockford,IL,USA)からなる対照ワクチンの有効性と比較した。群1のマウス(N=5)に、上記のように50μlの凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体中に処方された1.5μgのrHA抗原及び12.5μgのpolyI:Cアジュバントを1回(追加免疫なし)筋肉内注射した。このワクチンは、実施例6及び7で使用した同じワクチンに相当する(ワクチンD、本発明)。群2のマウス(N=5)に、50ミリモル リン酸緩衝液に懸濁した1.5μgのrHA及び100μgのミョウバンアジュバントからなる対照ワクチンを2回(0日及び28日)接種した。ワクチン接種後21週に、二酸化炭素に誘導される窒息により動物を安楽死させ、脾臓を回収し、標準的な手順を用いて個々の単細胞懸濁液を調製した。次にインフルエンザ特異的CD8メモリーT細胞の存在を、上記のインフルエンザペンタマー免疫蛍光染色を用いて評価した。
【0200】
対照ミョウバンに基づく製剤を接種したマウスは、平均集団サイズが0.02パーセントの(標準偏差0.02パーセント)、抗原特異的CD8メモリーT細胞の小集団を生じ、バックグラウンドを考慮した。他方、本発明に相当する凍結乾燥リポソーム/polyI:C/疎水性担体製剤を接種したマウスは、平均集団サイズが0.51パーセントの(標準偏差0.10パーセント)、抗原特異的CD8メモリーT細胞の有意に大きい集団を生じた(P<0.02)。これらの結果は、polyI:Cアジュバントを含有する単一用量の凍結乾燥リポソーム/疎水性担体製剤が、大きな持続性の抗原特異的CD8メモリーT細胞集団を生じ、それに対して水性/ミョウバン対照ワクチンが2回の免疫の後でさえも有意かつ持続的な細胞応答を生じることができなかったことを実証するので意義深い。
参考文献
Yoneyama M, Kikuchi M, Natsukawa T, Shinobu N, Imaizumi T, Miyagishi M, Taira K, Akira S, Fujita T. 2004. The RNA helicase RIG-I has an essential function in double- stranded RNA-induced innate antiviral responses. Nat Immunol 5(7):730-7.
Dong LW, Kong XN, Yan HX, Yu LX, Chen L, Yang W, Liu Q, Huang DD, Wu MC, Wang HY. 2008. Signal regulatory protein alpha negatively regulates both TLR3 and cytoplasmic pathways in type I interferon induction. MoI Immunol 45(11):3025-35. Epub 2008 May 8.
Trumpfheller C, Caskey M, Nchinda G, Longhi MP, Mizenina O, Huang Y, Schlesinger SJ, Colonna M, Steinman RM. 2008. The microbial mimic poly IC induces durable and protective CD4+ T cell immunity together with a dendritic cell targeted vaccine. Proc Natl Acad Sci U S A 2008 Feb 19;105(7):2574-9.
Alexopoulou L, Holt AC, Medzhitov R, Flavell RA. 2001. Recognition of double-stranded RNA and activation of NF-kappaB by Toll-like receptor 3. Nature 413(6857):732-8.
Chirigos MA, Schlick E, Ruffmann R, Budzynski W, Sinibaldi P, Gruys E. 1985. J Biol Response Mod 4(6):621-7. Pharmacokinetic and therapeutic activity of polyinosinic- polycytidylic acid stabilized with poly-L-lysine in carboxymethylcellulose [poly(l, C)-LC].
Gowen BB, Wong MH, Jung KH, Sanders AB, Mitchell WM, Alexopoulou L, Flavell RA, Sidwell RW. 2007. TLR3 is essential for the induction of protective immunity against Punta Toro Virus infection by the double-stranded RNA (dsRNA), poly(l:C12U), but not PoIy(LC): differential recognition of synthetic dsRNA molecules. J Immunol 178(8):5200-8.
Padalko E, Nuyens D, De Palma A, Verbeken E, Aerts JL, De Clercq E, Carmeliet P, Neyts J. 2004. The interferon inducer ampligen [poly(l)-poly(C12U)] markedly protects mice against coxsackie B3 virus-induced myocarditis. Antimicrob Agents Chemother 48(1 ):267-74.
Nordlund JJ, Wolff SM, Levy HB. 1970. Inhibition of biologic activity of poly I: poly C by human plasma. Proc Soc Exp Biol Med 133(2):439-44.
Agger EM, Rosenkrands I, Olsen AW, Hatch G, Williams A, Kritsch C, Lingnau K, von Gabain A, Andersen CS, Korsholm KS, Andersen P. 2006. Protective immunity to
tuberculosis with Ag85B-ESAT-6 in a synthetic cationic adjuvant system IC31. Vaccine 24(26):5452-60.
Schellack C, Prinz K, Egyed A, Fritz JH, Wittmann B, Ginzler M, Swatosch G, Zauner W, Kast C, Akira S, von Gabain A, Buschle M, Lingnau K. 2006. IC31 , a novel adjuvant signaling via TLR9, induces potent cellular and humoral immune responses. Vaccine 24(26):5461-72.
Llopiz D, Dotor J, Zabaleta A, Lasarte JJ, Prieto J, Borras-Cuesta F, Sarobe P. 2008. Combined immunization with adjuvant molecules poly(l:C) and anti-CD40 plus a tumor antigen has potent prophylactic and therapeutic antitumor effects. Cancer Immunol lmmunother 57(1 ): 19-29.
Riedl K, Riedl R, von Gabain A, Nagy E, Lingnau K. 2008. The novel adjuvant IC31 ((R)) strongly improves influenza vaccine-specific cellular and humoral immune responses in young adult and aged mice. Vaccine 2008 May 5 epub.
Levy HB. 1985. J Biol Response Mod 4(5):475-80. Historical overview of the use of polynucleotides in cancer.
Ichinohe T, Tamura S, Kawaguchi A, Ninomiya A, lmai M, ltamura S, Odagiri T, Tashiro M, Takahashi H, Sawa H, Mitchell WM, Strayer DR, Carter WA, Chiba J, Kurata T, Sata T, Hasegawa H. 2007. Cross-protection against H5N1 influenza virus infection is afforded by intranasal inoculation with seasonal trivalent inactivated influenza vaccine. J Infect Dis 196(9): 1313-20.
Sloat BR, Shaker DS, Le UM, Cui Z. 2008. Nasal immunization with the mixture of PA63, LF, and a PGA conjugate induced strong antibody responses against all three antigens. FEMS Immunol Med Microbiol 52(2): 169-79.
Salem ML, El-Naggar SA, Kadima A, Gillanders WE, Cole DJ. 2006. The adjuvant effects of the toll-like receptor 3 ligand polyinosinic-cytidylic acid poly (I:C) on antigen-specific CD8+ T cell responses are partially dependent on NK cells with the induction of a beneficial cytokine milieu. Vaccine 24(24):5119-32.
Kamath AT, Valenti MP, Rochat AF, Agger EM, Lingnau K, von Gabain A, Andersen P, Lambert PH, Siegrist CA. 2008. Protective anti-mycobacterial T cell responses through exquisite in vivo activation of vaccine-targeted dendritic cells. Eur J Immunol. 38(5): 1247- 56.
Cui Z, Qiu F. 2006. Synthetic double-stranded RNA poly(l:C) as a potent peptide vaccine adjuvant: therapeutic activity against human cervical cancer in a rodent model. Cancer Immunol lmmunother 55(10): 1267-79.
Salem ML, Kadima AN, Cole DJ, Gillanders WE. 2005. Defining the antigen-specific T- cell response to vaccination and poly(l:C)/TLR3 signaling: evidence of enhanced primary and memory CD8 T-cell responses and antitumor immunity. J lmmunother. 28(3):220-8.
Fujimura T, Nakagawa S, Ohtani T, Ito Y, Aiba S. 2006. Inhibitory effect of the polyinosinic-polycytidylic acid/cationic liposome on the progression of murine B16F10 melanoma. Eur J Immunol 36(12):3371-80.
Krown SE, Kerr D, Stewart WE 2nd, Field AK, Oettgen HF. 1985. Phase I trials of poly(l,C) complexes in advanced cancer. J Biol Response Mod 1985 Dec;4(6):640-9.
Zhu X, Nishimura F, Sasaki K, Fujita M, Dusak JE, Eguchi J, Fellows-Mayle W, Storkus WJ, Walker PR, Salazar AM, Okada H. 2007. Toll like receptor-3 ligand poly-ICLC promotes the efficacy of peripheral vaccinations with tumor antigen-derived peptide epitopes in murine CNS tumor models. J Transl Med. 12:10.
de Clercq E, Torrence PF, Stollar BD, Hobbs J, Fukui T, Kakiuchi N, lkehara M. 1978. Interferon induction by a 2'-modified double-helical RNA, poly(2'-azido-2'-deoxyinosinic acid). polycytidylic acid. Eur J Biochem. 88(2):341-9.
Bobst AM, Langemeier PW, Torrence PF, De Clercq E. 1981. Interferon induction by poly(inosinic acid).poly(cytidylic acid) segmented by spin-labels. Biochemistry 20(16):4798-803.
De Clercq E, Hattori M, Ikehara M. 1975. Antiviral activity of polynucleotides: copolymers of inosinic acid and N2-dimethylguanylic of 2-methylthioinosinic acid. Nucleic Acids Res 1975 2(1 ):121-9.
Guschlbauer W, Blandin M, Drocourt JL, Thang MN. 1977. Poly-2'-deoxy-2'-fluoro- cytidylic acid: enzymatic synthesis, spectroscopic characterization and interaction with poly-inosinic acid. Nucleic Acids Res 4(6): 1933-43.
Fukui T, Kakiuchi N, lkehara M. Polynucleotides. 1977. XLV Synthesis and properties of poly(2'-azido-2'-deoxyinosinic acid). Nucleic Acids Res. 4(8):2629-39.
Johnston Ml, Stollar BD, Torrence PF, Witkop B. 1975. Structural features of double- stranded polyribonucleotides required for immunological specificity and interferon induction. Proc Natl Acad Sci U S A. 72(11 ):4564-8.
Kende M, Lupton HW, Rill WL, Gibbs P, Levy HB, Canonico PG. 1987. Ranking of prophylactic efficacy of poly(ICLC) against Rift Valley fever virus infection in mice by incremental relative risk of death. Antimicrob Agents Chemother. 31 (8): 1194-8.
Poast J, Seidel HM, Hendricks MD, Haslam JA, Levy HB, Baron S. 2002. Poly I:CLC induction of the interferon system in mice: an initial study of four detection methods. J Interferon Cytokine Res 22(10): 1035-40.
Sarma PS, Shiu G, Neubauer RH, Baron S, Huebner RJ. 1969. Proc Natl Acad Sci U S A 62(4): 1046-51. Virus-induced sarcoma of mice: inhibition by a synthetic polyribonucleotide complex.
Stephen EL, Sammons ML, Pannier WL, Baron S, Spertzel RO, Levy HB. 1977. Effect of a nuclease-resistant derivative of polyriboinosinic-polyribocytidylic acid complex on yellow fever in rhesus monkeys (Macaca mulatta). J Infect Dis 136(1 ): 122-6.
Levy HB, Lvovsky E. 1978. Topical treatment of vaccinia virus infection with an interferon inducer in rabbits. J Infect Dis. 137(1):78-81.
Durie BG, Levy HB, Voakes J, Jett JR, Levine AS.1985. PoIy(I,C)-LC as an interferon inducer in refractory multiple myeloma. J Biol Response Mod. 4(5):518-24.
Salazar AM, Levy HB, Ondra S, Kende M, Scherokman B, Brown D, Mena H, Martin N, Schwab K, Donovan D, Dougherty D, Pulliam M, lppolito M, Graves M, Brown H, Ommaya A. 1996. Long-term treatment of malignant gliomas with intramuscularly administered polyinosinic-polycytidylic acid stabilized with polylysine and carboxymethylcellulose: an open pilot study. Neurosurgery 38(6): 1096-103; discussion 1103-4.
Theriault RL, Hortobagyi GN, Buzdar AU, Levy HB, Hersh EM. 1986. Evaluation of polyinosinic-polycytidylic and poly-L-lysine in metastatic breast cancer. Cancer Treat Rep. 70(11 ):1341-2.
Nakamura O, Shitara N, Matsutani M,Takakura K, MachidaH. 1982. Phase l-ll trials of poly(ICLC) in malignant brain tumor patients. J Interferon Res 2(1 ): 1-4.
Bever CT Jr, Salazar AM, Neely E, Ferraraccio BE, Rose JW, McFarland HF, Levy HB, McFarlin DE. 1986. Preliminary trial of poly ICLC in chronic progressive multiple sclerosis. Neurology 36(4):494-8.
Talmadge JE, Adams J, Phillips H, Collins M, Lenz B, Schneider M, Chirigos M. 1985. lmmunotherapeutic potential in murine tumor models of polyinosinic-polycytidylic acid and poly-L-lysine solubilized by carboxymethylcellulose. Cancer Res 45(3): 1066-72.
Droller MJ. 1987. Immunotherapy of metastatic renal cell carcinoma with polyinosinic- polycytidylic acid. J Urol. 137(2):202-6.
Awasthi A, Mehrotra S, Bhakuni V, Dutta GP, Levy HB, Maheshwari RK. 1997. Poly ICLC enhances the antimalarial activity of chloroquine against multidrug-resistant Plasmodium yoelii nigeriensis in mice. J Interferon Cytokine Res. 17(7):419-23.
Puri SK, Dutta GP, Levy HB, Maheshwari RK. 1996. Poly ICLC inhibits Plasmodium cynomolgi B malaria infection in rhesus monkeys. J Interferon Cytokine Res. 16(1):49-52.
Houston WE, Crabbs CL, Stephen EL, Levy HB. 1976. Modified polyriboinosinic- polyribocytidylic acid, an immunological adjuvant. Infect lmmun 14(1 ):318-9.
Stephen EL, Hilmas DE, Mangiafico JA, Levy HB. 1977. Swine influenza virus vaccine: potentiation of antibody responses in rhesus monkeys. Science 197(4310): 1289-90.
Zaks K, Jordan M, Guth A, Sellins K, Kedl R, Izzo A, Bosio C, Dow S. 2006. Efficient immunization and cross-priming by vaccine adjuvants containing TLR3 or TLR9 agonists complexed to cationic liposomes. J Immunol 176(12):7335-45.
Hendrix CW, Margolick JB, Petty BG, Markham RB, Nerhood L, Farzadegan H, Ts'o PO, Lietman PS. 1993. Biologic effects after a single dose of poly(l):poly(C12U) in healthy volunteers. Antimicrob Agents Chemother. 37(3):429-35.
Greene JJ, Alderfer JL, Tazawa I, Tazawa S, Ts'o PO, O'Malley JA, Carter WA. 1978. Interferon induction and its dependence on the primary and secondary structure of poly(inosinic acid).poly(cytidylic acid). Biochemistry 17(20):4214-20.
【0201】
本明細書において引用される全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が具体的にかつ個別に本明細書に援用されると示されるかのように、参照により本明細書に援用される。任意の刊行物の引用は、出願日より前のその開示に対するものであり、本発明が従前の発明によってかかる刊行物に先行する権利を与えられないことを承認すると解釈されるべきではない。
【0202】
本明細書及び添付される特許請求の範囲において用いられる、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上明らかに指示されている場合を除いて複数形への参照が含まれる。別に指定されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0203】
前述の発明は、理解を明確にするために説明及び実例を目的として多少詳細に記載されたが、添付される特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明の教示に照らしてある種の変更及び修正を本発明に加えてもよいことは、当業者に容易に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗原;
(b)リポソーム;
(c)polyI:Cポリヌクレオチド;及び
(d)疎水性物質の連続相を含む担体
を含む、組成物。
【請求項2】
polyI:CポリヌクレオチドがRNA又はDNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
polyI:CポリヌクレオチドがRNA及びDNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
polyI:Cポリヌクレオチドがホモポリマー又はヘテロポリマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
polyI:Cポリヌクレオチドが、ホモポリマー性polyI:Cポリヌクレオチド 及びヘテロポリマー性polyI:Cポリヌクレオチドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物を製造するための方法であって、前記方法が、任意の順序で:
(a)抗原;
(b)リポソーム;
(c)polyI:Cポリヌクレオチド;及び
(d)疎水性物質の連続相を含む担体
を結合する段階を含む、方法。
【請求項7】
前記抗原が前記リポソームに封入されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記polyI:Cポリヌクレオチドが前記リポソームに封入されている、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記polyI:Cポリヌクレオチドが前記リポソームの外側に付加されている、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の方法に従って調製された組成物。
【請求項11】
請求項1から5及び10のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項12】
前記被験体において前記抗原に対する抗体応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導するための方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、アレルゲン、又は抗原を発現する腫瘍細胞により引き起こされる疾患の治療及び/又は予防のための方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
治療及び/又は予防が、被験体において抗原に対する抗体及び/又は細胞性免疫応答を誘導することを含み、前記被験体がウイルス感染しているか、又はウイルス感染を発症するリスクのある、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ウイルス感染がインフルエンザウイルス感染である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
治療及び/又は予防が、被験体において抗原に対する抗体及び/又は細胞性免疫応答を誘導することを含み、前記被験体が癌であるか、又は癌を発症するリスクのある、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法であり、前記神経変性疾患が抗原の発現に関連している、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
組成物が、被験体において対照組成物により誘導される応答と比較して少なくとも1.5倍高い免疫応答を誘導する、請求項11から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
組成物が、被験体において対照組成物により誘導される応答と比較して少なくとも5倍高い免疫応答を誘導する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組成物が、鼻腔、中咽頭、眼球、経口、直腸、舌下、尿生殖器粘膜、鼻腔内、中咽頭、気管内、肺内、経皮、肺内外、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下又は粘膜下の経路を介して投与される、請求項11から20のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2011−523653(P2011−523653A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511943(P2011−511943)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000692
【国際公開番号】WO2009/146523
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(508105740)イムノバクシーン・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOVACCINE TECHNOLOGIES INC.
【Fターム(参考)】