説明

リポポリサッカリド除染

目的の生物薬剤の分子の精製の間にリポポリサッカリドを選択的除去するための物質および方法は、リポポリサッカリドを結合するポリマー状基材に基づく。好ましくは、上記ポリマー状基材は、ヘプトースおよび2−ケト−3−デオキシオクトン酸(deoxyoctonic acid)のうちの少なくとも一方に対して選択的である。上記基材は、(i)均一なポリマー溶液およびテンプレート溶液と接触させる工程;(ii)上記得られた溶液の転相を行う工程;ならびに(iii)上記テンプレートを除去する工程を包含するプロセスによって形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年1月7日に出願された英国特許出願第0800228.9号(この全ての内容は、参考として本明細書に援用される)からの優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、リポポリサッカリド除染の分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景)
リポポリサッカリドは、グラム陰性細菌(例えば、Escherichia coliおよびSalmonella enterica)が増殖するか、もしくはこれらが溶解される場合に、放出される。上記リポポリサッカリドは、強力な細菌毒素(エンドトキシンとして公知)として機能し、グラム陰性細菌の感染と関連する多くの毒性かつ免疫原性効果の原因である。エンドトキシンは、細菌から調製されるプラスミドDNA中の頻繁な汚染物質であり、従って、いかなる望ましくない炎症応答をも予防するために、任意のインビボでの増殖の前に除去されなければならない。同様に、グラム陰性細菌から調製される他の生体分子(例えば、グラム陰性細菌の莢膜ポリサッカリドもしくはEscherichia coli由来組換えタンパク質)、および同様に、製薬用の水(pharmaceutical water)を、残留性のエンドトキシンから精製することは、望ましい。
【0004】
従って、リポポリサッカリド、もしくはエンドトキシンを、目的の生物薬剤(biopharmaceutical)の分子を精製する間に選択的に除去する能力は、望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の開示)
本発明は、目的の生物薬剤の分子を精製する間に、リポポリサッカリドを選択的に除去するための物質および方法を提供する。
【0006】
よって、本発明は、リポポリサッカリドの吸着のための膜を提供し、上記膜は、リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材(polymeric substrate)を含む。好ましくは、上記ポリマー状基材は、ヘプトースおよび2−ケト−3−デオキシオクトン酸(2−keto−3−deoxyoctonic acid)のうちの少なくとも一方に対して選択的である。
【0007】
本発明はまた、リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材を形成するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、
i.均一なポリマー溶液およびテンプレート溶液を接触させる工程;
ii.上記得られた溶液の転相を行う工程;ならびに
iii.上記テンプレートを除去する工程
を包含する。
【0008】
本発明は、リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材を形成するための別のプロセスをさらに提供し、上記プロセスは、
i.モノマー溶液およびテンプレート溶液を接触させる工程;
ii.上記モノマーの架橋基を反応させて、ポリマーを形成する工程;ならびに
iii.上記テンプレートを除去する工程、
を包含する。
【0009】
好ましくは、各プロセスは、膜を作製する工程をさらに包含する。
【0010】
さらに、本発明は、懸濁物からリポポリサッカリドを除去するための方法を提供し、上記方法は、
i.リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材を提供する工程;および
ii.上記懸濁物と、上記ポリマー状基材とを接触させる工程、
を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、Kdoインプリント(imprinted)膜および非インプリント膜での濾過後の、エンドトキシンの%回収を示す。四角形は、MIMであり;三角形は、NMIMである。X軸は、濾液体積(ml)である。
【図2】図2は、再使用のKdoインプリント膜および非インプリント膜での濾過後のエンドトキシンの%回収を示す。黒塗りのバーは、MIMであり、白塗りのバーは、NMIMである。X軸は、濾液体積(ml)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
(グラム陰性細菌)
本発明は、グラム陰性細菌に由来するリポポリサッカリドに関する。これら細菌の多くの種は病原性であり、この特徴は、上記細菌細胞のリポポリサッカリド層と特に関連する。グラム陰性細菌としては、プロテオバクテリア(Escherichia、Salmonella、および他のEnterobacteriaceae、Pseudomonas、Moraxella、Helicobacter、Stenotrophomonas、Bdellovibrio、Yersinia、酢酸菌およびLegionellaが挙げられる);シアノバクテリア;スピロヘータ;緑色硫黄細菌;および緑色非硫黄細菌が挙げられるが、これらに限定されない。グラム陰性球菌としては、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidisおよびMoraxella catarrhalisが挙げられる。グラム陰性桿菌としては、Hemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Proteus mirabilis、Enterobacter cloacae、Serratia marcescens、Helicobacter pylori、Salmonella enteritidis、およびSalmonella typhiが挙げられる。院内グラム陰性細菌としては、Acinetobacter baumaniiが挙げられる。
【0013】
(リポポリサッカリド)
グラム陰性細菌の膜の最外層は、主にリポポリサッカリドからなり、これらの全ては、これらが由来する細菌に拘わらず、脂質成分(リピドAといわれる)および親水性ヘテロポリサッカリドからなる、共通の基本的構造を有する。リピドAは、上記膜内の分子を固定するアンカーを提供する一方で、上記ポリサッカリド成分は、表面から突出し、外部環境と相互作用する。
【0014】
リポポリサッカリドのヘテロポリサッカリドユニットは、2つの部分を含む:コアオリゴサッカリドおよびオリゴサッカリドの複雑なポリマーを含む外側のO特異的ポリサッカリド側鎖(この側鎖は、上記リポポリサッカリドの抗原特異性を決定し、しばしばO抗原といわれる)。この成分は、これを合成した特定の細菌に特有である;異なる細菌は、上記O特異的ポリサッカリド側鎖の長さおよび微細構造において異なるリポポリサッカリド分子を合成する。上記コアの内部部分は、特徴的かつ普通でない成分である、ヘプトース(L−グリセロ−D−マンノ配置において)および2−ケト−3−デオキシオクトン(もしくは3−デオキシ−D−マンノ−オクト−2−ウロソン)酸(Kdo)を含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「ヘプトース」とは、「L−グリセロ−D−マンノ−ヘプトース」をいうことが理解され、用語「2−ケト−3−デオキシオクトン酸」とは、「3−デオキシ−D−マンノ−オクト−2−ウロソン酸」をいうことが理解される。
【0016】
好ましくは、本発明の膜を形成する上記ポリマー状基材は、ヘプトースおよび2−ケト−3−デオキシオクトン酸のうちの少なくとも一方に対して選択的である。上記で議論されるように、これら普通でない糖は、リポポリサッカリドに特徴的である。上記部分を認識しかつ選択的に結合することができるポリマー状基材は、リポポリサッカリドを、懸濁物から除去し得る。
【0017】
(リポポリサッカリドの吸着)
本発明は、リポポリサッカリドを吸着するための膜を提供し、上記膜は、リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材を含む。本発明の状況において、「膜」は、溶液もしくは懸濁物中の特定の物質に対して透過性の物質の薄いシートである。本発明の膜は、ポリマー状基材もしくはマトリクスから形成される連続性の媒体であり、平らな、凹状のもしくは凸状のシートとして形成され得るか、または任意の他の適切な形状をとり得る。上記膜を横切ることを妨げられる分子は、これらの物理的もしくは化学的特性によって識別される。本発明の方法は、リポポリサッカリドの懸濁物からの除去のために、上記ポリマー状基材の異なる配置(例えば、懸濁物中の別個の粒子もしくはマイクロスフェア)を使用し得る。あるいは、上記ポリマー状基材は、固体状態の支持体(例えば、ビーズ、プレート、カラム、フィルタもしくは多孔性の固体)に結合させられ得る。
【0018】
吸着は、物理吸着および化学吸着のうちのいずれかもしくは両方によって、起こり得る。上記ポリマー状基材上に吸着される分子は、処理されている懸濁物から除去される。上記懸濁物の処理後に、上記ポリマー状基材上に吸着される分子は、上記ポリマー状基材が再使用されるように、当該分野で公知の方法によって除去され得る。
【0019】
上記ポリマー状基材は、当該分野で公知である、任意の適切なモノマー、ポリマー、およびコポリマーの組み合わせから形成され得る。好ましくは、上記ポリマー状基材は、分子インプリンティング技術によって形成される。この技術は、分子認識が可能であるポリマー状基材を生成する。上記ポリマーマトリクスは、化学種の間を区別しかつ特定の官能基を示す化学種を結合し得るので、高レベルの選択性を与える。
【0020】
本発明の別の局面は、テンプレートの存在下で、機能性モノマーのセットを重合することによって、上記分子的にインプリントされたポリマー状基材の形成のためのプロセスを提供する。上記機能的モノマーは、機能的ヘッド基(これは、上記テンプレートと結合相互作用が可能である)、および架橋基(これは、他のモノマーに共有結合し得る)を含み得る。上記重合工程は、連鎖重合(chain−growth polymerisation)もしくは逐次重合(step−growth polymerisation)を包含し得、当該分野で公知の任意の手段によって開始され得る。本発明のさらなる局面は、テンプレートを含む均一なポリマー溶液の転相によって、上記分子的にインプリントされたポリマー状基材の形成のためのプロセスを提供する。
【0021】
上記テンプレートをその後に抽出すると、上記テンプレートにサイズ、形状および官能基が補完的である、上記ポリマー状基材中の孔が、後に残る。この孔は、単離中の上記テンプレート、もしくはこれらの構造内に上記テンプレートの官能基を組み込む(すなわち、官能基の同じ特定の配置を含む)分子のいずれかを結合し得る。従って、本発明において、ヘプトースおよび/もしくは2−ケト−3−デオキシオクトン酸、またはこれらの化学構造を含む小さなオリゴサッカリドは、リポポリサッカリドを選択的に結合するポリマー状基材の製造のためのテンプレートとして使用され得る。ポリマー状基材を形成するためのプロセスは、必要とされる選択性を上記ポリマー状基材に与えるために、好ましくは、ヘプトースおよび2−ケト−3−デオキシオクトン酸のうちの少なくとも一方を含むテンプレート溶液の使用を包含する。これら分子的にインプリントされたポリマー状基材は、本発明の生物分離(bio−separation)のために、上記多孔性膜へと作製され得る。
【0022】
好ましい実施形態において、上記ポリマー状基材は、転相によって得られる。
【0023】
上記ポリマー状基材は、1個以上の極性基を含み得る。例えば、上記ポリマー状基材は、1種以上のアミン、ヒドロキシルもしくはスルフヒドリル基、特に、ヒドロキシル基を含み得る。本発明者らは、ヒドロキシル基を含むポリマー状基材がリポポリサッカリドを結合し得ることを見いだした。例えば、上記ポリマー状基材は、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、すなわち、転相によって分子的にインプリントされたポリマー状基材を形成するための方法において使用され得るコポリマーを含み得る。名称EVALTMの下で販売されているこのコポリマーの特性は、その構成モノマー(エチレンおよびビニルアルコール)の重合比、および上記重合反応の間に達成される重合の程度の制御によって、決定される。得られたランダムの結晶性ポリマーは、以下の分子式によって表される:
−(CH−CH−(CH−CHOH)
ここでmおよびnは整数である。エチレン:co−ビニルアルコールの任意の適切な比が、使用され得る。特に、30〜60:70〜40の比が、使用され得、特に、40〜50:60〜50の比が使用され得る。例えば、30:70、31:69、32:68、33:67、34:66、35:65、36:64、37:63、38:62、39:61、40:60、41:59、42:58、43:57、44:56、45:55、46:54、47:53、48:52、49:51、50:50、51:49、52:48、53:47、54:46、55:45、56:44、57:43、58:42、59:41もしくは60:40の比が、使用され得、特に、40:60、41:59、42:58、43:57、44:56、45:55、46:54、47:53、48:52、49:51もしくは50:50の比が、使用され得る。本発明者らは、44:56の比が、リポポリサッカリドを結合するために適していることを見いだした。
【0024】
本発明の別の局面は、懸濁物からリポポリサッカリドを除去するための方法を提供し、上記方法は、上記のように、上記懸濁物と、リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材とを接触させる工程を包含する。上記ポリマー状基材は、膜もしくは別個の粒子の形態で存在していてもよいし、固体状態の支持体に結合されていてもよい。好ましくは、上記懸濁物は、例えば、生物学的流体の形態で、水を含む。より好ましくは、上記懸濁物は、薬学的成分を含む。さらにより好ましくは、上記薬学的成分は、細菌ワクチンである。LPSが除去され得る他の物質は、上記薬学的成分を含む最終投与形態の調製物および/もしくは処方物において使用される物質である。
【0025】
(一般)
用語「含む(comprising)」とは、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXからなっていてもよいし、さらなる何かを含んでいてもよい(例えば、X+Y)。
【0026】
用語「懸濁物」とは、溶液および任意のコロイド性の分散物を含み、ここである種は、溶媒中に懸濁されたままであってもよいし、均一な混合物を形成するように溶媒和化されてもよい。
【0027】
用語「薬学的成分」とは、ヒトもしくは獣医的用途が意図された薬物をいう。
【0028】
本発明の方法は、調製目的および/もしくは分析目的のために使用され得る。「調製」などへの言及は、分析法を排除すると解釈されるべきではない。
【0029】
用語「細菌ワクチン」とは、細菌、減弱細菌もしくは死滅細菌、またはそれらの抗原性誘導体の懸濁物であって、細菌性疾患の予防もしくは処置のための免疫応答を誘導するために投与され得るものをいう。
【0030】
用語「オリゴサッカリド」とは、少数(代表的には、3〜20個)の成分となる糖を含むサッカリドポリマーをいう。
【0031】
「固体状態の支持体」とは、特定の溶媒系(例えば、水もしくは有機溶媒)において不溶性であるものをいう。これは、ガラス、セラミック、金属、プラスチック、木材、もしくはポリマー状基材が結合させられ得る任意の他の物質から構成され得る。
【0032】
本明細書で記載される化合物のイオン化可能な基が、例えば、pHに依存して、中性の形態において、または荷電した形態において存在し得ることは、認識される。例えば、カルボキシル−COOHは、アニオン性の−COO基を与えるために脱プロトン化され得る。任意の荷電した分子の塩はまた、本発明において使用され得る。
【0033】
(発明を実施するための形態)
(LPS捕捉のための分子がインプリントされた膜の調製、特徴付けおよび試験)
(緒言)
Kdoの特異的認識のための膜を、分子インプリント技術を使用して調製した。上記膜を、転相手順を使用して形成した。上記膜の製造において使用されるポリマー溶液は、EVALTM(ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール))であり、エチレン:co−ビニルアルコール比は44:56であった。上記テンプレート溶液は、Kdoを含んでいた。
【0034】
(膜調製)
NMIM−非インプリント(コントロール)膜(テンプレートなしで調製)。DMSO中のEVALTMの15% 懸濁物を、均一な溶液が得られるまで、100℃において撹拌しながら加熱した。次いで、この溶液の2〜3.5mlを、8.5×14cmガラス支持体上に注ぎ、400μm厚の均一な層を、ナイフで切ることによって得た。上記層を、HO/DMSO(50/50 v/v)から構成される400mlの第1の凝固(転移(inversion))バスで1時間にわたって凝固させた。次いで、上記膜を、400mlのHO中に6時間にわたっておいた。この転移手順の最後に、上記膜を、凍結乾燥によって乾燥させた。得られた膜は、200μmの厚みを有した。
【0035】
MIMインプリントされた(試験)膜(テンプレートで調製)。この膜を、出発懸濁物が、50mgのKdoを含むDMSO中、EVALTMの15% 懸濁物3mlであったことを除いて、上記と同じ手順を使用して調製した。膜調製の後に、残りのテンプレートを、0.2バールの圧力で作動する再循環システムを使用して、水で上記膜を完全に洗い流すことによって、除去した。
【0036】
(Kdoについての試験膜能力)
上記MIMのKdoに対する結合能を決定するために、100mlの、10μg/ml Kdo水溶液を、濾過デバイス上に組み立てられたMIMを通して一晩再循環させた。0時間と、再循環の最後との間の再循環溶液中の上記Kdo濃度の差異を、上記再循環の間に使用される溶液の総体積および膜の重量に基づいて、Kdoに対する結合能を計算するために使用した。約8μg/mg 膜という値が、認められた。類似の実験において、NMIMは、Kdoに対して顕著な結合能を有さなかった。Kdoに対する上記MIM膜の選択性を試験するために、類似の実験を行った。ここで上記Kdoを、シアル酸で置換した。シアル酸に対する顕著な結合能は認められなかった(1μg/mg 膜)。シアル酸濃度およびKdo濃度を、Osborn(1963) PNAS,50:499−506の手順を使用して決定した。
【0037】
(LPS結合実験)
MIM膜の一部分を切断し、濾過ホルダーにフィットさせて、濾過表面積4.9cmを提供した。次いで、シリンジを、発熱物質を含まない蒸留水、続いて、0.1M NaOHで洗い流し、浸透物が中性pHになるまで、蒸留水で再び上記システムを洗い流すために使用した。
【0038】
50UI/mlの濃度の、標準的なE.coliリポポリサッカリド(LPS)溶液10ml(合計500UI)を、上記シリンジを使用して、上記膜を通過させた。2.5mlの4つの画分を集め、エンドトキシン濃度のLimulus Amoebocyte溶解物(LAL)分析のために、0.7mlのサンプルを各画分から採取した。次いで、上記画分を、一緒にプールし(プール1)、上記プールした総浸透物の0.7mlサンプルを、分析のために取り出した。
【0039】
上記浸透物の6mlを、上記膜にもう一度通した。このとき、1.5mlの4つの画分を集め、0.7mlサンプルを、分析のために各画分から取り出した。次いで、これら画分を、一緒にプールし(プール2)、分析のためにさらに0.7mlサンプルを取り出した。
【0040】
使用後に、上記膜を、浸透物が中性pHになるまで、蒸留水、0.1M NaOHおよび蒸留水で再び洗い流した。
【0041】
上記フィルタ(SM)上に載せた出発物質および他のサンプルのエンドトキシン濃度を、分析した(表1)。
【0042】
【表1】

同じ条件を使用する実験を、上記NMIM膜で行った(表2)。
【0043】
【表2】

これら2つの実験の結果を、図1にまとめる。上記2つの実験を、同じ(すなわち、使用した)MIM膜およびNMIM膜を使用して行った(表3、図2)。
【0044】
【表3】

(考察)
Kdo(LPSの保存された成分)を選択的に結合し得る膜を調製した。
【0045】
新たにインプリントした膜(MIM)は、最初に載せたもののうちの約80%のLPSを結合する潜在能力を示した。コントロール膜(NMIM)は、LPSの何ら顕著な結合を示さなかった(表1および表2、図1を比較のこと)。上記MIM濾液は、最初のLPS負荷のうちの約12%を含んでいた(表1、プール1)。しかし、上記膜を蒸留水で洗い流し、そしてLPSを再度載せた後、さらなるLPS結合は認められなかった(表1、プール2)。このことは、上記膜がLPSで飽和した可能性があることを示唆する。
【0046】
上記膜を再使用した場合、異なる挙動が認められた(表3)。両方の膜は、最初のLPS負荷のうちの約50〜60%を保持するようであった。しかし、LPSの累積回収の分析は、上記インプリントした膜が、上記濾過プロセスの少なくとも最初において、LPSのより優れた結合をなお実証したことを示唆する(図2)。再使用膜で認められた結果は、上記膜の再利用が好ましくないことを示唆する。理論に拘束されることを望まないが、構造的改変が、上記膜の最初の使用後に起こり、これが、異なる特性およびおそらく非特異的結合(aspecific binding)を付与することが考えられる。代わりに/さらに、再使用前に上記MIM膜で行われる洗浄手順が、結合したLPSの全てを除去するに十分ではないことが考えられ、このことは、最初のKdo結合部位の全てが利用可能なわけではないことを意味する。
【0047】
これら結果は、分子インプリント技術の原理を利用して、水溶液からLPSを認識しかつ結合する濾過膜を製造することが可能であることを確認する。
【0048】
本発明は、例示によって記載されてきたに過ぎず、改変が、本発明の範囲および趣旨内にとどまりつつなされ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポポリサッカリドを吸着するための膜であって、リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材を含む、膜。
【請求項2】
前記ポリマー状基材は、ヘプトースおよび2−ケト−3−デオキシオクトン酸のうちの少なくとも一方に対して選択的である、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記リポポリサッカリドは、グラム陰性細菌に由来する、請求項1および2のいずれか1に記載の膜。
【請求項4】
前記グラム陰性細菌は、プロテオバクテリア、シアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌、緑色非イオウ細菌、クレンアーキオータ(crenarchaeota)、球菌、桿菌もしくは院内細菌(nosocomial bacteria)である、請求項3に記載の膜。
【請求項5】
リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材を形成するためのプロセスであって、該プロセスは、
i.均一なポリマー溶液およびテンプレート溶液を接触させる工程;
ii.得られた溶液の転相を行う工程;ならびに
iii.該テンプレートを除去する工程
を包含する、プロセス。
【請求項6】
リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材を形成するためのプロセスであって、該プロセスは、
i.モノマー溶液およびテンプレート溶液を接触させる工程;
ii.該モノマーの架橋基を反応させて、ポリマーを形成する工程;ならびに
iii.該テンプレートを除去する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項7】
膜を作製する工程をさらに包含する、請求項5および6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記テンプレート溶液は、ヘプトースおよび2−ケト−3−デオキシオクトン酸のうちの少なくとも一方を含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
懸濁物からリポポリサッカリドを除去するための方法であって、該方法は、
i.リポポリサッカリドに結合するポリマー状基材を提供する工程;および
ii.該懸濁物と該ポリマー状基材とを接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項10】
前記ポリマー状基材は、膜の形態で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー状基材は、別個の粒子の形態で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー状基材は、固体状態の支持体に結合されている、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー状基材は、ヘプトースおよび2−ケト−3−デオキシオクトン酸のうちの少なくとも一方に対して選択的である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記リポポリサッカリドは、グラム陰性細菌に由来する、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記グラム陰性細菌は、プロテオバクテリア、シアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌、緑色非イオウ細菌、クレンアーキオータ、もしくは院内細菌である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記懸濁物は、水を含む、請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記懸濁物は、薬学的成分を含む、請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記薬学的成分は、細菌ワクチンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー状基材は、1つ以上の極性基を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の膜、プロセスもしくは方法。
【請求項20】
前記ポリマー状基材は、1つ以上のヒドロキシル基を含む、請求項19に記載の膜、プロセスもしくは方法。
【請求項21】
前記ポリマー状基材は、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の膜、プロセスもしくは方法。
【請求項22】
前記ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)中のエチレン:co−ビニルアルコールの比は、30〜60:70〜40である、請求項21に記載の膜、プロセスもしくは方法。
【請求項23】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のプロセスによって生成される、ポリマー状基材。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−508772(P2011−508772A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541129(P2010−541129)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/000133
【国際公開番号】WO2009/087571
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】