説明

リポ酸誘導体含有水性製剤の安定化

【課題】 6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩を有効濃度含有する、安定な水性製剤を提供する。
【解決手段】 6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩と水溶性ポリビニル化合物を含有する水性製剤。6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩に水溶性ポリビニル化合物を配合することを特徴とする、水性製剤中の6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩を可溶化および安定化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩を含有する水性製剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩と水溶性ポリビニル化合物を含有する水性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、またはその薬理学的に許容できる塩はシワ、シミ、ソバカス、色素沈着の予防・治療に有用である(特許文献1参照)。
【0003】
6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩はメラニン色素凝集沈着(シミ、ソバカス、ホクロ)の除去に有用である(特許文献2参照)。
【0004】
α−リポ酸の誘導体である6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスの塩は水に溶解して安定であるが、日光下で長時間曝された場合、白濁または沈殿物を生じる欠点がある。この欠点を解決するために水溶性ポリビニル化合物を加えてその安定化を検討した。
【0005】
【特許文献1】国際公開 PCT WO02/076935 A1
【特許文献2】国際公開 PCT WO2004/024139 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩を含有する安定な水性液剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは種々検討を重ねた結果、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩を含有する水性製剤に水溶性ポリビニル化合物を配合することにより、日光下でも安定な水性製剤を得ることができることを見出し、さらに研究を進めて本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次のものを提供する。
(1)6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩と水溶性ポリビニル化合物を含有する水性製剤。
(2)水溶性ポリビニル化合物として、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、またはカルボキシビニルポリマーおよびその塩からなる群から選ばれるものである上記(1)記載の水性製剤。
(3)水溶性ポリビニル化合物の濃度として下限濃度が0.01w/v%で、上限濃度が2.0w/v%の範囲から選択される上記(1)または(2)のいずれかに記載の水性製剤。
(4)6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩の濃度は下限濃度が0.01w/v%で、上限濃度が5.0w/v%の範囲から選択される上記(1)〜(3)のいずれかに記載の水性製剤。
(5)水性製剤のpHが5〜9の範囲内である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水性製剤。
(6)注射剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水性製剤。
(7)点眼剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水性製剤。
(8)化粧品である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水性製剤。
(9)6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩に水溶性ポリビニル化合物またはその水和物を配合することを特徴とする、水性製剤中の6,8−ジメルカプトオクタン酸、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩を可溶化および安定化する方法。
【0009】
本発明の水性製剤に用いられる水溶性ポリビニル化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、またはカルボキシビニルポリマーおよびその塩、およびそれらの水和物などが挙げられる。ポリアクリル酸またはカルボキシビニルポリマーの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩などがあり、特に、ゲル化剤として1〜2%が用いられる。また必要に応じてこれらの化合物のうち2種以上を組み合わせて含有させることもできる。
【0010】
6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩およびカルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩が挙げられるが、これら以外の塩であっても薬理学的に許容できる塩であればいずれのものであっても本発明の目的のため適宜に用いることができる。
【0011】
N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス化合物中のアミノ酸の種類としては、グリシン、アラニン、スレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、システイン、シスチン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、リジン(ε−アミノ結合)、β−アラニン、γ−アミノプロピオン酸、6−アミノヘキサン酸、アントラニル酸またはアミノエタンスルホン酸などが挙げられる。
【0012】
6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスの水溶液は還元性を示し安定であるが、直射日光、または室内散乱光で長時間曝した場合は、紫外線が水溶液中の溶存酸素をラジカルに変換させ、それで本化合物の一部が酸化されるためにリポ酸、またはリポイルアミノ酸と亜鉛イオンを遊離させ、亜鉛イオンは水酸化亜鉛、炭酸亜鉛として白濁すると考えられる。
【0013】
そこで、本発明者らは本化合物の水性液に予め水溶性ポリビニル化合物を加えて置くとラジカルの抑制または水酸化亜鉛などによる白濁を防止することが出来た。また、本化合物は濃度にもよるが、0.5(w/v)%程度の水溶液はpH8以下では一部遊離酸を含有するため難溶性を示すが、水溶性ポリビニル化合物を加えることにより、pH7前後でも澄明に溶解できることを突き止め、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の水性製剤は中性付近から弱アルカリで安定であり、酸性側たとえばpH5以下では6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスが沈殿するものが多く、好ましくは、pHは6〜9程度がよい。
【0015】
本発明の水性製剤において、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスまたはその薬理学的に許容できる塩の含有量は、通常、下限0.01w/v%程度、好ましくは0.05w/v%程度、上限5.0w/v%程度、好ましくは1.0w/v%程度とし、使用目的、適応症状の程度に応じて適宜増減する。
【0016】
本発明の水性製剤において、水溶性ポリビニル誘導体の濃度として下限濃度が0.005w/v%程度、好ましくは0.01w/v%程度、上限濃度が2.0w/v%程度、好ましくは0.5w/v%程度である。
【0017】
本発明の水性製剤は、注射液、点眼液、皮膚用剤または化粧品などとして、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスまたはその薬理学的に許容できる塩の自体公知の用途、たとえば酸化ストレスによる種々の疾患、具体的には虚血性心疾患、脳虚血、動脈硬化症、糖尿病、白内障、または皮膚のしみ、そばかすなどの予防・治療に有用である。
【0018】
本発明の水性製剤に用いられる6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスを上記のような疾患の予防・治療剤として使用する際の投与量は、患者の体重や年齢、対象とする疾患の種類やその状態および投与方法などによっても異なるが、例えば注射剤の場合成人1日1回約1mg〜100mg程度投与するのがよい。点眼剤の場合は成人1日数回、1回数滴、濃度が約0.01〜1.0w/v%の点眼液を投与するのがよい。また、化粧品の場合、剤型により多少異なるが、ローションおよびクリーム剤の通常の濃度が0.01〜1.0w/v%で投与するのがよい。
【0019】
本発明の水性液剤には、本発明の目的に反しない限り、通常用いられる等張化剤、緩衝剤、粘稠化剤、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、芳香剤等の各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0020】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ブドウ糖、プロピレングリコールなどが挙げられる。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、アミノ酸などが挙げられる。粘稠化剤としては、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。キレート剤としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合燐酸ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤としては、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウム塩類、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどのパラオキシ安息香酸エステル類、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸およびその塩、チメロサールなどが挙げられる。pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸などが挙げられる。芳香剤としては、l−メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油などが挙げられる。
【0021】
本発明の水性製剤に配合される上記各添加剤の濃度は、例えば等張化剤は浸透圧比が0.8〜1.2程度になる濃度に配合し、緩衝剤は0.01〜2w/v%程度、粘稠化剤は0.1〜10w/v%程度である。
【0022】
本発明の水性製剤においては、本発明の目的に反しない限り、その他の同種または別種の薬効成分を適宜含有させてもよい。
【0023】
本発明の水性製剤の製造法は、製剤の種類によって異なるが、各製剤について公知の方法を適宜用いることができる。
【0024】
本発明の水性液剤は、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)に使用することができる。
【0025】
また、本発明の水性製剤は、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスまたはその薬理学的に許容できる塩の化粧品として自体公知の用途、たとえば紫外線吸収(紫外線照射による紅斑、日焼け防止など)、美肌、美白(しみ、そばかすなどの原因であるメラニン色素の沈着防止など)および抗シワを目的とし、またはその他の化粧品成分の安定化を目的として、化粧水、クリーム剤、ローション剤などの化粧品としても使用される。
【0026】
本化合物を化粧品に配合させるときは、通常化粧品に用いられる成分を適宜添加させることができる。それらの成分としては、例えば、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸類、レチノール、酢酸レチノール、ビタミンA油等のビタミンA類、リボフラビン、酢酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド等のビタミンB2類、塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のビタミンB6類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸−2−硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム、パントテニルエチルエーテル、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール等のビタミンD類、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のビタミンE類、その他のビタミン類;グリシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、グルタミン、グルタミン酸、グルタミン酸塩、リジン、メチオニン、システイン、シスチン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、ヒドロキシプロリン等のアミノ酸、N−ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイル−L−アスパラギン酸ジエチル等のN−アシル酸性アミノ酸塩、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン等のアシル中性アミノ酸塩、ピロリドンカルボン酸及びその塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、ヤシ油脂肪酸−L−アルギニンエチルエステル−dl−ピロリドンカルボン酸塩等のアミノ酸誘導体、米ぬか油、落花生油、パーム油、牛脂、アボガド脂、ホホバ脂、ラノリン、流動パラフィン、スクワラン、カルナウバロウ、イソステアリルアルコール、パルミチン酸イソステアリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール等の油類、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールエーテル、コラーゲン、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストラン硫酸ナトリウム等の粘性多糖類、パラヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ジエタノールアミン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、イソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジグリセリルジイソステアレート、リン脂質等の界面活性剤、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等の保存剤、ヒノキチオール、サリチル酸誘導体、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アラントイン、酸化亜鉛等の消炎剤、その他pH調節剤、緩衝剤、香料および着色剤等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下に、実験例、並びに実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0028】
試験例1 光安定性試験
N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−L−ヒスチジン亜鉛
コンプレックスナトリウム 0.5g
ポリビニル化合物 0〜0.3g
グリセリン 2.5g
p−オキシ安息香酸メチル 0.02g
p−オキシ安息香酸プロピル 0.01g
滅菌精製水 全量 100mL
pH 8.5
【0029】
表1.散乱光下に於ける3ヶ月間の経日変化
ポリビニル化合物 外観 pH 残存率
カルボキシビニルポリマー
トリエタノールアミン 0.1g 無色澄明 8.4 65%
ポリビニルピロリドン 0.3g 無色澄明 8.3 59%
無添加 白濁、沈殿物 8.3 42%
【0030】
上記、処方に於ける光実験結果を表1に示した。即ち、ポリビニル化合物、添加処方は窓際の散乱光下で3ヶ月間放置した結果、濁りなど全く認められなかった。また、対照として、ポリビニル化合物の無添加処方は1ヶ月間足らずで濁りを認め、更に、表には記載しなかったが、ポリビニルアルコール0.3%ではやや効果があったが、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびソルビトール各々0.3%には効果は見らなかった。
【0031】
以上の結果から直射日光、または室内散乱光で長時間曝した場合は、紫外線が水溶液中の溶存酸素をラジカルに変換させ、それで本化合物の一部が酸化されるためにリポ酸、またはリポイルアミノ酸と亜鉛イオンを遊離させ、亜鉛イオンは水酸化亜鉛、炭酸亜鉛として白濁すると考えられる。そこで、予め水溶性ポリビニル化合物、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、またはカルボキシビニルポリマーなどを加えて置くとラジカルの抑制効果なのか水酸化亜鉛などによる白濁を防止することが出来た。
【0032】
このことは、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス化合物がラジカル攻撃により、酸化されて生ずる、亜鉛イオンをポリビニル体が架橋体の中に取り込んだのか、またはラジカルの生成を何らかの形で抑制したのか今後の検討を要する。
【0033】
実施例1 注射剤
6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛コンプレックスナトリウム 0.5g
ポリビニルピロリドン 0.4g
塩化ナトリウム 0.8g
注射用蒸留水 全量 100mL
以上の成分を用いて、常法により注射剤とした。
【0034】
実施例2 点眼剤
N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−L−アスパラギン酸亜鉛
コンプレックスモノナトリウム 0.3g
ポリアクリル酸 0.1g
ホウ酸 0.5g
塩化ナトリウム 0.7g
p−オキシ安息香酸メチル 0.026g
p−オキシ安息香酸プロピル 0.014g
1N−水酸化ナトリウム 適量
滅菌精製水 全量 100mL
pH 7.5
以上の成分を用いて、常法により点眼液とした。
【0035】
実施例3 化粧水
N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−L−ヒスチジン亜鉛
コンプレックスナトリウム 0.5g
カルボキシビニルポリマートリエタノールアミン塩 0.1g
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.1g
グリチルレチン酸アンモニウム 0.2g
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.5g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05g
パントテニルアルコール 0.5g
グリセリン 2.5g
p−オキシ安息香酸メチル 0.02g
p−オキシ安息香酸プロピル 0.01g
香料 微量
滅菌精製水 全量 100mL
以上の成分を用いて、常法により化粧水とした。
【0036】
実施例4 化粧水
6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛コンプレックス
モノエタノールアミン 0.5g
カルボキシビニルポリマーナトリウム 0.1g
パントテニルアルコール 0.5g
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.1g
コラーゲン 0.1g
p−オキシ安息香酸メチル 0.05g
香料 微量
滅菌精製水 全量 100mL
以上の成分を用いて、常法により化粧水とした。
【0037】
実施例5 ゲル化剤
N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−L−ヒスチジン亜鉛
コンプレックスナトリウム 1.0g
カルボキシビニルポリマートリエタノールアミン塩 1.0g
ポリビニルアルコール 0.5g
プロピレングリコール 0.5g
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.1g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.2g
p−オキシ安息香酸メチル 0.05g
香料 微量
滅菌精製水 全量 100g
以上の成分を用いて、常法によりゲル化剤とした。
【0038】
実施例6 クリーム剤
N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−L−ヒスチジン亜鉛
コンプレックスナトリウム 0.1g
ポリビニルアルコール 0.1g
ステアリン酸 2.0g
ステアリルアルコール 7.0g
スクワラン 5.0g
オクチルデカノール 6.0g
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3.0g
グリセリンモノステアレート 2.0g
プロピレングリコール 5.0g
p−オキシ安息香酸メチル 0.05g
p−オキシ安息香酸プロピル 0.02g
滅菌精製水 全量 100g
以上の成分を用いて、常法によりクリーム剤とした。
【0039】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスまたはその薬理学的に許容できる塩に、水溶性ポリビニル化合物を配合することにより、有効濃度の6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する安定な水性製剤を調製できる。
【0041】
本発明の水性製剤は、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックスまたはその薬理学的に許容できる塩に水溶性ポリビニル化合物を加えることにより紫外線などによる白濁、沈殿発生防止に効果的な安定な製剤であり、例えば注射剤や点眼剤として、酸化ストレスによる種々の疾患、たとえば虚血性心疾患、脳虚血、動脈硬化症、糖尿病、白内障などの予防・治療に有用である。また、本発明の水性製剤は美肌、美白(しみ、そばかすなどの沈着防止、並びに除去)および抗シワを目的とし、化粧水、クリーム剤、ゲル化剤などの化粧品としても使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩と水溶性ポリビニル化合物を含有する水性製剤。
【請求項2】
水溶性ポリビニル化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸またはカルボキシビニルポリマーおよびその塩からなる群から選ばれるものである請求項1記載の水性製剤。
【請求項3】
水溶性ポリビニル化合物の濃度として下限濃度が0.01w/v%で、上限濃度が2.0w/v%の範囲から選択される請求項1または2のいずれかに記載の水性製剤。
【請求項4】
6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩の濃度は下限濃度が0.01w/v%で、上限濃度が5.0w/v%の範囲から選択される請求項1〜3のいずれかに記載の水性製剤。
【請求項5】
水性製剤のpHが5〜9の範囲内である請求項1〜4のいずれかに記載の水性製剤。
【請求項6】
注射剤である請求項1〜5のいずれかに記載の水性製剤。
【請求項7】
点眼剤である請求項1〜5のいずれかに記載の水性製剤。
【請求項8】
化粧品である請求項1〜5のいずれかに記載の水性製剤。
【請求項9】
6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩に水溶性ポリビニル化合物を配合することを特徴とする、水性製剤中の6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛、またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸亜鉛コンプレックス、およびその薬理学的に許容できる塩を可溶化および安定化する方法。

【公開番号】特開2006−206561(P2006−206561A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49686(P2005−49686)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(500032796)イワキ株式会社 (2)
【出願人】(502384060)有限会社オガ リサーチ (14)
【Fターム(参考)】