説明

リミッタ回路

【課題】出力電圧のレベルを精度良く制限可能なリミッタ回路を提供する。
【解決手段】リミッタ回路は、定電流源と、定電流源に接続されるとともに差動対を構成する第1トランジスタ及び第2トランジスタとを備える差動入力回路と、第1トランジスタの第1制御電極及び第2トランジスタの第2制御電極の夫々に印加された電圧の差に応じた出力電圧を生成する出力電圧生成回路と、第1制御電極と第2制御電極との電圧レベルを一致させるべく、出力電圧に応じた帰還電圧を第2制御電極に印加する帰還回路と、第1制御電極または第2制御電極の何れか一方に印加される入力電圧の変化に応じて出力電圧のレベルが変化すると、第1トランジスタまたは第2トランジスタの定電流源とは接続されていない側の電極のうち何れか小さい電流が流れる一方の電極から、出力電圧のレベルに応じた第1電流を吸い込むシンク電流回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リミッタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧の変化に応じた出力電圧を生成するとともに、出力電圧の振幅レベルを制限するために、リミッタ回路が用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。図5は、リミッタ回路の構成例を示す図である。リミッタ回路200は、入力電圧Vinを増幅した出力電圧Voutを出力するとともに、出力電圧Voutの振幅レベルを制限する回路である。リミッタ回路200は、増幅回路300、電圧源301、及びダイオード302,303を含んで構成される。増幅回路300は、入力電圧Vinを増幅して出力電圧Voutとして出力する。ダイオード302は、カソードに出力電圧Voutが印加され、アノードに電圧源301の電圧Vmが印加される。一方、ダイオード303は、アノードに出力電圧Voutが印加され、カソードに電圧Vmが印加される。このため、例えば出力電圧Voutのレベルが、電圧Vmからダイオード303の順方向電圧Vfだけ高いレベルとなると、ダイオード303はオンする。一方、出力電圧Voutのレベルが、電圧Vmからダイオード302の順方向電圧Vfだけ低いレベルとなると、ダイオード302はオンする。したがって、出力電圧Voutのレベルは、Vm−VfからVm+Vfまでの範囲で制限されることとなる。
【特許文献1】特開平7−74568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
リミッタ回路200は、前述のようにダイオード302,303を用いて出力電圧Voutの振幅レベルを制限しているが、一般にダイオード302,303の順方向電圧Vfは、製造バラツキや温度により変化する。このため、出力電圧Voutのレベルを精度良く制限することが難しいという問題があった。
【0004】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、出力電圧のレベルを精度良く制限可能なリミッタ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係るリミッタ回路は、定電流源と、前記定電流源に接続されるとともに差動対を構成する第1トランジスタ及び第2トランジスタとを備える差動入力回路と、前記第1トランジスタの第1制御電極及び前記第2トランジスタの第2制御電極の夫々に印加された電圧の差に応じた出力電圧を生成する出力電圧生成回路と、前記第1制御電極と前記第2制御電極との電圧レベルを一致させるべく、前記出力電圧に応じた帰還電圧を前記第2制御電極に印加する帰還回路と、前記第1制御電極または前記第2制御電極の何れか一方に印加される入力電圧の変化に応じて前記出力電圧のレベルが変化すると、前記第1トランジスタまたは前記第2トランジスタの前記定電流源とは接続されていない側の電極のうち何れか小さい電流が流れる一方の電極から、前記出力電圧のレベルに応じた第1電流を吸い込むシンク電流回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
出力電圧のレベルを精度良く制限可能なリミッタ回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態であるリミッタ回路10の構成を示す図である。リミッタ回路10は、入力電圧Vinに応じて出力電圧Voutを変化させるとともに、出力電圧Voutの振幅を制限する回路である。なお、本実施形態のリミッタ回路10は、例えば、マイク(不図示)から入力される音声信号を増幅するとともに、増幅された音声信号の振幅レベルを制限する際に用いられる。また、リミッタ回路10は、バッファ回路20、リミット電圧生成回路21、バイアス電流生成回路22、シンク電流回路23、及びクリップ検出回路24を含んで構成される。
【0009】
バッファ回路20は、例えばマイク(不図示)から入力される音声の変化に応じた入力電圧Vinに基づいて、例えばパワーアンプ等(不図示)を駆動できるような出力電圧Voutを出力する回路である。なお、本実施形態における入力電圧Vinは、電圧Vmを中心に正弦波状に変化する電圧であることとする。
【0010】
リミット電圧生成回路21は、電圧源11及び抵抗12,13とともに出力電圧Voutのレベルを制限するための電圧を生成する回路である。また、リミット電圧生成回路21は、抵抗30,31、電圧源32、及びオペアンプ33を含んで構成される。抵抗30の一端と抵抗31の一端とが接続されるノードは、オペアンプ33の反転入力端子に接続され、抵抗31の他端はオペアンプ33の出力端子に接続されている。したがって、抵抗30,31、及ぶオペアンプ33は、反転増幅回路を構成することとなる。また、抵抗30の他端には、電圧源11の電圧Vmが抵抗12,13により分圧された電圧VA(第1電圧)が印加され、オペアンプ33の非反転入力端子には電圧源32より電圧Vmが印加される。また、本実施形態では、抵抗30,31の夫々の抵抗値が同じであることとする。このため、オペアンプ33からは、電圧VAと電圧Vmとの差を電圧源32の電圧Vmを中心に反転させた際に生成される電圧VB(第2電圧)が出力されることとなる。
【0011】
バイアス電流生成回路22は、シンク電流回路23、クリップ検出回路24を動作させるためのバイアス電流Ibを生成する回路である。本実施形態のバイアス電流生成回路22は、例えば、バンドギャップ基準電圧回路(不図示)から出力される基準電圧に基づいて、温度補償されたバイアス電流Ibを生成することとする。
【0012】
シンク電流回路23は、入力される電圧VA,VBとバッファ回路20の出力電圧Voutとを比較し、出力電圧Voutのレベルが電圧VAと電圧VBとの間に制限されるようバッファ回路20を制御する回路である。具体的には、シンク電流回路23は、出力電圧Voutが低下した際には、出力電圧Voutが電圧VAのレベルで制限されるよう、バッファ回路20から電流Is1(第1電流)を吸い込む。一方、シンク電流回路23は、出力電圧Voutが上昇した際には、出力電圧Voutが電圧VBのレベルで制限されるよう、バッファ回路20から電流Is2(第2電流)を吸い込む。
【0013】
クリップ検出回路24は、入力される電圧VA,VBと出力電圧Voutとに基づいて、出力電圧Voutがクリップしたか否か、すなわち、出力電圧Voutに所定の歪が発生したか否かを示すクリップ信号Vcを出力する回路である。本実施形態では、クリップ検出回路24が、出力電圧Voutがクリップしたことを検出する場合、ローレベル(以下、Lレベル)のクリップ信号Vcを出力し、出力電圧Voutがクリップしていないことを検出する場合、ハイレベル(以下、Hレベル)のクリップ信号Vcを出力する。
【0014】
図2は、バッファ回路20の構成の一例を示す図である。バッファ回路20は、NPNトランジスタQ1〜Q3、PNPトランジスタQ4,Q5、及び電流源50,51からなるオペアンプ60と、信号線61とを含んで構成される。なお、電流源50が本発明の定電流源に相当し、NPNトランジスタQ1,Q2が本発明の第1トランジスタ,第2トランジスタの夫々に相当し、NPNトランジスタQ3、PNPトランジスタQ4,Q5、及び電流源51が本発明の出力電圧生成回路に相当し、信号線61が本発明の帰還回路に相当する。
【0015】
オペアンプ60において、NPNトランジスタQ1,Q2、PNPトランジスタQ4,Q5、及び電流源50は差動増幅回路を構成する。このため、NPNトランジスタQ1のベース電圧がNPNトランジスタQ2のベース電圧より高くなると、NPNトランジスタQ2のコレクタ電圧は上昇する。NPNトランジスタQ2のコレクタにはNPNトランジスタQ3のベースが接続されており、NPNトランジスタQ3と及び電流源51は、エミッタフォロワを構成する。したがって、NPNトランジスタQ3のエミッタ電圧は、NPNトランジスタQ2のコレクタ電圧の上昇に応じて上昇することとなる。一方、NPNトランジスタQ1のベース電圧がNPNトランジスタQ2ベースの電圧より低くなると、NPNトランジスタQ2のコレクタ電圧は低下する。この結果、NPNトランジスタQ3エミッタの電圧も低下する。つまり、オペアンプ60において、NPNトランジスタQ1のベースが非反転入力端子に相当し、NPNトランジスタQ2のベースが反転入力端子に相当する。また、本実施形態では、NPNトランジスタQ3のエミッタから出力され、オペアンプ60の出力に相当する出力電圧Voutが、信号線61を介してオペアンプ60の非反転入力端子であるNPNトランジスタQ2のベースに印加されている。したがって、オペアンプ60と信号線61とは、ユニティゲインバッファを構成することとなる。つまり、本実施形態では、NPNトランジスタQ1のベースに印加される入力電圧Vinと等しい出力電圧Voutが、オペアンプ60の出力であるNPNトランジスタQ3のエミッタから出力されることとなる。なお、本実施形態においては、詳細は後述するが、出力電圧Voutが所定レベルまで低下すると、NPNトランジスタQ1のコレクタからは、電流Is1がシンク電流回路23に吸い込まれる。一方、出力電圧Voutが所定レベルまで上昇すると、NPNトランジスタQ2のコレクタからは、電流Is2がシンク電流回路23に吸い込まれる。
【0016】
図3は、シンク電流回路23、クリップ検出回路24の構成の一例を示す図である。
【0017】
シンク電流回路23は、NPNトランジスタQ10、第1シンク電流生成回路70、第2シンク電流生成回路71を含んで構成される。ダイオード接続されたNPNトランジスタQ10は、バイアス電流生成回路22からのバイアス電流Ibに応じた電圧を生成する。
【0018】
第1シンク電流生成回路70は、NPNトランジスタQ11,Q30,Q31、PNPトランジスタQ20〜Q23、及び抵抗80〜84を含んで構成される。NPNトランジスタQ11は、NPNトランジスタQ10とカレントミラーを構成するため、NPNトランジスタQ11にはバイアス電流Ibに応じた電流が流れる。また、PNPトランジスタQ20及び抵抗80と、PNPトランジスタQ21及び抵抗81とはカレントミラーを構成するため、結果的にPNPトランジスタQ21にはバイアス電流Ibに応じた電流が流れることとなる。なお、抵抗80,81の夫々は、PNPトランジスタQ20,Q21の出力抵抗を増加させるためのエミッタ抵抗に相当する。出力電圧Voutがベースに印加されるPNPトランジスタQ22と、電圧VAが抵抗82を介してベースに印加されるPNPトランジスタQ23とは差動対を構成する。また、PNPトランジスタQ22のコレクタには、ダイオード接続されたNPNトランジスタQ30のベースが接続されている。NPNトランジスタQ30及び抵抗83と、NPNトランジスタQ31及び抵抗84とはカレントミラーを構成する。このため、本実施形態においては、出力電圧Voutと、電圧VAとの大小関係に応じてNPNトランジスタQ31に生じる電流Is1が変化することとなる。具体的には、例えば、出力電圧Voutが電圧VAより十分高い場合には、PNPトランジスタQ22がオフするため電流Is1はゼロとなる。そして、出力電圧Voutが電圧VAより十分高い状態から低下すると、PNPトランジスタQ22はオンする。このため、電流Is1は出力電圧Voutの低下に応じて増加することとなる。なお、本実施形態では、出力電圧Voutが低下し、例えば、電圧VAより0.1V高い電圧である電圧VPとなると、電流Is1の電流値が定電流源50の電流値に対して無視できないような大きさとなることとする。前述のように、NPNトランジスタQ31のコレクタは、バッファ回路20のPNPトランジスタQ4のコレクタに接続されている。このため、NPNトランジスタQ31は、出力電圧Voutの低下に応じて増加する電流Is1をバッファ回路20のPNPトランジスタQ4から吸い込むこととなる。なお、本実施形態における第1シンク電流生成回路70は、出力電圧Voutが電圧VAとなると、バッファ回路20の電流源50の電流値と等しい電流値のIs1を吸い込むよう設計されていることとする。また、抵抗83,84の夫々は、抵抗80,81と同様のエミッタ抵抗である。
【0019】
第2シンク電流生成回路71は、NPNトランジスタQ12,Q40〜Q43、PNPトランジスタQ50〜Q52、及び抵抗85〜89を含んで構成される。NPNトランジスタQ12は、NPNトランジスタQ10とカレントミラーを構成するため、NPNトランジスタQ12にはバイアス電流Ibに応じた電流が流れる。電圧VBが抵抗85を介してベースに印加されるNPNトランジスタQ40と、出力電圧Voutがベースに印加されるNPNトランジスタQ41とは差動対を構成する。ダイオード接続されたPNPトランジスタQ50と、ダイオード接続されたPNPトランジスタQ51及び抵抗86とは、差動対を構成するPNPトランジスタQ40,41の夫々の負荷に対応する。また、PNPトランジスタQ51及び抵抗86と、PNPトランジスタQ52及び抵抗87とはカレントミラーを構成し、ダイオード接続されたNPNトランジスタQ42及び抵抗88と、NPNトランジスタQ43及び抵抗89とはカレントミラーを構成する。このため、本実施形態においては、出力電圧Voutと、電圧VBとの大小関係に応じてNPNトランジスタQ43に生じる電流Is2が変化することとなる。具体的には、例えば、出力電圧Voutが電圧VBより十分低い場合には、NPNトランジスタQ41がオフするため電流Is2はゼロとなる。そして、出力電圧Voutが電圧VBより十分低い状態から上昇すると、NPNトランジスタQ41はオンする。このため、電流Is2は出力電圧Voutの上昇に応じて増加することとなる。なお、本実施形態では、出力電圧Voutが上昇し、例えば、電圧VBより0.1V低い電圧である電圧VQとなると、電流Is2の電流値が定電流源50の電流値に対して無視できないような大きさとなることとする。
【0020】
前述のように、NPNトランジスタQ43のコレクタは、バッファ回路20のPNPトランジスタQ5のコレクタに接続されている。このため、NPNトランジスタQ43は、出力電圧Voutの上昇に応じて増加する電流Is2をバッファ回路20のPNPトランジスタQ5から吸い込むこととなる。なお、本実施形態における第2シンク電流生成回路71は、出力電圧Voutが電圧VBとなると、バッファ回路20の電流源50の電流値と等しい電流値の電流Is2を吸い込むことができるよう設計されていることとする。また、抵抗86〜89の夫々は、抵抗80,81と同様のエミッタ抵抗である。
【0021】
クリップ検出回路24は、第1電流生成回路72、第2電流生成回路73、及びクリップ信号生成回路74を含んで構成される。
【0022】
第1電流生成回路72は、出力電圧Voutの低下に応じて増加する電流Ic1(第3電流)を生成する回路であり、NPNトランジスタQ11、PNPトランジスタQ20,Q21,Q23,Q60、及び抵抗80〜82を含んで構成される。PNPトランジスタQ21からは、前述のように、バイアス電流Ibに応じた電流が出力される。そして、出力電圧Voutがベースに印加されるPNPトランジスタQ60と、電圧VAが抵抗82を介してベースに印加されるPNPトランジスタQ23とは差動対を構成する。このため、PNPトランジスタQ60が生成する電流Ic1は、出力電圧Voutと電圧VAとの差に応じて変化することとなる。具体的には、出力電圧Voutが電圧VAより十分高い場合、PNPトランジスタQ60はオフするため、電流Ic1はゼロとなる。また、本実施形態では、出力電圧Voutが電圧VAより十分高い状態から低下するとPNPトランジスタQ60がオンするため、出力電圧Voutの低下に応じて電流Ic1が増加する。
【0023】
第2電流生成回路73は、出力電圧Voutの上昇に応じて増加する電流Ic2(第4電流)を生成する回路であり、NPNトランジスタQ12,Q40,Q41、PNPトランジスタQ50,Q51,Q61、及び抵抗85,86,90を含んで構成される。PNPトランジスタQ51及び抵抗86とPNPトランジスタQ61及び抵抗90とはカレントミラーを構成する。前述のよう、NPNトランジスタQ12にはバイアス電流Ibに応じた電流が流れ、NPNトランジスタQ40とNPNトランジスタQ41とは差動対を構成する。このため、出力電圧Voutが電圧VBより十分低い場合、NPNトランジスタQ41はオフし、電流Ic2はゼロとなる。また、本実施形態では、出力電圧Voutが電圧VBより十分低い状態から上昇するとNPNトランジスタQ41がオンするため、出力電圧Voutの上昇に応じて電流Ic2が増加する。
【0024】
クリップ信号生成回路74(比較回路)は、電流Ic1と電流Ic2とに基づいて、出力電圧Voutがクリップしたか否かを示すクリップ信号Vcを生成する回路である。クリップ信号生成回路74は、MOSトランジスタM1、及び抵抗91,92を含んで構成される。抵抗91の一端は、PNPトランジスタQ60,Q61の夫々のコレクタと接続されるため、抵抗91の一端には、電流Ic1及び電流Ic2の和に応じた電圧が生成される。MOSトランジスタM1と抵抗92とはインバータを構成し、MOSトランジスタM1のゲートは前述の抵抗91の一端に接続されている。したがって、抵抗91の一端の電圧Vzがインバータのしきい値、すなわちMOSトランジスタM1のしきい値電圧(第3電圧)より低い場合、インバータの出力はHレベルとなる。一方、電圧Vzがインバータのしきい値より高い場合、インバータの出力はLレベルとなる。本実施形態のクリップ検出回路24は、出力電圧Voutが電圧VAとなる際の電流Ic1、または、出力電圧Voutが電圧VBとなる際の電流Ic2に基づいて、NMOSトランジスタM1がオンするよう、PNPトランジスタQ60,61のサイズと、抵抗91の抵抗値が定められていることとする。
【0025】
<<リミッタ回路10の動作>>
ここで、本実施形態におけるリミッタ回路10の動作について、図4を参照しつつ説明する。なお、ここでは、バッファ回路20に入力される入力電圧Vinの最大電圧が電圧VBより大きく、入力電圧Vinの最小電圧が電圧VAより小さくなる場合について説明する。
【0026】
まず、時刻T1において入力電圧Vinがバッファ回路20に入力されると、バッファ回路20はユニティゲインバッファとして動作するため、出力電圧Voutは、入力電圧Vinの上昇に応じて上昇する。そして、時刻T2に出力電圧Voutが電圧VQとなると、第2シンク電流生成回路71が生成する電流Is2の電流値が、定電流源50の電流値に対して無視できない大きさとなる。ここで、バッファ回路20における負帰還の影響を考慮しつつ、電流Is2が定電流源50対して無視できない場合のバッファ回路20の動作について説明する。時刻T2では、入力電圧Vinが上昇しているためNPNトランジスタQ1に流れる電流は増加する。これにより、PNPトランジスタQ4に流れる電流も増加し、PNPトランジスタQ4のベース電圧は低下することとなる。一方、出力電圧Voutが時間遅れなく入力電圧Vinと同様に変化することはないため、NPNトランジスタQ1のベース電圧はNPNトランジスタQ2のベース電圧と比べ高くなる。この結果、NPNトランジスタQ2に流れる電流は減少する。このため、NPNトランジスタQ2に流れる電流は、NPNトランジスタQ1に流れる電流より少なくなる。また、PNPトランジスタQ5のベース電圧は、PNPトランジスタQ4のベース電圧の低下とともに低下するが、前述のようにNPNトランジスタQ2に流れる電流は減少する。したがって、例えば、電流Is2の電流値が無視できる程度に小さい場合は、PNPトランジスタQ5に流れる電流が、NPNトランジスタQ2に流れる電流と一致するよう、NPNトランジスタQ2のコレクタ電圧が上昇することとなる。しかしながら、時刻T2において、第2シンク電流生成回路71は、PNPトランジスタQ5が出力する電流の一部を電流Is2として吸い込む。このため、時刻T2にNPNトランジスタQ2が吸い込む電流が減少しても、PNPトランジスタQ5のコレクタ電圧の上昇は抑制されることとなる。また、前述のように、NPNトランジスタQ3及び電流源51はエミッタフォロワを構成する。このため、出力電圧Voutの上昇もPNPトランジスタQ5のコレクタ電圧と同様に抑制される。つまり、本実施形態においては、出力電圧Voutが電圧VQとなると、バッファ回路20はユニティゲインバッファとして動作せず、第2シンク電流生成回路71は出力電圧Voutの変化を抑制する。
【0027】
また、本実施形態の第2シンク電流生成回路71は、出力電圧Voutのレベルが上昇して電圧VQとなった後、電流Is2を更に増加させる。したがって、時刻T2以降において入力電圧Vinの上昇に応じて出力電圧Voutが上昇すると、出力電圧Voutの変化は更に抑制されることとなる。
【0028】
そして、時刻T3に出力電圧Voutが電圧VBとなると、前述のように、第2シンク電流生成回路71は、バッファ回路20の電流源50の電流値と等しい電流Is2を吸い込む。この結果、NPNトランジスタQ1及びPNPトランジスタQ4には電流源50の電流が全て流れ、PNPトランジスタQ5からは、電流源50の電流と等しい電流が第2シンク電流生成回路71に出力されることとなる。つまり、時刻T3において、NPNトランジスタQ2に流れる電流はゼロとなり、結果的にNPNトランジスタQ2はオフすることとなる。なお、本実施形態では、時刻T3における入力電圧Vinを電圧Vxとする。
【0029】
時刻T3から時刻T4までは、NPNトランジスタQ1のベースに印加される入力電圧Vinは電圧Vxより高くなる。前述のように、時刻T3において、NPNトランジスタQ2はオフする。また、NPNトランジスタQ1には、電流源50の電流が全て流れる。したがって、NPNトランジスタQ1のベースに印加される入力電圧Vinが電圧Vxより高くなる場合であっても、NPNトランジスタQ1に流れる電流は変化することはない。このため、PNPトランジスタQ4,Q5の夫々に流れる電流も同様に変化することはない。この結果、時刻T3から時刻T4までの間においては、PNPトランジスタQ5のコレクタ電圧と出力電圧Voutは変化せず、出力電圧Voutの上限は電圧VBで制限されることとなる。つまり、時刻T3から時刻T4においては、オペアンプ60の差動対に相当するNPNトランジスタQ1,Q2のうち、NPNトランジスタQ1しか動作していないこととなる。
【0030】
時刻T4を経過すると、前述の時刻T2から時刻T3までの期間の動作とは逆に、入力電圧Vinの低下に応じて出力電圧Voutが低下する。出力電圧Voutが低下すると、第2シンク電流生成回路71が生成する電流Is2も減少することとなる。そして、時刻T5以降においては、出力電圧Voutは電圧VQより低くなる。このため、第2シンク電流生成回路71が生成する電流Is2は、定電流源50の電流値より十分小さくなる。この結果、時刻T5から後述する時刻T6までは、バッファ回路20はユニティゲインバッファとして動作する。
【0031】
時刻T6に、入力電圧Vinの低下に応じて出力電圧Voutが電圧VPとなると、第1シンク電流生成回路70は定電流源50の電流値に対して無視できないような電流値の電流Is1を生成する。ここで、時刻T6において、バッファ回路20及び第1シンク電流生成回路70の動作について詳述する。まず、時刻T6においては、入力電圧Vinが低下しているため、NPNトランジスタQ1に流れる電流はNPNトランジスタQ2に流れる電流より少なくなる。ここで、第1シンク電流生成回路70の電流Is1が十分小さい場合は、PNPトランジスタQ4のベース電圧はNPNトランジスタQ1に流れる電流は減少に応じて上昇することとなる。しかしながら、時刻T6において電流Is1の電流値は、前述のように無視できない程度大きくなるため、PNPトランジスタQ4のベース電圧の上昇は抑制される。このため、PNPトランジスタQ5のベース電圧の上昇も抑制される。したがって、例えば、電流Is1が十分小さい場合と比較すると、PNPトランジスタQ5のコレクタ電圧の低下も抑制されることとなる。この結果、出力電圧Voutの低下も抑制される。また、時刻T6以降も入力電圧Vinは低下しているため、入力電圧Vinの低下に応じて出力電圧Voutも低下する。この結果、第1シンク電流生成回路70の電流Is1が増加し、出力電圧Voutの低下は更に抑制される。そして、時刻T7に、出力電圧Voutが電圧VAとなると、前述のように電流Is1の電流値は、電流源50の電流値となる。このため、PNPトランジスタQ4には少なくとも電流Is1が流れることとなる。この際に、PNPトランジスタQ4とカレントミラーを構成するPNPトランジスタQ5は、少なくとも電流Is1をNPNトランジスタQ2に供給すべく動作する。前述のように、時刻T7における電流Is1の電流値は電流源50の電流値と等しい。このため、結果的に、NPNトランジスタQ2はオンし、NPNトランジスタQ1はオフすることとなる。なお、ここでは、入力電圧Vinの低下に応じて出力電圧Voutが電圧VAとなる際の入力電圧Vinを電圧Vyとする。
【0032】
時刻T7から時刻T8までは、NPNトランジスタQ1のベースに印加される入力電圧Vinが電圧Vyより低くなる。この場合、NPNトランジスタQ1はオフし続けるため、結果的にNPNトランジスタQ1,Q2に流れる電流は変化することはない。このため、PNPトランジスタQ4,Q5の夫々に流れる電流も同様に変化することはない。この結果、NPNトランジスタQ2のコレクタ電圧と出力電圧Voutは変化せず、出力電圧Voutの下限は電圧VAで制限されることとなる。
【0033】
なお、時刻T8から時刻T9は、前述の時刻T6から時刻T7までの動作と逆に、入力電圧Vinの上昇に応じて出力電圧Voutが上昇する。そして、出力電圧Voutが電圧VPより高くなる時刻T9以降は、電流Is1の電流値は、定電流源50の電流値と比較して十分小さくなる。このため、バッファ回路20はユニティゲインバッファとして動作することとなる。
【0034】
また、本実施形態では、時刻T3〜時刻T4において出力電圧Voutが電圧VBとなり、時刻T7〜時刻T8において出力電圧Voutが電圧VAとなる。このため、時刻T3〜時刻T4、時刻T7〜時刻T8の期間に、クリップ検出回路24は、出力信号Voutがクリップしたことを示すLレベルのクリップ信号Vcを出力する。
【0035】
以上に説明した構成からなる本実施形態のリミッタ回路10の第1シンク電流生成回路70は、出力電圧Voutのレベルに応じた電流Is1を生成する。そして、第1シンク電流生成回路70は、NPNトランジスタQ1のコレクタから電流Is1を吸い込むため、バッファ回路20の出力電圧Voutの変化が抑制されることとなる。また、出力電圧Voutが電圧VPなると、電流Is1の電流値は、定電流源50の電流値に対して無視できないような電流値となる。このため、出力電圧Voutが電圧VPから低下するにつれて更に出力電圧Voutの変化は抑制されることとなる。したがって、結果的に出力電圧Voutの下限は、所定のレベルで制限されることなる。本実施形態では、出力電圧Voutの下限を制限するに際し、例えばダイオードの順方向電圧等を用いていない。したがって、例えば温度が変化した際も精度よく出力電圧Voutを制限可能である。
【0036】
また、本実施形態のリミッタ回路10では、出力電圧Voutの低下に応じて増加する電流Is1と、出力電圧Voutの上昇に応じて低下する電流Is2とが生成される。このため、バッファ回路20の出力電圧Voutの上昇及び低下の夫々が抑制されることとなる。また、出力電圧Voutが電圧VQとなると、電流Is2の電流値は、定電流源50の電流値に対して無視できないような電流値となる。このため、出力電圧Voutが電圧VQから上昇するにつれて更に出力電圧Voutの変化は抑制されることとなる。したがって、結果的に出力電圧Voutの上限は、所定のレベルで制限されることなる。この様に、本実施形態では、ダイオードを用いることなく、出力電圧Voutの上限と下限を制限することが可能である。
【0037】
また、本実施形態の第1シンク電流生成回路70は、出力電圧Voutが電圧VAとなると、電流源50の電流値と等しい電流値の電流Is1を吸い込む。この結果、オペアンプ60におけるNPNトランジスタQ1がオフすることとなる。このため、NPNトランジスタQ1のベースに印加される入力電圧Vinが更に低下した場合であっても、オペアンプ60を構成するトランジスタの夫々に流れる電流は変化しないため、出力電圧Voutの下限は電圧VAで制限されることとなる。一方、本実施形態の第2シンク電流生成回路71は、出力電圧Voutが電圧VBとなると、電流源50の電流値と等しい電流値の電流Is2を吸い込む。このため、NPNトランジスタQ2がオフすることとなる。このため、NPNトランジスタQ1のベースに印加される入力電圧Vinが更に上昇した場合であっても、オペアンプ60を構成するトランジスタの夫々に流れる電流は変化しないため、出力電圧Voutの上限は電圧VBで制限されることとなる。このように、本実施形態では、出力電圧Voutの上限と下限を、電圧源11、抵抗12,13、及びリミット電圧生成回路21の生成する電圧VA,VBで決定することが可能である。このため、ダイオードを用いた場合と比較すると、精度よくリミット電圧を決定することができる。また、本実施形態では、例えば、抵抗12,13の抵抗値を変化させることにより、容易に出力電圧Voutを制限するための電圧VA,VBを変更可能である。
【0038】
また、本実施形態のクリップ検出回路24は、出力電圧Voutが電圧VAまたは電圧VBとなるとクリップ信号VcをHレベルからLレベルへと変化させる。このため、本実施形態においては、論理レベルの信号の変化に基づいてクリップしたか否かを判別可能である。
【0039】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0040】
例えば、本実施形態では、バッファ回路20がユニティゲインバッファであるとしたがこれに限られるものでは無い。例えば、信号線61の代わりに、出力電圧Voutを分圧して、NPNトランジスタQ2のベースに印加しても良い。
【0041】
また、入力電圧Vinがオペアンプ60の非反転入力に相当するNPNトランジスタQ1のベースに印加されているが、これに限られるものでは無い。例えば、入力電圧Vinを反転増幅して出力電圧Voutとすべく、NPNトランジスタQ1のベースには、所定の電圧を印加し、NPNトランジスタQ2のベースに抵抗を介して入力電圧Vinを印加する構成としても良い。なお、その際には、出力電圧VoutとNPNトランジスタQ2のベースとの間にも、反転増幅の利得を決定するための抵抗が必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態であるリミッタ回路10の構成を示す図である。
【図2】バッファ回路20の構成を示す図である。
【図3】シンク電流回路23、リミット検出回路24の構成を示す図である。
【図4】リミッタ10の動作を説明するための図である。
【図5】リミッタ回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10 リミッタ回路
11,32 電圧源
12,13,30,31,80〜92 抵抗
20 バッファ回路
21 リミット電圧生成回路
22 バイアス電流生成回路
23 シンク電流回路
24 クリップ検出回路
33,60 オペアンプ
50,51 電流源
61 信号線
70 第1シンク電流生成回路
71 第2シンク電流生成回路
72 第1電流生成回路
73 第2電流生成回路
74 クリップ信号生成回路
Q1〜Q3,Q10〜Q12,Q30,Q31,Q40〜Q43 NPNトランジスタ
Q4,Q5,Q20〜Q23,Q50〜Q52,Q60,Q61 PNPトランジスタ
M1 NMOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流源と、前記定電流源に接続されるとともに差動対を構成する第1トランジスタ及び第2トランジスタとを備える差動入力回路と、
前記第1トランジスタの第1制御電極及び前記第2トランジスタの第2制御電極の夫々に印加された電圧の差に応じた出力電圧を生成する出力電圧生成回路と、
前記第1制御電極と前記第2制御電極との電圧レベルを一致させるべく、前記出力電圧に応じた帰還電圧を前記第2制御電極に印加する帰還回路と、
前記第1制御電極または前記第2制御電極の何れか一方に印加される入力電圧の変化に応じて前記出力電圧のレベルが変化すると、前記第1トランジスタまたは前記第2トランジスタの前記定電流源とは接続されていない側の電極のうち何れか小さい電流が流れる一方の電極から、前記出力電圧のレベルに応じた第1電流を吸い込むシンク電流回路と、
を備えることを特徴とするリミッタ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のリミッタ回路であって、
前記シンク電流回路は、
前記一方の電極から、前記出力電圧のレベルの低下に応じて増加する前記第1電流を吸い込み、前記第1トランジスタまたは前記第2トランジスタの前記定電流源とは接続されていない側の電極のうち他方の電極から、前記出力電圧のレベルの上昇に応じて増加する第2電流を吸い込むこと、
を特徴とするリミッタ回路。
【請求項3】
請求項2に記載のリミッタ回路であって、
前記シンク電流回路は、
前記出力電圧のレベルが低下して第1電圧となると、前記定電流源の電流値と等しい電流値の前記第1電流を吸い込み、
前記出力電圧のレベルが上昇し、前記第1電圧より高い第2電圧となると、前記定電流源の電流値と等しい電流値の前記第2電流を吸い込むこと、
を特徴とするリミッタ回路。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のリミッタ回路であって、
前記出力電圧のレベルの低下に応じて増加する第3電流を生成する第1電流生成回路と、
前記出力電圧のレベルの上昇に応じて増加する増加する第4電流を生成する第2電流生成回路と、
前記第3電流及び前記第4電流の和に応じた電圧と第3電圧との比較結果を出力する比較回路と、
を更に備えること、
を特徴とするリミッタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−157855(P2010−157855A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334359(P2008−334359)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】