説明

リヤスポイラ

【課題】板厚の低減および断面形状の狭小化を図ることにより、リヤスポイラひいては車体の軽量化を達成することが可能なリヤスポイラを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるリヤスポイラの代表的な構成は、車体最後部の上面から後端面にいたる角104a近傍にストップランプ200が取り付けられるリヤスポイラ100であって、リヤスポイラの車体外側の面を構成するアウタ部材110と、リヤスポイラの車体内側の面を構成し、アウタ部材の下面に被覆されるようにアウタ部材に取り付けられるインナ部材120と、を備え、インナ部材の板厚は、アウタ部材の板厚よりも薄く、アウタ部材およびインナ部材は、長手方向の中央近傍において後方側の端縁の一部が上方に後退した形状の凹部110aおよび120aを有し、凹部が形成された領域のインナ部材の下面にストップランプが取り付けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体最後部の角近傍に車幅方向に延設されてストップランプが取り付けられるリヤスポイラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両への燃費性能向上の要望の高まりとともに、空力性能向上を担うスポイラの重要性が増している。スポイラには様々な種類があるが、なかでも、トランクやルーフ等の車体上面の後端に設けられるスポイラは、リヤスポイラ、テールゲートスポイラ、バックドアスポイラなどと称される(以下、これらを総称してリヤスポイラと称する)。
【0003】
リヤスポイラは、高速走行中における車体周囲の空気を整流し、揚力を低減する。上述したようにリヤスポイラは車体後端に設けられるため、同じく車体後端に設けられるハイマウントストップランプ(以下、単にストップランプと称する)がかかるリヤスポイラに一体に取り付けられる(組み込まれる)ことがある。このようなリヤスポイラとしては、例えば特許文献1に、ブロー成形により扁平翼状に延びる中空閉断面に形成したスポイラの正面部に、細長上の切欠開口部を開設して、かかる切欠開口部にストップランプを挿入して組み込んだスポイラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−105970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現状においても燃費性能は日々向上しているものの、今後も更なる向上が求められている。燃費性能の向上には車体の軽量化が有効であるため、当然にしてリヤスポイラにも軽量化が求められる。
【0006】
軽量化のための手段の1つとして板厚の低減が挙げられる。リヤスポイラでは、外側の面は耐荷重性能や耐熱性能を確保するために相応の厚みが必要だが、内側の面は車体に面するためそれらの性能は外側の面ほどには必要ない。そこで、内側の面の板厚を低減することが考えられるが、特許文献1にも記載されているように従来のリヤスポイラは一般的にブロー成形(中空成形とも称される)によって作られる。ブロー成形では、分割された金型に挟まれた状態の樹脂に空気を注入することによりかかる樹脂を膨らませて金型の内面に密着させて成形するため、成形品はほぼ一定の厚みを有することとなる。したがって、ブロー成形により成形されるリヤスポイラでは部分的な板厚の調節が困難であった。
【0007】
また断面形状の狭小化(部材の小型化)も軽量化に有効であるが、ブロー成形では空気を注入するため成形品は中空になる(中空部が形成される)。このため、ブロー成形により成形されるリヤスポイラでは、中空部によって断面形状が本来必要とされる大きさ以上に大きくなりがちであり、断面形状の狭小化においても困難であった。また、断面形状が大きいと、車体に取り付けた際にリヤスポイラが必要以上に目立ちすぎてしまうこともあり、意匠面においても課題となっていた。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、板厚の低減および断面形状の狭小化を図ることにより、リヤスポイラひいては車体の軽量化を達成することが可能なリヤスポイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるリヤスポイラの代表的な構成は、車体最後部の上面から後端面にいたる角近傍に車幅方向に延設されてストップランプが取り付けられるリヤスポイラであって、当該リヤスポイラの車体外側の面を構成するアウタ部材と、当該リヤスポイラの車体内側の面を構成し、アウタ部材の下面に被覆されるようにアウタ部材に取り付けられるインナ部材と、を備え、インナ部材の板厚は、アウタ部材の板厚よりも薄く、アウタ部材およびインナ部材は、長手方向の中央近傍において後方側の端縁の一部が上方に後退した形状の凹部を有し、凹部が形成された領域のインナ部材の下面にストップランプが取り付けられることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、リヤスポイラはアウタ部材およびインナ部材の2部材から構成されるため、ブロー成形ではなくインジェクション成形(射出成形とも称される)を用いて成形することができる。したがって、アウタ部材とインナ部材との板厚を異ならせることができ、アウタ部材は従来と同等の性能を確保するために厚めに成形し、インナ部材は必要最小限まで厚みを薄くして軽量化を図ることができる。これにより、リヤスポイラひいては車体の軽量化を図ることが可能となる。また上述したようにインジェクション成形を採用可能になったことにより中空部が形成されなくなる。これにより、断面形状の狭小化を図ることできるため、更なる軽量化が可能となり、且つ意匠面への影響を低減することができる。更に、インナ部材にストップランプを取り付ける構成としたことにより、アウタ部材にはストップランプの取り付け構造を設ける必要がない。更に、このため、インジェクション成形でもアウタ部材に意匠ヒケが生じることがなく、リヤスポイラの外観品質の維持が可能となる。
【0011】
本発明によるリヤスポイラは、ストップランプの上面を被覆するものであり、ストップランプの上方側に位置する。したがって本来、1部材として成形可能である。しかし本発明の思想は、1部材で成形されることが当然であったかかるリヤスポイラを、敢えて2部材に分けて成形したことである。これによって上述の効果が得られた。
【0012】
上記のインナ部材には、下面のストップランプが取り付けられる領域にリブが形成されるとよい。かかる構成によれば、ストップランプを取り付けられる領域の剛性を向上させることができる。したがって、ストップランプ取付時等におけるインナ部材の破損を防ぐことができる。
【0013】
上記のリブは格子状に形成されるとよい。これにより、リブ同士が交差した状態になるため更なる剛性の向上を図ることができる。
【0014】
上記のインナ部材の上面には、車幅方向に略線上に延設され、且つアウタ部材にインナ部材を取り付けたときのアウタ部材の下面からインナ部材の上面までの距離よりも高くなる位置まで上方に突出する突出部が形成されるとよい。
【0015】
かかる構成によれば、振動溶着により突出部とこれに接するアウタ部材の下面とを溶着させてインナ部材とアウタ部材とを接合することができる。これにより、リヤスポイラの組立を容易に行うことができ、組立に要する時間を短縮することができる。またリヤスポイラの組立に要する部品数を削減することができるため低コスト化が可能である。
【0016】
上記突出部は、インナ部材の長手方向に断続的に形成され、インナ部材の短手方向に2列以上設けられ、各突出部の端部の少なくともいずれか一方は、インナ部材の短手方向から見て他の列の突出部とオーバーラップするとよい。
【0017】
上記構成により、突出部がオーバーラップしている部分では短手方向において2箇所以上で溶着されることとなるため、インナ部材とアウタ部材との接合強度を高めることができる。また突出部の端部の両方をオーバーラップさせれば、長手方向において溶着されていない箇所が存在しなくなり、接合強度のより一層の向上が可能となる。
【0018】
上記のストップランプの上面には、爪部が形成され、インナ部材には、爪部を係合可能な係合部が形成され、爪部は、係合部に対応する位置に設けられているとよい。
【0019】
これにより、リヤスポイラおよびストップランプを車体に固定した際に、インナ部材の係合部がストップランプの爪部によって車体側に引き込むことができる。したがって、リヤスポイラと車体との間等における間隙を調整して狭めることが可能となる。そして、かかる調整に要する構造がインナ部材に形成されていることにより、アウタ部材には直接力が作用しない。このため、リヤスポイラへの外観に影響を及ぼすことがなく、外観品質を好適に維持することができる。なお、爪部および係合部は、フック式ではなくスライド嵌合式であることが好ましい。これにより、爪部および係合部ひいてはリヤスポイラおよびストップランプをがたつきなしに嵌めることができる。
【0020】
上記の係合部は、インナ部材の車体前方側の辺近傍に車幅方向に1以上形成される第1係合部と、第1係合部よりも車体後方側に車幅方向に1以上形成される第2係合部とを含み、第1係合部と第2係合部とは、車幅方向における位置が異なるとよい。
【0021】
上記構成によれば、車体とリヤスポイラの車体前方側との間隙は第1係合部によって調節され、かかるリヤスポイラの車体後方側とストップランプとの間隙は第2係合部によって調整される。したがって、それら両方の間隙を狭めることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、板厚の低減および断面形状の狭小化を図ることにより、リヤスポイラひいては車体の軽量化を達成することが可能なリヤスポイラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態にかかるリヤスポイラを備える車体後部の概略構成を示す図である。
【図2】図1のリヤスポイラの概略構成を示す図である。
【図3】図2(b)に示すインナ部材の破線円内の拡大図である。
【図4】図3の突出部の断面図である。
【図5】図1に示す車体後部の破線円内の拡大図である。
【図6】図5の各種断面図である。
【図7】図5の各種断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本実施形態にかかるリヤスポイラを備える車体後部の概略構成を示す図である。なお、理解を容易にするために、本実施形態において用いる図面では説明に不要な部材の詳細な図示を省略している。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のリヤスポイラ100は、その中央近傍にストップランプ200が取り付けられる、いわゆるストップランプ一体型のリヤスポイラである。かかるリヤスポイラ100は、車体後部102に設けられるトランクルーム(不図示)を被覆するトランクリッド104に取り付けられる。より詳細には、リヤスポイラ100は、車体最後部、すなわちトランクリッド104の最後部の上面から後端面にいたる角104aの近傍に車幅方向に延設されて取り付けられている。
【0027】
図2は、図1のリヤスポイラ100の概略構成を示す図であり、図2(a)はリヤスポイラ100の外観斜視図であり、図2(b)は図2(a)の分解図である。図3は、図2(b)に示すインナ部材の破線円内の拡大図であり、図3(a)は図2(b)の破線円内の上面図であり、図3(b)は図2(b)の破線円内の下面図であり、図3(c)は図3(b)に取り付けられるストップランプ200の上面図である。
【0028】
図2(b)に示すように、リヤスポイラ100は、その車体外側の面を構成するアウタ部材110と、車体内側の面を構成するインナ部材120とを備える。このように、リヤスポイラ100を2部品から構成することにより、ブロー成形ではなくインジェクション成形(射出成形とも称される)を用いて成形することができ、アウタ部材110およびインナ部材120の板厚を異ならせてその最適化を行うことが可能となる。
【0029】
そこで、本実施形態では、インナ部材120の板厚t2をアウタ部材110の板厚t1よりも薄くなるように設定する(図6(a)参照)。具体的には、リヤスポイラ100の外側の面であるアウタ部材110は、従来と同様に耐荷重性能や耐熱性能を確保するために必要となる板厚(従来と同程度の板厚)とする。そして、リヤスポイラ100の内側の面であるインナ部材120は、アウタ部材110ほどの耐荷重性能や耐熱性能を確保する必要はないため、アウタ部材110よりも薄い板厚とする。これにより、インナ部材120の板厚を必要最小限までを薄くして軽量化を図ることができ、リヤスポイラ100ひいては車体の軽量化を図ることが可能となる。
【0030】
またリヤスポイラ100のインジェクション成形が可能になったことにより、従来のようなリヤスポイラのような中空の空間が存在しなくなる。このため、断面形状の狭小化が図られ、更なる軽量化が可能となる。そして、断面形状が狭小化されることにより、車体においてリヤスポイラ100が必要以上に目立ってしまうことがないため、意匠面への影響を低減することができる。
【0031】
上述したように、本実施形態のリヤスポイラ100にはストップランプ200が取り付けられる。このため、アウタ部材110およびインナ部材120には、それぞれ凹部110aおよび120aが形成されている。凹部110aおよび120aは、ともに長手方向の中央近傍において後方側の端縁110bおよび120bの一部が上方に後退した形状を有する。このような形状により、図2(a)に示すようにリヤスポイラ100に取り付けられたストップランプ200が凹部110aおよび120aから露出するため、後続車の搭乗者(不図示)がストップランプ200の点灯を好適に視認することが可能となる。
【0032】
上記の凹部110aおよび120aにストップランプ200が取り付けられるということは、換言すれば、本実施形態のリヤスポイラ100は、ストップランプ200の上面を被覆するものであり、ストップランプ200の上方側に位置する。このようなリヤスポイラは本来1部材として成形されていた。しかし、本発明の思想は、1部材で成形されることが当然であったかかるリヤスポイラを、敢えて2部材に分けて成形したことである。これによって上述の効果が得られた。
【0033】
本実施形態では、ストップランプ200は、リヤスポイラ100のなかでも特にインナ部材120の凹部120aが形成された領域の下面に取り付けられる。換言すれば、アウタ部材110は、直接的にではなくインナ部材120を介して間接的にストップランプ200が取り付けられる。このような構成により、リヤスポイラ100におけるストップランプ200の取り付け構造はアウタ部材110ではなくインナ部材120に設けられることとなるため、インジェクション成形でもアウタ部材110の上面に意匠ヒケが生じることがなく、リヤスポイラ100の外観品質を維持することができる。なお、インナ部材120に設けられるストップランプ200の取付構造については後に詳述する。
【0034】
更に、リヤスポイラ100の外観への影響をより低減するために、本実施形態におけるアウタ部材110とインナ部材120を接合するための構造は主にインナ部材120に設けられている。すなわち、図3(a)に示すように、インナ部材120の上面120cには、車幅方向に略線上に延設される突出部122a、122b、122c、122d、122e、122fおよび122gが形成されている。
【0035】
図4は、図3の突出部122bおよび122gの断面図であり、図5のA−A断面と同じ位置におけるアウタ部材110およびインナ部材120の断面を図示している。なお、突出部122a〜122gは形成される位置が異なるがその機能および構成は同一であるため、ここでは図4に示す突出部122bおよび122gを例示して説明する。
【0036】
図4(a)に示すように、突出部122bおよび122gは、アウタ部材110にインナ部材120を取り付けたときのアウタ部材110の下面110dからインナ部材120の上面120cまでの距離h1(図4(b)参照)よりも高くなる位置(高さh2)まで上方に突出している。このため、インナ部材120の上にアウタ部材110を載置すると、突出部122bおよび122gがアウタ部材110の下面110dに接触する。
【0037】
そして、突出部122bおよび122gとアウタ部材110の下面110dとが接触した状態で振動溶着を行うと、図4(b)に示すようにそれらが溶着されてインナ部材120とアウタ部材110とが接合される。これにより、インナ部材120が、アウタ部材110の下面110dに被覆されるようにかかるアウタ部材110に取り付けられる。したがって、インナ部材120が突出部122bおよび122gを備えることにより、振動溶着によってリヤスポイラ100の組立を容易に行うことができ、組立に要する時間の短縮が図れる。またリヤスポイラ100の組立に要する部品数を削減することができるため低コスト化が可能である。
【0038】
更に、本実施形態では、突出部122a〜122gは、突出部122a〜122b、突出部122c〜122e、突出部122f〜122gのように、インナ部材120の長手方向では断続的に形成され、且つインナ部材120の短手方向には3列(2列以上)設けられている。そして、各突出部122a〜122gの端部は、インナ部材120の短手方向から見て他の列の突出部とオーバーラップしている。例えば、突出部122aの端部は他の列の突出部122cおよび122dの端部とオーバーラップしている。
【0039】
上記構成により、アウタ部材110とインナ部材120は、突出部122a〜122gがオーバーラップしている部分では短手方向において2箇所以上で溶着される。これにより、アウタ部材110とインナ部材120の接合強度を向上することができる。また本実施形態のように各突出部122a〜122gの両端部をオーバーラップさせれば、長手方向において溶着されていない箇所が存在しなくなり、接合強度のより一層の向上が可能となる。
【0040】
なお、本実施形態においては、突出部を、インナ部材120の長手方向において断続的に2つまたは3つ形成し、インナ部材120の短手方向において3列設けたが、これらの数は一例にすぎず、限定するものではない。また突出部の両端部をオーバーラップされた構成を例示したが、これにおいても限定されず、両端部の少なくともいずれか一方がオーバーラップする構成としてもよい。
【0041】
更に、図3(a)では図2の破線円内、すなわちストップランプ200が取り付けられる凹部120a近傍の領域に設けられる突出部122a〜122gついてのみ例示して説明したが、凹部120aの左右両側もアウタ部材110と接合される。したがって、凹部120aの左右両側にも当然にして突出部が形成されるが、その突出部においても上述した突出部122a〜122gと同様の機能および構成を有するため、重複説明を避けるべく説明および図示を省略する。
【0042】
次に、ストップランプ200を取り付けるためにインナ部材120に設けられる取付構造について説明する。図5は、図1に示す車体後部102の破線円内の拡大図である。図6および図7は、図5の各種断面図である。なお、インナ部材120へのストップランプ200の取付状態を示すために、図5ではアウタ部材110を不図示としている。また理解を容易にするために、図6ではランプ202と基板202aとの間に間隔を設けて描写している。
【0043】
図3(b)に示すように、インナ部材120の下面120dのストップランプ200が取り付けられる領域、すなわち下面120dの凹部120a近傍の領域にはリブ124が形成されている。これにより、本実施形態のようにリヤスポイラ100を2部品構成として断面形状を狭小化し、且つインナ部材120の板厚を低減させた場合であっても、ストップランプ200を取り付けられる領域の剛性を十分に確保することができる。したがって、ストップランプ200の取付時等におけるインナ部材120の破損を防ぐことができる。
【0044】
特に、本実施形態ではリブ124を格子状に形成している。これにより、リブ124が交差した状態になる(二次元的に配置される)ため、ストップランプ200を取り付けられる領域の剛性を更に向上させることが可能となる。
【0045】
なお、図示されるリブ124の形状は一例であり、これに限定するものではない。また、必ずしもリブ124を形成する必要はなく、例えばインナ部材120に金属等の剛性の高い部品をインサート成形する等により、インナ部材120を薄くしても十分な剛性が保たれる場合にはリブ124を形成しなくてもよい。
【0046】
またインナ部材120には、後述するストップランプ200の爪部226を係合可能な係合部126が形成されている。特に本実施形態では、インナ部材120は、その車幅方向位置が異なる第1係合部126a、126bおよび126c、並びに第2係合部126d、126e、126fおよび126gを備える。
【0047】
第1係合部126a〜126cは、インナ部材120の車体前方側の辺近傍に、車幅方向においてそれぞれ異なる位置に形成される。第2係合部126d〜126gは、インナ部材120において第1係合部126a〜126cよりも車体後方側に、車幅方向において異なる位置に形成される。すなわち、第1係合部126a〜126cと第2係合部126d〜126gとは、車長方向においても異なる位置に配置されている。なお、本実施形態では、第1係合部を3つ、第2係合部を4つ配置したが、これに限定するものではなく、第1係合部および第2係合部ともに1以上形成されればよい。
【0048】
上記の係合部126のうち、第1係合部126a〜126cは、インナ部材120の車体前方側の辺近傍を凹ませて形成される。これにより、凹みからなる第1係合部126a〜126cに後述する第1爪部226a〜226cを係合可能となる。これに対し、第2係合部126d〜126gは、インナ部材120の第1係合部126a〜126cよりも車体後方側を凹ませ、凹ませた領域の車体前方側の辺に隣接する領域に挿入孔128d、128e、128fおよび128gを形成している。これにより、インナ部材120の下側から第2爪部226d〜226gを挿入孔128d〜128gに挿入して、かかる第2爪部226d〜226gを第2係合部126d〜126gに係合可能となる。
【0049】
一方、図3(c)に示すように、ストップランプ200の上面には爪部226が形成されている。ここで、ストップランプ200の構成について、当業者には周知であるため簡略に説明すると、図6(a)および(b)に示すように、ストップランプ200では、基板202aに配設されたLED等のランプ202がハウジング210の内部に取り付けられている。そして、ハウジング210の開口部はレンズ220により被覆される。このように、ストップランプ200の上部にはレンズ220が配置されているため、本実施形態におけるストップランプ200の上面とは、すなわちレンズ220の上面(外側の面)であり、そこに爪部226が形成される。
【0050】
爪部226は、係合部126に対応する位置に設けられている。本実施形態では、係合部126が、インナ部材120の車幅方向および車長方向における位置が異なる第1係合部126a〜126cおよび第2係合部126d〜126gを備えるため、爪部226においても、ストップランプ200の車幅方向および車長方向における位置が異なるように形成される。
【0051】
具体的には、ストップランプ200の車体前方側の辺近傍の車幅方向には、第1係合部126a〜126cのそれぞれと係合する第1爪部226a、226bおよび226cが形成されている。そして、第1爪部226a〜226cよりも車体後方側において車幅方向には、第2係合部126d〜126gのそれぞれと係合する第2爪部226d、226e、226fおよび226gが形成されている。これらの第1爪部226a〜226cおよび第2爪部226d〜226gは、ストップランプ200(厳密にはレンズ220)の上面から外側(車体後方側)に向かって突出するように形成されている(図6(b)および図6(c)参照)。これにより、図5に示すように第1爪部226a〜226cおよび第2爪部226d〜226gが第1係合部126a〜126cおよび第2係合部126d〜126gに好適に係合される。
【0052】
上記説明したように、アウタ部材110とインナ部材120とを振動溶着を用いて接合してリヤスポイラ100を組み立て、爪部226を係合部126に係合させる。これにより、図2(a)に示すように、ストップランプ200がリヤスポイラ100(厳密にはインナ部材120)に一体に取り付けられる(ストップランプ200がリヤスポイラ100に組み込まれる)。そして、図2(a)に示すようにストップランプ200を取り付けられたリヤスポイラ100をトランクリッド104に取り付けると図1に示す状態となる。
【0053】
図1に示す状態のアウタ部材の内部は図5において示され、図5における断面の状態は図6および図7によって示される。図5のB−B断面では、図6(b)に示すように、突出部122dにおいてアウタ部材110およびインナ部材120が接合され、且つ第1爪部226bが第1係合部126bに係合している。この係合により、ストップランプ200を取り付けたリヤスポイラ100のトランクリッド104(車体後部102)への固定時に、インナ部材120を介してアウタ部材110が、すなわちリヤスポイラ100がトランクリッド104側に引き込まれる。したがって、トランクリッド104とリヤスポイラ100の車体前方側との間隙g1を狭めることができる。
【0054】
図5のC−C断面では、図6(c)に示すように、突出部122aおよび122fにおいてアウタ部材110およびインナ部材120が接合され、且つ第2係合部126eが第2爪部226eに係合している。この係合により、上記と同様にリヤスポイラ100がトランクリッド104側に引き込まれ、ストップランプ200とリヤスポイラ100の車体後方側との間隙g2を狭めることができる。
【0055】
したがって、上記構成のように係合部126および爪部226を設けることにより、リヤスポイラ100を車体側に引き込んで、リヤスポイラ100とトランクリッド104との間隙やリヤスポイラ100とストップランプ200との間隙を調整して狭めることができる。このとき、取付構造が設けられていないアウタ部材110には直接力が作用しないため、アウタ部材110の外観、すなわちリヤスポイラ100への外観に影響を及ぼすことがない。したがって、アウタ部材110ひいてはリヤスポイラ100の外観品質を好適に維持することが可能となる。
【0056】
特に、第1係合部126a〜126cと第2係合部126d〜126gとを車長方向において位置が異なるように配置することにより、上述したように間隙g1およびg2の両方を狭めることができる。また第1係合部126a〜126cおよび第2係合部126d〜126gを車幅方向においても異なる位置に配置することにより、これらを車幅方向に同じ位置に配置した場合よりもバランスよく間隙g1およびg2を調整することが可能となる。
【0057】
また本実施形態では、上記の間隙g1およびg2を更に好適に調整可能とするために、インナ部材120に、凸状の規制部130a、規制部130b、規制部130cおよび規制部130dを設けている。規制部130aおよび130bはインナ部材120の車体前方側の辺近傍に設けられ、規制部130cおよび130dはインナ部材120の車体後方側の辺近傍に設けられ、各規制部130a〜130dはインナ部材120の下面120dに凸状に形成されている。
【0058】
上記の各規制部130a〜130dの構成については同一であるため、図5のD−D断面図である図7(a)に示す規制部130aを例示して説明する。図5に示すように爪部226を係合部126に係合させてストップランプ200をリヤスポイラ100に取り付けると、図7(a)に示すように規制部130aの先端がストップランプ200(厳密にはレンズ220の上面)に当接する。これにより、リヤスポイラ100のストップランプ200に対する位置が規制され、爪部226および係合部126の係合時におけるリヤスポイラ100の過剰な引き込みを防止することができる。特に、規制部130aおよび130bはインナ部材120の車体前方側の辺近傍に設けられているため間隙g1に対して、規制部130cおよび130dはインナ部材120の車体後方側の辺近傍に設けられているため間隙g2に対して、それらの間隙が極度に狭小化しないように作用する。
【0059】
更に、本実施形態では、図5に示すように爪部226を係合部126に係合させてストップランプ200をリヤスポイラ100に取り付けた後に、かかるストップランプ200と100とをスクリューによって組み付けて(接合して)固定強度を更に向上させる。このため、インナ部材120の下面120dにはボス132aおよびボス132bが立設されている。
【0060】
ボス132bを例示して説明すると、図7(b)に示すように、ボス132bには、ハウジング210を介してスクリュー250がねじ込まれる。これにより、ストップランプ200のレンズ220だけでなくハウジング210もリヤスポイラ100と接合されるため、接合強度の向上を図れる。また、スクリュー250の受けとなるボス132bがインナ部材と一体に成形されていることにより、受けを別途設ける必要がないため部品点数の削減を図ることができる。
【0061】
なお、本実施形態においては、ハウジング210のリヤスポイラ100と当接する面において、スクリュー250が挿通される箇所近傍を突出させてガイド部210aを形成している。これにより、ボス132bの位置決めが容易となる。
【0062】
上記説明したように、本実施形態にかかるリヤスポイラ100によれば、アウタ部材110およびインナ部材120の2部品から構成されるため、それらの板厚を異ならせて最適化を行うことができる。したがって、インナ部材120の板厚を必要最小限まで薄くして軽量化し、リヤスポイラ100ひいては車体の軽量化を図ることが可能となる。またリヤスポイラ100の2部品化によりインジェクション成形を採用可能になるため、中空部が形成されなくなり、断面形状の狭小化が可能となる。これにより、更なる軽量化および意匠面への影響の低減を図ることができる。
【0063】
なお、上述したように、リヤスポイラ100の外観への影響を考慮すると、部材同士を組み立てるための取付構造に要する凹凸形状をアウタ部材110に設けることは極力避けるべきである。しかしながら、アウタ部材110と、これに取り付けられる他の部材との位置合わせを正確且つ容易に行うための構造は最低限設ける必要がある。
【0064】
そこで、本実施形態においては、図6(b)に示すようにアウタ部材110の下面110dに、かかる下面110dから突出した位置決め部114を設けている。そして、インナ部材120では位置決め部114に対応する箇所に切欠部134を設け(図3(a)参照)、ストップランプ200の220の上面には、位置決め部114の幅と略同一の間隔を設けて上面から突出する段部228を設けている(図3(c)参照)。
【0065】
上記構成により、アウタ部材110とインナ部材120との接合により位置決め部114は切欠部134を貫通し、リヤスポイラ100にストップランプ200を取り付ける際には、貫通した位置決め部114が段部228の間に配置されて図6(b)に示す状態となる。したがって、アウタ部材110とインナ部材120との位置決めや、リヤスポイラ100とストップランプ200との位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0067】
なお、本実施形態においては、リヤスポイラ100が取り付けられる車体として、車室とは別にトランクルームを有する車いわゆる3ボックス車を例示した。しかし、これに限定するものではなく、本発明にかかるリヤスポイラ100は、ハッチバック車のリアハッチに設けられるバックドアスポイラにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、車体最後部の角近傍に車幅方向に延設されてストップランプが取り付けられるリヤスポイラに利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
100…リヤスポイラ、102…車体後部、104…トランクリッド、104a…角、110…アウタ部材、110a…凹部、110b…端縁、110d…下面、114…位置決め部、120…インナ部材、120a…凹部、120b…端縁、120c…上面、120d…下面、122a…突出部、122b…突出部、122c…突出部、122d…突出部、122e…突出部、122f…突出部、122g…突出部、124…リブ、126…係合部、126a…第1係合部、126b…第1係合部、126c…第1係合部、126d…第2係合部、126e…第2係合部、126f…第2係合部、126g…第2係合部、128d…挿入孔、128e…挿入孔、128f…挿入孔、128g…挿入孔、130a…規制部、130b…規制部、130c…規制部、130d…規制部、132a…ボス、132b…ボス、134…切欠部、200…ストップランプ、202…ランプ、202a…基板、210…ハウジング、210a…ガイド部、220…レンズ、226…爪部、226a…第1爪部、226b…第1爪部、226c…第1爪部、226d…第2爪部、226e…第2爪部、226f…第2爪部、226g…第2爪部、228…段部、250…スクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体最後部の上面から後端面にいたる角近傍に車幅方向に延設されてストップランプが取り付けられるリヤスポイラであって、
当該リヤスポイラの車体外側の面を構成するアウタ部材と、
当該リヤスポイラの車体内側の面を構成し、前記アウタ部材の下面に被覆されるように該アウタ部材に取り付けられるインナ部材と、
を備え、
前記インナ部材の板厚は、前記アウタ部材の板厚よりも薄く、
前記アウタ部材および前記インナ部材は、長手方向の中央近傍において後方側の端縁の一部が上方に後退した形状の凹部を有し、該凹部が形成された領域の該インナ部材の下面に前記ストップランプが取り付けられることを特徴とするリヤスポイラ。
【請求項2】
前記インナ部材には、下面の前記ストップランプが取り付けられる領域にリブが形成されることを特徴とする請求項1に記載のリヤスポイラ。
【請求項3】
前記リブは格子状に形成されることを特徴とする請求項2に記載のリヤスポイラ。
【請求項4】
前記インナ部材の上面には、車幅方向に略線上に延設され、且つ前記アウタ部材に該インナ部材を取り付けたときの該アウタ部材の下面から該インナ部材の上面までの距離よりも高くなる位置まで上方に突出する突出部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のリヤスポイラ。
【請求項5】
前記突出部は、前記インナ部材の長手方向に断続的に形成され、該インナ部材の短手方向に2列以上設けられ、
各突出部の端部の少なくともいずれか一方は、前記インナ部材の短手方向から見て他の列の突出部とオーバーラップすることを特徴とする請求項4に記載のリヤスポイラ。
【請求項6】
前記ストップランプの上面には、爪部が形成され、
前記インナ部材には、前記爪部を係合可能な係合部が形成され、
前記爪部は、前記係合部に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリヤスポイラ。
【請求項7】
前記係合部は、前記インナ部材の車体前方側の辺近傍に車幅方向に1以上形成される第1係合部と、該第1係合部よりも車体後方側に車幅方向に1以上形成される第2係合部とを含み、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、車幅方向における位置が異なることを特徴とする請求項6に記載のリヤスポイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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