説明

リヤバンパ構造

【課題】軽後突された場合に、車体後端部に配設されたボディーパネルや装備品を保護することができ、しかも車体重量を極力抑制することができるリヤバンパ構造を提供する。
【解決手段】リヤバンパリインフォースメント24は、平面視で中央部が車両後方側へ膨らんだ湾曲形状とされている。また、リヤバンパカバー26の左右のコーナー部26Aには、反射板42がそれぞれ配設されている。このリヤバンパリインフォースメント24とリヤバンパカバー26との間には、直方体のブロック状に形成された左右一対のアブソーバ28が介在されている。組付状態では、リヤバンパリインフォースメント24の中央後端部24Bを通る車両幅方向に沿った直線P上に左右のアブソーバ28の最後部28Aが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤバンパ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のリヤバンパは、左右一対のバンパステーに支持された骨格部材であるリヤバンパリインフォースメントと、意匠面を構成するリヤバンパカバーと、両者の間に配設されたリヤバンパアブソーバと、によって構成されている。そして、軽後面衝突時(以下、単に「軽後突時」と略す。)には、主としてリヤリヤバンパアブソーバが弾性変形することによりエネルギー吸収するようになっている。
【0003】
しかしながら、例えば、リヤホイールから車体後端部までの距離が短い所謂リヤショートオーバーハング車の場合、車体後端部からのリヤバンパの突出代(厚さ)が少ないため、フラットバリアの侵入量がリヤバンパアブソーバの許容変位ストロークを超える場合がある。この場合、車体後端部に配設されているバックドアといったボディーパネルやリヤワイパ、リヤライセンスプレートランプといった装備品がフラットバリアと干渉し、これらの被衝突物が変形又は破損することが考えられる。
【0004】
一方、下記特許文献1に開示されているように、上述したリヤバンパアブソーバを備えていない自動車もある。簡単に説明すると、この自動車では、リヤバンパカバーの車両幅方向の両端部に反射板(リフレクタ)を設ける一方、リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向の両端部に反射板を保護するための保護ブラケットが設けられている。また、保護ブラケットの高さ方向中間部には車両前方側へ凹む凹部が形成されており、この凹部に反射板の本体部が隙間をあけて収容されている。さらに、保護ブラケットの高さ方向上部及び下部には、軽後突時にリヤバンパカバーが当接する縦壁部が形成されている。
【0005】
上記構成によれば、軽後突時、リヤバンパカバーが保護ブラケットの縦壁部に当接するものの、反射板の本体部は保護ブラケットの凹部に底づくことはない。これにより、反射板を保護することができる、というものである。
【0006】
しかしながら、上記先行技術による場合、リヤバンパカバーの両サイドに金属製の保護ブラケットを配設することになるため、車体重量が増加するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−094234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上を総括すると、取分けリヤショートオーバーハング車のような車両においては、フラットバリアとの軽後突時に、バックドア等のボディーパネルやリヤワイパ、リヤライセンスプレートランプ、反射板(リフレクタ)といった装備品が変形或いは破損することがないようにすることが望まれる。さらに、その対策として車体重量が増加するような構成にしないことが望ましい。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、軽後突された場合に、車体後端部に配設されたボディーパネルや装備品を保護することができ、しかも車体重量を極力抑制することができるリヤバンパ構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、車体後部の左右両側に設けられたバンパステーに支持されると共に、平面視で車両幅方向の中央部が両端部よりも車両後方側へ膨らんだ湾曲形状に形成されたリヤバンパリインフォースメントと、前記リヤバンパリインフォースメントの車両後方側に配置されてリヤバンパリインフォースメントを車両後方側から覆い、更に左右のコーナー部に反射板が配設されたリヤバンパカバーと、前記リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向の両端部にそれぞれ配設されると共に弾性材料によって構成され、平面視でリヤバンパリインフォースメントの中央後端部を通る車両幅方向に沿った直線上に最後部が配置されたアブソーバと、を有している。
【0011】
請求項2記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、請求項1記載の発明において、前記アブソーバは、前記リヤバンパリインフォースメントへの組付状態で、当該リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向外側の端部よりも張出して存在する張出し部を含んで構成されている。
【0012】
請求項3記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記リヤバンパカバーにおけるコーナー部には、前記リヤバンパリインフォースメント側へ凹み前記反射板が取付けられる取付座面が形成された第1凹部が形成される一方、前記アブソーバの前記張り出し部には、当該リヤバンパカバーにおける第1凹部を受容可能な第2凹部が形成されている。
【0013】
請求項4記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、請求項1記載の発明において、前記アブソーバは、前記リヤバンパリインフォースメントへの組付状態で、当該リヤバンパリインフォースメントと前記リヤバンパカバーとの間に介在される所定厚さの本体部を備えている。
【0014】
請求項5記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、請求項2又は請求項3記載の発明において、前記アブソーバは、前記リヤバンパリインフォースメントへの組付状態で、当該リヤバンパリインフォースメントと前記リヤバンパカバーとの間に介在される所定厚さの本体部を備えている。
【0015】
請求項6記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、請求項5記載の発明において、前記リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向外側の後端部のエッジと前記リヤバンパカバーの前記第1凹部との間には、前記本体部と前記張出し部とを連結する連結部が介在されている。
【0016】
請求項7記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記リヤバンパリインフォースメントはその長手方向に沿って延在する中空部を有する断面形状とされており、前記アブソーバには、当該リヤバンパリインフォースメントの前記中空部に差し込んで組み付けるための差込み部が形成されている。
【0017】
請求項8記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、請求項7記載の発明において、前記差込み部は角柱形状とされており、当該差込み部の少なくとも二面には前記中空部へ差し込んだ際に干渉する複数の干渉部が設定されている。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、軽後突時、例えばフラットバリアと軽後突した場合、フラットバリアは最初にリヤバンパカバーと接触し、これを変形させた後、リヤバンパリインフォースメントの中央後端部に当接する。ここで、本発明では、リヤバンパリインフォースメントの中央後端部を通る車両幅方向に沿った直線上に、リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向の両端部に配設されたアブソーバの最後部が配置されている。このため、フラットバリアはリヤバンパリインフォースメントの中央後端部と左右のアブソーバの最後部の三箇所に略同時に当接する。つまり、前記中央後端部及び左右一対の最後部は、略同じタイミングでフラットバリアを受ける。このため、フラットバリアからの荷重入力に対し三者が同時に車両前方側へ変形するため、軽後突初期の荷重を早く立ち上げることができ、変位ストロークが抑制される。その結果、車体後端部に配設されたボディーパネルや被衝突物である装備品への干渉が抑制又は解消される。しかも、先行技術のように金属製の保護ブラケットを設ける構成ではないので、先行技術に比べれば車体重量が削減される。
【0019】
請求項2記載の本発明によれば、アブソーバにはリヤバンパリインフォースメントの車両幅方向外側の端部よりも張出して存在する張出し部が設けられているため、斜め方向からの軽後突時に、当該張出し部が車両前方側へ撓むことができる。これにより、斜め方向からの軽後突時のエネルギーが吸収される。
【0020】
請求項3記載の本発明によれば、リヤバンパカバーにおけるコーナー部に第1凹部が形成されており、この第1凹部の取付座面に反射板が取り付けられている。これに対応して、アブソーバの張出し部にも第2凹部が形成されており、この第2凹部には第1凹部が受容される。従って、斜め方向からの軽後突時、アブソーバの張出し部が車両前方側へ撓みエネルギー吸収する際に、反射板がバリアと干渉して損傷を受けることが極力抑制又は防止される。
【0021】
請求項4記載の本発明によれば、請求項1記載の発明において、アブソーバがリヤバンパリインフォースメントとリヤバンパカバーとの間に所定厚さの本体部を備えているので、当該本体部が押し潰される(圧縮される)ことにより所定のエネルギー吸収がなされる。このため、反射板に対する衝突反力の入力が一層低減される。
【0022】
請求項5記載の本発明によれば、請求項2又は請求項3記載の発明において、アブソーバがリヤバンパリインフォースメントとリヤバンパカバーとの間に所定厚さの本体部を備えているので、以下の作用が得られる。すなわち、斜め方向からの軽後突初期には張出し部が車両前方側へ弾性変形することによりエネルギー吸収し、軽後突後期には本体部が車両前方側へ押し潰されることによりエネルギー吸収がなされる。そして、衝突荷重が除去されると、本体部は弾性復元力によって復元し、それに伴い反射板が元の位置に配置される。
【0023】
請求項6記載の本発明によれば、リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向外側の後端部のエッジとリヤバンパカバーの第1凹部との間に連結部が介在するため、斜め方向からの軽後突時に張出し部が撓む際に、当該エッジから第1凹部の取付座面が反力を受けて座屈することがなくなる。
【0024】
請求項7記載の本発明によれば、リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向外側の端部には中空部が存在し、アブソーバに形成された差込み部を中空部に差し込むことにより、アブソーバがリヤバンパリインフォースメントに組付けられる。
【0025】
請求項8記載の本発明によれば、差込み部が角柱形状とされており、少なくとも二面に複数の干渉部が設定されているため、アブソーバをリヤバンパリインフォースメントに組付ける際に、差込み部を中空部に圧入すると複数の干渉部が弾性変形して組付状態となる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、軽後突された場合に、車体後端部に配設されたボディーや装備品を保護することができ、しかも車体重量を極力抑制することができるという優れた効果を有する。
【0027】
請求項2記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、斜め方向からの軽後突時に反射板を保護することができるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項3記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、斜め方向から軽後突された場合にも、反射板の配光性能を概ね良好に維持することができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項4記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、斜め方向から軽後突された場合に、反射板に与えるダメージを極力抑制し、更には反射板の配光性能を良好に維持することができるという優れた効果を有する。
【0030】
請求項5記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、斜め方向から軽後突された場合に、衝突の初期から後半に亘って反射板を有効に保護し、更には反射板の配光性能をより一層良好に維持することができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項6記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、反射板の取付座面をリヤバンパリインフォースメントのエッジから保護することで反射板の配光性能を良好に維持することができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項7記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、アブソーバの組付作業性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0033】
請求項8記載の本発明に係るリヤバンパ構造は、アブソーバの取付状態を安定させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係るリヤバンパ構造の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1に示されるリヤバンパ構造が適用された車両の後部を拡大して示す概略側面図である。
【図3】(A)は図2に示されるリヤバンパカバーに反射板が取り付けられた状態を示す拡大背面図であり、(B)は当該リヤバンパカバーから反射板を取外した状態を示す斜視図である。
【図4】アブソーバがリヤバンパリインフォースメントに装着された状態を背面側から見て示す拡大斜視図である。
【図5】アブソーバをリヤバンパリインフォースメントに装着させる前の状態を正面側から見て示す拡大斜視図である。
【図6】アブソーバがリヤバンパリインフォースメントに装着された状態を正面側から見て示す拡大斜視図である。
【図7】リヤバンパリインフォースメントの中空部へのアブソーバの差込み部の差込み状態を図6の7−7線に沿って切断した状態で示す拡大縦断面図である。
【図8】対比例に係るリヤバンパ構造の全体構成を示す図1に対応する平面図である。
【図9】(A)は斜め方向からの後突初期の状態を示す平断面図であり、(B)は後突後半の状態を示す平断面図である。
【図10】本実施形態のアブソーバを備えていない場合に斜め方向から後突されたときの様子を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図1〜図10を用いて、本発明に係るリヤバンパ構造の一実施形態について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、又矢印UPは車両上方側を示している。さらに、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0036】
まず、本発明の一実施形態としてこれから説明するリヤショートオーバーハング車について概説することにする。図2に示されるように、リヤショートオーバーハング車10では、リヤホイール12の中心から車両の後端部までの距離Lが、通常の4ドアセダン系の乗用車よりも短くなっている。また、このリヤショートオーバーハング車10では、バックドア14からのリヤバンパ16の突出量Mが比較的少ない設定となっている。なお、バックドア14のドアガラスの外側に隣接して図示されているのはリヤワイパ18であり、その下方に図示されているのはリヤライセンスプレートランプ20である。
【0037】
次に、本実施形態に係るリヤバンパ構造の構成について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、特にリヤショートオーバーハング車であることを明示して説明する必要がないときには、同じ符号を付して単に「車両10」という。
【0038】
図1に示されるように、リヤバンパ16は、左右一対のリヤバンパステー22と、リヤバンパリインフォースメント24と、リヤバンパカバー26と、左右一対のアブソーバ28とによって構成されている。以下、順に説明する。車体後部30の左右両側には、各々四角筒形状に形成された左右一対のリヤバンパステー22が配設されている。各リヤバンパステー22は車両前後方向を長手方向として配設された金属製の部材として構成されており、その先端部(後端部)は図示しないプレートで閉塞されている。そして、これらのリヤバンパステー22の先端部間に金属製のリヤバンパリインフォースメント24が架け渡されている。リヤバンパリインフォースメント24は車両幅方向を長手方向として配設された長尺状の部材であり、平面視で車両幅方向の中央部が両端部よりも車両後方側へ膨らんだ湾曲形状に形成されている。また、図5及び図7に示されるように、リヤバンパリインフォースメント24の縦断面形状は、各々矩形状に形成された二つの中空部32、34が上下に離間して配置された略「8」の字形状とされている。なお、上側の中空部32の頂壁部中央には、上方側へ突出する円弧状断面のリブ36がリヤバンパリインフォースメント24の全長に亘って形成されている。
【0039】
図1に戻り、上述したリヤバンパリインフォースメント24の車両後方側には、これを車両後方側から覆うべく樹脂製のリヤバンパカバー26が配設されている。リヤバンパカバー26は、平面視でリヤバンパリインフォースメント24に沿った湾曲形状に形成されており、更に左右のコーナー部26Aを介して車体側部まで延長されている。図3(B)に示されるように、リヤバンパカバー26のコーナー部26Aには、底面38A及び内周面38Bから成る取付座面38を内部に有する円錐台形状に形成された第1凹部40が形成されている。なお、取付座面38の底面38Aの中心部には、図示しないボルト挿通孔が形成されている。図3(A)に示されるように、この第1凹部40には、円盤状の反射板(リフレクタ)42が取り付けられている。具体的には、反射板42の裏面の中心部には図示しないスタッドボルトが立設されており、このスタッドボルトを取付座面38の底面38Aのボルト挿通孔に挿通させた後、反対側から図示しないナットを螺合させることにより、反射板42が第1凹部40内に取り付けられている。
【0040】
図1に戻り、上述したリヤバンパリインフォースメント24の車両幅方向の両端部には、弾性材料(例えば軟質樹脂発泡体や中空樹脂成形体等)によって形成されたアブソーバ28がそれぞれ装着されている。すなわち、本実施形態のアブソーバ28は、リヤバンパリインフォースメント24の後面に沿ってその全長に亘って延在するアブソーバではなく、リヤバンパリインフォースメント24の左右の両端部にのみ存在する部分的なアブソーバとして構成されている。
【0041】
図4〜図6及び図9に示されるように、アブソーバ28は、略直方体のブロック形状に形成されている。アブソーバ28は、リヤバンパリインフォースメント24への組付状態で、リヤバンパリインフォースメント24の後面24Aとリヤバンパカバー26との間に介在される所定厚さの本体部44と、当該リヤバンパリインフォースメント24の車両幅方向外側の端部よりも更に外側へ張り出された張出し部46と、を備えている。本体部44の上部には、背面視で略矩形状の貫通孔50が形成されている。また、張出し部46には、車両前方側へ凹み前述した第1凹部40を受容可能な第2凹部52が形成されている。第2凹部52は底面52Aと背面視でU字状に形成された内周面52Bとを有し、車両幅方向外側の端部は開放されている。また、第2凹部52の中央部には更に車両前方側へ鍵穴状に凹む中央凹部54が形成されている。この中央凹部54は、反射板42を固定するための前述したスタッドボルト及びナット並びに組付時に反射板42を仮止めする際のクリップ等との干渉を回避するための逃げとして用いられる。
【0042】
また、張出し部46の裏面側(即ち、車両前方側)の中央部には、車両前方側へ隆起する隆起部56が一体に形成されている。隆起部56を平面視で見た場合、車両幅方向外側の部分の前後方向の厚さが最も薄く車両幅方向内側へ向かうにつれて徐々に前後方向の厚さが増すようになっている。さらに、隆起部56の車両幅方向内側の端部の上部からは、直方体ブロック形状の差込み部58が連続して一体に形成されている。差込み部58は本体部44に対して平行にかつ車両幅方向内側へ向かって延出されている。従って、差込み部58は、本体部44に形成された貫通孔50内に露見されている。これにより、差込み部58のリヤバンパリインフォースメント24の上側の中空部32への差込み状態がアブソーバ28の車両後方側から視認可能となっている。なお、差込み部58の先端部は面取りされている。
【0043】
上記差込み部58の後面58Aの中央部には、本体部44側(貫通孔50側)へ突出する干渉部としての一条の凸部60が形成されている。また、図7に示されるように、差込み部58の上面58Bは水平に配置されているのに対し、下面58Cは後端から前端へ向かうにつれて車両下方側へ傾斜する傾斜面とされている。従って、下面58Cの前端側が最も車両下方側に位置されている。以下、この部分を「最下部62」と称す。干渉部としての最下部62での差込み部58の高さ方向の寸法Hは、リヤバンパリインフォースメント24の上側の中空部32の高さ方向の寸法hよりも僅かに大きくなるように設定されている。従って、差込み部58を上側の中空部32へ差し込もうとすると、差込み部58の最下部62が上側の中空部32の下壁32Aに引っ掛かると共に、凸部60がリヤバンパリインフォースメント24の後壁部32Bに引っ掛かるようになっている(干渉設計)。
【0044】
また、図9(A)に示されるように、アブソーバ28の組付状態では、リヤバンパリインフォースメント24の車両幅方向外側の後端部のエッジ64とリヤバンパカバー26の第1凹部40との間に、本体部44と張出し部46の第2凹部52とを繋ぐ連結部66が介在されている。
【0045】
さらに、図1に示されるように、アブソーバ28の組付状態では、リヤバンパリインフォースメント24の中央後端部24Bを通る車両幅方向に沿った直線P上に、左右のアブソーバ28の最後部28Aがそれぞれ配置されている。つまり、中央後端部24B及び左右一対の最後部28Aは、一直線上に配置されている。但し、厳密な意味での「一直線上」に三者が位置している必要はなく、後述する本実施形態の作用及び効果が得られる範囲で多少のバラツキがある態様も本発明に含まれる。なお、図1では、前記直線Pと後述するフラットバリア72とを同一の二点鎖線で図示している。
【0046】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0047】
図8には、対比例としてのリヤバンパ構造が示されている。この図に示されるように、対比例に係るリヤバンパ構造では、リヤバンパリインフォースメント24とリヤバンパカバー26との間にリヤバンパリインフォースメント24よりも長いアブソーバ70が配設されている。この車両がフラットバリア72と軽後突すると、衝突初期はアブソーバ70の中央部70Aが押し潰されて衝突時のエネルギが吸収される。このときの荷重伝達経路を図8に矢印F2で示す。そして、衝突後半はリヤバンパリインフォースメント24が実線図示状態から二点鎖線図示状態に変形することによって衝突時のエネルギが吸収される。その結果、対比例のリヤバンパ構造を備えた車両の場合、衝突初期の荷重の立ち上がりが遅く、変位ストロークが多くなる。その結果、フラットバリア72の侵入量が増加し、車両10の後部に配設されたバックドア14等のボディーパネルや被衝突物であるリヤライセンスプレートランプ20、リヤワイパ18等の装備品が変形したり破損したりすることが考えられる。なお、反射板42は図1の図示位置に配設されている場合には、フラットバリアから入力される荷重の影響はあまり受けない。しかし、反射板42が図1の図示位置よりも車両幅方向中央側に寄った位置に配置されている場合には当該荷重の影響を受けるものと考えられ、その意味では前述した装備品に含まれる。
【0048】
これに対し、本実施形態に係るリヤバンパ構造を備えた車両10の場合、図1に示されるように、フラットバリア72は最初にリヤバンパカバー26と接触し、これを変形させた後、リヤバンパリインフォースメント24の中央後端部24Bに当接する。ここで、本実施形態では、リヤバンパリインフォースメント24の中央後端部24Bを通る車両幅方向に沿った直線P上に、リヤバンパリインフォースメント24の車両幅方向の両端部に配設されたアブソーバ28の最後部28Aが配置されている。このため、フラットバリア72はリヤバンパリインフォースメント24の中央後端部24Bと左右のアブソーバ28の最後部28Aの三箇所に略同時に当接する。つまり、中央後端部24B及び左右一対の最後部28Aは、略同じタイミングでフラットバリア72を受ける。従って、フラットバリア72からの荷重入力に対し三者が同時に車両前方側へ変形する。このときの荷重伝達経路を図1に矢印F1で示す。このため、軽後突初期の荷重を早く立ち上げることができ、その分、変位ストロークが抑制される。その結果、車両10の後部に配設されたバックドア14等のボディーパネルや被衝突物である装備品への干渉が抑制又は解消される。しかも、本実施形態に係るリヤバンパ構造の場合、先行技術のように金属製の保護ブラケットを設ける構成ではないので、先行技術に比べれば車体重量が削減される。
【0049】
以上を総括すると、本実施形態に係るリヤバンパ構造は、軽後突された場合に、車体後端部に配設されたボディーパネルや装備品を保護することができ、しかも車体重量を極力抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態のアブソーバ28は、組付状態では、本体部44がリヤバンパリインフォースメント24とリヤバンパカバー26との間に介在(挟持)されると共に、張出し部46がリヤバンパリインフォースメント24の車両幅方向外側の端部から張り出した片持ち支持構造とされている。このため、本実施形態の車両10のリヤバンパカバー26のコーナー部26Aにバリア74が斜め方向から軽後突してきた場合には、以下の作用効果が得られる。すなわち、図9(A)に示されるように、衝突初期は、アブソーバ28の張出し部46を車両前方側へ撓ませることでエネルギー吸収する。このときの荷重は、リヤバンパカバー26の第1凹部40からアブソーバ28の第2凹部52へ入力された後、張出し部46から差込み部58を通ってリヤバンパリインフォースメント24、リヤバンパステー22へと伝達される(このときの荷重伝達経路をF3で示す。)。その結果、本実施形態によれば、斜め方向からの軽後突時に反射板42を保護することができる。
【0051】
更に言及すると、本実施形態では、リヤバンパカバー26におけるコーナー部26Aに第1凹部40が形成されており、この第1凹部40の取付座面38に反射板42が取り付けられている。これに対応して、アブソーバ28の張出し部46にも第2凹部52が形成されており、この第2凹部52には第1凹部40が受容される。従って、斜め方向からの軽後突時、アブソーバ28の張出し部46が車両前方側へ撓みエネルギー吸収する際に、反射板42がバリア74と干渉して損傷を受けることが極力抑制又は防止される。よって、斜め方向から軽後突された場合にも、反射板42の配光性能を概ね良好に維持することができる。
【0052】
一方、本実施形態に係るリヤバンパ構造では、アブソーバ28がリヤバンパリインフォースメント24とリヤバンパカバー26との間に所定厚さの本体部44を備えているので、当該本体部44が押し潰される(圧縮される)ことにより所定のエネルギー吸収がなされる。このため、反射板42に対する衝突反力の入力が一層低減される。その結果、本実施形態によれば、斜め方向から軽後突された場合に、反射板42に与えるダメージを極力抑制し、更には反射板42の配光性能を良好に維持することができる。
【0053】
特に、図9(A)に示される衝突初期の荷重伝達に続く衝突後半では、図9(B)に示されるように、アブソーバ28の本体部44が車両前方側へ押し潰されることによりエネルギー吸収がなされる。このときの荷重は、リヤバンパカバー26からアブソーバ28の本体部44へ入力された後、リヤバンパリインフォースメント24、リヤバンパステー22へと直線的に伝達される(このときの荷重伝達経路をF4で示す。)。そして、衝突荷重が除去されると、本体部44は弾性復元力によって復元し、反射板42が元の位置に配置される。その結果、本実施形態によれば、斜め方向から軽後突された場合に、衝突の初期から後半に亘って反射板42を有効に保護し、更には反射板42の配光性能をより一層良好に維持することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、リヤバンパリインフォースメント24の車両幅方向外側の後端部のエッジ64とリヤバンパカバー26の第1凹部40との間に連結部66が介在するため、斜め方向からの軽後突時に張出し部46が撓む際に、当該エッジ64から第1凹部40の取付座面38が反力を受けて座屈することがなくなる。つまり、図10に示されるように、本実施形態のアブソーバ28を備えていないリヤバンパ構造の場合、リヤバンパカバー26の第1凹部40の取付座面38がエッジ64に強接触して座屈することが考えられる。しかし、本実施形態の場合には、第1凹部40とエッジ64との間に連結部66が介在されるため、取付座面38が座屈することはない。その結果、本実施形態によれば、反射板42の配光性能を良好に維持することができる。
【0055】
また、本実施形態では、リヤバンパリインフォースメント24の車両幅方向外側の端部には上下に中空部32、34が存在し、アブソーバ28に形成された差込み部58を上側の中空部32に差し込むことにより、アブソーバ28がリヤバンパリインフォースメント24に組付けられる。その結果、本実施形態によれば、アブソーバ28の組付作業性を向上させることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、差込み部58が四角柱形状とされており、少なくとも二面に複数の干渉部(凸部60と最下部62)が設定されているため、アブソーバ28をリヤバンパリインフォースメント24に組付ける際に、差込み部58を上側の中空部32に圧入すると凸部60と最下部62が弾性変形して組付状態となる。その結果、本実施形態によれば、アブソーバ28の取付状態を安定させることができる。
【0057】
その他、本実施形態では、リヤバンパカバー26のコーナー部26Aにのみアブソーバ28が配設されるため、図8に示されるアブソーバ70と比較した場合、非常に小型で軽量である。また、アブソーバ28を製造する際に用いられる成形型も小さくすることができるので、型費も安価にすることができる。
【0058】
〔上記実施形態の補足説明〕
(1)上述した本実施形態では、リヤショートオーバーハング車10に対して本発明を適用したが、これに限らず、他の車体構造の車両に対して本発明を適用してもよい。
【0059】
(2)また、請求項2記載の本発明を独立した発明として捉えた場合は、以下のようになる。
[請求項1]
車体後部の左右両側に設けられたバンパステーに支持されると共に、平面視で車両幅方向の中央部が両端部よりも車両後方側へ膨らんだ湾曲形状に形成されたリヤバンパリインフォースメントと、
前記リヤバンパリインフォースメントの車両後方側に配置されてリヤバンパリインフォースメントを車両後方側から覆い、更に左右のコーナー部に反射板が配設されたリヤバンパカバーと、
前記リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向の両端部にそれぞれ配設されると共に弾性材料によって構成され、前記リヤバンパリインフォースメントへの組付状態で、当該リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向外側の端部よりも張出して存在する張出し部を含んで構成されたアブソーバと、
を有するリヤバンパ構造。
【0060】
上記請求項1に係る発明が解決しようとする課題としては、例えば以下の事項を挙げることができる。
リヤバンパカバーのコーナー部に反射板を配設した車両の場合、斜め方向から軽後突されると、反射板が破損したり、或いは反射板が破損しなくてもその取付座面が変形することにより、反射板の配光性能が低下することが考えられる。
そこで、このような場合にも反射板の配光性能が損なわれないようにする方策として、特許文献1に開示された技術を用いることが可能である。しかしながら、この先行技術による場合、金属製の保護ブラケットを用いて反射板を保護する構造であるため、車体重量が増加する。
本発明は上記事実を考慮し、斜め方向から軽後突された場合に、反射板の配光性能を(概ね)良好に維持することができ、しかも車体重量を極力抑制することができるリヤバンパ構造を得ることが目的である。
【0061】
そして、上記発明によれば、張出し部が撓むことによって衝突初期のエネルギー吸収がなされる。これにより、反射板を保護することができる。しかも、アブソーバ自体の構造によって反射板を保護する構成であり、金属製の保護ブラケット等は用いないので、車体重量が増加することもない。
【0062】
なお、この発明の場合、リヤバンパリインフォースメント24の中央後端部24Bを通る車両幅方向に沿った直線P上に左右のアブソーバ28の最後部28Aが配置されている必要は必ずしもなく、当該直線Pから車両前後方向に多少ずれていてもよい。
【0063】
(3)さらに、上述した本実施形態では、アブソーバ28に差込み部58が一体に形成されてリヤバンパリインフォースメント24の上側の中空部32に差し込んで組付ける構造となっていたが、これに限らず、差込み部を備えておらず、ボルト等の固定手段でリヤバンパリインフォースメントに固定する構造であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 リヤショートオーバーハング車/車両
16 リヤバンパ
22 リヤバンパステー
24 リヤバンパリインフォースメント
24B 中央後端部
26 リヤバンパカバー
26A コーナー部
28 アブソーバ
28A 最後部
32 中空部
38 取付座面
40 第1凹部
42 反射板
44 本体部
46 張出し部
52 第2凹部
58 差込み部
60 凸部(干渉部)
62 最下部(干渉部)
64 エッジ
66 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の左右両側に設けられたバンパステーに支持されると共に、平面視で車両幅方向の中央部が両端部よりも車両後方側へ膨らんだ湾曲形状に形成されたリヤバンパリインフォースメントと、
前記リヤバンパリインフォースメントの車両後方側に配置されてリヤバンパリインフォースメントを車両後方側から覆い、更に左右のコーナー部に反射板が配設されたリヤバンパカバーと、
前記リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向の両端部にそれぞれ配設されると共に弾性材料によって構成され、平面視でリヤバンパリインフォースメントの中央後端部を通る車両幅方向に沿った直線上に最後部が配置されたアブソーバと、
を有するリヤバンパ構造。
【請求項2】
前記アブソーバは、前記リヤバンパリインフォースメントへの組付状態で、当該リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向外側の端部よりも張出して存在する張出し部を含んで構成されている、
請求項1記載のリヤバンパ構造。
【請求項3】
前記リヤバンパカバーにおけるコーナー部には、前記リヤバンパリインフォースメント側へ凹み前記反射板が取付けられる取付座面が形成された第1凹部が形成される一方、
前記アブソーバの前記張り出し部には、当該リヤバンパカバーにおける第1凹部を受容可能な第2凹部が形成されている、
請求項2記載のリヤバンパ構造。
【請求項4】
前記アブソーバは、前記リヤバンパリインフォースメントへの組付状態で、当該リヤバンパリインフォースメントと前記リヤバンパカバーとの間に介在される所定厚さの本体部を備えている、
請求項1記載のリヤバンパ構造。
【請求項5】
前記アブソーバは、前記リヤバンパリインフォースメントへの組付状態で、当該リヤバンパリインフォースメントと前記リヤバンパカバーとの間に介在される所定厚さの本体部を備えている、
請求項2又は請求項3記載のリヤバンパ構造。
【請求項6】
前記リヤバンパリインフォースメントの車両幅方向外側の後端部のエッジと前記リヤバンパカバーの前記第1凹部との間には、前記本体部と前記張出し部とを連結する連結部が介在されている、
請求項5記載のリヤバンパ構造。
【請求項7】
前記リヤバンパリインフォースメントはその長手方向に沿って延在する中空部を有する断面形状とされており、
前記アブソーバには、当該リヤバンパリインフォースメントの前記中空部に差し込んで組み付けるための差込み部が形成されている、
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のリヤバンパ構造。
【請求項8】
前記差込み部は角柱形状とされており、
当該差込み部の少なくとも二面には前記中空部へ差し込んだ際に干渉する複数の干渉部が設定されている、
請求項7記載のリヤバンパ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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