説明

リンパ球の活性化に関連した病気を治療するための新規な組成物および方法

本発明は、T細胞およびB細胞を包含する活性化したリンパ球の増殖を阻害しかつそれらにアポトーシスを誘発することに関する。本発明は、また、活性化したリンパ球の増殖を阻害しかつそれらにアポトーシスを誘発するための組成物および方法ばかりでなく活性化したリンパ球に関連した病気を5−HT受容体拮抗薬の投与で治療する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セロトニン(また5−ヒドロキシトリプタミンまたは5−HTとも呼ばれる)は、幅広く多様な神経精神障害の病態生理および治療に強力に関係していると思われている神経伝達物質である。セロトニンは多様なファミリーのセロトニン受容体分子(本明細書では“5−HT受容体”または“5−HTR”と呼ぶ)を通して効果を及ぼす。古典的には、セロトニン受容体ファミリーの員は薬理学的に、即ちそれらのいろいろなセロトニン拮抗薬の特異性に従って7サブタイプに分類分けされていた。このように、5−HT受容体は全部がセロトニンと特異的に結合するが、それらは薬理学的には区別されかつ個別の遺伝子によってコードされる。今日までに14種類の哺乳動物セロトニン受容体が同定されかつ配列決定された。より詳細には、そのような14種類の個別の5−HT受容体は7種類の薬理学的サブタイプに分類分けされ、それらは5−HT1、5−HT2、5−HT3、5−HT4、5−HT5、5−HT6および5−HT7と表示される。前記サブタイプの中の数種は更に細分され、その結果として、その受容体は薬理学的に下記の如く分類分けされる:5−HT1A、5−HT1B、5−HT1D、5−HT1E、5−HT1F、5−HT2A、5−HT2B、5−HT2C、5−HT3A、5−HT3B、5−HT4、5−HT5A、5−HT6、5−HT7。しかしながら、そのような受容体の核酸配列およびアミノ酸配列を比較すると、当該サブタイプの中の同一性パーセントと薬理学的分類分けが相互に関連してはいない。
【0002】
クローン化された異なる14種類の哺乳動物セロトニン受容体の中で1つだけ除いて全部がG蛋白質共役受容体スーパーファミリーの員である。セロトニン受容体である5−HT1A、5−HT1Bおよび5−HT1Dはアデニル酸シクラーゼを阻害し、そして5−HT2受容体はホスホリパーゼC経路を活性化して、ポリ燐酸化イノシチドの分解を促す。5−HT2受容体はロドプシン様シグナル伝達物質のファミリーに属し、そのファミリーは、7回膜貫通形態を有しかつG蛋白質と機能的に連結していることで区別される。5−HT3受容体ファミリーには、4個の推定TMDを有するリガンド依存性イオンチャンネル受容体が含まれる。
【0003】
セロトニンは、哺乳動物のCNSにおける幅広く多様な感覚、運動および行動機能を調節し、それらには、学習および記憶などの如き行動、睡眠、体温調節、運動活動、痛み、性的および攻撃的行動、食欲、神経内分泌調節およびバイオリズムなどが含まれる。セロトニンは、また、病態生理学的状態、例えば不安、鬱病、強拍性障害、統合失調症、自殺、自閉症、片頭痛、嘔吐、アルコール依存症および神経変性病にも関連している。そのような生体アミン神経伝達物質はCNSの全体に渡って突出している脳幹のニューロンによって合成され、基底核および辺縁構造内の密度が最大である(非特許文献1)。
【0004】
セロトニンが免疫系である役割を果たしている可能性があることが研究によって示唆された、と言うのは、データによってセロトニン受容体が免疫系のいろいろな細胞に存在することが示されたからである。分裂促進因子的に刺激したリンパ球培養物にセロトニンを外部から添加した時の免疫調節効果に関する報告が文献に見られる。ある環境下ではセロトニンが活性化されたT細胞を刺激することが示され(非特許文献2、3、4)たが、他の研究室は、セロトニンを高濃度で添加すると増殖が阻害されることを報告している(非特許文献5、6、7)。
【0005】
薬理学的に異なる14種類の公知セロトニン受容体の中でタイプ2A、タイプ2B、タイプ2C、タイプ6およびタイプ7をリンパ球が静止細胞上に発現し(非特許文献8、9
)そしてタイプ1Aおよびタイプ3受容体は活性化時に上方調節される(非特許文献10、11、12)。
【0006】
また、5−HT1A受容体がヒトおよびマウスT細胞に関与していることも示された(非特許文献13、14、15)。そのような研究によって、トリプトファン水酸化酵素、即ちトリプトファンからセロトニンへの変換に関与する1番目の酵素を阻害するとIL−2によって促されたヒトT細胞増殖が抑制されかつ5−ヒドロキシトリプトファンを添加するとそのような抑制が無効になり得ることが確認された。その上、ヒトT細胞の増殖は5−HT1A特異的受容体拮抗薬によってもインビトロで阻害された。マウスモデルにおいて、タイプ1A受容体の拮抗薬はインビボで接触過敏反応を抑制する能力を示した(タイプ2受容体の拮抗薬は示さなかった)が、オキサゾロンに対する抗体反応を抑制する能力は示さなかった。
【0007】
リンパ球の増殖を抑制しかつ細胞死を誘発する目的で5−HT(1B/1D)および5−HT(2C)受容体の拮抗薬であるフルフェナジンを用いることが特許文献1に開示されている。
【0008】
リンパ球の活性化およびリンパ球の増殖に関連した病気、特にT細胞およびB細胞の活性化に関連した病気を治療するための新規な化合物および療法を開発する必要性が存在することを長年に渡って切実に感じていた。加うるに、他のセロトニン受容体拮抗薬に関連した副作用を示さない新規な化合物を開発する必要性が存在することも長年に渡って切実に感じていた。本発明はそのような必要性を満たすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】PCT公開番号WO03/106660
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Steinbusch、1984、Handbook of Chemical Neuroanatomy 3:68−125、Bjorklund他編集、Elsevier Science Publishers、B.V.
【非特許文献2】Foon他、1976、J.Immunol.117:1545−1552
【非特許文献3】Kut他、1992、Immunopharmacol.Immunotoxicol.14:783−796
【非特許文献4】Young他、1993、Immunology 80:395−400
【非特許文献5】Slauson他、1984、Cell.Immunol.84:240−252
【非特許文献6】Khan他、1986、Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.81:378−380
【非特許文献7】Mossner & Lesch、1998、Brain、Behavior and Immunity 12:249−271
【非特許文献8】Ameisen他、1989、J.Immunol.142:3171−3179
【非特許文献9】Stefulj他、2000、Brain、Behavior and Immunity 14:219−224
【非特許文献10】Aune他、1993、J.Immunol.151:1175−1183
【非特許文献11】Meyniel他、1997、Immunol.Lett.55:151−160
【非特許文献12】Stefulj他、2000、Brain、Behavior and Immunity 14:219−224
【非特許文献13】Aune他、1990、J.Immunol.145:1826−1831
【非特許文献14】Aune他、1993、J.Immunol.151:1175−1183
【非特許文献15】Aune他、1994、J.Immunol.153:1826−1831
【発明の概要】
【0011】
発明の簡単な要約
本発明は式I:
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、
は、各場合とも独立して、水素、ハロゲン、(C−C)アルキル;(C−C)アルケニル;(C−C)アルコキシ;OH;NO;C≡N;C(=O)OR;C(=O)NR;NR;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;NRSO(C−C)アルキル;SONR;OC(=O)(C−C)アルキル;O(C−C)アルキレン−NR;(C−C)アルキレン−OR;および(C−C)パーフルオロアルキルから選択され;
は、各場合とも独立して、水素、ハロゲン、(C−C)アルキル;(C−C)アルケニル;(C−C)アルコキシ;OH;NO;C≡N;C(=O)OR;C(=O)NR;NR;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;NRSO(C−C)アルキル;SONR;OC(=O)(C−C)アルキル;O(C−C)アルキレン−NR;(C−C)アルキレン−OR;および(C−C)パーフルオロアルキルから選択され;
は、水素、C(=O)ORまたはC(=O)NRであり;
は、CHまたはNRであり;
は、CHまたはNであるが;但し
がCHの時にはAがNでありそしてAがCHの時にはAがNRであることを条件とし;
は、H、(C−C)アルキル;(CHOR;(CHNR;(CHNHC(O)R;(CHO(CHOR;(CHO(CHNR;(CHNR(CHNR;(CHO(CHNHC(O)R;(CHNR(CHNHC(O)R;(CHC(=O)OR;(CHC(=O)NR;(CHO(CHC(=O)OR;(CHO(CHC(=O)NR;(CHNR(CHC(=O)OR;または(CHNR(CHC(=O)NRであり;
は、(C−C)アルキル;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;CH(R)NR;CH(R)NRC(=O)(C−C)アルキル;またはCH(R)NRC(=O)O(C−C)アルキルであり;
は、H、(C−C)アルキル;(C−C)アルキレン−OR;(CHC(=O)OR;または(CHC(=O)NRであり;
は、各場合とも独立して、水素および(C−C)アルキルから成る群より選択され;
mは、各場合とも独立して、1、2または3であり;
nは、0、1または2であり;
pは、各場合とも独立して、2または3であり;そして
qは、各場合とも独立して、1または2である]
で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物を包含する。
【0014】
本発明の1つの面において、Rは、水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、メチル、C≡N、C(=O)NR、C(=O)NH、SONR、SONMe、(C−C)パーフルオロアルキルまたはCFである。
【0015】
本発明の別の面において、Rは各場合とも水素である。
【0016】
本発明の更に別の面において、Rは水素である。
【0017】
本発明の1つの面において、AはNRである。
【0018】
本発明の別の面において、AはNである。
【0019】
本発明の更に別の面において、RはH、(CHNR、CHCHNH2、CHCHCHNH、(CHNHC(O)R、CHCHNC(O)R、CHCHNHC(O)Me、CHCHNHC(O)CHNHまたはCHCHNHC(O)CHNMeである。
【0020】
本発明の1つの面において、Rは(C−C)アルキル、CH(R)NRまたはCH(R)NHまたはNHMeである。
【0021】
本発明の別の面において、RはHである。
【0022】
本発明の更に別の面において、mは2であり、nは0であり、pは2でありそしてqは1である、
本発明はICI−681、ICI−682、ICI−683、ICI−684、ICI−685、ICI−686、ICI−687、ICI−696、ICI−697、ICI−712、ICI−713およびICI−714、ICI−715、ICI−726、ICI−727、ICI−728、ICI−734、ICI−735、ICI−737、ICI−738、ICI−746、ICI−747、ICI−748、ICI−749、ICI−758、ICI−759、ICI−760、ICI−761、ICI−763、ICI−783、ICI−784、ICI−801、ICI−802、ICI−822、ICI−823、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−850、ICI−890、ICI−891、ICI−892、ICI−893、ICI−894およびICI−895から成る群より選択した化合物を包含する。
【0023】
本発明は、アポトーシスを免疫細胞に誘発する方法を包含し、この方法は、前記免疫細胞を式Iで表される化合物と接触させることを含んで成る。1つの面における免疫細胞はリンパ球である。
【0024】
本発明の1つの面では、前記リンパ球をT細胞およびB細胞から成る群より選択する。
【0025】
本発明の別の面におけるB細胞は形質細胞である。
【0026】
本発明の更に別の面における形質細胞は多発性骨髄腫細胞である。
【0027】
本発明は、リンパ球の増殖を阻害する方法を包含し、この方法は、前記リンパ球を式Iで表される化合物と接触させることを含んで成る。
【0028】
本発明の1つの面では、前記リンパ球をT細胞およびB細胞から成る群より選択する。
【0029】
本発明の更に別の面におけるB細胞は形質細胞である。
【0030】
本発明の別の面における形質細胞は多発性骨髄腫細胞である。
【0031】
本発明は、リンパ球の増殖が異常であることで特徴づけられる病気を治療する方法を包含し、この方法は、哺乳動物に式Iで表される化合物を投与することを含んで成る。
【0032】
本発明は、また、喘息および関節リウマチから成る群より選択される病気を治療する方法も包含し、この方法は、哺乳動物に式Iで表される化合物を投与することを含んで成る。
【0033】
本発明の1つの面における哺乳動物はヒトである。
【0034】
本発明を例示する目的で本発明の特定の態様を本図に示す。しかしながら、本発明を本図に示す態様の正確な配置および手段に限定するものでない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてHeLa細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてCCRF−CEM細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてRPMI−8226細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてHeLa細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図5】図5は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてCCRF−CEM細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図6】図6は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてRPMI−8226細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図7】図7(図7Aから7Fを包含)は、下記の5−HT受容体拮抗薬:ICI−681(図7A)、ICI−682(図7B)、ICI−683(図7C)、ICI−684(図7D)、ICI−685(図7E)およびICI−686(図7F)の化学的構造を示す一連の画像である。
【図8】図8(図8Aから8Fを包含)は、下記の5−HT受容体拮抗薬:ICI−687(図8A)、ICI−696(図8B)、ICI−697(図8C)、ICI−712(図8D)、ICI−713(図8E)およびICI−714(図8F)の化学的構造を示す一連の画像である。
【図9】図9(図9Aから9Fを包含)は、下記の5−HT受容体拮抗薬:ICI−715(図9A)、ICI−726(図9B)、ICI−727(図9C)、ICI−728(図9D)、ICI−734(図9E)およびICI−735(図9F)の化学的構造を示す一連の画像である。
【図10】図10(図10Aから10Fを包含)は、下記の5−HT受容体拮抗薬:ICI−737(図10A)、ICI−738(図10B)、ICI−746(図10C)、ICI−747(図10D)、ICI−748(図10E)およびICI−749(図10F)の化学的構造を示す一連の画像である。
【図11】図11(図11Aから11Fを包含)は、下記の5−HT受容体拮抗薬:ICI−758(図11A)、ICI−759(図11B)、ICI−760(図11C)、ICI−761(図11D)、ICI−763(図11E)およびICI−783(図11F)の化学的構造を示す一連の画像である。
【図12】図12(図12Aから12Fを包含)は、下記の5−HT受容体拮抗薬:ICI−784(図12A)、ICI−801(図12B)、ICI−802(図12C)、ICI−822(図12D)、ICI−823(図12E)およびICI−824(図12F)の化学的構造を示す一連の画像である。
【図13】図13(図13Aから13Fを包含)は、下記の5−HT受容体拮抗薬:ICI−846(図13A)、ICI−847(図13B)、ICI−848(図13C)、ICI−849(図13D)、ICI−850(図13E)およびICI−890(図13F)の化学的構造を示す一連の画像である。
【図14】図14(図14Aから14Eを包含)は、下記の5−HT受容体拮抗薬:ICI−891(図14A)、ICI−892(図14B)、ICI−893(図14C)、ICI−894(図14D)およびICI−895(図14E)の化学的構造を示す一連の画像である。
【図15】図15は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてRPMI−8226細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図16】図16は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてCCRF−CEM細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図17】図17は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてHeLa細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図18】図18は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてRPMI−8226細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図19】図19は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてCCRF−CEM細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図20】図20は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてRPMI−8226細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図21】図21は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてCCRF−CEM細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図22】図22は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてHeLa細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図23A】図23Aは、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてRPMI−8226細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図23B】図23Bは、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてCCRF−CEM細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図24】図24は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてHeLa細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図25】図25は、示す5−HT受容体拮抗薬および選択的5−HT1B受容体拮抗薬SB 216641を用いてRPMI−8226細胞の増殖の阻害を実証するMTT検定の結果を示すグラフである。
【図26】図26は、本発明のいろいろな化合物で処置したマウスが示した臨床的関節炎スコアを経時的に示すグラフである。
【図27】図27は、本発明のいろいろな化合物で処置したマウスが示した臨床的関節炎スコアをAUCで計算して示すグラフである。
【図28】図28は、本発明のいろいろな化合物で処置したマウスの関節炎発生率を経時的に示すグラフである。
【図29】図29は、本発明の選択した化合物をいろいろな濃度で用いて処置したマウスが示した臨床的関節炎スコアを経時的に示すグラフである。
【図30】図30は、本発明のいろいろな化合物の合成スキームを例示する概略図である。
【図31】図31は、本発明の追加的いろいろな化合物の合成スキームを例示する概略図である。
【図32】図32は、本発明の化合物用のいろいろな中間体を例示する概略図である。
【図33】図33は、ICI−685の合成を例示する概略図である。
【図34】図34は、ICI−715の合成を例示する概略図である。
【図35】図35は、ICI−715の代替合成を例示する概略図である。
【図36】図36は、ICI−735の合成を例示する概略図である。
【図37】図37は、ICI−735の代替合成を例示する概略図である。
【図38】図38は、ICI−824の合成を例示する概略図である。
【図39】図39は、ICI−847の合成を例示する概略図である。
【図40】図40は、ICI−849の合成を例示する概略図である。
【図41】図41は、ICI−953の合成を例示する概略図である。
【図42】図42は、ICI−954の合成を例示する概略図である。
【図43】図43は、ICI−1007の合成を例示する概略図である。
【図44】図44は、ICI−1008の合成を例示する概略図である。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、活性化したリンパ球に細胞死および/またはアポトーシスを誘発するための組成物および方法に関する。加うるに、本発明は、活性化したリンパ球の増殖を阻害するための組成物および方法にも関する。本明細書に開示するデータが示すように、本明細書に開示する新規なセロトニン受容体拮抗薬は腫瘍性T細胞およびB細胞を包含するいろいろなリンパ球細胞株の増殖を阻害しかつアポトーシスを誘発する。このように、本発明は、リンパ球の増殖を阻害しかつリンパ球にアポトーシスを誘発するための方法、組成物およびキットを包含する。本発明の組成物および方法は、リンパ球の増殖および/または活性化に関連したいろいろな病気の治療で用いるに有用であり、そのような病気には、これらに限定するものでないが、リンパ腫、骨髄腫、自己免疫病、移植拒絶反応などが含まれる。
【0037】
定義
本明細書で用いる如き以下の用語の各々にこの章に示すそれに関連した意味を持たせる。
【0038】
冠詞“a”および“an”を本明細書ではその冠詞の文法的目的物の1個または2個以上(即ち少なくとも1個)を指す目的で用いる。例として“ある要素”は1個の要素または2個以上の要素を意味する。
【0039】
T細胞の“活性化”を本明細書で用いる場合、この用語は、T細胞が免疫応答を生じさせ得る化合物、分子または細胞(例えば分裂促進因子または抗原)と接触した時に表面マーカー、例えばCD25、即ちIL−2受容体などを検出可能度合で上方調節し、p56lckが関与する燐酸化カスケードを開始させ、サイトカインおよびインターロイキンの放出を促し、DNA合成の増加(これはとりわけH−チミジンが発生期DNAストランドに取り込まれる度合を評価する方法を用いて評価可能である)をもたらしかつこの細胞の増殖がもたらされることを意味する。
【0040】
“セロトニン拮抗薬”は、哺乳動物、例えばヒトなどに投与された時にセロトニンの濃度または存在に起因し得る生物学的活性を検出可能度合で阻害する組成物である。
【0041】
“セロトニン受容体拮抗薬”は、哺乳動物、例えばヒトなどに投与された時にセロトニンとセロトニン受容体の結合に起因し得る生物学的活性を検出可能度合で阻害する組成物である。
【0042】
用語“選択的拮抗薬”を本明細書で用いる場合、この用語は、標的セロトニン受容体型に対して示す親和性の方が他の如何なるセロトニン受容体ファミリー員に対して示す親和性よりも少なくとも約5倍高い化学的作用剤を意味する。
【0043】
病気の“軽減”を本明細書で用いる場合、これは、当該病気の1種以上の症状のひどさを軽減することを意味する。
【0044】
用語“同種異系移植”を本明細書で用いる場合、これは、ある種の中の免疫学的マーカー、例えばこれらに限定するものでないが、主要組織適合複合体(MHC)および/または副抗原などのミスマッチが存在するいずれかの組織の移植を意味する。
【0045】
用語“同種異系移植応答”を本明細書で用いる場合、これは、移植者に移植した自分以外の組織に対抗する方向の免疫応答のいずれかを意味する。移植手術には、これらに限定するものでないが、自分以外の細胞、組織または器官を例えば骨髄移植、臓器移植など中
に投与することが含まれる。
【0046】
本明細書で用いる如き用語“アポトーシス”は、細胞外もしくは細胞内シグナルによって誘発されて細胞死をもたらす前以て存在する細胞経路の活性化が関与する活性プロセスを意味する。特に、この細胞死には、無傷の膜を有する細胞内の核フラグメンテーション、クロマチン凝縮などが関与する。
【0047】
用語“アプリケーター”を本明細書で用いる場合、この用語は、セロトニンとセロトニン受容体の相互作用を阻害する本発明の阻害剤(例えばセロトニン受容体拮抗薬)を哺乳動物に投与するための考案物のいずれかを意味し、それには、これらに限定するものでないが、例えば皮下注射器、ピペットなどが含まれる。
【0048】
本明細書で用いる如き“細胞周期プロセス”は、細胞周期およびこれのいろいろな段階に関連した細胞機能もしくはプロセスのいずれかを意味する。このように、細胞周期プロセスは、細胞周期のいずれかの部分を通して起こる細胞増進に関連しているか或はそれを媒介するか或はそれに関与するプロセスである。
【0049】
セロトニンシグナル伝達の阻害が細胞に“有害”であると言った用語を本明細書で用いる場合、その阻害は当該細胞の生存能力の検出可能な低下に介在する。細胞生存能力の評価は当該技術分野で良く知られている標準的方法を用いて実施可能であり、そのような方法には、これらに限定するものでないが、生体分子合成(例えば蛋白質合成、核酸合成など)のレベルの評価、トリパンブルー排除、MTT還元、ヨウ化プロピジウムの吸収、細胞表面へのホスファチジルセリンの接触、DNAフラグメンテーションおよび/またはラダー形成などが含まれる。
【0050】
“病気”は、動物が恒常性を維持することができない動物の健康状態であり、その病気が改善しないとその動物の健康は悪化し続ける。それとは対照的に、動物における“障害”は、その動物は恒常性を維持することができるがその動物の健康状態はその障害が存在しない時に比べて好ましくない状態である健康状態である。ある障害を治療しないままにしておいても必ずしもそれによってその動物の健康状態が更に低下するとは限らない。
【0051】
用語“血液脳関門を実質的に通り抜けない”を本明細書で用いる場合、これは、標準的検定、例えば本明細書に開示する検定、当該技術分野で公知の検定またはある化合物が血液脳関門を通り抜けるか否かを測定する目的で将来開発されるような検定などを用いて評価した時に当該阻害剤が血液脳関門を検出可能な度合では通り抜けないことを意味する。そのような検定には、これらに限定するものでないが、当該化合物を動物に投与した時にそれが示す神経精神作用効果を評価する方法などが含まれる。その上、そのような検定には、とりわけ、関門を通り抜けた化合物の濃度を検定する方法、または当該技術分野で認識されている血液脳関門モデル、当該化合物が関門を通り抜ける度合を経時的に測定する方法が含まれる。
【0052】
ある阻害剤は血液脳関門を最初から検出可能レベルで通り抜けることができないことを当業者は理解するであろう。その上、興味の持たれる阻害剤に当該技術分野で良く知られた技術を用いた修飾をそれが血液脳関門を検出可能な度合では通り抜けないか或はそれが修飾を受ける前に比べてそれを通り抜ける度合が検出可能なほど低くなるような様式で受けさせることができることも理解するであろう。両方の場合とも、それが血液脳関門を検出可能な度合で通り抜ける能力を失うか或はそれが修飾を受ける前に比べてそれを通り抜ける度合が低くなるようにそれを通り抜ける能力を失うかに拘わらず、そのような化合物はこの章の目的で“血液脳関門を実質的に通り抜けない”と見なす。
【0053】
用語“有効な量”を本明細書で用いる場合、これは、阻害剤の量がそれが細胞上のセロトニン受容体によるセロトニンシグナル伝達の検出可能な低下を媒介するに充分な量であることを意味する。セロトニンシグナルの伝達の評価は当該技術分野で良く知られた標準的方法を用いて実施可能であり、そのような方法は、例えばこれらに限定するものでないが、本発明の他の場所に記述した方法などであり、それには、例えばセロトニンと受容体の結合レベルを評価しそして/または細胞の活性化レベルを評価する方法などが含まれる。
【0054】
当業者は、その量はいろいろな要因、例えば治療すべき病気もしくは疾患、治療すべき哺乳動物の年齢および健康および健康状態、病気のひどさ、投与する個々の化合物などで変わりかつそれを基に容易に決定することができることを理解するであろう。その投薬量を一般に1mg/kgから25mg/kgの範囲に設定することになるであろう。1つの態様では、本薬剤を静脈内ボーラス注射で投与する。この種類のボーラス投与を用いると、免疫関連細胞の全部がそれらの受容体媒介シグナルを阻害するに充分な量の本薬剤と遭遇することを確保することができる。しかしながら、本発明をそのような投与方法に限定するものでない。
【0055】
用語“免疫反応”を本明細書で用いる場合、これは免疫細胞の刺激および/または活性化の検出可能な結果を意味する。
【0056】
“免疫応答”を本明細書で用いる場合、この用語は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および/または抗原提示細胞(APCs)のいずれかにおけるエフェクター機能の活性化および/または起動を結果としてもたらすプロセスを意味する。このように、免疫応答には、当業者が理解するであろうように、これらに限定するものでないが、ヘルパーT細胞または細胞毒性T細胞応答の検出可能な抗原特異的もしくは同種異系活性化、抗体産生、アレルギー反応のT細胞媒介活性化などのいずれも含まれる。
【0057】
“免疫細胞”を本明細書で用いる場合、この用語は免疫応答の増加に関与する細胞のいずれかを意味する。そのような細胞には、これらに限定するものでないが、T細胞、B細胞、NK細胞、抗原提示細胞などが含まれる。
【0058】
“使用説明書”を本明細書で用いる場合、この用語には、本明細書に示すいろいろな病気もしくは障害の軽減もしくは治療を行うためのキットに入れる核酸、ペプチドおよび/または本発明の化合物が有用であることを伝達する目的で用いることができる出版物、記録、図表または他の表現媒体のいずれも含まれる。場合によるか或は別法として、そのような使用説明書に哺乳動物の細胞または組織における病気または障害を軽減する1種以上の方法を記述してもよい。そのようなキットの使用説明書を例えば核酸、ペプチドおよび/または本発明の化合物を入れる容器に固定してもよいか或は核酸、ペプチドおよび/または本発明の化合物を入れる容器と一緒に輸送してもよい。別法として、受益者がその使用説明書と当該化合物を協力的に用いることを意図してその使用説明書を前記容器とは別に輸送することも可能である。
【0059】
用語“セロトニンファミリー受容体”は、セロトニン、アドレナリン、ヒスタミン、メラトニンまたはドーパミン受容体として分類分け可能な受容体のいずれかを意味する。即ち、そのような受容体はサンプルに入っている前記分子のいずれかと特異的に結合しかつ他の分子とは有意に結合しない。
【0060】
“セロトニン受容体”には、セロトニンと特異的に結合するポリペプチドが含まれる。
【0061】
“セロトニンシグナル”を本明細書で用いる場合、この用語は、変化をもたらす受容体
が媒介するセロトニンとの相互作用、特定の薬剤といずれかのセロトニン特異的受容体の相互作用または両方の結果として起こる細胞内生化学的経路いずれかの均衡の変化を意味する。
【0062】
同様に、“セロトニン受容体の活性化”を本明細書で用いる場合、これは、セロトニンと細胞上のセロトニン受容体の結合によってそのような結合に関連した細胞内もしくは細胞外イベントの典型的なカスケードが誘発されることを意味する。
【0063】
“受容体”は、リガンドと特異的に結合する化合物である。
【0064】
用語“特異的に結合”を本明細書で用いる場合、これは、サンプルに存在するセロトニンファミリーの分子(即ちドーパミン蛋白質、アドレナリン蛋白質、ヒスタミン、メラトニンおよびセロトニン)を認識して結合するがそのサンプルに入っている他の分子を認識することもそれと結合することも実質的に起こさない受容体を意味する。
【0065】
病気を“治療する”を本明細書で用いる場合、この用語は、動物がかかる病気または障害の頻度を低くすることで前記病気または障害に伴う1種以上の症状の中のある症状の頻度を低くすることを意味する。
【0066】
説明
本発明は、活性化したリンパ球の増殖に関連した病気および疾患およびリンパ球の活性化の結果として生じる病気を治療するための方法、組成物およびキットに関する。本発明は、活性化したリンパ球を阻害しかつ死滅させるための方法、活性化したリンパ球を阻害しそして/または死滅させる組成物、活性化したリンパ球の増殖を阻害する組成物および本発明の方法および組成物を用いるためのキットを包含する。
【0067】
本発明の組成物は、本明細書の他の場所に開示した化学式で表される5−HT受容体拮抗薬を含有する。本明細書に開示する組成物に、更に、活性化したリンパ球を阻害しそして/または死滅させるための追加的組成物と本5−HT受容体拮抗薬の組み合わせを含有させることも可能である。本明細書に開示するデータが示すように、本発明の組成物は、とりわけ、活性化したリンパ球にアポトーシスおよび細胞死を誘発することで活性化したリンパ球を阻害しそして/または死滅させる。加うるに、本発明の化合物は、リンパ球、例えばT細胞およびB細胞などの増殖を阻害し、従って、活性化しそして/または増殖するリンパ球が病因である病気の治療で用いるに有用である。そのような病気には、これらに限定するものでないが、リンパ腫、骨髄腫、自己免疫病および移植拒絶反応が含まれる。
【0068】
本発明の方法は、活性化したリンパ球を阻害しそして/または死滅させる方法およびリンパ球の増殖を阻害する方法を包含する。その理由は、本明細書に開示するデータが示すように、本発明の方法によってリンパ球の増殖が用量および時間に応じて阻害されるばかりでなくリンパ球にアポトーシスを用量および時間に応じてもたらすからである。本発明の方法には、更に、活性化したリンパ球に関連した病気に苦しんでいる患者を治療する方法も包含する。そのような病気は当該技術分野で公知であり、本明細書の他の場所に開示する。本発明の方法は、一部として、5−HT受容体拮抗薬、例えば本明細書に開示するそれらが活性化したリンパ球の阻害および/または死滅で用いるに有用であることを新規に見いだしたことが基になっている。
【0069】
I. 組成物
本発明は、活性化したリンパ球を阻害しそして/または死滅させるための組成物、リンパ球の増殖を阻害するための組成物およびそのようなリンパ球に関連した病気を治療する
ための組成物を包含する。本発明の1つの態様は、本明細書に開示するデータが示すように、いろいろな活性化したリンパ球(T細胞およびB細胞を包含)に細胞死およびアポトーシスを誘発する組成物を包含する。本発明の組成物には、式Iの組成物ばかりでなく以下に開示する組成物が含まれる。
【0070】
本発明は、本明細書に開示する如き式Iに従う化合物を包含する。本明細書に開示するデータが示すように、式Iで表される構造を有する5−HT受容体拮抗薬はリンパ球、例えばT細胞およびB細胞などの増殖を阻害しそしてリンパ球にアポトーシスおよび/または細胞死を誘発する目的で本発明で用いるに有用である。このように、本発明の化合物は、とりわけ、リンパ腫、骨髄腫、自己免疫病、移植拒絶反応などの治療で用いるに有用である。
【0071】
本発明は、式I:
【0072】
【化2】

【0073】
[式中、
は、各場合とも独立して、水素、ハロゲン、(C−C)アルキル;(C−C)アルケニル;(C−C)アルコキシ;OH;NO;C≡N;C(=O)OR;C(=O)NR;NR;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;NRSO(C−C)アルキル;SONR;OC(=O)(C−C)アルキル;O(C−C)アルキレン−NR;(C−C)アルキレン−OR;および(C−C)パーフルオロアルキルから選択され;
は、各場合とも独立して、水素、ハロゲン、(C−C)アルキル;(C−C)アルケニル;(C−C)アルコキシ;OH;NO;C≡N;C(=O)OR;C(=O)NR;NR;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;NRSO(C−C)アルキル;SONR;OC(=O)(C−C)アルキル;O(C−C)アルキレン−NR;(C−C)アルキレン−OR;および(C−C)パーフルオロアルキルから選択され;
は、水素、C(=O)ORまたはC(=O)NRであり;
は、CHまたはNRであり;
は、CHまたはNであるが;但しAがCHの時にはAがNでありそしてAがCHの時にはAがNRであることを条件とし;
は、H、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール;(C−C)アルキル;(CHOR;(CHNR;(CHNHC(O)R;(CHO(CHOR;(CHO(CHNR
(CHNR(CHNR;(CHO(CHNHC(O)R;(CHNR(CHNHC(O)R;(CHC(=O)OR;(CHC(=O)NR;(CHO(CHC(=O)OR;(CHO(CHC(=O)NR;(CHNR(CHC(=O)OR;(CHNR(CHC(=O)NR;または
【0074】
【化3】

【0075】
であり;
は、(C−C)アルキル;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;CH(R)NR;CH(R)NRC(=O)(C−C)アルキル;またはCH(R)NRC(=O)O(C−C)アルキルであり;
は、H、(C−C)アルキル;(C−C)アルキレン−OR;(CHC(=O)OR;または(CHC(=O)NRであり;
は、各場合とも独立して、水素および(C−C)アルキルから成る群より選択され;
mは、各場合とも独立して、1、2または3であり;
nは、0、1または2であり;
pは、各場合とも独立して、2または3であり;そして
qは、各場合とも独立して、1または2であり;かつ
を構成するか或はR内に含まれる前記置換アリールおよび置換複素環式基の置換基は、独立して、ハロゲン、(C−C)アルキル;(C−C)アルケニル;(C−C)アルコキシ;OH;NO;C≡N;C(=O)OR;C(=O)NR;NR;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;NRSO(C−C)アルキル;SONR;OC(=O)(C−C)アルキル;O(C−C)アルキレン−NR;(C−C)アルキレン−OR;および(C−C)パーフルオロアルキルから成る群より選択される]
に従う化合物または前記化合物の製薬学的に許容される塩を有効な量で投与することを含んで成る。
【0076】
好適な態様において、Rは水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、好適にはメチル、C≡N、C(=O)NR、好適にはC(=O)NH、SONR、好適にはSONMeまたは(C−C)パーフルオロアルキル、好適にはCFである。より好適な態様において、Rは水素、C≡NまたはCFである。
【0077】
好適な態様では、Rが水素以外であるのは1回以下であり、最も好適な態様におけるRは各場合とも水素である。
【0078】
好適な態様において、Rは水素である。
【0079】
好適な態様において、AはNRである。
【0080】
好適な態様において、AはNである。
【0081】
より好適な態様において、AはNRでありそしてAはNである。
【0082】
好適な態様において、RはH、(CHNR、好適にはCHCHNHまたはCHCHCHNH、(CHNHC(O)R、好適にはCHCHNC(O)R、より好適にはCHCHNHC(O)Me、CHCHNHC(O)CHNHまたはCHCHNHC(O)CHNMeである。
【0083】
好適な態様において、Rは(C−C)アルキル;またはCH(R)NR、好適にはCH(R)NHまたはNHMeである。
【0084】
好適な態様において、RはHである。
【0085】
好適な態様において、mは2である。
【0086】
好適な態様において、nは0である。
【0087】
好適な態様において、pは2である。
【0088】
好適な態様において、qは1である。
【0089】
前記式Iで表される化合物の各々の定義において、
用語“アルキル”は、これ自身または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、炭素原子を表示する数で有する(即ちC−Cは1から6個の炭素を意味する)直鎖、分枝もしくは環式鎖炭化水素を意味し、直鎖、分枝鎖または環式基を包含する。例にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシルおよびシクロプロピルメチルが含まれる。(C−C)アルキル、特にエチル、メチルおよびイソプロピルが最も好適である。
【0090】
用語“アルケニル”は、これを単独または他の用語と組み合わせて用い、特に明記しない限り、炭素原子を示す数で有する安定な一不飽和もしくは二不飽和直鎖、分枝鎖または環式炭化水素基を意味する。例にはビニル、プロペニル(アリル)、クロチル、イソペンテニル、ブタジエニル、1,3−ペンタジエニル、1,4−ペンタジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニルおよび高級同族体および異性体が含まれる。アルケンを代表する官能基の例はCH=CHCHである。
【0091】
用語“アルキレン”は、これ自身または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、二価の直鎖、分枝もしくは環式鎖炭化水素を意味する。
【0092】
用語“アルコキシ”は、これを単独または他の用語と組み合わせて用い、特に明記しない限り、分子の残りと酸素原子を通して連結している炭素原子を示す数で有するアルキル基(この上で定義した如き)、例えばメトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ(イソプロポキシ)および高級同族体および異性体などを意味する。(C−C)アルコキシ、特にエトキシおよびメトキシが好適である。
【0093】
用語“アリール”は、これを単独または他の用語と組み合わせて用い、特に明記しない限り、環を1個以上(典型的には環を1、2または3個)含有していて前記環が張り出した様式で一緒に結合(例えばビフェニル)していてもよいか或は縮合(例えばナフタレン)していてもよい炭素環式芳香系を意味する。例にはフェニル;アントラシル;およびナフチルが含まれる。フェニルおよびナフチルが好適であり、フェニルが最も好適である。
【0094】
用語“ヘテロアリール”は、芳香特徴を有する複素環を指す。多環式ヘテロアリールは、部分飽和の環を1個以上含有し得る。例にはテトラヒドロキノリンおよび2,3 ジヒドロベンゾフリルが含まれる。式Iで表される化合物の場合の結合点は単環式芳香環の一部または多環式芳香環の環成分(これ自身が芳香環である)である原子上であると理解する。
【0095】
ヘテロアリール基の例には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、特に2および4 ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル、フリル、ピロリル、特に2 ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、特に3および5 ピラゾリル、イソチアゾリル、1,2,3 トリアゾリル、1,2,4 トリアゾリル、1,3,4 トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3 チアジアゾリル、1,2,3 オキサジアゾリル、1,3,4 チアジアゾリルおよび1,3,4 オキサジアゾリルが含まれる。
【0096】
多環式複素環の例には、インドリル、特に3、4、5、6および7 インドリル、インドリニル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル、特に1および5 イソキノリル、1,2,3,4 テトラヒドロイソキノリル、シンノリニル、キノキサリニル、特に2および5 キノキサリニル、キナゾリニル、フタラジニル、1,8 ナフチリジニル、1,4 ベンゾジオキサニル、クマリン、ジヒドロクマリン、ベンゾフリル、特に3、4、1,5 ナフチリジニル、5、6および7 ベンゾフリル、2,3 ジヒドロベンゾフリル、1,2 ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチエニル、特に3、4、5、6および7 ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、特に2 ベンゾチアゾリルおよび5 ベンゾチアゾリル、プリニル、ベンゾイミダゾリル、特に2 ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、チオキサンチニル、カルバゾリル、カルボリニル、アクリジニル、ピロリジジニルおよびキノリジジニルが含まれる。
【0097】
上述したヘテロアリール部分のリストは代表例を意図したものであり、限定を意図したものでない。
【0098】
用語“ハロゲン”は、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子、好適にはフッ素、塩素または臭素、より好適にはフッ素または塩素を意味する。
【0099】
用語“(C−C)パーフルオロアルキル”(ここで、x<y)は、炭素原子数が最小でxでありそして炭素原子数が最大でyでありかつ全ての水素原子がフッ素原子に置き換わっているアルキル基を意味する。−CFが好適である。
【0100】
合成有機化学技術分野の技術者は式Iで表される化合物の調製を実施することができるであろう。当業者は適切な合成経路を選択して実施する方法を知っているであろう。文献に記述されている類似化合物の合成を参照することで適切な合成方法を識別した後、その類似化合物で用いられた経路に従って所望化合物の合成を実施することができ、かつ出発材料、反応体および反応条件を所定の所望化合物の合成に適するように修飾することができるであろう。加うるに、Comprehensive Organic Synthesis、Ed.B.M.TrostおよびI.Fleming(Pergamon Press 1991)、Comprehensive Organic Functional Group Transformations、Ed.A.R.Katritzky、O.Meth CohnおよびC.W.Rees(Pergamon Press、1996)、Comprehensive Organic Functional Group Transformations II、Ed.A.R.KatritzkyおよびR.J.K.Taylor(編集者)(Elsevier、第2版、2004)、Comprehensive Heterocyclic Chemistry、Ed.
A.R.KatritzkyおよびC.W.Rees(Pergamon Press、1984)およびComprehensive Heterocyclic Chemistry II、Ed.A.R.Katritzky、C.W.ReesおよびE.F.V.Scriven(Pergamon Press、1996)(これらの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)などの如き源が参考になり得る。
【0101】
式Iで表される化合物がキラル中心を1個以上含有する場合、そのような化合物は高純度の鏡像異性体もしくはジアステレオマー形態またはラセミ混合物として存在する可能性がありかつそれらとして単離することができることは理解されるであろう。従って、本発明は、本発明の化合物の可能な鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体またはこれらの混合物のいずれも包含し、それらはリンパ球の活性化および/または増殖に関連した病気の治療に有効であり、そのような病気には、これらに限定するものでないが、リンパ腫、骨髄腫、自己免疫病および移植拒絶反応が含まれる。
【0102】
キラル中心が存在する結果として生じる異性体は1対の重なり合わない異性体を含有して成り、それらは“鏡像異性体”と呼ばれる。高純度の化合物の単一の鏡像異性体は光学活性を示す、即ちそれらは平面偏光の面を回転させ得る。
【0103】
本発明にジアステレオマーばかりでなくそれらのラセミ体および分割したジアステレオマー的および鏡像異性体的に高純度の形態物およびそれらの塩を包含させることを意味する。ジアステレオマー対に分割を公知の分離技術を用いて受けさせることができ、そのような技術には、順相および逆相クロマトグラフィーおよび結晶化が含まれる。
【0104】
“単離光学異性体”は、同じ式で表される相当する光学異性体1種または2種以上が実質的に取り除かれている化合物を意味する。その単離異性体の純度は重量で表して好適には少なくとも約80%、より好適には少なくとも90%、更により好適には少なくとも98%の純度、最も好適には少なくとも約99%の純度である。
【0105】
単離光学異性体の精製はラセミ混合物に良く知られたキラル分離技術を用いた精製を受けさせることで実施可能である。そのような1つの方法に従い、式Iで表される構造を有する化合物のラセミ混合物またはそれのキラル中間体に適切なキラルカラム、例えばDAICEL(R) CHIRALPAK(R)ファミリーのカラムのシリーズ(Daicel Chemical Industries、Ltd.、東京、日本)の一員などを用いたHPLCによる分離を受けさせることで純度が99重量%の光学異性体を得る。前記カラムをその製造業者の指示に従って用いる。
【0106】
本発明は、更に、活性化したリンパ球を阻害しそして/または死滅させるための組成物、リンパ球の増殖を阻害するための組成物およびそのようなリンパ球に関連した病気を治療するための組成物を包含する。本発明の1つの態様は、本明細書に開示するデータが示すように、多様な活性化したリンパ球(T細胞およびB細胞を包含)に細胞死およびアポトーシスを誘発する組成物を包含する。本発明の組成物には以下に開示する組成物が含まれる。
【0107】
【化4】

【0108】
【化5】

【0109】
【化6】

【0110】
【化7】

【0111】
【化8】

【0112】
【化9】

【0113】
【化10】

【0114】
【化11】

【0115】
本発明の化合物は製薬学的に許容される塩として使用または投与可能である。本明細書で用いる如き語句“製薬学的に許容される塩1種または2種以上”には、特に明記しない限り、本明細書に開示する化合物に存在し得る酸性もしくは塩基性基の塩が含まれる。事実上塩基性である本明細書に開示する化合物は、様々な無機および有機酸と一緒に幅広く多様な塩を形成し得る。本5−HT受容体拮抗薬のそのような塩基性化合物の製薬学的に許容される酸付加塩を調製しようとする時に使用可能な酸は、無毒の酸付加塩、即ち薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩、例えば酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、ジシレート(dislyate)、エストレート、エシレート、エチルこはく酸塩、フマル酸
塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、しゅう酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、燐酸塩/二燐酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、こはく酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジドおよび吉草酸塩を形成する酸である。本発明の単一の化合物が酸性もしくは塩基性部分を2個以上含有する可能性があることから、本発明の化合物は単一の化合物の中にモノ、ジもしくはトリ塩を含有する可能性がある。
【0116】
実際上酸性である本発明の5−HT受容体拮抗薬は、多様な薬理学的に許容されるカチオンと一緒に塩基塩を形成し得る。そのような塩の例には、本発明の化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウム塩が含まれる。
【0117】
本発明は、また、本5−HT受容体拮抗薬のプロドラッグを含有して成る製薬学的組成物も包含する。遊離アミノ、アミド、ヒドロキシまたはカルボキシル基を有する式Iで表される化合物および本明細書に開示する他の5−HT受容体拮抗薬をプロドラッグに変化させることができる。プロドラッグには、アミノ酸残基またはアミノ酸残基を2個以上(例えば2、3または4個)有するポリペプチド鎖が本明細書に開示する化合物の遊離アミノ、ヒドロキシもしくはカルボン酸基とアミドもしくはエステル結合を通して共有結合している化合物が含まれる。そのようなアミノ酸残基には、これらに限定するものでないが、3文字記号で一般に表示される20種類の天然に存在するアミノ酸が含まれ、かつまた4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デモシン、イソデモシン、3−メチルヒスチジン、ノルバリン、ベータ−アラニン、ガンマ−アミノ酪酸、シトルリン ホモシステイン、ホモセリン、オルニチンおよびメチオニンスルホンも含まれる。また、追加的種類のプロドラッグも含まれる。例えば遊離カルボキシル基にアミドまたはアルキルエステルとして誘導体化を受けさせることも可能である。遊離ヒドロキシ基に誘導体化をAdvanced Drug Delivery Reviews、1996、19:115に概略が示されているようにしてこれらに限定するものでないが半こはく酸エステル、燐酸エステル、ジメチルアミノ酢酸エステルおよびホスホリルオキシメチルオキシカルボニルを包含する基を用いて受けさせることも可能である。また、ヒドロキシおよびアミノ基のカルバミン酸エステルであるプロドラッグもヒドロキシ基の炭酸エステル、スルホン酸エステルおよび硫酸エステルであるプロドラッグと同様に含まれる。また、ヒドロキシ基に(アシルオキシ)メチルおよび(アシルオキシ)エチルエーテルとして誘導体化を受けさせることも含まれ、ここで、そのアシル基はアルキルエステルであってもよく、それは場合によりこれらに限定するものでないがエーテル、アミンおよびカルボン酸官能を包含する基で置換されていてもよいか或はそのアシル基は上述した如きアミノ酸エステルである。また、遊離アミンにアミド、スルホンアミドまたはホスホンアミドとして誘導体化を受けさせることも可能である。そのようなプロドラッグ部分の全部にこれらに限定するものでないがエーテル、アミンおよびカルボン酸官能を包含する基を組み込むことができる。
【0118】
本発明は、また、同位元素標識付き化合物も包含し、そのような化合物は、1個以上の原子が実際上通常存在する原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子に置き換わっている以外は本発明の5−HT受容体拮抗薬として示した化合物と同じ化合物である。本発明の化合物に組み込むことができる同位元素の例には、水素、炭素、窒素、酸素、燐、フッ素および塩素の同位元素、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36Clなどが含まれる。上述した同位元素および/または他の原子の同位元素を含有する本発明の化
合物、これらのプロドラッグおよび前記化合物もしくは前記プロドラッグの製薬学的に許容される塩は本発明の範囲内である。本発明の特定の同位元素標識付き化合物、例えば放射性同位元素、例えばHおよび14Cなどが組み込まれている化合物は薬剤および/または基質組織分布検定で用いるに有用である。トリチウム化、即ちHおよび14C同位元素は特に調製が容易でありかつ検出可能であることから好適である。その上、より重い同位元素、例えば重水素、即ちHに置き換えると代謝安定性が高くなる、例えば生体内半減期が長くなるか或は必要な投薬量が少なくなることなどの結果として特定の治療的利点が得られる可能性があり、従って、ある状況下では好適であり得る。本発明の式Iで表される同位元素標識付き化合物およびこれらのプロドラッグの調製は一般に容易に入手可能な同位元素標識付き反応体を同位元素標識が付いていない反応体の代わりに用いて本明細書に開示する手順および当該技術分野で公知の手順を行うことで実施可能である。
【0119】
また、本発明の化合物を自己免疫病、リンパ腫、骨髄腫および移植拒絶反応などの如き病気の治療で用いるに有用な他の化合物と組み合わせることも可能である。そのような化合物には、これらに限定するものでないが、下記の治療薬が含まれる:デキサメタゾン、メルファラン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、レナリドマイド、サリドマイドおよび他の薬剤、例えば、これらに限定するものでないが、遺伝子発現調節剤(例えばステロイドおよびグルココルチコイド)、公知突然変異原であるアルキル化剤(例えばシクロホスファミド)、カルシニューリンおよびJNK/p38キナーゼ経路およびシクリンキナーゼカスケードに作用するキナーゼおよびホスファターゼの阻害剤(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス[FK506]およびラパマイシン)、デノボプリン合成の阻害剤(これはグアノシンヌクレオチド合成の阻害剤として働きかつ同種移植拒絶反応の防止および持続的拒絶反応の治療で用いられる)(例えばマイコフェノラートモテフィル)およびデノボピリミジン合成の阻害剤(これは関節リウマチにかかっている患者を治療する目的で用いられる)(例えばレフルノミド)、TNF−α阻害剤、例えばアダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブなど、および他の免疫調節薬、例えばメトトレキセート、アザチオプリン、ナタリズマブおよびメルカプトプリンなど。従って、本発明は、本明細書に開示する5−HT受容体拮抗薬、例えば式Iで表される5−HT受容体拮抗薬などと本明細書の他の場所に開示する免疫調節薬を含有して成る組成物を包含する。
【0120】
本発明の化合物、例えば式Iで表される5−HT受容体拮抗薬または本明細書に開示する別の化合物と治療薬を含有して成る組成物は、それらを患者に投与する前に物理的一緒にするか或はそれらが患者内で一緒になるかに拘わらず、本発明の範囲内である。
【0121】
II. 方法
A. リンパ球にアポトーシスを誘発しそしてそれの増殖を阻害する方法
本発明は、リンパ球にアポトーシスを誘発する方法を包含する。この方法は、リンパ球を5−HT受容体拮抗薬、例えば式Iで表される5−HT受容体拮抗薬または本明細書の他の場所に開示する5−HT受容体拮抗薬などと接触させることでセロトニンとセロトニン受容体の相互作用を阻害することを含んで成る。好適な態様における5−HT受容体拮抗薬は、式Iで表される5−HT受容体拮抗薬である。より好適には、5−HT受容体拮抗薬をとりわけICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−890、ICI−894、ICI−953およびICI−954から選択する。その理由は、本明細書に開示するデータが示すように、リンパ球を本発明の5−HT受容体拮抗薬と接触させると結果としてとりわけいろいろなリンパ球(T細胞およびB細胞を包含)の増殖が阻害されるからである。加うるに、本明細書に開示するデータは、リンパ球を本出願の5−HT受容体拮抗薬と接触させると結果として用量および時間に応じた様式でリンパ球のアポトーシスがもたらされることも示している。このように、本発明は、リンパ球を5−HT受容体拮抗薬と接触させることでリンパ球にアポトーシスを誘発する方法およびリンパ球
の増殖を阻害する方法を包含する。
【0122】
本発明は、更に、リンパ球の増殖が異常であることで特徴づけられる病気にかかっている哺乳動物、好適にはヒトを治療する方法も包含し、ここでは、リンパ球の増殖を阻害するか或は異常に増殖するリンパ球にアポトーシスを誘発する結果として病気の治療をもたらす。この方法は、それを必要としている哺乳動物、好適にはヒトに5−HT受容体拮抗薬を有効な量で投与することを含んで成る。本明細書に開示するデータが示すように、本発明の5−HT受容体拮抗薬を投与すると、とりわけ、いろいろな種類のリンパ球(これらに限定するものでないが、T細胞およびB細胞を包含)の急速な増殖阻止がもたらされる。加うるに、本明細書に示すデータに従い、本発明の5−HT受容体拮抗薬を投与すると結果としてリンパ球にアポトーシスがもたらされる。リンパ球にアポトーシスを誘発するか或はそれの増殖を阻害すると免疫応答、例えば自己免疫病および移植拒絶反応に共通した免疫応答などの発生が防止されるか或は治療がもたらされ、かつまた、リンパ系腫瘍(リンパ腫および骨髄腫を包含)の治療ももたらされる。
【0123】
当業者は、また、本明細書に示す開示を基にして、本発明は水溶性でありかつ血液脳関門を実質的に通り抜けない5−HT受容体拮抗薬の使用を包含することも理解するであろう。その理由は、セロトニン受容体は神経細胞上に存在しかつここに開示するように免疫系の細胞[そのような細胞から発生した腫瘍(例えば多発性骨髄腫など)を包含]上にも存在することから神経細胞上のセロトニン受容体によるセロトニンシグナル伝達に影響を与えることなく免疫細胞上のセロトニン受容体によるシグナル伝達を阻害するのが好ましい(必ずしもではないが)ことを当業者は理解するであろうからである。そのような場合には、シグナル伝達を阻害するが神経細胞におけるセロトニンシグナル伝達に影響を与えるであろう血液脳関門通り抜けを起こすことのない化合物を投与するのが好ましい。
【0124】
従って、本発明は、細胞上のセロトニン受容体によるセロトニンシグナル伝達を阻害すると同時に血液脳関門を実質的に通り抜けない化合物の使用を包含する。そのような化合物を本明細書の他の場所に開示し、それには、式Iで表される5−HT受容体拮抗薬ばかりでなく本明細書の他の場所に開示する化合物が含まれ、好適にはICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−890、ICI−894、ICI−953およびICI−954が含まれる。
【0125】
当業者は、本明細書に示す開示を基にして、ある化合物が血液脳関門を通り抜ける能力に影響を与えるようにそれに修飾を受けさせる方法は当該技術分野で良く知られておりかつまたある物質が関門を通り抜ける能力を評価するための幅広く多様な検定が教示されていることも理解するであろう。そのような1つの方法、即ち修飾を受けたフルフェナジンが血液脳関門を通り抜ける能力が低下するようにいろいろな側基をフルフェナジンなどの如き化合物に付加させる方法を本明細書に開示する。そのような修飾を受けさせたフルフェナジン化合物、例えば式Iで表示する化合物などを本明細書に開示するが、本出願を決してそのようなフルフェナジンの誘導体にも他の特別な誘導体にも限定するものでない。その代わりに、本発明は、本発明の阻害剤の所望の免疫調節特性を有すると同時にまた血液脳関門を通り抜ける能力が好ましく低下した如何なる化合物も包含する。そのような特性を有する化合物の製造および識別は、ある化合物が血液脳関門を通り抜けるか否かを評価する検定と同様に、当該技術分野で常規のことである。そのような検定を本明細書に好ましい特性を有する興味の持たれる化合物を製造する方法と同様に例示する。それにも拘らず、本発明を決して特にそのような方法にも他の如何なる方法にも限定するものでなく、むしろ、本発明は、血液脳関門を実質的に通り抜けないがそれでもセロトニン受容体によるセロトニンシグナル伝達を阻害する化合物を製造および識別する方法、例えば本明細書に開示する方法、当該技術分野で公知の方法、または将来開発されるであろう方法など
を包含する。
【0126】
本発明は多様な自己免疫病を治療する目的で使用可能であり、そのような自己免疫病には、これらに限定するものでないが、重症筋無力症、突発性炎症性筋疾患、慢性好中球減少症、関節リウマチ、突発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血症候群、抗燐脂質抗体症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、心筋炎、ギランバレー症候群、血管炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎(devic症候群)、リンパ球性下垂体炎、グレーブス病、アジソン病、ハイポパラトロイジスム(hypoparathroidism)、1型糖尿病、全身性エリトマトーデス、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、乾癬、乾癬性関節炎、子宮内膜症、自己免疫性精巣炎、栄養障害性表皮、サルコイドーシス、ヴェーゲナー肉芽腫症、自己免疫性難聴、シェーグレン病、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、間質性膀胱炎、グッドパスチャー症候群および線維筋痛が含まれる。その理由は、本明細書に開示するデータが示すように、本発明の5−HT受容体拮抗薬はT細胞およびB細胞の両方の増殖を阻害することに加えてそのようなリンパ球にアポトーシスを誘発するからである。このように、本発明の方法は、自己免疫病、例えば乾癬などにかかっている哺乳動物、好適にはヒトに5−HT受容体拮抗薬を有効な量で投与することを含んで成る。
【0127】
本発明は、更に、喘息を治療するための化合物および方法も包含する。
【0128】
本発明は、また、免疫細胞関連病および障害を治療するための組成物および方法も包含する。1つの面における病気もしくは障害は自己免疫に関連しない病気または障害である。
【0129】
本発明は、更に、臓器移植拒絶反応の治療を必要としている哺乳動物におけるそれを治療する方法も包含する。具体的には、本明細書に開示する5−HT受容体拮抗薬を移植片対宿主病(GVHD)および/または臓器移植拒絶反応に苦しんでいる患者に投与することによってGVHDおよび臓器移植拒絶反応を治療する方法は本発明に含まれる。本発明は、例えば胸郭器官などの移植拒絶反応、例えば心臓移植、肺移植および心臓/肺の一括移植などの拒絶反応を治療する方法を包含する。本発明の方法は、更に、腹部器官、例えば肝臓、腎臓、膵臓、小腸および組み合わせ移植、例えば腎臓/膵臓移植、肝臓/腎臓移植および肝臓/小腸組み合わせ移植などの拒絶反応を治療することも包含する。本発明の方法は、更に、手、角膜、皮膚または顔移植の拒絶反応後の治療も包含する。加うるに、本発明の方法は、通常移植される組織、細胞および流体の拒絶反応を治療する目的でも使用可能であり、それらには、これらに限定するものでないが、膵島細胞(ランゲルハンス島)、骨髄移植、生体幹細胞移植、輸血、血管移植、心臓弁移植(自己、同種異系または異種)および骨移植が含まれる。その理由は、本明細書に開示するデータが示すように、本発明の5−HT受容体拮抗薬を投与すると結果としてそれが移植および移植片拒絶反応におけるエフェクター細胞の中の1つであるT細胞の増殖を阻害しかつ抗移植片抗体を産生するB細胞にアポトーシスを誘発するからである。このように、本発明は、移植拒絶反応の治療を必要としている哺乳動物、好適にはヒトに本発明の5−HT受容体拮抗薬を有効な量で投与することによる移植拒絶反応治療方法を包含する。
【0130】
本発明の方法は、更に、自己免疫病にかかっている哺乳動物または器官もしくは組織移植片を拒絶する哺乳動物に治療を5−HT受容体拮抗薬と別の免疫調節薬の組み合わせを用いて受けさせることも包含する。そのような免疫調節薬には、これらに限定するものでないが、他の薬剤、例えば、これらに限定するものでないが、遺伝子発現の調節剤(例えばステロイドおよびグルココルチコイド)、公知突然変異原であるアルキル化剤(例えばシクロホスファミド)、カルシニューリンおよびJNK/p38キナーゼ経路およびシクリンキナーゼカスケードに作用するキナーゼおよびホスファターゼの阻害剤(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス[FK506]およびラパマイシン)、デノボプリン合成
の阻害剤(これはグアノシンヌクレオチド合成の阻害剤として働きかつ同種移植拒絶反応の防止および持続的拒絶反応の治療で用いられる)(例えばマイコフェノラートモテフィル)およびデノボピリミジン合成の阻害剤(これは関節リウマチにかかっている患者を治療する目的で用いられる)(例えばレフルノミド)、TNF−α阻害剤、例えばアダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブなど、および他の免疫調節薬、例えばメトトレキセート、アザチオプリン、ナタリズマブおよびメルカプトプリンなどが含まれる。
【0131】
本発明の免疫調節薬を本発明の5−HT受容体拮抗薬、例えば式Iで表される5−HT受容体拮抗薬、ICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−890、ICI−894、ICI−953またはICI−954などと組み合わせて用いることで自己免疫病気にかかっている患者または移植拒絶反応を示す患者を治療することができる。本免疫調節薬を5−HT受容体拮抗薬と組み合わせて、1回分の投薬としてか或は一連の投薬として一緒または個別に送達してもよい。薬剤および療法を組み合わせる方法を本明細書の他の場所に記述する。
【0132】
本発明は、更に、ヒトにおける腫瘍、とりわけリンパ腫および骨髄腫を治療する方法も包含する。その理由は、本明細書に開示するデータが示すように、腫瘍性リンパ腫および骨髄腫細胞を本発明の5−HT受容体拮抗薬と接触させると増殖しなくなりかつアポトーシスがもたらされるからである。このように、本発明は、リンパ腫または骨髄腫にかかっている哺乳動物、好適にはヒトを治療する方法を包含し、この方法は、前記哺乳動物に本発明の5−HT受容体拮抗薬を有効な量で投与することを含んで成る。そのような5−HT受容体拮抗薬には、これらに限定するものでないが、式Iで表される5−HT受容体拮抗薬、ICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−890、ICI−894、ICI−953およびICI−954が含まれる。
【0133】
リンパ腫にかかっている哺乳動物に本発明の5−HT受容体拮抗薬を有効な量で投与することで前記哺乳動物に本発明の方法を用いた治療を受けさせることができる。本発明の方法を用いて治療を受けさせることができるリンパ腫には、これらに限定するものでないが、非ホジキンリンパ腫、例えばT細胞前リンパ球性白血病、T細胞大型顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫/セザライー症候群、皮膚原発CD30陽性T細胞リンパ増殖性疾患、皮膚原発未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性T細胞ンパ腫、詳細不明の末梢T細胞リンパ腫および未分化大細胞リンパ腫が含まれる。本発明は、更に、ホジキンリンパ腫にかかっている患者に本発明の5−HT受容体拮抗薬を有効な量で投与することでホジキンリンパ腫を治療する方法も包含する。そのようなホジキンリンパ腫には、これらに限定するものでないが、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫および古典的ホジキンリンパ腫が含まれ、それには結節性硬化症、混合細胞型ホジキンリンパ腫、リンパ球豊富型ホジキンリンパ腫およびリンパ球減少型ホジキンリンパ腫が含まれる。
【0134】
本発明の方法は、更に、骨髄腫にかかっている哺乳動物、好適にはヒトを治療することも包含する。その理由は、本明細書に開示するデータが示すように、本発明の5−HT受容体拮抗薬は多様な一般的骨髄腫細胞(治療を受けた患者および治療を受けていない患者の原発性多発性骨髄腫細胞および通常の多発性骨髄腫治療薬、例えばデキサメタゾンおよびメルファランなどに耐性を示す多発性骨髄腫細胞を包含)の増殖を阻害しかつそれにアポトーシスを誘発するからである。
【0135】
本発明の方法を用いて多発性骨髄腫の治療を必要としている患者におけるそれを治療す
る。この方法は、それを必要としている患者に本発明のフルフェナジン阻害剤を投与することを含んで成る。その理由は、本明細書の他の場所に開示したように、多発性骨髄腫細胞を本発明の5−HT受容体拮抗薬、例えば式Iで表される5−HT受容体拮抗薬、ICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−890、ICI−894、ICI−953またはICI−954などと接触させると多発性骨髄腫細胞の増殖が阻害されるばかりでなく多発性骨髄腫細胞にアポトーシスが誘発されるからである。このように、本発明は、哺乳動物、好適にはヒトにおける多発性骨髄腫を治療する方法を包含する。その上、本明細書に示すデータが立証するように、本発明は、多発性骨髄腫細胞が患者内に存在するか或は患者から単離したかに拘わらず、多発性骨髄腫細胞を本発明のフルフェナジン阻害剤と接触させることでそれにアポトーシスを誘発する方法を包含する。
【0136】
本発明を用いて国際病期分類システム(ISS)を基にしてあらゆる段階の多発性骨髄腫を治療するが、それには下記が含まれる;第1期:β2−ミクログロブリン<3.5mg/L、アルブミン3.5g/dL;第2期:β2−ミクログロブリン<3.5mg/Lおよびアルブミン<3.5g/dLまたはβ2−ミクログロブリンが3.5から5.5mg/Lの範囲;そして第3期:β2−ミクログロブリン>5.5mg/L。加うるに、本発明の方法は、多発性骨髄腫を治療するための組み合わせ療法も包含する。本発明の組み合わせは、5−HT受容体拮抗薬、例えば式Iで表される5−HT受容体拮抗薬、ICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−890、ICI−894、ICI−953またはICI−954などと多発性骨髄腫の治療で用いられる追加的薬剤および療法の組み合わせを包含する。具体的に意図する組み合わせ療法には、5−HT受容体拮抗薬を同種異系または自己幹細胞移植前または後に投与すること、骨折を防止する目的で5−HT受容体拮抗薬とビスホスホネート(例えばパミドロネート)を投与すること、および多発性骨髄腫に関連した貧血を治療する目的で5−HT受容体拮抗薬とエリスロポイエチンを投与することが含まれる。
【0137】
本発明で具体的に意図する追加的組み合わせ療法には、5−HT受容体拮抗薬とデキサメタゾン(サリドマイドの有り無し)、5−HT受容体拮抗薬とサリドマイド、5−HT受容体拮抗薬とビンクリスチン、5−HT受容体拮抗薬とドキソルビシン、5−HT受容体拮抗薬とメルファラン、および5−HT受容体拮抗薬とメルファランとプレドニゾンが含まれる。再発患者または他の様式で通常の多発性骨髄腫療法に応答しない患者の場合の本発明は、患者の多発性骨髄腫を治療する方法を包含し、この方法は、5−HT受容体拮抗薬とシクロホスファミドか、5−HT受容体拮抗薬とボルテゾミブか或は5−HT受容体拮抗薬とレナリドマイドの組み合わせを投与することを含んで成る。多発性骨髄腫をしばしば伴う腎不全に本発明の5−HT受容体拮抗薬および腎臓透析を用いた治療を受けさせることができる。
【0138】
5−HT受容体拮抗薬と別の多発性骨髄腫治療薬の組み合わせは、本明細書に開示するデータが示すように、多発性骨髄腫細胞の増殖を阻害しかつそれにアポトーシスを誘発するに有効である。非限定例として、本5−HT受容体拮抗薬と他の多発性骨髄腫治療薬をナノモルの濃度で用いると結果として通常の多発性骨髄腫治療薬を単独で用いた時に比べてとりわけアポトーシスが増加しかつ増殖が低下した。
【0139】
本明細書に開示するデータが更に示すように、本発明の5−HT受容体拮抗薬は多様なリンパ球にアポトーシスを誘発しかつそれの増殖を阻害し、従って、いろいろな免疫系関連病の治療で用いるに有用である。このように、本発明は、更に、本発明の5−HT受容体拮抗薬を投与することによってセロトニンとセロトニン受容体の結合を阻害することで前記細胞による免疫反応を抑制しそしてそれによって今度は前記細胞が媒介する免疫応答
を抑制することで哺乳動物、好適にはヒトにおける免疫応答を抑制する方法も包含する。本発明は、更に、免疫細胞による免疫反応を抑制する方法も包含する。その理由は、本明細書の他の場所に示すように、セロトニンと免疫細胞上のセロトニン受容体の結合を抑制すると前記細胞の活性化が抑制されそしてそれによって今度は前記細胞による免疫反応が抑制される(セロトニンの結合を抑制しない時に前記細胞が起こす免疫反応と比べてそして/またはセロトニンとこれの受容体の結合が抑制されていない以外は同じ細胞が起こす免疫反応に比べて)からである。本発明は、更に、哺乳動物、好適にはヒトにおける免疫細胞、例えばリンパ球などの活性化を抑制する方法も包含し、ここで、そのような活性化には前記細胞上のセロトニン受容体が活性化されることが介在する。再び、その理由は、本明細書の他の場所でより詳細に示すように、本明細書に開示するデータが免疫細胞を5−HT受容体拮抗薬と接触させることによって前記細胞上のセロトニン受容体によるセロトニンシグナル伝達を阻害すると前記細胞の活性化が抑制され、従ってまた、そのようにしないと前記細胞がもたらすであろう免疫応答も抑制されることを示しているからである。
【0140】
セロトニン受容体媒介シグナルを抑制する5−HT受容体拮抗薬を単独または本明細書に記述する組み合わせとして細胞、組織または動物に投与することで細胞、組織または動物のセロトニン型受容体とセロトニンの相互作用を抑制することができる。本明細書に記述する5−HT受容体拮抗薬を安全かつ有効に投与する方法は当業者に公知である。例えばセロトニン拮抗薬の投与は標準的文献に記述されている。即ち、セロトニンに影響を与えるいろいろな薬剤、セロトニン受容体拮抗薬およびフルフェナジンの投与はPhysician’s Desk Reference(1996年版、Medical Economics Co.、Montvale、NJ)(これの開示は引用することによってあたかも全体を本明細書に示すように本明細書に組み入れられる)に示されている。
【0141】
本発明の5−HT受容体拮抗薬を哺乳動物に投与する時、本化合物を製薬学的に許容される担体、例えば無菌水または緩衝水性担体、例えばグリセロール、水、食塩水、エタノールおよび他の製薬学的に許容される塩溶液、例えば燐酸塩および有機酸塩溶液などのいずれかに入れて懸濁させてもよい。前記および他の製薬学的に許容される担体の例はRemington’s Pharmaceutical Sciences(1991、Mack Publication Co.、New Jersey)(これの開示は引用することによってあたかも全体を本明細書に示すように本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0142】
製薬学的組成物は無菌の注射可能水性もしくは油性懸濁液もしくは溶液の形態で調製、包装または販売可能である。このような懸濁液もしくは溶液の構築は公知技術に従って実施可能であり、それに本明細書に記述する有効成分に加えて追加的材料、例えば分散剤、湿潤剤または懸濁剤などを含有させてもよい。そのような無菌の注射可能製剤の調製は無毒の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒、例えば水または1,3−ブタンジオールなどを用いて実施可能である。他の許容される希釈剤および溶媒には、これらに限定するものでないが、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液および固定油、例えば合成のモノ−もしくはジ−グリセリドなどが含まれる。
【0143】
本発明の方法で用いるに有用な製薬学的組成物は、経口、直腸、窒、非経口、局所、肺、鼻内、口腔、眼、ボーラス注射または他の投与経路に適した製剤として投与、調製、包装および/または販売可能である。他の意図する製剤には、突出ナノ粒子、リポソーム製剤、有効成分が入っている再密封型赤血球および免疫が基になった製剤が含まれる。
【0144】
本発明の組成物はいろいろな経路で投与可能であり、そのような経路には、これらに限定するものでないが、経口、直腸、窒、非経口、局所、肺、鼻内、口腔または眼投与経路
が含まれる。そのような投与経路1種または2種以上は当業者に容易に明らかであると思われ、治療すべき病気の種類およびひどさ、治療すべき獣医学的またはヒト患者の種類および年齢などを包含するかなり多くの要因に依存するであろう。
【0145】
本発明の方法で用いるに有用な製薬学的組成物は、経口用固体状製剤、眼用、座薬、エーロゾル、局所または他の同様な製剤として全身投与可能である。そのような製薬学的組成物に、ヘパラン硫酸またはそれの生物学的相当物の如き化合物に加えて、製薬学的に許容される担体および薬剤投与を向上させかつ助長することが知られている他の材料を含有させることも可能である。
【0146】
本明細書に記述する方法のいずれかを用いて識別する化合物を免疫系疾患(即ち自己免疫病および同種移植拒絶反応)を治療する目的で構築しそして哺乳動物に投与してもよく、それらをここに記述する。
【0147】
本発明は、幅広く態様な障害、例えばT細胞リンパ腫、自己免疫障害(上を参照)、固形臓器移植によって生じる合併症、皮膚移植拒絶反応、骨髄移植における移植片対宿主病、多発性骨髄腫などの治療で用いるに有用な化合物を含有して成る製薬学的組成物の調製および使用を包含する。
【0148】
本明細書に記述する製薬学的組成物の調製は単独でか、被験体に投与するに適した形態でか或は製薬学的組成物として実施可能であり、その組成物に本有効成分および1種以上の製薬学的に許容される担体、1種以上の追加的材料またはそれらのある種の組み合わせを含有させてもよい。本有効成分を当該技術分野で良く知られているように生理学的に許容されるエステルまたは塩の形態、例えば生理学的に許容されるカチオンまたはアニオンと組み合わせた形態などで製薬学的組成物に存在させてもよい。
【0149】
本明細書で用いる如き用語“製薬学的に許容される担体”は、本有効成分と組み合わせることができかつ組み合わせた後に本有効成分を被験体に投与する時に用いることができる化学的組成物を意味する。
【0150】
本明細書で用いる如き用語“生理学的に許容される”エステルまたは塩は、当該製薬学的組成物に含める他の如何なる材料とも適合しかつ当該組成物を投与すべき被験体にとって有害ではない本有効成分のエステルもしくは塩形態物を意味する。
【0151】
本明細書に記述する製薬学的組成物の製剤の調製は、公知であるか或は薬理学技術で本明細書の以降に開発されるであろう方法のいずれかを用いて実施可能である。一般に、そのような調製方法は、本有効成分を担体または他の1種以上の補助材料と一緒にした後に必要または好ましいならばその生成物を所望の単一もしくは複数回投与単位に成形または包装する段階を包含する。
【0152】
本明細書に示す製薬学的組成物の記述は主にヒトに処方して投与するに適した製薬学的組成物に向けたものであるが、そのような組成物は一般にあらゆる種類の動物に投与するにも適することを当業者は理解するであろう。ヒトに投与するに適した製薬学的組成物がいろいろな動物に投与するに適した組成物になるようにそれに修飾を受けさせる方法はよく理解されており、通常の技術を持つ獣医薬理学者は実験を行うとしても単に通常の実験を行うことでそのような修飾を考案しかつ実施することができるであろう。本発明の製薬学的組成物を投与することを意図する被験体には、これらに限定するものでないが、ヒトおよび他の霊長類、商業関連哺乳動物を包含する哺乳動物、例えば牛、豚、馬、羊、猫および犬などが含まれる。
【0153】
本発明の製薬学的組成物は、ばらでか、単一の単位用量としてか或は複数の単一単位用量として調製、包装または販売可能である。本明細書で用いる如き“単位用量”は、本有効成分を前以て決めた量で含有して成る製薬学的組成物の個々の量である。本有効成分の量は、一般に、ある被験体に投与されるであろう本有効成分の投薬量に相当するか或はそのような投薬量を便利に分割した量、例えばそのような投薬量の半分または1/3などである。
【0154】
本発明の製薬学的組成物に入れる本有効成分と製薬学的に許容される担体と任意の追加的材料の相対量は、治療すべき被験体の同定、大きさおよび状態に応じて変わりかつ更に当該組成物を投与する経路に応じても変わる。例として、本組成物の有効成分含有量を0.1%から100%(重量/重量)にしてもよい。
【0155】
本発明の製薬学的組成物に、本有効成分に加えて、更に、製薬学的に有効な1種以上の追加的薬剤を含有させることも可能である。特に意図する追加的薬剤には、抗嘔吐薬および捕捉剤、例えばシアン化物およびシアン酸塩捕捉剤などが含まれる。
【0156】
本発明の製薬学的組成物の制御もしくは持続放出製剤の製造は通常の技術を用いて実施可能である。経口投与に適した本発明の製薬学的組成物の製剤は、個々の固体状投与単位の形態で調製、包装または販売可能であり、そのような形態物には、これらに限定するものでないが、各々が本有効成分を前以て決めた量で含有する錠剤、ハードもしくはソフトカプセル、カプセル、トローチまたはドロップが含まれる。経口投与に適した他の製剤には、これらに限定するものでないが、粉末もしくは顆粒状製剤、水性もしくは油性懸濁液、水性もしくは油性溶液または乳液が含まれる。
【0157】
本明細書で用いる如き“油性”液体は、炭素含有液体分子を含有して成っていて水より低い極性を示す液体である。
【0158】
本有効成分を含有して成る錠剤の製造は、例えば本有効成分を場合により1種以上の追加的材料と一緒に圧縮または成形することなどで実施可能である。圧縮錠剤の調製は、適切な装置を用いて本有効成分を自由流れする形態、例えば粉末または顆粒製剤などとして場合により結合剤、滑剤、賦形剤、表面活性剤および分散剤の中の1種以上と混合して圧縮することで実施可能である。成形錠剤の製造は、適切な装置を用いて本有効成分と製薬学的に許容される担体の混合物をこの混合物を湿らせるに少なくとも充分な量の液体と一緒に成形することで実施可能である。錠剤の製造で用いる製薬学的に許容される賦形剤には、これらに限定するものでないが、不活性な希釈剤、顆粒および崩壊剤、結合剤および滑剤が含まれる。公知分散剤には、これらに限定するものでないが、ジャガイモ澱粉および澱粉グリコール酸ナトリウムが含まれる。公知表面活性剤には、これらに限定するものでないが、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。公知希釈剤には、これらに限定するものでないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶性セルロース、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウムおよび燐酸ナトリウムが含まれる。公知顆粒および崩壊剤には、これらに限定するものでないが、コーンスターチおよびアルギン酸が含まれる。公知結合剤には、これらに限定するものでないが、ゼラチン、アカシア、前以てゼラチン状にしておいたトウモコシ澱粉、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。公知滑剤には、これらに限定するものでないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクが含まれる。
【0159】
錠剤に被覆を受けさせなくてもよいか或はそれらに公知方法を用いた被覆を受けさせることで被験体の胃腸管内で起こる崩壊を遅らせることで有効成分の持続放出および吸収を達成してもよい。例として、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの如き材料を用いて錠剤の被覆を実施してもよい。さらなる例として、錠剤に米国
特許第4,256,108;4,160,452;および4,265,874に記述されている方法を用いた被覆を受けさせることで浸透圧的に制御された放出を起こす錠剤を生じさせることも可能である。錠剤に更に甘味剤、風味剤、着色剤、防腐剤またはそれらのある種の組み合わせを含有させることで製薬学的にエレガントで口当たりが良い製剤を生じさせることも可能である。
【0160】
本有効成分を含有して成るハードカプセルの製造は、生理学的に分解し得る組成物、例えばゼラチンなどを用いて実施可能である。そのようなハードカプセルに本有効成分を含有させかつ更に追加的材料を含有させてもよく、そのような追加的材料には、例えば不活性な固体状希釈剤、例えば炭酸カルシウム、燐酸カルシウムまたはカオリンなどが含まれる。
【0161】
本有効成分を含有して成るソフトゼラチンカプセルの製造は、生理学的に分解し得る組成物、例えばゼラチンなどを用いて実施可能である。そのようなソフトカプセルに本有効成分を含有させて、それを水または油性媒体、例えば落花生油、液状パラフィンまたはオリーブ油などと混合してもよい。
【0162】
経口投与に適した本発明の製薬学的組成物の液状製剤は、液状形態または使用前に水または別の適切なビヒクルでもどすことを意図した乾燥製品の形態のいずれかで調製、包装および販売可能である。
【0163】
液状懸濁液の調製は、本有効成分が水性もしくは油性ビヒクルに入っている懸濁液を達成する通常の方法を用いて実施可能である。水性ビヒクルには、例えば水および等張性食塩水などが含まれる。油性ビヒクルには、例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ、ゴマまたはヤシ油、分溜植物油など、および鉱油、例えば液状パラフィンなどが含まれる。液状懸濁液に更に1種以上の追加的材料を含有させることも可能であり、そのような追加的材料には、これらに限定するものでないが、懸濁剤、分散もしくは湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、防腐剤、緩衝剤、塩類、風味剤、着色剤および甘味剤が含まれる。油性懸濁液に更に増粘剤を含有させることも可能である。公知懸濁剤には、これらに限定するものでないが、ソルビトールシロップ、水添食用脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴムおよびセルロース誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが含まれる。公知分散もしくは湿潤剤には、これらに限定するものでないが、天然に存在する燐脂質、例えばレシチン、アルキレンオキサイドと脂肪酸、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸とヘキシトールから生じた部分エステルまたは脂肪酸と無水ヘキシトールから生じた部分エステルの縮合生成物(例えばそれぞれポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)などが含まれる。公知乳化剤には、これらに限定するものでないが、レシチンおよびアカシアが含まれる。公知防腐剤には、これらに限定するものでないが、メチル、エチルもしくはn−プロピル−パラ−ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸およびソルビン酸が含まれる。公知甘味剤には、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロースおよびサッカリンが含まれる。油性懸濁液用の公知増粘剤には、例えば蜜蝋、硬質パラフィンおよびセチルアルコールが含まれる。
【0164】
本有効成分が水性もしくは油性溶媒に入っている液状溶液の調製は、液状懸濁液の調製と実質的に同じ様式で実施可能であるが、主な差は、本有効成分が溶媒に懸濁するのではなく溶解する点である。本発明の製薬学的組成物の液状溶液に、液状懸濁液に関して記述した成分の各々を入れてもよいが、懸濁剤は必ずしも本有効成分が溶媒に溶解する補助になるとは限らないと理解する。水性溶媒には、例えば水および等張性食塩水が含まれる。
油性溶媒には、例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ、ゴマまたはヤシ油、分溜植物油など、および鉱油、例えば液状パラフィンなどが含まれる。
【0165】
本発明の製薬学的調製物の粉末および顆粒状製剤の調製は公知方法を用いて実施可能である。そのような製剤を被験体に直接投与してもよいか、例えば錠剤を生じさせる目的でか、カプセルを満たす目的でか或は水性もしくは油性ビヒクルを添加することで水性もしくは油性懸濁液もしくは溶液を調製をする目的などで用いてもよい。そのような製剤の各々に更に分散もしくは湿潤剤、懸濁剤および防腐剤の中の1種以上を含有させることも可能である。そのような製剤にまた追加的賦形剤、例えば充填剤および甘味剤、風味剤または着色剤などを含有させることも可能である。
【0166】
本発明の製薬学的組成物をまた水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョンの形態で調製、包装または販売することも可能である。その油相は植物油、例えばオリーブまたはラッカセイ油など、鉱油、例えば液状パラフィンなど、またはそれらの組み合わせであってもよい。そのような組成物に更に1種以上の乳化剤、例えば天然に存在するゴム、例えばアカシアゴムまたはトラガカントゴムゴムなど、天然に存在する燐脂質、例えば大豆またはレシチンホスファチドなど、脂肪酸と無水ヘキシトールの組み合わせから作られたエステルもしくは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエートなど、およびそのような部分エステルとエチレンオキサイドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどを含有させることも可能である。そのような乳液にまた追加的材料を含有させることも可能であり、そのような追加的材料には、例えば甘味剤または風味剤などが含まれる。
【0167】
本発明の製薬学的組成物は、直腸投与に適した製剤として調製、包装または販売可能である。そのような組成物は、例えば座薬、停留浣腸製剤および直腸もしくは腸洗浄用溶液などの形態であってもよい。
【0168】
座薬製剤の製造は本有効成分を通常の室温(即ち約20℃)で固体状でありかつ被験体の直腸温度(即ち健康な人では約37℃)で液体になる非刺激性の製薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることで実施可能である。適切な製薬学的に許容される賦形剤には、これらに限定するものでないが、ココアバター、ポリエチレングリコールおよびいろいろなグリセリドが含まれる。座薬製剤に更にいろいろな追加的材料を含有させることも可能であり、そのような追加的材料には、これらに限定するものでないが、抗酸化剤および防腐剤が含まれる。
【0169】
停留浣腸製剤または直腸もしくは腸洗浄用溶液の製造は、本有効成分を製薬学的に許容される液状担体と一緒にすることで実施可能である。当該技術分野で良く知られているように、浣腸製剤は被験体の直腸構造に適合した送達器具を用いて投与可能でありかつそれをそのような器具の中に包装してもよい。浣腸製剤に更にいろいろな追加的材料を含有させることも可能であり、そのような追加的材料には、これらに限定するものでないが、抗酸化剤および防腐剤が含まれる。
【0170】
本発明の製薬学的組成物は、窒投与に適した製剤として調製、包装または販売可能である。そのような組成物の形態は、例えば座薬、窒に挿入可能な含浸もしくは被覆材料、例えばタンポン、窒洗浄用製剤、またはゲルもしくはクリーム、または窒洗浄用溶液の形態であってもよい。
【0171】
ある材料に化学的組成物を用いた含浸または被覆を受けさせる方法は当該技術分野で公知であり、そのような方法には、これらに限定するものでないが、化学的組成物を表面に
付着または結合させる方法、化学的組成物をある材料の構造の中に前記材料の合成中に取り込ませる方法(即ち、例えば生理学的に分解し得る材料などを用いることで)および水性もしくは油性溶液もしくは懸濁液を吸収材料に吸収させる(後で乾燥させるか或は乾燥させない)方法が含まれる。
【0172】
洗浄用製剤または窒洗浄用溶液の製造は、本有効成分を製薬学的に許容される液状担体と一緒にすることで実施可能である。当該技術分野で良く知られているように、洗浄用製剤は当該被験体の窒構造に適合した搬送用器具を用いて投与可能でありかつそれの中に包装可能である。洗浄用製剤に更にいろいろな追加的材料を含有させることも可能であり、そのような追加的材料には、これらに限定するものでないが、抗酸化剤、抗生物質、抗菌・カビ剤および防腐剤が含まれる。
【0173】
製薬学的組成物の“非経口投与”を本明細書で用いる場合、それには、被験体の組織を物理的に破壊しそしてその組織の中の破壊部を通して製薬学的組成物を投与することを特徴とする投与経路のいずれも含まれる。従って、非経口投与には、これらに限定するものでないが、製薬学的組成物を注射することでか、製薬学的組成物を外科切開部を通して加えるか、製薬学的組成物を手術以外で組織を貫通させた創傷部に通して加えることなどによる組成物投与が含まれる。特に、非経口投与に、これらに限定するものでないが、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内注入、ボーラス注射および腎臓透析輸液技術を包含させることを意図する。
【0174】
非経口投与に適した製薬学的組成物の製剤は、本有効成分を製薬学的に許容される担体、例えば無菌水または無菌の等張性食塩水などと一緒に含有して成る。そのような製剤はボーラス投与または連続投与に適した形態で調製、包装または販売可能である。注射可能製剤は単位投薬形態物、例えばアンプルに入っている形態または防腐剤を含有する複数回投与用容器に入っている形態などとして調製、包装または販売可能である。非経口投与用製剤には、これらに限定するものでないが、油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、乳液、ペーストおよび移植可能な持続放出もしくは生分解性製剤が含まれる。そのような製剤に更に1種以上の追加的材料を含有させることも可能であり、そのような追加的材料には、これらに限定するものでないが、懸濁剤、安定剤または分散剤が含まれる。非経口投与用製剤の1つの態様では、本有効成分を適切なビヒクル(例えば発熱物質が入っていない無菌水)でもどすに適した乾燥(即ち粉末または顆粒)形態で供給した後、そのもどした組成物を非経口投与する。
【0175】
本製薬学的組成物は注射可能な水性もしくは油性の無菌懸濁液もしくは溶液の形態で調製、包装または販売可能である。そのような懸濁液もしくは溶液の構築は公知技術に従って実施可能であり、それに本有効成分に加えて、本明細書に記述する追加的材料、例えば分散剤、湿潤剤または懸濁剤などを入れてもよい。そのような注射可能な無菌製剤の調製は、非経口的に許容される無毒の希釈剤もしくは溶媒、例えば水または1,3−ブタンジオールなどを用いて実施可能である。他の許容される希釈剤および溶媒には、これらに限定するものでないが、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液および固定油、例えば合成のモノ−もしくはジグリセリドなどが含まれる。有用な他の非経口的に投与可能な製剤には、本有効成分を微結晶性形態でか、リポソーム製剤としてか或は生分解性重合体系の1成分として含有して成る製剤が含まれる。持続放出または移植用の組成物に、製薬学的に許容される高分子量もしくは疎水性材料、例えば乳液、イオン交換樹脂、難溶性重合体または難溶性塩などを含有させてもよい。
【0176】
局所投与に適した製剤には、これらに限定するものでないが、液状もしくは半液状の製剤、例えば塗布薬、ローション、水中油もしくは油中水エマルジョン、例えばクリーム、軟膏またはペーストなど、および溶液または懸濁液が含まれる。局所的に投与可能な製剤
は、例えば有効成分を約0.1%から約10%(重量/重量)含有して成っていてもよいが、有効成分の濃度をその有効成分が溶媒中で示す溶解度限界の如き高い濃度にすることも可能である。局所投与用製剤に更に本明細書に記述する追加的材料の中の1種以上を含有させることも可能である。
【0177】
本発明の製薬学的組成物は口腔経由による肺投与に適した製剤として調製、包装または販売可能である。そのような製剤は、本有効成分を含有して成る直径が約0.5から約7ナノメートル、好適には約1から約6ナノメートルの範囲の乾燥粒子を含有して成っていてもよい。そのような組成物を便利には乾燥粉末貯蔵層を含有して成っていてそれに噴射剤の流れを向けることで前記粉末を分散させるデバイスを用いるか或は自己噴射性溶媒/粉末分散用容器、例えば低沸点の噴射剤に溶解もしくは懸濁している本有効成分が密封型容器に入っているデバイスを用いて投与するに適した乾燥粉末の形態にする。好適には、そのような粉末が粒子を含有して成っていて前記粒子の少なくとも98重量%が0.5ナノメートル以上の直径を有しかつ前記粒子の数の少なくとも95%が7ナノメートル未満の直径を有するようにする。より好適には前記粒子の少なくとも95重量%が1ナノメートル以上の直径を有しかつ前記粒子の数の少なくとも90%が6ナノメートル未満の直径を有するようにする。乾燥粉末組成物に好適には固体状の微粉末希釈剤、例えば糖などを含有させそしてそれを便利には単位投薬形態物として供給する。
【0178】
低沸点の噴射剤には、一般に、大気圧下の沸点が65゜F未満の液状噴射剤が含まれる。一般に、そのような噴射剤が当該組成物の50から99.9%(重量/重量)を構成するようにしてもよくそして本有効成分が当該組成物の0.1から20%(重量/重量)を構成するようにしてもよい。そのような噴射剤に更に追加的材料、例えば液状の非イオン性もしくは固体状のアニオン性界面活性剤または固体状の希釈剤(好適には本有効成分を含有して成る粒子の粒径と同じ桁の粒径を有する)を含有させることも可能である。
【0179】
また、肺送達に適するように構築した本発明の製薬学的組成物を用いて本有効成分を溶液もしくは懸濁液の滴の形態で提供することも可能である。そのような製剤は本有効成分が入っている水性もしくは希アルコール溶液もしくは懸濁液(場合により無菌であってもよい)として調製、包装または販売可能であり、かつそれを便利には噴霧もしくは微粒化用装置のいずれかを用いて投与してもよい。そのような製剤に更に1種以上の追加的材料を含有させることも可能であり、そのような追加的剤には、これらに限定するものでないが、風味剤、例えばサッカリンナトリウムなど、揮発性油、緩衝剤、表面活性剤または防腐剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチルなどが含まれる。そのような投与経路で生じさせる液滴の平均直径が好適には約0.1から約200ナノメートルの範囲になるようにする。
【0180】
肺送達に有用であるとして本明細書に記述した製剤は、また、本発明の製薬学的組成物を鼻内投与するにも有用である。
【0181】
鼻内投与に適した別の製剤は、本有効成分を含有して成る平均粒子が約0.2から500ミクロメートルの粗い粉末である。そのような製剤を鼻から吸う様式、即ち粉末が入っている容器を鼻孔に近づけて保持して鼻に通して急速吸入する様式で投与する。
【0182】
鼻投与に適した製剤の有効成分含有量を例えば約0.1%(重量/重量)の如き少ない量から100%(重量/重量)の如き多い量にしてもよく、それに更に本明細書に記述する追加的材料の中の1種以上を含有させることも可能である。
【0183】
本発明の製薬学的組成物は口腔投与に適した製剤として調製、包装または販売可能である。そのような製剤の形態は、例えば通常の方法を用いて製造した錠剤またはドロップの
形態であってもよく、それの有効成分含有量を例えば0.1から20%(重量/重量)にしてもよくそしてその残りを口の中で溶解もしくは分解し得る組成物で構成させてもよくそして場合によりそれに本明細書に記述する追加的材料の中の1種以上を含有させてもよい。別法として、口腔投与に適した製剤には、本有効成分を含有して成る粉末またはエーロゾル化もしくは霧化した溶液もしくは懸濁液を含まれ得る。そのように粉末化、エーロゾル化または霧化した製剤を分散させる時、それの平均粒径もしくは液滴の大きさが好適には約0.1から約200ナノメートルの範囲になるようにし、それに更に本明細書に記述する追加的材料の中の1種以上を含有させることも可能である。
【0184】
本明細書で用いる如き“追加的材料”には、これらに限定するものでないが、下記の中の1種以上が含まれる:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性な希釈剤;顆粒および崩壊剤;結合剤;滑剤;甘味剤;風味剤;着色剤;防腐剤;生理学的に分解し得る組成物、例えばゼラチンなど;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;懸濁剤;分散もしくは湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩類;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗菌・カビ剤;安定剤;および製薬学的に許容される高分子量もしくは疎水性材料。本発明の製薬学的組成物に含有させることができる他の“追加的材料”は当該技術分野で公知であり、例えばGenaro編集(1985、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA)(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)などに記述されている。
【0185】
動物、好適にはヒトに投与可能な本発明の化合物の投薬量は典型的にかなり多くの要因に応じて変わり、そのような要因には、れらに限定するものでないが、治療すべき動物の種類および病気状態の種類、動物の年齢および投与経路が含まれる。
【0186】
本化合物を動物に投与する頻度は日に数回であってもよいか、或は投与頻度はより少なくてもよく、例えば日に1回、週に1回、2週毎に1回、月に1回、またはより少なく頻度、例えば数カ月毎に1回または年に1回などまたはそれより少ない頻度でさえあってもよい。そのような投与頻度は当業者に容易に明らかであると思われ、かなり多くの要因、例えばこれらに限定するものでないが、治療すべき病気の種類およびひどさ、動物の種類および年齢などに依存するであろう。本化合物を必ずしもではないが好適にはボーラス注射として投与し、その効果は注射後少なくとも1日持続する。そのようなボーラス注射を腹腔内に行ってもよい。
【0187】
このように、本明細書に示す教示を習得した後の当業者は、本発明がセロトニンとセロトニン受容体の相互作用を阻害する阻害剤を含有して成るボーラスの投与を包含しかつそのような阻害剤は好適には式Iで表される5−HT受容体拮抗薬、ICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−890、ICI−894、ICI−953またはICI−954であることを理解するであろう。所定の理論で範囲を限定することを望むものでないが、1回分のボーラスを投与するとそれが特定細胞、例えばとりわけ活性化したT細胞または癌性B細胞(例えば、多発性骨髄腫細胞など)のアポトーシスを媒介することで前記ボーラスが記憶細胞などの細胞死を媒介する[その細胞が死滅しないと、その細胞は移植された細胞もしくは組織の拒絶反応の原因になるであろう免疫応答を媒介するであろう]ことから本阻害剤を繰り返し投与する必要はない。そのような効果の媒介は、5−HT受容体拮抗薬が5HTR1B受容体の所に集中的に局在していてそれの濃度がセロトニンシグナルの伝達を阻害するに充分な濃度であることから細胞死を媒介しそして/または前記細胞による免疫応答を阻害することで起こり得る。
【0188】
III. キット
本発明は、セロトニンとセロトニン受容体の相互作用を阻害することに関連したいろいろなキットを包含するが、その理由は、本明細書の他の場所に開示したように、それがそのような相互作用を阻害することで免疫細胞の活性化が抑制され、それによって免疫応答が抑制されるからである。このように、1つの面において、本発明は、哺乳動物における免疫応答をモジュレートするためのキットを包含する。このキットは、セロトニンとセロトニン受容体の相互作用を阻害する阻害剤を有効な量で含有して成る。そのような阻害剤には好適にはセロトニン受容体拮抗薬が含まれる。かつ、前記キットに更にアプリケーターおよびそれの使用説明書も含有させる。
【0189】
加うるに、当業者は、本明細書に示す開示を基にして、本阻害剤は血液脳関門を通り抜けずかつ好適には水溶性である化合物であり得ることも理解するであろう。その理由は、本明細書の他の場所でより詳細に考察するように、血液脳関門を越えても保護されるであろう神経系細胞におけるセロトニンシグナル伝達に影響を与えないようにしながら非神経系細胞におけるそのようなシグナル伝達を抑制するのが好ましい可能性があるからである。
【0190】
具体的な態様における本発明のキットは、5−HT受容体拮抗薬、アプリケーターおよびそれの使用説明書を含有して成る。別の態様におけるキットは、5−HT受容体拮抗薬、例えば本明細書の他の場所に記述した5−HT受容体拮抗薬など、5−HT受容体拮抗薬を保持する容器および使用説明書を含有して成っていてもよい。当業者はアプリケーターを供給することができるであろう。
【0191】
本発明のキットは、好適には、式Iで表される5−HT受容体拮抗薬、ICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−890、ICI−894、ICI−953またはICI−954を含有して成る。加うるに、本キットは、本発明の5−HT受容体拮抗薬を投与するための使用説明書およびアプリケーターを含有して成り得る。
【0192】
本発明のキットを用いて、本明細書の他の場所に開示した病気および疾患を治療することができる。具体的には、本発明のキットを用いて、とりわけ自己免疫病、例えば乾癬、臓器移植拒絶反応、例えば腎臓移植拒絶反応など、リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫などおよびB−細胞腫瘍、例えば多発性骨髄腫などを治療することができる。しかしながら、本発明に記述するキットを前記使用に限定するものでなく、これは本明細書に開示する教示に由来する如何なる方法でも使用可能である。
【0193】
本発明をここに以下の実施例を参照することで説明する。本実施例は単に例示の目的で示すものであり、本発明を決して本実施例に限定するとして解釈されるべきでなく、むしろ、本発明は本明細書に示す教示の結果として明らかになるであろういずれかおよび全ての変形を包含すると解釈されるべきである。
【実施例】
【0194】
本明細書に引用する特許、特許出願および公開の各々および全ての開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0195】
本発明を具体的な態様を言及することで開示してきたが、他の当業者は本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく本発明の他の態様および変形を考案することができることは明らかである。添付請求項にそのような態様および相当する変形の全部を包含させると解釈されるべきであることを意図する。
【実施例1】
【0196】
5−HT受容体拮抗薬が細胞株中で示す効力
【0197】
細胞株
この研究で用いた細胞株はAmerican Type Culture Collection(ATCC;Manassas、VA)から入手したものであるか或はさもなければ示すようにして得たものであり、それらを標準的な実験室増殖条件下で維持した。この研究で用いる腫瘍性T−細胞株にCCRF−CEM細胞、CD4+リンパ芽球性T−細胞白血病株(Foley他、1965、Cancer 18:522−529)を含めた。用いたB−細胞腫瘍性細胞株は下記であった:RPMI 8226(多発性骨髄腫の患者に由来する形質細胞腫(Matsuoka他、1967、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.125:1246−1250)、U266(IgE−分泌骨髄腫患者から樹立(Nilsson他、1970、Clin.Exp.Immunol.、7:477-489))およびARH77(EBV形質転換形質細胞白血病(Burk他、1978、Cancer Res.38:2508−2513))。白血病フェーズのIgA−分泌骨髄腫患者から単離したMM1細胞クローンに由来するデキサメタゾン感受性細胞株であるMM1S細胞(Goldman−Leikin他、1989、Lab.Clin.Med.、113:335−345)はDr.Kenneth Andersonから贈られたものであった。BE(2)−Cは、化学療法と放射線療法を繰り返し受けた後の播種性神経芽細胞腫にかかっている小児から採取した骨髄生検を用いて1972年の11月に樹立したSK−N−BE(2)神経芽腫細胞株のクローンである(ATCC CRL−2271を参照)。BE(2)−CをATCCにJune L.Biedler、Memorial Sloan−Kettering Cancer Centerが預託した。RPMI−Dox 40細胞株(DaltonおよびSalmon、1992、Hematol.Oncol.Clin.North Am.、6:383-393)およびRPMI−LR5(Hideshema他、2005、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、102:8567−8572)はそれぞれドキソルビシン耐性およびメルファラン耐性の多発性骨髄腫細胞株である。デキサメタゾン感受性(MM1S)および耐性(MM1R)ヒト多発性骨髄腫細胞株に加えてデキサメタゾン感受性(OPM−2)および耐性(OPM−1)多発性骨髄腫細胞株も用いた(Gomi他、1990、Cancer Res.50:1873−1878)。あらゆる多発性骨髄腫細胞株をRPMI培地1640[FBS(Sigma、St.Louis、MO)を10%、L−グルタミンを2μM、ペニシリンを100単位/mlおよびストレプトマイシン(Gibco、La Jolla、CA)を100μg/ml含有]中で培養した。
【0198】
骨髄吸引物に抗体混合物(RosetteSep Separation System、StemCell Technologies、Vancouver)を用いた負の選択をHideshima他(2003、Blood 101:1530−1534)に記述されているようにして受けさせることで原発性多発性骨髄腫患者の形質細胞に精製を受けさせた。そのMM細胞の純度は抗−CD138 Ab(Pharmingen、San Jose、CA)を用いたフローサイトメトリー分析で実証して>90%であった。
【0199】
H]−チミジン取り込み検定
細胞を培養培地から収穫した後、20mLのハンクス平衡塩溶液(HBSS)に入れて遠心分離による洗浄を室温で3回実施した。細胞を96穴プレート(Corning−Costar、Acton、MA)に入れて密度が180μLの完全増殖培地当たり5x10個の細胞になるように平板培養した。その培養穴に細胞を加えた後、試験薬剤を体積が水性ビヒクル当たり20μLを超えることもDMSOビヒクルの最終濃度が0.05%を超えることもないように加えた。未処置サンプルには対照としてビヒクルを等しい濃度で入れた。増殖検定を薬剤添加後指定時間実施した後、最後の6時間の培養期間中、1μCi[H]−チミジン(NEN−Life Sciences、Boston、MA)
と一緒にして脈動させた(pulsed)。この検定が完了した時点で細胞の収穫をPHD収穫装置(Brandel、Gaithersburg、MD)を用いてガラス繊維フィルターで実施した。フィルターを3mLのCytoScintシンチレーション流体(ICN Biomedicals、Irvine、CA)に一晩浸漬した後、βカウンター(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用いた計数を実施した。あらゆるサンプルに実験を少なくとも3重複して受けさせた。
【0200】
細胞生存能力に関する熱量MTT検定
細胞を収穫した後、その細胞に示す濃度の薬剤を用いた処理を各穴に入れる体積を小さくして100μLにする以外は[H]−チミジン取り込み検定およびトリパンブルー排除試験に関して記述したようにして受けさせた。検定を薬剤添加後指示時間実施した。検定が完了する前に50mgのMTT試薬(3−(4,5−ジメチルチアゾン−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラナトリウムブロマイド)を10mLのPBS(pH7.4)にその製造業者の指示に従って溶解させた。検定が完了した時点で各穴に溶解させたMTT試薬を10μL加え、穏やかに撹拌することで混合した後、組織培養インキュベーターに入れて37℃で4時間インキュベートした。各穴にイソプロパノール/0.04NのHClを100μL加えた後、ピペットによる吸引を繰り返し行うことで徹底的に混合した。吸光度の測定をELISAプレートリーダーを570nmの波長で用いて実施した。MTT検定用のあらゆるサンプルの平板培養を少なくとも4重複して実施した。
【0201】
トリパンブルー排除試験
細胞を収穫した後、その細胞に示す濃度の薬剤を用いた処理を[H]−チミジン取り込み検定に関して上述したようにして受けさせた。検定を薬剤添加後指示時間数実施した。検定が完了した時点で細胞を96穴プレートから収穫し、HBSSで洗浄した後、それに入れて再び懸濁させた。次に、細胞懸濁液に0.4%(重量/体積)のトリパンブルー溶液の1:2希釈液を用いた染色を約15分間受けさせた。生存能力のある細胞(トリパンブルーで染色されない)の数を血球計を用いて数えた。
【0202】
アネキシンV結合によるアポトーシス検定
細胞を収穫し、冷PBS(4℃)で2回洗浄した後、結合用緩衝液(10X;0.1M
HEPES/NaOH、pH7.4;140mM NaCl;25mM CaCl)に入れて1x10個の細胞/mlの濃度になるように再懸濁させる。細胞(100μL)を一定分量に分けてFACS管に入れた後、アネキシンV色素を加える。管を穏やかに混合した後、室温の暗所で15分間インキュベートする。各管に結合用緩衝液(400μL)を加えた後、フローサイトメトリーで分析する。
【0203】
この実施例で示された実験結果を以下に記述する。
【0204】
数種類の多発性骨髄腫細胞株を包含する数種の株を用いて細胞の増殖または増殖の不足を測定する目的でMTT検定を用いた。MTT検定では、ミトコンドリアの還元酵素が活性である時に黄色のMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)が還元を受けて紫色のホルマザンに変わる量を測定し、このように、生存能力のある細胞の数を直接測定する検定である(Mosmann、1993、J.Immunol.Meth.、65:55−63)。細胞を5−HT受容体拮抗薬で処置してそれが産生するホルマザンの量を対照細胞が産生する量と比較して測定し、そして用量応答曲線を作成した。
【0205】
次に、HeLa細胞、T細胞リンパ腫株CCRF−CEMおよび多発性骨髄腫細胞株RPMI−8226に選択的5−HT1B拮抗薬SB 216641、ICI−822、ICI−823、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、I
CI−849、ICI−850、ICI−685、ICI−715、ICI−735、ICI−890、ICI−891、ICI−892、ICI−893、ICI−894、ICI−895、ICI−953、ICI−956、ICI−954、ICI、955およびICI−957による処置を受けさせた後、細胞の生存能力および増殖をMTT検定を用いて測定した(図1−6および15−25)。生存能力の損失および増殖の阻害はT細胞および多発性骨髄腫細胞株(図2−3、5−6、15−16、18−21および23−25)の方がHeLa細胞に比べて顕著であった。
【0206】
本発明の化合物を用いた関節炎治療
図26−28に、本発明のいろいろな化合物を用いて処置したマウスが示す臨床的関節炎スコアに対して本発明のいろいろな化合物が示した効果を示す。注目すべきは、図26は、コラーゲン注射で感作させたマウス、即ち標準的関節リウマチ(RA)動物モデルにICI−847を10mg/kgの量で約21日間に渡って毎日経口送達するとデキサメタゾンと同様な効果が得られ、その結果として、臨床的関節炎スコアはデキサメタゾンのそれと同じであることを示している。
【0207】
化合物ICI−685、ICI−735およびICI−847がより高い濃度およびより低い濃度で示す効果を試験する追加的試験も実施し、それは図29に示す如くであった。これらのデータは、ICI−847が関節リウマチ(RA)の治療およびRAの症状の治療に有効であることを示しておりかつ30mg/kgにした時にICI−847が検定期間中デキサメタゾンと同様な効果を示したことを示している。
【0208】
デキサメタゾンは他の炎症性疾患の中でとりわけ関節炎の治療で用いられる良く知られた化合物である。従って、この実験の結果は、本発明の化合物が関節炎および関連した疾患の治療に有用であり得ることを示唆している。
【0209】
本発明の化合物を用いた喘息治療
本発明の化合物にまた喘息モデルを用いた効力試験も受けさせた。表1に、本発明の化合物が喘息モデルの喘息治療で示した効力を示す。表1は、ICI−847およびICI−735を20mg/mlの量でアスペルギルス・フミガーツスが基になったマウス喘息モデルに腹腔内送達した時に両方とも肺抵抗を低下させる点で少なくともデキサメタゾンと同じ効果を示したことを示している。
【0210】
一群のマウスにアスペルギルス・フミガーツスを0、14、26、27および28日目に腹腔内注射で投与した。29日目に気管切開/メタコリン処置した後直ちに肺抵抗を試験した。デキサメタゾンを投与する動物には26、27および28日目にデキサメタゾンを投与した。本発明の化合物を投与する動物には肺抵抗試験を実施するほんの数時間前に本化合物を投与した。対照として、また、マウスへのあらゆる試験化合物の投与に加えてデキサメタゾンの投与をA.フミガーツスによる発作の原因無しに実施した。A.フミガーツスによる処置を受けさせないで化合物による処置を受けさせた動物は全部が肺抵抗試験で約3のベースライン値を示した。
【0211】
デキサメタゾンは他の炎症性疾患の中でとりわけ喘息の治療で用いられる良く知られた化合物である。従って、この実験の結果は、本発明の化合物が喘息および関連した疾患の治療に有用であり得ることを示唆している。
【0212】
【表1】

【0213】
化合物および合成
以下に本発明に従ういろいろな化合物の合成を示し、これらの化合物の中の数種を図30−32に例示する合成概略図に示す。その上、図33−44の各々に本発明の化合物のサブセットに関する詳細な合成経路も示す。
【0214】
化合物 2
10−(3−クロロプロピル)−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
2−トリフルオロメチルフェノチアジン(化合物1)(2g、7.49ミリモル)と水素化ナトリウム(0.5g、10.42ミリモル)を無水トルエン(30mL)に入れることで生じさせた溶液を撹拌しながらこれに1−ブロモ−3−クロロプロパン(1.57g、10ミリモル)を加えた。その反応混合物をアルゴン雰囲気下110℃で18時間撹拌した。その溶液を室温に冷却して氷−水混合物の中に注ぎ込み、粗生成物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した後、その有機相を一緒にして無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲル使用カラムクロマトグラフィー(9:1のヘキサン:酢酸エチル)による最終的な精製を実施することで10−(3−クロロプロピル)−2−トリフルオロメチルフェノチアジン(1.5g、58%)を固体として得た。
【0215】
化合物 3
10−[3−(4−N−Boc−1−ピペラジニル)プロピル)]−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
クロロ化合物2(2.57g、7.5ミリモル)と1−Boc−ピペラジン(1.4g、7.5ミリモル)をメチルエチルケトン(40mL)に入れることで生じさせた溶液を撹拌しながらこれにヨウ化ナトリウム(1.5g、10ミリモル)を加えた。その反応混合物をアルゴン雰囲気下において還流下で24時間撹拌した。その反応混合物を濾過した後、その濾液を真空下で濃縮した。その残留物を酢酸エチル(100mL)と食塩水(50mL)の間で分離させた。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、蒸発させた。その結果として得た残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することで3(2.7g、73%)を固体として得た。MS(ESI):m/z 494(M+H).
【0216】
化合物 4
ICI−685
化合物3(750mg、1.52ミリモル)を無水CHCl(10mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.75mL、6.57ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、その残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物(650mg、69%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z 394(M+H).
【0217】
化合物 5
10−{3−[4−(N−Boc−2−アミノ)エチルピペラジニル]プロピル}−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
クロロプロピル誘導体2(1.2g、3.5ミリモル)と炭酸カリウム(1.5g、10.86ミリモル)と1−(2−N−Boc−アミノエチル)ピペラジン(0.78g、3.5ミリモル)をメチルエチルケトン(30mL)に入れることで生じさせた懸濁液を撹拌しながらこれにヨウ化ナトリウム(0.9g、6ミリモル)を加えた。その反応混合物をアルゴン雰囲気下において還流下で24時間撹拌した。その反応混合物を濾過した後、濾液を真空下で濃縮した。その残留物を酢酸エチル(30mL)と食塩水(15mL)の間で分離させた。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、蒸発させた。その結果として得た残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することで5(1.2g、64%)を発泡体として得た。MS(ESI):m/z 537(M+H).
【0218】
化合物 6
10−{3−[4−(2−アミノ)エチルピペラジニル]プロピル]}2−トリフルオロメチルフェノチアジン
化合物5(1.20g、2.23ミリモル)を無水CHCl(15mL)に溶解させた後、この溶液に0℃でTFA(1.2mL、10.5ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物をCHClで希釈した後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液を添加することでpHを8に調整した。層分離を起こさせた後、その水層にCHCl(2×20mL)を用いた抽出を受けさせた。その有機層を一緒にして飽和塩化ナトリウム溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、蒸発させた。その結果として得た残留物6をさらなる精製を全く行うことなく用いた。MS(ESI):m/z 437(M+H).
【0219】
化合物 7
N−Boc保護ICI−735
N−Bocグリシン(0.48g、2.75ミリモル)とHATU(1.1g、2.89ミリモル)とフェノチアジンピペラジン6(1.0g、2.29ミリモル)をCHCl(15mL)に入れることで生じさせた溶液にDIPEA(1mL)を加えた後、その混合物を室温で12時間撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、その残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することでアミド7(0.75g、55%)を発泡体として得た。MS(ESI):m/z 594(M+H).
【0220】
化合物 8
ICI−735.
化合物7(640mg、1.07ミリモル)を無水CHCl(10mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.6mL、5.26ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物8(620mg 70%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/
z 494(M+H).
【0221】
化合物 9
10−(3−クロロプロピル)−2−ジメチルスルファミドフェノチアジン
2−ジメチルアミノスルホニルフェノチアジン(3.06g、10ミリモル)と水素化ナトリウム(0.6g、12ミリモル)を無水トルエン(35mL)に入れることで生じさせた混合物を撹拌しながらこれに1−ブロモ−3−クロロプロパン(1.8g、1.15ミリモル)を加えた。その反応混合物をアルゴン雰囲気下において110℃で12時間撹拌した。その溶液を室温に冷却し、氷−水混合物の中に注ぎ込み、粗生成物を酢酸エチル(2x25mL)で抽出した後、その有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲル使用カラムクロマトグラフィー(7:3ヘキサン:酢酸エチル)による最終的な精製を実施することで9(2.5g、65%)を油として得た。
【0222】
化合物 10
10−{3−[4−(N−Boc−2−アミノ)エチルピペラジニル]プロピル}−2−ジメチルスルファミドフェノチアジン
フェノチアジンクロロ誘導体9(382mg、1.0ミリモル)と炭酸カリウム(500mg,3.62ミリモル)と1−(2−N−Boc−アミノエチル)ピペラジン(229mg、1.0ミリモル)をメチルエチルケトン(20mL)に入れることで生じさせた溶液を撹拌しながらこれにヨウ化ナトリウム(150mg、1ミリモル)を加えた。その反応混合物をアルゴン雰囲気下において還流下で24時間撹拌した。その反応混合物を濾過した後、その濾液を真空下で濃縮した。その残留物を酢酸エチル(20mL)と食塩水(10mL)の間で分離させた。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、蒸発させた。その結果として得た残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することで10(410mg、71%)を発泡体として得た。MS(ESI):m/z 576(M+H).
【0223】
化合物 11
ICI−715.
化合物10(410mg、0.71ミリモル)を無水CHCl(5mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.4mL、3.5ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物11(325mg、56%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z 476(M+H).
【0224】
化合物 12
N−Boc−4−(3−ブロモプロピル)ピペリジン
N−Boc−4−(3−ヒドロキシプロピル)ピペリジン(160mg、0.658ミリモル)を無水THF(5mL)に溶解させた後、四臭化炭素(265mg、0.79ミリモル)を加えた。次に、トリフェニルホスフィン(207mg、0.79ミリモル)を無水テトラヒドロフラン(2mL)に入れることで生じさせた溶液を2時間かけて滴下した。その混合物を室温で18時間撹拌した後、ジエチルエーテル(5mL)で希釈した。その反応混合物を濾過し、その濾液を真空下で濃縮した後、その結果として得た残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のヘキサン:酢酸エチル)で精製することで12(143mg、72%)を油として得た。
【0225】
化合物 13
10−[3−(N−Boc−4−ピペリジル)プロピル]−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
2−トリフルオロメチルフェノチジン1(400mg、1.5ミリモル)と水素化ナトリウム(100mg、2ミリモル)をDME(10mL)に入れることで生じさせた溶液をアルゴン雰囲気下90℃で撹拌しながらこれにN−Boc−4−(3−ブロモプロピル)ピペリジン12(380mg、1.24ミリモル)を滴下した。その反応混合物を還流下で12時間撹拌した。その反応混合物を濾過した後、その濾液を真空下で濃縮した。その残留物を酢酸エチル(25mL)と食塩水(10mL)の間で分離させた。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、蒸発させた。その結果として得た残留物をシリカゲル使用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(8:2のヘキサン:酢酸エチル)で精製することでフェノチアジン誘導体13(425mg、70%)を固体として得た。MS(ESI):m/z 493(M+H).
【0226】
化合物 14
ICI−824.
化合物13(200mg、0.4ミリモル)を無水CHCl(5mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.2mL,1.75ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物14(125mg、61%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z 393(M+H).
【0227】
化合物 15
10−{3−[1−(N−boc−2−アミノ)エチル−4−ピペリジル]プロピル}−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
ピペリジン誘導体14(160mg、0.4ミリモル)と炭酸カリウム(500mg、3.62ミリモル)を無水DMF(5mL)に入れることで生じさせた溶液にN−Boc−2−アミノエチルブロマイド(137mg、0.6ミリモル)を加えた後、その溶液を室温で24時間撹拌した。その混合物をエチルエーテル(20mL)で希釈し、水(2x10mL)そして食塩水(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することで15(152mg、70%)を油として得た。MS(ESI):m/z 536(M+H).
【0228】
化合物 16
10−{3−[1−(N−Boc−3−アミノ)プロピル−4−ピペリジル]プロピル}−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
ピペリジン誘導体14(526mg,1.34ミリモル)と炭酸カリウム(1.0g,7.25ミリモル)を無水DMF(5mL)に入れることで生じさせた溶液にN−Boc−3−アミノプロピルブロマイド(627mg、2.63ミリモル)を加えた後、その溶液を室温で24時間撹拌した。その混合物をジエチルエーテル(10mL)で希釈し、水(2x10mL)そして食塩水(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することで16(325mg、44%)を油として得た。MS(ESI):m/z 550(M+H).
【0229】
化合物17
ICI−847.
化合物16(120mg、0.22ミリモル)を無水CHCl(5mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.2mL、1.75ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成
物17(52mg、35%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z 450(M+H).
【0230】
化合物 18
10−{3−[1−(2−アミノ)エチル−4−ピペリジル]プロピル}−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
化合物15(600mg、1.12ミリモル)を無水CHCl(10mL)に溶解させた後、その溶液に0CでTFA(0.75mL、6.57ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物をCHClで希釈した後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液を添加することでpHを8に調整した。層分離を起こさせた後、その水層にCHCl(2×20mL)を用いた抽出を受けさせた。その有機層を一緒にして飽和塩化ナトリウム溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、蒸発させた。その結果として得たアミン18をさらなる精製を全く行うことなく用いた。MS(ESI):m/z 436(M+H).
【0231】
化合物 19
N−Boc保護ICI−849
N−Bocサルコシン(286mg、1.51ミリモル)とHATU(574mg、1.51ミリモル)とプロピルエチルピペリジンアミン18(550mg、1.26ミリモル)をCHCl(15mL)に入れることで生じさせた溶液にDIPEA(0.5mL)を加えた後、その混合物を室温で12時間撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することでアミド19(400mg、52%)を発泡体として得た。MS(ESI):m/z 607(M+H).
【0232】
化合物 20
ICI−849.
化合物19(200mg、0.33ミリモル)を無水CHCl(5mL)に溶解させた後、その溶液に0CでTFA(0.2mL、1.75ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物20(110mg、45%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z 507(M+H).
【0233】
化合物 21
10−(4−クロロブチル)−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
2−トリフルオロメチルフェノチアジン1(4.0g,15ミリモル)と水素化ナトリウム(1.2g、24ミリモル)を無水トルエン(40mL)に入れることで生じさせた溶液を撹拌しながらこれに1−ブロモ4−クロロブタン(3.0g、17.6ミリモル)を加えた。その反応混合物をアルゴン雰囲気下において110℃で18時間撹拌した。その溶液を室温に冷却した後、氷−水混合物の中に注ぎ込んだ。粗生成物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した後、その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲル使用カラムクロマトグラフィー(9:1のヘキサン:酢酸エチル)による最終的な精製を実施することで21(3.5g、65%)を油として得た。
【0234】
化合物 22
10−{4−[4−(N−Boc−2−アミノ)エチルピペラジニル]ブチル}−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
クロロブチル誘導体21(3.57g、10ミリモル)と炭酸カリウム(4.0g、28.98ミリモル)と1−(2−N−Boc−アミノエチル)ピペラジン(2.6g、1
1.35ミリモル)をメチルエチルケトン(40mL)に入れることで生じさせた懸濁液を撹拌しながらこれにヨウ化ナトリウム(2.5g、16ミリモル)を加えた。その反応混合物をアルゴン雰囲気下において還流下で24時間撹拌した。その反応混合物を濾過した後、その濾液を真空下で濃縮した。その残留物を酢酸エチル(50mL)と食塩水(25mL)の間で分離させた。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、蒸発させた。その結果として得た残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することで22(4.0g、72%)を発泡体として得た。MS(ESI):m/z 551(M+H).
【0235】
化合物 23
ICI−953.
化合物22(152mg、0.28ミリモル)を無水CHCl(5mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.2mL、1.75ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物23(150mg、68%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z 451(M+H).
【0236】
化合物 24
N−Boc保護ICI−954
N−Boc−グリシン(0.7g、4.0ミリモル)とHATU(1.6g、4.2ミリモル)とアミン23(1.5g、3.3ミリモル)をCHCl(20mL)に入れることで生じさせた溶液にDIPEA(1.5mL)を加えた後、その混合物を室温で12時間撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することでアミド24(1.2g、60%)を発泡体として得た。
【0237】
化合物 25
ICI−954.
化合物24(250mg、0.41ミリモル)を無水CHCl(5mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.2mL、1.75ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物25(210mg、60%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z 508(M+H).
【0238】
化合物 26
N−Boc−4−(2−ブロモエチル)ピペリジン
N−Boc−4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(0 95g、4.17ミリモル)を無水THF(20mL)に溶解させた後、四臭化炭素(1.34g、4.0ミリモル)を加えた。次に、トリフェニルホスフィン(1.15g、4.38ミリモル)を無水テトラヒドロフラン(2mL)に入れることで生じさせた溶液を2時間かけて滴下した。その混合物を室温で18時間撹拌した後、その混合物にジエチルエーテル(50mL)を加えた。その反応混合物を濾過した後、濾液を真空下で濃縮した。その結果として得た残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のヘキサン:酢酸エチル)で精製することで26(1.05g、86%)を油として得た。
【0239】
化合物 27
10−[2−(N−Boc−4−ピペリジル)エチル]−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
2−トリフルオロメチルフェノチジン1(0.91g、3.42ミリモル)と水素化ナトリウム(0.2g、4.0ミリモル)をDME(20mL)に入れることで生じさせた溶液をアルゴン雰囲気下90℃で撹拌しながらこれにN−Boc−4−(2−ブロモエチル)ピペリジン26(1.0g、3.42ミリモル)を滴下した。その反応混合物を還流温度で12時間撹拌した。その反応混合物を濾過した後、濾液を真空下で濃縮した。その残留物を酢酸エチル(25mL)と食塩水(10mL)の間で分離させた。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、蒸発させた。その結果として得た残留物をシリカゲル使用カラムクロマトグラフィー(8:2のn−ヘキサン:酢酸エチル)で精製することでフェノチアジン誘導体27(0.3g、18%)を発泡体として得た。MS(ESI):m/z 479(M+H).
【0240】
化合物 28
ICI−1007.
化合物27(70mg、0.15ミリモル)を無水CHCl(5mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.1mL、0.88ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物28(50mg、69%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z
379(M+H).
【0241】
化合物 29
10−{2−[1−(N−Boc−2−アミノ)エチル−4−ピペリジル]エチル}−2−トリフルオロメチルフェノチアジン
ピペリジン誘導体28(145mg、0.38ミリモル)と炭酸カリウム(500mg、3.62ミリモル)を無水DMF(5mL)に入れることで生じさせた溶液にN−Boc−2−アミノエチルブロマイド(102mg、0.45ミリモル)を加えた後、その溶液を室温で24時間撹拌した。その混合物をジエチルエーテル(20mL)で希釈し、水(2x10mL)そして食塩水(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のCHCl:MeOH)で精製することで29(145mg、73%)を油として得た。MS(ESI):m/z 522(M+H).
【0242】
化合物 30
ICI−1008.
化合物29(100mg、0.19ミリモル)を無水CHCl(5mL)に溶解させた後、その溶液に0℃でTFA(0.2mL、1.75ミリモル)を滴下した。その溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物に蒸発を受けさせた後、残留物をC18カラム使用逆相HPLC(アセトニトリル:水:TFA、勾配溶離)で精製することで所望生成物30(52mg、42%)を凍結乾燥後に白色固体として得た。MS(ESI):m/z 422(M+H).
【0243】
追加的生物学的検定
セロトニン−受容体結合検定
この検定で用いる方法は、信頼性と再現性が最大限になるように科学文献の方法を改変した方法である。得た結果の正当性を確保する目的で参照基準を各検定の一体部分として実施した。検定を以下に記述する如き条件下で実施した。IC50値を示す場合、DATA ANALYSIS TOOLBOX(MDL Information Systems、San Leandro、CA、USA)を用いた非線形最小二乗回帰分析を用いてその値を決定した。阻害定数(K)を示す場合、K値の計算を、ChengおよびPrusoff(Cheng、Y.、Prusoff、W.H.、Biochem.Ph
armacol.22:3099−3108、1973)の式を用い、試験を受けさせた化合物で実測したIC50、この検定で用いた放射性リガンドの濃度およびこのリガンドが示すK値に関する歴史的値を用いて行った。競合結合曲線の傾きを示すヒル係数(n)を示す場合、これの計算をDATA ANALYSIS TOOLBOXを用いて行った。ヒル係数の差が10以上の場合、これは、結合による追い出しが結合部位が単一であることを伴う質量作用の法則に従わないことを示唆している可能性がある。
【0244】
表4−7に、表2および3に示す生化学検定の結果を示す。これらの実験では、本発明の化合物が公知リガンドをセロトニン受容体から追い出す能力を測定する。5−HTR−1Aおよび5−HTR−1Bが示したデータを表4−7に示すが、そのデータは、本発明の化合物がリガンドの特異的追い出しに有効であることを示している。
【0245】
【表2】

【0246】
【表3】

【0247】
【表4】

【0248】
【表5】

【0249】
【表6】

【0250】
【表7】

【0251】
LPS媒介サイトカイン産生モデルにおける化合物ICI−685およびICI−735の薬理学的評価
リポ多糖体(LPS;細菌細胞壁の主成分)を哺乳動物に致死量または致死量以下の量でボーラス注射すると結果として血清中サイトカイン濃度(例えばTNF−α)が急速および一時的に上昇する。このような動物モデルは元々はヒトにおける敗血症ショックの特定面を示す目的で開発されたモデルであるが、しかしながら、LPS−齧歯類モデルにおける効力と臨床的効力の間の相互関係は劣っている。しかしながら、このモデルは有効な第一選択の一般的炎症モデルであり得、かつ試験化合物が示す抗炎症の可能性を測定する時に用いるに有用であり得る。このモデルで多様な臨床的に認可されている抗炎症性化合物が極めて高い効果を示し、そのような化合物には、グルココルチコイド、NSAIDSおよびCOX−2阻害剤が含まれる。化合物ICI−685およびICI−735に試験をそれらがLPS刺激TNF−αおよびIL−1β産生を阻害する能力に関して受けさせた。
【0252】
ICI−685およびICI−735の両方を水中で調製した。経時変化試験では、両方の薬剤を濃度が1mg/mlになるように調製した後、10ml/kg投与することで、1回分の投与量を10mg/kgにした。用量応答試験では、薬剤を濃度が0.05、0.2および0.5mg/mlになるように調製した後、10ml/kgの体積で投与す
ることで、1回分の投与量がそれぞれ0.5、2および5mg/kgになるようにした。動物にIVまたはIP投与を受けさせた。
【0253】
6週齢のCD1:ICRマウスをHarlan(Indianapolis、IN)から入手した。動物をケージ1個当たり5匹ずつ入れ、12時間の明暗サイクルに維持し、餌および水を随意与えた。動物に試験を8-10週齢の時に受けさせた。
【0254】
リポ多糖体(熱で死滅させた大腸菌0127:B5;Sigma Aldrich)を蒸留水に濃度が0.025mg/mlになるように入れて調製した。LPSを10ml/kgの体積で投与(IP)することで最終的な投与量が0.25mg/kg(約7.5μg/マウス)になるようにした。本明細書の他の場所で示したように、薬剤の投与をLPS投与前に実施した。LPSを投与してから90分後に逆眼窩出血で血液を採取した。血液から血清を調製した後、OPT−EIAマウスTNF−αおよびIL−1β ELISAキット(BD Biosciences)をその製造業者の指示に従って用いることでTNF−αおよびIL−1βの濃度を測定した。
【0255】
最適な投与経路および最適な前処置時間を決定する最初の試験を考案した。2種類のプレドース経時変化試験を実施した。1番目(試験1A)を3プレドース時間点(2、6および18時間)で実施した。2番目を0、1および2時間のプレドース時間点で実施した。両方の試験とも薬剤の投与をIPまたはIVで実施した。
【0256】
1番目の試験で得たデータを用いて、各化合物が示す用量応答活性を測定するように考案した2番目の試験を実施した。最良の活性をもたらす経路および前処置時間を用いて化合物に試験を0.、2.0および5mg/kgの投与量で受けさせた。
【0257】
TNFαおよびIL−1βの両方ともLPSに促されて以前の試験のそれと一致した濃度まで上昇した。そのような以前の試験と一致して、TNFαがLPSに促されて増加する応答の方がIL−1βのそれよりもずっと大きかった。血清中のTNFα濃度が検出不能濃度から3から8ng/mlの範囲の濃度まで上昇した。IL−1βの濃度は50から100pg/mlの範囲のベースライン濃度からLPSに促されて200から350pg/mlの濃度まで上昇した。
【0258】
ICI−685およびICI−735は両方ともLPS刺激TNFα分泌を阻害した。両方の化合物とも、TNFα阻害に最適なプレドース時間は0から2時間の範囲であり、IV投与した時にもたらされた阻害の方がIP投与した時よりも若干良好であった。次の用量応答試験では、1時間のプレドース期間を置いて動物にIV投与による投薬を受けさせた。この試験で用いた試験薬剤はLPS媒介IL−1β濃度上昇を再現可能な様式では阻害しなかった。このようなデータは、そのような種類の分子が示す阻害活性に対して示す応答はIL−1βの方がTNFαよりも低いことを示す我々の以前の試験と一致している。
【0259】
用量応答試験では、両方の化合物とも5mg/kgの濃度で阻害を示したが、用量を低くした時には示さなかった。前記プレドース経時変化(この場合の投与量は10mg/kgであった)と組み合わせると、両方の化合物に最も有効な投与量は10mg/kgであると思われる。
【0260】
この現在の試験では、前記2種類の経時変化の間に相違があると思われる。具体的には、1番目の経時変化の場合、ICI−685は2時間の前処置期間時にTNFα濃度を抑制しなかった(IV投与)。しかしながら、2番目のプレドース経時変化試験の場合、ICI−685はTNFαを70%抑制した。当業者が理解するであろうように、この種類
のLPS試験では如何なる化合物も有効用量の範囲が5から10倍変動し得る。免疫機能およびサイトカイン応答は(例えば)環境条件(以前および現在)、動物の年齢、飼育状態、試験時間およびLPS調製に伴って変化し得る。
【0261】
LPS媒介サイトカイン産生モデルにおける化合物ICI−715、ICI−824、ICI−953およびICI−954の薬理学的評価
化合物ICI−715、ICI−824、ICI−953およびICI−954を水中で調製した。経時変化試験では、薬剤を濃度が1mg/mlになるように調製した後、10ml/kg投与することで、1回分の投与量を10mg/kgにした。用量応答試験では、薬剤を濃度が0.05、0.2および0.5mg/mlになるように調製した後、10ml/kgの体積で投与することで、1回分の投与量がそれぞれ0.5、2および5mg/kgになるようにした。動物にIVまたはIP投与を受けさせた。
【0262】
6週齢のCD1:ICRマウスをHarlan(Indianapolis、IN)から入手した。動物をケージ1個当たり5匹ずつ入れ、12時間の明暗サイクルに維持し、餌および水を随意与えた。動物に試験を8-10週齢の時に受けさせた。
【0263】
リポ多糖体(熱で死滅させた大腸菌0127:B5;Sigma Aldrich)を蒸留水に濃度が0.025mg/mlになるように入れて調製した。LPSを10ml/kgの体積で投与(IP)することで最終的な投与量が0.25mg/kg(約7.5μg/マウス)になるようにした。この上に示したように、薬剤の投与をLPS投与前に実施した。LPSを投与してから90分後に逆眼窩出血で血液を採取した。血液から血清を調製した後、OPT−EIAマウスTNF−αおよびIL−1β ELISAキット(BD Biosciences)をその製造業者の指示に従って用いることでTNF−αおよびIL−1βの濃度を測定した。
【0264】
最適な投与経路および最適な前処置時間を決定する最初の試験を考案した。LPS処置を行う0、1および2時間前に化合物を投与することによる1つのプレドース経時変化試験を実施した(あらゆる化合物に関して)。両方の試験とも薬剤の投与をIPまたはIVで実施した。IP試験およびIV試験を別の日に実施した。
【0265】
1番目の試験で得たデータを用いて、各化合物が示す用量応答活性を測定するように考案した2番目の試験を実施した。最良の活性をもたらす経路および前処置時間を用いて化合物に試験を0.5、2.0および5mg/kgの投与量で受けさせた。
【0266】
この試験でTNFαおよびIL−1βの両方ともLPSに促されて以前の試験のそれと一致した濃度まで上昇した。そのような以前の試験と一致して、TNFαがLPSに促されて増加する応答の方がIL−1βのそれよりもずっと大きかった。血清中のTNFα濃度が検出不能濃度から1から7ng/mlの範囲の濃度まで上昇した。IL−1βの濃度は50から100pg/mlの範囲のベースライン濃度からLPSに促されて200から350pg/mlの濃度まで上昇した。
【0267】
4種類の化合物全部がLPS刺激TNFα分泌を阻害した。TNFα阻害に最適なプレドース時間は1時間であった。ICI−824、ICI−953およびICI−954の場合にはIP投与した時にもたらされた阻害の方がIV投与した時よりも若干良好であった。ICI−715の場合にはIV投与した時にもたらされた阻害の方がIP投与した時よりも若干良好であった。このプレドース時間および前記経路を次の用量応答試験の目的で選択した。
【0268】
用量応答試験では、用量範囲を0.5から5mg/kgにした。ICI−715(IV
)を投与すると試験を実施した全ての投与量でTNFαの少なくとも50%の阻害がもたらされた。ICI−824、ICI−953およびICI−954(IP)は投与量が5mg/kg以下の時には有効でなかった。そのようなプレドース経時変化(この場合の投与量は10mg/kgであった)と組み合わせると、前記最後の3種類の化合物に最も有効な投与量は10mg/kgであると思われる。また、ICI−715が示す効力の方が前記他の化合物が示す効力よりも高い可能性があるとも思われる。しかしながら、ICI−715の投与経路はIVであったが、他の化合物の投与経路はIPであった。
【0269】
本明細書に引用する特許、特許出願および公開の各々および全ての開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0270】
本発明を具体的な態様を言及することで開示してきたが、他の当業者は本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく本発明の他の態様および変形を考案することができることは明らかである。添付請求項にそのような態様および相当する変形の全部を包含させると解釈されるべきであることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
は、各場合とも独立して、水素、ハロゲン、(C−C)アルキル;(C−C)アルケニル;(C−C)アルコキシ;OH;NO;C≡N;C(=O)OR;C(=O)NR;NR;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;NRSO(C−C)アルキル;SONR;OC(=O)(C−C)アルキル;O(C−C)アルキレン−NR;(C−C)アルキレン−OR;および(C−C)パーフルオロアルキルから選択され;
は、各場合とも独立して、水素、ハロゲン、(C−C)アルキル;(C−C)アルケニル;(C−C)アルコキシ;OH;NO;C≡N;C(=O)OR;C(=O)NR;NR;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;NRSO(C−C)アルキル;SONR;OC(=O)(C−C)アルキル;O(C−C)アルキレン−NR;(C−C)アルキレン−OR;および(C−C)パーフルオロアルキルから選択され;
は、水素、C(=O)ORまたはC(=O)NRであり;
は、CHまたはNRであり;
は、CHまたはNであるが;但し
がCHの時にはAがNでありそしてAがCHの時にはAがNRであることを条件とし;
は、H、(C−C)アルキル;(CHOR;(CHNR;(CHNHC(O)R;(CHO(CHOR;(CHO(CHNR;(CHNR(CHNR;(CHO(CHNHC(O)R;(CHNR(CHNHC(O)R;(CHC(=O)OR;(CHC(=O)NR;(CHO(CHC(=O)OR;(CHO(CHC(=O)NR;(CHNR(CHC(=O)OR;または(CHNR(CHC(=O)NRであり;
は、(C−C)アルキル;NRC(=O)(C−C)アルキル;NRC(=O)O(C−C)アルキル;NRC(=O)NR;CH(R)NR;CH(R)NRC(=O)(C−C)アルキル;またはCH(R)NRC(=O)O(C−C)アルキルであり;
は、H、(C−C)アルキル;(C−C)アルキレン−OR;(CHC(=O)OR;または(CHC(=O)NRであり;
は、各場合とも独立して、水素および(C−C)アルキルから成る群より選択され;
mは、各場合とも独立して、1、2または3であり;
nは、0、1または2であり;
pは、各場合とも独立して、2または3であり;そして
qは、各場合とも独立して、1または2である]
で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物。
【請求項2】
が水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、メチル、C≡N、C(=O)NR、C(=O)NH、SONR、SONMe、(C−C)パーフルオロアルキルまたはCFである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が各場合とも水素である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
が水素である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
がNRである請求項1記載の化合物。
【請求項6】
がNである請求項1記載の化合物。
【請求項7】
がH、(CHNR、CHCHNH2、CHCHCHNH、(CHNHC(O)R、CHCHNC(O)R、CHCHNHC(O)Me、CHCHNHC(O)CHNHまたはCHCHNHC(O)CHNMeである請求項1記載の化合物。
【請求項8】
が(C−C)アルキル、CH(R)NRまたはCH(R)NHまたはNHMeである請求項1記載の化合物。
【請求項9】
がHである請求項1記載の化合物。
【請求項10】
mが2であり、nが0であり、pが2でありそしてqが1である請求項1記載の化合物。
【請求項11】
ICI−681、ICI−682、ICI−683、ICI−684、ICI−685、ICI−686、ICI−687、ICI−696、ICI−697、ICI−712、ICI−713およびICI−714、ICI−715、ICI−726、ICI−727、ICI−728、ICI−734、ICI−735、ICI−737、ICI−738、ICI−746、ICI−747、ICI−748、ICI−749、ICI−758、ICI−759、ICI−760、ICI−761、ICI−763、ICI−783、ICI−784、ICI−801、ICI−802、ICI−822、ICI−823、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−850、ICI−890、ICI−891、ICI−892、ICI−893、ICI−894およびICI−895から成る群より選択される化合物。
【請求項12】
アポトーシスを免疫細胞に誘発する方法であって、前記免疫細胞を請求項1記載の化合物と接触させることを含んで成る方法。
【請求項13】
アポトーシスをリンパ球に誘発する方法であって、前記リンパ球を請求項1記載の化合物と接触させることを含んで成る方法。
【請求項14】
前記リンパ球がT細胞およびB細胞から成る群より選択される請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記B細胞が形質細胞である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記形質細胞が多発性骨髄腫細胞である請求項15記載の方法。
【請求項17】
リンパ球の増殖を阻害する方法であって、前記リンパ球を請求項1記載の化合物と接触させることを含んで成る方法。
【請求項18】
前記リンパ球がT細胞およびB細胞から成る群より選択される請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記B細胞が形質細胞である請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記形質細胞が多発性骨髄腫細胞である請求項19記載の方法。
【請求項21】
リンパ球の増殖が異常であることで特徴づけられる病気を治療する方法であって、哺乳動物に請求項1記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【請求項22】
前記哺乳動物がヒトである請求項21記載の方法。
【請求項23】
喘息および関節リウマチから成る群より選択される病気を治療する方法であって、哺乳動物に請求項1記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【請求項24】
喘息および関節リウマチから成る群より選択される病気を治療する方法であって、哺乳動物にICI−681、ICI−682、ICI−683、ICI−684、ICI−685、ICI−686、ICI−687、ICI−696、ICI−697、ICI−712、ICI−713およびICI−714、ICI−715、ICI−726、ICI−727、ICI−728、ICI−734、ICI−735、ICI−737、ICI−738、ICI−746、ICI−747、ICI−748、ICI−749、ICI−758、ICI−759、ICI−760、ICI−761、ICI−763、ICI−783、ICI−784、ICI−801、ICI−802、ICI−822、ICI−823、ICI−824、ICI−846、ICI−847、ICI−848、ICI−849、ICI−850、ICI−890、ICI−891、ICI−892、ICI−893、ICI−894およびICI−895から成る群より選択した化合物を投与することを含んで成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公表番号】特表2010−502621(P2010−502621A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526732(P2009−526732)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/019150
【国際公開番号】WO2008/027521
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(507411464)イミユーン・コントロール・インコーポレーテツド (3)
【Fターム(参考)】