説明

リン回収

リンイオンを、スカベンジャー内にリンイオンを吸収し、スカベンジャーの再生(230)中に、溶出液にリンイオンを放出することで、溶液から抽出する(210)。再生(230)は、アンモニアで行う。リン酸塩陰イオンは、超過量のアンモニアが導入される(260)と、リン酸トリアンモニウムの形態で沈殿する(262)。リン酸トリアンモニウムの沈殿後に溶液中に残留したアンモニアを、スカベンジャーを再生するために再利用(266)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、イオンの回収に関し、具体的には、イオン交換および沈殿技術を使用したリン回収に関する。
【背景技術】
【0002】
リンは重要な元素であり、生命に欠かせないものである。しかしながら、地表水へのリン酸塩(phosphate)の放出、およびその結果として生じる富栄養化への寄与もまた、水質に対する懸念の増大に繋がった。したがって、生活廃水および工業廃水からリンを除去するための技術を実行することにより、地表水に進入するリンの量を減少させるための政策が世界中で実施された。
【0003】
リン資源は有限であり、現在経済的とされる方法で採掘された場合、約100年で枯渇する。この知識により、例えば、農業の廃棄物内に存在するリンの再生利用および有益な再利用を促進する技術への関心が高まった。
汚泥に含まれる重金属および有機汚染物質により、ますます多くの国で下水汚泥の施肥が徐々に禁止されている。焼却は、処分された下水汚泥の量を減少するための解決策として考えられている。
【0004】
焼却された下水汚泥灰は、約8〜14重量%のPを含有し、これは、リン鉱石(例えば、13重量%のP)内のPの濃度に類似する。灰は、一般的に、下水中に存在するPの90%以上を含有する。焼却されたMBM(肉骨粉飼料)の灰は、最大18%のPを含有する。焼却された家禽敷料灰は、約10%のPを含有し、ガス化されたブタ糞尿の灰内のリンの含有量は、13%のPであると報告された。灰に存在するリンは、カルシウム、鉄、またはアルミニウムに結合することにより、水中で不溶性である。したがって、灰のリン肥料としての価値は低い。その上、灰の中では、重金属は濃縮されており、耕作地への灰の再循環を制限する。今日、原則的に灰は埋蔵処理される。
【0005】
リンは、酸または塩基での溶解により、灰から水相に抽出することができる。
【0006】
つまり、さまざまなリン含有廃水は、さまざまな工業プロセス、および、灰ならびに鉱物の溶解により形成される。廃水は、通常、希釈され、金属で汚染されている。
【0007】
そのような廃水からリンを回収する必要性がある。リン回収の目的とは、それを農業に使用するべきことである。
【0008】
生活廃水および工業廃水、ならびに灰浸出液からリンを抽出するための、さまざまな技術が開発されている。そのような技術は、主に、異なる化合物としてリンを沈殿することに基づく。しかしながら、そのような沈殿化合物のほとんどは、非常に低い溶解度を有し、その肥料価値は低い。
【0009】
しかしながら、例えば、米国特許第2,850,358号、米国特許第1,879,204号、米国特許第1,835,441号、英国特許第410,731号、またはソ連特許第1450266号の要約書の翻訳において、リン酸トリアンモニウムは、濃縮したアンモニア水中でほぼ不溶性であることは既知である。したがって、過剰のアンモニアを使用し、リン酸トリアンモニウムとしてリンを沈殿させ、高質の肥料に容易に処理することができる。
【0010】
しかしながら、過剰のアンモニアで効率的にリンを沈殿するために、典型的に、初期リン濃度は高くなければならない。その上、過剰のアンモニアが大量に必要である。したがって、リン酸トリアンモニウムの沈殿後の残留溶液は、例えば、アンモニアストリッピングにより処理されなければならない大量のアンモニアを含有する。
【0011】
したがって、費用効率の高い方法で、リン酸トリアンモニウムの沈殿によって、希リン酸含有溶液からリンを回収することは不可能である。
【0012】
別の手法において、金属陽イオンを除く陰イオン交換を使用してリンを金属から分離することができる。PCT特許出願国際公開第WO00/50343号は、イオン交換を使用して灰浸出液からリンを回収するプロセスを記載する。
【0013】
開示された国際公開第WO00/50343号に提示される方法は、多くの重大な欠点を有する。全体の効率は制限され、プロセス制御は複雑であり、使用された再生溶液(塩酸)は、最終リン産物に付加価値を与えない。
【0014】
国際公開第WO00/50343号で提起されたイオン交換技術を使用する主な欠点とは、再生中に回収した溶液が、依然として、溶解度積を遥かに下回る比較的低い濃度を有することである。濃縮した再生溶液は、少量のイオン交換床のみを占有し、したがって、イオン交換床内に存在する溶液で希釈される。したがって、イオン交換床から再生溶液を取り出すには、別の溶液が必要となり、溶出液を再度希釈することとなる。したがって、再生溶液の最初の高濃度にも関わらず、達成される最大溶出液濃度は、しばしば、商業価値としては依然として低すぎる。
【0015】
米国特許第3,579,322号は、リン鉱石の工業処理中に形成される廃水からリン酸塩を回収するための連続イオン交換(CIX)の使用を記載する。CIXは、固定床イオン交換で可能な濃度よりも高い溶出液濃度を達成することができる。しかしながら、CIXは複雑なプロセスであり、樹脂の動作が樹脂の寿命を低下する、樹脂の磨耗を引き起こす。その上、本技術で可能な最大リン濃度は制限される。
【発明の概要】
【0016】
本発明の一般的目的は、リン回収のための資源の効率的な方法および機器を提供することである。本発明のさらなる目的は、金属の汚染なしにリンを回収するための方法を提供することである。本発明の他の目的は、肥料目的で容易に使用することができる形態で、回収したリンイオンを提供することである。
上記の目的は、開示する特許請求項に従う方法および機器により達成される。一般的にいえば、リンイオンは、スカベンジャーの再生中に、リン酸塩イオンに対して親和性を有するスカベンジャーにリンイオンを吸収し、溶出液にリンイオンを放出することにより、溶液から抽出される。再生は、アンモニアにより行われる。リン酸塩陰イオンは、過剰量のアンモニアが導入されると、リン酸トリアンモニウムの形態で沈殿する。リン酸トリアンモニウムの沈殿後に溶液中に残留するアンモニアは、スカベンジャーを再生するために再利用される。
【0017】
本発明は、環境に優しく、費用効率の高い方法で、NP含有肥料等の質の高い生成物の形で、プロセスの流れからのリンの抽出を提供する。本発明に従い、リンは、質の高い、濃縮した、水溶性の無機生成物、つまり、植物/動物に高度に利用可能な栄養成分、少ない重金属汚染およびバランスの取れた生成物として回収することができる。また、本発明は、鉱物および工業廃水からの溶解リンの抽出にも適用することができる。本発明の別の利点は、リン酸トリアンモニウムの沈殿後の溶液中に残留するアンモニアを、アンモニアストリッピング等の処理をさらに必要とせずに、再利用できることである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、そのさらなる目的および利点と共に、以下の説明を、添付の図面と合わせて参照することによって最もよく理解されるであろう。図面は以下の通りである。
【図1】イオン交換装置の実施形態の主要部分の略図である。
【図2】イオン交換プロセスの一実施形態の主要工程のフロー図である。
【図3】イオン交換装置の別の一実施形態の主要部分の略図である。
【図4】イオン交換プロセスの別の一実施形態の主要工程のフロー図である。
【図5】一般的なイオン交換装置の実施形態の略ブロック図である。
【図6】本発明に従う方法の一実施形態の主要工程のフロー図である。
【図7】本発明の一実施形態に使用する沈殿装置の実施形態の主要部分の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の利点を適切に理解するために、本開示をいくつかのイオン交換原理の簡単な紹介から開始する。
【0020】
本発明の開示において頻繁に使用されるいくつかの用語は、以下の通り解釈されるものとする。
【0021】
逆洗−異物を除去し、床を再分類し、床の圧縮を減少する、イオン交換床を通る水または溶液の上方への流れ。
【0022】
スカベンジャー−イオン会合または溶媒和機構により、溶質種、例えば、イオンを吸収する物質に対する親和性を有する物質。この用語は、種々のイオン交換樹脂、ならびに溶媒に含まれる抽出剤を包含する。
【0023】
イオン交換樹脂−イオン交換プロセス、従来イオン交換カラムで使用されるイオン交換物質。
【0024】
溶媒−液相、典型的には有機相であり、水溶液から抽出可能な溶質種を特異的に溶解する。 抽出剤−抽出を可能にする溶媒の活性成分、典型的には有機成分。
【0025】
希釈剤−抽出剤および改質剤を溶解して溶媒を形成する液体、典型的には有機液体。
【0026】
改質剤−抽出剤、抽出剤の塩、または抽出またはストリッピングから得られるイオン種の溶解度を増加させるために、溶媒に添加される物質。また、エマルジョン形成を抑制するためにも添加される。
【0027】
溶媒抽出(液液抽出)−少なくとも1つの相が概して有機液体である不混和相間の物質移動による、混合物からの1つ以上の溶質の分離。
【0028】
溶出液−イオンスカベンジャーからのイオンの除去の結果として、再生中に溶出プロセスから得られた溶液。
【0029】
消耗−スカベンジャーが処理される液体から除去されたイオンで完全に負荷される場合に、スカベンジャーは、消耗しているとされる。
【0030】
部分的にイオン化されたスカベンジャー−弱酸性または弱塩基官能性を有するスカベンジャー。
【0031】
再生−スカベンジャーを業務サイクルへの準備が整った状態にするように、処理溶液から除去されたイオンのスカベンジャーからの取り出し。
【0032】
溶出−溶出液を形成する再生溶液によるイオンスカベンジャーからのイオンの除去プロセス。負荷された溶媒の場合に「ストリッピング」を含む。
【0033】
ストリッピング−負荷溶媒からの溶出。
【0034】
再生溶液−処理溶液から除去されたイオンをスカベンジャーから取り出すために使用する溶液。
【0035】
スクラビング−ストリッピング前の、負荷された溶媒からの不純物の選択除去。
【0036】
洗浄−再生溶液を洗い流すためのイオン交換樹脂床を通る溶液(水)の通過。
【0037】
処理サイクル(運転)−イオン交換により供給液体からイオンを除去する工程。
【0038】
供給溶液−イオン交換床で処理される液体。
【0039】
ラフィネート−抽出により溶質が除去される水相。
【0040】
アンモニアストリッピング−水溶液からのアンモニアの除去。
【0041】
本発明において定義されるイオン交換は、固体イオン交換、ならびに、溶媒または液液抽出として分類される液体イオン交換の両方を対象とする。固体および液体イオン交換の原理を以下に詳細に紹介する。
【0042】
固体イオン交換は、溶液中のイオンが不動の固体粒子に結合した、同様に荷電されたイオンで交換される、可逆反応である。固体イオン交換物質は、自然発生する無機鉱物(例えばゼオライト)、または合成的に生産される有機樹脂のいずれかである。合成有機樹脂は、大容量および高い化学安定性等の優れた特性により、今日圧倒的に使用されている。合成有機イオン交換樹脂は、周囲媒質からイオンを交換することができる、陽性または陰性官能基を有する高分子量のポリ電解質から成る。炭化水素高分子ネットワーク、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン、アクリルジビニルベンゼン等が、一般的に使用される。
【0043】
イオン交換樹脂は、陽イオンを交換する陽イオン交換体、および陰性に荷電されたイオンを交換する陰イオン交換体として分類される。陰イオンおよび陽イオン樹脂の両方は、基本的に同一の有機重合体から生成される。これらの重合体に結合した官能基が、樹脂の化学的挙動を決定する。樹脂は、強酸性もしくは弱酸性陽イオン交換体、または強塩基性もしくは弱塩基性陰イオン交換体として広範に分類することができる。
【0044】
強酸性陽イオン交換体および強塩基性陰イオン交換体は、高度にイオン化されている。交換可能なイオンは、広範囲のpH領域で利用可能である、つまり、強酸性および強塩基性樹脂の交換容量は、溶液のpHとほぼ無関係である。強酸性官能基の例は、スルホン酸であり、強塩基性官能基の例は第4級アミンである。
【0045】
反対に、弱酸性樹脂および弱塩基性樹脂の解離は、溶液のpHに強い影響を受ける。典型的な弱酸性樹脂は、pH6を下回ると、容量が限定され、弱塩基性樹脂は、pH8を超過すると、容量が限定される。弱酸性官能基の例は、カルボン酸であり、弱塩基性官能基の例は、第1級、第2級、および第3級アミンである。
一般的な固体イオン交換装置10を図1に図示する。カラム12は、イオン交換樹脂14を含む。イオン交換の工業用途のほとんどは、その単純性かつ低価格性により、イオン交換樹脂14の容器として固定床カラムシステムを使用する。しかしながら、イオン交換樹脂14を含有する別の容器も可能である。カラムの設計には、イオン交換樹脂14を含まなければならず、典型的に、樹脂床を支持する装置11を有する。樹脂床を通るメインフローおよび再生フローを均一に分配し、逆洗中に樹脂を流動化させる空間を提供するための装置15がある。イオン交換の設置の大部分は、円筒状のスチール容器を基本とするが、鉄筋コンクリート、ガラス、およびプラスチックも使用される。
【0046】
図示した実施形態において、イオン交換装置10は、供給溶液20のための供給入口16を備える。供給入口16は、バルブ装置18により制御される。イオン交換操作前に、供給溶液20は、樹脂の寿命を増加させるために、通常、濾過装置19で事前濾過処理され、浮遊固体および異なる溶解成分を除去する。供給出口22は、処理された溶液26を保存場所に移動する、および/または管理するために、カラム12内で処理される溶液26を収集するために設置される。流れは、バルブ装置24で制御する。
【0047】
再生中、多くの場合、カラム12は、洗浄液40をバルブ42で制御される洗浄入口44に供給し、バルブ48によって制御される出口46を通って洗浄液49を抽出することで、逆洗または排水される。洗浄後、実際の再生が行われる。再生溶液30が、バルブ装置32によって制御される再生入口28を通しカラム12に提供される。供給溶液から除去されたイオンは、溶出液36を形成する再生溶液中に排出される。溶出液36は、さらなる処理および/または保存のために、バルブ装置38によって制御される再生出口34を介して収集される。
【0048】
固体イオン交換樹脂を使用する典型的なイオン交換手順を図2のフロー図で示す。該プロセスは、工程200から開始する。工程210は、供給溶液中のイオンをイオン交換樹脂にあるイオンに交換する、処理工程である。工程210は、記載した実施例において2つの準工程からなる。工程212において、供給溶液が提供される。この工程は、供給溶液の任意の事前処理、例えば、イオンの溶解、濾過等を含み得る。工程214において、供給溶液に対するイオン交換樹脂の実際の暴露が行われる。得られた流出液は、工程220で管理される。そのような管理工程の例としては、流出駅の保存、さらなる処理、分配等を挙げることができる。
【0049】
供給溶液が、樹脂を通して処理され、樹脂が消耗し、いかなるさらなるイオン交換をも遂行できなくなる程度となった後、樹脂を再生しなければならない。これは、再生工程230で行われる。本実施例において、再生工程230では、順に、多くの部分工程を用いる。工程232において、カラムを溶液で逆洗し、処理サイクル中に、床によって収集された浮遊固体を除去し、このサイクル中に形成された可能性がある溝部(channel)を排除する。工程234において、樹脂床を、通常、陽イオン交換の場合は酸であり、陰イオン交換の場合は塩基の再生溶液に接触させる。工程236において、樹脂床を洗浄し、再生溶液を除去する。再生工程230から得られた溶出液は、工程240において管理される。そのような管理には、保存、さらなる処理、分配等を含むことができる。
【0050】
次いで、カラムを再度処理操作に戻す、つまり、供給溶液をカラムを介してもう一度処理する。これを矢印250で図示する。この手順は、工程299で終了する。
【0051】
固体イオン交換操作を行うのに適した、さまざまな工学技術および装置を使用して、本発明の原理に従って、上述の回収プロセスを実行できることは明らかである。固体イオン交換の可能な技術的スキームの一部の例としては、充填(固定)床、流動床、拡張床、並流再生、向流再生、移動床のような連続処理、マルチカラム技術による擬似移動床、連続カラム(カスケード)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
液体イオン交換には、典型的には水相および液体イオン交換物質を含有する有機相であるような、2つの不混和相間の溶質の選択移動を含む。初めに、2つの不混和相を、溶質の移動を容易にするために完全に混合し、次いで、分離する。固体イオン交換と同様に、液体イオン交換物質、すなわち液体イオンスカベンジャーの官能基は、強酸性、弱酸性あるいは強塩基性、弱塩基性物質に分類することができる。弱塩基性液体抽出剤は、通常、第1級、第2級、または第3級アミンである。これらの抽出剤は、水溶性が低く、低価格の溶媒との混和性に優れている。液体イオン交換システムにおける交換速度は、非常に高い。該プロセスは、理想的に、さまざまな工学技術および装置に適応可能な連続向流操作に適している。
【0053】
リン酸塩スカベンジャー物質は、多くの種類であり得、有機および無機物質の両方であり得る。現在、イオン会合または溶媒和機構によって溶液からリン酸塩を吸収するために、有機物質が好適に使用されている。例としては、アルコールおよびトリ−ブチル−リン酸(tri−butyl−phosphate)が挙げられ、これらは、使用可能な非弱塩基性スカベンジャーである。弱塩基性スカベンジャーの例としては、アミン、アミン官能基を持つスチレン−ジビニルベンゼン、およびアミン官能基を持つアクリルジビニルベンゼンが挙げられる。
【0054】
イオン交換のための抽出剤の使用に関して、通常、弱塩基性有機アミンが選択され、通常、7個以上の脂肪族または芳香族炭素原子を含む大きな有機分子に結合した窒素原子を有する。この有機アミンは、有機溶媒(希釈剤)中に高溶解性であり、水にはほとんど不溶性ある。酸含有溶液と接触すると、アミン塩基は、酸と反応し、酸の陰イオンと結合するプロトン化した正電荷を形成する。
【0055】
加えて、有機アミンは、中性酸種の溶媒和により、官能基当たりの酸の化学量論比よりもさらに多い酸を抽出する。高濃度の不活性希釈剤中のアミンは、重合し、第3の望ましくない個別の相を形成し得る。しかしながら、改質剤、通常、他の強ルイス塩基(例えば、オクタノール、イソ−ドデカノール、トリブチルリン酸等)を希釈剤に添加して、その形成を回避することができる。
【0056】
したがって、酸抽出のためにアミン抽出剤を使用することは、酸の溶媒和のみに基づく従来の溶媒抽出よりもより効果的である。液体イオン交換に伴う分配係数は、従来の溶媒抽出にみられるものよりも高く、それは、通常、同程度の抽出を達成するのに必要な段階の数がより少ないことを意味する。さらに、不活性希釈剤(適切な改質剤を含む)中のアミン抽出剤の酸負荷は、通常、トリブチルリン酸等、純粋な別の酸抽出剤の酸負荷よりも高い。したがって、アミン抽出剤は、高濃度ならびに高希釈のリン酸の流れからリン酸塩を抽出するのに適している。加えて、アミン抽出剤は、陰イオンに対して選択的であり、陽性に荷電した金属に結合せず、それは、金属汚染物質が水溶液中に残留することで抽出される酸から分離することを意味する。
【0057】
リン酸塩イオンを回収するために、液体/液体抽出プロセスを使用することができ、そこでは、リン酸塩イオンを含有する供給水溶液が有機相に暴露される。これによって、リン酸塩イオンは、有機相に抽出される。
【0058】
以下にも記載する通り、弱塩基性液体イオン交換は、イオン会合によって希釈水溶液からリン酸塩陰イオンを除去することを可能にするという利点があることが明らかである。その後、リン酸塩陰イオンは、アンモニア含有溶液でストリップされ、それによって、リン酸塩は、電荷中和を含む反応によって、有機相から水層に移動する。
【0059】
上述の原理を使用して、高濃度のリン酸アンモニウムの水溶液を得ることができる。
【0060】
典型的な液体イオン交換装置10を図3に示す。図1と比較し、機能性において類似する部分は、必ずしも再度記載されていない。抽出ユニット17は、供給溶液20および液体イオンスカベンジャー29が混合される混合容積27を備える。相互不混和相は、抽出ユニット17の異なる部分に進入する。本実施形態において、再生されたスカベンジャー25は、下部に進入し、供給溶液20は、上部に進入する。相を完全に混合し、イオン(この具体的な用途においては、リン酸塩イオン)はスカベンジャー29と結合する。供給出口22は、抽出ユニット17内で処理される溶液26を収集し、処理された溶液26を保存場所に移動させる、および/または管理するために設置される。完全または部分的に消耗したスカベンジャー23は、さらなる再生のために、抽出ユニット17の上部から抽出される。
【0061】
液体スカベンジャーの場合において、ストリッピングとしても意味する再生は、ストリッピングユニット21内で行われる。ここでもまた、この場合においては、少なくとも部分的に消耗したスカベンジャー23および再生溶液30である、2つの不混和相を混合容積27内で混合する。元々供給溶液から除去されたイオンを、ここで再生溶液内に移され、溶出液36を形成する。溶出液36を、さらなる処理および/または保存のために、バルブ装置38によって制御される再生出口34を介して収集する。再生したスカベンジャー25を抽出手順におけるさらなる使用のために、ストリッピングユニット17の上部から抽出する。
【0062】
液体スカベンジャーを使用する典型的なイオン交換を図4のフロー図に示す。図2に図示するプロセスと共通するプロセス工程は再度記載しない。処理工程210は、この記載される実施例において、3つの準工程からなる。工程212は、図2と同様である。工程215において、供給溶液に対するスカベンジャーの実際の暴露が行われ、工程217において、スカベンジャーおよび流出駅は分離される。
【0063】
再生工程230で、部分工程233において、部分的または完全に消耗したスカベンジャーをストリッピングユニットに供給し、その後工程234を行う。再生後、溶出液および再生したスカベンジャーは、工程237において分離する。
【0064】
リン酸塩イオンを回収するために、固体または液体のイオン交換プロセスを使用することができ、そこでは、リン酸塩イオンを含有する供給溶液がイオン交換スカベンジャーに暴露される。これによって、リン酸塩イオンは、イオン交換スカベンジャー内に吸収される。スカベンジャーが消耗する、つまり、リン酸塩イオンで完全に負荷された際、イオン交換スカベンジャーは再生溶液で処理される。これによって、リン酸塩イオンは、溶出液内に溶出し、溶出液は管理される。
【0065】
弱塩基イオン交換プロセスは、特別の利点を呈することが明らかである。上述の利点の背後にある原理は、弱塩基性陰イオン交換スカベンジャーを使用して、リン酸塩および付随する陰イオンを供給溶液から除去することである。イオン交換スカベンジャーは、部分的にイオン化されたイオン交換スカベンジャーであり、それは、スカベンジャー内のイオン交換プロセスが電荷中和反応に基づくものであることを意味する。
[R] + H3PO4 → [R-H+]H2PO4- (1)
イオン交換反応([R]A+B←→[R]B+A)の場合に反して、これらの反応は、平衡によって制御されず、収着は本質的に継続して完了する。
【0066】
その後、スカベンジャーは、アンモニア含有再生溶液で再生され、それによって、リン酸塩含有溶出液が形成される。再生溶液は、以下の通り、電荷中和反応を促進するための塩基性pHを有する。
[R-H+]H2PO4- + NH4OH → [R] + NH4H2PO4 + H2O (2)
また、この反応は平衡により制御されず、本質的に継続して完了する。
【0067】
これらの方法は、イオン濃度手順に関連した使用において高い可能性を有する、溶出液を提供する。また、溶出液を肥料として使用することができる。溶出液は、低重金属含有量の固有の魅力的な植物栄養成分を既に有する。加えて、アンモニアは、安い化学物質であり、最終的に直接肥料生成物の一部となり、したがって、肥料生成物の価値を増大する。
【0068】
本発明では、溶出液内の交換されたイオンがスカベンジャーへ戻り吸収しない、弱塩基性スカベンジャーの使用が好適である。従来技術の強塩基樹脂は、再生手順が、添加剤を再生溶液に添加して容易に調節することができないイオン交換平衡に基づくため、一般的に、再生能力を減少する。
【0069】
弱塩基性スカベンジャーの再生は、イオン交換反応ではなく、電荷中和反応により実施される。スカベンジャーの能力は、pHに左右される。pHは、スカベンジャーがその電荷を遊離し、したがって、吸収されたイオンを放出するように、容易に化学的に調節することができる。その方法では、スカベンジャーへのイオンの静電気の戻り吸収は、非常に制限される。
【0070】
さらに、これにより、さらなる再生サイクルにおいて、初期に回収した溶出液を効率的な方法で再利用する道が広がる。しかしながら、初期に回収した溶出液のpHを調節することが必要である。
【0071】
これより以下に、焼却された下水汚泥灰からリンを回収するためのイオン交換プロセスの実施形態を詳細に記載する。しかしながら、本発明は、焼却された下水汚泥からのリン酸塩の回収に限定するのではなく、リン酸塩イオンを提供する多くの異なるシステムに適用可能である。わずかな修正のある同様のプロセスを、例えば、鉱物、Pが豊富な鉱山尾鉱、焼却された動物由来の生成物等の他の灰、下水処理場内のPが豊富な水路、工業廃水等からリンを抽出するために使用することができる。
【0072】
溶液は、焼却された下水汚泥灰を溶解装置内で酸に溶解して調製される。低価格であり、かつ濃縮形態で提供されることから、硫酸が好適な酸である。灰溶解中のスルホン酸の最適濃度は、約52gH2SO4リットル−1であることが分かった。さらに高い濃度は、主に、さらなる金属酸化物の溶解、および灰凝集物周りへの石こうの形成により、リン溶解の効率の低下をもたらし、より低い濃度は、リン溶解の効率の減少をもたらす。酸に灰を溶解する好適な方法は、最初に灰を水と混合し、固体/液体率約1:6を得、次いで、濃硫酸を制御した方法で、継続的に添加して、低pH(pH<2)を維持することである。リン酸塩溶解のための本実施形態の反応時間は、室温で、30〜120分の間であった。溶解中の所要のpHレベルは、灰分組成の関数であり、それぞれの灰に対して特異的である。約0.75当量リットル−1のリン酸塩陰イオン濃度、および約0.45当量リットル−1の硫酸陰イオン濃度が得られた。陽イオンの中では、アルミニウムおよびHが主要であり、Na2+、Mg2+、K、Ca2+およびFe3+はわずかに寄与した。灰の不溶部分、主に、ケイ酸塩、非溶解金属酸化物および石こうを、沈殿、濾過、または遠心分離で除去した。
【0073】
代替的な実施形態において、浸出液は、別のリン含有物質を溶解して調製される。そのような物質の非排他的な例としては、上述の焼却された下水汚泥灰以外に、例えば焼却された動物由来成分の灰、鉱山尾鉱、工業スラッジ、および鉱石が挙げられる。
【0074】
その後、リン含有浸出液は、固定床のイオン交換機構内で処理される、陰イオン除去部分は本発明に従い設定される。
【0075】
上述のプロセスにより得られた溶液を、イオン交換装置を通過させた。溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂(例えば、Dow社のDowex Marathon C、または他の同等物)を含むカラムを通過させ、プロトンで金属陽イオン交換する。強酸陽イオン交換ユニットからの流出液は、リン酸および硫酸の混合物から成る。約1の硫黄/リンの比率が、使用した下水汚泥焼却炉灰(Mora,Sweden)のに対して得られた。一般に、硫黄/リンの比率は、好適には5より低い、つまり、少なくとも17%のリン酸塩イオンでなければならない。より高い比率が得られた場合、リン酸塩沈殿を防止するために、低pHレベルでカルシウムで硫酸塩を沈殿させて、硫酸塩含有量を減少させなければならない。
【0076】
強陽イオン交換樹脂を塩酸または硫酸で再生した。再生レベルは、1リットル当たり約40gHSOまたはHClである。得られた溶出液は、主に、硫酸または塩素陰イオンと結合するアルミニウムまたは鉄の陽イオンから成る。重金属は、沈殿により溶出液から金属硫化物として分離する。溶出液が主に硫酸アルミニウムまたは塩化アルミニウムから成る場合には、硫化ナトリウムまたは硫化水素を溶出液保存場所に添加する。重金属は硫化物として沈殿するが、アルミニウムは、溶液中に残留する。溶出液が主に硫酸鉄または塩化鉄から成る場合、重金属は、溶出中に鉄の主要部分から分離し、溶出液は、2つの留分に分けられる。次いで、重金属を1つの溶出液留分から硫化物として沈殿させる。濾過ユニット内の濾過/遠心分離によって重金属沈殿物を除去した後、処理された溶出液は、リン沈殿試薬として下水処理場で使用することができ、重金属は処分される。
【0077】
強酸陽イオン交換装置の全体は、リン酸塩含有供給溶液を弱塩基陰イオン交換プロセスに提供するための事前処理として考えることができる。
【0078】
したがって、リン酸および硫酸の混合物から成る強酸陽イオン交換ユニットからの流出液は、本発明に従い、供給溶液として、弱塩基性陰イオン交換装置に供給される。カラム内の弱塩基性陰イオン交換樹脂は、主に一価の陰イオンとして、リン酸塩および硫酸塩を吸収する、遊離塩基性形態(例えば、Purolite社のPurolite A835または別の同等物)で、本発明の実施形態に含まれる。
【0079】
弱塩基性陰イオン交換樹脂からの流出液は、脱イオン化された水であり、プロセスにおいてそれを再利用して管理することができる。
【0080】
弱塩基性陰イオン交換樹脂は、アンモニア、好適には、アンモニア水で再生し、リン酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムの混合物から成る溶出液を形成する。スウェーデンのMora社の灰に対して得られた溶出液等の組成は、以下の通りである。乾燥重量%としてN:P:S 15:18:16。
【0081】
溶出液は、管理装置で管理される。本開示に後述する通り、リンは、固体リン酸トリアンモニウムとして沈殿し、溶液から抽出される。残留溶出液の少なくとも一部は、再生溶液として、その後の再生のために再生利用接続部を介して提供される。
【0082】
リン酸塩の分離後に残留する溶解した硫酸塩は、溶液内にアンモニアを加圧して加ることにより回収することができる。硫酸アンモニアの溶解度は、水中での700gkg-1から、濃縮アンモニア水(29重量%)中では115gkg-1に減少することは周知である。50psiでのアンモニアの溶解度は、39gkg-1とさらに減少する。硫酸アンモニア結晶の分離後、残留アンモニアは、プロセスにおいて再利用することができる。
【0083】
該プロセスは、脱イオン化プロセスであり、伝導率を測定して制御することができるため、本発明に従う方法におけるプロセス制御は、簡単である。物質収支計算は、本発明に従う方法において、1トンの灰当たりの必要量の化学物質は、例えば、国際公開第WO00/50343号による、必要とされる量よりも少ないことを示す。1トンの灰当たりの化学物質の費用もより少ない。さらに、本発明に従う方法において、樹脂を再生するために使用するアンモニアは、肥料の原料であり、肥料生成物の価値を増大するため、コスト回収がある。本発明に従う方法は、流出液として脱イオンされた水を形成する、脱イオン化プロセスである。水も、プロセス内において再利用される。
【0084】
以下に、アパタイト鉱物からリンを回収するためのプロセスを詳細に記載する。
【0085】
採鉱したリン鉱石の選鉱により得られたアパタイト濃縮物は、周知の方法に従う硫酸で蒸解される。好適なプロセススキームには、半水再結晶化プロセスおよび半二水プロセスが挙げられる。
【0086】
半水再結晶化プロセスまたは半二水の一段濾過プロセスにおいて、第1の反応器は、石こうが半水化物として沈殿する条件下で作動する。後続の反応器は、二水石こうより半水石こうの再水和を好む条件下で作動する。再水和または再結晶後、石こうおよび酸は分離し、石こうを完全に洗浄する。濾過したリン酸および石こう洗浄水を混合し、希リン酸供給を上述のイオン交換方法に提供することができる。
【0087】
あるいは、半二水プロセスを適用することができ、水分蒸発による濃縮を必要としない、濃縮リン酸を直接生成することができる。このプロセスにおいて、石こうが水和物として沈殿する条件下で反応が行われる。半水和石こうおよび酸生成物は、再結晶前に濾過により二水和石こうに分離する。その後、半水和石こうを二水和形態に再結晶化し、濾過し、完全に洗浄する。二水和石こうの濾過および洗浄からの溶液を、上述のイオン交換方法の供給物として提供する。
【0088】
半水和プロセスは、蒸解中に、アパタイト由来のフッ化物のほとんどを放出し、フッ化物は既存の方法を使用して捕獲する。
【0089】
上述の酸蒸解および石こう処理は、例えば液体/液体抽出プロセスに、希リン酸供給を提供する、事前処理として考えることができる。
【0090】
有機抽出剤を使用して液体/液体抽出が適用された場合、第3級アミン、例えば、Henkel社が製造するAlamine336等の弱塩基性イオン交換体を使用することができる。可能な希釈剤は、ケロシンであり、可能な改質剤は、イソデカノールである。抽出剤、希釈剤、および改質剤の濃度は、供給リン酸および抽出システムの特性に従い選択される。高いリン酸濃度では、最大50パーセントの量(容積)はAlamine336、25パーセントの量(容積)はイソデカノールであることができる。
【0091】
希リン酸に関して、酸は、上述の有機相を特徴とする液体/液体抽出プロセスに供給される。リン酸水溶液を有機相と混合すると、リン酸は、水相から有機相に移動する。
【0092】
弱塩基イオン交換によって、リン酸を水相から除去することで、pHが増加し、金属不純物の沈殿が生じる。
【0093】
その後水相および有機相を分離する。
【0094】
リン酸塩が欠失したラフィネートをさらに処理し、金属沈殿物を除去する。その後、アパタイト溶解または石こうの洗浄に使用することができる。
【0095】
リンで負荷される有機相を、任意に、こすって洗浄し、共抽出した不純物を除去し、その後、アンモニア含有溶液でストリッピングする。
【0096】
リン酸塩を有機相から除去するために使用するストリップ溶液は、好適には、5〜25重量パーセントの間のアンモニアを有するアンモニア水である。溶液は、好適には、水中で気体アンモニアを溶解して作製する。
【0097】
P負荷の有機相がストリップ溶液と混合される場合、リン酸塩は、抽出剤から除去され、主にリン酸二水素モノアンモニウムが形成される。アンモニアと酸との間の中和は、熱産生をもたらす発熱反応である。しかしながら、希釈アンモニア水の使用により、溶媒の沸点を下回る温度で、リン酸塩を有機相から水相へ移動することが可能になる。一般的に、主にリン酸モノアンモニウムを含有する、得られた水相のpHは、7を下回るように制御されなければならない。N/Pmol比、有機/水量比、アンモニア濃度、温度等は、沈殿物を形成することなく、濃縮した水性リン溶液を得るために、制御し、最適化することができ、これはストリッピング手順の簡素な連続作動を可能にする。
【0098】
ストリッピング中に、リンが欠失する有機相およびリン酸塩含有水相の2つの相が形成される。2つの相を分離する。
【0099】
ストリップされた有機相は、供給溶液からリン酸を抽出するために、継続的に再利用される。
【0100】
リン酸アンモニウム含有水相は、さらに処理される。以下のプロセス中に、好適には気体または水形態のアンモニアを水溶液に添加し、それにより、主にリン酸トリアンモニウムが形成される。過剰アンモニア中で、リン酸トリアンモニウムの溶解度が急速に減少すると、リン酸トリアンモニウム結晶が沈殿する。リン酸トリアンモニウムの沈殿は、選択的であり、純粋なリン酸塩が形成される。沈殿物を、濾過、堆積、遠心分離等の手段で溶液から分離する。
【0101】
リン酸トリアンモニウムの除去後の残留水溶液は高いアンモニア含有量を有する。必要に応じて、溶液を不純物除去のために処理する。次いで、処理された溶液を、再利用し、負荷された有機相からさらにリン酸塩をストリップする。
【0102】
リン酸トリアンモニウムの沈殿物は、最小限のプロセスで質の高い生成物に容易に変換することができる。化合物は、乾燥して安定化する、酸の添加により安定化する、または、高温の溶液中で分解することができ、放出されたアンモニアは再利用することができる。それにより、安定した純粋なリン酸ジアンモニウムおよび/またはリン酸モノアンモニウムが生成される。
【0103】
上述の2つの実施例から、固体および液体イオン交換の両方が、本発明の原理に従い多くの用途に使用することができることは明確である。本発明は、本開示に概説される実施例に制限せず、リン酸塩イオンを含む多くの異なる系に適用可能である。わずかな修正が行われた同様のプロセスを、例えば、鉱石、P含有鉱山尾鉱、鉄鉱、焼却された動物由来の生成物からの灰、下水処理場内のP含有水路、工業廃水等からリンを抽出するために使用することができる。
【0104】
一般的な説明を図5に示す。原料52を蒸解ユニット60に提供する。供給溶液20をイオン交換装置10に提供するために、溶解液、例えば、酸58を提供する。この装置は、固体または液体イオン交換のいずれかを使用することができる。イオン交換装置10は廃水26を戻し、これは、典型的に、排水管理装置56内で管理され、廃水の部分54、例えば、水分は、再度、蒸解プロセスにおいて再利用することができる。イオン交換装置10は、管理装置69内で管理される溶出液36を排出する。以下にさらに記述するとおり、リン酸トリアンモニウム結晶を排出手段91を介して提供し、残留溶出液89の少なくとも一部は、追加の新しい再生溶液31と共に再利用し、再生溶液30として使用する。
【0105】
従来のイオン交換に基づくリンイオン交換技術を使用する上で重要な欠点の1つは、再生中に回収した溶液が、溶解度積を遥かに下回る、比較的低い濃度を依然として有することである。従来技術において、一般的なイオン交換溶出液の濃度を増加させるための多くの手法が利用可能である。弱塩基性陰イオン交換スカベンジャーからの溶出液は、好適には、濃縮され得る。そのようなイオン濃縮は、弱塩基性陰イオン交換樹脂と適合する、いかなる従来技術によっても実施することができる。
【0106】
上述の原理を使用して、高濃度のリンイオンの溶液を提供することができる。本発明において、イオン交換プロセスからの溶出液を、さらに処理する。この処理において、アンモニアをpH調節試薬として使用する。過剰のアンモニアを添加し、リン酸アンモニウム含有溶液から成る留分を溶出する。
【0107】
リン酸アンモニウムの溶解度は、アンモニア濃度が増加するとともに、減少することは既知である。溶解度は、4.5moll-1(NH+NHOH)までのアンモニア濃度の増加で、リン酸水素ジアンモニウムとして4.35moll-1から、リン酸トリアンモニウムとして0.2moll-1に減少する。リン酸トリアンモニウムの溶解度は、10.5molNl-1(NH+NHOH)のアンモニア水濃度で、0.05moll-1までさらに減少する。リン酸トリアンモニウムの溶解度の減少により、最大99%の効率でリンを沈殿することが可能になる。
【0108】
したがって、リン酸トリアンモニウムの溶解度は、過剰アンモニア中で急速に減少し、リン酸トリアンモニウム結晶を形成する。沈殿物は、液相から容易に分離することができる。リン酸トリアンモニウムは、最小限のプロセスで質の高い肥料に容易に変換することができる。リン酸トリアンモニウムは、酸を添加することにより、例えば、硫酸によるリン酸トリアンモニウムの、リン酸水素ジアンモニウムおよび硫酸アンモニウムへの変換で、安定化することができる。あるいは、リン酸トリアンモニウムを乾燥により安定化することができ、放出されたアンモニアは再利用することができる。
【0109】
リン酸トリアンモニウムとしてのリンの沈殿は、前に記載したイオン交換と組み合わせて、プロセス通路からリンを抽出するのに特に有用である。リンを、弱塩基性イオン交換スカベンジャーを使用して処理溶液から除去し、続いて、アンモニアでの再生中に、濃縮したリン酸アンモニウム溶液としてリンを回収する。次いで、リン酸トリアンモニウムを、さらなるアンモニアの添加により溶出液から沈殿させる。
【0110】
本発明に従うと、沈殿後に溶液中に残留したアンモニアを、スカベンジャーを再生するために再利用する。前に記載したイオン交換プロセスからの溶出液に、過剰なアンモニア中のリン酸トリアンモニウムを沈殿させる適用は、非常に明白な相乗的利点を提供する。アンモニウム含有溶液を生成する沈殿プロセスの元来の特性が、アンモニアをスカベンジャーの再生プロセスに戻し再利用することで利点へと変えられる。
【0111】
結論として、アンモニア濃度の増加により、リン酸トリアンモニウムの溶解度の大幅な低下が生じ、それによって、リン酸トリアンモニウムを沈殿させることができ、残留溶液を再生溶液として再度使用することができる。図6において、本発明の本態様に従う方法の一実施形態の主要工程を図示する。イオン交換のリン回収のための方法は、工程201から開始する。工程210は、さらに上述のプロセス工程の通りであり、そこでは、供給溶液中のイオンがスカベンジャーにあるイオンに交換される。工程230において、スカベンジャーは、塩基性pHを有する再生溶液により再生される。したがって、リン酸塩イオンは、電荷中和反応により溶出液に溶出する。工程260において、アンモニアをリンイオンを含有する溶出液に添加し、リン酸トリアンモニウムの溶解濃度を超過する。工程262において、リン酸トリアンモニウム結晶は沈殿し、工程264において、沈殿したリン酸トリアンモニウムを溶液から抽出する。最後に、工程266において、残留溶出液の少なくとも一部を、沈殿後に、再生溶液としてその後の再生工程のために再利用する。手順は工程298で終了する。
【0112】
これまでの開示から、好適な実施形態は、本発明の異なる態様の特別な連携に基づくものであると理解される。アンモニア含有溶液で再生された、弱塩基性イオン交換樹脂によるリンの抽出は、濃縮手順を適用して、さらに容易に改善することができる。その上、アンモニアがイオン交換手順に既に使用されているため、リン酸トリアンモニウムとしてのリン酸塩の沈殿は、実に非常に適切になる。それは、最終生成物は有益な肥料であり、残留溶液は、再度、イオン交換手順または沈殿プロセスに、再進入することができるからである。したがって、この総合的な概念は、残留生成物を管理する必要性が非常に低い有益な最終生成物を生成する。そのような総合概念は、ひいては、重要な相乗効果を得る。
【0113】
図7において、溶出液36からリン酸塩イオンをリン酸塩含有物質の形態で沈殿するための装置92を図示する。装置92は、沈殿した物質を抽出するようにも配置される。この装置92は、破線の四角69で示すとおり、便宜的に図5の管理手段69の全体または一部である。装置92は、リン酸塩イオンを含有する溶出液36を受けるための投入手段93を備える。投入手段93は、溶出液が収集されるタンク94に接続される。アンモニア供給部95は、バルブ装置96によりタンク94に接続される。したがって、アンモニア供給部95およびバルブ装置96は、アンモニウムイオンをタンク内の溶液に添加する手段を備える。添加されるアンモニアの量は、リン酸トリアンモニウムの溶解濃度を超過し、それにより、リン酸トリアンモニウム結晶が溶液中に形成される。溶液は、濾過器97を通って流れ、溶液からリン酸トリアンモニウム結晶を除去し、排出手段91を介して固体のリン酸トリアンモニウムを提供する。アンモニウムイオンを添加するように設定される添加器、および溶液からリン酸トリアンモニウム結晶を除去するように設定される除去器の別の設計も実現可能である。1つの代替的な除去装置は、重力のみ、または遠心力によって強化された、リン酸トリアンモニウムが堆積可能である堆積チャンバを使用する。残留アンモニア溶液は、上述の目的に従うさらなる使用のために、アンモニア保存場所98内で保存される。そのためには、残留溶出液88の少なくとも一部が、溶液再利用接続部を備える再利用装置89を介して再生溶液として提供される。
【0114】
上述の実施形態は、本発明の一部の例示的な実施例として理解されるものである。本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態にさまざまな修正、組み合わせ、および変更が行われ得ることを当業者は理解するであろう。特に、異なる実施形態における異なる部分の策は、技術的に可能であれば、別の構成で組み合わせることができる。しかしながら、本発明の範囲は、添付の請求項によって定義される。

参考文献
米国特許第US2,850,358号
米国特許第US1,879,204号
米国特許第US1,835,441号
英国特許第GB410,731号
ソ連特許第1450266号の要約の翻訳
国際公開第WO00/50343号
米国特許第US3,579,322号
英国特許第GB2,060,430号
欧州特許第EP0 399 803号
英国特許第GB1,101,863号
独国特許第DE1 442 500号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンを回収するための方法であって、
リン酸塩イオンを含有する供給溶液(20)を提供する工程(212)と、
前記供給溶液(21)に対して、リン酸塩イオンに対する親和性を有するスカベンジャーを暴露し(214、215)、それによって、前記リン酸塩イオンを、前記スカベンジャーに吸収させる工程と、
前記スカベンジャーを、塩基性pHを有する再生溶液(30)によって再生し(230)、それによって、前記リン酸塩イオンを前記再生溶液から形成された溶出液(36)に溶出する工程と、を含み、さらに、
リン酸トリアンモニウムの溶解濃度を超過するように、アンモニウムイオンを前記溶出液(36)に添加する工程(260)と、
前記溶出液(36)からリン酸トリアンモニウム結晶を沈殿させる工程(262)と、
前記溶出液(36)から前記リン酸トリアンモニウム結晶を抽出する工程(264)と、
その後の前記再生する工程のために前記再生溶液(30)として、沈殿後の残留溶出溶液(89)の少なくとも一部を再生利用する工程(266)と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記スカベンジャーは、イオン交換スカベンジャーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン交換スカベンジャーは、部分的にイオン化された弱塩基性陰イオン交換スカベンジャーであり、それによって、前記再生する工程は、電荷中和反応を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記弱塩基性陰イオン交換スカベンジャーは、弱塩基性官能性物質として、第1級、第2級、および第3級アミンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン交換スカベンジャーは、固体イオン交換樹脂(14)であることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン交換スカベンジャーは、液体イオン交換抽出剤(29)であることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リンを回収するための装置であって、
リン酸塩イオンを含有する供給溶液を受け取るための入力手段(16)と、
前記入力手段(16)に接続された、リン酸塩イオンに対する親和性を有するスカベンジャー(14、29)を含む容器(12;17)と、
前記スカベンジャーを再生するための塩基性pHを有する、再生溶液(30)を提供し、前記再生溶液から形成されたリン酸塩イオン溶出液のための排出口(34)を有する再生装置(21、28、32、38)と、
を備え、
リン酸塩含有物質を前記溶出液から沈殿させ、前記沈殿した物質を抽出するための装置(92)であって、前記装置(92)は、リン酸トリアンモニウムの溶解濃度を超過するようにアンモニウムイオンを添加する手段(95、96)を備え、それによって、リン酸トリアンモニウム結晶が形成される、装置と、
前記再生装置(21、28、32、38)への溶液再利用接続部を備え、沈殿後の残留溶液(89)を再生溶液(30)として再利用するために配置される、再利用装置と、
を含むことを特徴とする、装置。
【請求項8】
前記スカベンジャーは、イオン交換スカベンジャーであることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記イオン交換スカベンジャーは、部分的にイオン化された弱塩基性陰イオン交換スカベンジャーであり、それによって、前記再生装置(21、28、32、38)は、電荷中和反応を行うための手段を含むことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記弱塩基性陰イオン交換スカベンジャーは、弱塩基性官能性物質として、第1級、第2級、および第3級アミンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記イオン交換スカベンジャーは、固体イオン交換樹脂(14)であることを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記イオン交換スカベンジャーは、液体のイオン交換抽出剤(29)であることを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記液体のイオン交換抽出剤は、第1級、第2級、および第3級アミンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−522068(P2010−522068A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554482(P2009−554482)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050010
【国際公開番号】WO2008/115121
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509263386)イージーマイニング スウェーデン エービー (2)
【氏名又は名称原語表記】EASYMINING SWEDEN AB
【住所又は居所原語表記】Box 322, S−751 05 Uppsala, Sweden
【Fターム(参考)】