説明

リン酸カルシウム組成物及びその用途

【課題】臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に水を主成分とする液剤を加えて混練する際に、粉/液混合重量比の値が大きい場合であっても混練性が良好であるとともに、混練してから硬化するまでの時間、即ち硬化時間が適切な範囲内にあり、かつ得られる硬化物の機械的強度が高いリン酸カルシウム組成物を提供する。
【解決手段】リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるリン酸カルシウム組成物であって、該リン酸カルシウム組成物が0.1〜5μmの粒径の粒子を40〜75体積%含有し、かつ40μm以上の粒径の粒子を1〜20体積%含有することを特徴とするリン酸カルシウム組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸四カルシウム粒子及びリン酸水素カルシウム粒子からなるリン酸カルシウム組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸カルシウム組成物を焼結して得られるヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))は、骨や歯などの無機成分に近い組成を有し、骨と直接結合する性質である生体活性を有していることから、骨欠損部や骨空隙部の修復用材料としての利用が報告されている。しかし、このようなヒドロキシアパタイトからなる材料は、生体親和性は優れているが、複雑な形態を有する部位に応用するには、成形性という点で困難な場合があった。
【0003】
一方、リン酸カルシウム組成物の中でもセメントタイプ、即ち硬化性を有するリン酸カルシウム組成物は、生体内や口腔内において生体吸収性のヒドロキシアパタイトへ徐々に転化し、さらに形態を保ったままで生体硬組織と一体化し得ることが知られている。このようなリン酸カルシウム組成物は、生体親和性が優れているだけではなく、成形性を有することから複雑な形態を有する部位への応用が容易であるとされている。
【0004】
例えば、特許第3017536号公報(特許文献1)には、リン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウム無水物の混合物が水の存在下で反応してヒドロキシアパタイトを生成することが記載されている。しかしながら、これらのリン酸カルシウム混合物が、水を主成分とする液剤と混練されて硬化物となる際に、必ずしも適切な時間で硬化物とならない場合があった。例えば、硬化時間が短い場合には、臨床現場におけるリン酸カルシウム組成物と液剤との練和、患部へのペーストの移植などの操作が困難となっていた。特に均一に混練できていない場合には硬化物の機械的強度が低下するおそれもあり、リン酸カルシウム組成物の均質性の改善が望まれていた。また、硬化物の機械的強度の向上には、リン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の粉/液混合重量比の値が大きい方が良いとされている。しかしながら、粉/液混合重量比を大きくすると前記ペーストを形成することが困難となる場合があり改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特許第3017536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に水を主成分とする液剤を加えて混練する際に、粉/液混合重量比の値が大きい場合であっても混練性が良好であるとともに、混練してから硬化するまでの時間、即ち硬化時間が適切な範囲内にあり、かつ得られる硬化物の機械的強度が高いリン酸カルシウム組成物を提供することを目的とするものである。また、そのようなリン酸カルシウム組成物の好適な製造方法及び用途を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるリン酸カルシウム組成物であって、該リン酸カルシウム組成物が0.1〜5μmの粒径の粒子を40〜75体積%含有し、かつ40μm以上の粒径の粒子を1〜20体積%含有することを特徴とするリン酸カルシウム組成物を提供することによって解決される。
【0008】
このとき、40μm以上の粒径の粒子を3〜15体積%含有することが好適であり、リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が2〜35μmであることが好適である。また、リン酸四カルシウム粒子(A)が、0.1〜5μmの粒径の粒子を15〜60体積%含有し、かつ40μm以上の粒径の粒子を2〜35体積%含有することが好適であり、リン酸カルシウム粒子(B)の平均粒径が0.1〜5μmであることが好適である。さらに、リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)の配合割合(A/B)がモル比で40/60〜60/40であることも好適である。このようなリン酸カルシウム組成物の好適な実施態様は医療用組成物であり、特に骨セメントとして好適である。
【0009】
さらに上記課題は、リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるリン酸カルシウム組成物の製造方法であって、平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸四カルシウム粒子(A1)、平均粒径が10〜60μmであるリン酸四カルシウム粒子(A2)及び平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸水素カルシウム粒子(B)を混合することを特徴とするリン酸カルシウム組成物の製造方法を提供することによっても解決される。
【0010】
このとき、リン酸四カルシウム粒子(A1)、リン酸四カルシウム粒子(A2)又はリン酸水素カルシウム粒子(B)が、ボールミル、ジェットミル及びライカイ機からなる群から選択される少なくとも1種を用いて粉砕されることを特徴とするリン酸カルシウム組成物の製造方法を提供することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に水を主成分とする液剤を加えて混練する際に、粉/液混合重量比の値が大きい場合であっても混練性が良好であるとともに、混練してから硬化するまでの時間、即ち硬化時間が適切な範囲内にあり、かつ得られる硬化物の機械的強度が高い。したがって、医療用材料、特に骨セメントに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるものである。
【0013】
リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)を含有するリン酸カルシウム組成物は、水の存在下で混練すると熱力学的に安定なヒドロキシアパタイトを生成して硬化する。
【0014】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、0.1〜5μmの粒径の粒子を40〜75体積%含有し、かつ40μm以上の粒径の粒子を1〜20体積%含有する。このように、小さな粒径の粒子を多く含有しながらも、大きな粒径の粒子を一定量含有することにより、粉/液混合重量比の値が大きい場合であっても混練性が良好であるとともに、混練してから硬化するまでの時間、即ち硬化時間が適切な範囲にあり、かつ得られる硬化物の機械的強度が高くなる。混練性が良好となる理由については必ずしも明らかではないが、スラリー状態での粒子同士のパッキングが優れているためと考えられる。ここで、本発明のリン酸カルシウム組成物の粒径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定したものである。
【0015】
0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量が40体積%未満の場合、液剤との混合により得られるリン酸カルシウム組成物ペーストの性状が好ましくなかったり、混練してからの硬化時間が非常に長くなったり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがあり、好適には45体積%以上であり、より好適には50体積%以上である。一方、0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量が75体積%を超える場合、リン酸カルシウム組成物ペーストの混練が困難となり、硬化物が得られないおそれがある。特に、医療用組成物として用いた場合には、硬化するまで手術を中断せざるを得ず、移植作業の効率が悪くなるおそれがあり、さらに、このような材料を移植した場合には、移植部位に欠損を生じるおそれがある。0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量は、好適には70体積%以下であり、より好適には65体積%以下である。
【0016】
40μm以上の粒径の粒子の含有量が1体積%未満の場合、リン酸カルシウム組成物ペーストの混練が困難となり、硬化物が得られないおそれがあり、好適には3体積%以上であり、より好適には5体積%以上である。一方、40μm以上の粒径の粒子の含有量が20体積%を超える場合、リン酸カルシウム組成物ペーストの性状が好ましくなかったり、混練してからの硬化時間が非常に長くなったり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがあり、好適には15体積%以下であり、より好適には10体積%以下である。
【0017】
リン酸四カルシウム粒子(A)[Ca(POO]の平均粒径は2〜35μmであることが好ましい。平均粒径が2μm未満の場合、リン酸四カルシウム粒子(A)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなるおそれがある。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下したり、リン酸カルシウム組成物ペーストの硬化時間が非常に長くなったりするおそれがある。平均粒径は、より好適には5μm以上であり、さらに好適には10μm以上である。一方、平均粒径が35μmを超える場合、液剤との混合により得られるペーストが十分な粘性を示さない、あるいはざらつき感が大きくなるなどペースト性状が好ましくない場合がある。また、歯科用の根管充填材などとして使用する場合、狭い移植箇所へシリンジを用いて注入する際にノズルの先端が詰まったり、硬化時間が短いため臨床現場で使用する際などの操作性が困難となるおそれがある。平均粒径は、より好適には30μm以下であり、さらに好適には25μm以下である。ここで、本発明で使用するリン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
【0018】
一般的にはリン酸四カルシウム粒子(A)の粒径分布は単峰性(シングルピーク)であり、小粒径の粒子が少ない方がリン酸カルシウム組成物が硬化する際にリン酸四カルシウム粒子(A)の水溶液中への溶解が過度とならず、ヒドロキシアパタイトの生成を促進する観点から好ましいとされていた。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、本発明で用いられるリン酸四カルシウム粒子(A)は、リン酸四カルシウム粒子(A)全体に対して0.1〜5μmの粒径の粒子を15〜60体積%含有し、かつ40μm以上の粒径の粒子を2〜35体積%含有することが好ましく、このようなリン酸四カルシウム粒子(A)を用いることにより、粉/液混合重量比の値が大きい場合であってもペースト性状が良好であり、液剤と混練した際の水溶液のpHが過度に高くならないことから硬化時間が適正な範囲にあり、かつ得られる硬化物の機械的強度が高くなることを見出した。
【0019】
リン酸四カルシウム粒子(A)全体に対する0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量が15体積%未満の場合、液剤との混合により得られるリン酸カルシウム組成物ペーストの性状が好ましくなかったり、混練してからの硬化時間が非常に長くなったり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがあった。リン酸四カルシウム粒子(A)全体に対する0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量は、より好適には25体積%以上であり、さらに好適には30体積%以上である。一方、リン酸四カルシウム粒子(A)全体に対する0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量が60体積%を超える場合、リン酸カルシウム組成物ペーストの混練が困難となり、硬化物が得られないおそれがある。特に、歯科用組成物として用いた場合には、硬化するまで手術を中断せざるを得ず、移植作業の効率が悪くなるおそれがあり、さらに、このような材料を移植した場合には、移植部位に欠損を生じるおそれがある。リン酸四カルシウム粒子(A)全体に対する0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量は、より好適には50体積%以下であり、さらに好適には40体積%以下である。
【0020】
また、リン酸四カルシウム粒子(A)全体に対する40μm以上の粒径の粒子の含有量が2体積%未満の場合、リン酸カルシウム組成物ペーストの混練が困難となり、硬化物が得られないおそれがあり、より好適には6体積%以上であり、さらに好適には8体積%以上である。一方、40μm以上の粒径の粒子の含有量が35体積%を超える場合、リン酸カルシウム組成物ペーストの性状が好ましくなかったり、混練してからの硬化時間が非常に長くなったり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがあり、より好適には25体積%以下であり、さらに好適には15体積%以下である。
【0021】
上述のようなリン酸四カルシウム粒子(A)は、例えば、後述する平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸四カルシウム粒子(A1)、平均粒径が10〜60μmであるリン酸四カルシウム粒子(A2)を混合する態様をとることにより具体的に調製が可能である。このとき、A1の含有量は、A2より粒子の比表面積が非常に大きくなることから、主にリン酸四カルシウム粒子全体の水溶液中の溶解度に影響し、A2の含有量は液剤と混練した際の組成物全体のペースト性状に影響する。
【0022】
リン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径が0.1μm未満の場合、リン酸四カルシウム粒子(A)の水溶液中への溶解が過度となり、液剤と混練した際の水溶液のpHが過度に高くなることにより、ヒドロキシアパタイトの生成が円滑でなくなるおそれがある。リン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径は、液剤と混練した際の水溶液のpHを中性付近に維持する観点からは0.5μm以上であることがより好ましい。一方、リン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径が5μmを超える場合、リン酸四カルシウム粒子(A1)の水溶液中への溶解度が低下し、ヒドロキシアパタイトの生成反応の速度が低下するおそれがあり、より好適には2μm以下である。
【0023】
本発明で用いられるリン酸四カルシウム粒子(A1)の製造方法は特に限定されず、市販品を入手できるのであればそれを使用してもよいが、市販品をさらに粉砕することが好ましい場合が多い。その場合、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、リン酸四カルシウム原料粉体を乾燥したシクロヘキサンなどの溶媒と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥することによりリン酸四カルシウム粒子(A)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。
【0024】
本発明で用いられるリン酸四カルシウム粒子(A2)は市販品をそのまま使用しても良いし、さらに粉砕し粒径を調整したものを用いても良い。その場合、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。リン酸四カルシウム粒子(A2)の平均粒径が10μm未満の場合、リン酸四カルシウム粒子(A1)との混合物であるリン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるリン酸カルシウム組成物に液剤を添加して混練する際の水溶液のpHが過度に高くなり、ヒドロキシアパタイトの生成が阻害されるおそれがある。リン酸四カルシウム粒子(A2)の平均粒径は、より好適には15μm以上であり、さらに好適には20μm以上である。一方、リン酸四カルシウム粒子(A2)の平均粒径が60μmを超える場合には、液剤を添加して混練することにより得られるペーストが十分な粘性を示さない、あるいはざらつき感が大きくなるなどペースト性状が好ましくない場合がある。また、歯科用の根管充填材などとして使用する場合、狭い移植箇所へシリンジを用いて注入する際にノズルの先端が詰まったり、硬化時間が短いため臨床現場で使用する際などの操作性が困難となるおそれがある。リン酸四カルシウム粒子(A2)の平均粒径は、より好適には50μm以下であり、さらに好適には40μm以下である。
【0025】
リン酸四カルシウム粒子(A1)とリン酸四カルシウム粒子(A2)の配合重量比(A2/A1)は、特に限定されないが、リン酸四カルシウム粒子(A)の水溶液中への溶解度をヒドロキシアパタイトの生成が円滑な範囲に維持するの観点から、好適には20/80〜60/40であり、より好適には30/70〜50/50である。
【0026】
本発明で使用されるリン酸水素カルシウム粒子(B)は、無水物[CaHPO]であっても、2水和物[CaHPO・2HO]であっても良いが、好適には無水物が使用される。リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は0.1〜5μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがあり、より好適には0.5μm以上である。一方、平均粒径が5μmを超える場合は、リン酸水素カルシウム粒子(B)が液剤へ溶解しにくくなるため、リン酸四カルシウム粒子(A)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。平均粒径は、より好適には1.5μm以下である。リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は、上記リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径と同様にして算出される。
【0027】
このような平均粒径を有するリン酸水素カルシウム粒子(B)の製造方法は特に限定されず、市販品を入手できるのであればそれを使用してもよいが、市販品をさらに粉砕することが好ましい場合が多い。その場合、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、リン酸水素カルシウム原料粉体をアルコールなどの液体の媒体と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥することによりリン酸水素カルシウム粒子(B)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。
【0028】
リン酸四カルシウム粒子(A)とリン酸水素カルシウム粒子(B)の配合割合(A/B)は、特に限定されないが、モル比で40/60〜60/40の範囲となるような配合割合で使用されることが好ましい。これによって、硬化物の機械的強度が高いリン酸カルシウム組成物を得ることができる。上記配合割合(A/B)は、より好適には45/55〜55/45であり、実質的に50/50であることが最適である。
【0029】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でリン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)以外の成分を含有しても構わない。例えば必要に応じて増粘剤を配合することができる。これはリン酸カルシウム組成物ペーストの成形性又は均一な充填性を向上させるためである。増粘剤としては例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリアスパラギン酸塩、セルロース以外のデンプン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、キチン、キトサン等の多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステル、またコラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体などのタンパク質類等の高分子などから選択される1つ又は2つ以上が挙げられるが、水への溶解性及び粘性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、キトサン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩から選択される少なくとも1つが好ましい。増粘剤は、リン酸カルシウム組成物に配合したり、液成分に配合したり、又は混練中のペーストに配合することができる。
【0030】
必要に応じてX線造影剤を含んでも良い。これはリン酸カルシウム組成物ペーストの充填操作のモニタリングや充填後の変化を追跡することができるからである。X線造影剤としては、例えば、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、フッ化イッテルビウム、ヨードホルム、バリウムアパタイト、チタン酸バリウム等から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。X線造影剤は、リン酸カルシウム組成物に配合したり、液成分に配合したり、又は混練中のペーストに配合することができる。
【0031】
また、薬理学的に許容できるあらゆる薬剤等を配合することができ、消毒剤、抗癌剤、抗生物質、抗菌剤、アクトシン、PEG1などの血行改善薬、bFGF、PDGF、BMPなどの増殖因子、骨芽細胞、象牙芽細胞、未分化な骨髄由来幹細胞など硬組織形成を促進させる細胞などを配合させることができる。
【0032】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、上記リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるものであるが、その混合方法は特に限定されない。例えば、ライカイ機、ボールミルなどの容器駆動型ミル、もしくは回転羽を底部に有する高速回転ミルなどを用いて混合することにより得ることができる。好適には高速回転ミルが使用される。このとき、アルコールなど水を含まない液体の媒体を存在させて混合することも可能である。
【0033】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、上述した平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸四カルシウム粒子(A1)、平均粒径が10〜60μmであるリン酸四カルシウム粒子(A2)及び平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸水素カルシウム粒子(B)を混合することによって好適に製造される。このように、(A1)及び(B)のような小さな粒径の粒子と、大きな粒径となるように粉砕した(A2)とを混合することにより、粉/液混合重量比の値が大きい場合であってもリン酸カルシウム組成物ペーストの混練性が良好であるとともに、硬化時間が適切な範囲にあり、かつ得られる硬化物の機械的強度が高くなる。
【0034】
上述の方法で製造されたリン酸カルシウム組成物は、液剤と混練した際の水溶液のpHが過度に高くならないことから硬化時間が適正な範囲にある。また、粉/液混合重量比の値が大きい場合であっても混練性が良好であるとともに、得られる硬化物の機械的強度が高くなる。平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸四カルシウム粒子(A1)、平均粒径が10〜60μmであるリン酸四カルシウム粒子(A2)及び平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸水素カルシウム粒子(B)を粉砕する方法は特に限定されない。例えば、ボールミル、ジェットミル及びライカイ機などを用いて粉砕する方法を用いることができる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。このとき、シクロヘキサンなど水を含まない液体の媒体を存在させて混合することも可能である。
【0035】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、粉体組成物として販売され、医療現場で使用する際などに液剤と混練してリン酸カルシウム組成物ペーストとなり、所望の部位に充填あるいは塗布されて使用することができる。このとき使用される液剤は、水以外の成分が溶解した水溶液、又は他の成分が分散した水分散液であってもよい。水に対して配合される成分としては、リン酸、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩類ならびにこれらの混合物、リン酸カリウム塩類、リン酸アンモニウム塩類、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸などのpH緩衝剤、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ化物塩、グリセリン、プロピレングリコールなどの水溶性多価アルコール、などが例示される。なかでも、安全性の面からはリン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩類ならびにこれらの混合物を配合することが好ましい。
【0036】
リン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の、リン酸カルシウム組成物と液剤との質量比(リン酸カルシウム組成物/液剤)は特に限定されないが、好適には10/10〜60/10であり、より好適には25/10〜45/10である。リン酸カルシウム組成物と液剤とが均一に混じるように、十分に混練してから、速やかに所望の部位に充填あるいは塗布する。この場合、リン酸カルシウム組成物の硬化時間が適切な範囲内にあるため、水と混練する際の操作性が良好である。
【0037】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、医療用の各種用途に好適に使用される。例えば、接着又は固着用の骨セメントとして好適に使用される。本発明のリン酸カルシウム組成物を上記用途に使用した場合、ペーストの充填性に優れており、複雑な形態をした部位の隅々にまで充填することができ、歯牙、骨などの硬組織修復材に好適である。また、ペースト自体が生体内又は口腔内で短期間のうちにヒドロキシアパタイトに転化し、充填した部位で新生骨に置換され、生体硬組織との一体化が起こることから生体親和性に優れている。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。本実施例においてリン酸四カルシウム粒子(A)、及びリン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて測定し、測定の結果から算出されるメディアン径を平均粒径とした。また、リン酸カルシウム組成物の粒径分布を上記レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。
【0039】
実施例1
(1)リン酸四カルシウム粒子(A)の調製
市販のリン酸水素カルシウム(Product No. 1430, J.T.Baker Chemical Co.社製)及び炭酸カルシウム(Product No. 1288, J.T.Baker Chemical Co.社製)を等モルとなる様に水中に加え、1時間撹拌した後、ろ過・乾燥することで得られたケーキ状の等モル混合物を焼成器(Model 51333, Lindberg, Watertown, WI)中で1500℃、24時間加熱し、その後デシケータ中で室温まで冷却することで調製した。得られたTTCP塊は、乳鉢で荒く砕き、その後篩がけを行うことで微粉ならびにTTCP塊を除き、0.5〜3mmの範囲に粒度を整え、粗リン酸四カルシウム(以下、「TTCP−H」と略記する)を得た。
【0040】
本実施例で使用するリン酸四カルシウム粒子(A)は、「TTCP−H」を粉砕して得られた「TTCP−4」(平均粒径25.6μm、0.1〜5μmの粒径の粒子を0.1体積%含有、40μm以上の粒径の粒子を11体積%含有)及び「TTCP−7」(平均粒径1.1μm、0.1〜5μmの粒径の粒子を99.6体積%含有、40μm以上の粒径の粒子を含有せず)を混合することにより調製した。「TTCP−4」は、「TTCP―H」100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で2時間粉砕を行うことで得た。また、「TTCP−7」は、「TTCP―H」100g、予め金属ナトリウム存在下で蒸留した乾燥シクロヘキサン240g、及び直径が20mmのジルコニアボール600gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で48時間湿式振動ボールミル粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでシクロヘキサンを留去した後、60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。次に、「TTCP−4」と「TTCP−7」の配合重量比(TTCP−4/TTCP−7)を70/30になるように「TTCP−4」51.1g及び「TTCP−7」21.9gを高速回転ミル(アズワン株式会社製「SM−1」)中に加え、3000rpmの回転速度で3分間混合することでリン酸四カルシウム粒子(A)を得た。
【0041】
(2)リン酸水素カルシウム粒子(B)の調製
本実施例で使用する無水リン酸水素カルシウム粒子(B)(平均粒径1.2μm)は、市販の無水リン酸水素カルシウム粒子(Product No. 1430, J.T.Baker Chemical Co.社製、平均粒径9.9μm)50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)120g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、120rpmの回転速度で24時間湿式粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
【0042】
(3)リン酸カルシウム組成物の調製
上記で得たリン酸四カルシウム粒子(A)145.8g及びリン酸水素カルシウム粒子(B)54.2gを高速回転ミル(アズワン株式会社製「SM−1」)中に加え、3000rpmの回転速度で3分間混合することでリン酸カルシウム組成物を得た。前記リン酸カルシウム組成物は、0.1〜5μmの粒径の粒子をリン酸カルシウム組成物全体に対して50.2体積%含有しており、40μm以上の粒径の粒子を5.4体積%含有していた。
【0043】
(4)硬化時間の測定
上記(3)で得たリン酸カルシウム組成物の硬化時間の測定をISO6876(Dental root canal sealing materials)に準じた方法で測定した。リン酸カルシウム組成物1.5gを精秤し、これに0.2MのNaHPO水溶液0.38gを加え混練することでリン酸カルシウム組成物ペーストを調製した(このときの粉/液混合重量比は4.0である)。このリン酸カルシウム組成物ペーストを、37℃、相対湿度98%に調整したキャビネット中において、ガラス板上に載せた内径10mm、高さ2mmの空洞を有するステンレス鋼製リング型に充填し、ペースト上部をスパチュラーを用いて平滑とした。次に、混練終了から180秒後より10秒毎に、重量が100gで直径が2mmの平らな末端部を有するインジケータを上記リン酸カルシウム組成物ペーストの垂直面へ垂直に静かに下げ、針先の痕が見えなくなるまでこの操作を繰り返し、混練より針先痕が見えなくなるまでの時間を測定した(n=5)。こうして得られたリン酸カルシウム組成物の硬化時間は5分10秒±7秒であった。
【0044】
(5)混練性の評価
(4)の硬化時間の測定の際に併せてリン酸カルシウム組成物ペーストの混練性の評価を行い、下記の3段階評価基準により判定した(このときの粉/液混合重量比は4.0である)。
(判定):(評価基準)
○:操作性の良好なペーストが形成され、形態付与することが容易であった。
△:混練して塊状に纏めることは可能であるが、塊状の混練体を変形すると大きなクラックを伴うため形態付与することが困難であった。
×:塊状の混練体を形成することができなかった。
【0045】
(6)圧縮強度の測定
直径が6mm、深さが3mmの分割可能なステンレス製のモールドを平滑なガラス板上に乗せ、気体を含ませないように注意しながら上記(4)と同様にして調製したリン酸カルシウム組成物ペーストを充填し、上部より平滑なガラス板で圧縮することでリン酸カルシウム組成物ペーストを成型した(n=9)。その後、37℃、相対湿度100%の環境で4時間インキュベートした後、上記モールドよりリン酸カルシウム組成物の円柱状硬化物を取り出し、同じく37℃の蒸留水150ml中に浸漬し、さらに20時間保持した。その後、リン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度を、Chowら(L. C. Chow, S. Hirayama, S. Takagi, E. Parry, J. Biomed. Mater. Res. (Appl. Biomater.) 53: 511-517, 2000.)の方法に準じて、力学的強度測定装置(株式会社島津製作所製「AG−1 100kN」)を使用し、円柱状の硬化物の軸方向に1mm/minの速度で荷重をかけて測定した(n=9)。こうして得られたリン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度は68.4±2.9MPaであった。
【0046】
実施例2
実施例1において、配合重量比(TTCP−4/TTCP−7)を70/30で調製する代わりに、配合重量比(TTCP−4/TTCP−7)を50/50にして、実施例1と同様にリン酸カルシウム組成物を調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0047】
実施例3
実施例2において、「TTCP−4」と「TTCP−7」を用いる代わりに、「TTCP−3」(平均粒径34.4μm、0.1〜5μmの粒径の粒子を含有せず、40μm以上の粒径の粒子を19.4体積%含有)と「TTCP−7」を用いてリン酸四カルシウム粒子(A)を調製し、実施例2と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製して評価を行った。「TTCP−3」は、「TTCP―H」100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で1時間粉砕を行うことで得た。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0048】
実施例4
実施例2において、「TTCP−4」と「TTCP−7」を用いる代わりに、「TTCP−2」(平均粒径48.3μm、0.1〜5μmの粒径の粒子を含有せず、40μm以上の粒径の粒子を38.2体積%含有)と「TTCP−7」を用いてリン酸四カルシウム粒子(A)を調製し、実施例2と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製して評価を行った。「TTCP−2」は、「TTCP―H」100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で20分間粉砕を行うことで得た。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0049】
実施例5
実施例1において、リン酸四カルシウム粒子(A)と無水リン酸水素カルシウム粒子(B)のモル比(A/B)を0.7とした以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0050】
比較例1
実施例2において、「TTCP−4」と「TTCP−7」を用いる代わりに、「TTCP−1」(平均粒径66.8μm、0.1〜5μmの粒径の粒子を含有せず、40μm以上の粒径の粒子を63.5体積%含有)と「TTCP−7」を用いてリン酸四カルシウム粒子(A)を調製し、実施例2と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製して評価を行った。「TTCP−1」は、「TTCP―H」100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で5分間粉砕を行うことで得た。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0051】
比較例2
実施例1において、「TTCP−4」と「TTCP−7」を用いる代わりに、「TTCP−6」(平均粒径7.2μm、0.1〜5μmの粒径の粒子を40.8体積%含有、40μm以上の粒径の粒子を1.1体積%含有)のみを用いてリン酸四カルシウム粒子(A)を調製し、実施例1と同様にリン酸カルシウム組成物を調製して評価を行った。「TTCP−6」は、「TTCP―H」100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で24時間粉砕を行うことで得た。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0052】
比較例3
実施例1において、「TTCP−4」と「TTCP−7」を用いる代わりに、「TTCP−3」のみを用いてリン酸四カルシウム粒子(A)を調製し、実施例1と同様にリン酸カルシウム組成物を調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0053】
比較例4
実施例2において、「TTCP−4」と「TTCP−7」を用いる代わりに、「TTCP−5」と「TTCP−7」を用いてリン酸四カルシウム粒子(A)を調製し、実施例2と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製して評価を行った。「TTCP−5」は、「TTCP―H」100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で12時間粉砕を行うことで得た。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から分かるように、0.1〜5μmの粒径の粒子を40〜75体積%含有し、かつ40μm以上の粒径の粒子を1〜20体積%含有する実施例1〜5では、リン酸カルシウム組成物の混練性が良好であり、硬化時間が臨床現場で使用する際などに適切な範囲にあるとともに、圧縮強度が高いことが分かった。これに対し、40μm以上の粒径の粒子の含有量が20体積%を超える比較例1、及び0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量が40体積%未満である比較例3では、いずれもリン酸カルシウム組成物の混練体を形成することはできるが、前記混練体を変形して形態付与することが困難であり、硬化時間が大きく延長し、圧縮強度が大きく劣った。また、40μm以上の粒径の粒子の含有量が1体積%未満である比較例2、及び0.1〜5μmの粒径の粒子の含有量が75体積%を超える比較例4では、リン酸カルシウム組成物の混練体を形成することができず、硬化しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるリン酸カルシウム組成物であって、該リン酸カルシウム組成物が0.1〜5μmの粒径の粒子を40〜75体積%含有し、かつ40μm以上の粒径の粒子を1〜20体積%含有することを特徴とするリン酸カルシウム組成物。
【請求項2】
40μm以上の粒径の粒子を3〜15体積%含有する請求項1記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項3】
リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が2〜35μmである請求項1又は2記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項4】
リン酸四カルシウム粒子(A)が、0.1〜5μmの粒径の粒子を15〜60体積%含有し、かつ40μm以上の粒径の粒子を2〜35体積%含有する請求項1〜3のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項5】
リン酸カルシウム粒子(B)の平均粒径が0.1〜5μmである請求項1〜4のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項6】
リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)の配合割合(A/B)がモル比で40/60〜60/40である請求項1〜5のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる医療用組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる骨セメント。
【請求項9】
リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるリン酸カルシウム組成物の製造方法であって、平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸四カルシウム粒子(A1)、平均粒径が10〜60μmであるリン酸四カルシウム粒子(A2)及び平均粒径が0.1〜5μmであるリン酸水素カルシウム粒子(B)を混合することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物の製造方法。
【請求項10】
リン酸四カルシウム粒子(A1)、リン酸四カルシウム粒子(A2)又はリン酸水素カルシウム粒子(B)が、ボールミル、ジェットミル及びライカイ機からなる群から選択される少なくとも1種を用いて粉砕されることを特徴とする請求項9記載のリン酸カルシウム組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−136603(P2008−136603A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324359(P2006−324359)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(301069384)クラレメディカル株式会社 (110)
【Fターム(参考)】