説明

リークテスト装置及び方法

【課題】温度補正のための感温部材を含むリークテスト装置において、差圧検出路を簡素化する。
【解決手段】検査対象10の内部空間11の内面と良熱伝導材料からなる感温部材60の外面との間に被検室13を形成する。加圧気体を被検室13及び感温部材60の内部の感温室61にそれぞれ導入した後、第1、第2通路31,32を遮断したうえで、第2下流側開閉手段V36を閉じ、差圧センサ33によって被検室13と第2通路の被検圧部分36との差圧Dを検出する。また、第1下流側開閉手段V35を閉じ、差圧センサ33によって感温室61と第1通路の被検圧部分35との差圧Dを検出する。差圧データDを差圧データDに基づいて補正し、補正後の差圧データDに基づいて漏れ判定を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査対象の内部空間に加圧気体を導入してリークテストを行なう装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に差圧式のリークテストでは、検査対象の内部空間と基準となる空間とに圧縮エア等の加圧気体を導入した後、この内部空間と基準空間とを互いに遮断して各々閉鎖系とする。検査対象から漏れがあったときは、これが差圧として検出される。これによって、検査対象の良否を判定することができる(特許文献1参照)。
【0003】
検査対象の内部空間に加圧気体を導入すると、断熱圧縮により昇温し、その後、経時的に放熱し、温度が下がる。また、検査対象が加温又は冷却され周辺の設備や雰囲気との間に温度差があったり、加圧気体が検査対象とは異なる温度であったりすると、検査対象の内部温度が経時的に変動する。このような温度変化も圧変化の原因となる。
【0004】
そこで、特許文献2に記載のリークテスト方法では、検査対象の内部空間の圧変化だけでなく温度変化をも測定し、圧変化のうち温度変化による分を除く補正(温度補償)を行なっている。これにより、漏れ判定ひいては検査対象の良否判定の精度を高めることができる。
【0005】
具体的には、例えば、良熱伝導性の感温部材を用意する。感温部材の内部には感温室が形成されている。この感温部材を検査対象の内部空間に配置する等して、検査対象の内部空間の内面と感温部材の外面との間に被検室を形成する。被検室に差圧センサを含む第1の差圧検出路を接続する。感温室に別の差圧センサを含む第2の差圧検出路を接続する。これら差圧検出路を介して被検室と感温室に加圧気体をそれぞれ導入する。そして、第1差圧検出路の差圧センサによって基準圧に対する被検室の差圧を測定するとともに、第2差圧検出路の差圧センサによって第2の基準圧に対する感温室の差圧を測定する。感温室の圧変化は、主に被検室の温度変化に起因する。したがって、感温室の測定差圧の経時データに基づいて、被検室の測定差圧の経時データを補正することで、被検室の圧変化のうち温度変化に起因する分を除くことができる。補正後のデータに基づいて漏れ判定する。感温部材の感温室の内圧は微小な温度変化にも大きく感応する。よって、温度測定の感度を高めることができる。また、被検室の温度を平均的に測定できるため、被検室内に温度分布があっても信頼性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−061201号公報
【特許文献2】特開2007−064737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上掲特許文献2のシステムでは、検査対象用と感温部材用の2系統の差圧検出路を要し、2つの差圧センサを要する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明装置は、内部空間を有する検査対象からの漏れを判定するリークテスト装置において、
(イ) 内部に感温室を有し、外面が前記内部空間の内面との間に被検室を形成するよう配置された良熱伝導材料からなる感温部材と、
(ロ) 前記被検室に連なり、加圧気体を前記被検室に導入する第1通路と、前記感温室に連なり、加圧気体を前記感温室に導入する第2通路とを有する差圧検出路と、
(ハ) 前記第1通路と第2通路の間に設けられ、これら通路の差圧を検出する差圧センサと、
(ニ) 前記差圧センサより上流側において前記第1、第2通路を連通して前記加圧気体の導入を許容した後、第1、第2通路を遮断する上流側開閉手段と、
(ホ) 前記差圧センサより下流側の第1通路に設けられ、前記遮断前は開き、前記遮断後は開から閉へ、又は閉から開へ動作する第1下流側開閉手段と、
(ヘ) 前記差圧センサより下流側の第2通路に設けられ、前記遮断前は開き、前記遮断後は第1下流側開閉手段が開のとき閉じ、前記第1下流側開閉手段が閉のとき開く第2下流側開閉手段と、
を備え、前記遮断後において、前記第1下流側開閉手段が開(第2下流側開閉手段が閉)のときの前記差圧センサによる差圧データを、前記第2下流側開閉手段が開(第1下流側開閉手段が閉)のときの前記差圧センサによる差圧データに基づいて補正し、補正後の差圧データに基づいて前記漏れ判定を行うことを特徴とする。
【0009】
上流側開閉手段の許容によって加圧気体を被検室及び感温室に導入する。次いで、第1通路と第2通路を上流側開閉手段にて互いに遮断する。ひいては被検室及び第1通路を1つの閉鎖空間にする。感温室及び第2通路を他の1つの閉鎖空間にする。被検室は、周辺環境との温度差、断熱圧縮後の放熱等によって温度が変わる。被検室の温度変化は、感温部材の躯体内を経て感温室に伝達され、感温室の圧力変化になって現われる。上流側開閉手段による遮断の後、ある期間、第1下流側開閉手段を開にし、第2下流側開閉手段を閉にする。これにより、第2下流側開閉手段より上流側の第2通路が、感温室から遮断され、感温室の圧力変化の影響を受けなくなる。この第2下流側開閉手段より上流側の第2通路の内圧と被検室の内圧との差圧を差圧センサにて検出する。この差圧データは、被検室の圧力変化の情報すなわち被検室からの漏れ及び被検室の温度変化の情報を含み、感温室の圧力変化の情報を含まない。また、ある期間、第2下流側開閉手段を開にし、第1下流側開閉手段を閉にする。これにより、第1下流側開閉手段より上流側の第1通路が、被検室から遮断され、被検室の圧力変化の影響を受けなくなる。この第1下流側開閉手段より上流側の第1通路の内圧と感温室の内圧との差圧を差圧センサにて検出する。この差圧データは、感温室の温度変化ひいては被検室の温度変化の情報を含み、被検室からの漏れの情報を含まない。したがって、第1下流側開閉手段が開(第2下流側開閉手段が閉)のときの差圧データを、第2下流側開閉手段が開(第1下流側開閉手段が閉)のときの差圧データに基づいて補正することで、被検室の漏れのみに起因する差圧データを得ることができる。この補正後の差圧データに基づいて、被検室の漏れ判定を行なうことができる。このように、リークテスト装置は、被検室の内圧情報と感温室の内圧情報を時間的にずらして取得するものである。したがって、差圧センサが1つで済み、差圧検出路を簡素化でき、コストを低減できる。
【0010】
本発明方法は、内部空間を有する検査対象からの漏れを判定するリークテスト方法において、
内部に感温室を有する良熱伝導性の感温部材を、前記内部空間の内面との間に被検室を形成するように配置し、
前記被検室に連なる第1通路と前記感温室に連なる第2通路を互いに連通させた状態で、加圧気体を前記第1、第2通路を介して前記被検室及び感温室にそれぞれ導入した後、前記第1通路と第2通路を互いに遮断し、
次に、前記第2通路の被検圧部分より感温室側の部分を閉じ、差圧センサによって前記被検室と前記第2通路の前記被検圧部分との差圧を検出する第1差圧検出工程と、前記第1通路の被検圧部分より被検室側の部分を閉じ、前記差圧センサによって前記感温室と前記第1通路の前記被検圧部分との差圧を検出する第2差圧検出工程とを実行し、
前記第1差圧検出工程の差圧データを前記第2差圧検出工程の差圧データに基づいて補正し、補正後の差圧データに基づいて前記漏れ判定を行なうことを特徴とする。
【0011】
第1差圧検出工程の差圧データは被検室の内圧情報である。第2差圧検出工程の差圧データは感温室の内圧情報である。本発明方法は、被検室の内圧情報と感温室の内圧情報を時間的にずらして取得するものである。したがって、差圧センサが1つで済み、差圧検出路を簡素化でき、コストを低減できる。
先に第1差圧検出工程を行ない、次に第2差圧検出工程を行なってもよく、先に第2差圧検出工程を行ない、次に第1差圧検出工程を行なってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、差圧センサが1つで済み、差圧検出路を簡素化でき、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリークテスト装置の概略構成を示す回路図である。
【図2】上記リークテスト装置によるリークテスト手順の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に、リークテスト装置1の回路構成の概略を示す。リークテスト装置1の検査対象10は、例えば自動車エンジンのシリンダブロック等である。検査対象10は、内部空間11を有している。
【0015】
図1に示すように、リークテスト装置1は、加圧気体供給源としての圧縮エア源2と、差圧検出路3と、設置台4を備えている。圧縮エア源2は、数百kPaオーダーのエア圧を供給できるようになっている。検査対象10が、内部空間11の開口を下に向けて設置台4上に設置されている。内部空間11の開口が設置台4によって塞がれている。図示は省略するが、設置台4には、検査対象10の上記開口の周縁部と当該設置台4との間を気密にシールするOリング等のシール部材が設けられている。
【0016】
リークテスト装置1の差圧検出路3は、次のように構成されている。
圧縮エア源2から差圧検出路3の共通路30が延びている。共通路30には、レギュレータR30と共通開閉弁V30が上流側から順次設けられている。レギュレータR30によって共通路30の二次圧が調節される。共通開閉弁V30より下流の共通路30から排気路34が延びている。排気路34に排気用開閉弁V34が設けられている。排気路34の下流端は大気に開放されている。
【0017】
共通路30の下流端から第1通路31と第2通路32が分岐されている。第1通路31には、第1上流側開閉弁V31と第1下流側開閉弁V35が上流側から順次設けられている。第1上流側開閉弁V31は、特許請求の範囲の上流側開閉手段を構成する。第1下流側開閉弁V35は、特許請求の範囲の第1下流側開閉手段を構成する。第1通路31における開閉弁V31と開閉弁V35の間の部分は、第1被検圧部分35を構成する。
【0018】
第2通路32には、第2上流側開閉弁V32と第2下流側開閉弁V36が上流側から順次設けられている。第2上流側開閉弁V32は、特許請求の範囲の上流側開閉手段を構成する。第2下流側開閉弁V36は、特許請求の範囲の第2下流側開閉手段を構成する。第2通路32における開閉弁V32と開閉弁V36の間の部分は、第2被検圧部分36を構成する。
【0019】
第1通路31と第2通路32の間に差圧センサ33が設けられている。差圧センサ33は、第1室33aと第2室33bを含む。第1室33aが、第1センサ接続路31aを介して第1通路31の被検圧部分35に接続されている。第2室33bが、第2センサ接続路32aを介して第2通路32の被検圧部分36に接続されている。
【0020】
さらに、第1通路31の第1被検圧部分35に、第1マスタータンク37が接続されている。第1マスタータンク37の接続位置は、本実施形態では差圧センサ33より下流側の第1被検圧部分35であるが、差圧センサ33より上流側の第1被検圧部分35であってもよい。第1マスタータンク37を省略してもよい。
【0021】
同様に、第2通路32の第2被検圧部分36に、第2マスタータンク38が接続されている。第2マスタータンク38の接続位置は、本実施形態では差圧センサ33より下流側の第2被検圧部分36であるが、差圧センサ33より上流側の第2被検圧部分36であってもよい。第2マスタータンク38を省略してもよい。
【0022】
リークテスト装置1には、更に感温部材60が備えられている。感温部材60は、アルミニウム等の良熱伝導性の材料にて構成されている。感温部材60の外面には複数のフィン62が設けられている。感温部材60の内部には感温室61が形成されている。感温室61の内面には複数のフィン63が設けられている。
【0023】
感温部材60は、検査対象10の内部空間11より小さく、内部空間11に収容可能になっている。感温部材60を検査対象10の内部空間11に収容すると、検査対象10の内部空間11の内面と感温部材60の外面との間に被検室13が形成される。被検室13の下方への開口が設置台4により塞がれ、被検室13が密閉されている。
【0024】
被検室13に第1通路31の下流端が接続されている。
感温部材60の感温室61に第2通路32の下流端が接続されている。
【0025】
図示は省略するが、リークテスト装置1は、後記のリークテスト方法を実施するための制御手段を更に備えている。制御手段は、開閉弁V30,V31,V32,V34の駆動回路、信号変換回路を含む入出力部、制御プログラムを格納したROM、差圧センサ33の測定データ等を格納するRAM、検査対象10の漏れ判定(良否判定)を含む制御動作を行なうCPU等を有している。
【0026】
上記構成のリークテスト装置1を用いたリークテスト方法を図2のタイムチャートを参照して説明する。
(1)準備作業
漏れ検査すべき対象10に対する本検査に先立つ準備作業では、被検室13の圧変化と温度変化の相関関係を求める。
(1−1)設置工程
後の本検査において検査すべき対象10と同一構成の検査対象を用意する。漏れが無いことが判明している検査対象10を用いてもよく、漏れの有無が不明な検査対象10を用いてもよい。検査対象10と実質的に同構成の擬似ワークを作り、これを用いることにしてもよい。
以下、準備作業で用いる検査対象10には、適宜、符号に「X」を添え、本検査での検査対象10と区別することにする。
【0027】
図1に示すように、検査対象10Xを設置台4に設置する。検査対象10Xの内部11に感温部材60を収容し、密閉された被検室13を形成する。被検室13に第1通路31を接続し、感温室61に第2通路32を接続する。
【0028】
(1−2)圧力導入工程
排気用開閉弁V34を閉じ、開閉弁V30,V31,V32,V35,V36を開ける。そして、圧縮エア源2から差圧検出路3に数百kPaの圧縮エア(加圧気体)を導入する。圧縮エアは、第1通路31を経て、被検室13に導入されるとともに、第2通路32を経て、感温室61に導入される。これにより、図2に示すように、被検室13及び感温室61の内圧が高圧になる。更に、マスタータンク37,38にも圧縮エアが導入される。
【0029】
(1−3)遮断工程
次に、共通開閉弁V30を閉じる。続いて、第1、第2上流側開閉弁V31、V32を閉じる。これにより、第1通路31と第2通路32が互いに遮断され、各々独立した閉鎖空間になる。被検室13の内圧は、エア漏れ、周辺環境との温度差、断熱圧縮後の放熱等により経時的に変化する。第1通路31ひいては第1被検圧部分35の圧力は、被検室13と等圧であり、被検室13の内圧と同じ挙動を示す。被検室13の温度変化は、良熱伝導性の感温部材60の壁を伝って感温室61に及ぶ。これによって、感温室61の内圧が経時的に変化する。第2通路32ひいては第2被検圧部分36の圧力は、感温室61と等圧であり、感温室61の内圧と同じ挙動を示す。
【0030】
(1−4)第1差圧検出工程
平衡工程を経て、第2下流側開閉弁V36を閉じる。すなわち、第2通路32の被検圧部分36より感温室61側の部分を閉じる。これにより、第2被検圧部分36が感温室61から遮断される。したがって、図2において「感温室61の内圧」のチャートの二点鎖線に示すように、第2被検圧部分36の内圧が、感温室61の圧力変化ひいては被検室13の温度変化の影響を受けなくなる。以後、第2被検圧部分36の内圧は、開閉弁V36を閉じた時点tにおける大きさP36を維持する。第2マスタータンク38によって第2被検圧部分36の内圧P36を安定させることができる。第1下流側開閉弁V35は開状態を維持する。
【0031】
続いて、差圧センサ33の検出差圧を一定期間記録する。以下、この期間を第1差圧検出期間と称し、第1差圧検出期間に検出した差圧データを第1差圧データと称す。第1差圧データは、被検室13の圧力と第2被検圧部分36の圧力P36(一定値)との差を示す。
【0032】
(1−5)第2差圧検出工程
第1差圧検出期間を終えた後、第2下流側開閉弁V36を開ける。これにより、第2被検圧部分36が、感温室61と連通する。したがって、第2被検圧部分36の内圧が、感温室61の内圧と等しくなり、以後、感温室61の温度変化に応じて変動する。
【0033】
続いて、第1下流側開閉弁V35を閉じる。すなわち、第1通路31の被検圧部分35より被検室13側の部分を閉じる。これにより、第1被検圧部分35が被検室13から遮断される。したがって、図2において「被検室13の内圧」のチャートの二点鎖線に示すように、第1被検圧部分35の内圧が、被検室13の圧力変化の影響を受けなくなり、ひいては被検室13からのエア漏れや被検室13の温度変化の影響を受けなくなる。以後、第1被検圧部分35の内圧は、開閉弁V35を閉じた時点tにおける大きさP35を維持する。第1マスタータンク37によって第1被検圧部分35の内圧P35を安定させることができる。
【0034】
そして、差圧センサ33の検出差圧を一定期間記録する。以下、この期間を第2差圧検出期間と称し、第2差圧検出期間に検出した差圧データを第2差圧データと称す。第2差圧データは、第1被検圧部分35の圧力P35(一定値)と感温室61の圧力との差を示す。
【0035】
(1−6)相関関係取得工程
以後、圧縮エア源2からの導入圧力、検査対象10Xの初期温度、感温部材60の初期温度、環境温度等の条件を種々変更し、上記(1−1)〜(1−6)の操作を反復し、第1差圧データ及び第2差圧データを採取する。なお、検査対象10Xは、上記の条件変更に拘わらず同じものを用いることが好ましい。
【0036】
そして、採取条件ごとの第1差圧データと第2差圧データを見比べ、両者の相関関係を探す。
例えば、採取条件ごとに第1、第2差圧データの変化勾配(又は微分値)を算出する。そして、第1差圧データの変化勾配を縦軸yとし、第2差圧データの変化勾配を縦軸xとしたグラフ上に上記採取条件ごとの変化勾配算出値をプロットし、最小二乗法等による直線補間を行なう。これによって、第1差圧データと第2差圧データとの相関関係を表す一次式(1)を得ることができる。
y=a・x+b …(1)
式(1)において、a、bは、それぞれ定数である。
【0037】
或いは、特許文献1に記載されているように、指数関数を用いた近似式を立てて非線形フィッティングを行ない、上記近似式の係数を確定することにしてもよい。第1、第2差圧データの変化勾配に代えて、第1差圧検出期間中のある一定の時点における第1差圧データ及び第2差圧検出期間中のある一定の時点における第2差圧データを採取条件ごとにピックアップすることにしてもよい。そして、第1差圧データを縦軸yとし第2差圧データを縦軸xとしたグラフ(上掲特許文献2の図5参照)上に上記ピックアップデータをプロットし、最小二乗法等による直線補間を行なうことにしてもよい。この場合、上記式(1)と等価の相関関係式が得られる。
【0038】
上記の相関関係式(1)は、被検室13における温度変化と差圧変化の関係を示していると看做すことができる。また、相関関係式(1)の右辺第1項と第2項のうち、感温室61の内圧に関する第2差圧データを含むのは、第1項のみであり、第2項の定数bは、感温室61の差圧変化すなわち被検室13の温度変化とは無関係の量である。つまり、定数bは、被検室13の差圧変化量のうち温度変化に依存する分を除いたものに相当し、要するに被検室13からの漏れに起因する差圧変化成分を表している。したがって、被検室13の温度変化と、それのみに起因する差圧変化成分との相関関係は、次式(2)で表すことができる。
y=a・x …(2)
相関関係取得工程の後、検査対象10Xをリークテスト装置1から外す。
【0039】
(2)本検査
その後、実際に検査すべき対象10に対する本検査を行なう。本検査に先立ち、検査対象10を、例えば40℃程度の温洗浄水で洗浄する。これにより、検査対象10が例えば約40℃程度に加温される。そして、上記相関関係取得のための準備作業と略同じ工程を順次実行する。
【0040】
(2−1)設置工程
すなわち、検査対象10を設置台4に設置する。検査対象10の内部11に感温部材60を収容し、密閉された被検室13を形成する。被検室13に第1通路31を接続し、感温室61に第2通路32を接続する。
加温された検査対象10の熱が感温部材60に伝達し、感温部材60の温度が上昇する。検査対象10の温度は周辺環境との温度差による放熱によって低下する。
【0041】
(2−2)圧力導入工程
排気用開閉弁V34を閉じ、開閉弁V30,V31,V32,V35,V36を開ける。そして、圧縮エア源2から差圧検出路3に数百kPaの圧縮エア(加圧気体)を導入する。圧縮エアは、第1通路31を経て、被検室13に導入されるとともに、第2通路32を経て、感温室61に導入される。更に、マスタータンク37,38にも圧縮エアが導入される。
【0042】
(2−3)遮断工程
次に、共通開閉弁V30を閉じる。続いて、第1、第2上流側開閉弁V31、V32を閉じる。これにより、第1通路31と第2通路32が互いに遮断され、各々独立した閉鎖空間になる。被検室13の内圧は、エア漏れ、周辺環境との温度差、断熱圧縮後の放熱等により経時的に変化する。被検室13の温度変化は、良熱伝導性の感温部材60の壁を伝って感温室61に及ぶ。これによって、感温室61の内圧が経時的に変化する。
【0043】
(2−4)第1差圧検出工程
平衡工程を経て、第2下流側開閉弁V36を閉じる。これにより、第2被検圧部分36が感温室61から遮断される。したがって、第2被検圧部分36の内圧が、感温室61の圧力変化ひいては被検室13の温度変化の影響を受けなくなり、開閉弁V36を閉じた時点tにおける大きさP36を維持する。第2マスタータンク38によって第2被検圧部分36の内圧P36を安定させることができる。第1下流側開閉弁V35は開状態を維持する。続いて、差圧センサ33によって第1差圧検出期間における第1差圧データD、すなわち被検室13の圧力と第2被検圧部分36の圧力P36(一定値)との差を採取する。
【0044】
(2−5)第2差圧検出工程
次に、第2下流側開閉弁V36を開ける。これにより、第2被検圧部分36が、感温室61と連通する。したがって、第2被検圧部分36の内圧が、感温室61の内圧と等しくなり、感温室61の温度変化に応じて変動する。
【0045】
続いて、第1下流側開閉弁V35を閉じる。これにより、第1被検圧部分35が被検室13から遮断される。したがって、第1被検圧部分35の内圧が、被検室13の圧力変化の影響を受けなくなり、ひいては被検室13からのエア漏れや被検室13の温度変化の影響を受けなくなる。以後、第1被検圧部分35の内圧は、開閉弁V35を閉じた時点tにおける大きさP35を維持する。第1マスタータンク37によって第1被検圧部分35の内圧P35を安定させることができる。そして、差圧センサ33によって、第2差圧検出期間における第2差圧データD、すなわち第1被検圧部分35の圧力P35(一定値)と感温室61の圧力との差を採取する。
【0046】
(2−6)補正工程
次いで、第1差圧データDを第2差圧データD及び上記相関関係式(2)に基づいて補正する。具体的には、第1差圧データDの勾配ΔDを算出するとともに、第2差圧データDの勾配ΔDを算出する。そして、第2差圧データDの算出勾配ΔDを式(2)の右辺の変数xに代入し、被検室13の温度変化に起因する差圧変化量a・ΔDを求める。この差圧変化量a・ΔDを、被検室13の実際の内圧変化を示す第1差圧データDの算出勾配ΔDから差し引く。すなわち、下式の演算を行なう。
ΔDLEAK=ΔD−a・ΔD …(3)
これによって、被検室13の差圧変化のうちエア漏れだけに起因する差圧変化量ΔDLEAKを得ることができる。
【0047】
(2−7)漏れ判定工程
上記の差圧変化量ΔDLEAK(補正後の第1差圧データ)に基づいて、検査対象10の漏れ判定ひいては良否判定を行なう。すなわち、差圧変化量ΔDLEAKが許容限度以下であれば、検査対象10を良品と判定する。差圧変化量ΔDLEAKが許容限度を上回っていれば、検査対象10を不良品と判定する。
【0048】
この判定方法によれば、温度変化に起因する差圧変化分が取り除かれているので、判定の正確度を向上させることができる。
被検室13の温度変化を圧力換算で測定するものであるため、温度変化が微小であっても確実に感知できる。例えば、初期圧力を500kPa、初期温度を25℃とし、この温度が、+0.1℃だけ変化したものとすると、圧変化量は、ボイルシャルルの法則により167.8Paとなる。よって、微小な温度変化に対して大きな圧変化を得ることができる。これによって、温度測定を極めて高感度に行なうことができる。
感温部材60の体積の分だけ検査対象10の被検室13の容積を内部空間11の容積より小さくできる。したがって、被検室13からの漏れ流量に対する該被検室14の圧力変化の度合いを大きくでき、漏れ感度を高めることができる。
第1差圧検出工程では、第2被検圧部分36が、差圧センサ33の基準圧を与える基準タンクの役目を果たす。第2差圧検出工程では、第1被検圧部分35が、差圧センサ33の基準圧を与える基準タンクの役目を果たす。リークテスト装置1は、被検室13の内圧情報と感温室51の内圧情報が時間的にずらして取得するものであり、差圧センサ33は1つだけあればよく、差圧検出路3を簡素化でき、製品コストを低廉化できる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をなすことができる。
例えば、実施形態では、第1差圧検出工程を実行した後、第2差圧検出工程を実行しているが、第2差圧検出工程を実行した後、第1差圧検出工程を実行することにしてもよい。
感温部材60は、検査対象10の内部空間11の内面との間に被検室13を形成するように配置されればよく、検査対象10の内部空間11に収容されるのに限られず、検査対象10の外面に宛がわれ、該外面への内部空間11の開口を塞ぐように配置されるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 リークテスト装置
10 検査対象
10X 相関関係取得用検査対象
11 内部空間
13 被検室
2 圧縮エア源(加圧気体供給源)
3 差圧検出路
30 共通路
31 第1通路
31a 第1センサ接続路
32 第2通路
32a 第2センサ接続路
33 差圧センサ
33a 第1室
33b 第2室
34 排気路
35 第1通路の被検圧部分
36 第2通路の被検圧部分
37 第1マスタータンク
38 第2マスタータンク
60 感温部材
61 感温室
62,63 フィン
第1差圧データ(第1検出工程の差圧データ)
第2差圧データ(第2検出工程の差圧データ)
30 レギュレータ
30 共通開閉弁
31 第1上流側開閉弁(上流側開閉手段)
32 第2上流側開閉弁(上流側開閉手段)
34 排気用開閉弁
35 第1下流側開閉弁(第1下流側開閉手段)
36 第2下流側開閉弁(第2下流側開閉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する検査対象からの漏れを判定するリークテスト装置において、
(イ) 内部に感温室を有し、外面が前記内部空間の内面との間に被検室を形成するよう配置された良熱伝導材料からなる感温部材と、
(ロ) 前記被検室に連なり、加圧気体を前記被検室に導入する第1通路と、前記感温室に連なり、加圧気体を前記感温室に導入する第2通路とを有する差圧検出路と、
(ハ) 前記第1通路と第2通路の間に設けられ、これら通路の差圧を検出する差圧センサと、
(ニ) 前記差圧センサより上流側において前記第1、第2通路を連通して前記加圧気体の導入を許容した後、第1、第2通路を遮断する上流側開閉手段と、
(ホ) 前記差圧センサより下流側の第1通路に設けられ、前記遮断前は開き、前記遮断後は開から閉へ、又は閉から開へ動作する第1下流側開閉手段と、
(ヘ) 前記差圧センサより下流側の第2通路に設けられ、前記遮断前は開き、前記遮断後は第1下流側開閉手段が開のとき閉じ、前記第1下流側開閉手段が閉のとき開く第2下流側開閉手段と、
を備え、前記遮断後において、前記第1下流側開閉手段が開のときの前記差圧センサによる差圧データを、前記第2下流側開閉手段が開のときの前記差圧センサによる差圧データに基づいて補正し、補正後の差圧データに基づいて前記漏れ判定を行うことを特徴とするリークテスト装置。
【請求項2】
内部空間を有する検査対象からの漏れを判定するリークテスト方法において、
内部に感温室を有する良熱伝導性の感温部材を、前記内部空間の内面との間に被検室を形成するように配置し、
前記被検室に連なる第1通路と前記感温室に連なる第2通路を互いに連通させた状態で、加圧気体を前記第1、第2通路を介して前記被検室及び感温室にそれぞれ導入した後、前記第1通路と第2通路を互いに遮断し、
次に、前記第2通路の被検圧部分より感温室側の部分を閉じ、差圧センサによって前記被検室と前記第2通路の前記被検圧部分との差圧を検出する第1差圧検出工程と、前記第1通路の被検圧部分より被検室側の部分を閉じ、前記差圧センサによって前記感温室と前記第1通路の前記被検圧部分との差圧を検出する第2差圧検出工程とを実行し、
前記第1差圧検出工程の差圧データを前記第2差圧検出工程の差圧データに基づいて補正し、補正後の差圧データに基づいて前記漏れ判定を行なうことを特徴とするリークテスト方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−266283(P2010−266283A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116671(P2009−116671)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(390019035)株式会社フクダ (23)
【Fターム(参考)】