説明

リークディテクタ

【課題】ガスセンサの性能を良好に維持でき、測定精度を向上できるリークディテクタを提供すること。
【解決手段】測定対象物にトレーサガスを加圧封入し、測定対象物から漏れたトレーサガスを検知するリークディテクタ1において、測定対象物から漏れたトレーサガスを蓄積するチャンバ2と、チャンバ2内部に連通する第1流路A内に配設され、トレーサガスを検知する第2,第3水素センサ16,17と、第1流路Aを介して、チャンバ2内部の空気を吸引する吸引ポンプ7と、チャンバ2内部に連通する第2流路Bを介して、チャンバ2内部に外部空気を供給する供給ポンプ6と、第1流路Aまたは第2流路Bに切り換える第1切換バルブ13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リークディテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管等にトレーサガスを加圧封入して、この配管等の溶接部や繋ぎ目等からトレーサガスが漏れているか否か(リークの有無)をセンサで検知するリークディテクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このリークディテクタの測定法の一つであるチャンバ法(別名:グロスリークチェック法)は、トレーサガスを検知するガスセンサと、測定対象物を密閉する閉鎖室とで概略構成される。そして、リークディテクタは、閉鎖室内に測定対象物から漏れたトレーサガスを蓄積し、ガスセンサで検知する。
【0003】
【特許文献1】特開2005−164525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のリークディテクタでは、測定対象物のリークの有無を検知した(以下、測定と記載)後、閉鎖室内に残留したトレーサガス(以下、残留ガスと記載)を積極的に除去していない。このため、測定時において、前回の測定時における閉鎖室内の残留ガスをガスセンサが検知するおそれがあり、測定精度が不安定なものとなってしまう、という問題がある。
また、一般的な半導体センサでは、残留ガスの濃度が高い場合には、測定開始時において、濃度の高い残留ガスにガスセンサが晒されることで、センサ出力が飽和してしまい、測定精度が低下してしまう傾向にある。このようにガスセンサの測定精度が低下した場合には、ガスセンサの測定精度が復帰するまでに所定の時間を要することとなる。
また、更に濃度の高い残留ガスにセンサが晒された場合には、ガスセンサの性能の劣化や、最悪の場合には復帰不能となってしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ガスセンサの性能を良好に維持できるとともに、測定精度を向上できるリークディテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリークディテクタは、測定対象物にトレーサガスを加圧封入し、前記測定対象物から漏れたトレーサガスを検知するリークディテクタであって、前記測定対象物を覆い、前記測定対象物から漏れたトレーサガスを蓄積するチャンバと、前記チャンバ内部に連通する第1流路内に配設され、トレーサガスを検知するガスセンサと、前記第1流路を介して、前記チャンバ内部の空気を吸引する吸引ポンプと、前記チャンバ内部に連通する第2流路を介して、前記チャンバ内部に外部空気を供給する供給ポンプと、前記第1流路または前記第2流路に切り換える第1の切換バルブとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、吸引ポンプにてチャンバ内部の空気を吸引するための第1流路と、供給ポンプにてチャンバ内部に外部空気を供給するための第2流路とを第1の切換バルブで切り換えることができる。このことにより、例えば、測定開始前においては、第1の切換バルブにより第2流路に切り換えることで、供給ポンプから第2流路を介してチャンバ内部に外部空気を供給させ、チャンバ内部の残留ガスを除去し、チャンバ内部をリフレッシュできる。また、測定開始後、第1の切換バルブにより第1流路に切り換えることで、吸引ポンプにより第1流路を介してチャンバ内部の空気を吸引させ、第1流路内に配設されたガスセンサにてトレーサガスを検知させることができる。
【0008】
従って、チャンバ内部の残留ガスを除去してから測定するので、前回の測定時における残留ガスをガスセンサが検知することがなく、測定精度を向上できる。
また、残留ガスの濃度が高い場合であっても、チャンバ内部の残留ガスを除去してから測定するので、測定開始時において、濃度の高い残留ガスにガスセンサが晒されることがなく、ガスセンサの性能を良好に維持できる。
さらに、測定開始前において、供給ポンプ周辺(測定環境)の外部空気をチャンバ内部に供給するため、測定時において、ガスセンサがトレーサガスを検知する際のバックグラウンドを実際の測定環境の外部空気のレベルとすることができ、測定精度をより向上できる。
さらに、供給ポンプにより外部空気を供給することで、積極的にチャンバ内部の残留ガスを除去するので、チャンバ内部の残留ガスが完全に無くなるまで待つ必要がなく、次の測定を開始できるため、測定開始までの待ち時間を短縮できる。
【0009】
本発明のリークディテクタにおいて、前記ガスセンサは、筐体内部に配設されてセンサユニットとして構成され、前記第2流路の一部は、前記筐体内部に配設され、前記第2流路に沿って流通する外部空気の一部を前記筐体内部に排出する分岐流路を有し、前記第1流路の一部は、前記筐体内部に配設され、前記チャンバ内部の空気を前記ガスセンサに向けて流通させるチャンバ側流路と、前記筐体内部の前記外部空気を前記ガスセンサに向けて流通させる筐体側流路とを有し、前記センサユニットは、前記チャンバ側流路または前記筐体側流路に切り換える第2の切換バルブを備えることが好ましい。
【0010】
この発明によれば、第2流路から分岐する分岐流路を有することで、供給ポンプから第2流路に流通する外部空気の一部を筐体内部に排出できる。また、第1流路の一部は、チャンバ内部の空気をガスセンサに向けて流通させるチャンバ側流路、および筐体内部の外部空気をガスセンサに向けて流通させる筐体側流路を備え、第2の切換バルブがこれらの流路を切り換えることができる。このことにより、例えば、チャンバ内部のリフレッシュを行っている際に、第2の切換バルブにて筐体側流路に切り換えれば、分岐流路から筐体内部に排出された外部空気を筐体側流路からガスセンサに向けて取り込むことができる。すなわち、チャンバ内部のみならず、第1流路におけるガスセンサが配設される空間をも同時にリフレッシュすることができ、上述したガスセンサの性能を良好に維持できるとともに、測定精度を向上できるという効果をさらに好適に図れる。
【0011】
本発明のリークディテクタにおいて、前記センサユニットは、複数の前記ガスセンサ、および前記複数のガスセンサに応じた複数の前記第2の切換バルブを備えることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、複数のガスセンサ、および各ガスセンサに応じた複数の第2の切換バルブを備えるので、一方のガスセンサに対応する第2の切換バルブにてチャンバ側流路から筐体側流路に切り換えて、筐体側流路を介して筐体内部の外部空気を前記一方のガスセンサに向けて取り込んで、前記一方のガスセンサを待機状態とする。これと同時に、他方のガスセンサに対応する第2の切換バルブを筐体側流路からチャンバ側流路に切り換えて、チャンバ側流路を介してトレーサガスを前記他方のガスセンサに向けて取り込んで、前記他方のガスセンサを測定可能な状態とする。従って、測定時において、一方のガスセンサがガス濃度の高いトレーサガスに晒された場合には、第2の切換バルブが他方のガスセンサに切り換えるため、一方のガスセンサの復帰時間を待つことなく、他方のガスセンサにて測定を開始でき、測定開始までの待ち時間を短縮できる。
【0013】
本発明のリークディテクタにおいて、前記ガスセンサおよび前記第1の切換バルブを保持するブロック状の保持部材を備え、前記第1の切換バルブは、空気を流入出する第1から第3流入出ポートを有し、前記第1流入出ポートおよび前記第2流入出ポート間の接続、または前記第2流入出ポートおよび前記第3流入出ポート間の接続に切り換えることで、前記第1流路または前記第2流路に切り換え、前記保持部材は、前記ガスセンサを内部に収納する収納部を有するとともに、外面にて前記第1の切換バルブを保持し、前記保持部材には、前記第1流路の一部を構成し、前記第1流入出ポートに接続するとともに前記収納部内部に連通して前記第1の切換バルブを介した前記チャンバ内部の空気を前記収納部内部に向けて流通させる第1連通孔と、前記第1流路および前記第2流路の一部を構成し、前記第2流入出ポートに接続して前記チャンバ内部の空気を前記第1の切換バルブに向けて流通、または、前記第1の切換バルブを介した前記外部空気を前記チャンバ内部に向けて流通させる第2連通孔と、前記第2流路の一部を構成し、前記第3流入出ポートに接続して前記供給ポンプからの前記外部空気を前記第1の切換バルブへ流通させる第3連通孔とが形成されていることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、保持部材の内部に第1〜第3連通孔が形成されているので、供給ポンプからの第3連通孔を流通した外部空気は、第3流入出ポートを介して第1の切換バルブに流入する。そして、第1の切換バルブが、第2流入出ポートおよび第3流入出ポート間の接続に切り換えることで、前記外部空気は、第2流入出ポートから第2連通孔に流通し、チャンバ内部へ供給されることとなる。また、第1の切換バルブが、第1流入出ポートおよび第2流入出ポート間の接続に切り換えることで、チャンバ内部の空気は、第2連通孔を流通して、第2流入出ポートを介して、第1の切換バルブに流入し、第1流入出ポートから第1連通孔を通って、収納部内部に吸引される。
従って、これらの構成をブロック状の保持部材に集約したことで、チューブ等を引き回して流路を確保する必要が無いので、第1流路および第2流路を短くすることができ、流路内の残留ガスを大幅に減少することができ、測定精度をより一層向上できる。
【0015】
本発明のリークディテクタにおいて、前記第1流路内には、前記ガスセンサの流路前段側に、前記トレーサガスを検知する補助ガスセンサが設けられていることが好ましい。
この発明によれば、補助ガスセンサをガスセンサの前段に設けることで、事前に補助ガスセンサが高濃度ガスであるかを検知できる。そして、高濃度ガスを事前に検知した場合には、例えば、第1の切換バルブまたは第2の切換バルブを切り換えることで、ガスセンサへ高濃度ガスを流通させることを確実に防止する。従って、ガスセンサが高濃度のトレーサガスに晒されることを防止でき、ガスセンサの性能の劣化や、復帰不能を確実に防止できる。
【0016】
本発明のリークディテクタにおいて、前記チャンバは、前記測定対象物の一部を覆うように形成され、前記チャンバ、前記ガスセンサ、および前記第1の切換バルブは、検出ユニットとしてユニット化され、前記検出ユニットは、複数、設けられていることが好ましい。
この発明によれば、チャンバ、ガスセンサ、および第1の切換バルブで構成される検出ユニットを複数備えているので、複数の検出ユニットを用いて、測定対象物における複数位置のリークの有無を並行して同時に検知できる。
【0017】
本発明のリークディテクタにおいて、前記吸引ポンプは、単体で構成され、前記複数の検出ユニット毎の各前記第1流路を介して、各前記チャンバ内部の空気を一括して吸引し、前記供給ポンプは、単体で構成され、前記複数の検出ユニット毎の各前記第2流路を介して、前記各チャンバ内部に外部空気を一括して供給することが好ましい。
この発明によれば、供給ポンプおよび吸引ポンプをそれぞれ単体で構成できるので、検出ユニットを複数設けた場合であっても、リークディテクタが大型化することがない。
【0018】
本発明のリークディテクタにおいて、前記供給ポンプは、前記複数の検出ユニット毎にそれぞれ設けられていることが好ましい。
この発明によれば、供給ポンプが検出ユニット毎に設けられているので、測定対象物における複数の各測定位置近傍に供給ポンプをそれぞれ配設すれば、各供給ポンプ周辺の外部空気と、各測定位置における実際の測定環境の外部空気とを略同一の空気とすることができる。
従って、実際の測定環境の外部空気と略同一の空気を各チャンバ内部等に供給でき、ガスセンサがトレーサガスを検知する際のバックグラウンドを実施の測定環境により近い外部空気のレベルとすることができ、測定精度をより一層向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔リークディテクタの概略構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るリークディテクタ1を示す概略図である。
リークディテクタ1は、トレーサガス漏れの有無(リークの有無)を検知する測定対象物にトレーサガスを加圧封入し、この測定対象物からトレーサガスの漏れを検知する試験装置である。本実施形態でのトレーサガスには、水素5%と窒素95%との混合ガスである希薄水素が使用される。
このリークディテクタ1は、図1に示すように、チャンバ2と、装置本体3と、センサユニット4とで構成される。
【0020】
チャンバ2は、測定対象物を覆うように測定対象物の上方側に設置され、測定対象物から漏れたトレーサガスを蓄積して、高濃度化する容器である。本実施形態では、チャンバ2は、例えば、椀型に形成されている。
なお、チャンバ2としては、椀型の形状に限らず、測定対象物を内部に収納する容器と、容器の開口部分を閉塞する蓋体とで構成した略密閉構造のチャンバを採用しても構わない。チャンバ2は、チャンバ2内部に連通するチューブ5を介してセンサユニット4に接続される。
【0021】
〔装置本体の構成〕
装置本体3は、図1に示すように、供給ポンプ6と、吸引ポンプ7と、制御部8とを備える。この他に、具体的な図示は省略したが、装置本体3には、リークディテクタ1を稼働させる電源スイッチや、漏れ試験を開始する測定開始ボタン等が配置される。
供給ポンプ6は、供給流路21およびチューブ5を介して、外部空気(以下、フレッシュエア)をチャンバ2内部やセンサユニット4の筐体41内部に供給するものである。
供給流路21は、内部に後述する補助センサとしての第1水素センサ12が配設されチューブ5と後述する保持部材9とを接続する前段流路22と、保持部材9内部に形成される流路と、保持部材9と供給ポンプ6とを接続する第2後段流路23とで構成される。また、第2後段流路23は、センサユニット4の筐体41内で分岐する分岐流路19を有している。
【0022】
吸引ポンプ7は、チューブ5および吸引流路20を介して、チャンバ2内部に蓄積された空気を吸引するものである。
吸引流路20は、前記前段流路22と、保持部材9内部に形成される流路と、吸引ポンプ7とセンサユニット4とを接続する第1後段流路24と、第1後段流路24から分岐して保持部材9に接続される第1分岐流路25および第2分岐流路26とで構成される。
そして、上述した供給流路21およびチューブ5が、本発明の第2流路Bに相当し、吸引流路20およびチューブ5が、本発明の第1流路Aに相当する。
本実施形態では、上述した前段流路22およびチューブ5は、第1流路A、および第2流路Bの双方の流路の一部を構成している。
制御部8は、センサユニット4との間で信号を出入力するものであり、構成の詳細は後述する。
【0023】
〔センサユニットの構成〕
センサユニット4は、図1に示すように、筐体41内に、保持部材9と、流量制御弁10A,10Bと、流量計11A,11Bと、第1水素センサ12とを備える。
保持部材9は、第1の切換バルブとしての第1切換バルブ13と、第2の切換バルブとしての第2切換バルブ14および第3切換バルブ15と、ガスセンサとしての第2水素センサ16と、およびガスセンサとしての第3水素センサ17とを保持する。そして、保持部材9には、上述したように供給流路21および吸引流路20の一部が形成され、保持部材9は、保持した各切換バルブ13〜15、および第2,第3水素センサ16,17に空気を流通させる。
ここで、本実施形態で用いられる第1切換バルブ13〜第3切換バルブ15は、マイクロバルブであり、例えば、3方弁式のデジタル・ソレノイド・バルブである。本実施形態では、X−VALVE(Parker Hannifin社製)が使用されている。
なお、保持部材9の内部構造の詳細は後述する。
【0024】
流量制御弁10A,10Bは、ニードルバルブであり、それぞれ第1分岐流路25、および第2分岐流路26に配設される。流量制御弁10A,10Bは、制御部8が出力する流量信号Q,Qにより、流量制御弁10A,10Bを通過するガス流量が一定となるように制御される。
【0025】
流量計11A,11Bは、第1分岐流路25、および第2分岐流路26の途中にそれぞれ配設され、流量制御弁10A,10Bの後段側(吸引ポンプ7側)に位置する。流量計11A,11Bは、流量を測定し、制御部8に測定した流量に応じた信号F,Fを出力する。
第1水素センサ12は、後述する第2,第3水素センサ16,17とは異なるセンサであり、例えば、接触型半導体センサである。この接触型半導体センサは、高感度、高反応速度、高濃度ガス(水素濃度が高い)に耐えうる機能を有している。そして、第1水素センサ12は、チャンバ2内部から吸引した水素の濃度を測定し、測定信号を制御部8に出力する。
【0026】
第1切換バルブ13、第2切換バルブ14、および第3切換バルブ15は、三方式切換弁である。
第1切換バルブ13は、前段流路22、吸引流路20、および供給流路21にそれぞれ接続され、制御部8からの切換信号に応じて、吸引流路20または供給流路21を選択して、吸引流路20または供給流路21を前段流路22に連通させる。より具体的には、第1切換バルブ13は、第1流入出ポート131〜第3流入出ポート133(図4〜図6の二点鎖線)を有し、切換信号に応じて第2流入出ポート132、第3流入出ポート133間の接続(以下、NO(Normal Open)側と記載)、または第1流入出ポート131、第2流入出ポート132間の接続(以下、NC(Normal Close)側と記載)に切り換わる。
【0027】
第2,第3切換バルブ14,15は、吸引流路20の途中に配設され、第1切換バルブ13の後段側(吸引ポンプ7側)に配置される。
第2,第3切換バルブ14,15は、第1切換バルブ13と同様に、第1流入出ポート141,151〜第3流入出ポート143,153(図4〜図6の二点鎖線)を有し、切換信号に応じて、NC側に切り換わると、第1流入出ポート141,151および第2流入出ポート142,152間が接続、またはNO側に切り換わると、第2流入出ポート142,152および第3流入出ポート143,153間が接続する。
【0028】
第2水素センサ16および第3水素センサ17は、酸化スズ半導体ガスセンサであり、吸引流路20の途中に配設され、第2,第3切換バルブ14,15の後段側(吸引ポンプ7側)に位置する。第2水素センサ16および第3水素センサ17は、チャンバ2内部から吸引した水素の濃度を測定し、測定信号を制御部8へ出力する。また、第2水素センサ16および第3水素センサ17のいずれか一方は、待機状態となるように、第2切換バルブ14または第3切換バルブ15を切り換えて設定される。
【0029】
〔制御部の構成〕
図2は、装置本体3の制御部8のブロック図である。
制御部8は、図2に示すように、記憶部81、水素濃度算出部82、比較部83、流路切換制御部84、および流量制御部85を備える。
記憶部81は、チャンバ2内部の水素が高濃度であるか否かを判断する第1閾値、中濃度であるか否かを判断する第2閾値、およびリーク有無を判断するガス濃度の基準値を記憶している。第1閾値がこれらの数値の中で最大で、次に第2閾値、基準値の順に設定されている。
水素濃度算出部82は、第1水素センサ12、第2水素センサ16、および第3水素センサ17から測定信号S,S,Sが入力され、ガス濃度を算出する。
比較部83は、水素濃度算出部82で算出されたガス濃度と記憶部81に記憶された基準値等と比較して、リークの有無を判断したり、高濃度ガスであるか否か、または中濃度ガスであるか否かを判断する。
【0030】
流路切換制御部84は、電源ボタンからの電源信号、測定開始ボタンからの開始信号、または比較部83の判断結果に応じて、各切換バルブ13〜15をNO側またはNC側に切り換える切換信号V,V,Vを各切換バルブ13〜15に出力する。また、測定開始ボタンからの開始信号が入力後、一定時間経過した場合には、第2または第3切換バルブ14,15に切換信号V,Vを出力する。
流量制御部85は、流量計11A,11Bから出力される信号F,Fに応じて、流量制御弁10A,10Bを通過するガス流量を一定でかつ共に等しくなるように、流量信号Q,Qを流量制御弁10A,10Bに出力する。
【0031】
〔保持部材の内部構造〕
図3は、保持部材9の斜視図、図4は、図3でのIV−IV線断面図、図5は、図3でのV−V線断面図、図6は、図3でのVI−VI線断面図、図7は、保持部材9の底面図である。なお、以下で記載する「上」、「下」、「左」、「右」は、図3における図面視において、上下左右に相当するものである。また、以下で記載する「前面」、「背面」も、図3における前面側、背面側に相当するものである。
【0032】
保持部材9は、図3に示すようにブロック状に形成され、図4〜図6に示すように側面視断面L字状に形成されている。
なお、以下では、説明の便宜上、保持部材9の各外面を、図3に示すように、第1前面部9A、第2前面部9B、右側面部9C、左側面部9D、下面部9E、背面部9F、第1上面部9G、および第2上面部9Hとする。
【0033】
第1前面部9Aには、後述する収納部98A,98Bに連通する吸引孔91A,91Bが形成されている。そして、吸引孔91A,91Bには、第1分岐流路25、第2分岐流路26がそれぞれ接続される。
右側面部9Cには、本発明の第1流路Aの一部を構成する側面側連通孔92が形成されている。この側面側連通孔92は、図7に示すように、右側面部9Cに対して略直交して延出する。そして、側面側連通孔92の一端(右側面部9C側)は、皿ねじ(図示略)で封止される。
【0034】
下面部9Eには、各切換バルブ13〜15を保持する部分である。この下面部9Eには、図7に示すように、背面側連通孔93A〜93C、センサ側連通孔94A,94B、L字状連通孔95、前面側連通孔96A〜96Cが形成されている。
背面側連通孔93A〜93Cは、図4〜図7に示すように、側面側連通孔92と連通する。
センサ側連通孔94A,94Bは、本発明の第1流路Aの一部を構成し、収納部98A,98Bと連通する。
また、L字状連通孔95は、図6に示すように、本発明の第1流路Aおよび第2流路Bの一部を構成し、背面部9Fと連通する。そして、L字状連通孔95には、前段流路22が接続される。
前面側連通孔96A〜96Cは、図4〜図6に示すように、本発明の第2流路Bの一部を構成し、第2上面部9Hと連通する。
ここで、側面側連通孔92およびセンサ側連通孔94A,94Bが、本発明に係る第1連通孔に相当し、L字状連通孔95が、本発明に係る第2連通孔に相当する。また、前面側連通孔96A〜96Cが、本発明に係る第3連通孔に相当する。
【0035】
背面側連通孔93A、L字状連通孔95、および前面側連通孔96Aには、第1切換バルブ13(図4〜図6での2点鎖線)の各流入出ポート131〜133が装着される。
また、背面側連通孔93B、センサ側連通孔94A、および前面側連通孔96Bには、第2切換バルブ14(図4〜図6での2点鎖線)の各流入出ポート141〜143が装着される。
背面側連通孔93C、センサ側連通孔94B、および前面側連通孔96Cには、第3切換バルブ15(図4〜図6での2点鎖線)の各流入出ポート151〜153が装着される。
すなわち、各切換バルブ13〜15の第1流入出ポート131,141,151は、図4〜図6に示すように、側面側連通孔92と連通する。
【0036】
第1上面部9Gには、第2、第3水素センサ16,17を収納する収納部98A,98Bが形成されている。この収納部98A,98Bは、図3〜図6に示すように円柱状に形成されている。
すなわち、第2,第3切換バルブ14,15の第2流入出ポート142,152は、センサ側連通孔94A,94Bを介して各収納部98A,98Bと連通する。
【0037】
例えば、第1切換バルブ13がNC側に切り換わり、かつ、第2,第3切換バルブ14,15がNC側に切り換わった場合には、図4〜図6に示す吸引ポンプ7が、チャンバ2内部の空気を吸引する流路C(破線矢印)が構成される。流路Cは、流路C1〜C3を有する。
流路C1は、図6に示すように、前段流路22を辿った空気を、L字状連通孔95〜第1切換バルブ13(第2流入出ポート132〜第1流入出ポート131)〜背面側連通孔93A〜側面側連通孔92を辿って流通させる流路である。
流路C2,C3は、図4,5に示すように、流路C1を辿った空気を、背面側連通孔93B,93C〜第2,3切換バルブ14,15(第1流入出ポート141,151〜第2流入出ポート142,152)〜センサ側連通孔94A,94B〜収納部98A,98B(第2水素センサ16、第3水素センサ17)〜吸引孔91A,91Bを辿って、第1分岐流路25、第2分岐流路26に流通させる流路である。
ここで、チューブ5、前段流路22、流路C1、および背面側連通孔93B,93Cが、本発明に係るチャンバ側流路に相当する。
なお、図1では、説明の便宜上、第2,第3切換バルブ14,15がNC側に切り換わった状態をチャンバ側流路14A,15Aとして図示している。
【0038】
第2上面部9Hには、下面部9Eと連通する前面側連通孔96A〜96Cが形成され、この前面側連通孔96A〜96Cには、管部材18A〜18Cが嵌合している。
すなわち、各切換バルブ13〜15の第3流入出ポート133,143,153は、前面側連通孔96A〜96Cに連通する。
管部材18Bには、供給ポンプ6と連通する第2後段流路23が接続される。
管部材18A,18Cには、特段、何も接続されない。すなわち、各切換バルブ14,15の第3流入出ポート143,153は、筐体41内部に連通する。
【0039】
例えば、各切換バルブ14,15がNO側に切り換わった場合には、図4、図5に示す吸引ポンプ7が、筐体41内部のフレッシュエアを収納部98A,98Bへ供給する流路D(破線矢印)が構成される。
流路Dは、図4,5に示すように、筐体41内部の空気を、管部材18A,18C〜前面側連通孔96B,96C〜第2,3切換バルブ14,15(第3流入出ポート143,153〜第2流入出ポート142,152)〜センサ側連通孔94A,94B〜収納部98A,98B(第2水素センサ16、第3水素センサ17)〜吸引孔91A,91Bを辿って、第1分岐流路25、第2分岐流路26に流通させる流路である。
ここで、管部材18A,18Cおよび前面側連通孔96B,96Cが、本発明に係る筐体側流路に相当する。
なお、図1では、説明の便宜上、第2,第3切換バルブ14,15がNO側に切り換わった状態を筐体側流路14B,15Bとして図示している。
【0040】
また、第1切換バルブ13がNO側に切り換わった場合には、図6に示す供給ポンプ6が、フレッシュエアをチャンバ2内部へ供給する流路E(破線矢印)が構成される。
流路Eは、図6に示すように、第2後段流路23を辿ったフレッシュエアを、管部材18B〜前面側連通孔96A〜第1切換バルブ13(第3流入出ポート133〜第2流入出ポート132)〜L字状連通孔95を辿って、前段流路22に流通させる流路である。
【0041】
図8、図9は、リークディテクタ1の動作を示すフローチャートである。
図8および図9を参照して、上述したリークディテクタ1の動作を説明する。
先ず、測定対象物の測定位置にチャンバ2が設置され、装置本体3の電源スイッチがONされると、リークディテクタ1は以下に示すように、動作する。
すなわち、電源スイッチからの電源信号が制御部8の流路切換制御部84に出力され、流路切換制御部84は、切換信号V,V,Vを各切換バルブ13〜15に出力し、各切換バルブ13〜15をNO側に切り換える(ステップS1)。
【0042】
また、電源スイッチのONにより、供給ポンプ6および吸引ポンプ7が駆動する。
供給ポンプ6からのフレッシュエアは、供給流路21に沿って流通し、第2後段流路23を介して、流路Eに流通して、前段流路22およびチューブ5を介して、チャンバ2内部に供給される。これにより、フレッシュエアがチャンバ2内部の残留ガスを除去し、チャンバ2内部をリフレッシュする。
【0043】
第2後段流路23を流通するフレッシュエアの一部は、分岐流路19からセンサユニット4の筐体41内部に供給される。このフレッシュエアは、吸引ポンプ7の駆動により、流路Dに流通して、収納部98A,98Bに供給される。これにより、筐体側流路14B,15B、センサ側連通孔94A,94B、および収納部98A,98Bの残留ガスが除去される。
【0044】
次に、測定対象物にトレーサガスが加圧封入され、制御部8は、装置本体3の測定開始ボタンがONされているか否かを判断し(ステップS2)、リークディテクタ1は、以下に示すように、動作する。
すなわち、測定開始ボタンからの開始信号が流路切換制御部84に出力されると、流路切換制御部84は、第1切換バルブ13をNC側へ切り換える(ステップS3)。
ステップS3から一定時間経過後、流路切換制御部84は、第2切換バルブ14をNC側へ切り換える(ステップS4)。
ステップS4において、第1切換バルブ13および第2切換バルブ14は、NC側に切り換わっているため、前段流路22は、流路C1、流路C2、および吸引孔91Aを介して、第1分岐流路25と接続する。これにより、チャンバ2内部の空気は、上記流路を辿って、吸引ポンプ7に吸引される。
【0045】
ステップS4の後、第1水素センサ12は、チューブ5を介して吸引された水素の濃度を測定し、測定信号Sを制御部8の水素濃度算出部82に出力する。制御部8の比較部83は、水素濃度算出部82にて算出された算出値と記憶部81に記憶された第1閾値とを比較する(ステップS5)。
【0046】
ステップS5において、比較部83により算出値が第1閾値より大きい高濃度であると判断された場合には、比較部83は、リーク有りと判断して測定を終了し、ステップS1に戻る(ステップS6)。
【0047】
一方、ステップS5において、比較部83により算出値が第1閾値より小さく高濃度ではないと判断された場合には、第1切換バルブ13をNC側のままにしておく。すなわち、上述したように、吸引ポンプ7によりチャンバ2内部の空気を吸引し、第2水素センサ16に向けて流通させる(ステップS4の状態)。
そして、第2水素センサ16は、この吸引された空気を測定し、測定信号Sを水素濃度算出部82に出力する。比較部83は、水素濃度算出部82にて算出された算出値と記憶部81に記憶された基準値とを比較する(ステップS7)。
【0048】
ステップS7において、比較部83は、算出値が基準値よりも低い場合には、リーク無しと判断して測定を終了し、ステップS1に戻る(ステップS8)。
一方、ステップS7において、比較部83は、算出値が基準値よりも高い場合には、リーク有りと判断し(ステップS9)、算出値と記憶部81に記憶された第2閾値とを比較する(ステップS10)。なお、ステップS9においてリーク有りと判断したガス濃度は、S6でのリーク有りと判断したガス濃度より低い。
【0049】
ステップS10において、比較部83は、算出値が第2閾値よりも低い場合には、測定を終了して、ステップS1に戻る。
一方、ステップS10において、比較部83により算出値が第2閾値よりも高く中濃度であると判断された場合には、流路切換制御部84は、第1〜第3切換バルブ13〜15をNO側へ切り換える(ステップS11)。これにより、第2水素センサ16を待機状態とし、待機状態であった第3水素センサ17を次の測定に備える状態となるとともに、フレッシュエアがチャンバ2内部の残留ガスを除去し、チャンバ2内部をリフレッシュして、測定を終了する。
【0050】
次に、前述したステップS2と同様に、測定対象物にトレーサガスが加圧封入され、制御部8は、装置本体3の測定開始ボタンがONされているか否かを判断し(ステップS12)する。測定開始ボタンがONされていれば、流路切換制御部84は、第1切換バルブ13をNC側へ切り換える(ステップS13)。ステップS13から一定時間経過後、流路切換制御部84は、第3切換バルブ15をNC側へ切り換える(ステップS14)。
この後のリークディテクタ1が動作するフローは、前述したステップS5〜S10に相当するステップS15〜S20であるため、ここでの説明は省略する。そして、ステップS20の後は、測定を終了して、ステップS1に戻ることとなる。
【0051】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)測定開始前に、フレッシュエアがチャンバ2内部に供給されるので、チャンバ2内部の残留ガスを積極的に除去できる。従って、前回測定時における残留ガスを第2水素センサ16や第3水素センサ17が検知することがなく、測定精度を向上できる。
(2)また、残留ガスの濃度が高い場合であっても、チャンバ2内部の残留ガスを除去してから測定するので、測定開始時において、濃度の高い残留ガスに第2水素センサ16や第3水素センサ17が晒されることがなく、第2水素センサ16や第3水素センサ17の性能を良好に維持できる。
(3)
また、吸引ポンプ7で筐体41内部のフレッシュエアを吸引し、収納部98A,98Bに送り込まれ、第2水素センサ16および第3水素センサ17近辺の残留ガスを除去できる。
【0052】
(4)測定開始前において、供給ポンプ6周辺(測定環境)の外部空気をチャンバ2内部や収納部98A,98B等に供給するため、測定時において、第2水素センサ16や第3水素センサ17がトレーサガスを検知する際のバックグラウンドを実際の測定環境の外部の空気のレベルとすることができ、測定精度をより向上できる。
(5)供給ポンプ6や吸引ポンプ7により積極的にチャンバ2内部、第2水素センサ16や第3水素センサ17近辺の残留ガスを除去するので、残留ガスを完全に無くなるまで待つ必要がなく、次の測定を開始できるため、測定開始までの待ち時間を短縮できる。
【0053】
(6)センサユニット4内に内部に流路を有するブロック状の保持部材9を設けたので、筐体41内部でチューブ等を引き回して流路を確保し、測定する必要が無い。また、保持部材9は小型に製造され、各連通孔92〜96が短縮して設計されている。そのため、これらの連通孔92〜96内の残留ガスを大幅に低減できるとともに、残留ガスを除去する時間を短縮できる。従って、測定開始するまでの待ち時間を短縮化でき、測定精度も向上できる。
(7)第2水素センサ16および第3水素センサ17の一方のセンサを待機状態に設定されているので、他方のセンサが濃度の高いガスに晒されてしまった場合でも、第2、第3切換バルブ14,15を切り換えて待機状態のセンサを測定状態にでき、センサ出力が初期状態になるまでの復帰時間を待つことがないので、測定開始するまでの待ち時間を短縮化できる。
(8)第1水素センサ12を保持部材9のチューブ5側に配置したので、高濃度なガスを予め検知し、第1切換バルブ13を切り換えることで、第2水素センサ16や第3水素センサ17に高濃度ガスが流れることがないため、これらのセンサの性能が劣化することを確実に防止できる。
【0054】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態に係るリークディテクタ1を示す概略図である。図の説明にあたって、前記実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、リークディテクタ1には、複数の検出ユニット42が構成され、この検出ユニット42は、チャンバ2と、センサユニット4とを含んで構成される。すなわち、本実施形態でのリークディテクタ1は、装置本体3が単数であるのに対して、検出ユニット42を複数備える。供給ポンプ6は、検出ユニット42毎の供給流路21を介して、各チャンバ2内部に一括してフレッシュエアを供給し、吸引ポンプ7は、検出ユニット42毎の吸引流路20を介して、各チャンバ2内部の空気を一括して吸引する。
なお、図10では、説明の便宜上、2つのみの検出ユニット42を図示しているが、3つ以上、検出ユニット42を設けても構わない。本実施形態のチャンバ2は、測定対象物の一部を覆うように形成されている。
【0055】
上述した第2実施形態によれば、測定対象物の複数位置のリークの有無を検知する場合に、複数の検出ユニット42を用いて、同時に複数の測定を並行して行うことができる。従って、従来では、測定対象物が大きい場合において、大きなチャンバを必要としていたが、本実施形態によれば、測定対象物を分割して複数に分けることで、測定対象物は小さめのチャンバ2内部に配置されて、チャンバ2内部にトレーサガスが蓄積する時間を短縮でき、測定までの待ち時間を短縮できる。
【0056】
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態に係るリークディテクタ1を示す概略図である。図の説明にあたって、前記各実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、リークディテクタ1は、第2実施形態での検出ユニット42と、検出ユニット42の数に応じた供給ポンプ6と、装置本体31とを備える。装置本体31には、一つの吸引ポンプ7と、一つの制御部8とが設けられている。すなわち、それぞれの供給ポンプ6がそれぞれのチャンバ2および筐体41内部にフレッシュエアを供給する構成となっており、装置本体31は単数で構成されている。
なお、図11では、図10と同様に、説明の便宜上、2つのみの検出ユニット42を図示しているが、3つ以上、検出ユニット42を設けても構わない。
【0057】
上述した第3実施形態によれば、複数の検出ユニット42を備えるので、一つの測定対象物に対して測定対象箇所が複数ある場合には、並行して同時に測定できる。
また、検出ユニット42毎に供給ポンプ6がそれぞれ設けられているので、測定開始前において、複数の測定箇所における各チャンバ2内部に供給されるフレッシュエア、および各センサユニット4の筐体41内に供給されるフレッシュエアが各測定場所周辺のフレッシュエアと常時同一にできる。従って、第2,第3水素センサ16,17は、チャンバ2内部と同じフレッシュエアに晒されることになり、リークの有無を判断する精度を向上できる。
【0058】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0059】
例えば、前記各実施形態では、第1切換バルブ13は、三方式の切換弁であったが、四方式の切換弁であってもよい。これによれば、第2,第3切換バルブ14,15を設ける必要が無く、構成を簡素化できる。
また、前記各実施形態では、第1水素センサ12が高濃度ガスを検知した場合に、第1切換バルブ13を切り換えていたが、第2切換バルブ14および第3切換バルブ15を切り換えてもよい。この場合でも、高濃度ガスが第2,第3水素センサ16,17に流入することを防止できる。
前記各実施形態では、流量制御弁10A,10Bを制御部8で制御することで流量を一定にしていたが、手動により流量制御弁10A,10Bを絞り調整することで流量を一定にしてもよい。
【0060】
前記各実施形態では、第2,第3水素センサ16,17の切り換えをガス濃度の算出値と第2閾値とを比較し、算出値が第2閾値を超えた場合に第2,第3水素センサ16,17のいずれかの待機センサに切り換える設定であったが、制御部8にタイマーを設けて切り換え設定してもよい。すなわち、第2,第3水素センサ16,17のいずれかの測定に使用されたセンサの出力が、測定後一定時間、リークの有無を判断する基準値より小さくならない場合に待機センサに切り換えるものである。これにより、センサの出力が初期状態にまで低下するのを待つことなく、次の測定が行えるので、測定開始までの待ち時間を短縮できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のリークディテクタは、リークの有無を検知する試験装置に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリークディテクタの概略図。
【図2】前記リークディテクタのコントローラのブロック図。
【図3】前記リークディテクタの流路切換部材の斜視図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】図3のV−V線断面図。
【図6】図3のVI−VI線断面図。
【図7】前記流路切換部材の底面図。
【図8】前記リークディテクタの動作フロー。
【図9】前記リークディテクタの動作フロー。
【図10】第2実施形態に係るリークディテクタの概略図。
【図11】第3実施形態に係るリークディテクタの概略図。
【符号の説明】
【0063】
1…リークディテクタ、2…チャンバ、4…センサユニット、6…供給ポンプ、7…吸引ポンプ、9…保持部材、9E…下面部(外面)、12…第1水素センサ(補助ガスセンサ)、13…第1切換バルブ(第1の切換バルブ)、14…第2切換バルブ(第2の切換バルブ)、15…第3切換バルブ(第2の切換バルブ)、14A,15A…チャンバ側流路、14B,15B…筐体側流路、16…第2水素センサ(ガスセンサ)、17…第3水素センサ(ガスセンサ)、19…分岐流路、41…筐体、42…検出ユニット、92…側面側連通孔(第1連通孔)、94A,94B…センサ側連通孔(第1連通孔)、95…L字状連通孔(第2連通孔)、96A〜96C…前面側連通孔(第3連通孔)、98A,98B…収納部、131…第1流入出ポート、132…第2流入出ポート、133…第3流入出ポート、A…第1流路、B…第2流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物にトレーサガスを加圧封入し、前記測定対象物から漏れたトレーサガスを検知するリークディテクタであって、
前記測定対象物を覆い、前記測定対象物から漏れたトレーサガスを蓄積するチャンバと、
前記チャンバ内部に連通する第1流路内に配設され、トレーサガスを検知するガスセンサと、
前記第1流路を介して、前記チャンバ内部の空気を吸引する吸引ポンプと、
前記チャンバ内部に連通する第2流路を介して、前記チャンバ内部に外部空気を供給する供給ポンプと、
前記第1流路または前記第2流路に切り換える第1の切換バルブとを備える
ことを特徴とするリークディテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のリークディテクタにおいて、
前記ガスセンサは、筐体内部に配設されてセンサユニットとして構成され、
前記第2流路の一部は、前記筐体内部に配設され、前記第2流路に沿って流通する外部空気の一部を前記筐体内部に排出する分岐流路を有し、
前記第1流路の一部は、前記筐体内部に配設され、前記チャンバ内部の空気を前記ガスセンサに向けて流通させるチャンバ側流路と、前記筐体内部の前記外部空気を前記ガスセンサに向けて流通させる筐体側流路とを有し、
前記センサユニットは、前記チャンバ側流路または前記筐体側流路に切り換える第2の切換バルブを備える
ことを特徴とするリークディテクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のリークディテクタにおいて、
前記センサユニットは、複数の前記ガスセンサ、および前記複数のガスセンサに応じた複数の前記第2の切換バルブを備える
ことを特徴とするリークディテクタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のリークディテクタにおいて、
前記ガスセンサおよび前記第1の切換バルブを保持するブロック状の保持部材を備え、
前記第1の切換バルブは、空気を流入出する第1から第3流入出ポートを有し、前記第1流入出ポートおよび前記第2流入出ポート間の接続、または前記第2流入出ポートおよび前記第3流入出ポート間の接続に切り換えることで、前記第1流路または前記第2流路に切り換え、
前記保持部材は、前記ガスセンサを内部に収納する収納部を有するとともに、外面にて前記第1の切換バルブを保持し、
前記保持部材には、
前記第1流路の一部を構成し、前記第1流入出ポートに接続するとともに前記収納部内部に連通して前記第1の切換バルブを介した前記チャンバ内部の空気を前記収納部内部に向けて流通させる第1連通孔と、
前記第1流路および前記第2流路の一部を構成し、前記第2流入出ポートに接続して前記チャンバ内部の空気を前記第1の切換バルブに向けて流通、または、前記第1の切換バルブを介した前記外部空気を前記チャンバ内部に向けて流通させる第2連通孔と、
前記第2流路の一部を構成し、前記第3流入出ポートに接続して前記供給ポンプからの前記外部空気を前記第1の切換バルブへ流通させる第3連通孔とが形成されている
ことを特徴とするリークディテクタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のリークディテクタにおいて、
前記第1流路内には、前記ガスセンサの流路前段側に、前記トレーサガスを検知する補助ガスセンサが設けられている
ことを特徴とするリークディテクタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のリークディテクタにおいて、
前記チャンバは、前記測定対象物の一部を覆うように形成され、
前記チャンバ、前記ガスセンサ、および前記第1の切換バルブは、検出ユニットとしてユニット化され、
前記検出ユニットは、複数、設けられている
ことを特徴とするリークディテクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のリークディテクタにおいて、
前記吸引ポンプは、単体で構成され、前記複数の検出ユニット毎の各前記第1流路を介して、各前記チャンバ内部の空気を一括して吸引し、
前記供給ポンプは、単体で構成され、前記複数の検出ユニット毎の各前記第2流路を介して、前記各チャンバ内部に外部空気を一括して供給する
ことを特徴とするリークディテクタ。
【請求項8】
請求項6に記載のリークディテクタにおいて、
前記供給ポンプは、前記複数の検出ユニット毎にそれぞれ設けられている
ことを特徴とするリークディテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−127688(P2010−127688A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300778(P2008−300778)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(508148600)株式会社FUSO (3)
【Fターム(参考)】