説明

リーダーテープの打ち抜き金型

【課題】 リーダーテープの端面を、低コストの打ち抜き金型で高精度に成形することを課題とする。
【解決手段】 リーダーテープ30の長尺部31を成形する第1ブロック80と、リーダーテープ30の張出部34を成形する第2ブロック84及び第3ブロック72で構成されたダイ44に形成された貫通孔50にパンチ42が嵌合して、リーダーテープ30が成形される。このように、ダイ44を複数のブロックに分割することで、ダイ44を1つの金型で構成した場合と比較して、打ち抜き金型40の製作時間を短縮できると共に、精度の高い打ち抜き金型40を作製できる。これにより、製作コストを押さえ、且つ、端面が高精度のリーダーテープ30を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスによって原反を打ち抜いてリーダーテープを成形するリーダーテープの打ち抜き金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピューター等のデータ記録再生媒体として使用されている磁気テープ等の記録テープを単一のリールに巻装し、そのリールをケース内に収容している記録テープカートリッジが知られている。この記録テープの先端には、リーダーピンやリーダーテープ、リーダーブロックといったリーダー部材が設けられており、ドライブ装置側に設けられた引出手段でリーダー部材を記録テープカートリッジの開口から引き出して、このリーダー部材に固着された記録テープをドライブ装置側の巻取リールに巻装するようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、リーダー部材として用いられるリーダーテープは、通常100〜200μmの厚みのPETからなる原反シートをプレス金型で打ち抜くことで形成される。このプレス金型は、1つのダイと1つのパンチとで構成され、ダイに設けられた貫通孔にパンチが嵌合するようになっている。
【0004】
ところで、リーダーテープの端面の精度(切断面精度・真直性)は、リーダーテープに接合される磁気テープと同様に、通常の金属プレス品よりも高い精度が要求される。つまり、リーダーテープを形成するプレス金型は、非常に高い精度が要求される。そこで、ダイに設けられた貫通孔も非常に高い精度で形成する必要があり、特にリーダーテープのような長尺状の製品を成形する場合、金型のコストが高くなる。また、パンチが嵌合することで貫通孔が摩耗した場合、ダイを新規に作製する必要があり、これもコストアップの要因の一つとなっている。
【特許文献1】特開2004−342203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、リーダーテープの端面を、低コストの打ち抜き金型で高精度に成形することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のリーダーテープの打ち抜き金型は、貫通孔が形成されたダイと、前記貫通孔へ嵌合されて、前記ダイに載置された被加工部材を打ち抜くパンチと、を有し、記録テープの端部に取り付けられ、前記記録テープの長手方向に沿って長尺状に設けられた長尺部と、該長尺部の先端に設けられ、前記記録テープの幅方向に張り出した張出部と、を有するリーダーテープを成形する打ち抜き金型において、前記ダイは、前記長尺部を成形する第1金型と、前記リーダーテープの張出部を成形する第2金型と、を組み合わせて構成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明では、リーダーテープの長尺部を成形する第1金型と、張出部を成形する第2金型とを組み合わせて構成されたダイに形成された貫通孔にパンチが嵌合して、長尺部と張出部を有するリーダーテープが成形される。
【0008】
このように、ダイを第1金型と第2金型に分割することで、ダイを1つの金型で構成した場合と比較して、金型の製作時間を短縮できると共に、精度の高い金型を作製できる。これにより、製作コストを押さえ、且つ、端面が高精度のリーダーテープを得ることができる。
【0009】
また、ダイが摩耗した場合でも、摩耗した部分に相当する金型だけを新規に作成したり研磨すればよく、メンテナンス性が向上する。
【0010】
さらに、リーダーテープの長尺部を成形する第1金型の直線部分を分割しないため、リーダーテープの長尺部の端面に、第1金型と第2金型の分割ラインが発生しない。これにより、リーダーテープの長尺部の端面にバリ等が発生する恐れがない。
【0011】
本発明の請求項2に記載のリーダーテープの打ち抜き金型は、前記第1金型は、前記長尺部の長手方向に平行となる端面を成形する第1部材と、前記長尺部の張出部が形成された側と反対側の端面を成形する第2部材とで構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明では、第1部材によって、リーダーテープの長手方向に平行となる端面が成形され、第2部材によって、リーダーテープの張出部が形成された側と反対側の端面が成形される。
【0013】
これにより、リーダーテープの長手方向の端面を成形する第1部材を単独で研磨加工できるので、リーダーテープの端面は、長手方向全域に渡って高い精度で成形することができる。
【0014】
また、長手方向の端面を成形する第1部材と、張出部が形成された側と反対側の短面を成形する第2部材とを一体とした場合と比較して、貫通孔の幅方向の寸法調整が行い易いので、貫通孔に嵌合したパンチと貫通孔との隙間を、長手方向全域に渡って均一にできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記構成としたので、リーダーテープの端面を、低コストの打ち抜き金型で高精度に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態に係る打ちリーダーテープの抜き金型40について説明する。まず、本発明の構成の打ち抜き金型40で成形されたリーダーテープ30が搭載された記録テープカートリッジ10について、図6を用いて簡単に説明する。なお、説明の便宜上、記録テープを磁気テープTとし、記録テープカートリッジ10を磁気テープカートリッジ10とする。また、図において、磁気テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を矢印Aで示し、それを磁気テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向(右側)とする。
【0017】
磁気テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。ケース12の内部には、リール20が回転可能に収容されている。このリール20は、軸心部を構成する有底円筒状のリールハブ22と、その上端部に設けられる上フランジ24とが一体に成形され、下フランジ26がリールハブ22の下端部に超音波溶着されて構成されている。そして、そのリールハブ22の外周面に、情報記録再生媒体としての磁気テープTが巻回され、上フランジ24及び下フランジ26によって、その巻回された磁気テープTの幅方向の端部が保持されている。
【0018】
また、ケース12の壁12Aには、リール20に巻装された磁気テープTを引き出すための開口18が形成されており、この開口18から引き出される磁気テープTの自由端部には、プラスチック製のリーダーテープ30が、接続用テープとしてのスプライステープ28によって取り付けられている。
【0019】
リーダーテープ30は、ドライブ装置の引出部材(図示省略)が磁気テープTを引き出すために係合する被引出部材であり、磁気テープTと同じ幅を有する長尺部31を有している。長尺部31の先端近傍には、引出部材が係合する孔部32が穿設されている。そして、その孔部32の後端よりも若干後方寄りの上下両サイドには、それぞれ上下方向に向かって張り出す張出部34が形成されている。この張出部34が、開口18近傍の上ケース14の内面及び下ケース16の内面にそれぞれ形成された図示しない収納凹部に収納(挿入)されることにより、リーダーテープ30がケース12内において、壁12Bに沿って配置(保持)される構成である。また、長尺部31には、張出部34近傍に凹部33が形成されている。
【0020】
次に、図1に示すリーダーテープ30を成形する打ち抜き金型40について説明する。
【0021】
図2に示すように、打ち抜き金型40は、パンチ42をホルダするパンチホルダ46と、ダイ44をホルダするダイホルダ48を有している。パンチホルダ46とダイホルダ48は、図示しないガイドポストによって位置決めされており、パンチホルダ46はダイホルダ48に対して垂直方向に移動可能とされている。
【0022】
パンチ42にはつば部42Aが設けられており、このつば部42Aはパンチホルダ46の段部46Aに図示しないボルトで固定されている。これにより、パンチホルダ46の移動に伴って、パンチ42はダイ44に対して上下方向に移動する構成となっている。
【0023】
図2及び図3(A)に示すように、ダイ44(詳細は後述する)には、パンチ42が嵌合可能な貫通孔50(後述する貫通孔82、側壁80A、段差部86、側壁72Bで構成される)が設けられている。これにより、パンチ42が下降すると、ダイ44の貫通孔50に嵌合されるようになっている。また、貫通孔50にはパンチ押さえプレート51が設けられており、パンチ42が下降したとき、このパンチ押さえプレート51によって、パンチ42が支持される構成となっている。なお、図3以降では、パンチ42のつば部42A及びパンチ押さえプレート51の図示は省略する。
【0024】
図3(B)に示すように、ダイ44のパンチ42に対向する面には、被加工部材52(シート状のPET)が載置される。そして、パンチ42が下降して、ダイ44に形成された貫通孔50に嵌合すると、パンチ42の打ち抜き面43の外形形状に沿ってせん断力が作用して、被加工部材52が打ち抜かれる。
【0025】
パンチ42の打ち抜き面43は、リーダーテープ30と同形状となっている。すなわち、リーダーテープ30の長尺部31に相当するストレート部55を有し、ストレート部55の端部には、リーダーテープ30の張出部34に対応する形状の突出部58が形成されている。また、ストレート部55の突出部58近傍には、リーダーテープ30の凹部33に対応する凹部57が形成されている。
【0026】
さらに、パンチ42の一方の端部には、リーダーテープ30の孔部32を形成するためのパンチ42が嵌合能な孔部56が設けられている。このような形状のパンチ42とダイ44によって被加工部材52が打ち抜かれることで、図に示すような形状のリーダーテープ30が形成される。
【0027】
ここで、ダイ44の構成について説明する。
【0028】
図3〜図5に示すように、ダイ44は第1ブロック80を有している。第1ブロック80には、パンチ42の張出部58が嵌合可能な貫通孔82が形成されている。貫通孔82は、第1ブロック80の一方の側壁80Aを開口して形成されており、平面視で略コ字状とされている。
【0029】
第1ブロック80の一方の側壁80Aには、図中手前側と奥側とに2本の第2ブロック84が設けられている。略長方体形状の第2ブロック84は、パンチ42のストレート部55に相当する長さを有する長尺状とされ、所定の間隔を設けて平行に配設されている。また、第2ブロック84の長手方向に沿った側壁84Aには、段差面86が形成されている。そして、段差面86が形成された側壁84Aが、互いに対向するようにして2本の第2ブロック84が配置されている。これにより、2本の第2ブロック84の側壁84Aによって形成される隙間に、パンチ42の凹部57が嵌合し、2本の第2ブロック84の段差面86によって形成される隙間に、パンチ42のストレート部55が嵌合するようになっている。
【0030】
第2ブロック84の長手方向の一方の側壁84Bには、タップ88が形成されており、第1ブロック80の他方の側壁80Bに形成されたネジ孔90に挿通されたネジ92がタップ88に螺合するようになっている。これにより、第2ブロック84は第1ブロック80の側壁80Aに固定される。
【0031】
第2ブロック84の長手方向の他方の側壁84Cには、長方体形状の第3ブロック72が設けられている。この第3ブロック72の一方の側壁72Bで、第1ブロック80に固定された2本の第2ブロック84によって形成された貫通孔50(貫通孔82、側壁84A、段差部86で構成されている)の開口部分が塞がれる構成となっている。
【0032】
また、第3ブロック72の他方の側壁72Aにはネジ孔74が形成されており、このネジ孔74に挿通されたネジ76が、第2ブロック84の他方の側壁84Cに形成されたタップ94に螺合することで、第3ブロック72は第2ブロック84に固定されるようになっている。
【0033】
このようにして、第1ブロック80、第2ブロック84及び第3ブロック72とでダイ44が構成されており、第1ブロック80の貫通孔82と、2本の第2ブロック84の側壁84A及び段差部86によって形成される隙間と、第3ブロック72の側壁72Bとで、パンチ42が嵌合可能な貫通孔50が形成される。
【0034】
ここで、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0035】
リーダーテープ30の長尺部31を成形する第1ブロック80と、リーダーテープ30の張出部34を成形する第2ブロック84及び第3ブロック72で構成されたダイ44に形成された貫通孔50にパンチ42が嵌合して、リーダーテープ30が成形される。
【0036】
このように、ダイ44を複数のブロックに分割することで、ダイ44を1つの金型で構成した場合と比較して、打ち抜き金型40の製作時間を短縮できると共に、精度の高い打ち抜き金型40を作製できる。これにより、製作コストを押さえ、且つ、端面が高精度のリーダーテープ30を得ることができる。
【0037】
また、第1ブロック80、第2ブロック84及び第3ブロック72が摩耗した場合でも、摩耗した部分に相当するブロックだけを新規に作成したり研磨すればよく、メンテナンス性が向上する。
【0038】
さらに、リーダーテープ30の長尺部31を成形する第2ブロック84の直線部分を分割しないため、リーダーテープ30の長尺部31の端面に、第1ブロック80と第2ブロック84の分割ラインが発生しない。これにより、リーダーテープ30の長尺部31の端面にバリ等が発生する恐れがない。
【0039】
また、リーダーテープ30の長手方向の端面を成形する第2ブロックは単独で研磨加工によって形成できるので、リーダーテープ30の端面は、長手方向全域に渡って高い精度で成形することができる。
【0040】
さらに、リーダーテープ30の長尺部31を、第2ブロック84と第3ブロック72とに分割して成形せずに、一体のブロックで成形した場合と比較して、貫通孔50の幅方向の寸法調整が行い易いので、貫通孔50に嵌合したパンチ42と貫通孔50との隙間を、長手方向全域に渡って均一にできる。
【0041】
なお、本実施形態では、記録テープカートリッジ10に搭載されるリーダーテープ30を打ち抜く打ち抜き金型40を例にとって説明したが、特にリーダーテープ30の打ち抜き金型40に限定されるものではなく、リーダーテープ30のように、長尺状の形状と、この長尺状の部分とは異なる形状を一部に有する製品を成形する打ち抜き金型においては本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】リーダーテープの打ち抜き金型の概略斜視図である。
【図2】リーダーテープの打ち抜き金型の概略側面図である。
【図3】リーダーテープの打ち抜き金型の概略斜視図であり、(A)被加工部材を打ち抜く前の状態を示す図であり、(B)被加工部材を打ち抜いた状態を示す図である。
【図4】リーダーテープの打ち抜き金型のダイの構成を示す分解斜視図である。
【図5】リーダーテープの打ち抜き金型のダイの構成を示す正面図である。
【図6】リーダーテープの打ち抜き金型で成形されたリーダーテープが搭載された磁気テープカートリッジの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
10 記録テープカートリッジ
30 リーダーテープ
40 打ち抜き金型
42 パンチ
44 ダイ
50 貫通孔
52 被加工部材
55 ストレート部(長尺部)
58 張出部
72 第3ブロック(第1金型、第2部材)
80 第1ブロック(第2金型)
84 第2ブロック(第1金型、第1部材)
T 磁気テープ(記録テープ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されたダイと、前記貫通孔へ嵌合されて、前記ダイに載置された被加工部材を打ち抜くパンチと、を有し、記録テープの端部に取り付けられ、前記記録テープの長手方向に沿って長尺状に設けられた長尺部と、該長尺部の先端に設けられ、前記記録テープの幅方向に張り出した張出部と、を有するリーダーテープを成形するリーダーテープの打ち抜き金型において、
前記ダイは、前記長尺部を成形する第1金型と、前記リーダーテープの張出部を成形する第2金型と、を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリーダーテープの打ち抜き金型。
【請求項2】
前記第1金型は、前記長尺部の長手方向に平行となる端面を成形する第1部材と、前記長尺部の張出部が形成された側と反対側の端面を成形する第2部材とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリーダーテープの打ち抜き金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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