説明

リーディングトレーリング型ドラムブレーキ

【課題】ドラムブレーキの大きさを大きくしないで、パーキングブレーキの効き性能を向上させるリーディングトレーリング型ドラムブレーキを提供する。
【解決手段】ブレーキレバー48の係合部48cとストラット54の一端部との間が回動可能に連結されているため、制動時ブレーキレバー48のレバー比に基づいて大きくされた力Ftが係合部48cに作用すると、その回動可能に連結された係合部48cおよびストラット54の一端部が第1連結ピン50とストラット54の他端部とを結ぶ直線Gに接近するように第1連結ピン50回りに回動して第1連結ピン50とストラット54の他端部との間を離間させるので、その力Ftの大きさよりも大きい力Fs,Fpがストラット54の一端部から他端部方向および係合部48cから第1連結ピン50方向に作用して一対のブレーキシュー18,20を拡開する拡開力が従来のドラムブレーキ100に比較して大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーディングトレーリング型ドラムブレーキに関し、特にそのリーディングトレーリング型ドラムブレーキのブレーキの性能を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば図8、図9に示すように、従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100は、(a) 車輪と一体的に回転する回転ドラム102と、(b) バッキングプレート104上に拡開可能に配設された円弧状を成す一対のブレーキシュー106,108と、(c) その一対のブレーキシュー106,108の一端部間に配設され一対のブレーキシュー106,108の一端部を拡開させる拡開機構110と、(d) 一対のブレーキシュー106,108の一端部間に配設され非制動時のその一対のブレーキシュー106,108と回転ドラム102の内周面102aとの間隔を規定する長手状のストラット112と、(e) 一対のブレーキシュー106,108の一端部を互いに接近する方向に付勢する第1スプリング114と、(f) 一対のブレーキシュー106,108の一方106の一端部に基端部116aが第1連結ピン118によりその第1連結ピン118回りに相対回転可能に連結された長手状のブレーキレバー116と、(g) そのブレーキレバー116の外周縁部において第1連結ピン118から所定距離離間しストラット112の一端部112aと係合する係合部116bと、(h) 一対のブレーキシュー106,108の他端部間に固設されたアンカー部材120と、(i) 一対のブレーキシュー106,108の他端部を互いに接近する方向に付勢する第2スプリング122とを備え、(j) 制動時ブレーキレバー116の先端部116cに操作された操作力Fによりブレーキレバー116が第1連結ピン118回りに回動することによって、ブレーキレバー116における先端部116c、第1連結ピン118、係合部116bの位置に基づいて算出されるレバー比に基づいて操作力Fより大きくされた力が係合部116bを介してストラット112に作用し一対のブレーキシュー106,108の他方108が拡開すると共にそのストラット112に作用した力の反作用により第1連結ピン118を介して一対のブレーキシュー106,108の一方106が拡開するものである。また、一対のブレーキシュー106,108の一端部には、ストラット112の一端部112aまたは他端部112bを支持するために切り欠かれた切欠106a,108aが備えられている。
【0003】
また、上記従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100は、油圧作動によって一対のブレーキシュー106,108の一端部を拡開させる拡開装置110を車両走行時に使用するサービスブレーキとし、先端部116cに操作力Fが操作されることによってストラット112および第1連結ピン118を介して一対のブレーキシュー106,108の一端部を拡開させるブレーキレバー116を車両駐車時に使用するパーキングブレーキとしている。
【0004】
さらに、上記従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100において、第1連結ピン118とブレーキレバー116の係合部116bとの間の距離をL1’とし、ブレーキレバー116の係合部116bとブレーキレバー116の先端部116cとの間の距離をL2’とした場合、図8に示すようにパーキングブレーキ作動時にブレーキレバー116の先端部116cに操作力Fが操作されると、ストラット112にはその操作力Fの大きさがレバー比((L1’+L2’)/L1’)に基づいて大きくされた力Fs’すなわち((L1’+L2’)/L1’)・Fが作用し、第1連結ピン118にはその操作力Fの大きさがレバー比(L2’/L1’)に基づいて大きくされた力Fp’すなわち(L2’/L1’)・Fが作用させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−98180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のようなリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100は、比較的サーボ(倍力)効果が低いがブレーキの効きが安定していることからサービスブレーキの効き性能は十分である。しかし、その反面、パーキングブレーキのように比較的小さな操作力Fで高い効きが要求される場合にはサーボ効果が低いのでパーキングブレーキの効き性能に余裕がなく、ブレーキシューに備えられた摩擦材の摩擦係数を上げることができない場合リーディングトレーリング型ドラムブレーキの大きさを大きくすることによってパーキングブレーキの効き性能を向上させることがあった。
【0007】
パーキングブレーキの効き性能を向上させるには、前記レバー比を高くすることが考えられるが、図9の左図に示すように前記レバー比を向上するために第1連結ピン118とブレーキレバー116の係合部116bとの間の距離L1’を小さくするようにその第1連結ピン118の位置を矢印L方向に移動させようとしてもスペースの制約で実用上設定できるレバー比に限界がある。また、図9の右図に示すように前記レバー比を向上するために第1連結ピン118の位置を矢印M方向に移動させると制動時ブレーキレバー116の係合部116bが矢印N方向に回動する。このためそれによってストラット112の一端部112aも矢印N方向に移動しようとして、ブレーキシュー106の一端部に切り欠かれた切欠106aの内周面に強く当接するので係合部116bからストラット112に効率良く力を伝達することができない。
【0008】
これに対して、必要なパーキングブレーキの効き性能を確保するためには、ブレーキレバー116の長手方向の大きさを大きくして前記レバー比を向上させることが必要となり、リーディングトレーリング型ドラムブレーキ100の大きさが大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ドラムブレーキの大きさを大きくしないで、パーキングブレーキの効き性能を向上させるリーディングトレーリング型ドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 車輪と一体的に回転する回転ドラムと、(b) バッキングプレート上に拡開可能に配設された円弧状を成す一対のブレーキシューと、(c) その一対のブレーキシューの一端部間に配設されその一対のブレーキシューの一端部を拡開させる拡開装置と、(d) その一対のブレーキシューの一端部間に配設され非制動時のその一対のブレーキシューとその回転ドラムの内周面との間隔を規定する長手状のストラットと、(e) その一対のブレーキシューの一端部を互いに接近する方向に付勢する第1スプリングと、(f) その一対のブレーキシューの一方の一端部に基端部が第1連結ピンによりその第1連結ピン回りに相対回転可能に連結された長手状のブレーキレバーと、(g) そのブレーキレバーの外周縁部においてその第1連結ピンから所定距離離間しそのストラットの一端部と係合する係合部と、(h) その一対のブレーキシューの他端部間に固設されたアンカー部材と、(i) その一対のブレーキシューの他端部を互いに接近する方向に付勢する第2スプリングとを備え、(j) 制動時前記ブレーキレバーの先端部に操作された操作力により前記ブレーキレバーが前記第1連結ピン回りに回動することによって、前記ブレーキレバーにおける前記先端部、前記第1連結ピン、前記係合部の位置に基づいて算出されるレバー比に基づいて前記操作力より大きくされた力が前記係合部を介して前記ストラットに作用し前記一対のブレーキシューの他方が拡開すると共にそのストラットに作用した力の反作用により前記第1連結ピンを介して一対のブレーキシューの一方が拡開するリーディングトレーリング型ドラムブレーキであって、(k) 前記ブレーキレバーの係合部と前記ストラットの一端部との間が回動可能に連結されていることにある。
【0011】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(a) 前記ブレーキレバーの係合部は、前記ストラットの一端部側に伸長されたものであり、(b) 前記ブレーキレバーの係合部と前記ストラットの一端部とが第2連結ピンによって相対回転可能に連結され、(c) 前記第1連結ピンと前記第2連結ピンとを結ぶ直線が前記ストラットの他端部と前記バッキングプレートの中心との間を通るように、その第1連結ピンとその第2連結ピンとが配置されていることにある。
【0012】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、(a) 前記ストラットの一端部には、そのストラットの一端部の幅方向の中間部においてその幅寸法より小さく且つ前記ブレーキレバーの厚みより大きい幅の切欠が形成されており、(b) 前記ブレーキレバーの係合部は、前記切欠内に配置されるものであって、(c) 前記第2連結ピンは、円柱形状の軸部を有し、(d) 前記ストラットの一端部には、前記第2連結ピンの軸部の両端部を相対回転可能に嵌め入れる一対の嵌合穴が備えられ、(e) 前記ブレーキレバーの係合部には、前記第2連結ピンの軸部の中間部を相対回転可能に嵌め入れる嵌合穴が備えられていることにある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明のリーディングトレーリング型ドラムブレーキによれば、(k) 前記ブレーキレバーの係合部と前記ストラットの一端部との間が回動可能に連結されているため、制動時ブレーキレバーの先端部に操作力が操作されて前記レバー比に基づいて前記操作力より大きくされた力が前記ブレーキレバーの係合部に作用すると、その回動可能に連結された前記ブレーキレバーの係合部および前記ストラットの一端部が前記第1連結ピンと前記ストラットの他端部とを結ぶ直線に接近するように前記第1連結ピン回りに回動して前記第1連結ピンと前記ストラットの他端部との間を離間させて前記一対のブレーキシューを拡開させるので、前記レバー比に基づいて前記操作力より大きくされた力の大きさよりも大きい力が前記ストラットの一端部から他端部方向および前記係合部から前記第1連結ピン方向に作用して前記一対のブレーキシューの拡開する拡開力が従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキに比較して大きくなる。そのため、リーディングトレーリング型ドラムブレーキの大きさを大きくしないでパーキングブレーキの効きを向上させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明のリーディングトレーリング型ドラムブレーキによれば、(a) 前記ブレーキレバーの係合部は、前記ストラットの一端部側に伸長されたものであり、(b) 前記ブレーキレバーの係合部と前記ストラットの一端部とが第2連結ピンによって相対回転可能に連結され、(c) 前記第1連結ピンと前記第2連結ピンとを結ぶ直線が前記ストラットの他端部と前記バッキングプレートの中心との間を通るように、その第1連結ピンとその第2連結ピンとが配置されているため、制動時ブレーキレバーの先端部に操作力が操作されて前記レバー比に基づいて前記操作力より大きくされた力が前記第2連結ピンに作用すると、その第2連結ピンが前記第1連結ピンと前記ストラットの他端部とを結ぶ直線に接近するように前記第1連結ピン回りに回動して前記第1連結ピンと前記ストラットの他端部との間を離間させて前記一対のブレーキシューを拡開させるので、その一対のブレーキシューの拡開する拡開力が従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキに比較して好適に大きくすることができる。
【0015】
請求項3に係る発明のリーディングトレーリング型ドラムブレーキによれば、(a) 前記ストラットの一端部には、そのストラットの一端部の幅方向の中間部においてその幅寸法より小さく且つ前記ブレーキレバーの厚みより大きい幅の切欠が形成されており、(b) 前記ブレーキレバーの係合部は、前記切欠内に配置されるものであって、(c) 前記第2連結ピンは、円柱形状の軸部を有し、(d) 前記ストラットの一端部には、前記第2連結ピンの軸部の両端部を相対回転可能に嵌め入れる一対の嵌合穴が備えられ、(e) 前記ブレーキレバーの係合部には、前記第2連結ピンの軸部の中間部を相対回転可能に嵌め入れる嵌合穴が備えられているため、制動時前記係合部から前記ストラットに作用する大きな力を前記第2連結ピンを介して前記ストラットの一端部に好適に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用されたリーディングトレーリング型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】第1連結ピンを説明する断面図である。
【図3】図1のIII-III視断面図である。
【図4】第2連結ピンを説明する断面図である。
【図5】制動時ブレーキレバーの先端部に操作力Fが操作されてレバー比に基づいて操作力Fより大きくされた力Ftがブレーキレバーの係合部に作用された場合において、ストラットおよび第1連結ピンに作用する力の大きさを説明する図である。
【図6】本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキと、従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキとによる摩擦係数μに対する車両前進時のパーキングブレーキの効きをBEF(Brake Effectiveness Factor)で表す図である。
【図7】本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキと、従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキとによる摩擦係数μに対する車両後進時のパーキングブレーキの効きをBEF(Brake Effectiveness Factor)で表す図である。
【図8】従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図9】第1連結ピンの位置を移動させた場合のブレーキレバーとストラットとの状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節機構付ドラムブレーキであるリーディングトレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、車輪と一体的に回転するブレーキドラム(回転ドラム)12を取り外して示す正面図である。また、ブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。
【0019】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート16が備えられている。
【0020】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート16の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧状の一対のブレーキシュー18,20と、その一対のブレーキシュー18,20の一端部すなわち図1の上端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたホイールシリンダ(拡開装置)22と、一対のブレーキシュー18,20の一端部を互いに接近する方向に常時付勢してホイールシリンダ22に当接させるために、その一端部間に張設されたコイル状のリターンスプリング(第1スプリング)24と、そのコイル状のリターンスプリング24の内部を挿通するように一対のブレーキシュー18,20の一端部間に配設された非制動時における一対のブレーキシュー18,20とブレーキドラム12の内周面14との間すなわちシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構26と、一対のブレーキシュー18,20の他端部すなわち図1の下端部の間に位置固定に設けられたアンカー部材28と、一対のブレーキシュー18,20の下端部間に張設されてそれら下端部をアンカー部材28に常時当接させるスプリング(第2スプリング)30とが備えられている。
【0021】
一対のブレーキシュー18,20は、何れも、バッキングプレート16の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ32,34と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム36,38と、それらシューリム36,38の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング40,42とによってそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー18,20は、シューウェブ32およびシューウェブ34にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置44,46によってバッキングプレート16側へ押圧されることによりそのバッキングプレート16に対して面方向の相対移動可能に保持されている。また、ブレーキシュー18の一端部には、長手状のブレーキレバー48の基端部48aが第1連結ピン50により相対回動可能に連結されている。バッキングプレート16、シューウェブ32,34、シューリム36,38は、いずれも鋼板から打ち抜かれ且つ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。
【0022】
図2に示すように、略円柱形状の第1連結ピン50は、シューウェブ32の一端部およびブレーキレバー48の一端部48aに貫通された円状の貫通穴32a,48bに相対回転可能に嵌合する円柱形状の軸部50aと、その軸部50aのバッキングプレート16側の端部においてブレーキレバー48の貫通穴48bの径よりも大きい径で略円板形状に成形された大径部50bと、軸部50aのバッキングプレート16側とは反対側の端部において外周面の一部の経が縮径された段部50cとによって構成されており、その段部50cに掛止部材52が掛け止められると貫通穴32a,48bから第1連結ピン50の脱落が防止され、ブレーキレバー48の一端部48aはその第1連結ピン50の軸部50aの軸心A回りに相対回転可能にブレーキシュー18の一端部に連結される。
【0023】
シュー間隙自動調節機構26は、図3に示すように、一対のブレーキシュー18,20の一端部間に配設された非制動時の一対のブレーキシュー18,20の一端部間の離間量を制限する長手状のストラット54と、そのストラット54に備えられたアジャストレバー56とによって構成されている。
【0024】
ストラット54は、図3に示すように、シューウェブ34に係合する係合凹部58aを有する第1ストラット部材58と、ブレーキレバー48に係合する第2ストラット部材60と、略円板形状のアジャストホイール62aを備えて第1ストラット部材58と第2ストラット部材60との間に配設され第2ストラット部材60と螺合する第3ストラット部材62とによって構成されている。
【0025】
第3ストラット部材62は、図3に示すように、略円板形状のアジャストホイール62aの中心部から第1ストラット部材58側に略円柱形状に突き出す嵌合軸部62bと、略円板形状のアジャストホイール62aの中心部からその嵌合軸部62bとは反対方向すなわち第2ストラット部材60側に略円柱形状に突設するとともにその外周面の一部にねじ山が形成された雄ねじ62cを有する長手状の軸部62dとから構成されており、嵌合軸部62bは第1ストラット部材58に穿設された略円柱形状の嵌合穴58bに相対回転可能に嵌め入れられている。
【0026】
図3に示すように、長手状に形成された第2ストラット部材60には、その他端に第3ストラット部材62の長手状の軸部62dを嵌め入れるねじ穴60aの開口60bと、そのねじ穴60aの内周面に第3ストラット部材62の長手状の軸部62dに形成された雄ねじ62cと螺合する雌ねじ60cとが備えられており、アジャストレバー56によってアジャストホイール62aが所定方向に回動させられると、第3ストラット部材62の軸部62dの雄ねじ62cと第2ストラット部材60のねじ穴60aの雌ねじ60cとのねじの作用によって第2ストラット部材60がブレーキシュー18側に移動させられてストラット54の全長が増加する。
【0027】
図1、図3、図4に示すように、ブレーキレバー48の一端部48aにはその外周縁部の一部がストラット52の一端部側すなわち第2ストラット部材60の一端部側に伸長された平板状の係合部48cが備えられ、第2ストラット部材60の一端部にはその第2ストラット部材60の一端部の幅方向の中間部においてその幅寸法Bより小さく且つブレーキレバー48の厚みCより大きい幅の切欠60dが形成されており、ブレーキレバー48の係合部48cが第2ストラット部材60の切欠60d内に配置され且つブレーキレバー48の係合部48cと第2ストラット部材60の一端部とが略円柱形状の第2連結ピン64によって相対回転可能に連結される。
【0028】
図4に示すように、略円柱形状の第2連結ピン64は、第2ストラット部材60の一端部に貫通された円柱形状の一対の嵌合穴60e,60fおよびブレーキレバー48の係合部48aに貫通された円柱形状の嵌合穴48dに相対回転可能に嵌合する円柱形状の軸部64aと、その軸部64aのバッキングプレート16側の端部において第2ストラット部材60の嵌合穴60fの径よりも大きい径で略円板形状に成形された大径部64bと、軸部64aのバッキングプレート16側とは反対側の端部において外周面の一部の経が縮径された段部64cとによって構成され、その段部64cに掛止部材66が掛け止められると嵌合穴60e,60f,48dから第2連結ピン64の脱落が防止され、ブレーキレバー48の係合部48cはその第2連結ピン64の軸部64aの軸心D回りに相対回転可能に第2ストラット部材60の一端部に連結される。
【0029】
ブレーキレバー48の先端部48eには、図示されていないパーキングブレーキ操作装置が操作されることによってそのブレーキレバー48の先端部48eがブレーキシュー18から離間する方向すなわち図1に示す矢印方向に回動するように操作力Fで引っ張られる図示されていないパーキングブレーキケーブルが備えられている。また、上記パーキングブレーキケーブルには、そのパーキングブレーキケーブルの周囲にばね材から成る線材がコイル状に複数回巻回され且つそのコイル状の線材が圧縮されることによりブレーキレバー48の先端部48eが操作力F方向と逆方向へ戻るように常時付勢される図示されていないリターンスプリングが備えられており、ドラムブレーキ10の非制動時おいてブレーキレバー48の先端部48eが上記リターンスプリングの付勢力により操作力F方向と逆方向へ回動するとブレーキレバー48の外周縁部の一部である当接部48fがブレーキシュー18のシューリム36に当接してその回動が抑止される。
【0030】
図1、図3に示すように、ストラット54は、その一端部である第2ストラット部材60の一端部が第2連結ピン64を介してブレーキレバー48に支持され、その他端部である第1ストラット部材58の係合凹部58aがその係合凹部58aを支持するためにシューウェブ34の一端部に切り欠かれた切欠34aに支持されることによって、一対のブレーキシュー18,20の一端部間に配設されるものである。また、ストラット54は、非制動時のリターンスプリング24の付勢力によって、ストラット54の他端部である第1ストラット部材58の係合凹部58aにブレーキシュー20の一端部が当接されると共に、ストラット54の一端部である第2ストラット部材60の一端部が第2連結ピン64を介してブレーキレバー48の係合部48cに連結していることによりそのブレーキレバー48が操作力F方向と逆方向に回動しようとするのをブレーキレバー48の当接部48fがシューリム36に当接することによって抑止されるので、一対のブレーキシュー18,20の一端部間の離間量が制限されて、一対のブレーキシュー18,20とブレーキドラム12の内周面14との間隔が規定される。
【0031】
アジャストレバー56は、例えば鋼板からプレス加工により図1、図3に示すように成形されており、そのアジャストレバー56の基端部56aに貫通された貫通穴にシューウェブ34上に突設された略円柱形状の軸部材68が相対回転可能に嵌め入れられることによって、アジャストレバー56はその軸部材68回りに回動可能にブレーキシュー20のシューウェブ34に配設されている。
【0032】
また、アジャストレバー56は、その基端部56aである回動中心部からアジャストホイール62a側に長手状に延長される延長部56bと、その延長部56bの先端部から略円板形状のアジャストホイール62aの外周面に備えられた複数の係合歯62eの一つに伸長し図示されていないブレーキペダル操作によるブレーキ制動時にその係合歯62eと係合する平板状の係合板56cと、延長部56bの中間部から第1ストラット部材58側に伸長しその第1ストラット部材58の係合凹部58aに当接する当接部56dとを一体的に備えている。また、アジャストレバー56には、図1に示すようにアジャストレバー56を軸部材68回り矢印E方向に回動するように常時付勢するために、延長部56bの中間部とブレーキシュー20の他端部との間に張設させたコイル状のスプリング70が備えられている。
【0033】
ブレーキペダルが操作されないブレーキ非制動時において、アジャストレバー56は、上記スプリング70の付勢力によって軸部材68回り矢印E方向に回動しようとするが当接部56dが第1ストラット部材58の係合凹部58aに当接され止められていることによって、軸部材68回りの回動が抑止される。また、リターンスプリング24の付勢力は、スプリング70の付勢力より大きいため、スプリング70の付勢力によってアジャストレバー56の当接部56dが第1ストラット部材58すなわちストラット54をブレーキシュー18側へ移動するように付勢しても一対のブレーキシュー18,20の一端部は拡開しない。
【0034】
ブレーキペダル操作によるブレーキ制動時において、一対のブレーキシュー18,20が拡開すると、ストラット54の一端部すなわち第2ストラット部材60の一端部は第2連結ピン64によってブレーキレバー48の係合部48cと連結しているので第2ストラット部材60すなわちストラット54はブレーキシュー18側に移動させられる。すなわち、ブレーキペダル操作によるブレーキ制動時において、一対のブレーキシュー18,20の拡開量と第1ストラット部材58とブレーキシュー20との隙間とは略同じであり、一対のブレーキシュー18,20の拡開量に応じてアジャストレバー56はその当接部56dが第1ストラット部材58と当接して止められるまで軸部材68回り矢印E方向に回動する。
【0035】
以上のように構成されたドラムブレーキ10は、車両走行中に図示されていないブレーキペダル操作に伴ってホイールシリンダ22のピストンが突き出されることにより一対のブレーキシュー18,20の一端部が互いに離隔する方向に拡開され制動力が発生する。そして、ブレーキペダル操作が繰り返し使用されてライニング40,42が摩耗しシュー間隙が大きくなると、ホイールシリンダ22により一対のブレーキシュー18、20が拡開させられることによって、アジャストレバー56の係合板56cはアジャストレバー56の軸部材68回りの回動に連動してアジャストホイール62aの係合歯62eと係合して噛み合いライニング40,42の摩耗量によってそのアジャストホイール62aが軸部62d回りに回動させられる。それにより、ストラット54が伸長させられシュー間隙が調節される。
【0036】
ブレーキペダル操作解除時には、リターンスプリング24の付勢力に従ってブレーキシュー20と第1ストラット部材58とが当接するまでストラット54がブレーキシュー20側へ移動させられるのに伴い、アジャストレバー56はスプリング70の付勢力に抗して矢印E方向とは反対方向に回動させられる。また、ブレーキペダル操作解除時のアジャストレバー56の戻り回動時には、軸部62d等の摩擦による回転抵抗によってアジャストホイール62aの戻り回転が阻止され、平板状の係合板56cが係合歯62eを乗り越えるようになっている。
【0037】
車両駐車時において、図示されていないパーキングブレーキ操作装置が操作されることにより前記パーキングブレーキケーブルを介してブレーキレバー48の先端部48eが操作力Fで引っ張られると、ブレーキレバー48のレバー比に基づいてその操作力Fより大きくされた力Ftがブレーキレバー48の係合部48cに作用し、第2連結ピン64を介して相対回転可能に連結されたブレーキレバー48の係合部48cおよび第2ストラット部材60の一端部が第1連結ピン50の軸心Aと第1ストラット部材58の係合凹部58aとを結ぶ直線Gに接近するように第1連結ピン50回りに回動してその第1連結ピン50と第1ストラット部材58の係合凹部58aとの間が離間すると共に一対のブレーキシュー18,20の一端部が拡開する。
【0038】
図1、図5に示すパーキングブレーキ作動時において、第1連結ピン50の軸心Aと第2連結ピン64の軸心Dとの間の距離をL3、第1連結ピン50の軸心Aとブレーキレバー48の先端部48eとを結ぶ直線H方向における第2連結ピン64の軸心Dとブレーキレバー48の先端部48eとの間の距離をL2、第1連結ピン50の軸心Aとブレーキレバー48の先端部48eとを結ぶ直線H方向における第1連結ピン50の軸心Aと第2連結ピン64の軸心Dとの間の距離をL1、第2連結ピン64の軸心Dとストラット54の他端部と結ぶ直線Iに対する第2連結ピン64の軸心Dと第1連結ピン50の軸心Aとを結ぶ直線Jの傾きをαとした場合、ブレーキレバー48の先端部48eに操作力Fが操作されると、ブレーキレバー48の係合部48cである第2連結ピン64には操作力Fの大きさがブレーキレバー48のレバー比((L1+L2)/L3)に基づいて大きくされた力Ftすなわち((L1+L2)/L3)・Fが作用する。
【0039】
それによって、第2連結ピン64を介してブレーキレバー48の係合部48cとストラット54の一端部とが第1連結ピン50の軸心A回り第1連結ピン50の軸心Aとストラット54の他端部とを結ぶ直線Gに接近する方向に回動しようとして、第2連結ピン64の軸心Dからストラット54の他端部方向において第2連結ピン60に作用する力Ftよりも大きい力FsすなわちFt/sinαと、第2連結ピン64の軸心Dから第1連結ピン50の軸心A方向において第2連結ピン64に作用する力Ftよりも大きい力FpすなわちFs・cosαとが作用する。
【0040】
ここで、図1に示す本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10は、図8に示す従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ(以下、従来のドラムブレーキという)100と大きさが同じであって、例えば、従来のドラムブレーキ100においてL1’=18mm、L2’=99mm、ドラムブレーキ10においてL1=6.84mm、L2=99mm、L3=20mm、α=20°に設計されたものである。
【0041】
上記設計値において、ドラムブレーキ10のブレーキレバー48の先端部48eおよび従来のドラムブレーキ100のブレーキレバー116の先端部116cに同じ大きさの力の操作力Fが操作させると、従来のドラムブレーキ100においてストラット112を介してブレーキシュー108に6.5F(Fs’)の大きさの力が作用し、第1連結ピン118を介してブレーキシュー106に5.5F(Fp’)の大きさの力が作用するが、本実施例のドラムブレーキ10においてはストラット54を介してブレーキシュー20に約15.5F(Fs)の大きさの力が作用し、第1連結ピン50を介してブレーキシュー18に約14.5F(Fp)の大きさの力が作用する。上記算出された値は、従来のドラムブレーキ100において示された式Fs’=((L1’+L2’)/L1’・F)、Fp’=(L2’/L1’)・F、および本実施例のドラムブレーキ10において示された式Ft=((L1+L2)/L3)・F、Fs=Ft/sinα、Fp=Fs・cosαに上記設計値を代入したものである。
【0042】
そのため、ブレーキレバー48の係合部48cとストラット54の一端部との間が第2連結ピン64によって回動可能に連結されることによって、パーキングブレーキ作動時ブレーキレバー48の先端部48eに操作力Fが操作されてブレーキレバー48の係合部48cに力Ftが作用すると、その回動可能に連結されたブレーキレバー48の係合部48cおよびストラット54の一端部が第1連結ピン50とストラット54の他端部とを結ぶ直線Gに接近するように第1連結ピン50回りに回動して第1連結ピン50とストラット54の他端部との間を離間させるので、ストラット54おいて従来のドラムブレーキ100の力Fs’より大きい力Fsが作用するとともに第1連結ピン50において従来のドラムブレーキ100の力Fp’より大きい力Fpが作用することから、一対のブレーキシュー18,20の拡開する拡開力が従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100に比較して大きくなる。
【0043】
ドラムブレーキ10において、第1連結ピン50の軸心Aと第2連結ピン64の軸心Dとを結ぶ直線Jがストラット54の他端部とバッキングプレート16の中心Kとの間を通るようにその第1連結ピン50と第2連結ピン64とが配置されると、第2連結ピン64の軸心Dとストラット54の他端部と結ぶ直線Iに対する第1連結ピン50の軸心Aと第2連結ピン64の軸心Dとを結ぶ直線Jの傾きαが好適な大きさになり、ブレーキレバー48の先端部48eに操作力Fが操作されると、ストラット54を介してブレーキシュー20に作用する力Fsの大きさFt/sinαと、第1連結ピン50を介してブレーキシュー18に作用する力Fpの大きさFs・cosαとが好適に大きくなり、一対のブレーキシュー18,20の拡開する拡開力が好適に大きくなる。
【0044】
図4に示すように、第2ストラット部材60の一端部はその一対の嵌合穴60e,60f内に第2連結ピン64の軸部64aの両端部を相対回転可能に嵌め入れており、ブレーキレバー48の係合部48cはその嵌合穴48d内に第2連結ピン64の軸部64aの中間部を相対回転可能に嵌め入れているため、パーキングブレーキ制動時においてブレーキレバー48の係合部48cからストラット54に作用する大きな力Fsを第2連結ピン64の軸部64aを介してストラット54の一端部である第2ストラット部材60の一端部に好適に伝達することができる。
【0045】
図6、図7は、本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10による一対のブレーキシュー18,20の摩擦材40,42とブレーキドラム12の内周面14との摩擦係数μに対するパーキングブレーキの効きと、従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100による一対のブレーキシュー106,108の摩擦材とブレーキドラム102の内周面102aとの摩擦係数μに対するパーキングブレーキの効きとを、BEF(Brake Effectiveness Factor)で表した図であり、上記BEFは計算によって求められたものである。また、図6は、本実施例のドラムブレーキ10と従来のドラムブレーキ100とが車両前進時に使用されたものであり、図7は、本実施例のドラムブレーキ10と従来のドラムブレーキ100とが車両後進時に使用されたものである。
【0046】
図6、図7において、実線は改良型である本実施例のドラムブレーキ10のパーキングブレーキの効き(BEF)を示し、破線は従来型である従来のドラムブレーキ100のパーキングブレーキの効き(BEF)を示し、一点鎖線は従来のドラムブレーキ100のパーキングブレーキの効き(BEF)に対して本実施例のドラムブレーキ10のパーキングブレーキの効き(BEF)がどれだけ向上したかを示す効きUP率(%)である。
【0047】
図6、図7によれば、車両前進時および車両後進時において本実施例のドラムブレーキ10のパーキングブレーキの効き(BEF)は従来のドラムブレーキ100のパーキングブレーキの効き(BEF)に比較して高く約2倍以上効きを有している。また、本実施例のドラムブレーキ10のパーキングブレーキの効き(BEF)は、車両後進時に比べ車両前進時に使用されるほうがパーキングブレーキの効きが高い。
【0048】
つまり、本実施例のドラムブレーキ10は、上述のようにブレーキレバー48の係合部48cとストラット54の一端部との間が第2連結ピン64を介して回動可能に連結されることにより、ブレーキレバー48の先端部48eに操作力Fが操作されると一対のブレーキシュー18,20の拡開する拡開力Fs,Fpが従来のドラムブレーキ100に比較して大きくなるので、そのドラムブレーキ10のパーキングブレーキの効きがドラムブレーキ100のパーキングブレーキの効きに比較して向上する。そのため、ドラムブレーキ10の大きさを大きくしないで、パーキングブレーキの効き性能を向上させることができる。
【0049】
本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10によれば、ブレーキレバー48の係合部48cとストラット54の一端部との間が回動可能に連結されているため、制動時ブレーキレバー48の先端部48eに操作力Fが操作されてレバー比((L1+L2)/L3)に基づいて操作力Fより大きくされた力Ftがブレーキレバー48の係合部48cに作用すると、その回動可能に連結されたブレーキレバー48の係合部48cおよびストラット54の一端部が第1連結ピン50とストラット54の他端部とを結ぶ直線Gに接近するように第1連結ピン50回りに回動して第1連結ピン50とストラット54の他端部との間を離間させて一対のブレーキシュー18,20を拡開させるので、レバー比((L1+L2)/L3)に基づいて操作力Fより大きくされた力Ftの大きさよりも大きい力Fs,Fpがストラット54の一端部から他端部方向および係合部48cから第1連結ピン50方向に作用して一対のブレーキシュー18,20の拡開する拡開力が従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100に比較して大きくなる。そのため、リーディングトレーリング型ドラムブレーキ10の大きさを大きくしないでパーキングブレーキの効きを向上させることができる。
【0050】
また、本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10によれば、ブレーキレバー48の係合部48cは、ストラット54の一端部側に伸長されたものであり、ブレーキレバー48の係合部48cとストラット54の一端部とが第2連結ピン64によって相対回転可能に連結され、第1連結ピン50と第2連結ピン64とを結ぶ直線Jがストラット54の他端部とバッキングプレート16の中心Kとの間を通るように、その第1連結ピン50とその第2連結ピン64とが配置されているため、制動時ブレーキレバー48の先端部48eに操作力Fが操作されてレバー比((L1+L2)/L3)に基づいて操作力Fより大きくされた力Ftが第2連結ピン64に作用すると、その第2連結ピン64が第1連結ピン50とストラット54の他端部とを結ぶ直線Gに接近するように第1連結ピン50回りに回動して第1連結ピン50とストラット54の他端部との間を離間させて一対のブレーキシュー18,20を拡開させるので、その一対のブレーキシュー18,20の拡開する拡開力を従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100に比較して好適に大きくすることができる。
【0051】
また、本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10によれば、ストラット54の一端部には、そのストラット54の一端部の幅方向の中間部においてその幅寸法Bより小さく且つブレーキレバー48の厚みCより大きい幅の切欠60dが形成されており、ブレーキレバー48の係合部48cは、その切欠60d内に配置されるものであって、第2連結ピン64は、円柱形状の軸部64aを有し、ストラット54の一端部には、第2連結ピン64の軸部64aの両端部を相対回転可能に嵌め入れる一対の嵌合穴60e,60fが備えられ、ブレーキレバー48の係合部48cには、第2連結ピン64の軸部64aの中間部を相対回転可能に嵌め入れる嵌合穴48dが備えられているため、制動時ブレーキレバー48の係合部48cからストラット54に作用する大きな力Fsを第2連結ピン64を介してストラット54の一端部に好適に伝達することができる。
【0052】
また、本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10は、従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100において、ブレーキレバー48の形状、第1連結ピン50および第2連結ピン64の配置、第2ストラット部材60の形状が変更されたものであり、既存の構成部品および車両のケーブル配索変更などの大幅な設計変更を伴わないので、本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10を安価に製造することができる。また、本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10は、従来のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ100に比較してパーキングブレーキの効き性能が高いので、リーディングトレーリング型ドラムブレーキ10を従来ものに比較して小型化することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0054】
たとえば、本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10において、一対のブレーキシュー18,20の一端部を拡開させるためにホイールシリンダ22が使用されたが一対のブレーキシュー18,20の一端部を拡開させる拡開装置であればどのようなものが使用されてもよい。
【0055】
また、本実施例のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ10において、ブレーキレバー48の係合部48cはシュー間隙自動調節機構が備えられたストラット54の一端部に相対回転可能に連結されたが、ストラット54にシュー間隙自動調節機構が備えられていないストラットでも本発明を適用することができる。
【0056】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
10:リーディングトレーリング型ドラムブレーキ
12:ブレーキドラム(回転ドラム)
16:バッキングプレート
18,20:一対のブレーキシュー
22:ホイールシリンダ(拡開装置)
24:リターンスプリング(第1スプリング)
28:アンカー部材
30:スプリング(第2スプリング)
48:ブレーキレバー
48a:基端部
48c:係合部
48d:嵌合穴
48e:先端部
50:第1連結ピン
54:ストラット
60d:切欠
60e,60f:一対の嵌合穴
64:第2連結ピン
64a:軸部
B:幅寸法
C:ブレーキレバーの厚み
F:操作力
J:第1連結ピンと第2連結ピンとを結ぶ直線
K:バッキングプレートの中心
((L1+L2)/L3):ブレーキレバーのレバー比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と一体的に回転する回転ドラムと、バッキングプレート上に拡開可能に配設された円弧状を成す一対のブレーキシューと、該一対のブレーキシューの一端部間に配設され該一対のブレーキシューの一端部を拡開させる拡開装置と、該一対のブレーキシューの一端部間に配設され非制動時の該一対のブレーキシューと該回転ドラムの内周面との間隔を規定する長手状のストラットと、該一対のブレーキシューの一端部を互いに接近する方向に付勢する第1スプリングと、該一対のブレーキシューの一方の一端部に基端部が第1連結ピンによりその第1連結ピン回りに相対回転可能に連結された長手状のブレーキレバーと、該ブレーキレバーの外周縁部において該第1連結ピンから所定距離離間し該ストラットの一端部と係合する係合部と、該一対のブレーキシューの他端部間に固設されたアンカー部材と、該一対のブレーキシューの他端部を互いに接近する方向に付勢する第2スプリングとを備え、
制動時前記ブレーキレバーの先端部に操作された操作力により前記ブレーキレバーが前記第1連結ピン回りに回動することによって、前記ブレーキレバーにおける前記先端部、前記第1連結ピン、前記係合部の位置に基づいて算出されるレバー比に基づいて前記操作力より大きくされた力が前記係合部を介して前記ストラットに作用し前記一対のブレーキシューの他方が拡開すると共に該ストラットに作用した力の反作用により前記第1連結ピンを介して一対のブレーキシューの一方が拡開するリーディングトレーリング型ドラムブレーキであって、
前記ブレーキレバーの係合部と前記ストラットの一端部との間が回動可能に連結されていることを特徴とするリーディングトレーリング型ドラムブレーキ。
【請求項2】
前記ブレーキレバーの係合部は、前記ストラットの一端部側に伸長されたものであり、
前記ブレーキレバーの係合部と前記ストラットの一端部とが第2連結ピンによって相対回転可能に連結され、
前記第1連結ピンと前記第2連結ピンとを結ぶ直線が前記ストラットの他端部と前記バッキングプレートの中心との間を通るように、該第1連結ピンと該第2連結ピンとが配置されていることを特徴とする請求項1のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ。
【請求項3】
前記ストラットの一端部には、該ストラットの一端部の幅方向の中間部においてその幅寸法より小さく且つ前記ブレーキレバーの厚みより大きい幅の切欠が形成されており、
前記ブレーキレバーの係合部は、前記切欠内に配置されるものであって、
前記第2連結ピンは、円柱形状の軸部を有し、
前記ストラットの一端部には、前記第2連結ピンの軸部の両端部を相対回転可能に嵌め入れる一対の嵌合穴が備えられ、
前記ブレーキレバーの係合部には、前記第2連結ピンの軸部の中間部を相対回転可能に嵌め入れる嵌合穴が備えられていることを特徴とする請求項2のリーディングトレーリング型ドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−47485(P2011−47485A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197448(P2009−197448)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】