説明

ルウ用油脂組成物

【課題】
本発明の目的は、トランス脂肪酸含量が低いにもかかわらず、ルウを使用して製造される加工食品にコク味及び香味を付与することのできるルウ用油脂組成物及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、トランス脂肪酸含量が低いにもかかわらず、コク味及び香味を有するルウを使用して製造される加工食品を提供することである。
【解決手段】
本発明のルウ用油脂組成物は、パーム油の分別硬質油を50質量%以上含有するルウ用油脂組成物であって、該ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が3質量%以上12質量%未満であることを特徴とする。
また、本発明のルウは、本発明のルウ用油脂組成物を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス脂肪酸含量が低いにもかかわらず、ルウを使用して製造される加工食品にコク味及び香味を付与することのできるルウ用油脂組成物及びその製造方法に関するものである。
また、本発明は、トランス脂肪酸含量が低いにもかかわらず、コク味及び香味を有するルウを使用して製造される加工食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等の加工食品に使用されるルウは、小麦粉及び食用油脂を混合加熱した後、香辛料、調味料等を混合することで製造される。得られたルウは、更に容器に流し込み、冷却することで汎用性のある固形ルウとすることもできる。これらのルウは、カレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等の加工食品にとろみ、コク味、香味を付与することができるため、これらのルウを使用して製造されるカレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等の加工食品は、とろみがあり、コク味や香味を有するものである。
【0003】
ルウに用いる油脂としては、カレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等のルウを使用して製造される加工食品にコク味や香味を付与することができることから、豚脂、牛脂やこれらを水素添加して得られる硬化油等の動物油が用いられてきた。
しかしながら、これらの動物油には、コレステロールが多く含まれており、近年は消費者の健康志向から、コレステロールが多く含まれる動物油に代えて、植物油が用いられるようになった。植物油を固形ルウに使用する場合、夏場の環境温度の上昇に伴う固形ルウからの油脂の滲み出しやこの固形ルウからの油脂の滲み出しに伴う固形ルウ表面の白色化の防止を考慮し、一般的に植物油を部分水素添加して得られる硬化油(以下、部分水素添加して得られる硬化油は、部分水添硬化油とする)が用いられてきた。
【0004】
植物油の部分水添硬化油は、水素添加によって生成するトランス脂肪酸を含有している。近年、トランス脂肪酸に関しては、ヒトをはじめ動物が長期間多量に摂取した場合には、血中総コレステロール値及び悪玉と呼ばれる低密度リポ蛋白質コレステロール値を高め、肥満や虚血性心疾患などの原因となりうるという学説が欧州や米国から出て来ており、一定水準以上のトランス脂肪酸を含有する食品については表示を義務化する等の対策をとる国が増えてきている。我が国においても世界的な流れを受け、食品中のトランス脂肪酸含量を低減させる試みが検討されており、ルウについても、トランス脂肪酸含量の低減化が求められている。
【0005】
ルウにおけるトランス脂肪酸の低減化の試みとしては、エステル交換油を使用したタイプのルウ用油脂が考案されている(例えば、特許文献1、2、3)。
しかしながら、これらのエステル交換油はトランス脂肪酸を実質的に含まないことから、ルウ用油脂のトランス脂肪酸含量は実質0質量%となるが、得られるカレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等のルウを使用して製造される加工食品におけるコク味が満足いくものではなかった。
【0006】
以上のような背景から、カレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等のルウを使用して製造される加工食品にコク味及び香味を付与する機能を維持したまま、トランス脂肪酸含量をできる限り低減したルウ用油脂の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−258474号公報
【特許文献2】特開2003−204774号公報
【特許文献3】特開2006−288232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、トランス脂肪酸含量が低いにもかかわらず、ルウを使用して製造される加工食品にコク味及び香味を付与することのできるルウ用油脂組成物及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、トランス脂肪酸含量が低いにもかかわらず、コク味及び香味を有するルウを使用して製造される加工食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、パーム油の分別硬質油を50質量%以上配合したルウ用油脂組成物を、ルウを使用して製造される加工食品のルウに使用することで、トランス脂肪酸含量を低減した場合でも、加工食品のコク味及び香味を維持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明の第1の発明は、パーム油の分別硬質油を50質量%以上含有するルウ用油脂組成物であって、該ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が3質量%以上12質量%未満であるルウ用油脂組成物である。
【0010】
本発明の第2の発明は、前記パーム油の分別硬質油が、パームミッドフラクション、パームステアリン、パームミッドフラクションとパームステアリンとの混合油、パームミッドフラクションのエステル交換油、パームステアリンのエステル交換油及びパームミッドフラクションとパームステアリンとの混合油のエステル交換油からなる群から選ばれる1種又は2種以上である第1の発明に記載のルウ用油脂組成物である。
【0011】
本発明の第3の発明は、前記パーム油の分別硬質油が、パームミッドフラクション及びパームステアリンからなる第1の発明に記載のルウ用油脂組成物である。
【0012】
本発明の第4の発明は、前記パーム油の分別硬質油が、パームステアリンのエステル交換油及びパームミッドフラクションからなる第1の発明に記載のルウ用油脂組成物である。
【0013】
本発明の第5の発明は、動植物油を部分水素添加して得られる硬化油を含有する第1の発明〜第4の発明のいずれか1つの発明に記載のルウ用油脂組成物である。
【0014】
本発明の第6の発明は、前記動植物油を部分水素添加して得られる硬化油が、パーム油を部分水素添加して得られる硬化油又は菜種油を部分水素添加して得られる硬化油である第5の発明に記載のルウ用油脂組成物である。
【0015】
本発明の第7の発明は、する第1の発明〜第6の発明のいずれか1つの発明に記載のルウ用油脂組成物を含有するルウである。
【0016】
本発明の第8の発明は、前記ルウが、カレールウ、ホワイトルウ、シチュールウ又はハヤシルウである第7の発明に記載のルウである。
【0017】
本発明の第9の発明は、第7の発明又は第8の発明に記載のルウを使用した加工食品である。
【0018】
本発明の第10の発明は、前記加工食品が、カレーソース、ホワイトソース、シチュー又はハヤシソースである第9の発明に記載の加工食品である。
【0019】
本発明の第11の発明は、ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が3質量%以上12質量%未満になるように、パーム油の分別硬質油50〜94質量%と、動植物油を部分水素添加して得られる硬化油6〜50質量%とを混合溶解するルウ用油脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トランス脂肪酸含量が低いにもかかわらず、ルウを使用して製造される加工食品にコク味及び香味を付与することのできるルウ用油脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、トランス脂肪酸含量が低いにもかかわらず、コク味及び香味を有するルウを使用して製造される加工食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明のルウ用油脂組成物について説明する。
本発明のルウ用油脂組成物は、パーム油の分別硬質油を50質量%以上含有するルウ用油脂組成物であって、該ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が3質量%以上12質量%未満であることを特徴とする。
ルウ用油脂組成物中のパーム油の分別硬質油が50質量%以上であり、ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が3質量%以上12質量%未満であると、ルウ用油脂組成物中のトランス脂肪酸含量が低くても、得られるルウを使用して製造される加工食品がコク味を有するものとなり、また加工食品の香味の発現も優れたものとなる。
【0022】
本発明のルウ用油脂組成物の原料としては、パーム油の分別硬質油が使用される。
本発明において、パーム油の分別硬質油とは、パーム油やパーム油の分別油を分別処理(乾式分別、溶剤分別、界面活性剤分別等)して得られる硬質部(結晶部又はステアリン部と呼ばれることもある)のことを意味する。また、パーム油の分別硬質油としては、パーム油の分別硬質油を部分水素添加して得られるパーム油の分別硬質油の部分水添硬化油やパーム油の分別硬質油をエステル交換反応することにより得られるパーム油の分別硬質油のエステル交換油を用いることもできる。ルウ用油脂組成物にパーム油の分別硬質油を使用すると、ルウ用油脂組成物中のトランス脂肪酸含量が低くても、得られるルウを使用して製造される加工食品がコク味を有するものとなり、また加工食品の香味の発現も優れたものとなる。
パーム油の分別硬質油のヨウ素価は、10〜55であることが好ましく、20〜52であることがより好ましく、30〜49であることが最も好ましい。パーム油の分別硬質油のヨウ素価が前記範囲にあると、口溶け等官能的に好ましいものとなる。
【0023】
パーム油の分別硬質油の具体例としては、パームミッドフラクション(以下、PMFとする)(パーム油の中融点部、パーム油の中融点分別油と呼ばれることもある)、パームステアリン、ハードステアリン及びPMFとパームステアリンとの混合油等が挙げられる。また、PMF、パームステアリン及びハードステアリンやこれらの混合油をエステル交換反応することにより得られるPMFのエステル交換油、パームステアリンのエステル交換油、ハードステアリンのエステル交換油及びPMFとパームステアリンとの混合油のエステル交換油(PMFとパームステアリンとの混合油を原料油脂とし、この原料油脂をエステル交換反応することにより得られるエステル交換油)等も挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
特にパーム油の分別硬質油としては、PMF及びパームステアリンの2種を併用したもの、パームステアリンのエステル交換油及びPMFの2種を併用したもの、PMFのエステル交換油及びPMFの2種を併用したものであることが好ましい。
なかでもパーム油の分別硬質油として、PMF及びパームステアリンのエステル交換油の2種を併用したものは、固形ルウに好適に用いることができる。パーム油の分別硬質油として、パームステアリンのエステル交換油及びPMFの2種を併用したものを用いると、固形ルウとして使用した場合、夏場の環境温度の上昇に伴う固形ルウからの油脂の滲み出しやこの固形ルウからの油脂の滲み出しに伴う固形ルウの白色化を防止することができ、また、得られるルウを使用して製造される加工食品の香味がより良好なものとなる。
なお、PMF、パームステアリン、ハードステアリン、PMFのエステル交換油、パームステアリンのエステル交換油、ハードステアリンのエステル交換油及びPMFとパームステアリンとの混合油のエステル交換油は、実質的にトランス脂肪酸を含まないものである。
【0024】
PMFのヨウ素価は、30〜50であることが好まし好ましく、32〜48であることがより好ましく、34〜46であることが最も好ましい。
PMFとしては、より具体的にはソフトパームミッドフラクション(以下、ソフトPMFとする)及びハードパームミッドフラクション(以下、ハードPMFとする)が挙げられ、ソフトPMF及びハードPMFを組み合わせて使用することもできる。
ソフトPMFは、パーム油を分別処理して得られる軟質部(パームオレインと呼ばれることもある)を、更に分別処理して得られる硬質部のことである。ソフトPMFのヨウ素価のヨウ素価は、40〜50であることが好ましく、42〜48であることがより好ましく、43〜47であることが最も好ましい。
ハードPMFは、ソフトPMFを分別処理して得られる硬質部のことである。ハードPMFのヨウ素価のヨウ素価は、30〜40であることが好ましく、32〜38であることがより好ましく、33〜37であることが最も好ましい。
PMFのヨウ素価が前記範囲にあると、市場での流通量が多く、パームステアリンやパームステアリンのエステル交換油との配合調整が容易となる。
【0025】
パームステアリンは、パーム油を分別処理して得られる硬質部のことである。パームステアリンのヨウ素価は、28〜48であることが好まし好ましく、30〜42であることがより好ましく、31〜38であることが最も好ましい。パームステアリンのヨウ素価が前記範囲にあると、市場での流通量が多く、PMFとの配合調整が容易となる。
【0026】
ハードステアリンは、パームステアリンを分別処理して得られる硬質部のことである。ハードステアリンのヨウ素価は、10〜20であることが一般的である。
【0027】
パーム油の分別硬質油として用いられるエステル交換油(PMFのエステル交換油、パームステアリンのエステル交換油、ハードステアリンのエステル交換油及びPMFとパームステアリンとの混合油のエステル交換油等)の原料油脂であるPMF、パームステアリン、ハードステアリン及びこれらの混合油のヨウ素価は、24〜48であることが好ましく、27〜44であることがより好ましく、30〜40であることが最も好ましい。また得られるエステル交換油(PMFのエステル交換油、パームステアリンのエステル交換油、ハードステアリンのエステル交換油及びPMFとパームステアリンとの混合油のエステル交換油等)のヨウ素価は、24〜48であることが好ましく、27〜44であることがより好ましく、30〜40であることが最も好ましい。エステル交換油の原料油脂のヨウ素価及びエステル交換油のヨウ素価が前記範囲にあると、PMFとの配合調整が容易なものとなる。
【0028】
パーム油の分別硬質油として用いられるエステル交換油(PMFのエステル交換油、パームステアリンのエステル交換油、ハードステアリンのエステル交換油及びPMFとパームステアリンとの混合油のエステル交換油等)を得るためのエステル交換反応は、化学的エステル交換、酵素的エステル交換のどちらでも行うことができる。
【0029】
化学的エステル交換は、ナトリウムメチラート等の化学触媒を触媒として用いてエステル交換反応が行われる。化学的エステル交換によるエステル交換反応は、位置特異性の乏しいエステル交換反応となる(ランダムエステル交換とも言われる)。
化学的エステル交換は、例えば、常法に従って、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、水洗にて触媒を洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
【0030】
酵素的エステル交換は、リパーゼを触媒として用いてエステル交換反応が行われる。
リパーゼは、リパーゼ粉末やリパーゼ粉末をセライト、イオン交換樹脂等の担体に固定化した固定化リパーゼを使用するができる。酵素的エステル交換によるエステル交換反応は、リパーゼの種類によって、位置特異性の乏しいエステル交換反応、1,3位特異性の高いエステル交換反応のどちらで行うこともできる。
位置特異性の乏しいエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
1,3位特異性の高いエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイムTLIM、リポザイムRMIM等)等が挙げられる。
酵素的エステル交換は、例えば、リパーゼ粉末又は固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、ろ過等によりリパーゼ粉末又は固定化リパーゼを除去後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
【0031】
エステル交換反応は、位置特異性の乏しいエステル交換反応で行うことが好ましい。位置特異性の乏しいエステル交換反応で行うと、固形ルウとして使用した場合、夏場の環境温度の上昇に伴う固形ルウからの油脂の滲み出しやこの固形ルウからの油脂の滲み出しに伴う固形ルウの白色化が起こりにくいものとなる。
位置特異性の乏しいエステル交換反応における位置特異性の乏しさの指標としては、例えば、ランダム化率で示すことができる。ランダム化率は、その値が高いほど、位置特異性の乏しいエステル交換反応であることを示している。ランダム化率は、例えば、油脂のトリアシルグリセロールを構成する全構成脂肪酸の脂肪酸組成(AOCS Ce1f−96準拠)と、エステル交換反応前後における油脂のトリアシルグリセロールの2位置の脂肪酸組成(AOCS Ch3−91準拠)から炭素数16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸を指標に算出することができる。
ランダム化率(%)=(エステル交換反応後の2位置のパルミチン酸−エステル交換反応前の2位置のパルミチン酸)/(全脂肪酸組成中のパルミチン酸−エステル交換反応前の2位置のパルミチン酸)×100
エステル交換反応におけるランダム化率は、10%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
【0032】
前述したとおり、パーム油の分別硬質油は、PMFとパームステアリンとを併用したものであることが好ましい。パーム油の分別硬質油におけるPMFとパームステアリンとの配合比は、具体的には、例えば、ソフトPMFとパームステアリンの場合は、ソフトPMF:パームステアリンの質量比で80:20〜20:80であることが好ましく、70:30〜30:70であることがより好ましく、60:40〜40:60であることが最も好ましい。
また前述したとおり、パーム油の分別硬質油は、PMFとパームステアリンのエステル交換油とを併用したものやPMFとPMFのエステル交換油とを併用したものであることが好ましく、その配合比は、PMFとパームステアリンとを併用した場合と同じ範囲で使用することができる。
パーム油の分別硬質油におけるPMFとパームステアリンとの配合比、PMFとパームステアリンのエステル交換油との配合比及びPMFとPMFのエステル交換油との配合比が前記範囲にあると、固形ルウとした場合、固形ルウとしての硬さが適当なものとなる。
【0033】
本発明のルウ用油脂組成物中におけるパーム油の分別硬質油の含量は、50質量%以上であることが好ましく、50〜94質量%であることがより好ましく、55〜92質量%であることが更に好ましく、60〜90質量%であることが最も好ましい。ルウ用油脂組成物中におけるパーム油の分別硬質油の含量が前記範囲にあると、ルウ用油脂組成物中のトランス脂肪酸含量が低くても、得られるルウを使用して製造される加工食品がコク味を有するものとなり、また香味の発現も優れたものとなる。
【0034】
本発明のルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量は、3質量%以上12質量%未満であることが好ましく、4質量%以上11質量%未満であることがより好ましく、5質量%以上10質量%未満であることがより好ましく、6質量%以上9質量%未満であることが最も好ましい。ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲にあると、パーム油の分別硬質油をベース油とすることで得られるルウを使用して製造される加工食品がコク味を有するものとなる。
従来の部分水添硬化油を含有するルウ用油脂には、全構成脂肪酸中に15質量%程度のトランス脂肪酸が含まれる。従って、本発明によると、従来品からトランス脂肪酸含量を20〜80質量%低減することができる。
なお、トランス脂肪酸含量は、AOCS法(Celf−96)に準じてガスクロマトグラフィー法にて測定することができる。
【0035】
本発明のルウ用油脂組成物は、ルウ油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲となるように、部分水添硬化油を含有させることができる。部分水添硬化油としては、ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲となれば、特に制限されることなく用いることができるが、前記したパーム油の分別硬質油の部分水添硬化油等の動植物油(動植物油とは、動物由来の油脂又は植物由来の油脂のことを意味する)の部分水添硬化油を好適に用いることができる。特にコレステロール含量の観点からは、植物油の部分水添硬化油を用いることが好ましい。
【0036】
動植物油の部分水添硬化油としては、例えば、大豆油、菜種油、ハイオレイック菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、ゴマ油、米油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、豚脂及び乳脂等やこれらのエステル交換油、分別油の部分水添硬化油が挙げられる。特に動植物油の部分水添硬化油としては、植物油の部分水添硬化油であるパーム油の部分水添硬化油又は菜種油の部分水添硬化油を用いることが好ましい。また、これらの動植物油の部分水添硬化油は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
動植物油の部分水添硬化油は、常法に従い、例えば、原料油脂にニッケル触媒を対油0.01〜0.3質量%添加し、温度120℃〜200℃、水素圧0.01〜0.3MPaの条件で水素添加反応を行うことにより得ることができる。
【0038】
動植物油の部分水添硬化油は、ヨウ素価が20〜90でトランス脂肪酸含量が10〜60質量%であることが好ましく、ヨウ素価が25〜85でトランス脂肪酸含量が15〜55質量%であることがより好ましい。動植物油の部分水添硬化油のヨウ素価及びトランス脂肪酸含量が前記範囲にあると、パーム油の分別硬質油を配合調整する場合、トランス脂肪酸含量が調整しやすくなる。
【0039】
本発明のルウ用油脂組成物中における動植物油の部分水添硬化油の含量は、6〜50質量%であることが好ましく、8〜45質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが最も好ましい。ルウ用油脂組成物中における動植物油の部分水添硬化油の含量が前記範囲にあると、パーム油の分別硬質油を配合調整する場合、トランス脂肪酸含量が調整しやすくなる。
【0040】
動植物油の部分水添硬化油の市販品としては、例えば、植物油の部分水添硬化油である大豆油の部分水添硬化油(商品名:大豆硬化油40、日清オイリオグループ株式会社製、融点40℃、ヨウ素価67.6、トランス脂肪酸含量46.1質量%)、菜種油の部分水添硬化油(商品名:菜種硬化油34、日清オイリオグループ株式会社製、融点34℃、ヨウ素価74.0、トランス脂肪酸含量37.3質量%)、綿実油の部分水添硬化油(商品名:綿実硬化油36、日清オイリオグループ株式会社製、融点36℃、ヨウ素価64.2、トランス脂肪酸含量34.8質量%)、コーン油の部分水添硬化油(商品名:コーン硬化油40、日清オイリオグループ株式会社製、融点40℃、ヨウ素価65.9、トランス脂肪酸含量40.1質量%)及びパーム油の部分水添硬化油(商品名:パーム硬化油47、日清オイリオグループ株式会社製、融点47℃、ヨウ素価38.1、トランス脂肪酸含量18.1質量%)等を例示することができる。
【0041】
本発明のルウ用油脂組成物は、効果を損なわない程度であれば、パーム油の分別硬質油、部分水添硬化油以外の動植物油を適宜配合することができる。具体的には、大豆油、菜種油、ハイオレイック菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、ゴマ油、米油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、豚脂及び乳脂等やこれらのエステル交換油及び分別油が挙げられ、これらは1種又は2種以上の組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明のルウ用油脂組成物は、必要に応じて通常のルウ用の油脂に用いられる添加剤を適宜配合することができる。具体的には、保存安定性向上、酸化安定性向上、熱安定性向上、油脂の結晶調整等を目的としたポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ビタミンE、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、オリザノール、ジグリセリド、シリコーン、トコフェロール及びレシチン等が挙げられる。
【0043】
本発明のルウ用油脂組成物は、パーム油の分別硬質油の含量及び全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲となれば、特に制限なく製造することができる。具体的には、パーム油の分別硬質油の含量及び全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲となるようにパーム油の分別硬質油と動植物油の部分水添硬化油とを混合溶解することで好適に製造することができる。パーム油の分別硬質油及び動植物油の部分水添硬化油は、前記したものを使用することができる。
本発明のルウ用油脂組成物中におけるパーム油の分別硬質油と動植物油の部分水添硬化油の配合比は、パーム油の分別硬質油:動植物油の部分水添硬化油の質量比で50:50〜94:6であることが好ましく、55:45〜92:8であることがより好ましく、60:40〜90:10であることが最も好ましい。より具体的には、ルウ用油脂組成物中の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲となるように、好ましくはパーム油の分別硬質油50〜94質量%と動植物油の部分水添硬化油6〜50質量%、より好ましくはパーム油の分別硬質油55〜92質量%と動植物油の部分水添硬化油8〜45質量%、最も好ましくはパーム油の分別硬質油60〜90質量%と動植物油の部分水添硬化油10〜40質量%とを混合溶解することで製造することができる。ルウ用油脂組成物中の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲にあり、ルウ用油脂組成物中におけるパーム油の分別硬質油と動植物油の部分水添硬化油の配合比及び含量が前記範囲にあると、トランス脂肪酸含量が低くても、得られるルウを使用して製造される加工食品がコク味を有するものとなり、ルウを使用して製造される加工食品においてコク味を効果的に発現させることができる。
【0044】
本発明のルウ用油脂組成物は、カレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等の加工食品に用いられるルウの油脂として好適に用いることができる。
【0045】
次に、本発明のルウについて説明する。
本発明のルウは、本発明のルウ用油脂組成物を含有することを特徴とする。
【0046】
ルウとは、小麦粉及び油脂を加熱混合し、必要に応じて、ここにカレー粉等の香辛料、食塩、糖類、調味料等の副原料を添加混合したものである。ルウは、カレー、シチュー、ハヤシ、ホワイトソース等の加工食品に用いることができる。
【0047】
本発明のルウは、カレールウ、シチュールウ、ハヤシルウ、ホワイトルウ等として用いることができる。
【0048】
本発明のルウは、固形状の固形ルウや液状の液状ルウのどちらの形態でも使用することができる。固形ルウとして使用する場合は、夏場の環境温度の上昇に伴う固形ルウからの油脂の滲み出しやこの固形ルウからの油脂の滲み出しに伴う固形ルウの白色化を防止することができる。
【0049】
本発明のルウは、油分を25〜75質量%含有することが好ましく、30〜60質量%含有することがより好ましく、30〜50質量%含有することが最も好ましい。
なお、本出願において、油分とは、本発明のルウ用油脂組成物を含めたルウに含まれる油脂の全てのことを意味する。
【0050】
本発明のルウ中における本発明のルウ用油脂組成物の含量は、本発明のルウ用油脂組成物中における前記パーム油の分別硬質油の含量に依存する。よって、本発明のルウ中における本発明のルウ用油脂組成物の含量は、本発明のルウに含まれる油分中における前記パーム油の分別硬質油の含量として規定することができる。
本発明のルウに含まれる油分中における前記パーム油の分別硬質油の含量は、50質量%以上であることが好ましく、50〜94質量%であることがより好ましく、55〜92質量%であることが更に好ましく、60〜90質量%であることが最も好ましい。つまり、本発明のルウに本発明のルウ用油脂組成物を配合する際、例えば、ルウ用油脂組成物中における前記パーム油の分別硬質油の含量が50質量%のものを使用する場合は、そのまま使用することが好ましい。また、例えば、ルウ用油脂組成物中における前記パーム油の硬質分別油の含量が100質量%のものを使用する場合は、本発明のルウに含まれる油分中における前記パーム油の分別硬質油の含量が50質量%となるまでは、他の植物油脂を配合することができる。他の植物油脂としては、通常、ルウに用いられるルウ用の油脂を使用することができる。
ルウに含まれる油分中におけるパーム油の分別硬質油の含量が前記範囲にあると、ルウに含まれる油分中のトランス脂肪酸含量が低くても、得られるルウを使用して製造される加工食品がコク味を有するものとなる。
【0051】
また、本発明のルウ中における前記パーム油の分別硬質油の含量は、12.5〜75質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましく、15〜50質量%であることが最も好ましい。
【0052】
本発明のルウに含まれる油分の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量は、3質量%以上12質量%未満であることが好ましく、4質量%以上11質量%未満であることがより好ましく、5質量%以上10質量%未満であることがより好ましい、6質量%以上9質量%未満であることが最も好ましい。ルウに含まれる油分の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲にあると、パーム油の分別硬質油をベース油とすることで得られるルウを使用して製造される加工食品がコク味を有するものとなる。
【0053】
本発明のルウに含まれる油分の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が前記範囲となるように、本発明のルウに含まれる油分中には部分水添硬化油を含有させることができる。部分水添硬化油としては、前記ルウ用油脂組成物で記載した動植物油の部分水添硬化油を用いることができる。
【0054】
本発明のルウに含まれる油分中における動植物油の部分水添硬化油の含量は、6〜50質量%であることが好ましく、8〜45質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが最も好ましい。ルウに含まれる油分中における動植物油の部分水添硬化油の含量が前記範囲にあると、パーム油の分別硬質油を配合調整する場合、トランス脂肪酸含量が調整しやすくなる。
【0055】
本発明のルウには、小麦粉が用いられる。小麦粉の配合量は特に制限されることはないが、本発明のルウ中における小麦粉の含量は、30〜75質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。
【0056】
本発明のルウには、油脂(油分)及び小麦粉以外の成分として、通常、ルウに配合される成分を適量使用することができる。具体的には、香辛料(カレー粉等)、食塩、砂糖、乳化剤、糖類、調味料、増粘安定剤、乳製品(牛乳、チーズ、粉乳、生クリーム等)、甘味料、酸味料、着色料、酸化防止剤、蛋白、pH調整剤、果実、果汁、はちみつ、着香料、水等を使用することができる。
【0057】
本発明のルウの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法で製造することができる。例えば、加熱溶解した油脂(油分)に小麦粉を加えて混合し、110〜120℃で撹拌しながら加熱焙煎した後、ここにカレー粉等の香辛料、食塩、糖類、調味料等の副材料を添加して、混合することで製造することができる。さらに、得られたルウを型に入れて、風冷等の冷却方法によって、0〜25℃で5〜120分間冷却し、固化させることにより、固形ルウとすることができる。
【0058】
次に、本発明の加工食品について説明する。
本発明の加工食品は、本発明のルウを使用して製造されることを特徴とする。
【0059】
本発明の加工食品としては、カレーソース(単にカレーと呼ばれることもある)、シチュー、ハヤシソース(ハヤシ、デミグラスソースと呼ばれることもある)、ホワイトソース等が挙げられる。
【0060】
本発明の加工食品の製造方法は、特に限定されるものではなく、本発明のルウ(カレールウ、シチュールウ、ハヤシルウ、ホワイトルウ等)、野菜、肉等を用いて、従来公知の方法で製造することができる。
本発明の加工食品は、レトルト食品(インスタント食品、即席食品と呼ばれることもある)として好適に使用することができる。
【0061】
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明について詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例の内容に、何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
(エステル交換油の調製)
〔エステル交換油1〕
パームステアリン(日清オイリオグループ株式会社社内調製品、ヨウ素価33、トランス脂肪酸含量0質量%、製法:パーム油を乾式分別して得られた硬質部)を、減圧下110℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラート(位置特異性:位置特異性乏しい)を添加し、減圧下110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、エステル交換油1を得た。エステル交換油1のヨウ素価は33、トランス脂肪酸含量は0質量%、ランダム化率(パルミチン酸ベース)は100%であった。
【0063】
〔エステル交換油2〕
パームステアリン(日清オイリオグループ株式会社社内調製品、ヨウ素価33、トランス脂肪酸含量0質量%、製法:パーム油を乾式分別して得られた硬質部)69質量部、パーム油(商品名:精製パーム油、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価52、トランス脂肪酸含量0質量%)1質量部及びスーパーオレイン(商品名:スーパーオレイン、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価60、トランス脂肪酸含量0質量%、製法:パーム油を乾式分別して得られた軟質部を、更に乾式分別して得られた軟質部?)30質量部を混合し、減圧下110℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラート(位置特異性:位置特異性乏しい)を添加し、減圧下110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、エステル交換油2を得た(特許文献3相当品)。エステル交換油2のヨウ素価は41.3、トランス脂肪酸含量は0.3質量%、ランダム化率(パルミチン酸ベース)は100%であった。
【0064】
(油脂組成物の調製)
表1に示した配合で原料油脂を混合し、実施例1〜3の油脂組成物、比較例1及び2の油脂組成物を得た。
表1に示した原料油脂は、以下のものを使用した。
ソフトPMF(日清オイリオグループ株式会社社内調製品、ヨウ素価45、トランス脂肪酸含量0質量%、製法:パームオレイン(ヨウ素価56)を乾式分別して得られた硬質部)。
パームステアリン(日清オイリオグループ株式会社社内調製品、ヨウ素価33、トランス脂肪酸含量0質量%、製法:パーム油を乾式分別して得られた硬質部)。
パーム油の部分水添硬化油1(商品名:パーム硬化油47、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価38.1、トランス脂肪酸含量18.1質量%、製法:ヨウ素価52であるパーム油を部分水素添加して得られた硬化油)。
パーム油の部分水添硬化油2(商品名:パーム硬化油43、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価44、トランス脂肪酸含量13.6質量%、製法:ヨウ素価52であるパーム油を部分水素添加して得られた硬化油)。
菜種油の部分水添硬化油(商品名:菜種硬化油34、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価74、トランス脂肪酸含量37.3質量%、製法:ヨウ素価116である菜種油を部分水素添加して得られた硬化油)。
【0065】
(風味標準品の調製)
一般的に使用されているコク味及び香味を有するルウ用油脂の標準品として、風味標準品の油脂組成物を調製した。
パーム油の脱色油(日清オイリオグループ株式会社工程品、ヨウ素価52、トランス脂肪酸含量0質量%)85質量部及菜種油の脱色油(日清オイリオグループ株式会社工程品、ヨウ素価116、トランス脂肪酸含量0質量%)15質量部を混合した後、常法に従ってヨウ素価44となるまで部分水素添加し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理することで、風味標準品の油脂組成物を得た。風味標準品の油脂組成物のヨウ素価は44、トランス脂肪酸含量は15.7質量%であった。
【0066】
原料油脂、エステル交換油、実施例の油脂組成物、比較例の油脂組成物及び風味標準品の油脂組成物のトランス脂肪酸含量は、AOCS法(Celf−96)に準じてガスクロマトグラフィー法にて測定した。
【0067】
【表1】

【0068】
(カレーソースの評価)
カレールウ用の油脂として、実施例1〜3の油脂組成物、比較例1及び2の油脂組成物及び風味標準品(コク味及び香味を有する)の油脂組成物を使用し、以下の方法により、カレールウ及びカレーソースを調製した。
各油脂組成物100g及び小麦粉100gを、加熱攪拌鍋に入れ、かき混ぜながら120℃に達するまで加熱した。次に各油脂組成物及び小麦粉の混合物を、攪拌混合しながら品温を約110℃まで下げ、カレー粉30g、食塩28g、調味料26g、砂糖17gを順次添加し、さらに攪拌混合することでカレールウを調製した。更にカレールウを攪拌しながら品温60℃まで冷却した後、ポリプロピレン製の型に流し込み、冷蔵庫で冷却することで固形カレールウを調製した。カレーソース中のカレールウ含量が20質量%となるように、固形カレールウをお湯に溶かすことで実施例4〜6のカレーソース、比較例3及び4のカレーソース及び風味標準品のカレーソースを得た。
コク味及び香味を有する風味標準品のカレーソースを標準とし、各カレーソースを8名のパネルが食した時の標準とのコク味及び香味(スパイス感)の違いを以下の基準で点数化し、各パネルの評点の平均値を算出することにより、得られたカレーソースの評価を行った。結果を表2に示す。
コク味
評価基準
標準と比べコク味が強く感じられる 4点
標準と同程度にコク味が感じられる 3点
標準と比べコク味が弱い 2点
標準と比べ明らかにコク味がない 1点

香味(スパイス感)
評価基準
標準と比べ香味が強く感じられる 4点
標準と同程度に香味が感じられる 3点
標準と比べ香味が弱い 2点
標準と比べ明らかに香味がない 1点
【0069】
【表2】

【0070】
表2から分かるように、パーム油の硬質油を50質量%以上含有するが、トランス酸含量が低い比較例1の油脂組成物を含有する比較例3のカレーソースは、コク味及び香味を有する風味標準品のカレーソースと比較して、香味は同程度であったが、コク味が弱いものであった。
また、表2から分かるように、トランス脂肪酸を8.2質量%含有するが、パーム油の硬質油含量が50質量%未満である比較例2の油脂組成物を含有する比較例4のカレーソースは、コク味及び香味を有する風味標準品のカレーソースと比較して、香味は同程度であったが、コク味が弱いものであった。
【0071】
一方、表2から分かるように、実施例1〜3の油脂組成物を含有する実施例4〜6のカレーソースは、通常のルウ用油脂よりもトランス脂肪酸含量を1/3〜1/4低減した油脂組成物を使用しているにもかかわらず、コク味及び香味を有する風味標準品のカレーソースと比較して、同程度の以上のコク味及び香味を有していた。
また、実施例5のカレーソースと実施例6のカレーソースとの結果から、パーム油の硬質油含量が高いほど、香味がより強く発現されることが分かった。
【0072】
実施例及び比較例の結果から、パーム油の硬質油含量が50質量%以上である油脂をルウに使用すると、トランス脂肪酸含量が低くても、コク味及び香味を効果的に発現させることができることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーム油の分別硬質油を50質量%以上含有するルウ用油脂組成物であって、該ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が3質量%以上12質量%未満であるルウ用油脂組成物。
【請求項2】
前記パーム油の分別硬質油が、パームミッドフラクション、パームステアリン、パームミッドフラクションとパームステアリンとの混合油、パームミッドフラクションのエステル交換油、パームステアリンのエステル交換油及びパームミッドフラクションとパームステアリンとの混合油のエステル交換油からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載のルウ用油脂組成物。
【請求項3】
前記パーム油の分別硬質油が、パームミッドフラクション及びパームステアリンからなる請求項1に記載のルウ用油脂組成物。
【請求項4】
前記パーム油の分別硬質油が、パームステアリンのエステル交換油及びパームミッドフラクションからなる請求項1に記載のルウ用油脂組成物。
【請求項5】
動植物油を部分水素添加して得られる硬化油を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のルウ用油脂組成物。
【請求項6】
前記動植物油を部分水素添加して得られる硬化油が、パーム油を部分水素添加して得られる硬化油又は菜種油を部分水素添加して得られる硬化油である請求項5に記載のルウ用油脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のルウ用油脂組成物を含有するルウ。
【請求項8】
前記ルウが、カレールウ、ホワイトルウ、シチュールウ又はハヤシルウである請求項7に記載のルウ。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のルウを使用した加工食品。
【請求項10】
前記加工食品が、カレーソース、ホワイトソース、シチュー又はハヤシソースである請求項9に記載の加工食品。
【請求項11】
ルウ用油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が3質量%以上12質量%未満になるように、パーム油の分別硬質油50〜94質量%と、動植物油を部分水素添加して得られる硬化油6〜50質量%とを混合溶解するルウ用油脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−289404(P2008−289404A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137292(P2007−137292)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】