説明

レキシトロプシンのリン脂質複合体、その製造及び治療剤への使用

本発明は、レキトロプシンを含むリン脂質相によって構成される医薬製剤に関し、ヒト及び動物における局所及び全身性の感染症ならび腫瘍疾患の治療のためのそれらの使用に関する。そのような製剤は、レキトロプシンの分類中の、局所及び全身性双方の、抗感染症及び抗腫瘍剤の他の製剤と比較して最適な薬理学的性質を示す。この医薬製剤は、例えば、ジスタマイシン(式II、スタリマイシンとも知られている)、それらの類似体であるネトロピシン(式III)及びその類似体(式IVからVIIIaからi)、又は式IX、Xのような他の化合物及び一般式Iに包含されるいずれかの類似体のリポソーム又はミセル製剤、あるいはリン脂質複合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多くのヒト及び動物の疾患の治療において、有効な治療薬のさらなる改良の必要性は、望まない副作用がなく、より高い有効性を備えた新たな治療を得る観点から、強く求められている。これは、ウィルス性及び癌疾患ならびに種々の寄生虫症の症例において、特に緊急を要しており、なかでも、マラリアは、低開発国において引き起こされ(それらにおけるのみではないが)、大量の被害者を出すために非常に重要である。また、多くの細菌性感染症の症例において、耐性現象が発現し、AIDS又は抗がん剤の化学療法を受けている患者においては免疫防御メカニズムが減少しているため、特に緊急を要している。
【0002】
しかし、潜在的な効力を備える活性成分の有効性は、常に、それらの安定性、バイオアベイラビリティ及び/又は生体内分布に関する治療上の問題の解決なしには十分ではない。したがって、まだ入手可能ではないが、適切で、活性な製剤の必要が生じている。これは、レキトロプシンによくあることであり、ウィルス感染、癌の発現、原生生物及び細菌感染のために重篤な健康状態において潜在的に有用な活性を示す化学物質の類である。
【背景技術】
【0003】
レキトロプシンに関する科学文献は、現在では非常に広範囲に及んでいるが、リポソーム又はミセル製剤、より一般的には、レキトロプシンのリン脂質複合体の形態に基づく製剤は、今日に至るまで明らかになっていない。
【0004】
ここに例示された活性成分に関して、それらは先の発明の対象になっている。Distamycin and distacin, F. Arcamoneら、Ger. Offen. 1039198 (Sept. 18, 1957), CA 55, 2012f、Pyrroles, F. Arcamoneら、Belg. Pat. 666612 (Nov. 3, 1965), CA 65, 5444d、Preparation of distamycin derivatives as antiviral, antitumor agents, F. Animatiら、PCT国際出願WO 92 9, 574 (Jun 11, 1992), CA 117, 130993、Preparation of distamycin analogs as antiviral and antitumor agents, F. Animatiら、PCT国際出願WO 92 14, 707 (Sep 3, 1992), CA 118, 38687Preparation of Distamycin A derivatives as antimalarials. F. Animatiら、PCT国際出願WO 94 25, 436 (Nov. 10, 1994), CA 122, 105530。
【0005】
ここに例示された同様の化合物は、科学刊行物に報告されている。Distamycin A. I. Isolation and structure of the antiviral agent distamycin A, F. Arcamoneら、Gazz. Chim. Ital., 97, 1097-1109 (1967)、Distamycin A. II. Total synthesis, S. Pencoら、ibid., 97, 1110-1115 (1967)、Distamycin A. III. Synthesis of analogs with modifications in the side chains, F. Arcamoneら、Gazz. Chim. Ital., 99, 620-631 (1969)Distamycin A. IV. Synthesis of analogs with different numbers of l-methyl-4- aminopyrrole-2-carboxylic acid residues, F. Arcamoneら、Gazz. Chim. Ital., 99, 632-640 (1969)、Synthesis, DNA binding and antiviral activity of distamycin analogs containing different heterocyclic moieties, F. Arcamoneら、Anticancer Drug Design, 1,235-44 (1986)、Biological activity and DNA sequence specificity of synthetic carbamoyl analogues of distamycin. A. Alfieriら、Antiviral Chemistry and Chemotherapy, 8, 243-254 (1997)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、以下の本文で、好ましくはリポソーム系によって構成されたリン脂質複合体の形態が用いられた、これら物質のバイオアベイラビリティに関する問題の新規な解決を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、レキトロプシンを含むリン脂質相によって構成される医薬製剤に関し、ヒト及び動物における局所及び全身性の感染症ならび腫瘍疾患の治療のためのそれらの使用に関する。そのような製剤は、レキトロプシンの分類中の、局所及び全身性双方の、抗感染症及び抗腫瘍剤の他の製剤と比較して最適な薬理学的性質を示す。
【0008】
したがって、本発明の目的は、一般式I
【0009】
【化1】

(式中、R1は官能基、好ましくは、単一の又は置換されたアミジン、第2又は第3アミン、第4アンモニウム基、単一の又は置換されたグアニジン等の塩基性基であり、本発明を限定するものではないが、例として、−C (NH)NH2、−C(NH) NHR3、−NH2、−NHR3、−N (R3)2、−NR34、−NH−C(NH) NH2、−NH−C(NH) NHR3、−N (CH2) 4 、−N (R3) 3+であってもよく、
2は、脂肪族、芳香族又はアリール脂肪族アシル基を示し、これらは酸素、窒素原子等の1以上の異原子を含有する原子団で置換されていてもよい、あるいは、
2は、1−メチル−4−アミノピロール−2−カルボン酸の1以上の残基配列、その配列は、N末端でアシル化されたもしくはアシル化されていない、また、1−メチル−4−カルボキサミドピロール−2−カルボン酸で終端させられているか、または、本発明を限定するものではないが、フラン、イミダゾール、チオフェン、チアゾール等のピロールとは異なった複素環から誘導された、もしくはベンゼン、ピリジン、ジアジン、ピリミダジンから誘導された類似アミノ酸の残基で終端させられており、末端アミノ基はアシル基で置換もしくは非置換であり、あるいは遊離もしくは置換アミノ基に代えてカルボキシアミド基を含んでいる、
3又はR4は、同一又は異なってC1〜C4の低級アルキル基を示す。)
のレキトロプシンを含有するリポソーム、ミセル集合体又はより一般的にはリン脂質複合体に基づく製剤の製法及び治療に役立つ使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
リポソームは、両親媒性の脂質が過剰水に分散した場合、自然に形成される分離した粒子である(Liposome Methodology, vol. 107, Leserman & Barbet Eds. INSERM Publications, Paris, 1982)。脂質分子は、極性ヘッド基を水相にさらすことによってそれ自体配向すると同時に、疎水性炭素分子は互いに密着し、よって、最終的に溶液の残部から分離された内側の水相を維持する多重同心球の形態を取る二分子層をもたらす。
【0011】
レキトロプシンは、一般に、C-末端位でアミジンのような塩基性基あるいは置換アミン又はグアニジンを、かつN-末端位で種々のアシル部分又はカルボキシアミノ基を示す、鎖状ペプチド型構造のモノマー・ユニットとして1−メチル−4−アミノピロール−2−カルボン酸の残部の存在によって特徴付けられる化合物として定義される。
レキトロプシンは、細菌生成物又はその合成類似化合物であってもよい。この後者の場合、1−メチル−4−アミノピロール−2−カルボン酸の残部に代えて、種々の複素環又は芳香環を含む同様の誘導体であってもよい。既知レキトロプシン構造のいくつかの例では、以下(式II〜VIII a-i)のようなものがある。
【0012】
【化2】

(式中、Rは、
【0013】
【化3】

である。)
【0014】
レキトロプシンは、興味深く、有用な薬理学的性質を備える。つまり、既知の化合物のグループで、抗ウィルス、抗腫瘍、抗原生生物及び抗菌活性を示すことを見出している。
【0015】
本発明は、レキトロプシンを含むリン脂質相によって構成される医薬製剤に関し、ヒト及び動物における局所及び全身性の感染症ならび腫瘍疾患の治療のためのそれらの使用に関する。そのような製剤は、レキトロプシンの分類中の、局所及び全身性双方の、抗感染症及び抗腫瘍剤の他の製剤と比較して最適な薬理学的性質を示す。
【0016】
本発明の主な目的は、ヒト及び動物における感染症又は癌疾患に対する医療処方の製剤のために有用な、ジスタマイシン(式II、スタリマイシンとも知られている)、それらの類似体であるネトロピシン(式III)及びその類似体(式IVからVIIIaからi)、又は式IX、Xのような他の化合物及び一般式Iに包含されるいずれかの類似体のリポソーム又はミセル製剤、あるいはリン脂質複合体である。
【0017】
【化4】

【0018】
本発明によれば、すべての生理活性のあるレキトロプシン、つまり、上記に定義された化学的化合物であるレキトロプシンの薬理学的活性は、ここに記載されたリン脂質製剤によって顕著に改善され、後者は、感受性がある病原体及び癌のために局所及び全身性の感染症の治療において使用することができる。本発明の範囲内で利用されるさらなる系列のレキトロプシン誘導体は、興味深い抗ウィルス及び抗菌活性を備える、一般式XI(n=1〜4)のビスアミジン類似体であり、さらにその治療の有効性は、本発明において記載されたリポソーム製剤の使用によって非常に改善することができる。
【0019】
【化5】

本発明の主な例は、リポソーム質量の1〜10%の範囲の量の捕捉(エントラップされた)レキトロプシンを含むホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)及びコレステロール(C)から構成される、多重膜リポソームの製剤である。本発明の他の主な例は、レキトロプシンを1〜10重量%含有するポリエチレングリコールエタノールアミン(PEGPE)、PG及び部分的に水素化された卵ホスファチジルコリン(PHEPC)によって構成される、リン脂質の小胞製剤である。本発明のさらなる主な例は、滅菌状態でアピロジェニック形態のレキトロプシンを含有する、リポソーム及びリン脂質複合体の製剤である。本発明の好ましい対象は、特に一般式Iのレキトロプシンを捕捉した上述のリポソーム製剤である。
【0020】
本発明の重要な例は、本発明はここに示された特定の化合物の使用に限定されるものではないことを理解して、ジスタマイシンII又は、例えば、式III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIの化合物のようなそれらの類似体のリポソーム又はミセル製剤あるいはリン脂質複合体の局在化したウィルス又は癌疾患における局所的な使用によって示される。また、本発明のさらなる重要な例は、ヒト及び動物における局所又は全身性の感染症ならびに癌の非経口経路による治療用の、一般式Iのレキトロプシンを含有する滅菌状態でアピロジェニックなリポソーム又はミセル製剤あるいはリン脂質複合体の治療用途である。そのような製剤は、レキトロプシンの化学的な類に属する抗感染症又は抗腫瘍剤の最適な薬理学的性質を示すことを可能にする。その結果、好ましい例は、ウィルス性疾患の治療のための、例えば、化合物II〜XIのような、一般式Iの化合物を捕捉したリポソームの非経口的な使用である。化合物Xは、抗マラリア活性の特徴を備えるものとして知られている。この性質は、その化合物を上述した製剤において使用した場合に顕著に高められ、よって、ヒトのマラリア治療に使用することができる。
本発明のさらなる目的は、それらを含有する医薬製剤の製造のために、上述した製剤を使用することによって示される。
【0021】
実施例
実施例1
モル比が1:4:4のPG:PC:コレステロールの混合物(クロロホルム中)60マイクロモルと、有機又は無機酸塩(好ましくは塩酸塩)として、一般式Iのレキトロプシン3マイクロモルとをメタノール中に溶解することによって、多重膜リポソームを調製する。混合物は、次いで、室温にて、真空下、ロータリーエバポレータで蒸発させる。次いで、残部に、37度でトリスHCl(10ml)でpH7.4に調整された生理的溶液を加え、得られた懸濁液を37度にて一晩攪拌する。得られた多重膜リポソームの不均質懸濁液を、室温にて、40〜80psiの圧力で、窒素下、多孔質フィルター(0.2〜0.4ミクロン)を通して押し出し、さらに、1時間、130000xgで遠心分離し、非捕捉レキトロプシンを除去する。このようにして得られたリポソームを、1mlの生理的溶液に懸濁液として採取し、37℃にて、生理的溶液の100mlに対して透析し、得られた懸濁液をガラスバイアル中で凍結乾燥する。最終生成物は、原料レキトロプシンの65%より多くを含有している。
【0022】
実施例2
ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、コレステロール(C)をそれぞれ50mg含有するクロロホルム溶液を、減圧下、ロータリーエバポレータで蒸発させ、溶媒のすべての超微量分を窒素流で除去する。得られた脂質層を、有機又は無機酸塩(好ましくは塩酸塩)として、一般式Iのレキトロプシン39マイクロモルを含有する生理的溶液3mlで、30秒間隔で振動攪拌機にて攪拌するとともに、同じ時間60℃の水浴で維持しながら、合計10分間、水和する。得られたリポソーム懸濁液を、衛生浴中で、2分間、窒素下にて超音波処理し、次いで、1分間、氷水浴中で冷却する。このようにして得られたリポソームを20分間130000xgで超遠心分離することによって回収し、さらに10%(w/w)ラクトースを含有する水中で再懸濁し、凍結乾燥する。捕捉レキトロプシンの収率は90%である。
【0023】
実施例3
遠心分離工程を用いる代わりに1000〜5000ダルトンの範囲のカットオフでの超遠心分離によって、実施例1及び2で記載したようにして得られた一般式Iの捕捉レキトロプシンを含有する多層膜リポソームを回収し、10%(w/w)ラクトース水溶液で採取し、凍結乾燥する。
【0024】
実施例4
実施例1及び2で記載したようにして得られた一般式Iの捕捉レキトロプシンを含有する多層膜リポソームを、37度にて、生理的溶液の100〜200mlに対して透析し、次いで、ろ過により無菌化し、ろ液を、無菌バイアルに、無菌かつ無パイローゲン状態で分配し、凍結乾燥する。
【0025】
実施例5
実施例3で記載したようにして得られた一般式Iの捕捉レキトロプシンを含有する多層膜リポソームを、10%ラクトース水溶液で採取し、ろ過により無菌化する。リポソームの無菌溶液を、最終的に、無菌バイアルに、無菌かつ無パイローゲン状態で分配し、凍結乾燥する。
【0026】
実施例6
脂質を形成する小胞として、モル比が0.15:0.3:1.85:1のPEG−PE(ポリエチレングリコール ホスホチジル エタノールアミン):PG:PHEPC(部分的に水素化された卵ホスホチジルコリン):コレステロールを、最終総脂質濃度が25マイクロモル(リン脂質/ml)で、クロロホルムに溶解する。溶媒を減圧下で除去し、得られた乾燥脂質層を、0.9%NaCl水溶液中、有機又は無機酸塩(好ましくは塩酸塩)として、一般式Iのレキトロプシン10mMの温溶液(60℃)で水和する。水和を、脂質50マイクロモルの水溶液1mlを用いて、液体窒素と温水浴を使用して10サイクル凍結及び解凍を繰り返しながら行う。最適な大きさのリポソームを、2種類のポリカーボネート膜、つまり0.4ミクロンフィルターで3サイクル、0.2ミクロンのフィルターで2サイクルによって押し出すことによって得る。リポソームの最終径は、直径0.1ミクロンのオーダーである。このようにして得られたリポソームを、合計24時間かけて、5%ラクトース水溶液で3回、50〜100容量に対して透析する。最後に、1時間持続した4回目の透析工程を、pH6.5〜7の範囲の5%ラクトース溶液に対して行う。レキトロプシンの比捕捉の画分を、酸及び塩基性イオン交換樹脂の混合床で処理し、その後の5分間の低速遠心分離によって除去する。次いで、リポソーム懸濁液を0.45ミクロンの膜を通してろ過することにより無菌化し、凍結乾燥し、5℃で保存する。
【0027】
実施例7
モル比が1:4:4のPG:PC:コレステロールの混合物(クロロホルム中)60マイクロモルと、塩酸塩としてジスタマイシン(II)1.5mgとをメタノール中に溶解することによって、多重膜リポソームを調製する。混合物を、室温にて、減圧下、丸底フラスコ中で蒸発させる。得られた残部を、トリス−ヒドロキシメチルアミノメタンHCl緩衝液でpH7.4に調整された生理的溶液で、37℃にて一晩攪拌し、37℃にて採取する。不均質リポソーム懸濁液を、室温にて、40〜80psiの圧力で、窒素下、多孔質フィルター(0.2〜0.4ミクロン)を通して押し出し、さらに、1時間室温にて、130000xgで超遠心分離し、非捕捉のIIを除去する。このようにして得られたリポソームを、生理的溶液の100〜200容量に対して透析し、凍結乾燥する。捕捉ジスタマイシンの収率は、原料サンプルの65%より大である。
【0028】
実施例8
ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、コレステロール(C)をそれぞれ50mg含有するクロロホルム溶液を、減圧下、ロータリーエバポレータで蒸発させ、溶媒のすべての超微量分を窒素流で除去する。得られた脂質層を、ジスタマイシン(II)塩酸塩15mgを含有する生理的溶液3mlで、30秒間、振動攪拌機にて攪拌し、続いて同じ時間60℃の水浴で維持することを、合計10分間繰り返して、水和する。得られたリポソーム懸濁液を、衛生浴中で、2分間、窒素下にて超音波処理し、次いで、1分間、氷水浴中で冷却する。このようにして得られたリポソームを20分間130000xgで超遠心分離することによって回収し、さらに10%(w/w)ラクトースを含有する水中で再懸濁し、凍結乾燥する。捕捉ジスタマイシンの収率は90%である。
【0029】
実施例9
実施例7及び8で記載したようにして得られた多層膜リポソームを、多孔フィルターを通して押し出した後、非捕捉ジスタマイシンを除去し、超遠心分離工程の代わりに1000〜5000ダルトンの範囲のカットオフでの超遠心分離工程によって回収し、生理的溶液で採取し、凍結乾燥する。
【0030】
実施例10
モル比が1:4:4のPG:PC:コレステロールの混合物(クロロホルム中)60マイクロモルと、塩酸塩として化合物X1.5mgとをメタノール中に溶解することによって、多重膜リポソームを調製する。混合物を、室温にて、減圧下、丸底フラスコ中で蒸発させる。得られた残部を、トリス−ヒドロキシメチルアミノメタンHCl緩衝液でpH7.4に調整された生理的溶液で、37℃にて一晩攪拌し、37℃にて採取する。不均質リポソーム懸濁液を、室温にて、40〜80psiの圧力で、窒素下、多孔質フィルター(0.2〜0.4ミクロン)を通して押し出し、さらに、1時間室温にて、130000xgで超遠心分離し、上清中で非捕捉Xを除去し、遠心分離ペレットの形態のリポソーム製剤を回収する。このようにして得られたリポソームを、生理的溶液の100〜200容量に対して透析し、次いで、無菌ガラスバイアルに、無菌かつ無パイローゲン状態で分配し、凍結乾燥する。捕捉ジスタマイシンの収率は、原料サンプルの65%より大である。
【0031】
実施例11
ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、コレステロール(C)をそれぞれ50mg含有するクロロホルム溶液を、減圧下、ロータリーエバポレータで蒸発させ、溶媒のすべての超微量分を窒素流で除去する。得られた脂質層を、化合物Xの30マイクロモルを含有する生理的溶液3mlで、30秒間隔で振動攪拌機にて攪拌し、続いて同じ時間60℃の水浴で維持することを、合計10分間繰り返して、水和する。得られたリポソーム懸濁液を、衛生浴中で、2分間、窒素下にて超音波処理し、次いで、1分間、氷水浴中で冷却する。このようにして得られたリポソームを20分間130000xgで超遠心分離し、次いで10%(w/w)ラクトースを含有する水中で再懸濁し、標準的な無菌化フィルターでろ過し、無菌ガラスバイアルに、無菌かつ無パイローゲン状態で分配し、凍結乾燥する。捕捉Xの収率は、90%である。
【0032】
実施例12
実施例10及び11で記載したようにして得られた多層膜リポソームを、多孔フィルターを通して押し出した後、非捕捉Xを除去し、超遠心分離工程の代わりに1000〜5000ダルトンの範囲のカットオフでの超遠心分離工程によって回収し、生理的溶液で採取し、無菌ガラスバイアル中で、無菌かつ無パイローゲン状態で凍結乾燥する。
【0033】
実施例13
小胞を形成する脂質として、モル比が0.15:0.3:1.85:1のPEG−PE:PG:PHEPC:コレステロールを、最終総脂質濃度が25マイクロモル(リン脂質/ml)で、クロロホルムに溶解する。溶媒を減圧下で除去し、得られた乾燥脂質層を、0.9%NaCl水溶液中、化合物Xの塩酸塩10mMの温溶液(60℃)で水和する。水和を、脂質50マイクロモルの水溶液1mlを用いて、液体窒素と温水浴を使用して10サイクル凍結及び解凍を繰り返しながら行う。最適な大きさのリポソームを、2種類のポリカーボネート膜、つまり0.4ミクロンフィルターで3サイクル、0.2ミクロンのフィルターで2サイクルによって押し出すことによって得る。リポソームの最終径は、直径0.1ミクロンのオーダーである。このようにして得られたリポソームを、合計24時間かけて、5%ラクトース水溶液で3回、50〜100容量に対して透析する。最後に、1時間持続した4回目の透析工程を、pH6.5〜7の範囲の5%ラクトース溶液に対して行う。レキトロプシンXの非捕捉の画分を、酸及び塩基性イオン交換樹脂の混合床で処理し、その後の5分間の低速遠心分離によって除去する。次いで、リポソーム懸濁液を0.22ミクロンの膜を通してろ過することにより無菌化し、凍結乾燥し、5℃で保存する。
【0034】
実施例14
上記化合物Xの代わりに化合物XIを用いて、実施例10で記載したように、多層膜リポソームを製造する。捕捉物の収率は、65%より大である。
【0035】
実施例15
上記化合物Xの代わりに化合物XIを用いて、実施例11で記載したように、多層膜リポソームを製造する。捕捉物の収率は、90%である。
【0036】
実施例16
上記化合物Xの代わりに化合物XIを用いて、実施例12で記載したように、多層膜リポソームを製造する。
【0037】
実施例17
上記化合物Xの代わりに化合物XIを用いて、実施例13で記載したように、多層膜リポソームを製造する。
【0038】
実施例18
実施例1〜17で記載したようにして得られたレキトロプシン製剤を、連続5〜7日の期間、1日2〜3回、各1回塗布で活性成分5〜50mg適用する量で、皮膚が冒された患者に、局所製剤の形態で投与する。
【0039】
実施例19
実施例4〜6及び10〜17で記載したようにして得られたレキトロプシン製剤を、連続2〜7日の期間、1日1回、5〜500mgの範囲の用量で、レキトロプシン治療に感受性のある疾患に冒された患者に、静脈内、筋肉内及び皮下注射によって、非経口経路で投与する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出系に存在する一般式I
【化1】

(式中、R1は官能基、好ましくは、単一の又は置換されたアミジン、第2又は第3アミン、第4アンモニウム基、単一の又は置換されたグアニジン等の塩基性基であり、本発明を限定するものではないが、例として、−C (NH)NH2、−C(NH) NHR3、−NH2、−NHR3、−N (R3)2、−NR34、−NH−C(NH) NH2、−NH−C(NH) NHR3、−N (CH2) 4 、−N (R3) 3+であってもよく、
2は、脂肪族、芳香族又はアリール脂肪族アシル基を示し、これらは酸素、窒素原子等の1以上の異原子を含有する原子団で置換されていてもよい、あるいは、
2は、1−メチル−4−アミノピロール−2−カルボン酸の1以上の残基配列、その配列は、N末端でアシル化されたもしくはアシル化されていない、また、1−メチル−4−カルボキサミドピロール−2−カルボン酸の残基で終端させられているか、または、本発明を限定するものではないが、フラン、イミダゾール、チオフェン、チアゾール等のピロールとは異なった複素環から誘導された、もしくはベンゼン、ピリジン、ジアジン、ピリミダジンから誘導された類似アミノ酸の残基で終端させられており、末端アミノ基はアシル基で置換もしくは非置換であり、あるいは遊離もしくは置換アミノ基に代えてカルボキシアミド基を含んでいる、
3又はR4は、同一又は異なってC1〜C4の低級アルキル基を示す。)
のレキトロプシンからなり、
前記放出系は、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、リン脂質複合体又は安定にかつ可逆的に一般式Iの化合物に組み込むことができる一般用語で超分子リン脂質構造をとるリン脂質製剤。
【請求項2】
有機又は無機塩、好ましくは塩酸塩の形態のジスタマイシン(II)
【化2】

からなり、放出系の形態であって、
前記放出系はリポソーム、ミセル、ナノ粒子、リン脂質複合体又は安定にかつ可逆的に一般式IIの化合物に組み込むことができる一般用語で超分子リン脂質構造をとるリン脂質製剤。
【請求項3】
有機又は無機塩、好ましくは塩酸塩の形態の化合物(X)
【化3】

からなり、放出系の形態であって、
前記放出系はリポソーム、ミセル、ナノ粒子、リン脂質複合体又は安定にかつ可逆的に一般式Xの化合物に組み込むことができる一般用語で超分子リン脂質構造をとるリン脂質製剤。
【請求項4】
微生物、ウィルス又は原生生物の局所感染症の治療用及び局所腫瘍の治療用であって、一般式Iの活性成分を0.1から10%を含有する請求項1のレキトロプシン薬剤を主成分とする局所製剤。
【請求項5】
非経口経路、好ましくは静脈内、筋肉内、皮下経路による全身性微生物、ウィルス又は原生生物感染症又は播種性腫瘍の治療用であって、体重1kgあたり一般式Iのレキトロプシンを0.1〜20mg含む用量の請求項1のレキトロプシン薬剤を主成分とする注射可能製剤。
【請求項6】
微生物、ウィルス又は原生生物の局所感染症の治療又は局所腫瘍の治療用であって、一般式IIの活性成分を0.1〜10%含む請求項2のレキトロプシン薬剤を主成分とする局所製剤。
【請求項7】
非経口経路、好ましくは静脈内、筋肉内、皮下経路による全身性微生物、ウィルス又は原生生物感染症又は播種性腫瘍の治療用であって、体重1kgあたり一般式IIのレキトロプシンを0.1〜20mg含む用量の請求項2のレキトロプシン薬剤を主成分とする注射可能製剤。
【請求項8】
微生物、ウィルス又は原生生物の局所感染症の治療又は局所腫瘍の治療用であって、一般式Xの活性成分を0.1〜10%含む請求項3のレキトロプシン薬剤を主成分とする局所製剤。
【請求項9】
非経口経路、好ましくは静脈内、筋肉内、皮下経路による全身性微生物、ウィルス又は原生生物感染症又は播種性腫瘍の治療用であって、体重1kgあたり一般式Xのレキトロプシンを0.1〜20mg含む用量の請求項3のレキトロプシン薬剤を主成分とする注射可能製剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】放出系に存在する一般式I
【化1】

(式中、R1は官能基、好ましくは、単一の又は置換されたアミジン、第2又は第3アミン、第4アンモニウム基、単一の又は置換されたグアニジン等の塩基性基であり、
−C (NH)NH2、−C(NH) NHR3、−NH2、−NHR3、−N (R3)2、−NR34、−NH−C(NH) NH2、−NH−C(NH) NHR3、−N (CH2) 4 、−N (R3) 3+から選択され、
2は、脂肪族、芳香族又はアリール脂肪族アシル基を示し、これらは酸素、窒素原子等の1以上の異原子を含有する原子団で置換されていてもよい、あるいは、
2は、1−メチル−4−アミノピロール−2−カルボン酸の1以上の残基配列、その配列は、N末端でアシル化されたもしくはアシル化されていない、また、1−メチル−4−カルボキサミドピロール−2−カルボン酸の残基で終端させられているか、または、フラン、イミダゾール、チオフェン、チアゾールから選択されるピロールとは異なった複素環から誘導された、もしくはベンゼン、ピリジン、ジアジン、ピリミダジンから誘導された類似アミノ酸の残基で終端させられており、末端アミノ基はアシル基で置換もしくは非置換であり、あるいは遊離もしくは置換アミノ基に代えてカルボキシアミド基を含んでいる、
3又はR4は、同一又は異なってC1〜C4の低級アルキル基を示す。)
のレキトロプシンからなり、
前記放出系は、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、リン脂質複合体又は安定にかつ可逆的に一般式Iの化合物に組み込むことができる超分子リン脂質構造をとるリン脂質製剤。
【請求項2】
多重膜リポソームの形態であって、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)及びコレステロール(C)から構成され、前記リポソームの質量の1から10%の範囲の量で一般式Iのエントラップされたレキトロプシンを含有する請求項1の製剤。
【請求項3】
リン脂質小胞の形態であって、ポリエチレングリコール エタノールアミン(PEGPE)、PG及び部分的に水素化された卵ホスホチジルコリン(PHEPC)から構成され、レキトロプシンを1から10重量%含有する請求項1の製剤。
【請求項4】活性成分として、有機又は無機塩、好ましくは塩酸塩の形態のジスタマイシン(II)
【化2】

を含む請求項1から3のいずれか1つの製剤。
【請求項5】有機又は無機塩、好ましくは塩酸塩の形態の化合物X
【化3】

を含む1から3のいずれか1つの製剤。
【請求項6】活性成分を0.1〜10%含む請求項1から5のいずれか1つの局所製剤。
【請求項7】一般式I、II又はXのレキトロプシンを0.1〜20mg/kg体重の用量で提供する請求項1から5のいずれか1つの注射可能製剤。
【請求項8】微生物、ウィルス又は原生生物感染症の治療用医薬製剤のための請求項1から7の製剤の使用。


【公表番号】特表2006−505506(P2006−505506A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−518585(P2004−518585)
【出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006745
【国際公開番号】WO2004/004691
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(505003355)
【氏名又は名称原語表記】ARCAMONE,Federico
【住所又は居所原語表記】Via IV Novembre,26,I−20014 Nerviano,Milano,Italy
【出願人】(505003366)
【氏名又は名称原語表記】Subissi,Alessandro
【住所又は居所原語表記】Localita Le Pescine,15,56011 CALCI Pisa,Italy
【Fターム(参考)】