説明

レジスト塗布装置

【課題】気泡を含まない処理液を被処理体に塗布する装置を提供する。
【解決手段】被処理体8に処理液を滴下するノズル16と、処理液の供給源7と、ノズルと供給源との間に設けられ供給源からの処理液を一旦貯留した後にノズルに供給する中継容器10と、中継容器を制御する制御部とを備え、中継容器は有底のシリンダー9と、シリンダー内に摺動自在に設けられたピストン9aと、ピストンの駆動源5と、シリンダーに設けた気泡排出口3と、ピストンの位置Pを検出するセンサ6とを備え、中継容器に貯留される処理液の体積に応じてピストンが移動し、制御部は、供給源から中継容器へ体積Vsの処理液が吐出されたとき、位置Pに基づいて貯留空間の容積Vpを算出し、Vp>Vsであるとシリンダー内の処理液が気泡を含むと判断し、駆動源によりピストンを駆動して気泡を含む処理液を気泡排出口から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レジスト塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連する背景技術としては、処理液供給源から処理液滴下ノズルまでの供給経路の途中に補助容器を設け、供給経路の処理液中に混入した気泡を補助容器内で処理液の液面に浮上させて除去するようにしたレジスト塗布装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−213605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレジスト塗布装置では、処理液に混入した気泡を処理液に浮上させて除去しているが、粘度の高い処理液では気泡が液中に留まり液面に浮上しにくいので、気泡の除去が難しいという問題があった。この発明はこのような事情を考慮してなされたもので、粘度の高い処理液に混入した気泡であっても、それを効率よく除去し、欠陥のないレジスト膜を形成するレジスト塗布装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、被処理体に処理液を滴下するノズルと、前記処理液の供給源と、前記ノズルと供給源との間に設けられ前記供給源からの処理液を一旦貯留した後に前記ノズルに供給する中継容器と、中継容器を制御する制御部とを備え、前記中継容器は有底のシリンダーと、前記シリンダー内に摺動自在に設けられたピストンと、前記ピストンの駆動源と、前記シリンダーに設けた気泡排出口と、前記ピストンの位置Pを検出するセンサとを備え、前記中継容器は前記シリンダーとピストンとが区画する貯留空間に前記処理液が貯留されるように貯留処理液の体積に応じてピストンが移動するように構成され、前記制御部は、前記供給源から中継容器へ体積Vsの処理液が吐出されたとき、前記位置Pに基づいて前記貯留空間の容積Vpを算出し、Vp>Vsであるとシリンダー内の処理液が気泡を含むと判断し、前記駆動源により前記ピストンを駆動して気泡を含む処理液を前記気泡排出口から排出させることを特徴とするレジスト塗布装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
制御部はVp>Vsであると、処理液が気泡を含むと判断し、気泡を含む処理液を中継容器から強制的に排出させるので、処理液表面に浮上しない気泡が効率よく除去され、欠陥のないレジスト膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明のレジスト塗布装置を示す構成説明図である。
【図2】図1のレジスト塗布装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】図1のレジスト塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明のレジスト塗布装置は、被処理体に処理液を滴下するノズルと、前記処理液の供給源と、前記ノズルと供給源との間に設けられ前記供給源からの処理液を一旦貯留した後に前記ノズルに供給する中継容器と、中継容器を制御する制御部とを備え、前記中継容器は有底のシリンダーと、前記シリンダー内に摺動自在に設けられたピストンと、前記ピストンの駆動源と、前記シリンダーに設けた気泡排出口と、前記ピストンの位置Pを検出するセンサとを備え、前記中継容器は前記シリンダーとピストンとが区画する貯留空間に前記処理液が貯留されるように貯留処理液の体積に応じてピストンが移動するように構成され、前記制御部は、前記供給源から中継容器へ体積Vsの処理液が吐出されたとき、前記位置Pに基づいて前記貯留空間の容積Vpを算出し、Vp>Vsであるとシリンダー内の処理液が気泡を含むと判断し、前記駆動源により前記ピストンを駆動して気泡を含む処理液を前記気泡排出口から排出させることを特徴とする。
【0009】
前記供給源は、処理液を収容する処理液容器と、処理液容器から中継容器へ処理液を吐出する定量ポンプを備えてもよい。
前記中継容器は、シリンダーの底に前記供給源から処理液を受入れる受給孔と、前記ノズルへ処理液を排出する排出孔とを備え、前記気泡排出口はシリンダーの側壁に設けられてもよい。
【0010】
前記ピストン駆動源は、前記ピストンを前記シリンダーの底の方向に向かって押圧するための駆動アームと、前記駆動アームを前記シリンダーの底の方向に向かって移動させる駆動源からなってもよい。
【0011】
前記センサはポテンショメータ又はリニアエンコーダからなってもよい。
中継容器は供給源から吐出される処理液の圧力により前記ピストンが移動して処理液が前記シリンダー内に貯留され、前記駆動源により前記ピストンが移動して処理液が前記シリンダーから前記ノズルへ吐出されてもよい。
【0012】
以下、図面に示す実施形態を用いてこの発明を詳述する。
図1は、この発明のレジスト塗布装置を示す構成説明図である。
同図に示すように、塗布処理室11は、被処理体であるウエハ8を吸着するスピンチャック14と、スピンチャック14を回転するスピンチャック駆動モータ13と、スピンチャック14の周りを覆う処理カップ15とを備える。
【0013】
処理カップ15は処理液が外部へ飛散することを防止する。また、処理カップ15は下部に排液口17と排気口18を備える。ウエハ8の上方には処理液つまりレジストをウエハ8に滴下する滴下ノズル16が設けられている。
【0014】
一方、処理液供給源7は、処理液を収容する処理液容器20と、処理液を処理液容器20から吸引して吐出する定量ポンプ4とを備える。
また、滴下ノズル16と処理液供給源7との間には、中継容器10が設けられている。
【0015】
中継容器10は、下方に底を有し上方に開口を有するシリンダー9と、シリンダー9内に摺動自在に設けられたピストン9aと、ピストン駆動部5と、ピストン位置検出センサ6とを備える。
【0016】
シリンダー9は側壁に気泡排出孔9dを有し、気泡排出孔9dには気泡排出弁3を有する気泡排出管23が設けられている。
また、シリンダー9の底には処理液受給孔9bと処理液排出孔9cが設けられている。
【0017】
ピストン駆動部5では、ピストン駆動モータ5eにより駆動される駆動ローラ5aと、従動ローラ5bとの間に設けられたタイミングベルト5cにピストン9aを駆動する駆動アーム5dの一端が固定されている。
【0018】
駆動アーム5dの他端はピストン9aに接触可能であるが、結合されていない。つまり、駆動アーム5dはピストン9aをシリンダー9の底の方向のみに移動させることができるように構成されている。ピストン駆動モータ5eには、ステッピングモータやエンコーダ付きサーボモータなどが用いられる。
【0019】
ピストン位置検出センサ6は、ポテンショメータ又はリニアエンコーダ等から構成され、センサ6をピストン9aに結合するセンサ作動アーム6aとを備え、ピストン9aがシリンダー9内を摺動するときにその位置Pを検出するようになっている。
【0020】
そして、処理液容器20とシリンダー9の処理液受給孔9bとは、処理液供給管21で接続され、その途中には定量ポンプ4と、処理液中の固形物を除去するフィルタ19と、処理液供給弁1とが設けられている。
【0021】
また、シリンダー9の処理液排出孔9cと滴下ノズル16とは、処理液排出管22で接続され、その途中に処理液排出弁2が設けられている。なお、処理液供給弁1、処理液排出弁2および気泡排出弁3は、いずれも電磁弁である。
【0022】
図2は図1に示すレジスト塗布装置の制御系を示すブロック図である。同図に示すように、制御部40はピストン位置検出センサ6からの信号を受けると共に、処理液供給弁1、処理液排出弁2、気泡排出弁3、警報器30、ピストン駆動モータ5e、定量ポンプ4およびスピンチャック駆動モータ13を制御するようになっている。
【0023】
ここで、警報器30は中継容器10の気泡除去処理が困難なときに使用者に警告を発するものであり、液晶表示装置やスピーカやブザーなどで構成される。また、制御部40は、CPU,ROM,RAMからなるマイクロコンピュータと、ポンプやモータや電磁弁などを駆動するドライバー回路などを内蔵する。
【0024】
このような構成における動作を図3に示すフローチャートを用いて説明する。
同図に示すように、ステップS0において次のように初期化が行われる。まず、処理液排出弁2を開いてピストン駆動部5によってピストン9aを下降させ、ピストン9aをシリンダー9の底に接触させる。処理液排出弁2を閉じると共に、処理液供給弁1を開いて定量ポンプ4を駆動して若干量の処理液を吐出させ、シリンダー9に供給する。
【0025】
それによってピストン9aが若干上昇する。処理液供給弁1を閉じて処理液排出弁2を開き、ピストン9aをピストン駆動部5によってシリンダー9の底まで下降させて滴下ノズル16から処理液を滴下させた後、処理液排出弁2を閉じ、駆動アーム5dを最も高い位置(ホームポジション)まで上昇させる。
【0026】
これによって、処理液供給管21と処理液排出管23とが処理液で満たされ、シリンダー9には処理液が存在せずピストン9aがシリンダー9の底に接している状態になる。ここでは、この状態にすることを「初期化」という。
【0027】
ステップS0において、初期化が行われると、処理液供給弁1が開かれ定量ポンプ4が駆動され(ステップS1)、定量ポンプ4の吐出量Vpが所定体積Vsに達すると(ステップS2)、定量ポンプ4が停止されると共に、処理液供給弁1が閉じられる(ステップS3)。この時、シリンダー9では処理液の供給をうけてピストン9aが上昇している。
【0028】
次に、ピストン位置検出センサ6によりピストン9aの位置Pが検出され、位置Pに対応する中継容器10、つまりシリンダー9内の処理液貯留体積Vcが算出される(ステップS4)。そして、VcとVsとが比較され(ステップS5)、Vc≦Vsであれば、シリンダー9内に貯留された処理液の体積Vcが定量ポンプ4から吐出された処理液の体積Vs以下であるので、シリンダー9内の処理液には気泡が存在しないと判断される。
【0029】
そこで、ウエハ8がスピンチャック14に搭載され(ステップS6)、処理液排出弁2が開かれ、ピストン駆動部5によってピストン9aが下降し、滴下ノズル16から処理液が滴下する(ステップS7〜S9)。
【0030】
同時にスピンチャック14が回転し、処理液(レジスト)がウエハ8に塗布される(ステップS11)。処理液の滴下量Vdが一枚のウエハの塗布に必要な所定量Vmに達すると(ステップS12)、処理液排出弁2が閉じられ、ピストン9aの下降が停止し、スピンチャック14の回転が停止してウエハ8が搬出される(ステップS13〜S16)。
【0031】
ステップS17において、シリンダー9内に残留する処理液の体積Vcがピストン位置検出センサ6によって検出され、Vcが前記所定量Vm以上であると、ルーチンはステップS6へ戻り、次のウエハ8への処理液の塗布工程が行われる。
【0032】
ステップS17において、Vc<Vm、つまりシリンダー9に残留する処理液の体積が一枚のウエハに必要な塗布量を下回るときには、ルーチンはステップS0に戻り、初期化が行われる。
【0033】
一方、ステップS5においてVc>Vsであれば、シリンダー9内に貯留された処理液の体積Vcが定量ポンプの吐出量Vsより大きいので、シリンダー9内の処理液に気泡が混入していると判断される(ステップS18)。そこで、気泡排出弁3が開かれ、ピストン駆動部5によってピストン9aを下降させ、ピストン位置検出センサ6によって検出されるシリンダー9内の貯留処理液体積VcをV1まで低下させ、気泡を含む処理液を気泡排出管から排出させる(ステップS19、S20)。
【0034】
それによって、気泡が排出されると(ステップS21)、ピストン9aの下降を停止させ気泡排出弁3を閉じる(ステップS22)。そして、処理液供給弁1を開き、駆動アーム5dをホームポジションに戻し、定量ポンプ4を駆動し(ステップS23)、定量ポンプ4の吐出量VpがVp=Vs−V1に達すると(ステップS24)、処理液供給弁1を閉じると共に定量ポンプ4を停止する(ステップS25)。
【0035】
ピストン位置検出センサ6の出力からシリンダー9内の処理液の貯留体積Vcを算出し(ステップS26)、VcとVsが比較される(ステップS27)。Vc≦Vsであれば気泡は混入していないと判断され、ルーチンはステップS6へ戻り、ウエハ8への処理液塗布工程が実施される。
【0036】
Vc>Vsであれば、シリンダー9内の処理液に気泡が混入していると判断され(ステップS28)、今までに気泡混入と判断された回数nがns(例えば3回)と比較される(ステップS29)。
【0037】
n≦nsであれば、ルーチンはステップS19へ戻り、気泡排出工程が実行される。しかし、n>nsであると、装置の保守・点検が必要であると判断し、全ての動作を停止して警報器30(図2)から警報を発する。
このようにして、この発明のレジスト塗布装置は、気泡の混入しない処理液(レジスト)を被処理体(ウエハ)に滴下して欠陥のないレジスト膜を効率よく形成することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 処理液供給弁
2 処理液排出弁
3 気泡排出弁
4 定量ポンプ
5 ピストン駆動部
5a 駆動ローラ
5b 従動ローラ
5c タイミングベルト
5e ピストン駆動モータ
5d 駆動アーム
6 ピストン位置検出センサ
6a センサ作動アーム
7 処理液供給源
8 ウエハ
9 シリンダー
9a ピストン
9b 処理液受給孔
9c 処理液排出孔
9d 気泡排出孔
10 中継容器
11 塗布処理室
13 スピンチャック駆動モータ
14 スピンチャック
15 処理カップ
16 滴下ノズル
17 排液口
18 排気口
19 フィルタ
20 処理液容器
21 処理液供給管
22 処理液排出管
23 気泡排出管
30 警報器
40 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に処理液を滴下するノズルと、前記処理液の供給源と、前記ノズルと供給源との間に設けられ前記供給源からの処理液を一旦貯留した後に前記ノズルに供給する中継容器と、中継容器を制御する制御部とを備え、前記中継容器は有底のシリンダーと、前記シリンダー内に摺動自在に設けられたピストンと、前記ピストンの駆動源と、前記シリンダーに設けた気泡排出口と、前記ピストンの位置Pを検出するセンサとを備え、前記中継容器は前記シリンダーとピストンとが区画する貯留空間に前記処理液が貯留されるように貯留処理液の体積に応じてピストンが移動するように構成され、前記制御部は、前記供給源から中継容器へ体積Vsの処理液が吐出されたとき、前記位置Pに基づいて前記貯留空間の容積Vpを算出し、Vp>Vsであるとシリンダー内の処理液が気泡を含むと判断し、前記駆動源により前記ピストンを駆動して気泡を含む処理液を前記気泡排出口から排出させることを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項2】
前記供給源は、処理液を収容する処理液容器と、処理液容器から中継容器へ処理液を吐出する定量ポンプを備える請求項1記載のレジスト塗布装置。
【請求項3】
前記中継容器は、シリンダーの底に前記供給源から処理液を受入れる受給孔と、前記ノズルへ処理液を排出する排出孔とを備え、前記気泡排出口はシリンダーの側壁に設けられる請求項1または2記載のレジスト塗布装置。
【請求項4】
前記ピストン駆動源は、前記ピストンを前記シリンダーの底の方向に向かって押圧するための駆動アームと、前記駆動アームを前記シリンダーの底の方向に向かって移動させる駆動源からなる請求項1〜3のいずれか1つに記載のレジスト塗布装置。
【請求項5】
前記センサはポテンショメータ又はリニアエンコーダからなる請求項1〜4のいずれか1つに記載のレジスト塗布装置。
【請求項6】
中継容器は供給源から吐出される処理液の圧力により前記ピストンが移動して処理液が前記シリンダー内に貯留され、前記駆動源により前記ピストンが移動して処理液が前記シリンダーから前記ノズルへ吐出される請求項3または4記載のレジスト塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−62310(P2013−62310A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198479(P2011−198479)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】