説明

レスベラトロルを含む組成物及び人間の発毛の低減のためのその局所的使用

低減した発毛が望まれる箇所から皮膚の領域を選択し、及び有効量のレスベラトロルを含む組成物を該皮膚の領域に対して適用して発毛を低減する事を含む、人の発毛の低減のための美容目的及び治療目的の方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は人間の発毛の低減のための方法、特に化粧方法に関する。
人間、特に女性において、目に見える体毛は、いくつかの文化において美しくないと考えられている。シェービング、電気分解、髪を溶かす脱毛クリーム又はローションの適用、ワックスがけ、プラッキング(脱毛器を用いた手動又は自動の)、レーザー治療及び時には注射による治療的な抗男性ホルモン物質を含む、多数かつ種々の方法が適用され、望まれない髪を除去している。これら方法は、一般的に、これらに関連する欠点を有する。シェービングは皮膚の擦り傷又は切り傷を起こし、及び鋭さにより起こる粗さの知覚をもたらし、シェービング後に短く固い髪が再び現れる。電気分解は、長い期間処理した領域を髪のない状態に維持するのに、特に効果的であり得るが、時間がかかりかつ痛いことがあり得る。電気分解は、過剰な電流を適用した場合、瘢痕化の潜在的なリスクももたらす。
【0002】
脱毛剤クリームは効果的であるが、それらの適用の投与計画は、注意深く制御して、皮膚の炎症のリスクを避けなければならない。髪のワックスがけ及びプラッキングは、本質的に痛く及び心地よくない方法である。さらに、ワックスがけを有効にするために、髪は約5mmの長さでなければならず、これはワックスがけを効果的とする前に、皮膚が毛深く見えるであろう事を意味する。女性の多毛を治療するために用いられるであろう抗男性ホルモン物質は、体内におけるホルモンバランスへの効果のために望まれない副作用を有する。
従って、人間の発毛の阻害、低減又は遅延のための、化学又は生物化学ベースの方法を提供することが望まれるであろう。
発毛の速度及び特徴が、皮膚に対してある酵素の阻害剤を適用することにより変更できる事が、以前に開示されている。これら阻害剤は、5-アルファレダクターゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ、ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ及びトランスグルタミナーゼの阻害剤を含む。これら化合物は、生物化学的な経路を変更することにより機能し、最終生成物の生成を阻害し、それにより使用者に特定のアミノ酸の損失から起こる望ましくない副作用を潜在的にもたらす。
【0003】
EP0996409は、濾胞期乳頭におけるプログラム細胞死及びアポトーシスを誘導するセリンプロテアーゼを開示し、これはほ乳類の発毛に影響を及ぼす。
哺乳動物における発毛の阻害、低減又は予防のための代わりの方法を提供することが望ましく、該方法はアポトーシスによる細胞死を誘導し、かつ生物化学的なアミノ酸経路に最小限の効果を有するものである。天然由来の化合物を使用することも望ましく、該化合物は、合成材料よりも有害性が低いものとして、使用者により受け入れられるようなものである。発毛の阻害、遅延又は低減と、皮膚への抗炎症効果を組み合わせることも望ましい。これは、上記種々の髪除去方法が皮膚の炎症を起こし又は悪化させ得るためである。
レスベラトロル(トランス-3,5,4-トリヒドロキシスチルベン)は、つる草、パインの木、ピーナッツグレープ(peanuts grapes)、ユーカリ、桑及び他の植物材料で見い出されるポリフェノール(とりわけフィトアレキシン)である。これは抗酸化剤として及び抗炎症剤として知られ、及びCD95信号伝達を介したアポトーシスを誘導する。
【0004】
一側面において、本発明は、低減した発毛が望まれる皮膚の領域の選択、及びレスベラトロルを、発毛を低減するのに有効な量で含んだ化粧又は皮膚化学的に許容される組成物を、該皮膚の領域に適用することを含む、人の発毛の低減の化粧又は治療方法(典型的には化粧方法)を提供する。望まれない発毛は、普通ではあるが化粧の観点から望ましくなく、又は例えば病気の症状若しくは異常な状態、例えば多毛から生じる。
本発明の方法を実施するため、レスベラトロルは、皮膚化学的又は化粧料として許容されるビヒクル又はキャリアーと共に局所組成物中に適切に含まれる。適切には、皮膚上に広げるために、ビヒクル又はキャリアーを適合させる。従って、本発明は、発毛を低減するための皮膚化学的又は化粧料として許容されるキャリアー及び有効量のレスベラトロルを含む局所組成物にも関する。
適切なビヒクル又はキャリアーとしては、アセトン、アルコール、クリーム、ローション、オイル混合物又はゲルがあげられる。キャリアーがクリーム又はローションである場合、水中油又は油中水エマルションの形態であるのが好ましい。
【0005】
該組成物は、固形物、半固形又は液体でも良い。組成物は、軟膏、ローション、フォーム、クリーム、ゲル又は溶液でもよい。組成物は、シェービング調製物又はシェービング後の皮膚に適用するためのアフターシェーブ生成物の形態であっても良い。
レスベラトロルは、組成物の質量の0.001%〜30%、好ましくは0.01%〜10%、より好ましくは0.1%〜2%で、組成物中に適切に存在する。
加えて、本発明は、発毛の低減のための薬剤の調製におけるレスベラトロルの使用に関する。他の側面において、本発明は、発毛を低減させるのに有効な量のレスベラトロルを皮膚に適用して、人間の望まれない発毛の低減方法(典型的には化粧方法)を提供する。
加えて、該組成物は、1以上の他の種類の発毛低減剤を含み得る。
該組成物中のレスベラトロルの濃度は、広い範囲で変わり得る;発毛の低減は、皮膚の領域当たりに適用されるレスベラトロルの量の増加に従って増加する。効果的に適用される最大限の量は、レスベラトロルが皮膚を通過する速度によってのみ制限される。効果的な量は、例えば、10ng/cm2〜1000μg/cm2、好ましくは100ng/cm2〜100μg/cm2、さらに好ましくは1μg/cm2〜10μg/cm2の範囲であろう。
【0006】
レスベラトロルに対するビヒクル又はキャリアーは、不活性であることができ、又は化粧品、生理学的及び/又は薬学的なそれ自身の利点を有することができる。ビヒクルは、液体又は固体の皮膚軟化剤、溶媒、シックナー、保湿剤及び/又は粉末と共に調製できる。皮膚軟化剤は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、トリグリセリド油、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ポリエチレングリコール、ワセリン、ナトリウムラウロイルグルタメート、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、ビス-PEG.PPG14/14ジメチコン、C24-18アルキルメチコン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、ジメチコン、フェニルトリメチコン、PEG-7ヤシ脂肪酸グリセリル及び液状パラフィン又はエステル、例えばミリスチルミリステート、菜種油ソルビトールエステル、ヤシ脂肪酸デシル、エチルヘキシルステアレート、デシルオレエート、ポリグリセリル-4-イソステアレートを含む。溶媒は、エチルアルコール、イソプロパノール、アセトン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジメチルイソソルビド、ジメチルスルホキシド、エトキシジグリコール、エタノール及びジメチルホルムアミドを含む。シックナーは、アクリロイルジメチルタウリン酸アンモニウム/VPコポリマー及びビニルジメチコンクロスポリマーを含む。
該組成物は、該阻害剤の皮膚中及び/又は作用箇所に対する浸透を向上させる成分も含むことができる。浸透促進剤としては、尿素、シス−脂肪酸(例えばオレイン酸、パルミトレイン酸)、アセトン、ラウロカプラム(laurocapram)、ジメチルスルホキシド、2-ピロリドン、オレイルアルコール、グリセリル-3ステアレート、プロパン−2−オール、ミリスチン酸イソプロピルエステル、コレステロール及びプロピレングリコールがあげられる。
【0007】
浸透促進剤は、0.1質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜5質量%の濃度で適切に添加できる。該組成物を調製して、レスベラトロルの継続的なゆっくりとした放出に備えるために、皮膚の表面中又は表面上に貯留層(reservoir)を提供できる。該組成物を調製して、レスベラトロルが皮膚の表面中にゆっくりと浸透する間、皮膚からゆっくりと蒸発しても良い。
該組成物は、発毛の低減が望まれる箇所から選択された体の領域に対して局所的に適用すべきである。例えば、該組成物は顔に対して、特に顔のあごひげの領域、すなわち、ほお、くび、上唇及びあごに対して適用できる。組成物は、シェービング、ワックスがけ、機械的な脱毛、化学的な脱毛、電気分解及び/又はレーザーを利用した髪の除去を含む、他の髪の除去方法に対する補助として使用しても良い。
組成物は、足、股間(ビキニエリア)、腕、胴体又は腋窩に対しても適用できる。組成物は、多毛又は他の状態を有する女性の、望まれない髪の成長の低減に対して特に適切である。人間において、該組成物は、1日1回、好ましくは1日少なくとも2回適切に適用して、発毛において知覚できる低減を達成すべきである。低減した発毛の知覚は、使用後、24時間又は48時間(例えば、通常のシェービング間隔)と同じくらい早く起こりえるが、数ヶ月を要しても良い。発毛の低減は、例えば、発毛の速度が遅い場合に実証され、除去に対する要求は減少し、被験者は、処理した箇所におけるより少ない髪を知覚し、又は除去した髪の量が減少した場合量的に知覚する。
【0008】
代わりの態様において、局所的な活性の治療又は化粧組成物は、任意に他の成分、例えば、モイスチャライザー、発泡剤、化粧用補助剤、酸化防止剤、界面活性剤、発泡剤;コンディショナー、保湿剤、香料、粘度調整剤、緩衝剤及び防腐剤等を組み合わせて、化粧品の又は医薬品、例えばシェービングクリーム、シェービングゲル、シェービングパウダー及び化学的脱毛クリーム等を製造しても良い。
本発明の他の態様は、短期間又は髪の除去の簡単な方法と一緒に、人間の発毛の遅延のための本発明の組成物の使用である。“一緒に用いる”ことは、他の方法による髪の除去の1時間以下の時間内で、皮膚の表面に本発明の組成物を適用することを意味する。
短期間又は簡単な髪の除去方法は、化学的又は機械的な脱毛、例えばシェービング、ワックス脱毛、化学的な脱毛、脱毛器を用いた機械的なプラッキング及びこれらの組み合わせを含む、本技術で公知のいかなる方法によっても行うことができるが、これらに限定されない。短期間又は簡単であることは、髪の除去方法が、カッティング、溶解又はプラッキングにより髪を除去するが、髪の再生を防ぎ又は阻害しないことを意味する。化学的な脱毛は、脱毛剤、例えばアルカリチオグリコレートによる髪の溶解を意味する。
【0009】
局所的な活性な又は化粧組成物を皮膚に適用する時間、加えて該組成物が皮膚上に残る時間は変動し得るが、適切には簡単な髪の除去の1時間以内である。好ましくは、組成物を、簡単な髪の除去のすぐ前、すぐ後又は同時に皮膚の表面に適用する。より好ましくは、局所的な活性な治療又は化粧組成物は、簡単な髪の除去と同時に又はすぐ後に、最も好ましくは簡単な髪の除去のすぐ後に適用され、及び発毛を遅延するために十分な期間、好ましくは少なくとも5分、より好ましくは少なくとも15分皮膚上に残る。好ましくは、該組成物は、無期限に皮膚上に残り、皮膚中に吸収できる。本発明のこの側面の利点は、レスベラトロルを発毛における阻害、遅延又は低減と抗炎症効果を組み合わせることである。
他の側面において、本発明は、人の発毛の低減のための組成物の調製方法を提供し、該方法は、発毛阻害濃度のレスベラトロルを化粧料として及び/又は皮膚化学的に許容されるキャリアー中に導入することを含む。
本発明は、さらに、以下の実施例を参照して説明されるであろう:
【0010】
実施例
調査を行い、5人の健康な成人(3人の女性及び2人の男性)由来の皮膚乳頭、濾胞期皮膚乳頭繊維芽細胞に対する細胞増殖におけるレスベラトロルの効果を評価した。
毛乳頭ケラチノサイトに対する細胞増殖におけるレスベラトロルの効果を評価するために行う調査を、1人の健康な個体(女性)からの細胞で行った。
調査を行い、49歳及び60歳の2人の女性から損なわれずに単離された発育相(IV)の損なわれていない毛乳頭の成長における、レスベラトロルの効果を評価した。
組成物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)のビヒクル中に1.6%レスベラトロルを含むように調製した。レスベラトロルのレベルは、組成物を実験で培地に添加する場合、実験培地におけるレスベラトロルのレベルが、25、50、75、100又は200マイクロモル及びそれぞれのDMSOレベルが0.036質量%、0.0715質量%、0.107質量%、0.143質量%、0.286質量%であるようにした。
コントロール実験を成長培地としてCM(以下に詳細にしたようなコントロール培地のみ)及びCV(DMSOビヒクルを含むが、レスベラトロルは含まないコントロール培地)を用いて行った。レスベラトロルを用いた実験を、コントロール培地にレスベラトロル組成物を用いて行った。
【0011】
皮膚繊維芽細胞と濾胞期皮膚乳頭繊維芽細胞を用いた実験のため、コントロール培地は、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン及びウシ胎仔血清を補完したRPMI培地であった。
毛乳頭ケラチノサイトを用いた実験のため、コントロール培地は、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン、上皮細胞増殖因子及びウシ下垂体抽出物を補完したケラチノサイト無血清培地(KSF-M)であった。
無傷の毛乳頭を用いた実験のため、コントロール培地は、ファンギゾン、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン、インシュリン様生長因子及びハイドロコルチゾンを補完したウィリアムズE培地(Williams E medium)であった。
該組成物における細胞/乳頭の8日後の細胞数の変化のパーセンテージに関する結果が、以下の表1である。
【0012】
【表1】

従って、レスベラトロルが、成長に関する毛乳頭細胞及び毛乳頭の長さの成長(繊維の延長)を、使用した濃度で阻害することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減した発毛が望まれる箇所から皮膚の領域を選択し、発毛を低減するのに有効な量のレスベラトロルを含む化粧料として許容される組成物を、該皮膚の領域に適用することを含む、人の発毛を低減させるための化粧方法。
【請求項2】
低減した発毛が望まれる箇所から皮膚の領域を選択し、発毛を低減するのに有効な量のレスベラトロルを含む皮膚化学的に許容される組成物を、該皮膚の領域に適用することを含む、人の発毛を低減させるための治療方法。
【請求項3】
組成物におけるレスベラトロルのレベルが、該組成物の質量の0.001%から30%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
レスベラトロルが、皮膚1平方センチメートル当たり、0.01〜1000マイクログラムの量で皮膚に適用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
皮膚の領域が、人の顔、人の足、人の腕、人の腋窩、人の股間領域、人の胴体から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
組成物が、機械的又は化学的脱毛と組み合わされて皮膚の領域に適用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
人の発毛を低減するための薬物の調製におけるレスベラトロルの使用。
【請求項8】
化粧料として及び/又は皮膚化学的に許容されるキャリアー中に、0.1から2質量パーセントのレスベラトロルを含む、人の発毛低減のための組成物。

【公表番号】特表2008−542251(P2008−542251A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512911(P2008−512911)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001899
【国際公開番号】WO2006/125981
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(501164056)レキット ベンキサー (ユーケイ) リミテッド (30)
【Fターム(参考)】