説明

レトルト液体食品容器

【課題】液体食品を充填しフィルム状の蓋材で密封した断熱構造の容器本体に、摂取口を備えたキャップを組み合わせたレトルト液体食品容器において、蓋材除去後の容器本体にキャップをぴったりと嵌合できる構造を提供する。
【解決手段】レトルト液体食品容器1は、上面開口部をフィルム状の蓋材20で密封したカップ状の容器本体10と、その上縁のフランジ部13に嵌合するキャップ30とを備える。容器本体10は合成樹脂製の内筒11と紙製の外筒12からなり、内筒11の外面に複数本垂直方向に形成された突条14が両者間に断熱空間15を形成する。キャップ30は中央部がドーム部31、周縁がリム部32となっており、ドーム部31の一部には摂取口33が形成される。ドーム部31とリム部32の境界には、蓋材20除去後の容器本体10内周面に密着する環状垂下部36が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト液体食品を密封状態で消費者の手元に届けるための容器であって、容器からレトルト液体食品を直接摂取できるようにしたものに関する。なおレトルト液体食品とは、液体食品を容器に充填密封した上で加熱殺菌することで、長期保存可能となる食品のことを言う。
【背景技術】
【0002】
食品を充填したカップ状の容器の上面開口部をフィルム状の蓋材で覆ってシール加工したレトルト食品容器は、日常生活でなじみの深いものである。特許文献1にその例を見ることができる。食品を密封した後、レトルト釜で殺菌処理を行うことも広く実施されている。この場合、容器にはレトルト殺菌時の加熱に耐え得る耐熱性と高いガスバリヤー性が要求されるので、ガスバリヤー性樹脂層と熱可塑性樹脂層を備えた積層シートを熱成型したものが使用されている。特許文献2にその例を見ることができる。
【0003】
また最近では、飲料を店頭販売する際、摂取口を有する合成樹脂キャップを紙カップの口縁に嵌合して購買者に渡し、運搬時に飲料がこぼれないようにするとともに摂取時には摂取口から容易に飲めるようにすることも広く行われている。特許文献3にその例を見ることができる。
【特許文献1】特開2003−72843号公報([0013]−[0016]、図1−3)
【特許文献2】特開平7−300160号公報([0006]、図1、3)
【特許文献3】実用新案登録第2600723号公報([0017]−[0030]、図1−7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に示すような密封容器に食品を充填して販売する場合、食品がスープ類等の液状物であるときは、特許文献3に示すようなキャップを用いて摂取する仕組みがあると便利である。しかしながらこれには次のような問題がある。
【0005】
上面開口をフィルム状の蓋材で密封した容器本体と、摂取口を有するキャップとは、キャップを容器本体に嵌合する形で一体化して出荷することになる。ところで蓋材は容器本体よりもやや大きめに打ち抜かれているのが普通であり、蓋材を剥がした後にキャップを嵌合し直すと、はめ合いが甘くなる。このため、スープ類等の液状物を摂取するために容器本体を傾けたとき、容器本体とキャップの間からスープ類等の液状物が漏れやすい。スープ類等の液状物の場合、蓋材を除去した後に電子レンジで加熱して摂取することが多いので、火傷につながるようなスープ類等の液状物の漏れは極力防ぐ必要がある。また、容器本体は、電子レンジ加熱後手で持っても熱くないような断熱構造が必要である。
【0006】
容器本体とキャップとの間に隙間をもたらす要因は他にもある。レトルト処理による容器本体のひずみ、電子レンジ加熱による容器本体の収縮、蓋材の引き剥がしにより発生する容器口縁の凹凸、などである。このように様々な要因で隙間が生じるので、摂取口を有するキャップを容器本体に嵌合する際、容器本体とキャップとの間からスープ類等の液状物が漏れないようにするというのは簡単に実現できることではない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、スープ類等の液状物を充填しフィルム状の蓋材で密封した容器本体に、食品摂取口を備えたキャップを組み合わせたレトルト液体食品容器において、レトルト殺菌時の加熱に耐え得る耐熱性と高いガスバリヤー性を与え、手に持っても熱くないように断熱構造としたうえで、蓋材除去後の容器本体にキャップをぴったりと嵌合できる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために本発明は、液体食品を充填し、上面開口部をフィルム状の蓋材で密封したカップ状の容器本体と、この容器本体の上縁フランジ部に嵌合するキャップとを備えたレトルト液体食品容器であって、前記容器本体はガスバリヤー性樹脂層と熱可塑性樹脂層を備えた積層シートを真空成型した合成樹脂製の内筒と紙製の外筒を備え、両者間に断熱空間が設けられており、前記キャップは中央部がドーム部、周縁がリム部となっており、前記ドーム部の一部には摂取口が形成され、前記リム部の外縁には前記容器本体の上縁フランジ部に係合する係合部が形成されるとともに、前記ドーム部とリム部の境界には、前記蓋材除去後の容器本体内周面に密着する環状垂下部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、容器本体が断熱構造となっているので、その中に熱い液体食品が入っていてもあまり熱さを感じることなく手に持つことができる。容器本体の内筒はガスバリヤー性樹脂層と熱可塑性樹脂層を備えた複層シートを素材としているから、液体食品充填後のレトルト処理や摂取前の電子レンジ加熱に十分耐え、液体食品の変質も防げるものである。また蓋材除去後にキャップを容器本体に嵌合したとき、キャップの環状垂下部が容器本体内周面に密着するから、容器本体とキャップの間から液体食品が漏れることはなくなり、熱い液体食品を安全に摂取することができる。
【0010】
(2)また本発明は、上記構成のレトルト液体食品容器において、前記容器本体の内筒外面に、断熱空間形成用の突条が複数本設けられていることを特徴としている。
【0011】
この構成によると、幅が狭く空気の流動性の少ない断熱空間が複数形成され、所定の断熱性能が確保される。また突条の存在により容器本体の強度が高まる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、断熱構造の容器本体から蓋材を除去し、その後キャップを容器本体に嵌合したとき、キャップの環状垂下部が容器本体内周面に密着するから、容器本体とキャップの間から液体食品が漏れることはなくなり、衣服を汚したり、温度の高い液体食品で火傷を負う懸念無く、安心して液体食品を摂取できる。また容器本体の内筒はガスバリア性樹脂層と熱可塑性樹脂層を備えた複層シートを素材としているから、液体食品充填後のレトルト処理や摂取前の電子レンジ加熱に十分耐え、液体食品の変質も防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の一実施形態を図1−6に基づき説明する。図1はレトルト液体食品容器の外観斜視図、図2はレトルト液体食品の分解斜視図、図3は蓋材除去前のレトルト液体食品容器の垂直断面図、図4は図3のA−A部水平断面図、図5は蓋材を剥がした状態のレトルト液体食品容器の垂直断面図、図6は蓋材除去後にキャップを嵌合した状態のレトルト液体食品容器の垂直断面図である。
【0014】
レトルト液体食品容器1は次の構成要素からなる。すなわち容器本体10、蓋材20、及びキャップ30である。
【0015】
容器本体10は合成樹脂製の内筒11と紙製の外筒12を備える。内筒11は合成樹脂シートを真空成型して上面が開口したカップ形状に仕上げたものである。合成樹脂シートにはガスバリヤー性と耐熱性が求められるので、ガスバリヤー性樹脂層の両側に耐熱性のある熱可塑性樹脂層を配置した複層シートを用いる。なおこの場合の耐熱性とは、レトルト処理や電子レンジ加熱に耐え、変形や添加物溶出などを生じない、という意味である。このような要請に適う複層シートとしては、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(ガスバリヤー性合成樹脂)を両側からポリプロピレン(耐熱性のある熱可塑性合成樹脂)で挟んだ厚さ1.3mmの複層合成樹脂シートなどを挙げることができる。
【0016】
内筒11の上縁には外側に張り出す形でフランジ部13が形成されている。また図4に見られるように、内筒11の外面には垂直方向に延びる突条14が所定間隔で複数本形成されている。突条14は、外筒12との間に断熱空間15を形成するためのものである。
【0017】
内筒11の外面を外筒12がすっぽりと包む。突条14の稜線部に外筒12の内面が密着し、この箇所が接着剤で結合される。外筒12の材料となる紙には断熱性が求められ、例えば310g/m2のコートボール紙などが好適する。
【0018】
突条14が複数本存在し、その間に幅が狭く空気の流動性の少ない断熱空間15が複数形成されていることにより、所定の断熱性能が確保される。また突条14の存在により容器本体10の強度が高まる。
【0019】
蓋材20は合成樹脂フィルムとアルミニウム箔の積層体などで構成され、容器本体10のフランジ部13にヒートシールで接合される。蓋材20の縁の一部には、指でつまむためのピールタブ21が形成されている。
【0020】
キャップ30は耐熱性のある熱可塑性合成樹脂を射出成型して形成される。この場合の耐熱性とは、電子レンジで加熱されて熱くなった液体食品が接触しても変形せず、添加物が溶出することもない、という意味である。このような目的に適う合成樹脂としては、例えばポリプロピレンを挙げることができる。
【0021】
このように、ガスバリヤー性能を追求するため複層合成樹脂シートを素材に用いる容器本体10の内筒11にはそのようなシートの成型に適した真空成型が採用され、形状の複雑なキャップ30には射出成型が採用されているから、求められる機能を備えた部材を合理的に生産し、レトルト液体食品容器として一定の品質を保証することができる。
【0022】
キャップ30は中央部がドーム部31、周縁がリム部32となっている。ドーム部31の一部には摂取口33が形成される。ドーム部31に設けた凹部34と、凹部34の底に設けた液体食品通過開口35が摂取口33を構成する。凹部34はドーム部31の一方の端に偏って配置されており、その箇所では壁が薄く、口にくわえやすくなっている。
【0023】
ドーム部31とリム部32の境界には環状垂下部36が形成されている。環状垂下部36は、蓋体20を除去した後の容器本体10に嵌合するものであるが、その際、容器本体10がやや押し広げられ気味になるよう、外径が大きめに設定してある。
【0024】
リム部32の外縁には円筒形のスカート部37が垂下形成されている。スカート部37は環状垂下部36よりもさらに下方に突き出す。スカート部37の内周面には、容器本体10のフランジ部13の下縁に係合する突起状の係合部38が所定間隔で複数個形成されている。
【0025】
環状垂下部36の外周面には環状突起39が形成されている。環状垂下部36の外周面に向き合う容器本体10の内周面には、環状突起39が係合する環状溝40が形成されている。
【0026】
レトルト液体食品容器1は、容器本体10にスープ類等の液体食品Fを充填した後、容器本体10の上面開口部を蓋材20で密封する。この状態でレトルト処理を行う。それから図3に示すようにキャップ30を嵌合する。フランジ部13の上にキャップ30を載置し、上から圧力を加えれば、スカート部37が押し広げられて全体が下に沈み、環状垂下部36の下端が蓋材20の上面に当たるところで落ち着く。この時係合部38はスカート部37の弾力でフランジ部13の下縁に係合し、キャップ30は引き抜くのにやや力を要する状態で容器本体10の上端に結合している。この後、レトルト液体食品容器1全体にシュリンクラップ包装を施してカートン詰めし、出荷する。
【0027】
液体食品Fを摂取するときは、シュリンクラップ包装を取り去り、キャップ30を容器本体10から外す。それから蓋材20を除去し、その後キャップ30をもう一度嵌合する。その際、環状垂下部36によって容器本体10が押し広げられるよう、強く押し込む。環状垂下部36は容器本体10を押し広げつつ降下し、環状突起39が環状溝40に係合したところで止まる。環状溝40に環状突起39が係合することによりシール性が高くなり、液体食品Fの漏れを阻止できる。環状溝40と環状突起39の係合によりキャップ30が引き留められるから、キャップ30が簡単に外れてしまうこともない。また「溝に突起がかちんとはまるまで、しっかり押し込んでください」といった具合に、嵌合の度合いを指示しやすくなる。
【0028】
このように環状溝40に環状突起39を係合させることにより、容器本体10の内周面と環状垂下部36の外周面とは密着状態となり、容器本体10とキャップ30の間から液体食品Fが漏れることはなくなる。摂取中にキャップ30が容器本体10から外れることもなくなる。これで安心して容器本体10を傾け、摂取口33より液体食品Fを摂取することができる。
【0029】
液体食品Fを温め直す場合は、蓋材20を除去した段階で容器本体10を電子レンジに入れて加熱すればよい。容器本体10は断熱構造なので、その中に熱い液体食品Fが入っていてもあまり熱さを感じることなく手に持つことができる。
【0030】
環状突起39と環状溝40の位置関係を逆転し、容器本体10に環状突起39を設け、環状垂下部36に環状溝40を設ける構成も可能である。また環状突起39と環状溝40の組み合わせの数は1組に限定されるものではなく、複数組設けても構わない。
【0031】
以上本発明の実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、液体食品を密封して供給するレトルト液体食品容器に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】レトルト液体食品容器の外観斜視図
【図2】レトルト液体食品容器の分解斜視図
【図3】蓋材除去前のレトルト液体食品容器の垂直断面図
【図4】図3のA−A部水平断面図
【図5】蓋材を剥がした状態のレトルト液体食品容器の垂直断面図
【図6】蓋材除去後にキャップを嵌合した状態のレトルト液体食品容器の垂直断面図
【符号の説明】
【0034】
1 レトルト液体食品容器
10 容器本体
11 内筒
12 外筒
13 フランジ部
14 突条
15 断熱空間
20 蓋材
30 キャップ
31 ドーム部
32 リム部
33 摂取口
36 環状垂下部
37 スカート部
38 係合部
39 環状突起
40 環状溝
F 液体食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体食品を充填し、上面開口部をフィルム状の蓋材で密封したカップ状の容器本体と、この容器本体の上縁フランジ部に嵌合するキャップとを備えたレトルト液体食品容器であって、
前記容器本体はガスバリヤー性樹脂層と熱可塑性樹脂層を備えた積層シートを真空成型した合成樹脂製の内筒と紙製の外筒を備え、両者間に断熱空間が設けられており、
前記キャップは中央部がドーム部、周縁がリム部となっており、前記ドーム部の一部には摂取口が形成され、前記リム部の外縁には前記容器本体の上縁フランジ部に係合する係合部が形成されるとともに、前記ドーム部とリム部の境界には、前記蓋材除去後の容器本体内周面に密着する環状垂下部が形成されていることを特徴とするレトルト液体食品容器。
【請求項2】
前記容器本体の内筒外面に、断熱空間形成用の突条が複数本設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレトルト液体食品容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−269396(P2007−269396A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100422(P2006−100422)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】