説明

レドックス燃料電池システムおよび燃料電池車両

【課題】エネルギ効率を向上できるレドックス燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料ガスGfuをアノード2dにカソード溶液Lcaをカソード2bに供給して発電するレドックス燃料電池2と、燃料ガスGfuを貯蔵する燃料ガスタンク11と、カソード溶液Lcaを酸化剤Goxで酸化させ再生するカソード溶液再生装置32と、燃料ガスGfuを燃料ガスタンク11からアノード2dに供給する燃料ガス供給路16a等と、カソード溶液Lcaをカソード溶液再生装置32とカソード2bの間で循環させるカソード溶液循環路35a等と、酸化剤Goxをカソード溶液再生装置32に供給する酸化剤供給路24a等と、アノード2dに供給される前の燃料ガスGfuの圧力で、酸化剤Goxを押圧してカソード溶液再生装置32に供給し、カソード溶液Lcaを押圧してカソード溶液再生装置32とカソード2bの間を循環させる押圧手段3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックス燃料電池を備えたレドックス燃料電池システムと、それを搭載した燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
レドックス燃料電池システムとしては、アノードに供給された水素ガスと、カソードに供給されたカソード溶液とを用いて発電するものが提案されている(特許文献1等参照)。カソード溶液は、カソードに供給され還元されるが、反応チャンバ(再生装置)において酸化剤によって再酸化されることで、カソードに循環供給されることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−541127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レドックス燃料電池システムを車載する場合には、航続距離の長距離化の観点から、高圧にすることで水素ガスを大量に貯蔵することができる高圧水素タンクを用いることが考えられる。高圧水素タンクに貯蔵された水素は、減圧されてから、アノードに供給される。高圧の水素は、高圧から減圧される過程で、弾性をもって膨張するので、縮んでいたばねが伸びるのと同様に考えられ、圧縮された状態のばねの位置(弾性)エネルギが、伸びて、すなわち膨張し、運動エネルギに変換されている。この運動エネルギは、最終的には熱エネルギに変換され外部に伝導していると考えられる。この高圧の水素が有する位置(弾性)エネルギや運動エネルギが利用できれば、有用である。
【0005】
そして、水素タンクに高圧で貯蔵された水素のいわゆる位置(弾性)エネルギを、有効に利用できれば、レドックス燃料電池システムのシステム全体としてのエネルギ効率を向上できると考えられる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、エネルギ効率を向上できるレドックス燃料電池システムを提供し、さらに、これを搭載しエネルギ効率を向上できる燃料電池車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、アノードに供給された燃料ガスと、カソードに供給された非揮発性のカソード溶液とを用いて発電するレドックス燃料電池と、
前記燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、
前記カソードを通流後の前記カソード溶液を、酸化剤で酸化させることで再生するカソード溶液再生装置と、
燃料ガスを前記燃料ガスタンクから前記アノードに供給する燃料ガス供給路と、
前記カソード溶液を前記カソード溶液再生装置と前記カソードの間で循環させるカソード溶液循環路と、
前記酸化剤を前記カソード溶液再生装置に供給する酸化剤供給路とを備えるレドックス燃料電池システムであって、
前記アノードに供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記酸化剤を押圧して前記カソード溶液再生装置に前記酸化剤供給路を介して供給することと、
前記アノードに供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記カソード溶液を押圧して前記カソード溶液循環路を介して前記カソード溶液再生装置と前記カソードの間を循環させることの、
少なくともどちらか一方を実施する押圧手段を有することを特徴としている。
【0008】
これによれば、水素等の燃料ガスのアノードに供給される前の高い圧力を用いて、酸化剤を押圧して圧縮することで、流動させ、カソード溶液再生装置に供給することができるので、従来、この供給に要していたコンプレッサの駆動電力が省け、システム効率を向上することができる。また、水素等の燃料ガスのアノードに供給される前の高い圧力を用いて、カソード溶液を押圧して流動させることで、カソード溶液再生装置とカソードの間を循環させることができるので、従来、この循環に要していた循環ポンプの駆動電力が省け、システム効率を向上させることができる。
【0009】
また、第1の本発明では、前記アノードを通流後の前記燃料ガスを、循環させ前記アノードに戻す燃料ガス循環路を備え、
前記押圧手段は、
前記アノードに供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記燃料ガスを押圧して前記燃料ガス循環路を介して前記アノードに循環させることが好ましい。
【0010】
これによれば、水素等の燃料ガスのアノードに供給される前の高い圧力を用いて、アノードに供給された後の圧力が低下して低圧力になった燃料ガスを押圧して圧縮することで、流動させ燃料ガス循環路を介してアノードに循環させることができるので、従来、この循環に要していた循環ポンプの駆動電力が省け、システム効率を向上させることができる。
【0011】
また、第2の本発明は、アノードに供給されたアノード溶液と、カソードに供給されたカソード溶液とを用いて発電するレドックス燃料電池と、
前記アノードを通流後の前記アノード溶液を、燃料ガスで還元させることで再生するアノード溶液再生装置と、
前記カソードを通流後の前記カソード溶液を、酸化剤で酸化させることで再生するカソード再生装置と、
前記燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、
燃料ガスを前記燃料ガスタンクから前記アノード溶液再生装置に供給する燃料ガス供給路と、
前記アノード溶液を前記アノード溶液再生装置と前記アノードの間で循環させるアノード溶液循環路と、
前記カソード溶液を前記カソード溶液再生装置と前記カソードの間で循環させるカソード溶液循環路と、
前記酸化剤を前記カソード溶液再生装置に供給する酸化剤供給路とを備えるレドックス燃料電池システムであって、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記酸化剤を押圧して前記カソード溶液再生装置に前記酸化剤供給路を介して供給することと、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記カソード溶液を押圧して前記カソード溶液循環路を介して前記カソード溶液再生装置と前記カソードの間を循環させることと、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記アノード溶液を押圧して前記アノード溶液循環路を介して前記アノード溶液再生装置と前記アノードの間を循環させることの、
少なくともいずれか一つを実施する押圧手段を有することを特徴としている。
【0012】
これによれば、水素等の燃料ガスのアノード溶液再生装置に供給される前の高い圧力を用いて、酸化剤を押圧して圧縮することで、流動させカソード溶液再生装置に供給することができるので、従来、この供給に要していたコンプレッサの駆動電力が省け、システム効率を向上することができる。また、水素等の燃料ガスのアノード溶液再生装置に供給される前の高い圧力を用いて、カソード溶液を押圧して流動させることで、カソード溶液再生装置とカソードの間を循環させることができるので、従来、この循環に要していた循環ポンプの駆動電力が省け、システム効率を向上させることができる。また、水素等の燃料ガスのアノード溶液再生装置に供給される前の高い圧力を用いて、アノード溶液を押圧して流動させることで、アノード溶液再生装置とアノードの間を循環させることができるので、従来、この循環に要していた循環ポンプの駆動電力が省け、システム効率を向上させることができる。
【0013】
また、第3の本発明は、アノードに供給されたアノード溶液と、カソードに供給された酸化剤とを用いて発電するレドックス燃料電池と、
前記アノードを通流後の前記アノード溶液を、燃料ガスで還元させることで再生するアノード溶液再生装置と、
前記燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、
燃料ガスを前記燃料ガスタンクから前記アノード溶液再生装置に供給する燃料ガス供給路と、
前記アノード溶液を前記アノード溶液再生装置と前記アノードの間で循環させるアノード溶液循環路と、
前記酸化剤を前記カソードに供給する酸化剤供給路とを備えるレドックス燃料電池システムであって、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記酸化剤を押圧して前記カソードに前記酸化剤供給路を介して供給することと、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記アノード溶液を押圧して前記アノード溶液循環路を介して前記アノード溶液再生装置と前記アノードの間を循環させることの、
少なくともどちらか一方を実施する押圧手段を有することを特徴としている。
【0014】
これによれば、水素等の燃料ガスのアノード溶液再生装置に供給される前の高い圧力を用いて、酸化剤を押圧して圧縮することで、流動させカソード溶液再生装置に供給することができるので、従来、この供給に要していたコンプレッサの駆動電力が省け、システム効率を向上することができる。また、水素等の燃料ガスのアノード溶液再生装置に供給される前の高い圧力を用いて、アノード溶液を押圧して流動させることで、アノード溶液再生装置とアノードの間を循環させることができるので、従来、この循環に要していた循環ポンプの駆動電力が省け、システム効率を向上させることができる。
【0015】
また、第2の本発明と第3の本発明では、前記アノード溶液再生装置を通流後の前記燃料ガスを、循環させ前記アノード溶液再生装置に戻す燃料ガス循環路とを備え、
前記押圧手段は、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記燃料ガスを押圧して前記燃料ガス循環路を介して前記アノード溶液再生装置に循環させることが好ましい。
【0016】
これによれば、水素等の燃料ガスのアノード溶液再生装置に供給される前の高い圧力を用いて、アノード溶液再生装置に供給された後の圧力が低下して低圧力になった燃料ガスを押圧して圧縮することで、流動させ燃料ガス循環路を介してアノード溶液再生装置に循環させることができるので、従来、この循環に要していた循環ポンプの駆動電力が省け、システム効率を向上させることができる。
【0017】
また、第1の本発明と第2の本発明と第3の本発明とでは、
前記押圧手段は、
前記燃料ガスの圧力でピストンを押圧し、クランクシャフトを回動させる燃料ガス用シリンダを有し、かつ、
前記クランクシャフトの回動により、内蔵するピストンを移動させ前記酸化剤を押圧する酸化剤用シリンダと、
前記クランクシャフトの回動により、ロータを回動させカソード溶液を押圧するカソード溶液用ポンプと、
前記クランクシャフトの回動により、ロータを回動させアノード溶液を押圧するアノード溶液用ポンプと、の少なくともいずれか一つを有することが好ましい。
【0018】
これによれば、押圧手段として、容積型往復動(レシプロ)機関の内燃機関(ICE)を転用して用いることができる。具体的に、容積型往復動(レシプロ)機関である内燃機関(ICE)を転用する場合は、複数の気筒を、燃料ガス用シリンダと酸化剤用シリンダに割り当て、内燃機関(ICE)を冷却するために内蔵された冷却用ポンプを、カソード溶液用ポンプとアノード溶液用ポンプのどちらか一方に転用することができる。これにより、設計のコストを低減することができる。そして、設計の際に、燃料ガス用シリンダと酸化剤用シリンダとに割り当てられる気筒のボアまたはストロークを調整することにより、燃料ガスと酸化剤の流量比を調整することができる。
【0019】
また、第1の本発明と第2の本発明と第3の本発明とでは、
前記押圧手段は、
前記燃料ガスの圧力で、貯留させたカソード溶液とアノード溶液の少なくともどちらか一方を押圧する第1気液シリンダと、
前記第1気液シリンダとカソード溶液又はアノード溶液の液面の下同士で接続され、カソード溶液又はアノード溶液の圧力で、貯留させた酸化剤を押圧する第2気液シリンダとを有することが好ましい。
【0020】
これによれば、押圧手段として、容積型往復動(レシプロ)機関の往復動(レシプロ)圧縮機を用いることができる。具体的に、第1気液シリンダは、往復動(レシプロ)圧縮機として機能し、燃料ガスの圧力によって、貯留させたカソード溶液やアノード溶液を押圧し圧送することができる。また、第2気液シリンダも、往復動(レシプロ)圧縮機として機能し、圧送されてきたカソード溶液やアノード溶液の圧力によって、貯留させた酸化剤を押圧し圧送することができる。
【0021】
また、第1の本発明と第2の本発明と第3の本発明とでは、
前記押圧手段は、
前記燃料ガスの圧力で押圧され、取り付けられている回転軸を回転させる燃料ガス用羽根車を有し、かつ、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転により回転し前記酸化剤を押圧する酸化剤用羽根車と、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転により回転しカソード溶液を押圧するカソード溶液用羽根車と、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転により回転しアノード溶液を押圧するアノード溶液用羽根車と、の少なくともいずれか一つを有することが好ましい。
【0022】
これによれば、押圧手段として、回転軸が互いに連結したガスタービンとターボ圧縮機を用いることができる。具体的に、ガスタービンでは、燃料ガス用羽根車に燃料ガスが吹き付けられることで、燃料ガス用羽根車が燃料ガスの圧力で押圧され回転する。そして、この回転に伴って回転軸が回転し、遠心式ポンプのカソード溶液用羽根車とアノード溶液用羽根車とが回転する。回転したカソード溶液用羽根車とアノード溶液用羽根車とによって、カソード溶液とアノード溶液とが押圧される。これによって、カソード溶液とアノード溶液を圧送することができる。
【0023】
また、本発明は、第1の本発明と第2の本発明と第3の本発明とに係るレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両であることを特徴としている。
【0024】
これによれば、エネルギ効率を向上できる燃料電池車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、エネルギ効率を向上できるレドックス燃料電池システムを提供することができ、さらに、これを搭載しエネルギ効率を向上できる燃料電池車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の構成図である。
【図2】第1の実施形態のレドックス燃料電池システムの発電のメカニズムを説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の構成図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の構成図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の構成図である。
【図6】第4の実施形態のレドックス燃料電池システムの発電のメカニズムを説明するための図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の実施形態に係るレドックス燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載されることを想定しているが、船舶や、自動二輪車、定置用発電装置などに搭載されてもよいのはもちろんである。
【0028】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係るレドックス燃料電池システム1を搭載した燃料電池車両100の構成図を示す。燃料電池車両100では、車輪を駆動させる駆動モータMOTが、パワーディストリビューションユニットPDU(インバータ)を介して、レドックス燃料電池2(レドックス燃料電池システム1)に接続している。駆動モータMOTは、レドックス燃料電池2(レドックス燃料電池システム1)から供給された電力で、車輪を回動させることで、燃料電池車両100は走行することができる。
【0029】
レドックス燃料電池システム1は、主として、レドックス燃料電池2と、水素タンク(燃料ガスタンク)11と、燃料ガス供給路(16a〜16c等)と、燃料ガス循環路(16c〜16f等)と、カソード溶液循環路(35a〜35d等)と、カソード溶液再生装置(再生装置)32と、酸化剤供給路(24a〜24c等)と、押圧手段3とを有している。
【0030】
レドックス燃料電池2は、アノード2dに供給された燃料ガスGfu(例えば、水素ガス)と、カソード2bに供給された非揮発性のカソード溶液Lca(例えば、バナジウム(V)を希硫酸に溶解させた電解液)とを用いて発電する。燃料ガスGfuは、アノード側流路2eを通流することで、アノード側流路2eに面しているアノード2dに到達することができる。アノード2dとカソード2bの間には、プロトン交換膜(PEM)2cが設けられている。カソード溶液Lcaは、カソード側流路2aを通流することで、カソード側流路2aに面しているカソード2bに到達することができる。レドックス燃料電池2では、アノード2dとカソード2bとでプロトン交換膜(PEM)2cを挟持してなる単セルを複数積層すれば、所望の電圧に高めて取り出すことができる。
【0031】
水素タンク11には、燃料ガス(水素)Gfuが、高圧に圧縮されて貯蔵されている。
【0032】
燃料ガス供給路(16a〜16c等)は、燃料ガス(水素)Gfuを、水素タンク11から、レドックス燃料電池2のアノード2d(アノード側流路2e)に供給する。燃料ガス供給路(16a〜16c等)は、水素タンク11に接続する配管16aと、配管16aが接続する高圧噴射装置12と、高圧噴射装置12とエキスパンダ13とを接続する配管16bと、エキスパンダ13とレドックス燃料電池2のアノード側流路2eとを接続する配管16cとを有している。なお、図1において、燃料ガス供給路の配管16a〜16cは太い実線で示されている。また、配管16aには、電磁弁11aと、二次遮断弁11bと、フィルタ11cと、リリーフ弁19などが備えられているが、減圧弁は、備えられておらず、水素タンク11内の高圧水素は、高圧状態を保ったまま高圧噴射装置12に供給される。
【0033】
高圧噴射装置12は、燃料ガス(水素)Gfuを、高い圧力のまま噴射し、配管16bを介してエキスパンダ13へ供給する。高圧噴射装置12には、バルブが内蔵されており、このバルブが、ECU(Engine Control Unit)などによって開閉制御されることによって、エキスパンダ13への高圧水素供給が制御されている。
【0034】
燃料ガス循環路(16c〜16f等)は、レドックス燃料電池2のアノード2d(アノード側流路2e)を通流後の燃料ガス(水素)Gfuを、循環させ、アノード2d(アノード側流路2e)に戻している。燃料ガス循環路(16c〜16f等)は、レドックス燃料電池2のアノード側流路2eと排出水素タンク14とを接続する配管16dと、レドックス燃料電池2から排出された燃料ガス(水素)Gfuをいったん貯蔵する排出水素タンク14と、排出水素タンク14内に貯蔵された燃料ガス(水素)Gfuが含んでいる液相分(水分)を、燃料ガス(水素)Gfuから分離する気液分離装置41と、排出水素タンク14とコンプレッサ15の吸入用バルブ15dとを接続する配管16eと、コンプレッサ15の排出用バルブ15eと配管16cとを接続する配管16fと、レドックス燃料電池2のアノード側流路2eに接続する配管16cとを有している。なお、図1において、燃料ガス循環路の配管16c〜16fは太い実線で示されている。また、配管16cは、燃料ガス供給路(16a〜16c等)と燃料ガス循環路(16c〜16f等)を兼ねている。気液分離装置41で分離された液相分(水分)は、ドレイン配管43aと、ドレイン弁42と、ドレイン配管43bと、再生装置32と、ドレイン配管43cとを、順に経由して大気に放出される。
【0035】
カソード溶液循環路(35a〜35d等)は、カソード溶液Lcaを、カソード溶液再生装置32とレドックス燃料電池2のカソード2b(カソード側流路2a)の間で循環させる。カソード溶液循環路(35a〜35d等)は、レドックス燃料電池2のカソード側流路2aとラジエータ(RAD)31とを接続する配管35aと、レドックス燃料電池2で発電の際に暖められたカソード溶液Lcaを冷却するラジエータ(RAD)31と、ラジエータ(RAD)31とカソード溶液再生装置32とを接続する配管35bと、カソード溶液再生装置32とポンプ34とを接続する配管35cと、ポンプ34とレドックス燃料電池2のカソード側流路2aとを接続する配管35dとを有している。なお、図1において、カソード溶液循環路の配管35a〜35dは太い破線で示されている。
【0036】
なお、配管35cは、シリンダ23a、13a、15aの周囲に引き回されて配置されている。これは、押圧手段3をレシプロエンジンから転用する際に、冷却用配管を配管35cとして転用しているためである。シリンダ13aにおいては、燃料ガス(水素)Gfuは、噴射される際に、いわゆる、断熱膨張していると考えられ、燃料ガス(水素)Gfuの温度は低下し、シリンダ13aの温度も低下し、シリンダ13aを流れるカソード溶液Lcaも冷却される。カソード溶液Lcaは、カソード溶液再生装置32における再生の際の化学反応によって発熱し、昇温しているが、シリンダ13a近傍を流れることで冷却され降温することができる。冷却されたカソード溶液Lcaを、レドックス燃料電池2に供給できるので、プロトン交換膜(PEM)の温度負荷を低減でき、プロトン交換膜(PEM)を長寿命化できる。また、従来の燃料電池では、その内部の反応膜が主たる発熱源であったが、レドックス燃料電池2では、主たる発熱源が、その外部のカソード溶液再生装置32になるので、プロトン交換膜(PEM)の温度を下げやすく、容易に温度管理できる。そして、前記のように、カソード溶液Lcaを冷却することで、容易に、プロトン交換膜(PEM)を冷却することができる。
【0037】
カソード溶液再生装置32は、レドックス燃料電池2のカソード2bを通流後のカソード溶液Lcaを、酸化剤(例えば、酸素や空気)Goxで酸化させることで再生する。
【0038】
酸化剤供給路(24a〜24c等)は、酸化剤(例えば、酸素や空気)Goxを、大気吸入して、カソード溶液再生装置32に供給する。酸化剤供給路(24a〜24c等)は、大気を酸化剤(例えば、酸素や空気)Goxとして取り込むインテーク21と、インテーク21とフィルタ22とを接続する配管24aと、酸化剤(空気)Goxに浮遊するゴミ等の異物を除くフィルタ22と、フィルタ22とコンプレッサ23の吸入用バルブ23dとを接続する配管24bと、コンプレッサ23の排出用バルブ23eと噴射ノズル33とを接続する配管24cと、カソード溶液再生装置32内のカソード溶液Lcaに酸化剤(空気)Goxを噴射させ吹き込む噴射ノズル33とを有している。なお、図1において酸化剤供給路の配管24a〜24cは細い実線で示されている。
【0039】
押圧手段3は、エキスパンダ(往復動(レシプロ)膨張機)13と、コンプレッサ(燃料ガス循環用:往復動(レシプロ)圧縮機)15と、コンプレッサ(酸化剤用:往復動(レシプロ)圧縮機)23と、ポンプ34と、クランクシャフト51と、カム37a、37bとを有している。エキスパンダ13は、クランクシャフト51を介してコンプレッサ15、23とポンプ34と連結され連動しており、押圧手段3は、ガソリンエンジンなど、既存のレシプロエンジンを流用(転用)することができる。
【0040】
エキスパンダ13は、レシプロエンジンを構成する気筒と同様に、シリンダ(燃料ガス用シリンダ)13a、ピストン(燃料ガス用ピストン)13b、コンロッド13c、バルブ13dなどで構成されている。高圧噴射装置12から、高圧の燃料ガス(水素)Gfuが、シリンダ13a内に噴射されると、シリンダ13a内は燃料ガス(水素)Gfuで高圧となり、燃料ガス(水素)Gfuの圧力でピストン13bを押圧する。ピストン13bが燃料ガス(水素)Gfuによって押し下げられると、コンロッド13cが下がり、クランクシャフト51が回動する。
【0041】
バルブ13dは、エキスパンダ13の上部(上死点側)に設置されており、カムシャフトおよびカム37aの動作に応じて開閉する。バルブ13dの閉時には、シリンダ13a内の燃料ガス(水素)Gfuは、閉じ込められたまま膨張し、ピストン13bが押し下げられる。バルブ13dの開時には、シリンダ13a内の燃料ガス(水素)Gfuは、自らの圧力(高圧)によって、膨張しながら、配管16cを介してレドックス燃料電池2に圧送される。カムシャフトおよびカム37aは、転用する場合は既存のレシプロエンジンに備えられているものを使用してもよい。なお、バルブ13dは、電磁弁などの開閉制御可能なバルブを用いてもよい。このようにすることで、コストダウンを図ることができる。
【0042】
コンプレッサ15は、レドックス燃料電池2で未反応の燃料ガス(水素)Gfuを配管16cに圧送することで、再びレドックス燃料電池2へ戻すものである。コンプレッサ15も、レシプロエンジンを構成する気筒と同様に、シリンダ15a、ピストン15b、コンロッド15c、吸入用バルブ15d、排出用バルブ15eなどで構成されている。なお、図1では、エキスパンダ13と比べて、コンプレッサ15が小さく記述されているが、エキスパンダ13と同じ大きさでもよい。ピストン15bは、コンロッド15c、クランクシャフト51を介して、エキスパンダ13のピストン13bと連動するように構成されている。エキスパンダ13のピストン13bが燃料ガス(水素)Gfuによって押し下げられると、コンロッド13cが下がり、クランクシャフト51が回動する。それに伴い、コンプレッサ15のコンロッド15cが移動して上がり、ピストン15bを押し上げる。シリンダ15a内の燃料ガス(水素)Gfuが、ピストン15bによって押圧されて圧縮され、排気用バルブ15eから配管16f、16cを経由して、レドックス燃料電池2のアノード側流路2eへ圧送される。これにより、燃料ガス(水素)Gfuは、燃料ガス循環路(16c〜16f等)を循環するようになる。なお、吸入用バルブ15dおよび排出用バルブ15eは、カムシャフトおよびカム37a、さらには、クランクシャフト51と連動している。
【0043】
コンプレッサ23(酸化剤用:往復動(レシプロ)圧縮機)も、レシプロエンジンを構成する気筒と同様に、シリンダ(酸化剤用シリンダ)23a、ピストン(酸化剤用ピストン)23b、コンロッド23c、吸入用バルブ23d、排出用バルブ23eなどで構成されている。ピストン23bは、コンロッド23c、クランクシャフト51を介して、エキスパンダ13のピストン13bと連動するように構成されている。
【0044】
図1では、煩雑になるのを避けるためコンプレッサ23の上下を逆に記載している(図3、図5、図7でも同様である)。エキスパンダ13のピストン13bが燃料ガス(水素)Gfuによって押し下げられると、コンロッド13cが下がり、クランクシャフト51が回動する。それに伴い、コンプレッサ23のコンロッド23cが上がり、ピストン23bを押し上げる。シリンダ23a内の酸化剤(空気)Goxが、ピストン23bによって押圧され圧縮される。圧縮(押圧)された酸化剤(空気)Goxは、排出用バルブ23eから配管24cを経由して、噴射ノズル33へ圧送される。これにより、酸化剤(空気)Goxは、酸化剤供給路(24a〜24c等)を経由して、カソード溶液再生装置32に供給されるようになる。なお、吸入用バルブ23dおよび排出用バルブ23eは、カムシャフトおよびカム37b、さらには、クランクシャフト51と連動している。
【0045】
ポンプ34は、レシプロエンジンを構成する冷却用のウォータポンプと同様に、クランクシャフト51と連動して回動するロータ(カソード溶液用羽根車)34aを有している。エキスパンダ13のピストン13bが燃料ガス(水素)Gfuによって押し下げられると、コンロッド13cが下がり、クランクシャフト51が回動する。この回動に伴い、ロータ(カソード溶液用羽根車)34aが回動する。
【0046】
そして、図1に示すように、エキスパンダ13は複数(図1では3個)設けられ、クランクシャフト51の回転軸に対してコンロッド13cの取り付け角度がエキスパンダ13毎に異なっている。例えば、エキスパンダ13が3個の場合、基準とする1つ目のエキスパンダ13のコンロッド13cの取り付け角度を0度とすると、他の2つのエキスパンダ13のコンロッド13cの取り付け角度はそれぞれ120度と240度に設定されている。そして、複数のエキスパンダ13で、相互に、高圧噴射装置12が燃料ガス(水素)Gfuを噴射するタイミングをずらし、ピストン13b(コンロッド13c)が押し下げられるタイミングをずらすことで、クランクシャフト51を連続的に回動させ、回転させることができる。クランクシャフト51の連続的な回転(回動)により、ロータ(カソード溶液用羽根車)34aも連続的に回転(回動)し、ポンプ34は安定したポンピングを実施することができる。ロータ(カソード溶液用羽根車)34aが回転(回動)すると、カソード溶液Lcaがロータ(カソード溶液用羽根車)34aによって押圧され、配管35dを経由して、カソード側流路2aへ圧送される。これにより、カソード溶液Lcaは、カソード溶液循環路(35a〜35d等)を循環するようになる。
【0047】
図2に、第1の実施形態のレドックス燃料電池システム1における、特に、レドックス燃料電池2とカソード溶液再生装置32における、発電のメカニズムを説明するための図を示す。レドックス燃料電池2のアノード側流路2eに、燃料ガス(水素)Gfuが通流すると、アノード2dに燃料ガス(水素)Gfuが供給される。アノード2dにおいては、燃料ガス(水素H)Gfuから、水素イオン(H)と電子(e)が生成される(H→2H+2e)。電子(e)は、アノード2dから、負荷となるパワーディストリビューションユニットPDUおよび駆動モータMOTが接続された配線を経由して、カソード2bへ移動する。この電子(e)の移動が、いわゆる、発電(現象)となる。水素イオン(H)は、アノード2dから、プロトン交換膜(PEM)2cを経由して、カソード2bへ移動する。プロトン交換膜(PEM)2cでは、水素イオン(H)が、アノード2d側からカソード2b側へ通過する。
【0048】
レドックス燃料電池2のカソード側流路2aに、カソード溶液Lcaが通流すると、カソード2bにカソード溶液Lcaが供給される。カソード2bには、カソード溶液Lcaから二酸化バナジウムイオン(VO)が供給され、プロトン交換膜(PEM)2cから水素イオン(H)が供給され、配線から電子(e)が供給される。これらにより、カソード2bにおいて、二酸化バナジウムイオン(VO)と、水素イオン(H)と、電子(e)とから、酸化バナジウムイオン(VO2+)と、水(HO)とが生成される(VO+2H+e→VO2++HO)。
【0049】
カソード2bで生成した酸化バナジウムイオン(VO2+)と水(HO)は、カソード側流路2aを通流するカソード溶液Lcaに溶解等して含まれて、カソード溶液Lcaと共にカソード溶液再生装置32に流れ込む。また、カソード溶液再生装置32には、酸化剤(空気、酸素O)Goxが供給されている。酸化剤(空気、酸素O)Goxは、カソード溶液Lca中に吹き込まれている。これらにより、カソード溶液再生装置32において、酸化バナジウムイオン(VO2+)と、酸素(O)とから、二酸化バナジウムイオン(VO)が生成(再生)される(VO2++(1/2)O→VO)。再生した二酸化バナジウムイオン(VO)は、レドックス燃料電池2とカソード溶液再生装置32の間を循環するカソード溶液Lcaと共に、再び、レドックス燃料電池2のカソード側流路2a(カソード2b)に供給される。カソード溶液再生装置32における化学反応と、カソード2bにおける化学反応と、アノード2dにおける化学反応とを合わせたトータル反応は、酸素(O)と水素(H)とから、水(HO)が生成される反応となっている((1/2)O+H→HO)。また、カソード溶液Lca中の水(HO)は、吹き込まれた酸化剤(空気、酸素O)Gox中に溶け込み、酸化剤(空気、酸素O)Goxと共に、カソード溶液再生装置32の外部、すなわち、大気中に、ドレイン配管43cを経由して放出される。逆に、カソード溶液Lcaは、生成される水によって湿潤に保たれているので、酸化剤Goxを吹き込む前に加湿する必要はない。
【0050】
カソード2bと、プロトン交換膜(PEM)2cと、アノード2dとは、積層され、3層の膜構造体を構成している。この3層膜構造体(2b、2c、2d)は、カソード2b側をカソード溶液Lcaに接し、アノード2d側を燃料ガス(水素)Gfuに接している。このため、カソード溶液Lcaの表面張力により、3層膜構造体(2b、2c、2d)は、カソード溶液Lcaに吸着している。カソード溶液Lcaは、ポンプ34によって供給されるので、カソード溶液Lcaの圧力の脈動は抑制されている。燃料ガス(水素)Gfuは、往復動(レシプロ)膨張機であるエキスパンダ13と、往復動(レシプロ)圧縮機であるコンプレッサ15によって供給されるので、燃料ガス(水素)Gfuの圧力は、脈動する。燃料ガス(水素)Gfuの圧力が脈動しても、3層膜構造体(2b、2c、2d)は、脈動の抑制されたカソード溶液Lcaに吸着しているので、脈動し難くなっている。3層膜構造体(2b、2c、2d)は、脈動が抑制されることで、変形が抑制され、疲労による膜破れ等の劣化を抑えることができる。また、アノード側流路2e内を燃料ガス(水素)Gfuでパージし、水分を排出する際にも、3層膜構造体(2b、2c、2d)は、燃料ガス(水素)Gfuから圧力を受けるものの、変形を抑制することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図3に、本発明の第2の実施形態に係るレドックス燃料電池システム1を搭載した燃料電池車両100の構成図を示す。第2の実施形態のレドックス燃料電池システム1は、第1の実施形態のレドックス燃料電池システム1と比べて、押圧手段3の構造が異なっている。第2の実施形態の押圧手段3は、油(液)圧シリンダ(第1気液シリンダ、往復動(レシプロ)膨張機)13Aと、油(液)圧シリンダ(往復動(レシプロ)圧縮機)15Aと、油(液)圧シリンダ(第2気液シリンダ、往復動(レシプロ)圧縮機)23Aと、電磁弁18と、逆流防止弁17a、17bと、電磁弁26と、逆流防止弁36a〜36dと、逆流防止弁25a、25bとを有している。これに伴い、燃料ガス供給路(16a〜16c等)と、燃料ガス循環路(16c〜16f等)と、カソード溶液循環路(35a〜35i等)と、酸化剤供給路(24a〜24c等)の、それぞれの構成も異なっている。
【0052】
第1の実施形態との相違点は、燃料ガス供給路(16a〜16c等)においては、配管16bと配管16cが、エキスパンダ13に替えて油(液)圧シリンダ13Aに接続している点である。また、配管16cの油(液)圧シリンダ13Aの近傍には、電磁弁18が設けられている。
【0053】
また、燃料ガス循環路(16c〜16f等)においては、配管16eと配管16fが、コンプレッサ15に替えて油(液)圧シリンダ15Aに接続している点が、第1の実施形態とは異なっている。また、配管16eの油(液)圧シリンダ15Aの近傍には、油(液)圧シリンダ15Aからの流れを抑制する逆流防止弁17bが設けられている。配管16fの油(液)圧シリンダ15Aの近傍には、油(液)圧シリンダ15Aへの流れを抑制する逆流防止弁17bが設けられている。
【0054】
カソード溶液循環路(35a〜35i等)は、配管35aと、ラジエータ(RAD)31と、配管35bと、カソード溶液再生装置32と油(液)圧シリンダ13Aの液体室13iとを接続する配管35cと、液体室13iと油(液)圧シリンダ15Aの液体室15i(カソード溶液Lcaの液面の下)とを接続する配管35dと、液体室13i(カソード溶液Lcaの液面の下)と油(液)圧シリンダ23Aの液体室23i(カソード溶液Lcaの液面の下)とを接続する配管35eと、複数の油(液)圧シリンダ23Aの液体室23i(カソード溶液Lcaの液面の下)間を接続する配管35f、35gと、液体室23i(カソード溶液Lcaの液面の下)と配管35iの電磁弁26の油(液)圧シリンダ15A側とを接続する配管35hと、油(液)圧シリンダ15Aの液体室15i(カソード溶液Lcaの液面の下)とレドックス燃料電池2のカソード側流路2aとを接続する配管35iとを有している。また、配管35cの油(液)圧シリンダ13Aの近傍には、油(液)圧シリンダ13Aからの流れを抑制する逆流防止弁36aが設けられている。配管35dの油(液)圧シリンダ15Aの近傍には、油(液)圧シリンダ15Aからの流れを抑制する逆流防止弁36cが設けられている。配管35eの油(液)圧シリンダ23Aの近傍には、油(液)圧シリンダ23Aからの流れを抑制する逆流防止弁36bが設けられている。配管35hには、油(液)圧シリンダ23Aへの流れを抑制する逆流防止弁36dが設けられている。また、配管35iの油(液)圧シリンダ15Aの近傍には、電磁弁26が設けられている。
【0055】
また、酸化剤供給路(24a〜24c等)においては、配管24bの油(液)圧シリンダ23Aの近傍に、油(液)圧シリンダ23Aからの流れを抑制する逆流防止弁25aが設けられている点が、第1の実施形態とは異なっている。また、配管24cの油(液)圧シリンダ23Aの近傍に、油(液)圧シリンダ23Aへの流れを抑制する逆流防止弁25bが設けられている。
【0056】
押圧手段3の油(液)圧シリンダ(第1気液シリンダ、往復動(レシプロ)膨張機)13Aは、シリンダ(燃料ガス用シリンダ)13a、ピストン(燃料ガス用ピストン)13b、スプリング13eなどで構成されている。ピストン13bによって、液体室13iと気体室13jとが仕切られている。ピストン13bには、スプリング13eが接続されている。スプリング13eは、ピストン13bを、液体室13iの体積が拡張し気体室13jの体積が縮小する方向に、押圧している。電磁弁18が閉弁している際に、高圧噴射装置12から、高圧の燃料ガス(水素)Gfuが、シリンダ13aの気体室13j内に噴射されると、気体室13j内は燃料ガス(水素)Gfuで高圧となり、燃料ガス(水素)Gfuの圧力でピストン13bさらにはカソード溶液Lcaを押圧する。これにより、ピストン13bは燃料ガス(水素)Gfuによって押し下げられ、カソード溶液Lcaは、シリンダ13aの液体室13i内から、配管35dと配管35eに流れ出る。配管35dと配管35eに流れ出て、配管35cに流れ出ないのは、逆流防止弁36a〜36cが設けられているからである。これにより、カソード溶液Lcaは、油(液)圧シリンダ13Aの液体室13iから、油(液)圧シリンダ15Aの液体室15iと、油(液)圧シリンダ23Aの液体室23iとへ、圧送される。
【0057】
油(液)圧シリンダ(往復動(レシプロ)圧縮機)15Aは、レドックス燃料電池2で未反応の燃料ガス(水素)Gfuを配管16cに圧送することで、再びレドックス燃料電池2へ戻すものである。油(液)圧シリンダ15Aも、油(液)圧シリンダ13Aと同様に、シリンダ15a、ピストン(仕切部材(液面))15b、スプリング15hなどで構成されている。ピストン15bによって、液体室15iと気体室15jとが仕切られている。ピストン15bには、スプリング15hが接続されている。スプリング15hは、ピストン15bを、液体室15iの体積が縮小し気体室15jの体積が拡張する方向に、押圧している。なお、図3では、油(液)圧シリンダ13Aと比べて、油(液)圧シリンダ15Aが小さく記述されているが、油(液)圧シリンダ13Aと同じ大きさでもよい。
【0058】
油(液)圧シリンダ15Aの液体室15iに、油(液)圧シリンダ13Aの液体室13iから、カソード溶液Lcaが圧送されてくると、このタイミングでは電磁弁26は閉弁しており、カソード溶液Lcaは、液体室15iに貯留する。液体室15i内はカソード溶液Lcaで高圧となり、カソード溶液Lcaの圧力でピストン15bさらには燃料ガス(水素)Gfuを押圧する。液体室15iの体積は増大し、ピストン15bを押し上げ、気体室15jの体積は縮小し、気体室15j内の燃料ガス(水素)Gfuは圧縮される。これにより、燃料ガス(水素)Gfuは、油(液)圧シリンダ15Aの気体室15j内から、配管16f、16cに流れ出る。配管16f、16cに流れ出て、配管16eに流れ出ないのは、逆流防止弁17a、17bが設けられているからである。燃料ガス(水素)Gfuは、油(液)圧シリンダ15Aの気体室15jから、レドックス燃料電池2のアノード側流路2eへ圧送され、燃料ガス循環路(16c〜16f等)を循環するようになる。
【0059】
油(液)圧シリンダ(第2気液シリンダ、往復動(レシプロ)圧縮機)23Aも、油(液)圧シリンダ13Aと同様に、シリンダ(酸化剤用シリンダ)23a、ピストン(酸化剤用ピストン)23b、スプリング23hなどで構成されている。ピストン23bには、仕切部材23fと、仕切部材23gとが設けられている。シリンダ23aとピストン23bの仕切部材23fによって、液体室23iが区画されている。シリンダ23aとピストン23bの仕切部材23gによって、気体室23jが区画されている。ピストン23bには、スプリング23hが接続されている。スプリング23hは、ピストン23bを、液体室23iの体積が縮小し気体室23jの体積が拡張する方向に、押圧している。なお、図3では、油(液)圧シリンダ13Aと油(液)圧シリンダ15Aが各1つで、油(液)圧シリンダ23Aが3個で複数記述されているが、これに限らず、油(液)圧シリンダ13Aと油(液)圧シリンダ15Aがそれぞれ複数個設けられていても、油(液)圧シリンダ23Aが1つであってもよい。なお、液体室23iにおけるシリンダ23aの断面積は、気体室23jにおけるシリンダ23aの断面積より大きくなっている。これにより、液体室23iに少量のカソード溶液Lcaを流入させるだけで、気体室23j内の酸化剤Goxを大量に流出させることができる。
【0060】
油(液)圧シリンダ23Aの液体室23iに、油(液)圧シリンダ13Aの液体室13iから、カソード溶液Lcaが圧送されてくると、このタイミングでは電磁弁26は閉弁しており、カソード溶液Lcaは、液体室23iに貯留する。液体室23i内はカソード溶液Lcaで高圧となり、カソード溶液Lcaの圧力でピストン23bさらには酸化剤Goxを押圧する。液体室23iの体積は増大し、ピストン23bは押し上げ、気体室23jの体積は縮小し、気体室23j内の酸化剤Goxは圧縮される。これにより、酸化剤Goxは、油(液)圧シリンダ23Aの気体室23j内から、配管24cに流れ出る。配管24cに流れ出て、配管24aに流れ出ないのは、逆流防止弁25a、25bが設けられているからである。酸化剤Goxは、油(液)圧シリンダ23Aの気体室23jから、噴射ノズル33を経てカソード溶液再生装置32へ圧送され、酸化剤供給路(24a〜24c等)を流動するようになる。
【0061】
油(液)圧シリンダ13Aにおいて、ピストン13bが十分に押し下げられると、図示しない制御部によって、高圧噴射装置12により燃料ガス(水素)Gfuの噴射が止められ、電磁弁18、26を開弁する。気体室13j内は低圧となり、スプリング13eによってピストン13bは押し上げられ、気体室13j内の燃料ガス(水素)Gfuは、配管16cに流れ出る。これにより、燃料ガス(水素)Gfuは、油(液)圧シリンダ13Aの気体室13jから、レドックス燃料電池2のアノード側流路2eへ、圧送される。燃料ガス(水素)Gfuは、燃料ガス供給路(16a〜16c等)を流動することになる。
【0062】
また、スプリング13eによってピストン13bが押し上げられると、液体室13i内も低圧となり、カソード溶液Lcaが、シリンダ13aの液体室13i内へ、配管35cから流れ込んでくる。配管35dと配管35eから流れ込まず、配管35cから流れ込むのは、逆流防止弁36a〜36cが設けられているからである。これにより、カソード溶液Lcaは、液体室13i内に貯留されながら、カソード溶液循環路(35a〜35i等)を循環するようになる。また、電磁弁26も開弁しているので、この循環の流れの一部を構成するように、液体室15iと23i内のカソード溶液Lcaが、配管35iに流れ出る。液体室15iと23i内のカソード溶液Lcaは、スプリング15hと23hとによって押圧され、液体室15iと23i内から押し出される。すなわち、液体室15iと23i内から押し出されたカソード溶液Lca分が、液体室13i内に貯留されることで、カソード溶液Lcaは、カソード溶液循環路(35a〜35i等)を循環していると考えることができる。
【0063】
(第3の実施形態)
図4に、本発明の第3の実施形態に係るレドックス燃料電池システム1を搭載した燃料電池車両100の構成図を示す。第3の実施形態のレドックス燃料電池システム1は、第1の実施形態のレドックス燃料電池システム1と比べて、押圧手段3の構造が異なっている。第3の実施形態の押圧手段3は、タービン13Bと、コンプレッサ(ターボ形圧縮機)15Bと、コンプレッサ(ターボ形圧縮機)23Bと、遠心式ポンプ34Bとを有している。
【0064】
タービン13Bは、燃料ガス用羽根車13kを有している。燃料ガス用羽根車13kは、燃料ガス(水素)Gfuの圧力で押圧され、取り付けられている回転軸38を回転させる。
【0065】
コンプレッサ(ターボ形圧縮機)15Bは、燃料ガス循環用羽根車15kを有している。燃料ガス循環用羽根車15kは、回転軸38に取り付けられ、回転軸38の回転により回転し、燃料ガス(水素)Gfuを押圧・圧縮し、圧送している。
【0066】
コンプレッサ(ターボ形圧縮機)23Bは、酸化剤用羽根車23kを有している。酸化剤用羽根車23kは、回転軸38に取り付けられ、回転軸38の回転により回転し、酸化剤Goxを押圧・圧縮し、圧送している。
【0067】
遠心式ポンプ34Bは、ロータ(カソード溶液用羽根車)34aを有している。ロータ(カソード溶液用羽根車)34aは、回転軸38に取り付けられ、回転軸38の回転により回転し、カソード溶液Lcaを押圧し、圧送している。
【0068】
また、アノード溶液を用いる場合は、別途、遠心式ポンプを設ける。この遠心式ポンプは、アノード溶液用羽根車を有する。このアノード溶液用羽根車は回転軸38に取り付けられ、回転軸38の回転により回転し、アノード溶液Lanを押圧し、圧送する。
【0069】
これらに伴い、燃料ガス供給路(16a〜16c等)と、燃料ガス循環路(16c〜16f等)と、カソード溶液循環路(35a〜35d等)と、酸化剤供給路(24a〜24c等)との、それぞれの構成も異なっている。
【0070】
第1の実施形態との相違点は、燃料ガス供給路(16a〜16c等)においては、配管16bと配管16cが、エキスパンダ13に替えてタービン13Bに接続している点である。
【0071】
また、燃料ガス循環路(16c〜16f等)においては、配管16eと配管16fが、コンプレッサ15に替えてコンプレッサ(ターボ形圧縮機)15Bに接続している点が、第1の実施形態とは異なっている。
【0072】
また、カソード溶液循環路(35a〜35d等)においては、配管35cと配管35dが、コンプレッサ23に替えて遠心式ポンプ34Bに接続している点が、第1の実施形態とは異なっている。
【0073】
また、酸化剤供給路(24a〜24c等)においては、配管24bと配管24cが、コンプレッサ23に替えてコンプレッサ(ターボ形圧縮機)23Bに接続している点が、第1の実施形態とは異なっている。
【0074】
高圧噴射装置12から、高圧の燃料ガス(水素)Gfuが、タービン13Bの燃料ガス用羽根車13kに噴射されると、燃料ガス(水素)Gfuの圧力で燃料ガス用羽根車13kは、押圧され、回転する。これにより。回転軸38が回転する。回転軸38には、燃料ガス用羽根車13kと、燃料ガス循環用羽根車15kと、酸化剤用羽根車23kと、ロータ(カソード溶液用羽根車)34aとが連結されている。回転軸38が回転することによって、燃料ガス循環用羽根車15kと、酸化剤用羽根車23kと、ロータ(カソード溶液用羽根車)34aとが回転する。また、燃料ガス用羽根車13kに噴射された燃料ガス(水素)Gfuは、タービン13Bから配管16cに流れ出る。これにより、燃料ガス(水素)Gfuは、配管16cを経てレドックス燃料電池2のアノード側流路2eへ圧送され、燃料ガス供給路(16a〜16c等)を流動するようになる。
【0075】
コンプレッサ(ターボ形圧縮機)15Bの燃料ガス循環用羽根車15kが回転すると、燃料ガス(水素)Gfuを押圧し、圧縮する。これにより、燃料ガス(水素)Gfuは、コンプレッサ(ターボ形圧縮機)15B内から、配管16f、16cに流れ出る。燃料ガス(水素)Gfuは、コンプレッサ(ターボ形圧縮機)15Bから、レドックス燃料電池2のアノード側流路2eへ圧送され、燃料ガス循環路(16c〜16f等)を循環するようになる。
【0076】
コンプレッサ(ターボ形圧縮機)23Bの酸化剤用羽根車23kが回転すると、コンプレッサ(ターボ形圧縮機)23B内の酸化剤Goxは圧縮される。これにより、酸化剤Goxは、コンプレッサ(ターボ形圧縮機)23B内から、配管24cに流れ出る。酸化剤Goxは、コンプレッサ(ターボ形圧縮機)23Bから、噴射ノズル33を経てカソード溶液再生装置32へ圧送され、酸化剤供給路(24a〜24c等)を流動するようになる。
【0077】
遠心式ポンプ34Bのロータ(カソード溶液用羽根車)34aが回転すると、遠心式ポンプ34B内のカソード溶液Lcaは押圧される。これにより、カソード溶液Lcaは、遠心式ポンプ34B内から、配管35dに流れ出る。カソード溶液Lcaは、遠心式ポンプ34Bから、配管35dを経てレドックス燃料電池2のカソード側流路2aへ圧送され、カソード溶液循環路(35a〜35d等)を流動し循環するようになる。
【0078】
(第4の実施形態)
図5に、本発明の第4の実施形態に係るレドックス燃料電池システム1を搭載した燃料電池車両100の構成図を示す。第4の実施形態のレドックス燃料電池システム1は、第1の実施形態のレドックス燃料電池システム1と比べて、レドックス燃料電池2が異なっている。第4の実施形態のレドックス燃料電池2では、アノード2d(アノード側流路2e)に供給されたアノード溶液Lanと、カソード2b(カソード側流路2a)に供給された酸化剤Goxとを用いて発電する。
【0079】
これに伴い、アノード2d(アノード側流路2e)を通流後のアノード溶液Lanを、燃料ガス(水素)Gfuで還元させることで再生するアノード溶液再生装置(再生装置)47と、アノード溶液Lanをアノード溶液再生装置47とアノード2d(アノード側流路2e)の間で循環させるアノード溶液循環路(45a〜45d等)と、その循環用のアノード溶液用ポンプ(ポンプ)44が設けられている。アノード溶液用ポンプ44は、クランクシャフト51の回動により、ロータ(アノード溶液用羽根車)44aを回動させ、アノード溶液Lanを押圧し圧送する。
【0080】
そして、燃料ガス供給路(16a〜16c等)と、燃料ガス循環路(16c、16e、16f等)と、酸化剤供給路(24a〜24f等)との、それぞれの構成も異なっている。
【0081】
第1の実施形態との相違点は、燃料ガス供給路(16a〜16c等)においては、配管16cが、レドックス燃料電池2に替えて噴射ノズル48に接続している点である。噴射ノズル48から噴射された燃料ガス(水素)Gfuは、アノード溶液再生装置47内のアノード溶液Lanに吹き込まれることで、アノード溶液再生装置47に供給される。
【0082】
また、燃料ガス循環路(16c、16e、16f等)においては、コンプレッサ15の吸入用バルブ15dに接続する配管16eが、アノード溶液再生装置47に接続している点が、第1の実施形態とは異なっている。これにより、燃料ガス循環路(16c、16e、16f等)は、アノード溶液再生装置47を通流後の燃料ガス(水素)Gfuを循環させ、アノード溶液再生装置47に戻している。
【0083】
また、酸化剤供給路(24a〜24f等)においては、加湿装置49を経由して、レドックス燃料電池2のカソード2b(カソード側流路2a)に、酸化剤Goxが供給されている点が、第1の実施形態とは異なっている。加湿装置49では、大気吸入された酸化剤(空気)Goxが、配管24cから入って、加湿されて配管24dから出る。レドックス燃料電池2のカソード側流路2aでは、加湿された酸化剤(空気)Goxが、配管24dから入り、発電に伴う化学反応によって生成した水を含んで加湿された酸化剤(空気)Goxが、配管24eから出る。加湿装置49では、レドックス燃料電池2のカソード側流路2aから加湿された状態で排気された酸化剤(空気)Goxが、配管24eから入って、含んでいた水分を配管24cから入ってきた酸化剤(空気)Goxに与え加湿し(自らは除湿され)、配管24fから出て大気放出される。
【0084】
アノード溶液循環路(45a〜45d等)は、レドックス燃料電池2のアノード側流路2eとラジエータ(RAD)46とを接続する配管45aと、レドックス燃料電池2で発電の際に暖められたアノード溶液Lanを冷却するラジエータ(RAD)46と、ラジエータ(RAD)46とアノード溶液再生装置47とを接続する配管45bと、アノード溶液再生装置47とポンプ44とを接続する配管45cと、ポンプ44とレドックス燃料電池2のアノード側流路2eとを接続する配管45dとを有している。なお、図5において、アノード溶液循環路の配管45a〜45dは太い一点鎖線で示されている。
【0085】
図6に、第4の実施形態のレドックス燃料電池システム1における、特に、レドックス燃料電池2とアノード溶液再生装置47における、発電のメカニズムを説明するための図を示す。アノード溶液再生装置47に、燃料ガス(水素)Gfuが吹き込まれ通流すると、アノード溶液再生装置47においては、燃料ガス(水素H)Gfuから(水素Hが酸化(価数増)されて)、水素イオン(H)が生成され、アノード溶液Lan中の3価のクロムイオン(Cr3+)が還元(価数減)されて、2価のクロムイオン(Cr2+)が生成される(2Cr3++H→2Cr2++2H)。アノード溶液再生装置47で生成した2価のクロムイオン(Cr2+)と、水素イオン(H)は、アノード溶液Lanに溶解等して含まれて、アノード溶液Lanと共にレドックス燃料電池2のアノード側流路2eに流れ込む。アノード側流路2eに、アノード溶液Lanが通流すると、アノード2dにアノード溶液Lanが供給される。アノード2dには、アノード溶液Lanから、2価のクロムイオン(Cr2+)と、水素イオン(H)が供給される。アノード2dにおいて、2価のクロムイオン(Cr2+)は酸化されて、3価のクロムイオン(Cr3+)と電子(e)が生成される(2Cr2+(+2H)→2Cr3+(+2H)+2e)。なお、アノード2dにおいて、水素イオン(H)は、酸化還元反応をしない。水素イオン(H)は、アノード2dから、プロトン交換膜(PEM)2cを経由して、カソード2bへ移動する。アノード2dで生成した電子(e)は、アノード2dから、負荷となるパワーディストリビューションユニットPDUおよび駆動モータMOTが接続された配線を経由して、カソード2bへ移動する。この電子(e)の移動が、いわゆる、発電(現象)となる。
【0086】
レドックス燃料電池2のカソード側流路2aに、酸化剤(空気、酸素O)Goxが通流すると、カソード2bに酸化剤(空気、酸素O)Goxが供給される。カソード2bには、酸化剤(空気、酸素O)Goxから酸素(O)が供給され、プロトン交換膜(PEM)2cから水素イオン(H)が供給され、配線から電子(e)が供給される。これらにより、カソード2bにおいて、酸素(O)と、水素イオン(H)と、電子(e)とから、水(HO)が生成される((1/2)O+2H+2e→HO)。生成された水は、排気される酸化剤(空気、酸素O)Goxを加湿することになる。なお、アノード溶液再生装置47における化学反応と、カソード2bにおける化学反応と、アノード2dにおける化学反応とを合わせたトータル反応は、酸素(O)と水素(H)とから、水(HO)が生成される反応となっている((1/2)O+H→HO)。また、アノード2dで、2価のクロムイオン(Cr2+)を酸化して、3価のクロムイオン(Cr3+)を生成しているのに対して、アノード溶液再生装置47では、3価のクロムイオン(Cr3+)を還元して、2価のクロムイオン(Cr2+)を生成しているので、アノード溶液再生装置47は、アノード2dにおいて還元剤として機能している2価のクロムイオン(Cr2+)を再生していると考えることができる。
また、第4の実施形態では、第1の実施形態の変形例として、第1の実施形態の押圧手段3を用いた上で、カソード溶液Lcaに替えてアノード溶液Lanを用いた場合を説明した。しかし、これに限らず、第2の実施形態の押圧手段3と、アノード溶液Lanとを用いてもよいし、第3の実施形態の押圧手段3と、アノード溶液Lanとを用いてもよいのである。
【0087】
(第5の実施形態)
図7に、本発明の第5の実施形態に係るレドックス燃料電池システム1を搭載した燃料電池車両100の構成図を示す。第5の実施形態のレドックス燃料電池システム1は、第1の実施形態のレドックス燃料電池システム1と比べて、レドックス燃料電池2が異なっている。第5の実施形態のレドックス燃料電池2では、アノード2d(アノード側流路2e)に供給されたアノード溶液Lanと、カソード2b(カソード側流路2a)に供給されたカソード溶液Lcaとを用いて発電する。
【0088】
これに伴い、第4の実施形態で説明した、アノード溶液再生装置(再生装置)47と、アノード溶液循環路(45a〜45d等)と、アノード溶液用ポンプ(ポンプ)44が設けられている。そして、燃料ガス供給路(16a〜16c等)と、燃料ガス循環路(16c、16e、16f等)との、それぞれの構成も、第4の実施形態と同じになっている。
【0089】
なお、第5の実施形態では、第1の実施形態の変形例として、第1の実施形態の押圧手段3を用いた上で、カソード溶液Lcaに加えてアノード溶液Lanを用いた場合を説明した。しかし、これに限らず、第2の実施形態の押圧手段3と、カソード溶液Lcaとアノード溶液Lanとを用いてもよいし、第3の実施形態の押圧手段3と、カソード溶液Lcaとアノード溶液Lanとを用いてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 レドックス燃料電池システム
2 レドックス燃料電池
2a カソード側流路
2b カソード
2c プロトン交換膜(PEM)
2d アノード
2e アノード側流路
3 押圧手段
11 水素タンク(燃料ガスタンク)
11a 電磁弁
11b 二次遮断弁
11c フィルタ
12 高圧噴射装置(燃料ガス供給路)
13 エキスパンダ(往復動(レシプロ)膨張機)
13a シリンダ(燃料ガス用シリンダ)
13b ピストン(燃料ガス用ピストン、仕切部材(液面))
13c コンロッド
13d バルブ
13e スプリング
13i 液体室
13j 気体室
13k 燃料ガス用羽根車
13A 油(液)圧シリンダ(第1気液シリンダ、往復動(レシプロ)膨張機)
13B タービン
14 排出水素タンク
15 コンプレッサ(燃料ガス循環用:往復動(レシプロ)圧縮機)
15a シリンダ
15b ピストン(仕切部材(液面))
15c コンロッド
15d 吸入用バルブ
15e 排出用バルブ
15h スプリング
15i 液体室
15j 気体室
15k 燃料ガス循環用羽根車
15A 油(液)圧シリンダ(往復動(レシプロ)圧縮機)
15B コンプレッサ(ターボ形圧縮機)
16a、16b アノード系の配管(燃料ガス供給路)
16c アノード系の配管(燃料ガス供給路と燃料ガス循環路を兼ねる)
16d〜16f アノード系の配管(燃料ガス循環路)
17a、17b 逆流防止弁
18 電磁弁
19 リリーフ弁
21 インテーク
22 フィルタ
23 コンプレッサ(酸化剤用:往復動(レシプロ)圧縮機)
23a シリンダ(酸化剤用シリンダ)
23b ピストン(酸化剤用ピストン)
23c コンロッド
23d 吸入用バルブ
23e 排出用バルブ
23f、23g 仕切部材
23h スプリング
23i 液体室
23j 気体室
23k 酸化剤用羽根車
23A 油(液)圧シリンダ(第2気液シリンダ、往復動(レシプロ)圧縮機)
23B コンプレッサ(ターボ形圧縮機)
24a〜24f 配管(酸化剤供給路)
24d 配管
25a、25b 逆流防止弁
26 電磁弁
31 ラジエータ(RAD)
32 (カソード溶液)再生装置
33 噴射ノズル
34 ポンプ
34a ロータ(カソード溶液用羽根車)
34B 遠心式ポンプ
35a〜35i 配管(カソード溶液循環路)
36a〜36d カソード溶液の逆流防止弁
37a、37b カム
38 回転軸
41 気液分離装置
42 ドレイン弁
43a〜43c ドレイン配管
44 ポンプ(コンプレッサ、ターボ形圧縮機)
44a ロータ(アノード溶液用羽根車)
45a〜45d 配管(アノード溶液循環路)
46 ラジエータ(RAD)
47 (アノード溶液)再生装置
48 噴射ノズル
49 加湿装置
51 クランクシャフト
100 燃料電池車両
Gfu 燃料ガス
Gox 酸化剤ガス
Lca カソード溶液
Lan アノード溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードに供給された燃料ガスと、カソードに供給された非揮発性のカソード溶液とを用いて発電するレドックス燃料電池と、
前記燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、
前記カソードを通流後の前記カソード溶液を、酸化剤で酸化させることで再生するカソード溶液再生装置と、
燃料ガスを前記燃料ガスタンクから前記アノードに供給する燃料ガス供給路と、
前記カソード溶液を前記カソード溶液再生装置と前記カソードの間で循環させるカソード溶液循環路と、
前記酸化剤を前記カソード溶液再生装置に供給する酸化剤供給路とを備えるレドックス燃料電池システムであって、
前記アノードに供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記酸化剤を押圧して前記カソード溶液再生装置に前記酸化剤供給路を介して供給することと、
前記アノードに供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記カソード溶液を押圧して前記カソード溶液循環路を介して前記カソード溶液再生装置と前記カソードの間を循環させることの、
少なくともどちらか一方を実施する押圧手段を有することを特徴とするレドックス燃料電池システム。
【請求項2】
前記アノードを通流後の前記燃料ガスを、循環させ前記アノードに戻す燃料ガス循環路を備え、
前記押圧手段は、
前記アノードに供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記燃料ガスを押圧して前記燃料ガス循環路を介して前記アノードに循環させることを特徴とする請求項1に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項3】
アノードに供給されたアノード溶液と、カソードに供給されたカソード溶液とを用いて発電するレドックス燃料電池と、
前記アノードを通流後の前記アノード溶液を、燃料ガスで還元させることで再生するアノード溶液再生装置と、
前記カソードを通流後の前記カソード溶液を、酸化剤で酸化させることで再生するカソード溶液再生装置と、
前記燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、
燃料ガスを前記燃料ガスタンクから前記アノード溶液再生装置に供給する燃料ガス供給路と、
前記アノード溶液を前記アノード溶液再生装置と前記アノードの間で循環させるアノード溶液循環路と、
前記カソード溶液を前記カソード溶液再生装置と前記カソードの間で循環させるカソード溶液循環路と、
前記酸化剤を前記カソード溶液再生装置に供給する酸化剤供給路とを備えるレドックス燃料電池システムであって、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記酸化剤を押圧して前記カソード溶液再生装置に前記酸化剤供給路を介して供給することと、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記カソード溶液を押圧して前記カソード溶液循環路を介して前記カソード溶液再生装置と前記カソードの間を循環させることと、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記アノード溶液を押圧して前記アノード溶液循環路を介して前記アノード溶液再生装置と前記アノードの間を循環させることの、
少なくともいずれか一つを実施する押圧手段を有することを特徴とするレドックス燃料電池システム。
【請求項4】
アノードに供給されたアノード溶液と、カソードに供給された酸化剤とを用いて発電するレドックス燃料電池と、
前記アノードを通流後の前記アノード溶液を、燃料ガスで還元させることで再生するアノード溶液再生装置と、
前記燃料ガスを貯蔵する燃料ガスタンクと、
燃料ガスを前記燃料ガスタンクから前記アノード溶液再生装置に供給する燃料ガス供給路と、
前記アノード溶液を前記アノード溶液再生装置と前記アノードの間で循環させるアノード溶液循環路と、
前記酸化剤を前記カソードに供給する酸化剤供給路とを備えるレドックス燃料電池システムであって、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記酸化剤を押圧して前記カソードに前記酸化剤供給路を介して供給することと、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記アノード溶液を押圧して前記アノード溶液循環路を介して前記アノード溶液再生装置と前記アノードの間を循環させることの、
少なくともどちらか一方を実施する押圧手段を有することを特徴とするレドックス燃料電池システム。
【請求項5】
前記アノード溶液再生装置を通流後の前記燃料ガスを、循環させ前記アノード溶液再生装置に戻す燃料ガス循環路とを備え、
前記押圧手段は、
前記アノード溶液再生装置に供給される前の前記燃料ガスの圧力で、前記燃料ガスを押圧して前記燃料ガス循環路を介して前記アノード溶液再生装置に循環させることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項6】
前記押圧手段は、
前記燃料ガスの圧力でピストンを押圧し、クランクシャフトを回動させる燃料ガス用シリンダを有し、かつ、
前記クランクシャフトの回動により、内蔵するピストンを移動させ前記酸化剤を押圧する酸化剤用シリンダと、
前記クランクシャフトの回動により、ロータを回動させカソード溶液を押圧するカソード溶液用ポンプと、
前記クランクシャフトの回動により、ロータを回動させアノード溶液を押圧するアノード溶液用ポンプと、
の少なくともいずれか一つを有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項7】
前記押圧手段は、
前記燃料ガスの圧力で、貯留させたカソード溶液とアノード溶液の少なくともどちらか一方を押圧する第1気液シリンダと、
前記第1気液シリンダとカソード溶液又はアノード溶液の液面の下同士で接続され、カソード溶液又はアノード溶液の圧力で、貯留させた酸化剤を押圧する第2気液シリンダとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項8】
前記押圧手段は、
前記燃料ガスの圧力で押圧され、取り付けられている回転軸を回転させる燃料ガス用羽根車を有し、かつ、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転により回転し前記酸化剤を押圧する酸化剤用羽根車と、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転により回転しカソード溶液を押圧するカソード溶液用羽根車と、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転により回転しアノード溶液を押圧するアノード溶液用羽根車と、
の少なくともいずれか一つを有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレドックス燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のレドックス燃料電池システムを搭載した燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−226972(P2012−226972A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93567(P2011−93567)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】