説明

レバーハンドル錠

【課題】健常者はもとより高齢者や子ども、上肢障害者にも容易にドアを開閉できるレバーハンドル錠を提供する。
【解決手段】水平に設置したレバーハンドル1を順に、水平を維持したまま下方へスライドさせるように動かすと、ハンドルガイド7が揺動部材5を下方へ押して、それにより揺動部材5が回転、回転した揺動部材5はスプリング6を縮めながらラッチ4を内側へ移動させ格納してドアのロックを解除する。本発明の機構構造をもつレバーハンドル錠を用いることで、レバーハンドル1を握ってからドアを開閉するまでの間レバーハンドル1が水平に下方へ稼働することでラッチ4を往復動させ、手の自重によってドアを開閉することができ、筋力の負担を軽減することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健常者はもとより高齢者、子ども及び上肢障害者にとって、従来のレバーハンドル式のドアノブよりも容易にドアを開閉でき、筋力の負担を軽減した特長を有するレバーハンドル錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアノブはこれまでの握り玉式のドアノブからレバーハンドル式のドアノブに移行して、現在普及率は一般住宅の9割に及んでいる。
【0003】
これまでの握り玉式のドアノブは、両手が塞がっている場合や上肢に障害がある(片麻痺や握力障害、指欠損障害など)または高齢者や子ども等握る力が弱い場合等に、ドアの開閉が困難であった。
【0004】
レバーハンドル式のドアノブは、レバーによる梃子の応用で、前記の握り玉式のドアノブよりも比較的少ない力でドアを開閉できるようになったため、現在ではこのレバーハンドル式のドアノブが普及しているが、レバーハンドル式のドアノブについても、ドアノブの形状や角度またはその使用状況によって、ドアノブを保持した状態でドアを開閉するには困難を要する場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−82889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレバーハンドル式のドアノブは、水平に設置されているが、回転による解錠構造であるため、ドア開閉時にドアノブの角度が斜め下に傾き、高齢者や子ども、上肢障害者(片麻痺や握力障害、指欠損障害など)など握力や筋力が弱い使用者にとって、ドアノブの位置を斜め下に傾いた状態で保持することは困難な場合がある。また健常者においても、両手が塞がっている際などにドアを開閉する場合など、ドアノブが斜め下に傾いているため、力が逃げて滑るなどの課題があり、そのような状態を回避して、容易にドアを開閉できるドアノブの形状や機構が求められていた。本発明の課題は、健常者はもとより、高齢者や子ども、上肢障害者(片麻痺や握力障害、指欠損障害など)にも容易にドアを開閉できるレバーハンドル錠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のように、一般に使用されている従来のレバーハンドル式ドアノブには、未だ解決できていない課題があったため、課題解決のため鋭意取り組んだ。
【0008】
本発明に係るレバーハンドル錠は、水平に設置したレバーハンドル錠のドアノブを、水平状態を維持して下方へスライドさせる機構と、同スライド機構を介して、前記レバーハンドル錠に装着されたラッチを往復動させるラッチ解錠機構とを有してなるレバーハンドル錠である。つまり、レバーハンドル錠のレバーハンドルの一端部に、同レバーハンドルの軸芯に直交するハンドルガイドを突設して、同ハンドルガイドを前記レバーハンドル錠の本体に嵌合して、前記ハンドルに芯を前記錠本体に軸支した揺動部材の一側に当接させ、同揺動部材の他側には、レバーハンドル錠に装着されたスプリングの他端を固着したレバーハンドル錠である。また、レバーハンドル錠において、レバーハンドルの一端側面部に、該レバーハンドルの軸心に直交するハンドルガイドを突設させ、同ハンドルガイドを上下動可能に前記錠本体に装着されたラックと、同ラックに一側が嵌合する伝動ギアと、同伝動ギアの他側には、レバーハンドル錠に装着されたラッチを往復動させる連接部材に嵌合させると共に、同連接部材には、一端が前記錠本体に固着されたスプリングの他端を固着してなるレバーハンドル錠で、従来のレバーハンドル錠のレバーハンドル式のドアノブの解錠構造を回転による解錠構造から、水平に設置したレバーハンドル式のドアノブを水平に維持した状態で、下方へスライドさせることによって、ラッチを左右に往復動させドアを解錠させる解錠構造にすることによって、健常者はもとより、高齢者や子ども、上肢障害者(片麻痺や握力障害、指欠損障害など)の解錠時の負担を軽減できることを可能にした。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、従来のドアノブの回転による解錠構造を水平にスライドする解錠構造にすることによって、健常者はもとより、高齢者や子ども、上肢障害者(片麻痺や握力障害、指欠損障害など)の区別なく、少ない負担で解錠でき容易にドアを開閉できるレバーハンドル錠となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態について説明する。具体的には、本実施形態に係るレバーハンドル錠とその構造について説明する。
【0011】
本発明に係るレバーハンドル錠は、水平に設置したレバーハンドル式のドアノブを水平に維持した状態で、下方へスライドさせることによって、ラッチを左右に往復動させ、ドアを解錠させる機構を持ち、解錠の負担を軽減できることを特徴とするレバーハンドル錠である。
【0012】
このレバーハンドル錠は従来のドアに設置でき、取り付け方法及び取り付け位置についても、従来のモジュールを変更することなく設置可能であり、対象に応じて調整可能である。また、ドアノブの材料は、金属、プラスチック、木質、陶磁器等、様々な材料で構成できる。
【0013】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記実施例によって何ら制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合し得る範囲で、適切に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1に係わる平面図、図2はその立面図、図3、図4、図5はドアノブの動作説明図で、図3はラッチが閉じている状態を示す説明図、図4は解錠のためドアノブを動かしている状態を示す説明図、図5はラッチを解錠した状態を示す説明図である。これらの図は本発明に係わる原理図である。これらの図において、1はレバーハンドル、2は錠本体ケース、3はカバー、4はラッチ、5は揺動部材(伝動ギア)、6はスプリング、7はハンドルガイド、8はラッチガイド(連接部材)である。揺動部材5は錠本体ケース2に軸支させ、ハンドルガイド7、ラッチガイド8は錠本体ケース2に設けた溝穴に沿って嵌挿させて稼動する。図3から図5に図示するように、水平に設置したレバーハンドル1を順に、水平を維持したまま下方へスライドさせるように動かすと、ハンドルガイド7が揺動部材5を下方へ押して、それにより揺動部材5が回転、回転した揺動部材5はスプリング6を縮めながらラッチ4を内側へ移動させ格納してドアのロックを解除する。本発明の機構構造をもつレバーハンドル錠を用いることで、レバーハンドル1を握ってからドアを開閉するまでの間レバーハンドル1が水平に下方へ稼働することでラッチ4を往復動させ、手の自重によってドアを開閉することができ、筋力の負担を軽減することができた。
【実施例2】
【0015】
図6は本発明の実施例2に係わる平面図、図7はその立面図、図8,図9、図10はドアノブ1の動作説明図で、図8はラッチ4が閉じている状態を示す説明図、図9は解錠のためレバーハンドル1を動かしている状態を示す説明図、図10はラッチ4を解錠した状態を示す説明図である。これらの図は本発明に係わる原理図である。これらの図において、9はラッチギアプレート、10はハンドルギアプレートである。本実施例が前記実施例1と異なる点は、伝動ギア5をラックアンドピニオンの嵌合構造としたことである。レバーハンドル1を水平に設置した状態から下方へ水平のままハンドルガイド7を錠本体ケース2に設けた溝穴に沿って稼動させ、それによりレバーハンドル1に連結させたハンドルギアプレート10が下方へ移動する際にハンドルギアプレート10に噛合する伝動ギア5が同ギアに噛合するラッチギアプレート9を連動させ、連動することでラッチガイド8が錠本体ケース2に設けた溝穴に沿って移動しながらラッチ4を内側へ移動させ格納してドアのロックを解除する。本発明の機構構造を有するレバーハンドル錠を用いることで、レバーハンドル1を握ってからドアを開閉するまでの間レバーハンドル1が水平に下方へ稼働することでラッチ4を往復動させ、手の自重によってドアを開閉することができ、筋力の負担を軽減することができた。
【実証例1】
【0016】
本発明では、人間工学的評価方法を用いて、レバーハンドル錠について、ドアノブの角度が15°間隔で-30°から75°まで8段階調整ができるドアのモデルを製作して、主観調査及び筋電図の測定を行った。使用したレバーハンドル錠の解錠角度は30°である。図11はレバーハンドル錠についての主観調査結果のグラフである。図11に示す角度は設置時の角度で、0°は従来のレバーハンドル錠と同じ水平に設置してあるものである。図示するようにドアノブ1を握る際には、ドアノブ1の角度が0°(水平)のものが、70.1%で最も握りやすいと感じており、また、ドアを押して開ける際には、ドアノブ1の角度が30°(ドアを開場して押す時に水平)のものが70.1%と最も押しやすいと感じている。主観調査の結果から、ドアを開閉する際にドアノブ1の角度が水平であることが、最も使いやすいと感じていることがわかった。
【実証例2】
【0017】
図12はレバーハンドル錠についての筋電図の測定グラフである。図12には、ドアを押して開く際の上腕三頭筋における筋電量の最大値と圧力センサーによる握圧量を示す。図12に図示するように筋電量ではドアノブ1の角度が30°(押す時に水平)のものが0.1649Vと最も筋電量が少なく、握圧量もドアノブ1の角度が30°(押す時に水平)のものが0.6827Vと最も握圧量が少ないという結果であった。筋電図の測定から、ドアを開閉する際にドアノブ1の角度が水平であることが、最も身体に負担が少ないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
家庭や建物用のレバーハンドル錠のほか、搬送用車両等のレバーハンドル錠にも適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施例1を示す平面図である。
【図2】本発明に係る実施例1を示す立面図である。
【図3】本発明に係る実施例1を示すドアノブの構造説明図である。
【図4】本発明に係る実施例1を示すドアノブの構造説明図である。
【図5】本発明に係る実施例1を示すドアノブの構造説明図である。
【図6】本発明に係る実施例2を示す平面図である。
【図7】本発明に係る実施例2を示す立面図である。
【図8】本発明に係る実施例2を示すドアノブの構造説明図である。
【図9】本発明に係る実施例2を示すドアノブの構造説明図である。
【図10】本発明に係る実施例2を示すドアノブの構造説明図である。
【図11】本発明に係る主観調査のグラフである。
【図12】本発明に係る筋電図の測定グラフである。
【符号の説明】
【0020】
1 レバーハンドル
2 錠本体ケース
3 カバー
4 ラッチ
5 揺動部材(伝動ギア)
6 スプリング
7 ハンドルガイド
8 ラッチガイド(連接部材)
9 ラッチギアプレート
10 ハンドルギアプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に設置したレバーハンドル錠のドアノブを水平に維持して、下方へスライドさせる機構と、同スライド機構を介して前記レバーハンドル錠に装着されたラッチを往復動させるラッチ解錠機構とを有してなることを特徴とするレバーハンドル錠。
【請求項2】
上記レバーハンドル錠の、ハンドルの一端部に、同ハンドルの軸芯に直交するハンドルガイドを突設して、同ハンドルガイドを前記レバーハンドル錠の本体に嵌合して、前記ハンドルガイドを前記錠本体に軸支した揺動部材の一側に当接させ、同揺動部材の他側にはレバーハンドル錠に装着されたラッチを往復動させる連接部に押接させると共に、同ラッチには一端が前記錠本体ケースに固着されたスプリングの他端を固着してなることを特徴とする請求項1に記載のレバーハンドル錠。
【請求項3】
上記レバーハンドル錠において、レバーハンドルの一端側面部に、該レバーハンドルの軸心に直交するハンドルガイドを突設させ、同ハンドルガイドに上下動するラック機構を前記ハンドルガイドに固着して、前記錠本体ケースに装着された前記ラック機構に嵌合する伝動ギアと、同伝動ギアの一側にはレバーハンドル錠に装着されたラッチを往復動させる連接部材に嵌合させると共に、同連接部材には、一端が前記錠本体に固着されたスプリングの他端を固着してなることを特徴とする請求項1に記載のレバーハンドル錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−163621(P2008−163621A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353573(P2006−353573)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【出願人】(506405677)