説明

レバー付きのコネクタ装置

【課題】レバーを回動するだけの簡単な操作で、十分なワイピング機能を発揮しながら、コネクタ同士を接続する。
【解決手段】レバー280を回動させることにより、第1、第2のコネクタ100、210を接続させるコネクタ装置で、第1のコネクタは表面に電極を有する基板を内装し、第2のコネクタは基板側の電極に接触導通する先端接触部を有する端子を内装する。レバーの回動操作の初期段階において、第1のコネクタに対して第2のコネクタをコネクタ嵌合方向と平行な方向に移動させて基板の表面に端子の先端接触部を接触させ、レバーの回動操作の後期段階において、第1のコネクタに対して第2のコネクタをコネクタ嵌合方向と直交する方向に移動させ、それにより基板の表面に沿って端子の先端接触部をスライドさせて端子の先端接触部を基板の表面の電極に擦りながら接触導通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に電極を有する基板を内装した第1のコネクタと、前記電極に接続する端子を内装した第2のコネクタとを、レバーの回動操作により互いに接続するようにしたレバー付きのコネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の端子の先端と基板の表面に設けられた多数の電極との電気接続を同時に行うことのできるコネクタが知られており、特にその中で、基板の電極の表面に酸化膜などが形成されている場合に酸化膜を端子の先端で擦り取りながら(ワイピングしながら)電気接続するコネクタが特許文献1などにおいて知られている。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタは、基板の所定の取付位置に取り付けられるハウジングと、そのハウジングから突出して基板の表面の電極に接触する端子と、ハウジングを基板に取り付けるときに最初の段階でハウジングを取付位置から横にずれた位置に保持し、次に取り付けを進めた段階でハウジングを横にずれた位置から取付位置に摺動させる機構とを含み、摺動の際に端子と電極を擦り合わせることでそれらの接触面の酸化膜を除去するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−153156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のコネクタでは、基板の表面の電極と端子との摺動量を大きくとれないことから、ワイピング機能を十分に発揮できない懸念があった。
【0006】
[本願発明の先行発明]
そこで、本発明者らは、図20(a)に示すように、基板10にコネクタ20を矢印Fのように装着し、コネクタ20の係合凸部25を基板10の係合溝12に係合させた状態で、コネクタ20を基板10に沿って矢印Hのようにスライドさせて図20(b)の状態にすることにより、コネクタハウジング21の端子収容室22の内部に装着した端子(図示略)の先端を基板10の表面の電極11に摺動させ、それによりワイピング機能を発揮しながら電気接続するようにしたコネクタ構造を案出した。これによれば、端子と電極との間に十分な摺動量を確保できるので、端子と電極の接触導通性の信頼を高めることができる。
【0007】
しかし、この構造では、コネクタ20を手で持って、いったんF方向に押し付けて基板10に装着した後に、更にH方向にスライドさせる必要があるので、コネクタの接続作業が面倒であるという課題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、レバーを回動するだけの簡単な操作で、十分なワイピング機能を発揮しながら、コネクタ同士を接続することのできるレバー付きのコネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 互いに接続される第1のコネクタおよび第2のコネクタと、これら第1のコネクタおよび第2のコネクタのうちの一方のコネクタに取り付けられたレバーを回動させることにより前記第1のコネクタと第2のコネクタを接続させるカム機構と、を備えたレバー付きのコネクタ装置であって、
前記第1のコネクタは、前記第2のコネクタが嵌合される嵌合凹部を有する第1のコネクタハウジングと、該第1のコネクタハウジングの嵌合凹部の内奥部に前記第2のコネクタの嵌合方向に対して垂直に対峙するよう配置され、前記第2のコネクタの嵌合方向に対向する側の表面に多数の電極を有する基板と、を備え、
前記第2のコネクタは、前記第1のコネクタハウジングの嵌合凹部に嵌合される第2のコネクタハウジングと、該第2のコネクタハウジングに形成された端子収容室に収容され且つ第2のコネクタハウジングの前記嵌合方向における前端に前記基板の表面に配置された電極に対して接触導通する先端接触部を位置させた端子と、を備え、
前記カム機構は、前記レバーの回動操作の初期段階において、前記第1のコネクタに対して前記第2のコネクタを前記嵌合方向と平行な方向に移動させて前記基板の表面に前記端子の先端接触部を接触させ、続いて、前記基板の表面に前記端子の先端接触部が接触した状態での前記レバーの回動操作の後期段階において、前記第1のコネクタに対して前記第2のコネクタを前記嵌合方向と直交する方向に移動させ、それにより前記基板の表面に沿って前記端子の先端接触部をスライドさせて該端子の先端接触部を前記基板の表面の電極に擦りながら接触導通させるよう構成されていることを特徴とするレバー付きのコネクタ装置。
【0010】
(2) 前記カム機構は、前記第1のコネクタおよび第2のコネクタのうちの一方のコネクタに回動自在に取り付けられると共に回動支点に対して所定の経路で形成されたカム溝を有する前記レバーと、前記他方のコネクタに設けられて前記レバーのカム溝に係合する係合ピンと、前記一方のコネクタに形成され、前記係合ピンが係合することで該係合ピンの移動経路を前記嵌合方向と平行な方向に規制する縦溝部および該縦溝部に連続し前記係合ピンが係合することで該係合ピンの移動経路を前記嵌合方向と直交する方向に規制する横溝部とからなるL字形の移動経路規制溝と、を備えており、前記レバーの回動に応じた前記カム溝と前記係合ピンによるカム作用と前記移動経路規制溝による前記係合ピンの移動経路の規制作用とにより、前記第1のコネクタに対し前記第2のコネクタを所定の移動経路に沿って移動させて接続することを特徴とする上記(1)に記載のレバー付きのコネクタ装置。
【0011】
(3) 前記レバーを回動操作前の初期位置に仮係止する仮係止手段と回動操作後の接続完了位置に本係止する本係止手段と、が設けられていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のレバー付きのコネクタ装置。
【0012】
(4) 前記端子の先端接触部が、前記嵌合方向にスライド自在に設けられると共に、前記第2コネクタハウジングの前端から突出する方向に付勢されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のレバー付きのコネクタ装置。
【0013】
上記(1)の構成のレバー付きのコネクタ装置によれば、レバーを一方向に回動操作するだけで、回動操作の初期段階において、第1のコネクタに対して第2のコネクタを嵌合方向と平行な方向に移動させて基板の表面に端子の先端接触部を接触させることができ、続いて回動操作の後期段階において、第1のコネクタに対して第2のコネクタを嵌合方向と直交する方向に移動させ、それにより基板の表面に沿って端子の先端接触部をスライドさせて端子の先端接触部を基板の表面の電極に擦りながら接触導通させることができる。従って、レバー操作だけで十分なワイピング機能を発揮させながら、信頼性の高い電気接続を達成することができ、コネクタ接続の作業性を向上させることができる。
【0014】
上記(2)の構成のレバー付きのコネクタ装置によれば、カム溝を有するレバーと、カム溝に係合する係合ピンと、係合ピンの移動経路を規制する移動経路規制溝とにより、コネクタ接続の際の動きを制御することができるので、構成を簡単にすることができる。
【0015】
上記(3)の構成のレバー付きのコネクタ装置によれば、レバーを初期位置と接続完了位置に確実に係止しておくことができるので、接続前や接続完了後にレバーが不用意に動くのを防ぐことができる。
【0016】
上記(4)の構成のレバー付きのコネクタ装置によれば、端子の先端接触部が突出方向に付勢されているので、端子や電極に無理な力がかからないようにすることができると共に、スライド時の安定した作動を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、付属したレバーを回動するだけの簡単な操作を行うだけで、十分なワイピング機能を発揮させながら、コネクタ同士を接続することができ、電気接続の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態のコネクタ装置の接続前の状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態のコネクタ装置を構成する第1のコネクタの構成図で、図2(a)は斜視図、図2(b)は側面図、図2(c)は図2(b)のIIc−IIc矢視断面図である。
【図3】実施形態のコネクタ装置を構成する第2のコネクタユニットの斜視図である。
【図4】同第2のコネクタユニットの中の第2のコネクタの構成図で、図4(a)は斜視図、図4(b)は図4(a)のIVb矢視図である。
【図5】図3に示した第2のコネクタの側面図およびその部分拡大図である。
【図6】図3に示した第2のコネクタの別の方向から見た側面図およびその部分拡大図である。
【図7】同第2のコネクタに装着される端子の斜視図である。
【図8】図4に示した第2のコネクタユニットの中のレバーの構成図で、図8(a)は斜視図およびその部分拡大図、図8(b)は側面図およびその部分拡大図である。
【図9】図4に示した第2のコネクタユニットの側面図およびその部分拡大図である。
【図10】図4に示した第2のコネクタユニットの構成図で、図10(a)は図9と別の方向から見た側面図、図10(b)は図10(a)のXb−Xb矢視断面図およびその部分拡大図である。
【図11】実施形態のコネクタ装置を構成する第1のコネクタと第2のコネクタユニットとを嵌合し始めた初期の状態を示す斜視図である。
【図12】図11に示した状態の側面図およびその部分拡大図である。
【図13】図13(a)は図11に示した状態の図12と別の方向から見た側面図、図13(b)は図13(a)のXIIIb−XIIIb矢視断面図およびその部分拡大図である。
【図14】図12に示した状態からレバーを少し回動させた初期段階の状態を示す図で、図12(a)は側面図、図12(b)は別の方向から見た側面図およびその部分拡大図である。
【図15】図14(a)のXV−XV矢視断面図およびその部分拡大図である。
【図16】図14に示した状態からレバーを更に回動させた状態を示す図で、図16(a)は側面図、図16(b)は別の方向から見た側面図およびその部分拡大図である。
【図17】図16(a)のXVII−XVII矢視断面図およびその部分拡大図である。
【図18】図16に示した状態からレバーを接続完了位置まで回動させた最終段階の状態を示す図で、図18(a)は側面図、図18(b)は別の方向から見た側面図およびその部分拡大図である。
【図19】図18(a)のXIX−XIX矢視断面図およびその部分拡大図である。
【図20】本発明者らが先に案出したコネクタ構造の構成図で、図20(a)は基板にコネクタを装着した初期の段階を示す斜視図、図20(b)は基板に対しコネクタをスライドさせた接続完了時の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のコネクタ装置の接続前の状態を示す斜視図である。
図1に示すように、実施形態のコネクタ装置は、図中下側の第1のコネクタ100と、この第1のコネクタ100に嵌合接続される図中上側の第2のコネクタ210と、この第2のコネクタ210の上側に装着されたコネクタカバー250と、第2のコネクタ210に装着されたレバー280とからなる。レバー280は、後述するカム機構を構成する主要素である。第2のコネクタ210とコネクタカバー250とレバー280は、一体に組み立てられることで第2のコネクタユニット200を構成している。
【0020】
図2は第1のコネクタの構成図、図3、図9、図10は第2のコネクタユニットの構成図、図4〜図6は第2のコネクタの構成図、図7は第2のコネクタに装着される端子の構成図、図8はレバーの構成図である。
【0021】
図2に示すように、第1のコネクタ100は平面視略長方形状をなしており、第2のコネクタ210が嵌合される嵌合凹部112を有するアッパハウジング(第1のコネクタハウジング)110と、その下側に結合されたロアハウジング(第1のコネクタハウジング)120と、アッパハウジング110とロアハウジング120の間に固定された基板130とからなる。嵌合凹部112は、環状のフード壁111の内部に確保され、基板130は、嵌合凹部112の内奥部に、第2のコネクタ210の嵌合方向(以下、この方向を「コネクタ嵌合方向」という。図11中の矢印Aで示す方向である)に対して垂直に対峙するよう配置され、この基板130の、コネクタ嵌合方向に対向する側の表面には多数の電極131(図13参照)が配列されている。また、アッパハウジング110のフード壁111の長い方の外壁面には、後述するカム機構の要素である一対の係合ピン115が突設されている。
【0022】
第2のコネクタ210は、図4に示すように、第1のコネクタ100のアッパハウジング110の嵌合凹部112に嵌合される第2のコネクタハウジング210Aを有している。この第2のコネクタハウジング210Aは平面視略長方形の厚肉板状をなしており、中央壁211と外周壁212とを有している。この第2のコネクタハウジング210Aは、第1のコネクタ100のアッパハウジング110の嵌合凹部112の内部に挿入されるものであるが、挿入された状態で長手方向に若干動くことができる小さめの寸法に形成されている〔図13(b)参照〕。
【0023】
この第2のコネクタハウジング210Aの中央壁211には、肉厚方向(第2のコネクタ210の嵌合方向)に貫通する複数の端子収容室213が形成されており、各端子収容室213にはそれぞれ端子290が収容固定されている。
【0024】
各端子290は、図7に示すように、端子本体291と接触子292の2部品の組み合わせで構成されており、端子本体291は、前部に角筒状の箱部291aを有すると共に、その後側に繋ぎ部291bを介して、電線の導体加締部291cと被覆加締部291dを有しており、後方に延びる電線の先端に取り付けられる。
【0025】
また、接触子292は、端子本体291の箱部291aの内部に挿入され、後端係合片292cを箱部291aの壁に設けた係合孔291eに係止することで、先端接触部292aを、箱部291aの前端よりも矢印E方向(端子290の長手方向)にスライド自在に突出させている。そして、先端接触部292aと後端係合片292cの間に形成されたバネ部(図示略)のバネ性により、先端接触部292aを突出方向に付勢している。この先端接触部292aは、第1のコネクタ100の基板130の表面に配列された電極131に接触導通する部分であり、端子290が第2のコネクタハウジング210Aの端子収容室213に適正に収容された状態で、コネクタハウジング210Aの嵌合方向の前端より突出している〔図13(b)参照〕。
【0026】
また、図4〜図6に示すように、第2のコネクタハウジング210の外周壁212には、その外側に間隔をあけて断面L字型の一対のレバー取付ブラケット215が一体に形成されている。レバー取付ブラケット215が第2のコネクタハウジング210の外周壁212の外側に間隔をおいて配置されているのは、コネクタ嵌合時にレバー取付ブラケット215を、第1のコネクタ100のフード壁111に干渉せずにフード壁111の外側に位置させるようにするためである。各レバー取付ブラケット215には、外方に向けてレバー取付軸217が突設され、その近傍に第1のコネクタ100側の係合ピン115が係合する移動経路規制溝216が設けられている。
【0027】
移動経路規制溝216は、図5に示すように、係合ピン115が係合することで係合ピン115の移動経路をコネクタ嵌合方向と平行な方向に規制する縦溝部216aと、縦溝部216aに曲がり部216bを介して連続し、係合ピン115が係合することで係合ピン115の移動経路をコネクタ嵌合方向と直交する方向に規制する横溝部216cとからなる略L字形の経路として形成されている。また、レバー取付ブラケット215には、レバー280を初期位置に仮係止しておくための仮係止部(仮係止手段)218が設けられている。
【0028】
また、図6に示すように、レバー取付軸217の先端には、レバー280を取り付けたときにレバー280の脱落を防ぐための抜け止め突起217aが設けられている。また、図4、図5に示すように、第2のコネクタハウジング210Aの外周壁212には、コネクタカバー250を係止するためのカバー係止部214や、第2のコネクタ210を第1のコネクタ100の嵌合凹部112に嵌合させた初期の状態において第2のコネクタ210を第1のコネクタ100に対して仮係止する仮係止突起221の付いた可撓板220などが設けられている。
【0029】
次にカム機構の主要素であるレバー280について説明する。
図3および図8に示すように、レバー280は、各一端側に回動支点部となる取付孔283を有する一対の側板281と、これら一対の側板281の他端同士を連結する操作部282とを備える略U字状をなしており、第2のコネクタハウジング210Aのレバー取付ブラケット215の外面に突設したレバー取付軸217に取付孔283を嵌めることで、第2のコネクタハウジング210Aにコネクタ嵌合方向を含む面内で回動可能に装着されている。レバー280の取付孔283の周囲には凹部284が設けられ、レバー取付軸217の先端の抜け止め突起271がこの凹部284に収容されることで、レバー280は第2のコネクタハウジング210Aに装着した状態で抜け止めされている。
【0030】
このレバー280の各側板281には、取付孔283を基準にして所定経路のカム溝285が形成されている。このカム溝285は、入口部285aから奥部285cに行くほど取付孔(回動支点)283からの距離が近くなるように設定されており、入口部285aの直ぐ奥には、係合ピン115を拾い込むための当接壁285bが設けられている。
【0031】
また、レバー280の各側板281の内面には、レバー取付ブラケット215の外面に突設した仮係止部218に係合することで、レバー280を回動操作前の初期位置に仮係止する仮係止突起(仮係止手段)287が設けられている。更に、レバー280の操作部282の内側には、図19に示すように、レバー280を接続完了位置まで回動させたときに、コネクタカバー250側のロック部(本係止手段)256に係合するロック突起(本係止手段)286が設けられている。
【0032】
また、コネクタカバー250は、図3に示すように、一対の側壁251と、これら側壁215の上端を繋ぐ天壁252とからなるU字状をなしており、側壁251に設けた係合孔254を第2のコネクタハウジング210Aに設けたカバー係止部214に係合させることにより、第1のコネクタ210の上方を覆うように装着されている。
【0033】
以上において説明した、カム溝285を有するレバー280と、第1のコネクタ100側の係合ピン115と、第2のコネクタハウジング210Aに形成した移動経路規制溝216は、レバー280の回動に応じたカム溝285と係合ピン115によるカム作用と移動経路規制溝216による係合ピン115の移動経路規制作用とにより、第1のコネクタ100に対し第2のコネクタ210を所定の移動経路に沿って移動させて接続するカム機構を構成している。
【0034】
そして、このような要素で構成されたカム機構は、レバー280の回動操作の初期段階において、第1のコネクタ100に対して第2のコネクタ210をコネクタ嵌合方向と平行な方向に移動させて基板130の表面に端子290の先端接触部292aを接触させ、続いて、基板130の表面に端子290の先端接触部292aが接触した状態でのレバー280の回動操作の後期段階において、第1のコネクタ100に対して第2のコネクタ210をコネクタ嵌合方向と直交する方向に移動させ、それにより基板130の表面に沿って端子290の先端接触部292aをスライドさせて端子290の先端接触部292aを基板130の表面の電極131に擦りながら接触導通させるようになっている。
【0035】
次に、図11〜図19を参照して作用を説明する。
まず、図11〜図13に示すように、第1のコネクタ100に対して第2のコネクタ210を矢印A方向に押し付けて初期嵌合させる。この状態において、レバー280は初期位置に倒れて、図10(b)に示すように、仮係止部218と仮係止突起287が係合することにより仮係止されており、係合ピン115は、図12に示すように移動経路規制溝216の縦溝部216aとカム溝285の入口部285aに入り込む。またこの時、図13に示すように、端子290の先端接触部292aと基板130の表面の電極131は接触しておらず、電気的接続はされていない。
【0036】
この状態から、仮係止部218と仮係止突起287の係合を外しながら、図14に示すように、レバー280を矢印Bのように回動させる。そうすると、係合ピン115にカム溝285の当接壁285bが当たり、当接壁285bが係合ピン115を押すことで、反作用として第1のコネクタ100に対して第2のコネクタ210が図15中の矢印C方向(嵌合を深める方向)に動き出す。この段階での第2のコネクタ210の動きは、係合ピン115が移動経路規制溝216の縦溝部216aに沿って移動することになるので、矢印C方向のみに規制される。
【0037】
次に更にレバー280を回動させると、係合ピン115が移動経路規制溝216の曲がり部216bに差し掛かる。この段階に達したときには、端子290の先端接触部292aが基板130の表面に接触する。そして、端子290の先端接触部292aが基板130の表面に接触した状態で更にレバー280を回動させると、図16に示すように、係合ピン115が移動経路規制溝216の横溝部216cに入り込み、これより後は、係合ピン115が横溝部216cに沿って移動することになるので、第2のコネクタ210は、図17中の矢印Dの方向(コネクタ嵌合方向と直交する方向)のみに移動することになる。
【0038】
そして、この動きにより、基板130の表面に沿って端子290の先端接触部292aがスライドして、最終的には図19に示すように、端子290の先端接触部292aが基板130の表面の電極131に擦りながら接触導通して、第1のコネクタ100と第2のコネクタ210の電気接続が達成されることになる。このように最終段階までレバー280を回動させると、図18および図19に示すように、レバー280は初期位置に対して90°回動した状態となり、レバー280側のロック突起286がコネクタカバー250のロック部256に係合して、レバー280がロックされる。
【0039】
以上のように、本実施形態のコネクタ装置によれば、レバー280を一方向に回動操作するだけで、回動操作の初期段階において、第1のコネクタ100に対して第2のコネクタ210をコネクタ嵌合方向と平行な方向に移動させて基板130の表面に端子290の先端接触部292aを接触させることができ、続いて回動操作の後期段階において、第1のコネクタ100に対して第2のコネクタ210をコネクタ嵌合方向と直交する方向に移動させ、それにより基板130の表面に沿って端子290の先端接触部292aをスライドさせて端子290の先端接触部292aを基板130の表面の電極131に擦りながら接触導通させることができる。従って、レバー280の操作だけで十分なワイピング機能を発揮させながら、信頼性の高い電気接続を達成することができ、コネクタ接続の作業性を向上させることができる。
【0040】
また、この実施形態のコネクタ装置では、カム溝285を有するレバー280と、カム溝285に係合する係合ピン115と、係合ピン115の移動経路を規制する移動経路規制溝216とにより、コネクタ接続の際の動きを制御することができるので、構成を簡単にすることができる。
【0041】
また、この実施形態のコネクタ装置では、レバー280を初期位置と接続完了位置に確実に係止しておくことができるので、接続前や接続完了後にレバー280が不用意に動くのを防ぐことができる。
【0042】
また、この実施形態のコネクタ装置では、端子290の先端接触部292aが突出方向に付勢されているので、端子290や電極131に無理な力がかからないようにすることができると共に、スライド時の安定した作動を可能にすることができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
例えば、上記実施形態では、第1のコネクタ100側に係合ピン115を設け、第2のコネクタ210側にレバー280を取り付けると共に移動経路規制溝216を設けていたが、それとは逆に、第2のコネクタ210側に係合ピン115を設け、第1のコネクタ100側にレバー280や移動経路規制溝216を設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
100 第1のコネクタ
110 アッパハウジング(第1のコネクタハウジング)
112 嵌合凹部
115 係合ピン
130 基板
131 電極
210 第2のコネクタ
210A 第2のコネクタハウジング
213 端子収容室
216 移動経路規制溝
216a 縦溝部
216b 曲がり部
216c 横溝部
218 仮係止部(仮係止手段)
256 ロック部(本係止手段)
280 レバー
286 ロック突起(本係止手段)
285 カム溝
287 仮係止突起(仮係止手段)
290 端子
292a 先端接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続される第1のコネクタおよび第2のコネクタと、これら第1のコネクタおよび第2のコネクタのうちの一方のコネクタに取り付けられたレバーを回動させることにより前記第1のコネクタと第2のコネクタを接続させるカム機構と、を備えたレバー付きのコネクタ装置であって、
前記第1のコネクタは、前記第2のコネクタが嵌合される嵌合凹部を有する第1のコネクタハウジングと、該第1のコネクタハウジングの嵌合凹部の内奥部に前記第2のコネクタの嵌合方向に対して垂直に対峙するよう配置され、前記第2のコネクタの嵌合方向に対向する側の表面に多数の電極を有する基板と、を備え、
前記第2のコネクタは、前記第1のコネクタハウジングの嵌合凹部に嵌合される第2のコネクタハウジングと、該第2のコネクタハウジングに形成された端子収容室に収容され且つ第2のコネクタハウジングの前記嵌合方向における前端に前記基板の表面に配置された電極に対して接触導通する先端接触部を位置させた端子と、を備え、
前記カム機構は、前記レバーの回動操作の初期段階において、前記第1のコネクタに対して前記第2のコネクタを前記嵌合方向と平行な方向に移動させて前記基板の表面に前記端子の先端接触部を接触させ、続いて、前記基板の表面に前記端子の先端接触部が接触した状態での前記レバーの回動操作の後期段階において、前記第1のコネクタに対して前記第2のコネクタを前記嵌合方向と直交する方向に移動させ、それにより前記基板の表面に沿って前記端子の先端接触部をスライドさせて該端子の先端接触部を前記基板の表面の電極に擦りながら接触導通させるよう構成されていることを特徴とするレバー付きのコネクタ装置。
【請求項2】
前記カム機構は、前記第1のコネクタおよび第2のコネクタのうちの一方のコネクタに回動自在に取り付けられると共に回動支点に対して所定の経路で形成されたカム溝を有する前記レバーと、前記他方のコネクタに設けられて前記レバーのカム溝に係合する係合ピンと、前記一方のコネクタに形成され、前記係合ピンが係合することで該係合ピンの移動経路を前記嵌合方向と平行な方向に規制する縦溝部および該縦溝部に連続し前記係合ピンが係合することで該係合ピンの移動経路を前記嵌合方向と直交する方向に規制する横溝部とからなるL字形の移動経路規制溝と、を備えており、前記レバーの回動に応じた前記カム溝と前記係合ピンによるカム作用と前記移動経路規制溝による前記係合ピンの移動経路の規制作用とにより、前記第1のコネクタに対し前記第2のコネクタを所定の移動経路に沿って移動させて接続することを特徴とする請求項1に記載のレバー付きのコネクタ装置。
【請求項3】
前記レバーを回動操作前の初期位置に仮係止する仮係止手段と回動操作後の接続完了位置に本係止する本係止手段と、が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバー付きのコネクタ装置。
【請求項4】
前記端子の先端接触部が、前記嵌合方向にスライド自在に設けられると共に、前記第2コネクタハウジングの前端から突出する方向に付勢されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレバー付きのコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−45648(P2013−45648A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182991(P2011−182991)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】