説明

レピア織機の緯入れ装置

【課題】本発明は、レピアヘッドの把持部分を構成する可動部材の把持部をタイミングの遅れやばらつきを生じることなく移動させることができるレピア織機の緯入れ装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】レピアヘッド6の可動部材22に圧電素子24の一端部が固定されており、圧電素子24が伸長すると、可動部材22をフック部20側に向かって押圧するようになるため、変形部22cが折れ曲るように弾性変形し、可動部材22の把持部22aがフック部20の把持部20aに向かって移動するようになり、両者の間の間隔が狭められる。変形部22cが弾性変形して可動部材が回動するので、圧電素子24の伸縮作用が直接回動部材の揺動動作に反映されるようになり、可動部材22の動作タイミングに遅れが生じることなく正確かつ安定して動作させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緯糸を把持するレピアヘッドを緯入れ方向に移動させて緯入れするレピア織機の緯入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレピア織機のレピアヘッドに組み込まれた緯糸把持機構は、固定把持片と、緯糸を案内導入するため隙間を設けて固定把持片に対向配置した可動把持片を備え、可動把持片は、バネや可動片自体の弾性力で所定の範囲にわたり固定把持片に対し隙間なく接圧し、この接圧部分が緯糸把持部を構成する。
【0003】
この緯糸把持機構による緯糸の把持メカニズムは、案内導入部を通過した緯糸は、固定把持片と可動把持片が隙間なく接圧している緯糸把持部に達し、その後、レピアヘッドの緯入れ運動速度による勢いで、緯糸自身が可動把持片を押し広げ、固定把持片と可動把持片の間に挟み込まれ、把持される。
【0004】
このように、現在のレピア織機の緯糸を把持する機構は、固定把持片とそれにバネなどの弾性力を利用して接圧している可動把持片の間に緯糸を引っ掛けて把持する消極的なもので、緯糸の把持動作は不安定で、緯糸の太さや強度にあわせて案内導入部の隙間の大きさやバネなどの弾性力の調整を行う必要がある。
【0005】
しかし、この調整にも限度があり、極低強度繊維は脆弱な繊維であるから、把持する際に過大な張力が付与されないように、可動把持片の接圧力を小さくする必要があるが、そうすると把持部から簡単に抜けてしまう。また、太さが異なる極細繊維と極太繊維を交織する場合も、極細繊維に対する把持能力を高めるために、可動把持片の接圧力を大きくすると、極太繊維は把持困難になり、極太繊維に対する把持能力を高めるために、可動把持片の接圧力を小さくすると極細繊維が把持困難となる。
【0006】
また、この緯糸把持機構による緯糸の開放メカニズムは、レピア走行するガイド部分に、可動把持片の把持レバーを押し開くオープナーと呼ぶカムを設置し、可動把持片をカムに接触させて緯糸を開放するもので、緯糸を開放するタイミングは、レピアヘッドの走行位置で予め決定されるようになり、タイミングの微調整を行うことができない。
【0007】
このような問題点を解決するため、特許文献1では、レピアヘッドの先端が鉤状に後曲することによって鉤先内側に糸銜え部を形成しているフック部と、このフック部の鉤先内側に臨向して先端の糸抑え部が差し伸べられているベルクランク・レバー形式の揺動把持レバーと、この揺動把持レバーの後方側に位置するアクション・ポイントを突押あるいは拘引可能に配設されて、当該レピア織機の主軸の設定クランク角度に応じて印加される電圧により伸膨変位して、揺動把持レバーのアクションポイントを突押あるいは拘引動作することで、フック部の鉤先内側の糸銜え部と把持揺動レバーの糸抑え部の間に緯糸を把持・開放せしめる積層圧電素子からなる直動アクチュエータとを包含して構成される機構が開示されている。
【特許文献1】特開2006−161194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたレピア織機の緯糸把持駆動機構は、把持レバーを揺動するために軸孔を設けて支軸に軸着するようにしているが、支軸と把持レバーの軸孔との間に生じる間隙のために把持レバーの揺動動作のタイミングの遅れやばらつきが発生する。特に、把持レバーが揺動運動で変位する場合、支軸部分のわずかな誤差が把持部分において拡大されるため、支軸部分の間隙が把持部分での大きな誤差となって現れるようになり、正確な緯入れ動作を安定して行うことができず、製織の高速化を実現できない。
【0009】
また、こうした支軸部分の間隙が存在すると積層圧電素子からなる直動アクチュエータの変位量がその分に大きくなるように設計しなければならない。例えば、支軸部分の間隙が100μm存在すると、30μm〜40μmの伸縮変位を生じる圧電素子を複数個直列に配置しなければならなくなり、レピアヘッドの大型化が必要となってレピアヘッドを移動する移動機構についてもそれに合せて設計するため、コストアップの要因となる。
【0010】
また、把持揺動レバーの揺動運動では、フック部の鉤先内側の糸銜え部と把持揺動レバーの糸抑え部の間隙は、積層圧電素子からなる直動アクチュエータの変位量によって決まるため、緯糸の太さによる把持部分の間隙を調整することができず、太さの異なる緯糸を交織することは難しい。
【0011】
そこで、本発明は、レピアヘッドの把持部分を構成する可動部材の把持部をタイミングの遅れやばらつきを生じることなく移動させることができるレピア織機の緯入れ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るレピア織機の緯入れ装置は、先端部に形成されたフック部の内壁面に向かって可動部材の把持部を移動させて両者の間に緯糸を把持するレピアヘッドと、レピアヘッドを緯入れ方向に移動させる移動機構とを備え、レピアヘッドにより緯糸を把持して緯入れするレピア織機の緯入れ装置において、前記可動部材は、少なくとも一部に弾性変形可能な変形部分を備えるとともに一部が前記レピアヘッドに固着されており、前記レピアヘッドは、圧電素子の伸縮作用により前記可動部材を弾性変形させて前記把持部を移動させる作動部を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る別のレピア織機の緯入れ装置は、先端部に形成されたフック部の内壁面に向かって可動部材の把持部を移動させて両者の間に緯糸を把持するレピアヘッドと、レピアヘッドを移動させる移動機構とを備え、レピアヘッドにより緯糸を把持して緯入れするレピア織機の緯入れ装置において、前記レピアヘッドは、前記把持部を前記内壁面に向かって直線移動するように前記可動部材を案内する案内部材と、案内部材の案内方向に沿って伸縮する圧電素子を備えるとともに当該圧電素子の伸縮作用により前記可動部材を直線移動させる作動部とを備えていることを特徴とする。
【0014】
上記のレピア織機の緯入れ装置において、前記把持部の把持面は、前記内壁面との間の間隔が内方に行くに従い狭くなるように設定されていることを特徴とする。さらに、前記移動機構は、前記レピアヘッドが取り付けられるとともに緯入れ方向に移動する移動部材と、前記移動部材の移動方向に延設されるとともに前記作動部と電気的に接続された導電部と、前記導電部に接触して前記作動部を駆動制御する制御部とを備えていることを特徴とする。さらに、前記移動機構は、前記レピアヘッドが取り付けられるとともに緯入れ方向に移動する移動部材と、前記移動部材に設けられるとともに非接触で外部と信号を送受信して前記作動部を駆動制御する制御部を備えていることを特徴とする。さらに、前記制御部は、光通信により外部と信号を送受信することを特徴とする。さらに、前記制御部は、電磁誘導により外部から電源信号を受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るレピア織機の緯入れ装置は、上記のような構成を有することで、可動部材が少なくとも一部に弾性変形可能な変形部分を備えるとともに一部が前記レピアヘッドに固着され、圧電素子の伸縮作用により可動部材を弾性変形させて把持部を移動させる作動部を備えているので、タイミングの遅れやばらつきを生じることなく可動部材の把持部を移動させることができる。
【0016】
すなわち、圧電素子の伸縮作用により可動部材自身が変形して把持部が移動するので、圧電素子の駆動タイミングに遅れることなく把持部が移動し、支軸に軸支する場合のような間隙の存在によるタイミングの遅れ等がなくなり、正確で安定した緯糸の把持を行うことが可能となって製織の高速化及び高品質化を図ることができる。また、従来技術のように、間隙の存在による可動部材の移動に伴う遊びがないので、作動部に用いる圧電素子に対してこうした遊びに対応した伸縮変位を考慮する必要がなくなり、必要最低限の圧電素子を装備すればよくレピアヘッドのコンパクト化を図ることができる。
【0017】
また、本発明に係る別のレピア織機の緯入れ装置も同様に、把持部を内壁面に向かって直線移動するように可動部材を案内する案内部材と、案内部材の案内方向に沿って伸縮する圧電素子を備えるとともに当該圧電素子の伸縮作用により可動部材を直線移動させる作動部とを備えているので、タイミングの遅れやばらつきを生じることなく可動部材の把持部を移動させることができる。
【0018】
すなわち、案内部材の案内方向に沿って伸縮する圧電素子の伸縮作用により可動部材を案内して把持部を内壁面に向かって直線移動させるようにすれば、圧電素子の伸縮変位をそのまま把持部の直線移動に反映させることができ、圧電素子の駆動タイミングに遅れることなく把持部が移動して緯糸を把持可能となって、製織の高速化及び高品質化を図ることができる。
【0019】
また、可動部材の把持部の把持面をフック部の内壁面との間の間隔が内方に行くに従い狭くなるように設定すれば、把持面と内壁面との間に太さの異なる緯糸を把持することが可能となる。すなわち、把持面と内壁面との間は楔状の間隙形状となるため、細い緯糸の場合には、両者の間の内方まで導入されて把持され、太い緯糸の場合には、両者の間の外方側で把持されるようになり、いずれの場合にも楔状の間隙に緯糸が食い込むように挟持される。そして、作動部により把持部が移動することで内壁面との間に緯糸が確実に把持されるようになる。
【0020】
また、移動機構に、レピアヘッドが取り付けられるとともに緯入れ方向に移動する移動部材と、移動部材の移動方向に延設されるとともに作動部と電気的に接続された導電部と、導電部に接触して作動部を駆動制御する制御部とを備えることで、作動部に対する駆動信号や電源供給を移動部材を移動させながら導電部を介して確実に行うことができ、製織の高速化及び安定化を図ることが可能となる。同様に、移動機構に、レピアヘッドが取り付けられるとともに緯入れ方向に移動する移動部材と、移動部材に設けられるとともに非接触で外部と信号を送受信して作動部を駆動制御する制御部を備えることで、移動部材を移動させながら、外部との信号の送受信を確実に行うことができ、製織の高速化及び安定化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明に係るレピア織機の緯入れ装置に関する概略構成図である。経糸1を緯方向に配列し織組織にしたがって上下動させることで緯糸2を挿入する開口を形成する。緯糸2は、ボビン3から繰出されてグリッパ4に把持されている。そして、緯糸2は、開口内を往復移動するレピアヘッド6により把持されて開口に導入され、筬5により織前に筬打ちされる。
【0023】
レピアヘッド6は、レピア棒7の先端部に固定されており、レピア棒7がその長手方向に往復動することで経糸1の開口内を往復動するようになっている。レピア棒7の後端部は、揺動部材8の上端部に回動自在に軸支されている。
【0024】
図2は、レピア棒7を往復動させるための駆動機構を示しており、図2(a)は紙面左方向にレピア棒7を移動させた状態であり、図2(b)は紙面右方向にレピア棒7を移動させた状態を示している。
【0025】
揺動部材8は、中央部に回動部材9の右端部が回動自在に軸支されており、下端部には溝内を摺動する摺動部材8aが回動自在に取り付けられている。したがって、回動部材9が上下方向に回動すると、摺動部材8が上下動しながら左右方向に揺動してレピア棒7が往復動するようになる。
【0026】
回動部材9は、左端部側を回動軸9aにより軸支されて回動するようになっており、左端部にはリンク10の上端部が回動自在に取り付けられている。そして、リンク10の下端部は回動部材11の左端部に回動自在に取り付けられており、回動部材11は中央部を回動軸11aに軸支されて右端部にカムフォロア12が回動自在に取り付けられている。カムフォロア12は、駆動カム13のカム面に当接しており、駆動カム13が駆動軸13aの回転にしたがって回動すると上下動するようになる。
【0027】
カムフォロア12が上下動することで、回動部材11も連動して上下方向に揺動し、回動部材11の揺動はリンク10を介して回動部材9を上下方向に往復動するようになる。 こうして、以上ような移動機構を用いて駆動カム13を所定の回転速度で回転駆動すれば、レピアヘッド6がレピア棒7とともに経糸1の開口内を所定のタイミングで往復移動するようになる。
【0028】
図3は、レピアヘッド6を拡大して示す概略構成図である。レピアヘッド6の先端部は、鉤状に湾曲したフック部20が形成されており、フック部20の内側には緯糸を導入するための空隙部21が形成されている。フック部20の内側には把持部20aが埋設されており、その表面が緯糸を把持する内壁面として用いられる。把持部20aとしては、例えばチタン系サーメット等の耐摩耗性材料を用いるとよい。
【0029】
レピアヘッド6の内部には、可動部材22が内蔵されている。可動部材22は、バネ鋼等の弾性を有する材料からなるL字形状の板状体で、レピアヘッド6の長手方向に延設された部分にはガイド部22dが形成されており、長手方向と直交する方向に延設された部分には固着部22b及び変形部22cが形成されている。また、可動部材22の折れ曲り部分が空隙部21に露出しており、折れ曲り部分には、直線状に切欠いて把持部22aが固着されている。把持部22aとしては、把持部20aと同様にチタン系サーメット等の耐摩耗性材料が用いられる。そして、フック部20の把持部20aに把持部22aが対向配置するように可動部材22がレピアヘッド6に取り付けられている。可動部材22の固着部22bは、3本のネジ23によりレピアヘッド6の本体に締付固定されて固着されており、固着部22bに近接して形成された変形部22cは、括れたように細幅に形成されるとともに他の部分に比べて半分の厚さに形成されて容易に弾性変形するようになっている。
【0030】
レピアヘッド6の内部には、可動部材22のフック部20とは反対側に圧電素子24が配設されており、圧電素子24の長手方向の位置調整を行うための調整ボルト25及び調整ナット26が内蔵されている。圧電素子24、調整ボルト25及び調整ナット26が作動部を構成する。圧電素子24の一端部は調整ボルト25の端部に固定又は密着されており、他端部は可動部材22の把持部22aと変形部22cとの間の部位に密着又は固定されている。そして、圧電素子24のいずれか一方の端部が密着され、もう一方の端部が固定されるようになっている。
【0031】
圧電素子24は、積層圧電体からなっており、所定の振幅の電圧を印加することで長手方向に伸長するようになっている。図4は、圧電素子24に電圧が印加されて伸長した状態を示す概略構成図である。圧電素子24が伸長すると、可動部材22の把持部22aと変形部22cとの間の部位をフック部20側に向かって押圧するようになるため、変形部22cが折れ曲るように弾性変形し、把持部22aを含む折れ曲り部分全体がフック部20側に向かって回動するようになる。そのため把持部22aが把持部20aに向かって移動するようになり、両者の間の間隔が狭められる。圧電素子24に印加された電圧がオフされると元の状態に縮むため変形部22cは変形のない元の状態に戻る。
【0032】
このように変形部22cが弾性変形して可動部材が回動するので、圧電素子24の伸縮作用が直接回動部材の揺動動作に反映されるようになり、可動部材22の動作タイミングに遅れが生じることなく正確かつ安定して動作させることができる。可動部材22が回動する際には、ガイド部22dがレピアヘッド6の本体に形成された隙間に出入することで、把持部22aが把持部20aに向かって移動する動作を安定して行なうことができる。
【0033】
また、変形部22cが回転支点となって把持部22aが揺動するため、圧電素子24を変形部22cの近傍に取り付けておけば、圧電素子24により生じる伸縮変位が拡大して把持部22aの揺動変位となって表れるようになり、伸縮変位の小さい圧電素子を用いても把持部22aを十分揺動させることができる。
【0034】
調整ボルト25を回すことにより圧電素子24の長手方向の位置調整が行われるため、圧電素子24を位置調整することで可動部材22がそれに合せて位置調整され、フック部20の把持部20a及び可動部材22の把持部22aとの間の間隔の調整が行われる。したがって、使用する緯糸の種類に合せて把持力の調整を適宜行うことができる。
【0035】
可動部材22の把持部22aの把持面はフック部20の把持部20aの内壁面に対して傾斜するように設定されており、両者の間の間隔は、内方に行くに従い狭くなるように設定されている。図5(a)に示すように、内方側の間隔d1は、外方側の間隔d2よりの狭くなるように設定されて全体として楔状の空隙が形成されている。そのため、太さの異なる緯糸が導入された場合にも確実に把持することができる。図5(b)に示すように、細い緯糸f1の場合には楔状の空隙の内方側に導入されて把持され、太い緯糸f2の場合には導入されると外方側で把持されるようになる。緯糸は、レピアヘッド6に把持される際に、フック部20の先端側から後端側に向かって相対移動して空隙部21に導入された後フック部20が後端側に移動するため、緯糸は把持部20a及び22aの間を内方に向かって引っ張られるように導入され、楔状の空隙に食い込むように把持される。
【0036】
こうして把持部20a及び22aの間に導入された緯糸を、圧電素子24に電圧を印加することで可動部材22を変形部22cを中心に回動させて把持部22aを把持部20aに向かって移動させ、確実に把持動作を行なう。
【0037】
以上のように、本実施形態では、正確なタイミングで把持動作を行なうことができるとともに太さの異なる緯糸に対しても確実に把持することができる。
【0038】
なお、把持部20a及び22aの間の間隙は、把持動作の際にもわずかな隙間が保持されるようにしておけば、緯糸を把持する際の糸くずや繊維付着物が滞留することがなくなる。また、楔状の空隙に導入される緯糸が把持部からさらに内方に入り込むことを規制するためにストッパを設けるようにしてもよい。
【0039】
図6は、上述した本実施形態に関する変形例を示す概略構成図である。この例では、可動部材22の固着部22bが形成されていた端部を自由端部22eとし、自由端部22eと把持部22aとの間の部位にフック部20側に向かって突出した固着部22f及び変形部22gを形成している。そして、自由端部22eに対して圧電素子24が固定されており、圧電素子24の伸縮作用により変形部22gが弾性変形して変形部22を支点として可動部材22が回動するようになる。可動部材22の回動に伴って把持部22aが把持部20aに向かって移動するようになる。また、圧電素子24を変形部22gの近傍に固定すれば、圧電素子24の伸縮変位を拡大して把持部22aの揺動変位に表れるようにすることができる。この場合には、圧電素子24に電圧を加えて伸長させると可動部材22の把持部22aが把持部20aから離間して開いた状態となる。したがって、開いた状態で緯糸を導入し、その後圧電素子24に印加する電圧をオフにすることで把持部22aが把持部20aに向かって移動し可動部材22の弾性力により緯糸を把持するようになる。
【0040】
図7は、さらに別の変形例を示す概略構成図である。この例では、本実施形態と同様に可動部材22の端部に形成された固着部22bにおいて固着するようにしているが、変形部を設けることなく可動部材22全体の弾性変形により把持部22aを移動させるようにしている。この場合には、可動部材22として剛性の低い材料を用いたり全体の厚さを薄くしたりすることで、圧電素子24の伸縮作用により全体を変形させるようにすることができる。
【0041】
図8は、別の実施形態のレピアヘッド6’に関する概略構成図である。この実施形態では、可動部材22’は、レピアヘッド6’の長手方向に延設された帯状の板状体に形成されており、フック部20の把持部20aに対向する端部を切欠いて把持部22’aが設けられている。反対側の端部には支持ロッド27が長手方向に突設されており、支持ロッド27は案内部28に摺動可能に支持されている。支持ロッド27の端部は圧縮バネ29を挿着して圧電素子24に固定されている。圧縮バネ27は、案内部28と圧電素子24との間に圧縮した状態で装着されており、可動部材22’が常時開く方向に付勢されるようになっている。
【0042】
圧電素子24に電圧が印加して長手方向に伸長すると可動部材22’が案内部28に案内されて直線移動し、把持部22’aが把持部20aに向かって移動するようになる。
【0043】
図9は、圧電素子24を駆動制御するための制御部に関するブロック構成図である。制御部は、圧電素子24に電圧を印加して駆動する駆動回路30及び動作タイミングを検知する検知回路31を備えている。検知回路31は、レピア織機の主駆動軸33の回転角度を検知するエンコーダ32からの角度信号に基づいて圧電素子24の駆動タイミングを生成して駆動回路30に出力する。駆動回路30には電源34から電源供給を受けて圧電素子24に対して電圧を印加するようになっている。
【0044】
レピア棒7の表面には移動方向に沿って導電部35が露出して設けられており、導電部35の一端部に圧電素子24に接続する配線36が電気的に接続されている。レピア棒7の両側には、一対の導電ローラ37が導電部35に接触するように設けられており、導電ローラ37は駆動回路30と電気的に接続されている。
【0045】
したがって、駆動回路30からの駆動信号は、導電ローラ37及び導電部35を介して圧電素子24に供給されるようになり、レピア棒7を往復動させながら圧電素子24を確実に駆動制御することができる。
【0046】
図10は、制御部に関する変形例を示すブロック構成図である。この例では、制御部である駆動回路30及び検知回路31がレピア棒7に取り付けられてレピアヘッド6とともに往復動するようになっている。そして、エンコーダ32からの角度信号は、本体側の送受信部38及びレピア棒7に取り付けられた送受信部39の間で光通信により非接触で検知回路31に送信される。また、駆動回路30に電源を供給する電源部40が設けられており、電源部40は、レピア棒7が緯入れ開始位置等の所定位置に停止した際に外部の電源34から電源が供給されて充電されるようになっている。電源部40に対して電源34から電源を供給する場合には、所定位置に停止した際に外部端子と電気的に接触する入力端子を電源部40に配設して供給を受けたり、電源部40に配設したコイル受信回路に対して外部から電磁誘導により非接触で電源供給を受けたりすることができる。
【0047】
したがって、非接触によりレピア棒7に取り付けられた制御部に信号が送受信されるので、レピア棒7を往復動させながら圧電素子24を確実に駆動制御することができる。
【0048】
以上説明した例では、レピアヘッドをレピア棒で移動させる移動機構を備えた緯入れ装置を例に説明したが、バンドレピアを用いてレピアヘッドを移動させる移動機構を備えた緯入れ装置の場合でも本発明は実施することができ、上述した例に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るレピア織機の緯入れ装置に関する概略構成図である。
【図2】レピア棒7を往復動させるための駆動機構を示す動作説明図である。
【図3】レピアヘッドを拡大して示す概略構成図である。
【図4】圧電素子に電圧が印加されて伸長した状態を示す概略構成図である。
【図5】把持部分の動作に関する説明図である。
【図6】本実施形態に関する変形例を示す概略構成図である。
【図7】本実施形態に関する別の変形例を示す概略構成図である。
【図8】別の実施形態のレピアヘッドに関する概略構成図である。
【図9】圧電素子を駆動制御するための制御部に関するブロック構成図である。
【図10】別の制御部に関するブロック構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 経糸
2 緯糸
3 ボビン
4 グリッパ
5 筬
6 レピアヘッド
7 レピア棒
20 フック部
21 空隙部
22 可動部材
24 圧電素子
30 駆動回路
31 検知回路
32 エンコーダ
33 主駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に形成されたフック部の内壁面に向かって可動部材の把持部を移動させて両者の間に緯糸を把持するレピアヘッドと、レピアヘッドを緯入れ方向に移動させる移動機構とを備え、レピアヘッドにより緯糸を把持して緯入れするレピア織機の緯入れ装置において、前記可動部材は、少なくとも一部に弾性変形可能な変形部分を備えるとともに一部が前記レピアヘッドに固着されており、前記レピアヘッドは、圧電素子の伸縮作用により前記可動部材を弾性変形させて前記把持部を移動させる作動部を備えていることを特徴とするレピア織機の緯入れ装置。
【請求項2】
先端部に形成されたフック部の内壁面に向かって可動部材の把持部を移動させて両者の間に緯糸を把持するレピアヘッドと、レピアヘッドを移動させる移動機構とを備え、レピアヘッドにより緯糸を把持して緯入れするレピア織機の緯入れ装置において、前記レピアヘッドは、前記把持部を前記内壁面に向かって直線移動するように前記可動部材を案内する案内部材と、案内部材の案内方向に沿って伸縮する圧電素子を備えるとともに当該圧電素子の伸縮作用により前記可動部材を直線移動させる作動部とを備えていることを特徴とするレピア織機の緯入れ装置。
【請求項3】
前記把持部の把持面は、前記内壁面との間の間隔が内方に行くに従い狭くなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレピア織機の緯入れ装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記レピアヘッドが取り付けられるとともに緯入れ方向に移動する移動部材と、前記移動部材の移動方向に延設されるとともに前記作動部と電気的に接続された導電部と、前記導電部に接触して前記作動部を駆動制御する制御部とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレピア織機の緯入れ装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記レピアヘッドが取り付けられるとともに緯入れ方向に移動する移動部材と、前記移動部材に設けられるとともに非接触で外部と信号を送受信して前記作動部を駆動制御する制御部を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレピア織機の緯入れ装置。
【請求項6】
前記制御部は、光通信により外部と信号を送受信することを特徴とする請求項5に記載のレピア織機の緯入れ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記移動部材が所定位置に停止した際に外部から電源が供給されて充電される電源部を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載のレピア織機の緯入れ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−240213(P2008−240213A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86274(P2007−86274)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(395016936)株式会社橋詰研究所 (4)
【Fターム(参考)】