説明

レベル計およびレベル計測システム

【課題】高温悪環境下であっても計測精度を高く保つことができ、安価に製造することができるレベル計を提供する。
【解決手段】加熱炉内に貯留された測定対象物の貯留レベルを計測するためのレベル計であって、加熱炉内に挿入して先端部を測定対象物に接触させる検知棒12と、検知棒12を吊下する測定尺20を備えて電気信号の付与により測定尺20の巻取りまたは巻出しを行うと共に測定尺20の巻出し長さを検出し、測定尺20を牽引する張力の軽減により測定尺20の巻出し動作を停止させる動力部16と、前記加熱炉の開口部に設けられて検知棒12を加熱炉内に挿入する際に開放される開閉弁26と、動力部16と開閉弁26との間に設けられて検知棒12の周囲を覆う検知棒保護管28とを有し、前記加熱炉に対する検知棒12の挿入深さを、当該検知棒12の後端部が検知棒保護管28の内部空間30に残留する範囲に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベル計およびレベル計測システムに係り、特に高温、悪環境とする加熱炉内に貯留された粒状物の貯留レベルを測定する場合に好適なレベル計およびレベル計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマスを用いたエネルギーの生成、すなわちバイオエネルギーの生成およびその利用に関する技術が種々提案されている。このような現状の中、特許文献1に開示されているような木質材料から可燃性ガス(例えば水素ガス)を抽出する技術が注目を集めている。しかし、特許文献1に開示されているような技術は、可燃性ガスの生産効率が低く、生産設備も高価なものとなってしまい、さらにはランニングコストが高いという問題がある。
【0003】
このような技術に対し、バイオマスのガス化、改質化に必要とする熱エネルギーを再利用することでランニングコストを抑え、流動層炉のような高価な機器を使用しないことで設備コストを抑え、可燃性ガスの抽出効率を向上させる技術が提案されている(例えば特許文献2、特許文献3)。
【0004】
特許文献2、や特許文献3に開示されている技術は、バイオマスのガス化(熱分解)や、熱分解されたガスの改質化に使用する熱エネルギーを、熱媒体により補い、この熱媒体を、その担持する熱量に見合った用途で段階的に利用するというものである。そして、特許文献2では、前記熱媒体を再利用し、再利用する熱媒体を加熱するための熱源として、バイオマスから生じたチャー(炭化物)の燃焼熱を利用することが提案されている。また、特許文献3には、熱媒体としてアルミナボールを使用することが提案されている。
【0005】
そして、このようなガス化施設では、各加熱炉に投入される熱媒体の量により、炉内温度が変わり、改質化ガスへの反応速度や熱分解速度等に影響が生ずる。このため、各加熱炉内に投入される熱媒体の量を管理することが重要視されている。この熱媒体の量の計測(レベル計測)は現状、作業者の手作業により行われている場合が殆どである。具体的には、目盛が付与された棒状部材を加熱炉内に突っ込み、棒の先端が熱媒体と接触した際の挿入深さを読み取ることで計測を行うという方法である。
【特許文献1】特開2005−281552号公報
【特許文献2】特表2003−510403号公報
【特許文献3】特開2005−146056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような計測方法によれば、確実にレベル計測を行うことができる。しかし、上記のような作業を行うには作業者に多大な労力を強いることになると共に、火傷や燃焼ガスの吸引等といった危険を伴う。このため、引用文献2、3に開示されているようなバイオマス処理施設では加熱炉内のレベル計測を自動化することが望まれている。
【0007】
ところが、上記施設では、内部温度が1000℃以上となる加熱炉が存在することや、加熱炉内に可燃性ガスやタールが充満している等といった理由から、一般的に知られているレベル計の殆どは、使用することができないといった実状がある。例えばパドルスイッチやサウンジング式レベル計等は、耐熱性の観点から使用することができない。また、超音波レベル計は、超音波が加熱炉内で乱反射してしまい、測定誤差が大きくなってしまうという問題がある。また、マイクロ波レベル計は、高価であると共に、マイクロ波が測定対象である熱媒体(誘電率の高い金属)を透過してしまうといった場合があり、測定誤差が大きくなるという問題がある。
【0008】
このような問題を解決し、引用文献2、3等に開示されているバイオマス処理施設への対応を可能としたレベル計としては、放射線式レベル計がある。ところが、この放射線式レベル計は、装置が非常に高価であると共に、使用に際しては管理区域の指定等の手続をする必要があり、ランニングコスト、設備コストを低減するという要求には反することとなる。
【0009】
そこで本発明では、上記問題点を解決し、高温悪環境下であっても計測精度を高く保つことができ、比較的安価に設置することができるレベル計を提供することを第1の目的とする。また、本発明では、作業者の労力を軽減すると共に安全に計測作業を実施することのできるレベル計測システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
レベル計の試験結果を考慮すると、耐熱性の面では音波や電磁波といった間接的な測定方法が有利であり、コスト、精度等の面では接触による直接的な測定方法が有利であることがわかる。そうしてみると、上記目的を達成するレベル計とは、直接的な測定を実施するレベル計であって、耐熱性、耐環境性を持ったものであるということができる。そこで、上記第1の目的を達成するための本発明に係るレベル計は、加熱炉内に挿入して先端部を測定対象物に接触させる検知棒と、前記検知棒を吊下する測定尺を備えて電気信号の付与により前記測定尺の巻取りまたは巻出しを行うと共に前記測定尺の巻出し長さを検出し、前記測定尺を牽引する張力の軽減により前記測定尺の巻出し動作を停止させる動力部と、前記加熱炉の開口部に設けられて前記検知棒を加熱炉内に挿入する際に開放される開閉弁と、前記動力部と前記開閉弁との間に設けられて前記検知棒の周囲を覆う検知棒保護管とを有し、前記加熱炉に対する前記検知棒の挿入深さを、当該検知棒の後端部が前記検知棒保護管内部に残留する範囲に設定したことを特徴とする。
【0011】
また、上記のような特徴を有するレベル計では、前記検知棒と前記測定尺との間に設けた連結棒と、前記検知棒保護管と前記動力部との間に設けた連結棒保護管と、前記検知棒保護管と前記検知棒保護管との間に設けたシール部材とを有し、前記連結棒の往復範囲を、当該連結棒の先端部が前記シール部材を介して前記検知棒保護管側に位置し、後端部が前記シール部を介して前記連結棒保護管側に位置する範囲に設定することが望ましい。
【0012】
また、上記構成に加え、前記検知棒と前記連結棒とを鎖状部材、または可撓性部材で接続するようにしても良い。さらに、前記連結棒保護管内部に、不活性ガスを充填するようにしても良い。
【0013】
上記第2の目的を達成するための本発明に係るレベル計測システムは、上記いずれかの構成を有するレベル計と、前記レベル計に備えられた動力部に対して電気信号を出力すると共に前記動力部の検出した測定尺の巻出し長さを電気信号として取得し、当該電気信号に基づいて測定尺の巻出し長さ、または加熱炉内における測定対象物の貯留レベルを算出する制御部と、前記制御部により算出された測定尺の巻出し長さ、または前記加熱炉内における測定対象物の貯留レベルを目視可能な状態に表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
また、上記のような特徴を有するレベル計測システムでは、前記制御部により、前記レベル計に備えられた開閉弁の開閉制御を行う構成とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記のような特徴を有するレベル計によれば、高温悪環境下であっても計測精度を高く保つことができ、比較的安価に製造することができる。また、測定尺と検知棒との間に連結棒を介在させ、測定尺の周囲雰囲気を清浄に保つような構成とすることにより、高温悪環境下であってもレベル計を長期的に使用することが可能となる。また、連結棒と検知棒とを鎖状部材等で接続する構成とすることによれば、外周を覆う保護管との接触抵抗を軽減することができ、誤計測を防止することができる。さらに、連結棒保護管の内部に不活性ガスを充填することによれば、連結棒保護管内部の気密性を向上させることができ、測定尺等が汚染されることを防止することができる。よってレベル計の長寿命化を図ることができる。
また、上記のような特徴を有するレベル計測システムによれば、作業者の労力を軽減すると共に安全に計測作業を実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明のレベル計、およびレベル計測システムに係る実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明に係る一部の実施形態であり、本発明の技術的範囲は、以下の実施形態のみに拘束されるものでは無い。
【0016】
まず、図6を参照して、本発明のレベル計、およびレベル計測システムが採用されるバイオマス処理施設400の概略構成について説明する。図6に示すバイオマス処理施設400は、有機性のバイオマス110を加熱処理し、可燃性のガスを抽出するための施設である。図6に示すバイオマス処理施設400は、バイオマス110から可燃性のガスを抽出するガス化ユニット410、抽出した可燃性ガスに含まれる余剰熱量を回収する熱回収ユニット420、および前記可燃性ガスを精製するガス洗浄ユニット430を基本として構成される。
【0017】
前記ガス化ユニット410には、3つの加熱炉と、本発明に係る分離装置130が備えられる。加熱炉は、バイオマス110を熱分解してガスを抽出するガス化炉100、ガス化炉100を介して抽出した熱分解ガスを水蒸気と反応させて改質を得る改質炉200、および改質炉に投入する熱媒体を予め加熱しておく予熱炉300の3つである。このような構成のガス化ユニット410では、それぞれの加熱炉100,200,300は次のような方法で加熱されている。なお、ここでいう熱媒体とは、種々検討の余地はあるが、例えばセラミックスボールなどであれば良い。
【0018】
まず、余熱炉300には、改質炉200、ガス化炉100を経て放熱された熱媒体が貯留されている。このため、余熱炉300の内部温度は、熱媒体の余熱により400℃程度には維持されている。ここで、熱媒体を反応炉である改質炉200の熱源として使用するためには、熱媒体の温度を1050℃〜1100℃程度にまで上昇させる必要がある。この際に余熱炉300の加熱に必要とされる熱量は、バイオマス110の残渣である炭化物(チャー)を燃焼させた際の燃焼熱により補われる。
【0019】
次に、改質炉200では、バイオマス110の熱分解により得られた抽出ガスと水蒸気とを反応させて可燃性ガス(例えば水素)を得るという反応が行われるため、炉の加熱温度としては850℃〜1050℃程度が必要とされる。このような改質炉200の加熱源には、上記予熱炉300により加熱された熱媒体が使用される。ここで、改質化された可燃性ガスは熱回収ユニット420に設置された廃熱ボイラ210へと搬送される。また、改質炉200の加熱源としての役目を終えた熱媒体は、ガス化炉100へと排出される。
【0020】
ガス化炉100は、バイオマス110を熱分解してガス化させるという役割を担うため、炉内温度としては400℃〜650℃程度が必要とされる。この温度は、上述した改質炉200の加熱温度に比べて十分に低いため、改質炉200で吸熱された熱媒体であっても、ガス化炉100の加熱源としては十分に利用することができる。このため、改質炉200から排出された熱媒体は、ガス化炉100の加熱源として再利用されることとなる。また、ガス化炉100には、熱回収ユニット420に設置された廃熱ボイラ210を介して抽出された水蒸気が供給され、この水蒸気は熱分解によって得られた抽出ガスの改質用として利用される。ここで、廃熱ボイラ210から供給される水蒸気は、改質炉200から搬送された可燃性ガスを冷却する際に発生したものである。ガス化されてチャーと化したバイオマス110と、バイオマス110のガス化により吸熱された熱媒体は、ガス化炉100から排出され、分離装置130へと投入される。
【0021】
分離装置130では、細粒化されたチャーと、粗粒のままの熱媒体とが分離される。そして、分離後のチャーは可燃物として燃焼炉120へ搬送されて熱エネルギーに変換され、熱媒体は予熱炉300へ搬送されて熱源として再利用されることとなる。
【0022】
上記のようなバイオマス処理施設400において、本発明のレベル計は、予熱炉300、改質炉200、およびガス化炉100の各加熱炉100(200,300)に配設される。
【0023】
図1は、本発明のレベル計に係る好適な実施形態の概略構成を示す図である。なお、図1(A)は待機時の形態、図1(B)は計測時の形態を示す図である。本実施形態のレベル計10は、検知棒12、連結棒14、動力部16、開閉弁26、検知棒保護管28、連結棒保護管32、およびシール部22とを基本として構成される。
【0024】
前記検知棒12は、上述した各加熱炉100内に挿入されて、その先端部12aを計測対象物である熱媒体に接触させる長尺の棒状部材である。このため、検知棒12の構成部材は、耐熱性を有する金属やセラミックス等とすると良い。なお、検知棒12の構成は、内部に空洞の無い無垢部材であっても良いし、パイプ部材の上下を閉塞して内部を空洞化したものであっても良い。構成材料としてパイプ部材を使用した場合には、検知棒12を軽量化することが可能となり、詳細を後述する動力部16への負荷を軽減することができる。
【0025】
前記連結棒14は、前記検知棒12の後端部12bと、詳細を後述する動力部16に巻出しまたは巻取りされる測定尺20とを連結する長尺の棒状部材である。連結棒14は加熱炉100内へ挿入されないため、その構成部材としては種々選択可能であるが、ゴムや軟性樹脂等伸縮性を有する弾性部材により構成することは避けることが望ましい。連結棒14は、検知棒12と測定尺20とを連結する部材であるため、当該部材の伸縮が計測精度の良否に影響を与えるからである。また、連結棒14の構成は、上記検知棒12と同様に、無垢部材を利用したものでも、パイプ部材を利用したものでも良い。なお、本実施形態では、連結棒14と前記検知棒12との接続に、鎖状構造を採ることとした。具体的には、鎖状部材(例えばシャックルや単なる鎖)24を利用して、連結棒14、検知棒12にそれぞれ設けられた連結孔を繋げるというものである(図2参照)。このような連結構造は、連結棒14と検知棒12との連結に自由度を持たせることとなり、詳細を後述する検知棒保護管28と検知棒12とが接触した際の抵抗を軽減することに貢献し、誤計測を防止することができる。
【0026】
前記動力部16は、その内部に少なくとも、測定尺20や当該測定尺20を巻取りまたは巻出しするための回転ドラム18、当該回転ドラム18を回転駆動させるためのモータ(不図示)、および前記測定尺20の巻出し長さを検出するために所定の巻出し間隔で電気信号(パルス)を出力する検出手段(不図示)を備えている。前記測定尺20としては、ナイロン等吸湿性の無い素材により構成されたテープや、当該テープと同じ素材あるいは金属性のワイヤ等、可撓性を有するものであれば良い。測定尺20の構成部材として吸湿性の無いものを使用することにより、湿度の影響を受けて測定尺20が伸縮し、これにより測定誤差が生ずることを防ぐことができる。前記モータとしては、詳細な送り動作を可能とするステッピングモータ等を採用すると良い。前記検出手段としては、前記モータの駆動信号を電気信号(パルス)として検出するものや、前記回転ドラム18の回転数を電気信号(パルス)として検出するもの等を挙げることができる。本実施形態の場合、前記測定尺20の先端には上述した連結棒14および検知棒12が接続される。このような構成とすることで、測定尺20の巻出しを行う際には測定尺20に所定の張力が働くこととなる。この張力は測定尺20の巻出しを行うモータに対しては、巻出し時の負荷として働くこととなる。
【0027】
ここで、測定尺20に吊下された検知棒12が、計測対象物(熱媒体)に接触すると、測定尺20に働く張力が弱まり、モータへの負荷が軽減されることとなる。動力部16のモータに対する負荷の軽減が検知されると、動力部16は測定尺20の巻出しを停止させる。このような構成とすることにより、測定開始時点からモータが停止する時点までの間に検出手段により検出されたパルス数に基づいて、測定尺20の巻出し長さを求めることが可能となる。なお、動力部16として汎用のものを採用する場合には、例えばサウンジング式レベル計を採用することができる。
【0028】
前記開閉弁26は、上述した各加熱炉100に設けられた計測用開口部104(204,304)に備えられ(図3参照)、加熱炉100内に前記検知棒12を挿入する際に前記計測用開口部104を開放するためのものである。開閉弁26としては、ボール弁を挙げることができ、好適には、電磁開閉式のボール弁を挙げることができる。電気信号によりボール弁の開閉を行うことが可能となれば、弁の開閉を遠隔操作で行うことが可能となり、弁を開閉するための労力を大幅に軽減することが可能となるからである。なお、開閉弁26は加熱炉の開口部(計測用開口部104)に直接備えられるため、耐熱性の高いものを採用することが望ましい。
【0029】
前記検知棒保護管28は、長尺である検知棒12を収容して保護すると共に、検知棒12を開閉弁26へと導くガイドとしての役割を担う管状体である。本実施形態の場合、検知棒保護管28の両端部にはそれぞれフランジ部28a,28bを形成し、当該フランジ部28a,28bを介して開閉弁26や詳細を後述する連結棒保護管32との接続を図るようにしている。
【0030】
前記連結棒保護管32は、長尺である連結棒14を収容して保護すると共に、内部に清浄領域を確保するための管状体である。本実施形態の場合、先端側に接続される検知棒保護管28との間に、詳細を後述するシール部22を介在させることにより、検知棒保護管28の内部空間30と連結棒保護管32の内部空間34との間の機密性を確保している。なお、連結棒保護管32の後端側には、上記動力部16が接続される。また、連結棒保護管32の両端部にも、上述した検知棒保護管28と同様なフランジ部32a,32bが形成されており、検知棒保護管28および動力部16との接続は、当該フランジ部32a,32bを介して成されている。
【0031】
前記シール部22は、上記連結棒14を挿通させつつ、上記検知棒保護管28の内部空間30と上記連結棒保護管32の内部空間34との間に機密性を確保するための役割を担う。具体的構成は、図2に示すようなものである。すなわち、座金22aと、この座金22aに備えられるダストシール22eと、このダストシール22eを押えるダストシール押え22bと、前記座金22aと前記ダストシール押え22bを挟み込む一対のパッキン22c,22dとから構成される。
【0032】
ここで、前記連結棒14は、前記シール部22に形成された孔に貫通させるように配置している。このような配置形態とすることで、連結棒14の先端部14aは検知棒保護管28側、後端部14bは連結棒保護管32側に位置するような構成となる。このように配置された連結棒14は、動力部16による測定尺20の巻出し、巻取りに伴って前記シール部22に形成された孔に摺動することとなるが、連結棒14の摺動範囲は、連結棒14における胴部の範囲に限られる。すなわち、連結棒14全体が検知棒保護管28側、あるいは連結棒保護管32側に移動されることは無いのである。これを実現するための具体的な構成としては、連結棒14の両端部に摺動範囲を制限するためのストッパ(不図示)を設けるようにすることを挙げることができる。
【0033】
また、前記検知棒12は、上記のように配置された連結棒14に接続され、開閉弁26を介して検知棒保護管28の外部へ突出され、加熱炉100の内部に挿入されることとなる。この際、加熱炉100に対する検知棒12の挿入範囲は、少なくとも検知棒12の後端部12bが検知棒保護管28の内部空間30に残存する範囲とし、検知棒12全体、あるいは連結棒14の一部が加熱炉100の内部に挿入されることが無いように設定する。このため、検知棒12の後端部12bには検知棒12が検知棒保護管28から抜け出ることを防止するストッパ(不図示)を設けるようにしても良い。なお、連結棒14の摺動範囲、検知棒12の挿入範囲の制限に関しては、動力部16におけるモータの回転回数等により制御するようにしても良い。
【0034】
上記のような構成のレベル計10を用いて貯留レベルの計測を行う場合、次のような工程を経ることとなる。まず、開閉弁26を開放して、検知棒12を検知棒保護管28から突出させることが可能な状態とする。次に、動力部16に電気信号を与えて測定尺20の巻出しを行わせる。測定尺20に接続されている連結棒14、および検知棒12は、いわゆる錘の役割を果たすため、巻出された測定尺20には所定の張力が付与された状態が継続することとなる。測定尺20の巻出しが成されている間、動力部16における検出手段からは、所定の間隔でパルスが出力される。測定尺20の巻出しにより検知棒保護管28から突出した検知棒12の先端が計測対象物に接触すると、測定尺20に付与されていた張力が弱まる。動力部16ではこの張力の弱まり、すなわちモータに対する負荷の軽減を受けて、測定尺20の巻出しを停止する。
【0035】
レベル計測は、測定尺20の巻出しが停止するまでの間に検出手段から出力されたパルスに基づいてその長さ(距離)を逆算することにより成される。動力部16は、測定尺20の巻出しを停止した後、測定尺20の巻取りを行う。測定尺20の巻取りにより検知棒12が検知棒保護管28の内部に収容された後、開閉弁26が閉じられる。
【0036】
このような構成のレベル計10によれば、高温悪環境下に晒されるのは耐熱性を備えた検知棒12のみで、検知棒12が高温悪環境下に晒されるのは計測時に限られる。また、耐熱性の低い測定尺20は、連結棒14を介して連結棒保護管32の内部にて巻出し、巻取りが成されることとなる。さらに、連結棒14が出入りする連結棒保護管32の内部空間34は、シール部22により機密性が保たれる構造とされているため、加熱炉100内で生ずる燃焼ガスや燃焼ガス等に含まれるタール等が動力部16の本体や測定尺20に付着することが無い。さらにまた、レベル計測時以外は、開閉弁26が閉じられているため、その間に熱や燃焼ガスによる影響を受けることが無い。このため、上記のようなレベル計10では、高温悪環境下であっても、計測精度を高く保つことができる。また、動力部16として汎用のサウンジングレベル計を使用することができるため、設備コストも比較的安価に抑えることが可能となる。
【0037】
上記実施形態では、連結棒14と検知棒12との接続に鎖状部材24を採用していた。しかしながら、両者の接続部材としては、延びの無いワイヤやテープ等の可撓性部材であっても良い。また、上記実施形態では、連結棒保護管32の内部空間34は、単に気密性を保持する構造としているが、当該内部空間34に窒素や希ガス等の不活性ガスを充填し、内部空間34をガスシールするような構成とすることもできる。このような構成とすることにより、連結棒保護管32の内部空間34の気密性を高めることが可能となる。
【0038】
次に、上記のような構成のレベル計10を上述したバイオマス処理施設400へ適用する場合におけるレベル計測システムについて、図3を参照して説明する。
各加熱炉100(200,300)の上部には、熱媒体供給用の開口部102(202,302)の他に計測用開口部104(204,304)が設けられている。計測用開口部104は、水平面に対して垂直に設けるようにしても良いが、本実施形態の場合、傾斜角θをもって配置するようにしている。計測用開口部104の配置をこのような形態とすることにより、長尺としたレベル計10が、上部に配置された施設設備(例えばガス化炉100の場合、その上部に配置された改質炉200等)と干渉することを避けることができる。また、加熱炉100内に供給される熱媒体は粒状物であるため、貯留に際しては安息角が生ずることとなる。このため、計測用開口部104に傾斜角θを付与することで、安息角を持って貯留された熱媒体に対して検知棒12を接触させる角度を、90°に近づけることが可能となり、計測上都合が良い。
【0039】
上記構成のレベル計10は、上記のような計測用開口部104に接続される。接続は、レベル計10の開閉弁26に設けられたフランジ部と、計測用開口部104に設けられたフランジ部とをボルト止めすることによれば良い。
【0040】
本レベル計測システム50におけるレベル計10には、コントロールユニット54と表示カウンタ56(56a〜56c)が備えられている。コントロールユニット54は、レベル計10に備えられた開閉弁26に対する開閉信号の出力や、動力部16に対する計測開始信号の出力、並びに動力部16における検出手段から出力されるパルスの取得、および取得したパルスに基づく貯留レベルの算出等を行う制御部である。コントロールユニット54には少なくとも、各加熱炉100に備えられたレベル計10に対して計測開始の信号、および開閉弁26を開閉させるための信号を出力するための操作手段(釦等)54(54a〜54c)が設けられている。
【0041】
前記表示カウンタ56は、コントロールユニット54によって算出された熱媒体の貯留レベルを目視可能な状態として表示する表示手段である。貯留レベルの表示形態としては、測定尺20の巻出し長さを直接表示するものや、加熱炉100の全長(深度)から測定尺20の巻出し長さを引いた値を表示するもの等を挙げることができる。
【0042】
なお、図3に示すコントロールユニット54は、1つのユニットに3つの操作手段54を設け、予熱炉300、改質炉200、ガス化炉100における熱媒体の貯留レベルを個別に計測可能な構成としているが、操作手段54を1つとして全ての加熱炉100,200,300における貯留レベルを同時に計測する構成としても良い。また当然に、コントロールユニット54を3つに分割する構成としても良い。さらに、図3では、コントロールユニット54と表示カウンタ56をそれぞれ個別のユニットとして設けるように示しているが、これらに替えてコンピュータ(不図示)を導入し、貯留レベルの表示や計測開始信号の出力等をコンピュータにより一括制御するようにしても良い。
【0043】
上記のようなバイオマス処理施設400に、上記のようなレベル計測システム50を導入することによれば、各加熱炉100内における熱媒体の貯留レベルの計測は、作業者がコントロールユニット54またはコンピュータにおける計測開始釦(操作手段54)を押すだけで実施することが可能となる。これにより、作業者の労力は大幅に削減されることとなる。また、コントロールユニット54や表示カウンタ56、並びにコンピュータ等は、加熱炉100との間に距離をおいた遠隔地に設置した管理室52等に配備することができるため、貯留レベルの計測にあたり、作業者が火傷や燃焼ガスの吸引等といった危険に晒されることを無くすことができる。なお、上記実施形態では、レベル計10における開閉弁26の開閉についてもコントロールユニット54で操作する旨記載したが、開閉弁26の操作のみを作業員が行うようにしても良い。このような構成とすることで、設備コストを抑えることができる。また、上記実施形態では、熱媒体の貯留レベルの計測は、逐次作業員が操作手段54を操作することで成される旨記載したが、タイマを設けることにより、予め定められた間隔毎に自動でレベル計測を実施するような構成としても良い。
【0044】
上記実施形態に示したレベル計10は、本発明を実施するにあたって最も好適な実施形態とすることができる。しかし、本発明のレベル計に係る実施形態としては、図4や図5に示す形態のものも含めることができる。
【0045】
図4や図5に示す実施形態は、それぞれ上記実施形態に係るレベル計10の構成を簡略化したものである。このため、その構成の殆どは、図1に示すレベル計10の構成に含まれる。よってその機能と同一とする箇所には図面に同一の符号を付してその説明を省略することとする。
【0046】
図4(A)、(B)に示す実施形態は、連結棒14と検知棒12とを一体に構成したものである。このような構成とすることにより、構成部品の点数を減らすことができるため、構造を簡略化することが可能となり、組付け等に要する工数も減らすことができる。このような構成のレベル計10は、レベル計10の設置角度を、水平面に対して垂直とする場合や、検知棒12の挿入長さが比較的短くて良い場合、すなわち検知棒12を比較的短尺とすることができる場合等に有効である。
【0047】
また、図5(A)、(B)に示す実施形態は、連結棒14と連結棒保護管32、およびシール部22を廃し、構成を極めて単純化した場合の構成を示すものである。このような構成とした場合には、製造コストを大幅に低減することが可能となる。このような形態のレベル計10は、検知棒保護管28の内部空間30に燃焼ガス等が侵入する度合が少ない場合、すなわち計測周期が長い場合や、使用頻度が少ない場合などに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のレベル計に係る好適な実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るレベル計におけるシール部の構成を示す図である。
【図3】本発明のレベル計測システムの概略構成を示す図である。
【図4】実施形態に係るレベル計の構成を簡略化した場合の例を示す図である。
【図5】図4に示す形態のレベル計をさらに簡略な構成とした場合の例を示す図である。
【図6】本発明のレベル計、およびレベル計測システムが用いられるバイオマス処理施設の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10………レベル計、12………検知棒、14………連結棒、16………動力部、20………測定尺、22………シール部、24………鎖状部材、26………開閉弁、28………検知棒保護管、32………連結棒保護管、50………レベル計測システム、54………コントロールユニット、56(56a〜56c)………表示カウンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内に貯留された測定対象物の貯留レベルを計測するためのレベル計であって、
前記加熱炉内に挿入して先端部を測定対象物に接触させる検知棒と、
前記検知棒を吊下する測定尺を備えて電気信号の付与により前記測定尺の巻取りまたは巻出しを行うと共に前記測定尺の巻出し長さを検出し、前記測定尺を牽引する張力の軽減により前記測定尺の巻出し動作を停止させる動力部と、
前記加熱炉の開口部に設けられて前記検知棒を加熱炉内に挿入する際に開放される開閉弁と、
前記動力部と前記開閉弁との間に設けられて前記検知棒の周囲を覆う検知棒保護管とを有し、
前記加熱炉に対する前記検知棒の挿入深さを、当該検知棒の後端部が前記検知棒保護管内部に残留する範囲に設定したことを特徴とするレベル計。
【請求項2】
前記検知棒と前記測定尺との間に設けた連結棒と、
前記検知棒保護管と前記動力部との間に設けた連結棒保護管と、
前記検知棒保護管と前記検知棒保護管との間に設けたシール部材とを有し、
前記連結棒の往復範囲を、当該連結棒の先端部が前記シール部材を介して前記検知棒保護管側に位置し、後端部が前記シール部を介して前記連結棒保護管側に位置する範囲に設定したことを特徴とする請求項1に記載のレベル計。
【請求項3】
前記検知棒と前記連結棒とを鎖状部材、または可撓性部材で接続したことを特徴とする請求項2に記載のレベル計。
【請求項4】
前記連結棒保護管内部に、不活性ガスを充填したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のレベル計。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載のレベル計と、
前記レベル計に備えられた動力部に対して電気信号を出力すると共に前記動力部の検出した測定尺の巻出し長さを電気信号として取得し、当該電気信号に基づいて測定尺の巻出し長さ、または加熱炉内における測定対象物の貯留レベルを算出する制御部と、
前記制御部により算出された測定尺の巻出し長さ、または前記加熱炉内における測定対象物の貯留レベルを目視可能な状態に表示する表示手段とを備えたことを特徴とするレベル計測システム。
【請求項6】
前記制御部により、前記レベル計に備えられた開閉弁の開閉制御を行う構成としたことを特徴とする請求項5に記載のレベル計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−128717(P2008−128717A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311501(P2006−311501)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(394010193)宇部テクノエンジ株式会社 (37)
【Fターム(参考)】