説明

レポーター遺伝子アッセイ用細胞及びその製造方法

【課題】レポーター遺伝子アッセイ用細胞及びその製造方法を提供する。
【解決手段】3’又は5’側変異loxP配列と、loxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、5’又は3’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記5’又は3’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された受容体遺伝子と、前記受容体遺伝子から発現する受容体の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子とを有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの受容体遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法、及び前記製造方法により得られるレポーター遺伝子アッセイ用細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受容体遺伝子又は転写因子遺伝子と、その応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子とがゲノム上に安定に導入されたレポーター遺伝子アッセイ用細胞及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核内受容体はリガンド(基質)誘導性転写制御因子であり、各受容体に特異的な標的遺伝子のプロモーター領域に結合する。この結合により核内受容体は標的遺伝子の発現を正負に制御し、外因性物質(薬剤、化学物質)や内因性物質(ステロイド、グルコース、脂質)の代謝等に重要な役割を果たしている。
【0003】
近年、核内受容体と肥満、糖尿病、がん、高脂血症、動脈硬化、免疫機能障害等の生活習慣病との関連性が明らかにされつつある。核内受容体は創薬ターゲットして大きく注目され、受容体に作用するリード化合物のスクリーニングが盛んに行われている。医薬品開発の初期段階では、ヒトに薬効がありかつ副作用の少ないリード化合物を膨大な類型化合物から如何に短時間で見出すかが重要である。このようなリード化合物はごく少量しかないことが多く、短時間かつ少量で評価できるヒト培養細胞を用いたin vitroスクリーニング系は非常に有効な試験として用いられている。ヒト培養細胞を用いたin vitroスクリーニング系試験としてはレポーター遺伝子アッセイが汎用的である。しかし、現行のレポーター遺伝子アッセイではそれぞれの受容体を産生するために必要な遺伝子を試験毎に細胞内で発現させるなど煩雑な作業が必要であるため、再現性のあるデータを得にくい状況にある。
【0004】
ところで、細胞内に外来のDNA配列を導入する方法として、あらかじめ所定の配列を有するアクセプトベクターを細胞のゲノム上に導入しておき、当該ベクターと外来DNAが挿入されたドナーベクターとの間で組換え酵素を作用させる方法が知られている。例えば、特許文献1には、loxP配列と変異を導入したloxP配列とを有するアクセプトベクターのlox部位にドナーベクターの配列を挿入する方法が記載されている。この方法により得られる細胞はノックアウトを目的としており、細胞が本来有している所定の遺伝子が破壊されている。そのため、この文献に記載の方法をそのままレポーター遺伝子アッセイに供する細胞の製造に適用することはできない。
【特許文献1】特開2002−369689号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、細胞の機能を喪失しないゲノム上の所定位置に挿入してあるアクセプトベクターと、目的とする受容体遺伝子又は転写因子遺伝子、その応答配列、及びレポーター遺伝子が挿入してあるドナーベクターとを組換えることにより、これらの配列が安定に導入されたレポーター遺伝子アッセイ用細胞及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、loxP配列と変異が導入されたloxP配列とを有するアクセプトベクターとドナーベクターとを、Cre酵素を用いて組換えることにより、所望の受容体遺伝子等の配列が所定位置に安定に挿入された細胞が容易に得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
【0008】
〔1〕 両側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列と、受容体遺伝子と、前記受容体遺伝子から発現する受容体の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子とが、ゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞であって、前記受容体遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子が、両側変異loxP配列とloxP配列との間に安定に挿入されたレポーター遺伝子アッセイ用細胞。
【0009】
〔2〕 両側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列と、転写因子遺伝子と、前記転写因子遺伝子から発現する転写因子の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子とが、ゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞であって、前記転写因子遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子が、両側変異loxP配列とloxP配列との間に安定に挿入されたレポーター遺伝子アッセイ用細胞。
【0010】
〔3〕 両側変異loxP配列が配列番号4で示されるlox71/66配列である〔1〕又は〔2〕に記載のレポーター遺伝子アッセイ用細胞。
【0011】
〔4〕 受容体遺伝子がアンドロゲン受容体を発現する遺伝子であり、応答配列がアンドロゲン受容体の応答配列である〔1〕に記載のレポーター遺伝子アッセイ用細胞。
【0012】
〔5〕 3’側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、5’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記5’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された受容体遺伝子と、前記受容体遺伝子から発現する受容体の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と、を有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの受容体遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【0013】
〔6〕 5’側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、3’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記3’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された受容体遺伝子と、前記受容体遺伝子から発現する受容体の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と、を有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの受容体遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【0014】
〔7〕 3’側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、5’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記5’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された転写因子遺伝子と、前記転写因子遺伝子から発現する転写因子の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と、を有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの転写因子遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【0015】
〔8〕 5’側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、3’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記3’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された転写因子遺伝子と、前記転写因子遺伝子から発現する転写因子の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と、を有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの転写因子遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【0016】
〔9〕 3’側変異loxP配列が配列番号1で示されるlox66配列であって、5’側変異loxP配列が配列番号2で示されるlox71配列である〔5〕〜〔8〕のいずれかに記載のレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【0017】
〔10〕 〔1〕又は〔2〕に記載の細胞に化学物質を作用させ、前記細胞が産生したレポータータンパク質の発現強度を測定することにより化学物質の転写活性化能を評価するレポーター遺伝子アッセイ。
【0018】
〔11〕 〔1〕に記載の細胞に化学物質とリガンドとを作用させ、前記細胞が産生したレポータータンパク質の発現強度を測定することによりリガンドの転写活性化能に対する化学物質の阻害能を評価するレポーター遺伝子アッセイ。
【0019】
〔12〕 〔2〕に記載の細胞に化学物質と誘導物質とを作用させ、前記細胞が産生したレポータータンパク質の発現強度を測定することにより誘導物質の転写活性化能に対する化学物質の阻害能を評価するレポーター遺伝子アッセイ。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、ゲノム上の内在性遺伝子を破壊しない領域に予め導入してあるアクセプトベクターの位置に目的とする受容体遺伝子又は転写因子遺伝子を組換え酵素により導入するので、細胞が本来有している機能を損なうことなく効率よくレポーター遺伝子アッセイ用細胞を得ることができる。組換え位置にloxP配列とloxP配列に変異を導入した配列とを組み合わせて使用することにより、遺伝子導入後の脱落率が低く、継代を重ねても安定に所望の受容体遺伝子等が保持された細胞を得ることができる。
【0021】
この細胞を用いたレポーター遺伝子アッセイにより、化学物質の細胞に対する転写活性化能や阻害能が容易に判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1を参照して本発明のDNA導入方法を説明する。
【0023】
DNAを導入する細胞(親株)1には、予め配列3(lox71配列)と、配列8(loxP配列)とを有するアクセプトベクター7が安定に挿入してある。
【0024】
loxPは大腸菌P1ファージ由来の配列で、図2に示すように、5’末端から3’末端へむかって順に、左側反復配列、スペーサ配列、右側反復配列の3つの領域で構成されることが知られている。loxPの配列は、5’末端から3’末端方向の配列と、3’末端から5’末端方向の配列が、互いに相補的であり、左側反復配列と右側反復配列の間で組換えが起こる。
【0025】
lox71は配列番号2で示される塩基配列で、loxPの左側反復配列の一部に変異が導入された配列である。
【0026】
細胞1におけるアクセプトベクター7の挿入位置は、ゲノム上のタンパク質発現に関与しない領域、即ちエキソンとイントロンを含まない領域とする。ゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域としては、非翻訳領域、遺伝子間DNAの領域等を挙げることができる。
【0027】
アクセプトベクター7には、lox71、loxPの他に、マーカー遺伝子5や、マーカー遺伝子5発現のためのプロモータ4、マーカー遺伝子の転写終結シグナル6等の他の配列が挿入されていてもよい。マーカー遺伝子としては公知のものを使用できるが、例えばゼオシン耐性遺伝子、ブラストシジン耐性遺伝子等を挙げることができる。
【0028】
上記アクセプトベクターを有する細胞1(親株)は、例えば以下の方法により製造することができる。
【0029】
まず、lox71配列と、loxP配列とを有するアクセプトベクターを含むDNA断片を、制限酵素等を用いた公知の方法により作製する。次に、このDNA断片を電気刺激により哺乳類培養細胞(HeLa細胞等)のゲノムへ導入する。アクセプトベクターにマーカー遺伝子が導入してある場合には、導入してあるマーカー遺伝子に応じて薬剤を添加した培地で細胞を培養し、マーカー遺伝子がゲノムに導入された細胞が形成するコロニーを選択する。得られた細胞についてサザンブロット法、PCR法等によるゲノム解析を行い、ゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域にアクセプトベクターが1コピー導入されたクローンを選定し、細胞1(親株)とする。
【0030】
一方、ドナーベクター9は、図1中10で示されるlox66配列と、22で示されるloxP配列とを有している。lox66は配列番号1で示される塩基配列で、loxPの右側反復配列の一部に変異を導入した配列である。ドナーベクターのlox66とloxPとの間には、受容体発現ユニット14と、レポータータンパク質発現ユニット18とが挿入してある。
【0031】
ここで、受容体発現ユニット14は、所望の受容体を発現する配列であって、少なくとも目的とする受容体遺伝子16と、前記受容体発現のためのプロモーター15と、転写終結シグナル17とを有する配列である。レポータータンパク質発現ユニット18は、少なくとも受容体発現ユニット14から発現した受容体がリガンドとの結合により構造変化を受けて結合する結合応答配列を含む転写制御領域19と、その下流に導入されたレポーター遺伝子20と、転写終結シグナル21とを有する配列である。
【0032】
レポーター遺伝子20は、発現強度が高感度で測定できるレポータータンパク質を発現させる遺伝子であれば特に制限されないが、例えば、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein; GFP)、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescent Protein; RFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescent Protein; YFP)等の蛍光遺伝子;ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子等の酵素活性遺伝子等を例示できる。
【0033】
ドナーベクター9に導入されたlox66配列とloxP配列との間には、マーカー遺伝子12、マーカー遺伝子発現のためのプロモータ11、マーカー遺伝子の転写終結シグナル13等を有していてもよい。マーカー遺伝子としては、細胞1に導入してあるマーカー遺伝子2、5と異なる公知のものが使用できる。
【0034】
ドナーベクター9は例えば以下のようにして調製することができる。
【0035】
まず、lox66とloxPとの間に少なくとも受容体発現ユニットと、レポータータンパク質発現ユニットとが導入されたDNA断片を、制限酵素等を用いた公知の方法により作製する。次いで、プラスミド、ファージ等の公知のベクターとDNA断片とを同じ制限酵素で処理し、それぞれの粘着末端同士をDNAリガーゼでつなぎ合わせることにより調製する。
【0036】
細胞1への受容体発現ユニット14とレポータータンパク質発現ユニット18の導入は、細胞1のアクセプトベクター7と細胞1へ導入したドナーベクター9に組換え酵素25を作用させて、アクセプトベクター7と、ドナーベクター9との間でDNAを組換えることにより行う。
【0037】
ドナーベクター9の細胞1への導入は、トランスフェクト等の公知の方法により行う。
【0038】
組換え酵素25としては、Cre酵素を使用する。Cre酵素は、2本鎖loxPのスペーサ配列を切断し、粘着末端同士を結合して組換えを行う酵素である。loxPの塩基対にCre酵素を作用させたときの切断位置を図2に示す。
【0039】
Cre酵素をアクセプトベクター7とドナーベクター9に作用させるに際しては、Cre酵素発現ベクターを公知の方法により細胞1へ導入する方法やCre酵素を添加した培地で細胞1を培養する方法等が採用できる。
【0040】
Cre酵素は、組み換えを行う2つのloxPのうち一方又は両方を、左側反復配列又は右側反復配列のいずれかに変異が導入された変異loxP配列に置き換えた場合であっても、スペーサ配列の切断、結合を行う作用を有している(但し、2つのloxPの両方に変異loxPを使用する場合であって、変異の導入位置が左側反復配列同士又は右側反復配列同士の組み合わせである場合を除く)。従って、loxPとlox71、loxPとlox66、lox71とlox66の間でも、loxP同士の場合と同様に配列の組換えが行われる。
【0041】
アクセプトベクター7とドナーベクター9にCre酵素を作用させると、アクセプトベクターのlox71とドナーベクターのlox66、アクセプトベクターのloxPとドナーベクターのloxPの間でCre酵素による組換えがおこる。その結果、ドナーベクター9のlox66とloxPの間の配列11、12、13、15、16、17、19、20、21がゲノムに安定に組み込まれた細胞(子株)26を得る。
【0042】
この組換えにより、細胞26のドナーベクターに由来するこれらの配列の両端には、図1中、24で示されるlox71/66配列と、23で示されるloxP配列とが形成される。lox71/66配列は、スペーサ配列の両端に、それぞれlox71の左側反復配列と、lox66の右側反復配列を有する配列である。lox71/66の塩基配列を配列番号4に示す。
【0043】
loxPの左側反復配列と右側反復配列の両方に変異が導入されたlox71/66配列にはCre酵素はほとんど作用しない。そのため、細胞26からの受容体発現ユニット14、レポータータンパク質発現ユニット18の脱落はごく僅かで、ゲノム上にこれらのユニットが安定に導入された細胞26を高い収率で得ることができる。本発明において「安定に」とは、細胞分裂の過程で所定の塩基配列が少なくとも4代以上にわたって脱落せず保持される状態をいう。
【0044】
なお、図1においては、アクセプトベクターの配列3にlox71、ドナーベクターの配列10にlox66を使用する場合について示したが、配列3にlox66、配列10にlox71を使用する場合についても図1の場合と同様に受容体発現ユニット14とレポータータンパク質発現ユニット18とを細胞1に導入することができる。
【0045】
また、アクセプトベクターの配列3はLoxP、配列8はlox71であってもよく、ドナーベクターの配列10はloxP、配列22はlox66であってもよい。
【0046】
更に、アクセプトベクターの配列3にはlox71に代えてloxPの左側反復配列の2〜7塩基が変異した5’側変異loxPを、ドナーベクターの配列10にはlox66に代えてloxPの右側反復配列の2〜7塩基が変異した3’側変異loxPを使用することが可能である。但し、5’側変異loxPのスペーサ配列から5’末端へ向かう塩基配列と、3’側変異loxPのスペーサ配列から3’末端へ向かう塩基配列が同じ配列となる組み合わせは、ユニット14,18がゲノムから脱落する割合が高くなるので、異なる組み合わせを選択することが好ましい。
【0047】
配列3に5’側変異loxPを、配列10に3’側変異loxPを使用した場合の配列24は、スペーサ配列の両端に5’側変異loxPの左側反復配列と3’側変異loxPの右側反復配列とを有する両側変異loxP配列である。
【0048】
5’側変異loxPと3’側変異loxPの一例を以下に示す。以下の配列中、小文字で示した塩基は、loxP配列と異なる塩基である。
【0049】
〔5’側変異loxP〕
(a) 5'-AatgCaTgcTATA GCATACAT TATACGAAGTTAT-3'(配列番号5)
(b) 5'-taccgggCGTATA GCATACAT TATACGAAGTTAT-3'(配列番号6)
(c) 5'-tagcgTTCGTATA GCATACAT TATACGAAGTTAT-3'(配列番号7)
(d) 5'-taccgggCGTATA GCATACAT TATACGAAGTTAT-3'(配列番号8)
〔3’側変異loxP〕
(a) 5'-ATAACTTCGTATA GCATACAT TATAgGtAccgAg-3'(配列番号9)
(b) 5'-ATAACTTCGTATA GCATACAT TATACGcccggta-3'(配列番号10)
(c) 5'-ATAACTTCGTATA GCATACAT TATACGcAcggta-3'(配列番号11)
(d) 5'-ATAACTTCGTATA GCATACAT TATAgGtAccgta-3'(配列番号12)
(e) 5'-ATAACTTCGTATA GCATACAT TATACGtAccggg-3'(配列番号13)
【0050】
一般に、組換え用ベクター(ドナーベクター)には、目的ベクターが導入された陽性クローンを選別するために必要な薬剤耐性遺伝子発現ユニットと、目的とするトランスジーン発現ユニットの2つのユニットが必要である。本発明においては、クローン選別のための薬剤耐性遺伝子に加え、受容体発現ユニットと、レポータータンパク質発現ユニットの合計3つの発現ユニットが必要となる。一つのベクター内に2つ以上のプロモーターと転写終結シグナルとを配し、発現させる場合、プロモーター同士の干渉により発現効率が下がるという報告がある(エステルハス エス ケイ等(Eszterhas SK et al.), モレキュラー アンド セルラー バイオロジー(Molecular and Cellular Biology) 2002 Jan;22(2):469-479.参照)。さらに、DNAコンストラクトを作製する際、プラスミドとして構築できるDNAサイズは最大10〜15kbであり、3つの発現ユニットを一つのプラスミド内に配置するにはサイズ的に問題になる場合がある。そこで、本発明においては、米国特許第4937190号に記載のIRES(インターナルリボソーマルエントリーサイト:Internal ribosomal entry site)等を用いて、一つのプロモーターから2つの遺伝子を発現させるように構築したドナーベクターを使用してもよい。
【0051】
得られた細胞26内においては、受容体発現ユニット14から受容体が発現する。受容体遺伝子16としては、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体、レチノインX受容体、ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体、グルココルチコイド受容体、プロゲステロン受容体、肝臓X受容体、ファーネソイドX受容体、外来異物応答性受容体、構成的アンドロスタン受容体等の核内受容体を発現させる公知の遺伝子を使用することができる。具体的には、アンドロゲン受容体を発現する遺伝子として特開2005-73517号公報記載の遺伝子を、エストロゲン受容体を発現する遺伝子として特開2004-357558号公報記載の遺伝子を挙げることができる。
【0052】
受容体が発現している細胞に化学物質を作用させると、化学物質がリガンドとして作用する場合には、受容体のリガンド結合ドメインに化学物質が特異的に結合し、受容体の構造変化を惹起する。化学物質が結合して構造変化した受容体は、応答配列に結合し、その下流にある遺伝子の転写を促進する。応答配列の下流にはレポーター遺伝子が導入されているので、細胞内にはレポーター遺伝子に基づいた性質を有するレポータータンパク質が発現する。細胞から発現したタンパク質の蛍光、酵素活性等を測定してレポータータンパク質の発現強度を検知することにより、化学物質の受容体に対する活性化能を評価することができる。
【0053】
化学物質の主な作用としては、受容体に結合してそれらの支配下に置かれている遺伝子を転写活性化する作用と、受容体に結合することによりリガンド(ホルモン等)が受容体に結合するのを阻害して遺伝子の転写活性化を阻害する作用の2つが知られている。
【0054】
細胞に化学物質とともにリガンドを作用させることにより、リガンドの転写活性化作用に対する化学物質の阻害能を評価することができる。
【0055】
細胞に作用させた化学物質が細胞中で発現している受容体のリガンド結合ドメインに結合し、且つ受容体の構造変化を起こさない場合には、レポータータンパク質は発現しない。従って、細胞にリガンドのみを作用させた場合とリガンドと化学物質とを作用させた場合のレポータータンパク質の発現強度を比較することにより、化学物質の阻害能が評価できる。
【0056】
図1に示すドナーベクター9の受容体遺伝子16に代えて転写因子遺伝子を使用することにより、転写因子遺伝子を組み込んだ細胞26を得ることができる。転写因子遺伝子を使用する場合、転写制御領域19の応答配列は、当該転写因子遺伝子から発現する転写因子が誘導物質により化学修飾又は切断された後結合する配列を使用する。
【0057】
転写因子遺伝子としては、公知の転写因子、例えばNF-kB、c-Fos、c-Jun、p53、c-Myc等を発現する遺伝子が使用できる。
【0058】
転写因子遺伝子が導入された細胞についても受容体遺伝子が導入された細胞と同様の方法で、化学物質の転写活性化能と、誘導物質の転写活性化能に対する化学物質の阻害能を評価することができる。
【実施例】
【0059】
製造例1
(1)ベクターの作成
Lox66配列とloxP配列にそれぞれSpeI配列とBamHI配列を付加したプライマーを合成し、pDNR-1Rを鋳型にPCR反応によって増幅した。プライマー配列は以下の通りである。
【0060】
[プライマー配列]
・5'SpeI-lox66 (forward primer); 5'-ccTacTagTCCATTTTAGCTTCC-3'(配列番号14)
・3'SpeI-lox66 (reverse primer); 5'-GGTActaGTGGACGTCGCGGCCGCtaccgTTCGTAT
AATG-3'(配列番号15)
・5'BamHI-loxP (forward primer); 5'-cccggaTCCATTTTAGCTTCC-3'(配列番号16)
・3'BamHI-loxP (reverse primer); 5'-gtcggAtccTAGTGAACGGCAGG-3'(配列番号17)
但し、小文字で表された塩基は鋳型となったpDNR-1rの配列に対して、変異を導入した箇所を表す。
【0061】
PCR増幅されたlox66-SpeI断片およびloxP-BamHI断片は、それぞれ対応する制限酵素で消化した後、pIREShyg (Clontech社製)のSpeIおよびpGL3/ARE (武吉等(Takeyoshi M, et al.), アーカイブズ オブ トキシコロジー(Archives of toxicology) 2003 May;77(5):274-279.)のBamHIサイトへそれぞれ導入し、p66IREShygおよびpGL3/AREPを構築した(図3)。
【0062】
導入した各lox配列については、シーケンス解析によりDNA配列と挿入の向きを確認した。続いて、pGL3/AREPベクターをKpnIおよびSalIサイトで消化後、Klenow酵素により平滑末端化した約2.3 kbのDNAフラグメントをXhoIサイトで消化後Klenow酵素により平滑末端化したp66IREShygベクターへライゲーションして、pAREIREShygPベクターを得た(図4)。次にpcDNA/hAR (武吉等(Takeyoshi M, et al.), アーカイブズ オブ トキシコロジー(Archives of toxicology) 2003 May;77(5):274-279.)を鋳型にPCR反応によって、両端にBsiWIサイトが付加したhuman AR ORFを増幅した。用いたプライマー配列は以下の通りである。
【0063】
[プライマー配列]
・5'BsiWI-hAR (forward primer); 5'-aagcgtacgATGGAAGTGCAGTTAGGGC-3'(配列番号18)
・3'BsiWI-hAR (reverse primer); 5'-ttgcgtacgTCACTGGGTGTGG-3'(配列番号19)
増幅された約2.4kbのAR ORFフラグメントはBsiWIで切断した後、pIREShygAREPベクターのBsiWIサイトに導入し、pARIhygAREP (11.1kb)を構築した。導入したhuman AR ORF配列はシーケンス確認を行った。
【0064】
(2)組換え体の製造
AR/ARE-Luc組換え体を作製するために、(1)で作製したpARIhygAREPベクターとCre酵素発現ベクター(東京大学 齋藤泉教授より提供)をHeLa55細胞株にコトランスフェクトした。トランスフェクト24時間後に、細胞をトリプシン処理によって剥離した後、10cmデイッシュに播き直すと同時に50 mg/mlハイグロマイシンで培養した。3日ごとに100、150、200 mg/mlと培地中のハイグロマイシン濃度を上昇させ、約2週間培養した。2週間後に生き残ったクローンは約14個であった。出現した細胞コロニーは実態顕微鏡下で単離し、その後の解析のために培養・増殖させた。
【0065】
試験例1(RT-PCRによるAR遺伝子の発現量確認)
製造例1で単離した14種類の細胞クローンにおけるアンドロゲン受容体(AR)遺伝子の発現量を測定するために、RT-PCR解析を行った。以下に用いたARに特異的なプライマー配列を示す。なお、リファレンスとしてβ-アクチン(β-actin)の発現量を測定した。
【0066】
[プライマー配列]
・hAR-RT-S1 (forward primer); 5'- cgatccttcaccaatgtcaac-3'(配列番号20)
・hAR-RT-A1 (forward primer); 5'- gcatgcaatgatacgatcgag-3'(配列番号21)
PCR産物はアガロースゲル電気泳動により、それぞれ約250bpの位置にDNAバンドが検出されるかを確認した。
【0067】
その結果、単離したクローン全てでAR遺伝子の発現が確認できた。しかしながら、AR遺伝子の発現量はクローンごとに差がみられた。その発現量の強さは後述する試験例2のルシフェラーゼ活性の強さとは平行関係になかった。
【0068】
試験例2(ルシフェラーゼ活性の測定)
製造例1で単離した14種類の細胞クローンについて、導入したDNA配列が正常に機能するかどうかを調べるために、リガンドに暴露した後のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0069】
単離されたクローンの一部を96マルチウエルプレートに播種し、10-8 Mの5α-ジヒドロテストステロン(5α- dihydrotestosterone、DHT; 和光純薬工業社製)を暴露した。24時間後に上清を取り除き、PBS(+)とSteady-Glo Luciferase reagent (Steady-Glo Luciferase assay kit; Promega社製)を等量混合した溶液を50 ml/ウエル加えた。遮光下で10分反応させた後、LumiStar (BMG LABTECH GmbH製)を用いて測定した。その結果、クローン間でルシフェラーゼ活性に差が見られた。
【0070】
ルシフェラーゼ活性が最も高かったクローンに、10-11〜10-8 M (7用量)のDHTを暴露し用量依存的なルシフェラーゼ活性の誘導を調べた。
【0071】
1×104個/ウエルの濃度でクローンを96wellマルチウエルプレートに播種すると同時に、陽性対象物質として10-11〜10-8 M (7用量)のDHTを24時間暴露した。ルシフェラーゼ活性はバックグラウンド(DMSO処理を差し引いた最低用量(10-11M)の活性)を"1"としてその他の濃度区の誘導倍率を評価した。
【0072】
その結果、DHT暴露により、クローンは用量依存的なルシフェラーゼ活性の誘導を示した(図5)。Log[EC50]値としては-10.35±0.35 M、最大誘導率として6.0倍を示した。CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を用いたARレポーター遺伝子アッセイ系の安定細胞株(AR-EcoScreenTM、大塚製薬社製)と比べても十分検出感度があることが分かった(アラキ等(Araki N et al.), トキシコロジー イン ビトロ(Toxicology in Vitro) 2005 Apr;19(3):335-52.参照)。
【0073】
更に、このクローン(AR/ARE-Luc組換え体)の安定性を調べるため、継代を重ねた10代目の細胞についても同様にDHTを暴露し、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0074】
その結果、継代数10代目においても、同様なルシフェラーゼ活性誘導曲線を描き、-10.30±0.35 M、最大誘導率として6.0倍と安定した数値を示した。
【0075】
以上の結果から、このクローンは、安定的にトランスジーンをゲノム上に保持しており、タンデムに配置したAR遺伝子発現ユニットとARE-Luc発現ユニットが正常に機能しているAR/ARE-Luc安定発現細胞株であることが確認された。
【0076】
実施例1(AR/ARE-Luc安定発現細胞株のレポーター遺伝子アッセイ)
試験例2でAR/ARE-Luc安定発現細胞株であることが確認されたクローンに、活性の異なる3種類のアゴニスト、ノルエチノドレル(Norethynodrel;Sigma社製)、17β-エストラジオール(17β-estradiol、E2; 和光純薬工業社製)、および6-ヒドロキシフラボン(6-hydroxyflavon; Aldrich社製)を10-12〜10-5 (M) (公比10、7用量)で24時間暴露し、ルシフェラーゼ活性(誘導倍率)を測定した。
【0077】
その結果、いずれのアゴニストも用量依存的なルシフェラーゼ活性の誘導を示した(図6)。それぞれのLog[EC50]値は-8.763±0.374 M、-6.772±0.29 M、および-5.985±0.462 Mであった。これらの値はAR-EcoScreenTMで得られた値とほぼ同じであった。
【0078】
実施例2
AR/ARE-Luc安定発現細胞株のアンタゴニストの検出力を調べるため、試験例2でAR/ARE-Luc安定発現細胞株であることが確認されたクローンに、活性の異なる4種類のアンタゴニスト、フルタミド(Flutamide; Sigma社製)、4-ジエチルアミノベンズアルデヒド(4-diethylaminobenzaldehyde; 和光純薬工業社製)、エキリン(Equilin; Sigma社製)、およびE2を10-8(M)のDHTと共暴露し、ルシフェラーゼ活性(誘導倍率)を測定した。アンタゴニストを含まない10-8MのDHTを暴露したときに示すルシフェラーゼ活性を100%として、阻害率を算出した。
【0079】
その結果、フルタミド、4-ジエチルアミノベンズアルデヒドは用量依存的にDHTの活性を阻害し、最高濃度でほぼ0%まで阻害した(図7)。エキリン、E2については、最高用量においても完全にDHTの活性を抑えることができなかった。エキリン及びE2は、部分的にアンタゴニストとして働いているものと考えられる。これらの結果は、AR-EcoScreenTMで行った実験とほぼ同じであった。
【0080】
以上の結果より、AR/ARE-Luc安定発現細胞株を用いてARに対するアゴニストおよびアンタゴニストを十分に検出できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の細胞を用いたレポーター遺伝子アッセイは、製薬研究の初期段階での化学物質のスクリーニングや、内分泌攪乱作用を有する化学物質のスクリーニングに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法を示す説明図である。
【図2】loxP配列と、loxP配列のCre酵素による切断位置を示す説明図である。
【図3】製造例1のベクターの製造方法を示す説明図である。
【図4】製造例1のベクターの製造方法を示す説明図である。
【図5】製造例1で作製したクローンのルシフェラーゼ活性を示すグラフである。
【図6】実施例1において測定した各化学物質を暴露したクローンのルシフェラーゼ活性を示すグラフである。
【図7】実施例2において測定した各化学物質とDHTとを共暴露したクローンのDHT活性阻害能を示すグラフである。
【符号の説明】
【0083】
1、26 細胞
2、5、12、 マーカー遺伝子
3、8、10、22、24、23 配列
4、11、15 プロモータ
6、13、17、21 転写終結シグナル
7 アクセプトベクター
9 ドナーベクター
14 受容体発現ユニット
18 レポータータンパク質発現ユニット
19 転写制御領域
25 Cre酵素
【配列表フリーテキスト】
【0084】
〔配列番号1〜13について〕
バクテリオファージP1由来の人工配列
〔配列番号14、15について〕
片側に制限酵素SpeIの認識サイトを付加したバクテリオファージP1由来の人工配列
〔配列番号16、17について〕
片側に制限酵素BamHIの認識サイトを付加したバクテリオファージP1由来の人工配列
〔配列番号18、19について〕
片側に制限酵素BsiWIの認識サイトを付加したヒトアンドロゲン受容体由来の人工配列
〔配列番号20、21について〕
ヒトアンドロゲン受容体由来の人工配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列と、受容体遺伝子と、前記受容体遺伝子から発現する受容体の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子とが、ゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞であって、前記受容体遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子が、両側変異loxP配列とloxP配列との間に安定に挿入されたレポーター遺伝子アッセイ用細胞。
【請求項2】
両側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列と、転写因子遺伝子と、前記転写因子遺伝子から発現する転写因子の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子とが、ゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞であって、前記転写因子遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子が、両側変異loxP配列とloxP配列との間に安定に挿入されたレポーター遺伝子アッセイ用細胞。
【請求項3】
両側変異loxP配列が配列番号4で示されるlox71/66配列である請求項1又は2に記載のレポーター遺伝子アッセイ用細胞。
【請求項4】
受容体遺伝子がアンドロゲン受容体を発現する遺伝子であり、応答配列がアンドロゲン受容体の応答配列である請求項1に記載のレポーター遺伝子アッセイ用細胞。
【請求項5】
3’側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、5’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記5’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された受容体遺伝子と、前記受容体遺伝子から発現する受容体の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と、を有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの受容体遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【請求項6】
5’側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、3’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記3’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された受容体遺伝子と、前記受容体遺伝子から発現する受容体の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と、を有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの受容体遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【請求項7】
3’側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、5’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記5’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された転写因子遺伝子と、前記転写因子遺伝子から発現する転写因子の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と、を有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの転写因子遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【請求項8】
5’側変異loxP配列と、配列番号3で示されるloxP配列とを有するアクセプトベクターがゲノム上のエキソンとイントロンを含まない領域に安定に挿入された細胞に、3’側変異loxP配列と、loxP配列と、前記3’側変異loxP配列とloxP配列との間に挿入された転写因子遺伝子と、前記転写因子遺伝子から発現する転写因子の応答配列と、前記応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と、を有するドナーベクターを導入した後、Cre酵素を作用させることにより、ドナーベクターの転写因子遺伝子、応答配列、及びレポーター遺伝子を前記細胞に安定に導入するレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【請求項9】
3’側変異loxP配列が配列番号1で示されるlox66配列であって、5’側変異loxP配列が配列番号2で示されるlox71配列である請求項5〜8のいずれかに記載のレポーター遺伝子アッセイ用細胞の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の細胞に化学物質を作用させ、前記細胞が産生したレポータータンパク質の発現強度を測定することにより化学物質の転写活性化能を評価するレポーター遺伝子アッセイ。
【請求項11】
請求項1に記載の細胞に化学物質とリガンドとを作用させ、前記細胞が産生したレポータータンパク質の発現強度を測定することによりリガンドの転写活性化能に対する化学物質の阻害能を評価するレポーター遺伝子アッセイ。
【請求項12】
請求項2に記載の細胞に化学物質と誘導物質とを作用させ、前記細胞が産生したレポータータンパク質の発現強度を測定することにより誘導物質の転写活性化能に対する化学物質の阻害能を評価するレポーター遺伝子アッセイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−209284(P2007−209284A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34266(P2006−34266)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000173566)財団法人化学物質評価研究機構 (14)
【Fターム(参考)】