説明

レンズバリア装置

【課題】リミッタ機構および位置保持機構を有していながらも、小型化、省電力化が可能なレンズバリア装置を提供する。
【解決手段】トグルレバー250は、光軸に垂直な面内で揺動するように駆動リング210に軸支されている。バリア羽根130は、回動動作によって光通過部を開閉する羽根部140を有し、羽根部140を光軸に垂直な面内で回動させるように羽根部の付け根において支持ベース170の支持軸172に軸支されている。操作ピン154がバリア羽根130に設けられ、操作ピンを内側に受け入れる凹み部を有するカム部がトグルレバーに設けられている。操作ピンがカム部の凹み部内に入る方向にトグルレバーを付勢するようにネジリバネ290が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズバリア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラのレンズを保護するためのレンズバリア装置が知られている。レンズバリア装置は、撮影レンズ鏡筒の先端に配設され、複数のバリア羽根を開閉させることにより撮影開口部の開け閉めを行う。
【0003】
バリア羽根の開閉は手動で行ってもよいが、利便性を向上させるため、近年ではモータ動力によって自動的にバリア羽根の開閉を行えるように改良がすすめられている。
しかし、このようなモータ駆動による自動開閉機構を採用しようとすると、それに伴って生じる課題が少なくとも二点ある。
【0004】
その第1点目は、モータでバリア羽根を駆動している最中にバリア羽根に外力が加えられた場合を想定してリミッタ機構を設けることである。
例えば、モータでバリア羽根を駆動している際に、ユーザが誤ってバリア羽根を指で押さえてしまったり、閉動作中にバリア羽根の間に異物が挟まってしまうことがありうる。
このような場合に、バリア羽根にモータ動力が継続して作用すると、バリア羽根か、モータか、あるいは、モータからバリア羽根に動力を伝達する動力伝達列、に故障が生じてしまう恐れがある。そこで、モータ動力が所定値を超えてバリア羽根に掛からないようにリミッタ機構を設ける必要がある。リミッタ機構としては、例えば、動力伝達列の途中にバネ等の弾性部材をかませることが一例として挙げられる。これにより、バリア羽根の開閉動作を妨げるものがあっても、部品の損傷を回避することができる。
【0005】
第2点目として、何らかの理由でバリア羽根の自動開閉機構が故障した場合を想定して、手動操作もできるようにしておくことである。
撮像機能自体に異常が無いにも関わらず、バリア羽根の自動開閉機構が故障したために時間と費用をかけてその部分だけを修理しなければならないとすると、ユーザフレンドリーとは言えない。
そこで、バリア羽根の自動開閉機構が故障したとしても、カメラの撮像機能自体に故障が無ければ、手動操作でバリア羽根を開閉してカメラとしての継続した使用ができることが好ましい。したがって、バリア羽根の自動開閉機構が故障した場合であっても手動操作を受け付け、かつ、開き位置と閉じ位置とでそれぞれ位置を保持できるようにする位置保持機構が必要である。
【0006】
例えば特許文献1(特開2011-48221号公報)には上記の課題を解決するレンズバリア装置が提案されている。
図16を参照して、このレンズバリア装置10の要部を説明する。
レンズバリア12は、図示しないレンズバリア支持枠13の支持軸13dによって回転可能に軸支されている。
レンズバリア12には、トグルレバー係合用ボス部12eが突設されている。
リング14の外周部位には、凹状切欠部14dが形成されており、この凹状切欠部14d内に前記トグルレバー係合用ボス部12eが遊嵌している。
リング駆動用欠歯歯車25に回転力を与える図示しないモータからの動力はバネ26を介してリング14に伝達される。
リング14がモータ動力によって回動すると、凹状切欠部14dの内側端面が前記トグルレバー係合用ボス部12eを押し上げまたは押し下げる。
これにより、レンズバリア12が自動開閉動作を行う。また、バネ26が介装されているので、リミッタ機構が働く。
【0007】
さらに、図示しないベース枠17の支持軸17eによりトグルレバー15が回動自在に軸支されている。トグルレバー15には三角状カム部15dが形成されている。トグルレバー15は、基端側に係合したバネ16によって先端側がリング14の中心方向に付勢されている。レンズバリア12がリング14の回動に伴って回動動作するとき、トグルレバー係合用ボス部12eは前記三角状カム部15dに沿って摺動する。
【0008】
そして、トグルレバー係合用ボス部12eが三角状カム部15dの山を越えると、トグルレバー係合用ボス部12eが三角状カム部15dの上端面または下端面から付勢力を受ける。この付勢力によって、レンズバリア12は、開き位置と閉じ位置とでそれぞれ位置を保持できるようになっている。例えば、図16中では、レンズバリア12のトグルレバー係合用ボス部12eは、三角状カム部15dの下側面で斜め下方に押されるので、軸支点を介したレンズバリア12の羽根部分は上方に向けて付勢された状態で保持される。
【0009】
ここで、仮に、モータが故障したとしても、指でレンズバリア12を押し開けたり、閉めたりすればよい。
指でレンズバリア12を開閉した場合でも、トグルレバー係合用ボス部12eが三角状カム部15dの山を越えると、トグルレバー係合用ボス部12eにトグルレバー15からの付勢力が掛かる。
これにより、レンズバリア12は、開き位置と閉じ位置とでそれぞれ位置を保持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-48221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1で開示されたレンズバリア装置では、モータ動力がバネ26を介してリング14に伝達されるようになっている。
よって、このバネ26がリミッタ機構となり、レンズバリア12の開閉動作を妨げるものがあっても部品の損傷が回避される。
しかしながら、動力伝達列にバネ26が介装されていると、モータ動力の一部がバネ26で吸収されてしまう。
したがって、モータ動力でリング14を回動させるにあたっては、このバネ26の弾性によって吸収される力の分を考慮してモータトルクをかなり大きくする必要があるなど、改善の余地がある。
【0012】
また、特許文献1で開示されたレンズバリア装置では、トグルレバー係合用ボス部12eが三角状カム部15dの上端面または下端面から付勢力を受けることによってレンズバリア12が開き位置と閉じ位置とでそれぞれ位置を保持できるようになっている。
これにより位置保持機構が実現され、モータが故障したとしても、レンズバリア12は、開き位置と閉じ位置とでそれぞれ位置が保持される。
しかしながら、通常動作としてレンズバリア12が開閉する際にも、トグルレバー係合用ボス部12eは三角状カム部15dに沿って摺動することになる。すると、通常動作であっても、トグルレバー係合用ボス部12eが三角状カム部15dの山を乗り越える動作が発生することになる。したがって、レンズバリア12を開閉するには、トグルレバー15に係合したバネ16の付勢力に抗してレンズバリア12を回動させなければならない。このためのモータトルクもかなり大きなものが必要になってくる。すなわち、モータトルクとしては、先に説明したリミッタ機構としてのバネ26に加え、さらに、この位置保持機構としてのバネ16に抗するトルクが必要になってくる。
整理すると、力関係としては、モータトルク>バネ26>バネ16となる。
このように、通常動作を行うにあたってもモータ動力はかなり大きなものが要求される。すると、部品の大型化、消費電力の増大などに対する改善の余地があり、リミッタ機構と位置保持機構とを両立させようとすると、製品の小型化が難しかった。
【0013】
本発明の目的は、リミッタ機構および位置保持機構を有していながらも、小型化、省電力化が可能なレンズバリア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のレンズバリア装置は、
撮影レンズを保護するレンズバリア装置であって、
光軸に沿って光を前記撮影レンズに向けて通過させる光通過部を有するとともに、光軸を回転中心として回転が可能に設けられた駆動リングと、
前記光軸に垂直な面内で揺動するように前記駆動リングに軸支されたトグルレバーと、
回動動作によって前記光通過部に対して進退する羽根部を先端側に有し、この羽根部を光軸に垂直な面内で回動させるように前記羽根部の付け根において軸支されたバリア羽根と、
前記トグルレバーおよび前記バリア羽根のいずれか一方に設けられた操作ピンと、
前記トグルレバーおよび前記バリア羽根のいずれか他方に設けられ、前記操作ピンを内側に受け入れる凹み部を有するカム部と、
前記操作ピンが前記カム部の凹み部内に入る方向に前記トグルレバーを付勢する付勢手段と、を備え、
前記カム部の凹み部に前記操作ピンが受け入れられた状態で前記トグルレバーが前記駆動リングとともに回転すると、前記操作ピンと凹み部との係合によって駆動リングの回転力が前記バリア羽根に伝達されて回転力が作用し、
前記カム部の凹み部は、前記操作ピンが前記付勢手段の付勢力に抗して前記凹み部の内面を摺動した場合には前記操作ピンが前記凹み部の外部に脱出可能となっている
ことを特徴とする。
【0015】
本発明では、
前記カム部の凹み部の形状は、前記カム部の内側から外側に向かって拡がる形状である
ことが好ましい。
【0016】
本発明では、
前記カム部は、前記凹み部の外部に外斜面を有し、
前記操作ピンが前記付勢手段の付勢力に抗して前記凹み部から脱出した場合、
前記外斜面と前記操作ピンとが前記付勢手段の付勢力で係合し、バリア羽根が開き位置または閉じ位置でその位置が保持される
ことが好ましい。
【0017】
本発明では、
前記操作ピンは、前記バリア羽根に突設され、
前記カム部の凹み部は、前記トグルレバーに設けられている
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】レンズバリア装置を取り付けたビデオカメラ30を示す図。
【図2】レンズバリア装置の分解斜視図。
【図3】駆動リングを後方から見た背面図。
【図4】バリア羽根が閉じている状態を示す図。
【図5】図4の部分拡大図。
【図6】通常動作で羽根を閉じた状態から開く動作を示す図。
【図7】通常動作で羽根を開いた状態から閉じる動作を示す図。
【図8】リミッタ機構の作動を説明するための図。
【図9】リミッタ機構が作動した後の復帰動作を示す図。
【図10】リミッタ機構の作動を説明するための図。
【図11】リミッタ機構が作動した後の復帰動作を示す図。
【図12】手動操作を行った場合の動作を示す図。
【図13】手動操作を行った場合の動作を示す図。
【図14】変形例を示す図。
【図15】変形例を示す図。
【図16】背景技術を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態について説明する。
図1は、レンズバリア装置100を取り付けたビデオカメラ30を示す図である。
図1(A)は、バリア羽根130、160が閉じている状態を示す図である。
図1(B)は、バリア羽根130、160が開いている状態を示す図である。
図1(C)は、ビデオカメラ30の側面図である。
【0020】
図1(C)において左側を前方または前面側、右側を後方または背面側、上側を上方、下側を下方と定義する。
レンズバリア装置100は、撮影レンズ3を保護するために、カメラ筺体20の前面側に取り付けられている。レンズバリア装置100は、前面カバー110の裏面側に、開閉可能に設けられた四枚のバリア羽根130、130、160、160を備える。前面カバー110には、略矩形状の光通過孔Hが設けられており、バリア羽根130、130、160、160でこの光通過孔Hが開閉される。バリア羽根は、上下一対のメインバリア羽根130、130と、上下一対のサブバリア羽根160、160と、で構成されている。メインバリア羽根130、130が開閉動作を行うと、サブバリア羽根160、160はメインバリア羽根130、130に従動するようになっている。バリア羽根130、130、160、160は、上下で向きを変えて同じ部品を組み合わせるようになっている。
【0021】
図1(A)に示すように、光通過孔Hがバリア羽根130、130、160、160によって閉じられているときに、撮影レンズ3が保護される。一方、図1(B)に示すように、バリア羽根130、130、160、160が開くと、光通過孔Hが開蓋され、被写体を撮影レンズ3で撮影できる状態になる。
【0022】
次に、レンズバリア装置100の構成を説明する。
図2は、レンズバリア装置100の分解斜視図である。
図3は、駆動リング210を後方から見た背面図である。
図4は、バリア羽根130、130、160、160が閉じている状態を示す図である。
図5は、図4の部分拡大図である。
【0023】
図2の分解斜視図に示されるように、レンズバリア装置100は、最も前方側に前面カバー110を有し、最も後方側に支持ベース170を有し、前面カバー110と支持ベース170との間に、羽根ユニット部120と、開閉機構部200と、を備える。
【0024】
前面カバー110は、樹脂材を用いて枠状に一体成形されている。前面カバー110には、撮影レンズ3(図1)に光軸を合わせて光通過孔Hが貫通形成されている。
【0025】
支持ベース170は、樹脂材を用いて枠状に一体成形されており、撮影レンズ3(図1)に光軸Lを合わせて光通過孔Hが貫通形成されている。支持ベース170の前面側において、光通過孔Hを挟んで外周部の左右にそれぞれ支持軸172、172が突設されている。この支持軸172、172は、開閉機構部200を通過し、さらに、羽根ユニット部120の羽根130、130,160、160を回動可能に軸支するものである。
【0026】
また、支持ベース170の光通過孔Hの外周部に沿う適宜な位置において、複数の係合爪部173が設けられている。前面カバー110の外側壁112には、係合爪部173に対応する係止爪113が形成されており、係止爪113が弾性変形しながら係合爪部173に係合することで、支持ベース170と前面カバー110とが固定的に組み付けられるようになっている。また、前面カバー110には、前記支持軸172、172に対応する位置に受け孔114、114が設けられており、支持ベース170と前面カバー110とが組み付けられた際には、支持軸172、172の先端部が前記受け孔114、114に嵌入されるようになっている。
【0027】
羽根ユニット部120は、前述のように、上下一対のメインバリア羽根130、130と、上下一対のサブバリア羽根160、160と、で構成され、開閉機構部200から与えられる動力によって開閉動作を行う。
なお、バリア羽根130、130、160、160は、上下で向きを変えて同じ部品を組み合わせるようになっている。
上下で同じ構造であるので、上側のメインバリア羽根130と下側のメインバリア羽根130とには同じ符号を付し、上側のサブバリア羽根160と下側のサブバリア羽根160とには同じ符号を付すが、詳細な構造については適宜、対応する要素の上下左右を反転させて理解されたい。
ここでは、主として、光通過孔Hの下側を開閉するメインバリア羽根130およびサブバリア羽根160について説明する。
【0028】
メインバリア羽根130は、樹脂材を用いて一体成形されている。
メインバリア羽根130は、光通過部の一部を塞ぐ所定面積を持った主羽根部140と、主羽根部140の付け根に構成された主操作部150と、を有する。
【0029】
主羽根部140は、付け根から先端方向に向けて徐々に広がり、その先端は三角形となっている。上下で主羽根部140、140を組み合わせたときに光通過孔Hの中央帯を塞ぐようになっている。
【0030】
主操作部150は、貫通形成された軸孔151と、前方に突出した円筒突起部152と、前方に突起したボス部153と、後方に突起した操作ピン154と、を有する。
【0031】
軸孔151は、主羽根部140の付け根の部分であって、支持ベース170の支持軸172に対応する位置に設けられている。すなわち、軸孔151に支持軸172が挿入されることにより、メインバリア羽根130は回動可能に軸支される。
光通過孔Hの下側を開閉するメインバリア羽根130を例にすると、主羽根部140がほぼ水平位置にあるときに光通過孔Hを塞ぎ、軸孔151を中心にして主羽根部140が下方に回動すると光通過孔Hが開口された状態になる。
【0032】
円筒突起部152は、軸孔151を中心として、前方に突出形成されている。
【0033】
ボス部153は、メインバリア羽根130の前面側において、軸孔151を間にして主羽根部140とは反対側に突設されている。したがって、軸孔151を中心にして主羽根部140が下方に回動すれば、ボス部153は軸孔151を中心にして上方に回動する。逆に、軸孔151を中心にして主羽根部140が上方に回動すれば、ボス部153は軸孔151を中心にして下方に回動する。
【0034】
操作ピン154は、メインバリア羽根130の後面側において、軸孔151を間にして主羽根部140とは反対側に突設されている。したがって、軸孔151を中心にして操作ピン154を上方に回動させると、主羽根部140は下方に回動する。また逆に、軸孔151を中心にして操作ピン154を下方に回動させると、主羽根部140は上方に回動する。
【0035】
サブバリア羽根160は、樹脂材を用いて一体成形されている。
サブバリア羽根160は、従動羽根部161と、従動羽根部161の付け根に構成された従動操作部162と、を有する。
従動羽根部161は、主羽根部140でカバーされる中央帯よりも外側の光通過孔Hを塞ぐ形状に形成されている。
従動操作部162は、嵌通孔163と、凹状切欠部164と、を備える。
【0036】
嵌通孔163は、従動羽根部161の付け根の部分であって、支持ベース170の支持軸172に対応する位置に設けられている。
ここで、嵌通孔163は、前記円筒突起部152が嵌通できる径を有する。そして、嵌通孔163に円筒突起部152が挿入されることにより、サブバリア羽根160は回動可能に軸支される。さらに、軸孔151に支持軸172が挿通されると、メインバリア羽根130とサブバリア羽根160とは同軸で回動支持されることになる。
【0037】
凹状切欠部164は、嵌通孔163を間にして従動羽根部161とは反対側に形成されている。そして、サブバリア羽根160の嵌通孔163に円筒突起部152を嵌通させてサブバリア羽根160をメインバリア羽根130に組み合わせたときに、前記ボス部153が凹状切欠部164の内側に遊嵌するようになっている。メインバリア羽根130の回動に伴ってボス部153が上下方向に回動するとき、ボス部153が凹状切欠部164の内側端面を押し上げまたは押し下げる。
これにより、サブバリア羽根160がメインバリア羽根130の回動に従動する。
【0038】
下側のバリア羽根130、160の動きを例にして説明する。
メインバリア羽根130が閉じ方向に回転するとき(主羽根部140が上方に回転するとき)、凹状切欠部164はボス部153によって下方向に押される。すると、嵌通孔163を中心にサブバリア羽根160は、閉じ方向に回転する(従動羽根部161が上方に回転する)。
また、メインバリア羽根130が開き方向に回転するとき(主羽根部140が下方に回転するとき)、凹状切欠部164はボス部153によって上方向に押される。すると、嵌通孔163を中心にサブバリア羽根160は、開き方向に回転する(従動羽根部161が下方に回転する)。
このように、メインバリア羽根130に連動してサブバリア羽根160も回動する。
【0039】
開閉機構部200は、図示しないモータの動力によって駆動し、モータ動力を羽根ユニット部120に伝達することで羽根ユニット部120を開閉動作させる自動開閉機構として機能する。
さらに、開閉機構部200は、羽根ユニット部120を開き位置または閉じ位置で保持する位置保持機構として機能する。
さらに、開閉機構部200は、モータ動力が所定値を超えてバリア羽根に掛からないようにするリミッタ機構として機能する。
【0040】
開閉機構部200は、駆動リング210と、トグルレバー250と、ネジリバネ290と、を備える。
【0041】
駆動リング210は、樹脂材を用いてリング状に一体成形されている。
駆動リング210は、リング本体部220と、長孔部230と、レバー保持部240と、動力連結部224と、を備えている。
【0042】
リング本体部220は、中心に光通過孔Hを有する肉薄の筒体であり、外周部にフランジ221を備えている。リング本体部220の筒壁222の高さ(前後方向の長さ)は、フランジ221と支持ベース170との間にトグルレバー250を収容できるスペースを確保できる程度あればよい。また、光通過孔Hを挟んで筒壁の一部が、長孔部230の形成に伴って切り欠かれている。
【0043】
長孔部230は、光通過孔Hを挟んで対称な位置にそれぞれ設けられている。
長孔部230の位置は支持軸172に対応し、支持軸172が通過できるようになっている。さらに、支持軸172が長孔部230に挿通した状態で駆動リング210が所定角度範囲内で回動できるように、長孔部230は、リング本体部220の円周に沿った所定長さを有する長孔になっている。
【0044】
レバー保持部240は、トグルレバー250を回動可能に支持するとともに、ネジリバネ290をトグルレバー250に引っ掛けた状態で保持する。レバー保持部240は、後方に向けて突設されたレバー支持軸241と、バネ支持片242と、バネ掛止部243と、を有する。
【0045】
レバー保持部240は、光通過孔Hを挟んで対称な位置に一つずつ設けられている。図3のように、駆動リング210を背面から見た場合、左側のレバー保持部240は前記長孔部230よりもやや下方に配設されている。また、右側のレバー保持部240は、前記長孔部230よりもやや上方に配設されている。
ここで、フランジ221が部分的に幅広になることにより、レバー保持部240を構成するための基面223となる。
【0046】
レバー支持軸241は、前記基面223から後方に向けて突設されている。
図3のように駆動リング210を背面から見た場合、左側のレバー保持部240においてレバー支持軸241は前記基面223のなかでもやや上側位置に配設されている。
なお、右側のレバー保持部240においては、上下左右を反対にすればよく、すなわち、右側のレバー保持部240においてレバー支持軸241は前記基面223のなかでもやや下側位置に配設されている。
レバー支持軸241にトグルレバー250が挿通されることにより、トグルレバー250が回動可能に軸支される。
【0047】
バネ支持片242は、ネジリバネ290のリング部291が引っ掛かるようになっており、バネ支持片242によりネジリバネ290の保持を行う。
バネ掛止部243は、ネジリバネ290の一方の足292が引っ掛かるようになっており、これにより、ネジリバネ290の他方の足293に付勢力を与える。
図3のように駆動リング210を背面から見た場合、左側のレバー保持部240において、バネ支持片242は前記基面223のなかでもやや下側位置に配設されている。そして、バネ掛止部243は、レバー支持軸241よりも下側、バネ支持片242よりも上側において、筒壁222の一部から外側方向に向けて突出形成されている。
【0048】
動力連結部224は、図示しないモータからの動力伝達列に連結される箇所である。動力連結部224は、リング本体部220のフランジ221の外周が一部切り欠かれることで形成された凹み部となっている。この動力連結部224にモータからの動力伝達列が連結され、駆動リング210を回動させる動力が動力連結部224に加えられる。
なお、本第1実施形態では、モータから駆動リング210に動力を伝える動力伝達列にはバネ等の弾性体が介装されることはない。
【0049】
トグルレバー250は、駆動リング210と一体的に回動して、メインバリア羽根130の操作ピン154に当接して駆動リング210の回動力を羽根ユニット部120に直接伝達する。すなわち、トグルレバー250は、動力伝達列の最終段になる。
また、モータ動力が所定値を超えてバリア羽根130、160に掛かる場合には、トグルレバー250がネジリバネ290に抗して揺動することによりリミッタ機構が作動する。
さらにまた、トグルレバー250がメインバリア羽根130の操作ピン154に付勢力を与えることにより、羽根ユニット部120を開き位置または閉じ位置で保持する位置保持機構が実現される。
【0050】
トグルレバー250は、バネ受け部251と、軸孔252と、カム部260と、を有する。
【0051】
バネ受け部251は、トグルレバー250の最も基端側に配設され、前記ネジリバネ290の脚293が内側から掛かるようになっている。軸孔252は、前記バネ受け部251からわずかに先端側に貫通形成されている。この軸孔252には、前記レバー支持軸241が挿入され、これにより、トグルレバー250が回動自在に軸支される。
【0052】
カム部260は、トグルレバー250の先端部に設けられている。カム部260は、操作ピン154を内側面で受けるようにV字状の凹み部270を有する。メインバリア羽根130を駆動リング210の前方から近づけてきて、長孔部230と軸孔151との位置を合わせた状態で、長孔部230と軸孔151とに後方から支持軸172を挿通させる。すると、操作ピン154が駆動リング210の外周側で後方に臨むようになる。V字状凹み部270は、この操作ピン154に対して外側から接触し、凹み部270の内側面で操作ピン154を受ける。
【0053】
さらに、カム部260は、V字状凹み部270に加えて、V字状凹み部270に対して外在する外側斜面部280を有する。
ここで、図4および図5は、レンズバリア装置100を組み立てた状態で、駆動リング210、トグルレバー250および羽根ユニット部120を抽出して、これを背面側からみた図である。
この図4および図5において、左側のトグルレバー250を例にして説明する。
V字状凹み部270は、第1内面271と、第2内面272と、により構成される。
ここで、左側のトグルレバー250において、下側の斜面を第1内面271とし、上側の斜面を第2内面272とする。
図4および図5では、第2内面272が操作ピン154を斜め下方に押下げている状態である。
【0054】
外側斜面部280は、第1内面271から折れ曲がるようにV字状凹み部270の外側(トグルレバー250の基端側)に向けて傾斜する第1外面281と、第2内面272から折れ曲がるように凹み部270の外側(トグルレバー250の先端側)に向けて傾斜する第2外面282と、を有する。第1内面271と第1外面281との境界部に三角状の第1山部261が形成される。また、第2内面272と第2外面282との境界部に三角状の第2山部262が形成される。
【0055】
上記のような構成をもつ部品をレンズバリア装置100として組み合わせる手順の一例を説明する。
まず、羽根ユニット部120を組み合わせる。すなわち、サブバリア羽根160を前面側からメインバリア羽根130に近づけ、嵌通孔163に円筒突起部152を挿通させる。このとき、下側のサブバリア羽根160は下側のメインバリア羽根130と組み合わせ、上側のサブバリア羽根160は上側のメインバリア羽根130と組み合わせる。すると、メインバリア羽根130のボス部153がサブバリア羽根160の凹状切欠部164に遊嵌した状態になる。
【0056】
次に、開閉機構部200を組み合わせる。すなわち、トグルレバー250の軸孔252に駆動リング210のレバー支持軸241を挿通させ、さらに、ネジリバネ290のリング部291をバネ支持片242に引っ掛ける。ネジリバネ290の一方の脚292を駆動リング210のバネ係止部243に引っ掛け、ネジリバネ290の他方の脚293をトグルレバー250のバネ受け部251に引っ掛ける。
【0057】
さらに、開閉機構部200と羽根ユニット部120とを組み合わせ、支持ベース170で支持する。すなわち、駆動リング210の長孔部230とメインバリア羽根130の軸孔151との位置を合わせて、支持ベース170の支持軸172をこれらの孔230、151に挿通させる。このとき、メインバリア羽根130の操作ピン154が駆動リング210の外周側から後方に臨む。そして、トグルレバー250の先端を一旦外側に開くように動かしてやると、V字状凹み部270の内側に操作ピン154が入り、ネジリバネ290の付勢力によって、V字状凹み部270が操作ピン154に押しあてられるようになる。
【0058】
さらに、支持ベース170の支持軸172を、前面カバー110の受け孔114に嵌入させる。このとき、支持ベース170の係合爪部173が前面カバー110の係止爪113に係合する。すると、支持ベース170と前面カバー110との間に開閉機構部200と羽根ユニット部120とを挟んだ状態で、支持ベース170が前面カバー110に組み付けられる。
【0059】
次に、動作を説明する。
(通常動作)
(羽根を閉じた状態から開く動作)
図6は、通常動作で羽根を閉じた状態から開く動作を示す図である。
駆動リング210の位置を説明するのに、左側のレバー支持軸241を用い、光通過孔Hの中心点とレバー支持軸241とを結ぶ仮想線を駆動リング210の基線とし、この基線の位置によって駆動リング210の回転を表現する。
また、駆動リング210がバリア羽根130、160を閉じた状態にする回転位置を閉位置(図6(A))とし、駆動リング210がバリア羽根130、160を開いた状態にする回転位置を開位置(図6(C))と、する。
図6(A)から図6(C)に至る変化で分かるように、駆動リング210は、バリア羽根130、160を閉じた状態にする閉位置(図6(A))と、バリア羽根130、160を開いた状態にする開位置(図6(C))と、の間で回動する。そして、図6(A)の状態では、基線は閉位置に一致しており、図6(C)の状態では、基線は開位置に一致しており、図6(C)では駆動リング210は閉位置を開位置との中間にある。
【0060】
なお、説明では、左側のトグルレバー250および左側のトグルレバー250に連係する下側のメインバリア羽根130に注目して説明を行う。
また、図面を見やすくする都合上、動作に関連する主要な符号に限って図面中に付し、その他の符号は割愛する。
動作説明中で適宜使用する時計回りや右回りといった回転方向は、レンズバリア装置100を背面側から見た場合を基準とし、すなわち、図6から図12の図面を正面から見た場合の回転方向に合致する。
【0061】
図6(A)では、バリア羽根130、160が閉じている状態である。
正確に述べると、後述する図7(C)と同じ状態で、閉動作により上下のバリア羽根130が接触したストップしたところから更に駆動リング210が少し反時計回りに回転した状態で、操作ピン154は第1内面271から離れて第2内面272に当接した状態である。この状態から、駆動リング210の動力連結部224にモータ動力が掛かり、駆動リング210が時計回り(右回り)に駆動される。すると、駆動リング210とともにトグルレバー250も一体となって時計回りに移動することになる。操作ピン154がトグルレバー250のV字状凹み部270の内側に位置しているところ、トグルレバー250が時計回り(右回り)に移動すると、操作ピン154に対して上側の第2内面272が当接していたのが、次第に下側の第1内面271が操作ピン154に当接するようになる(図6(B))。図6(B)では上下のバリア羽根130がフリーな状態であり、操作ピン154はV字状凹み部270の谷部に位置し、第1内面271と第2内面272の両方に当接した状態で移動する。
【0062】
さらに、駆動リング210が継続して時計回り(右回り)に回動すると、第1内面271が操作ピン154を押し上げるようになる。
操作ピン154が押し上げられると、主羽根部140は下側に回動する。
サブバリア羽根160は、メインバリア羽根130に従動して下側に回動する。これにより、羽根が開いて光通過部Hが開かれることになる。図6(C)に示すように、第1内面271だけが操作ピン154に当接して操作ピン154を押し上げ、第2内面272は操作ピン154からわずかに離間する状態になるまで駆動リング210が回転する。
図6(C)は、バリア羽根130が開ききって図示しないストッパに当たったところから更に駆動リング210が時計回りに少し回転して操作ピン154が第2内面272から離れて第1内面271に当接した状態を示している。
【0063】
駆動リング210の回転位置は、図示しない位置検出器を用いて位置制御される。長孔部230の長さは、駆動リング210の回転可動範囲を許容する長さとなっている。この位置まで駆動リング210が回転したところで、駆動リング210の回転が停止する。トグルレバー250にはネジリバネ290の付勢力が作用しているところ、第1内面271が操作ピン154に所定の付勢力を上方向に掛けることとなり、結果として、メインバリア羽根130の操作ピン154に斜め上方に押し上げ力が掛かった状態でメインバリア羽根130が固定される。これにより、羽根が完全に開くとともに、羽根の位置は開いた状態で固定保持される。
【0064】
(羽根を開いた状態から閉じる動作)
図7は、通常動作で羽根を開いた状態から閉じる動作を示す図である。
図7(A)は、バリア羽根130、160が開いている状態である。
この状態から、駆動リング210の動力連結部224にモータ動力が掛かり、駆動リング210が反時計回り(左回り)に駆動される。すると、駆動リング210とともにトグルレバー250も一体となって反時計回りに移動することになる。操作ピン154がトグルレバー250のV字状凹み部270の内側に位置しているところ、トグルレバー250が反時計回り(左回り)に移動すると、操作ピン154に対して下側の第1内面271が当接していたのが、次第に上側の第2内面272が操作ピン154に当接するようになる(図7(B))。
【0065】
さらに、駆動リング210が継続して反時計回り(左回り)に回動すると、第2内面272が操作ピン154を押し下げるようになる。
操作ピン154が押し下げられると、主羽根部140は上側に回動する。サブバリア羽根160は、メインバリア羽根130に従動して上側に回動する。これにより、羽根130、160が閉じて光通過孔Hが閉じられることになる。図7(C)に示すように、第2内面272だけが操作ピン154に当接して操作ピン154を押し下げ、第1内面271は操作ピン154からわずかに離間する状態になるまで駆動リング210が回転する。
【0066】
この位置(閉位置)まで駆動リング210が回転したところで、駆動リング210の回転が停止する。トグルレバー250にはネジリバネ290の付勢力が作用しているところ、第2内面272が操作ピン154に所定の付勢力を下方向に掛けることとなり、結果として、メインバリア羽根130の操作ピン154に斜め下方に押し下げ力が掛かった状態でメインバリア羽根130が固定される。これにより、主羽根部140および従動羽根部161が完全に閉じるとともに、主羽根部140および従動羽根部161の位置は閉じた状態で固定保持される。
【0067】
上記の説明でわかる通り、本実施形態では、駆動リング210の回転と一体的にトグルレバー250が移動する。そして、操作ピン154がV字状凹み部270の内側に入った状態でネジリバネ290の付勢力によって操作ピン154とV字状凹み部270とが係合しているところ、通常動作では、駆動リング210とトグルレバー250とが一体的に回転移動すると、その動力が、トグルレバー250からV字状凹み部270を介して操作ピン154へと直接伝達されるようになっている。すなわち、モータからメインバリア羽根130の操作ピン154までの経路で動力がバネ等に吸収されず、動力のロスなくバリア羽根130、160に動力が伝達される。したがって、通常動作を行うにあたってはモータトルクは小さくてよく、消費電力も少なくて済む。
【0068】
(リミッタ機構の作用)
次に、リミッタ機構が作動する場合を説明する。
(開き動作を行ったが、羽根が閉じたまま動かなかった場合)
羽根130、160が閉じた状態から羽根130、160を開く操作を行ったが、例えばユーザが指で羽根130、160を押さえてしまった等により羽根が動かなかった場合について、図8を参照して説明する。
図8(A)のように羽根130、160が閉じた状態から、駆動リング210が時計回り(右回り)に駆動される。
ただし、ユーザの指がメインバリア羽根130を押さえているので、メインバリア羽根130の回動は阻害されている。
駆動リング210が時計回り(右回り)に駆動されると、駆動リング210の回転に伴ってトグルレバー250は時計回りに移動することになる。トグルレバー250が時計回りに移動すると、V字状凹み部270の第1内面271が操作ピン154を押し上げようとするが、操作ピン154は動かない。すると、トグルレバー250は、ネジリバネ290の付勢力に抗して外側に開くように揺動する。そして、操作ピン154が第1内面271を摺動して第1山部261を越え、操作ピン154が第1外面281に当接する。
【0069】
このように、第1内面271が操作ピン154を押し上げようとしても操作ピン154が動かない場合、トグルレバー250が付勢力に抗して操作ピン154から逃げる。これにより、リミッタ機構が作動し、モータにもバリア羽根130、160にも所定以上の外力が作用せず、部品の損傷が防止される。
【0070】
次に、上記のようにリミッタ機構が作動した後の動作について図9(A)、(B)を参照して述べる。
図9(A)のように、駆動リング210が開位置まで回転したにも関わらず、バリア羽根130、160が開かなかったとする。リミッタ機構が作動したので、操作ピン154はV字状凹み部270を脱出して第1外面281に当接している。
【0071】
この状態から、駆動リング210が通常動作の通りに反時計回り(左回転)する。すると、駆動リング210とともにトグルレバー250も反時計回り(左回転)に移動する。
このとき、トグルレバー250は、操作ピン154に押されて外側に開くように揺動し、操作ピン154は第1外面281の斜面を登って第1山部261を越え、操作ピン154がV字状凹み部270の内側に戻る(図9(B))。
このように、リミッタ機構が作動した場合でも、通常動作を行えば、操作ピン154がV字状凹み部270の内側に復帰し、その後は通常の動作が可能である。
【0072】
(閉じ動作を行ったが、羽根が開いたまま動かなかった場合)
次に、羽根130、160が開いた状態から閉じる操作を行ったが、例えばユーザが指で羽根130を押さえてしまった等により、羽根130、160が動かなかった場合について、図10を参照して説明する。
図10(A)のように羽根130、160が開いた状態から、駆動リング210が反時計回り(左回り)に駆動される。
ただし、ユーザがメインバリア羽根130を押さえているので、メインバリア羽根130の回動は阻害されている。駆動リング210が反時計回り(左回り)に駆動されると、駆動リング210の回転に伴ってトグルレバー250も反時計回りに移動することになる。
【0073】
トグルレバー250が反時計回りに移動すると、V字状凹み部270の第2内面272が操作ピン154を押し下げようとするが、操作ピン154は動かない。すると、トグルレバー250は、ネジリバネ290の付勢力に抗して外側に開くように揺動する。そして、操作ピン154が第2内面272を摺動して第2山部262を越え、操作ピン154が第2外面282に当接する。
【0074】
このように、第2内面が操作ピン154を押し下げようとしても操作ピン154が動かない場合、トグルレバー250が付勢力に抗して操作ピン154から逃げる。これにより、モータにもバリア羽根130、160にも所定以上の外力が作用せず、部品の損傷が防止される。
【0075】
次に、上記のようにリミッタ機構が作動した後の動作について図11(A)、(B)を参照して述べる。
図11(A)のように、駆動リング210が閉位置まで回転したにも関わらず、バリア羽根130、160が閉じなかったとする。
リミッタ機構が作動したので、操作ピン154はV字状凹み部270を脱出して第2外面282に当接している。
【0076】
この状態から、駆動リング210が通常動作の通りに時計回り(右回転)する。すると、駆動リング210とともにトグルレバー250も時計回り(右回転)に移動する。このとき、トグルレバー250は、操作ピン154に押されて外側に開くように揺動し、操作ピン154は第2外面282の斜面を登って第2山部262を越え、操作ピン154がV字状凹み部270の内側に戻る。このように、リミッタ機構が作動した場合でも、通常動作を行えば、操作ピン154がV字状凹み部270の内側に復帰し、その後は通常の動作が可能である。
【0077】
(手動操作)
次に、バリア羽根130、160を手動で操作する場合について説明する。
これは例えば、モータが故障してしまった等の理由により、自動で駆動リング210が回転しなくなった場合に、指で直接にバリア羽根130、160の開閉を行うような場合である。
(手動で開く場合)
バリア羽根130、160が閉じた状態で自動では開かなくなったので、バリア羽根130、160を手動で開く操作を行う場合について図12を参照して説明する。
図12(A)のように、バリア羽根130、160が閉じた状態で駆動リング210が自動で回転しなくなったとする。
この状態から、下側のメインバリア羽根130を指で下側に押し開いたとする。すると、主羽根部140が下側に回動するので、操作ピン154は上方へ移動する。このとき、トグルレバー250はネジリバネ290の付勢力に抗して外側に開くように揺動し、操作ピン154は第2内面272を摺動ししながら上方へ移動する。そして、操作ピン154が第2山部262を乗り越えて第2外面282に当接するようになる。
【0078】
このとき、トグルレバー250にはネジリバネ290の付勢力が作用するので、操作ピン154は第2外面282によって斜め上方に押し上げられる。この第2外面282が操作ピン154を押し上げた状態に保持するので、バリア羽根130、160が開いた状態でその位置が保持される。これにより、自動開閉機構が故障した場合でもバリア羽根130、160を手動で開けば撮影が可能になる。
なお、手動動作の場合は上下のバリアは連動しないので、上下のバリアをそれぞれ動作させる必要がある。
【0079】
(手動で閉じる場合)
バリア羽根が開いた状態で自動では閉じなくなったので、バリア羽根130、160を手動で開く操作を行う場合について図13を参照して説明する。
図13(A)のように、バリア羽根130、160が開いた状態で駆動リング210が自動で回転しなくなったとする。
この状態から、下側のメインバリア羽根130を指で上側に引っ張り上げるとする。すると、主羽根部140が上側に回動するので、操作ピン154は下方へ移動する。このとき、トグルレバー250はネジリバネ290の付勢力に抗して外側に開くように揺動し、操作ピン154は第1内面271を摺動しながら下方へ移動する。そして、操作ピン154が第1山部261を乗り越えて第1外面281に当接するようになる。
【0080】
このとき、トグルレバー250にはネジリバネ290の付勢力が作用するので、操作ピン154は第1外面281によって斜め下方に押し下げられる。この第1外面281が操作ピン154を押し下げた状態に保持するので、バリア羽根130、160が閉じた状態でその位置が保持される。これにより、自動開閉機構が故障した場合でもバリア羽根130、160を手動で閉じれば撮影レンズ3を保護できる。
【0081】
上記に説明したように、本実施形態のレンズバリア装置100によれば次の効果を奏する。
(1)通常動作では、駆動リング210とトグルレバー250とが一体的に回転移動すると、その動力がトグルレバー250からV字状凹み部270を介して操作ピン154へと直接伝達される。したがって、モータからメインバリア羽根130の操作ピン154までの経路において動力がバネ等に吸収されず、動力のロスなくバリア羽根130、160に動力を伝達できる。したがって、通常動作を行うにあたってはモータトルクは小さくてよく、消費電力も少なくて済む。
【0082】
(2)また、ユーザがバリア羽根を誤って押さえてしまったときのように、駆動リング210が回転したときに操作ピンが動かない場合には、トグルレバー250がネジリバネ290の付勢力に抗して揺動して操作ピンから逃げる。これによりリミッタ機構が作動し、モータにもバリア羽根130、160にも所定以上の外力が作用せず、部品の損傷を防止できる。
【0083】
(3)自動開閉機構が故障した場合でもバリア羽根130、160を手動で開閉することができる。手動でバリア羽根130、160を開閉する際には、トグルレバー250がネジリバネ290の付勢力に抗して外側に開くように揺動するので、開閉機構部200および羽根ユニット部120に所定値を超えて大きな力が作用することがない。したがって、手動でバリア羽根130、160を操作した場合でも部品の損傷を回避することができる。
【0084】
(4)手動でバリア羽根130を回動させた場合には、操作ピン154がカム部のV字状凹み部270から脱出してしまうところ、V字状凹み部270の外部に山部261、262を介して外側斜面部280を備えている。この外側斜面部280によって操作ピン154が付勢されるので、バリア羽根の位置が保持される。自動開閉機構が故障した場合でもバリア羽根130、160を手動で操作することができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0085】
(変形例)
本発明は上記第1実施形態に限られず、種々の変更が可能である。
上記実施形態では、トグルレバー250のカム部260は、操作ピン154に対して外側から接触していた。
これに対し、カム部260が操作ピン154を内側に受け入れるような状態でカム部260と操作ピン154とが係合していればよいので、例えば、図14に示すように、カム部260が操作ピン154に対して内側から接触するようになっていてもよい。
【0086】
上記実施形態では、操作ピンがメインバリア羽根に設けられ、カム部がトグルレバーに設けられた例を示した。
この点、操作ピンをトグルレバー250およびバリア羽根130のいずれか一方に設け、カム部をトグルレバー250およびバリア羽根130のいずれか他方に設ければよいのであって、例えば、図15のように、ピン310をトグルレバー250に設け、カム部320をバリア羽根130に設けてもよい。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態および変形例に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
羽根ユニット部120は、メインバリア羽根130、130とサブバリア羽根160、160との4枚構成としたが、羽根は上下一枚ずつの合計二枚で構成されてもよく、あるいは逆にもっと多くの羽根が組み合わされていてもよいのはもちろんである。メインバリア羽根以外の羽根がメインバリア羽根に従動するようになっていれば、本発明が適用できるのはもちろんである。
【0088】
第1内面、第2内面、第1外面および第2外面は、平面に限らず、曲率を持っていてもよい。
カム部と操作ピンとの摩擦力が適切になるように、ネジリバネの付勢力とカム部の形状とを適宜設計すればよい。
【0089】
ネジリバネに限らず、操作ピンがカム部の凹み部内に入る方向にトグルレバーを付勢する付勢手段を採用すればよく、板バネやゴムなどに適宜置換できる。
【符号の説明】
【0090】
H…光通過孔、L…光軸、3…撮影レンズ、20…カメラ筐体、100…レンズバリア装置、110…前面カバー、112…外側壁、113…係止爪、114…受け孔、120…羽根ユニット部、130…メインバリア羽根、140…主羽根部、150…主操作部、151…軸孔、152…円筒突起部、153…ボス部、154…操作ピン、160…サブバリア羽根、161…従動羽根部、162…従動操作部、163…嵌通孔、164…凹状切欠部、170…支持ベース、172…支持軸、173…係合爪部、200…開閉機構部、210…駆動リング、220…リング本体部、221…フランジ、222…筒壁、223…基面、224…動力連結部、230…長孔部、240…レバー保持部、241…レバー支持軸、242…バネ支持片、243…バネ掛止部、243…バネ係止部、250…トグルレバー、251…バネ受け部、252…軸孔、260…カム部、261…第1山部、262…第2山部、270…V字状凹み部、271…第1内面、272…第2内面、280…外側斜面部、281…第1外面、282…第2外面、290…ネジリバネ、291…リング部、292…脚、293…脚、310…ピン、320…カム部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズを保護するレンズバリア装置であって、
光軸に沿って光を前記撮影レンズに向けて通過させる光通過部を有するとともに、光軸を回転中心として回転が可能に設けられた駆動リングと、
前記光軸に垂直な面内で揺動するように前記駆動リングに軸支されたトグルレバーと、
回動動作によって前記光通過部に対して進退する羽根部を先端側に有し、この羽根部を光軸に垂直な面内で回動させるように前記羽根部の付け根において軸支されたバリア羽根と、
前記トグルレバーおよび前記バリア羽根のいずれか一方に設けられた操作ピンと、
前記トグルレバーおよび前記バリア羽根のいずれか他方に設けられ、前記操作ピンを内側に受け入れる凹み部を有するカム部と、
前記操作ピンが前記カム部の凹み部内に入る方向に前記トグルレバーを付勢する付勢手段と、を備え、
前記カム部の凹み部に前記操作ピンが受け入れられた状態で前記トグルレバーが前記駆動リングとともに回転すると、前記操作ピンと凹み部との係合によって駆動リングの回転力が前記バリア羽根に伝達されて回転力が作用し、
前記カム部の凹み部は、前記操作ピンが前記付勢手段の付勢力に抗して前記凹み部の内面を摺動した場合には前記操作ピンが前記凹み部の外部に脱出可能となっている
ことを特徴とするレンズバリア装置。
【請求項2】
請求項1に記載にレンズバリア装置において、
前記カム部の凹み部の形状は、前記カム部の内側から外側に向かって拡がる形状である
ことを特徴とするレンズバリア装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレンズバリア装置において、
前記カム部は、前記凹み部の外部に外斜面を有し、
前記操作ピンが前記付勢手段の付勢力に抗して前記凹み部から脱出した場合、
前記外斜面と前記操作ピンとが前記付勢手段の付勢力で係合し、バリア羽根が開き位置または閉じ位置でその位置が保持される
ことを特徴とするレンズバリア装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のレンズバリア装置において、
前記操作ピンは、前記バリア羽根に突設され、
前記カム部の凹み部は、前記トグルレバーに設けられている
ことを特徴とするレンズバリア装置。

【図1】
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【図16】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−208233(P2012−208233A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72599(P2011−72599)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】