説明

レンズモジュールおよびカメラモジュール

【課題】プラスチックレンズの吸湿を防ぐことが可能なレンズモジュールおよびカメラモジュールを提供すること。
【解決手段】レンズモジュールA1は、レンズ11と、レンズ11を保持するレンズ支持体2と、を備えており、レンズ11は、プラスチックレンズからなる本体部11Aと、本体部11Aの表面を覆う吸湿防止機能を有する保護膜11Bと、を備えており、保護膜11Bは、レンズ11の表面のうち外気に接する全領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラまたは屋外に設置される監視カメラとして利用可能なカメラモジュール、および、上記カメラモジュールに使用されるレンズモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
図6には、従来のカメラモジュールに用いられるレンズモジュールの一例を示している(特許文献1参照)。図6に示すレンズモジュールXは、レンズユニット91、レンズホルダ92、および、レンズユニット91とレンズホルダ92とを連結するためのナット体93を備えている。
【0003】
近年、カメラモジュールの需要が増えたことに伴い、レンズモジュールの大幅なコストダウンおよび生産性の向上が求められている。このため、レンズユニット91にガラスレンズに替えてプラスチックレンズを採用することが検討されている。一方、プラスチックレンズは、空気中の水分を吸収すると、形状が変化したり、屈折率が変化したりすることがあった。従って、レンズユニット91にプラスチックレンズを用いた場合、レンズの性能を良好に保つことが困難であり、そのようなレンズユニット91を用いたカメラモジュールは良好な撮影が行えないことがあった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−23480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、プラスチックレンズの吸湿を防ぐことが可能なレンズモジュールおよびカメラモジュールを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるレンズモジュールは、レンズと、上記レンズを保持するレンズ支持体と、を備えたレンズモジュールであって、上記レンズは、プラスチックレンズからなる本体部と、上記本体部の表面を覆う吸湿防止機能を有する保護膜と、を備えており、上記保護膜は、上記レンズの表面のうち外気に接する全領域に形成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、上記保護膜により上記レンズの吸湿を防ぐことができるため、上記レンズの性能を良好に保つことができる。さらに、上記レンズの本体部はプラスチックレンズであるため、コストダウンおよび生産性の向上を図ることが可能となる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記保護膜は、ハードコートである。このような構成によれば、上記レンズの表面が傷つくのを防ぐことができる。
【0009】
本発明のより好ましい実施の形態においては、上記保護膜は、反射防止機能を有する。このような構成によれば、上記レンズモジュールは、より好ましく光を収束させることができる。
【0010】
本発明のより好ましい実施の形態においては、上記保護膜は、SiO2,TiO2,Al23,ZnO3,ZrO2のいずれかを含んでいる。
【0011】
本発明のより好ましい実施の形態においては、上記レンズは、PMMAにより形成されている。
【0012】
本発明のより好ましい実施の形態においては、上記レンズの表面は、外気に接し、光の出入りが可能な光透過面と、上記光透過面の周囲に設けられた周縁面と、を有しており、上記レンズ支持体は、上記周縁面と対向する内壁面を有しており、上記周縁面と上記内壁面との間に介在する封止用弾性体を備えており、上記保護膜は、上記光透過面の全面、および、上記周縁面のうち、上記封止用弾性体との接触部と上記光透過面との境界との間の全面に渡って設けられている。このような構成によれば、上記レンズの表面のうち、上記封止用弾性体により外気から遮断される領域の外側に露出する部分が上記保護膜によって覆われている。このため、上記レンズモジュールにおいては、上記レンズの本体部の吸湿を防ぐことができるため、上記レンズの性能を良好に保つことができる。
【0013】
本発明のより好ましい実施の形態においては、上記封止用弾性体によって外気から遮断された密封空間を有している。
【0014】
本発明のより好ましい実施の形態においては、上記密封空間には、乾燥不活性気体が充填されている。
【0015】
本発明の第2の側面によって提供されるカメラモジュールは、本発明の第1の側面によって提供されるレンズモジュールと、上記レンズモジュールによって導かれた光を受光する受光手段と、上記レンズモジュールと連結されるケースと、を備えており、上記封止用弾性体および上記ケースによって外気から遮断され、上記受光手段を収容する収容空間を有していることを特徴とする。このような構成によれば、性能の低下を招くことなく、コストダウンおよび生産性の向上を図ることが可能となる。さらに、上記受光手段も外気から遮断されるため、より好ましい画像を得ることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記収容空間には、乾燥不活性気体が充填されている。このような構成によれば、上記レンズの吸湿をより好ましく防ぐことができるとともに、上記受光手段に結露が発生するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図2は、本発明にかかるレンズモジュールの第1実施形態を示している。図1および図3は、図2に示すレンズモジュールA1が組み込まれたカメラモジュールの実施形態の一例を示している。図2に示すように、レンズモジュールA1は、レンズ11,12,13、スペーサ14、レンズ支持体2、オーリング31、光学フィルタ41、および、スペーサ42を備えている。レンズ支持体2は、鏡胴21とレンズ押さえ部材22とで構成されている。図1および図3に示すように、カメラモジュールBは、レンズモジュールA1、防水ゴムリング32,33、受光手段5、基板6、弾性シート61、コネクタ62、ケーブル63、レンズホルダ7、ケース8、および、ネジ9を備えている。
【0019】
鏡胴21は、上下に開口部を有する筒状に形成されており、レンズ12、スペーサ14、レンズ13、スペーサ42、および、光学フィルタ41を光軸Lに沿うように順に収容している。また、鏡胴21の外表面にはネジ山21aが形成されている。さらに、鏡胴21は、レンズ12の上に重ねられたレンズ11の下端を支持している。
【0020】
レンズ押さえ部材22は、上下に開口部を有する筒状に形成されており、間にレンズ11を挟んで鏡胴21の上部に取り付けられている。レンズ押さえ部材22は、内壁面22bと、ネジ山21aに対応するネジ山22aと、レンズ11を押さえる係合部22cとを備えている。ネジ山22aは、レンズ押さえ部材22の下端部の内面に形成されている。係合部22cは、レンズ押さえ部材22の上端部に形成されている。内壁面22bは、ネジ山22aと係合部22cとの間に形成されている。
【0021】
レンズ11は、本体部11Aと、本体部11Aの表面を覆うように形成された保護膜11Bとで構成されている。レンズ11の表面は、光の出入りが可能な光透過面11aと、光透過面11aの周囲に設けられた周縁面11bとを有している。さらに、レンズ11の外周には係合部22cを受け止めるための段差部11cが形成されている。周縁面11bは、光透過面11aの端縁からレンズ11の下端まで延びる面であり、段差部11cよりも下の部分において内壁面22bと対向している。内壁面22bと周縁面11bとの間には、本発明における封止用弾性体であるオーリング31が挟みこまれている。このため、内壁面22bと周縁面11bとの間から外気が入り込まないようになっている。なお、本体部11Aおよびレンズ12,13は、たとえばPMMAからなるプラスチックレンズである。
【0022】
保護膜11Bは、SiO2,TiO2,Al23,ZnO3,ZrO2のいずれかを含む緻密な膜を有しており、吸湿防止機能を備えたハードコートとして形成されている。さらに、保護膜11Bは、反射防止機能を有する膜および撥水コートを含んでいる。保護膜11Bは、光透過面11aおよび周縁面11bの大部分に渡って形成されている。ただし、周縁面11bのうちオーリング31との接触部より下側の部分は、外気から遮断される領域であるので、保護膜11Bが形成されていない。なお、保護膜11Bの形成は、まず、本体部11Aに反射防止機能を有する膜を形成し、次に、吸湿防止機能を備えたハードコートを形成し、さらにその後に、撥水コートを形成することによって行われる。
【0023】
ケース8は、図1および図3に示すように、ケース蓋部81とケース底部82とを組み合わせて構成されており、内部にレンズモジュールA1、受光手段5、基板6、弾性シート61、コネクタ62、および、ケーブル63を収容している。ケース蓋部81とレンズ押さえ部材22との間には防水ゴムリング32が挟まれており、ケース蓋部81とケース底部82との連結部分には、防水ゴムリング33が挟まれている。
【0024】
ケース8の内部には、防水ゴムリング32,33およびオーリング31によって外気から遮断された収容空間8Aが形成されている。この収容空間8Aには、乾燥窒素などの乾燥不活性気体が充填されている。なお、図示していないが、ケース底部82のケーブル63を通すための開口部分も防水封止されている。
【0025】
受光手段5は、CCDあるいはCMOSといった撮像素子からなり、各画素で受けた光の強度に応じた画素信号を出力する。受光手段5は、レンズモジュールA1からの光を受光可能なように光軸L上に配置されている。
【0026】
基板6は、表面に受光手段5を搭載しており、裏面にはケーブル63を接続するためのコネクタ62が設けられている。
【0027】
弾性シート61は、ケース底部82のリブ83と基板6の裏面との間でこれらの接触状態を緩衝させている。
【0028】
レンズホルダ7は、その上端部においてレンズモジュールA1を保持するとともに、その下端部が基板6と一体となっている。レンズホルダ7の上端部の内面にはネジ山21aと噛み合うネジ山が形成されている。
【0029】
ネジ9は、図1に示すように、ケース底部82のネジ孔82aを貫通してケース蓋部81の図示しないネジ孔に締め付けられる。
【0030】
次に、レンズモジュールA1およびカメラモジュールBの作用について説明する。
【0031】
本実施形態によれば、レンズ12,13は、収容空間8Aに収容されており、レンズ11の収容空間8Aから露出して外気に触れる部分には、吸湿防止機能を備えた保護膜11Bが形成されている。このため、レンズ11の本体部11Aおよびレンズ12,13が吸湿によって変形したり、屈折率の変動を起こしたりするのを防ぐことができる。従って、レンズモジュールA1が受光手段5に好ましく光を導くことが可能でありため、カメラモジュールBは好ましい撮影画像を得ることができる。
【0032】
本実施形態によれば、収容空間8Aには、乾燥不活性気体が充填されているため、レンズ11の本体部11Aおよびレンズ12,13の吸湿をより好ましく防ぐことができる。さらに、受光手段5に結露するのを防ぐことができるため、カメラモジュールBはより好ましい撮影画像を得ることができる。
【0033】
さらに、本実施形態によれば、レンズ11の本体部11Aおよびレンズ12,13はプラスチックレンズであるため、ガラスレンズを用いる場合に比べて、コスト削減および生産性の向上を図ることが可能となっている。
【0034】
さらにまた、本実施形態によれば、保護膜11Bは、撥水コートを含むため、レンズモジュールA1の防水性能が高くなっており、より一層本体部11Aが吸湿しにくくなっている。
【0035】
さらにまた、本実施形態によれば、保護膜11Bは、吸湿防止機能に加えて反射防止機能を有するハードコートである。このため、レンズモジュールA1は、傷つきにくく、さらに不要な反射を起こしにくくなっており、より好ましく受光手段5に光を導くことができる。
【0036】
図4には、本発明にかかるレンズモジュールの第2実施形態を示している。なお、図4においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。図4に示すレンズモジュールA2は、レンズモジュールA1と同様に、カメラモジュールBに組み込んで使用される。
【0037】
レンズモジュールA2では、レンズモジュールA1の場合と比較して段差部11cがレンズ11の径方向により広がるように形成されている。このため、周縁面11bのうち、段差部11cの上面が占める割合が比較的大きくなっており、内壁面22bは段差部11cの上面と対向するように形成されている。また、本実施形態では、保護膜11Bは、段差部11cの上面全体を覆うように形成されている。
【0038】
このようなレンズモジュールA2においても、レンズモジュールA1と同様に、レンズ11の外気に触れる部分には保護膜11Bが形成されている。このため、レンズモジュールA2においても、レンズ11の本体部11Aおよびレンズ12,13が吸湿によって変形したり、屈折率の変動を起こしたりするのを防ぐことができる。
【0039】
図5には、本発明にかかるレンズモジュールの第3実施形態を示している。なお、図5においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。図5に示すレンズモジュールA3は、レンズモジュールA1と同様に、カメラモジュールBに組み込んで使用される。
【0040】
レンズモジュールA3では、レンズ13が本体部13Aと保護膜13Bとで構成されている。本体部13Aは、たとえばPMMAからなるプラスチックレンズである。保護膜13Bは、保護膜11Bと同様に、SiO2,TiO2,Al23,ZnO3,ZrO2のいずれかを含む緻密な膜を有しており、吸湿防止機能を備えたハードコートとして形成されている。さらに、レンズ13の外面は、光の出入りが可能な光透過面13aと、光透過面13aの周囲に設けられた周縁面13bと、を有している。
【0041】
さらに本実施形態では、鏡胴21は、その下端部に、内壁面21bを有している。この内壁面21bと周縁面13bとの間には、オーリング34が挟みこまれている。従って、レンズモジュールA3では、オーリング31,34により外気と遮断された密封空間2Aが形成されている。この密封空間2Aには、乾燥窒素などの乾燥不活性気体が充填されている。
【0042】
レンズモジュールA3では、レンズ11,13の密閉空間2Aから露出して外気に接する部分には保護膜11B,13Bが形成されている。このため、カメラモジュールBに組み込む前の状態でも、レンズ11,13の本体部11A,13Aおよびレンズ12が吸湿するのを防ぐことができる。
【0043】
本発明にかかるレンズモジュールおよびカメラモジュールは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明にかかるレンズモジュールおよびカメラモジュールの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明にかかるカメラモジュールの実施形態の一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明にかかるレンズモジュールの第1実施形態を示す断面図である。
【図3】図1に示すカメラモジュールの断面図である。
【図4】本発明にかかるレンズモジュールの第2実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明にかかるレンズモジュールの第3実施形態を示す断面図である。
【図6】従来のレンズモジュールの一例を示す分解平面図である。
【符号の説明】
【0045】
A1,A2,A3 レンズモジュール
B カメラモジュール
2 レンズ支持体
2A 密封空間
5 受光手段
6 基板
7 レンズホルダ
8A 収容空間
8 ケース
9 ネジ
11,12,13 レンズ
11a 光透過面
11b 周縁面
11A,13A 本体部
11B,13B 保護膜
14 スペーサ
21 鏡胴
21a,22a ネジ山
22b,22b 内壁面
22 レンズ押さえ部材
22c 係合部
31,34 オーリング
32,33 防水ゴムリング
41 光学フィルタ
42 スペーサ
61 弾性シート
62 コネクタ
63 ケーブル
81 ケース蓋部
82 ケース底部
82a ネジ孔
83 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
上記レンズを保持するレンズ支持体と、
を備えたレンズモジュールであって、
上記レンズは、プラスチックレンズからなる本体部と、上記本体部の表面を覆う吸湿防止機能を有する保護膜と、を備えており、
上記保護膜は、上記レンズの表面のうち外気に接する全領域に形成されていることを特徴とする、レンズモジュール。
【請求項2】
上記保護膜は、ハードコートである、請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項3】
上記保護膜は、反射防止機能を有する、請求項1または2に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
上記保護膜は、SiO2,TiO2,Al23,ZnO3,ZrO2のいずれかを含んでいる、請求項1ないし3のいずれかに記載のレンズモジュール。
【請求項5】
上記レンズは、PMMAにより形成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のレンズモジュール。
【請求項6】
上記レンズの表面は、外気に接し、光の出入りが可能な光透過面と、上記光透過面の周囲に設けられた周縁面と、を有しており、
上記レンズ支持体は、上記周縁面と対向する内壁面を有しており、
上記周縁面と上記内壁面との間に介在する封止用弾性体を備えており、
上記保護膜は、上記光透過面の全面、および、上記周縁面のうち、上記封止用弾性体との接触部と上記光透過面との境界との間の全面に渡って設けられている、請求項1ないし5のいずれかに記載のレンズモジュール。
【請求項7】
上記封止用弾性体によって外気から遮断された密封空間を有している、請求項6に記載のレンズモジュール。
【請求項8】
上記密封空間には、乾燥不活性気体が充填されている、請求項7に記載のレンズモジュール。
【請求項9】
上記請求項6ないし8に記載のレンズモジュールと、
上記レンズモジュールによって導かれた光を受光する受光手段と、
上記レンズモジュールと連結されるケースと、
を備えており、
上記封止用弾性体および上記ケースによって外気から遮断され、上記受光手段を収容する収容空間を有していることを特徴とする、カメラモジュール。
【請求項10】
上記収容空間には、乾燥不活性気体が充填されている、請求項9に記載のカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−156734(P2010−156734A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333529(P2008−333529)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】