説明

レンズ収納容器からのレンズ取り出し方法

【課題】端部に固定のピンが形成されたスティック状のレンズ収納容器から空気圧を利用したレンズの取り出しに際し、収納容器内の全てのレンズを容易に取り出すことができ、更には所望する個数の取り出しが可能なレンズ取り出し方法を得ること。
【解決手段】複数のレンズを一列に並べて収納するスティック状の容器であって、一方の端部にレンズの挿入及び取り出しのための開口部が形成され、他方の端部に開口部及びレンズ落下防止用の固定ピンが形成されたレンズ収納容器からレンズを取り出すとき、他方の端部の開口部より圧縮空気を間欠的に供給し、一方の端部の開口部よりレンズを取り出すレンズ取り出し方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のレンズを移送又は保管するためのレンズ収納容器からレンズを取り出すためのレンズ取り出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ピックアップ装置用の対物レンズを移送又は保管するためのスティック状のレンズ収納容器が知られている。
【0003】
このようなスティック状のレンズ収納容器として、その両端に着脱可能なキャップを設けることによりレンズが落下することを防止したレンズ収納容器、及び、一端に着脱可能なキャップを設け、他端に固定のピンを設けることによりレンズが落下することを防止したレンズ収納容器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、複数のレンズを一列に並べて収納した容器から、レンズの自重や空気圧等を利用或いは併用して、別のレンズ収納容器へ移し替える方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−211668号公報
【特許文献2】特開2004−238001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、スティック状のレンズ収納容器から他の収納容器への移し替えだけでなく、例えば、スティック状のレンズ収納容器から直接的に該レンズを保持する鏡枠等に1個ずつ取り出し、組み込みが行えるようにしたいという要望がある。しかしながら、自重による取り出しでは取り出し個数の制御が困難である。
【0006】
このため、収納容器を平置き又は取り出す端部を上方に向けた状態で、空気圧を利用してレンズを取り出すことが考えられる。
【0007】
一方、上記特許文献1に記載の、一端に着脱可能なキャップを設け、他端に固定のピンを設けた収納容器は、ピン側のキャップが例え外れても、ピン側が重力方向にあれば、レンズが脱落しない利点を有するものであるが、空気圧を利用してレンズを取り出そうとした場合、以下のような不具合がある。
【0008】
図5は、固定のピンを設けた収納容器から空気圧を利用してレンズを取り出す場合の不具合を示す図である。
【0009】
同図は断面模式図であり、10はレンズ収納容器、11wはレンズ収納容器の壁面、11pは固定のピン、1は収納されたレンズ、を示している。
【0010】
同図に示すように、固定のピン側から圧縮空気を矢印方向に単に供給した場合、ピン11p周囲及び後方での空気流の巻き込み等により、ピン側のレンズ1は逆にピン方向へ圧力を受け、収納容器内に滞留し、取り出せなくなるという問題が発生する。
【0011】
本発明は上記問題に鑑み、端部に固定のピンが形成されたスティック状のレンズ収納容器を用いる場合であっても、空気圧を利用したレンズの取り出しの際に、収納容器内の全てのレンズを確実且つ容易に取り出すことができ、更には所望する個数の取り出しが可能なレンズ取り出し方法を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0013】
1.複数のレンズを一列に並べて収納するスティック状の容器であって、一方の端部にレンズの挿入及び取り出しのための開口部が形成され、他方の端部に開口部及びレンズ落下防止用の固定ピンが形成されたレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法において、
前記他方の端部の開口部より圧縮空気を間欠的に供給することにより、前記一方の端部の開口部より前記レンズを取り出すことを特徴とするレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【0014】
2.前記圧縮空気の供給は、電磁弁を制御することにより行われることを特徴とする1に記載のレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【0015】
3.前記レンズを1個ずつ取り出すように、前記圧縮空気の供給量を制御することを特徴とする1又は2に記載のレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【0016】
4.複数のレンズを一列に並べて収納するスティック状の容器であって、両方の端部にレンズの挿入及び取り出しが可能な開口部が形成されたレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法において、一方の端部の開口部より圧縮空気を間欠的に供給することにより、他方の端部の開口部より前記レンズを取り出すことを特徴とするレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【0017】
5.前記圧縮空気の供給は、電磁弁を制御することにより行われることを特徴とする4に記載のレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【0018】
6.前記レンズを1個ずつ取り出すように、前記圧縮空気の供給量を制御することを特徴とする4又は5に記載のレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明のレンズ取り出し方法によれば、端部に固定のピンが形成されたスティック状のレンズ収納容器から空気圧を利用してレンズを取り出す場合に、収納容器内の全てのレンズを確実且つ容易に取り出すことができる。
【0020】
また、本発明のレンズ取り出し方法によれば、端部に固定のピンが無く両端にレンズの挿入及び取り出しが可能な開口部が形成されたスティック状のレンズ収納容器から空気圧を利用してレンズを取り出す場合に、収納容器内の全てのレンズを確実且つ容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施の形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1は、本実施の形態に係るレンズ取り出し方法を適用するレンズ収納容器の概略を示す断面図である。同図(a)はレンズ収容容器内部の状態を示す横断面図、同図(b)はレンズ収容容器内部の状態を示す縦断面図、同図(c)は同図(b)に示すF−F線で切断した断面図である。
【0023】
同図に示すレンズ収納容器10は、例えばプラスチック製の光学素子であるレンズ1を一列に並べ、レンズ1の最外周に形成されたフランジ部1fを相互に当接させた状態で収納される。なお、本実施の形態におけるレンズ1は、光ピックアップ装置用の対物レンズである。
【0024】
同図(c)に示すように、レンズ収納容器10は、コの字部材11の壁面部11wの先端と、レール部材12の当接部12tが、溶着や接着により接合されて形成され、筒状の空間が形成される。この空間にレンズ1が一列に収納される。
【0025】
レンズ収納容器10の一方の端部には開口部が形成され、レンズ1の挿脱が可能となっている。また、レンズ収納容器10の他方の端部には、開口部からのレンズ1の脱落を防止するために、コの字部材11にピン11pが形成されている。
【0026】
また、移送或いは保管時には、開口部に蓋部材21が装着され、レンズ1の脱落が防止されるようになっている。
【0027】
図2は、本実施の形態に係るレンズ取り出し方法を適用する装置構成を示すブロック図である。
【0028】
同図に示すように、両方の端部の蓋部材21が取り外された状態で、レンズ収納容器10のピン11pが形成されている側の端部にパイプ35が接続される。パイプ35は可撓性を有するものが好ましい。パイプ35の上流側には、電磁弁31が接続され、更に、順に防塵フィルタ32、圧力タンク33、コンプレッサ34が接続されている。
【0029】
コンプレッサ34は外部の空気を圧力タンク33内に供給するものである。防塵フィルタ32は圧力タンク33から供給される圧縮空気中のゴミを排除するためのものである。
【0030】
電磁弁31は、例えば、ソレノイド等に通電することにより弁を切り替え、防塵フィルタ32を通過した圧縮空気をパイプ35へ供給する流路と、外部へ放出する流路(図示G)に切り替えることが可能なものであり、電磁弁31そのものは公知のものでよい。
【0031】
電磁弁31には、例えば、ソレノイド等に通電するためのドライバ36が接続され、ドライバ36は、例えば、プログラマブル・ロジック・コントローラ(以下、PLCと称す)40により制御される。即ち、PLC40での設定により、任意の時間で電磁弁31の流路を切り替えることができるようになっている。
【0032】
レンズ収納容器10は、水平に支持されるか、レンズ1が排出される側の開口部がやや上方となるよう支持されている。
【0033】
電磁弁31が、防塵フィルタ32を通過した圧縮空気をパイプ35へ供給する流路に設定した際には、パイプ35を介して圧縮空気がレンズ収納容器10に供給され、収納されたレンズ1は、圧縮空気により押圧されレンズ収納容器10の外へ排出される。
【0034】
なお、不図示であるが、レンズ収納容器10のレンズ1が排出される側の開口部には、例えば、光ピックアップ装置においてレンズ1を保持するホルダや、トレイ状の容器が配置されている。
【0035】
図3は、図2に示すように装置がセットされた状態での、本実施の形態に係るレンズ取り出し方法の概略動作(レンズ排出モード)を示すフローチャートである。同フローチャートは、レンズ収納容器から1個ずつレンズを取り出す場合の一例を示したものである。以下、同図に示すフローに従い説明する。
【0036】
同図のフローにおいて、まず、レンズ収納容器内のレンズ個数等の緒元をPLC40に入力する(ステップS101)。これは、PLC40にキーボード或いはマウス等を用いて入力される。緒元とは、例えば、レンズ収納容器内にあるレンズ個数、レンズ収納容器の断面積、レンズの質量、レンズ収納容器、レンズの型番等、圧縮空気供給時間の設定に必要なものである。
【0037】
次いで、第1回目の圧縮空気供給時間が設定される(ステップS102)。この第1回目の圧縮空気供給時間の設定は、ステップS101で入力された緒元から、予め記憶されたルックアップテーブルを参照、或いはプログラムを用いた演算により決められるようになっている。
【0038】
この後、排出スタートの命令がなされるのを待機する(ステップS103)。排出スタートの命令は、PLC40のキーボード或いはマウス等を用いてなされる。排出スタートの命令がなされる(ステップS103;Yes)と、まず電磁弁31がステップS102で設定された圧縮空気供給時間だけパイプ35へ圧縮空気を供給するように切り替わる。これにより、設定した時間だけレンズ収納容器10へ圧縮空気が供給され(ステップS104)、レンズ1が1個だけ排出される。
【0039】
この後、電磁弁31を作動させ、圧縮空気を外部へ放出する流路に切り替える。これにより、パイプ36への圧縮空気の供給が一旦停止される(ステップS105)。次いで、レンズ収納容器10内のレンズ個数NをN−1に置き換える(ステップS106)。次いで、Nが0か否か判断する(ステップS107)。Nが0でない場合(ステップS107;No)は、レンズ収納容器10内の置き換えられたレンズ個数Nでの圧縮空気供給時間が設定される(ステップS108)。この、圧縮空気供給時間もルックアップテーブル或いはプログラムを用いて演算により決められる。
【0040】
次いで、強制停止操作が行われたか否か判断する(ステップS109)。強制停止操作とは、レンズ排出の停止を意味し、例えば、オペレータにより、何らかの不具合の発生に対応して、PLC40を操作することにより行われるものである。
【0041】
強制停止操作が行われていない場合(ステップS109;No)には、ステップS104へ戻り、ステップS108で設定された圧縮空気供給時間だけ電磁弁31が切り替わり、パイプ35へ圧縮空気が供給される。これにより、次のレンズ1が1個排出される。
【0042】
即ち、N≠0で(レンズ収納容器10内にレンズがある)、強制停止操作がなされない場合には、ステップS104〜ステップS109が繰り返される。
【0043】
図4は、電磁弁31の動作を示す図である。ステップS104では、電磁弁31は設定された時間Aだけ、パイプ側に圧縮空気を供給するように切り替わり、時間A経過後は圧縮空気を外部へ放出する流路に切り替える(図示B)動作がおこなわれる。これにより、レンズ収納容器10への圧縮空気の供給が間欠的に行われる。
【0044】
図3に戻り、N=0(ステップS107;Yes)となるか又は、強制停止操作(ステップS109;Yes)された場合に、終了する。
【0045】
以上が、レンズ収納容器10から1個ずつレンズを取り出す場合の、本実施の形態に係るレンズ取り出し方法の概略動作である。
【0046】
上記のステップS104及びステップS105及び図4に示すように、圧縮空気を間欠的に供給することで、端部に固定のピン11pが形成されたスティック状のレンズ収納容器10から空気圧を利用してレンズを取り出す場合でも、レンズ収納容器10内のピン11p近傍のレンズ1の滞留を解消でき、全てのレンズを確実且つ容易に取り出すことができるようになる。
【0047】
なお、上記の実施の形態では、レンズ1を1個ずつ排出する場合の例で説明したが、これに限るものでなく、間欠的な圧縮空気の供給のうちの1回の供給で複数のn個のレンズ1が排出されるような圧縮空気供給時間を設定し、ステップS106をN=N−n、ステップS107をN≦0か否か、とすることで、順次レンズ1を複数個ずつ排出する場合にも適用可能である。
【0048】
また、上記の実施の形態のレンズ収納容器10に代えて、レンズ収納容器に固定のピンが無いことのみが異なるレンズ収納容器を用いて、上記の実施の形態と同様に動作させたところ、全く問題なく、全てレンズを確実且つ容易に取り出すことができた。
【0049】
また、上記の実施の形態では、排出するレンズの個数やレンズ収納容器内に残っているレンズの個数に応じて圧縮空気供給時間を制御する例を説明したが、間欠的な圧縮空気の1回の供給によって排出させたい所望のレンズ個数を実現する他の例としては、収納容器内に残っているレンズ個数によらず必要充分な圧縮空気供給時間を設定し、排出されたレンズの受取り側にて所望のレンズ個数のみ受取り可能に容器の形状を工夫すること等を挙げることができ、このような場合にも、間欠的な圧縮空気の供給によるレンズ取り出し方法を適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態に係るレンズ取り出し方法を適用するレンズ収納容器の概略を示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係るレンズ取り出し方法を適用する装置構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すように装置がセットされた状態での、本実施の形態に係るレンズ取り出し方法の概略動作(レンズ排出モード)を示すフローチャートである。
【図4】電磁弁の動作を示す図である。
【図5】固定のピンを設けた収納容器から空気圧を利用してレンズを取り出す場合の不具合を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 レンズ
10 レンズ収納容器
11 コの字部材
12 レール部材
21 蓋部材
31 電磁弁
32 防塵フィルタ
33 圧力タンク
34 コンプレッサ
35 パイプ
36 ドライバ
40 プログラマブル・ロジック・コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズを一列に並べて収納するスティック状の容器であって、一方の端部にレンズの挿入及び取り出しのための開口部が形成され、他方の端部に開口部及びレンズ落下防止用の固定ピンが形成されたレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法において、
前記他方の端部の開口部より圧縮空気を間欠的に供給することにより、前記一方の端部の開口部より前記レンズを取り出すことを特徴とするレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【請求項2】
前記圧縮空気の供給は、電磁弁を制御することにより行われることを特徴とする請求項1に記載のレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【請求項3】
前記レンズを1個ずつ取り出すように、前記圧縮空気の供給量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【請求項4】
複数のレンズを一列に並べて収納するスティック状の容器であって、両方の端部にレンズの挿入及び取り出しが可能な開口部が形成されたレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法において、
一方の端部の開口部より圧縮空気を間欠的に供給することにより、他方の端部の開口部より前記レンズを取り出すことを特徴とするレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【請求項5】
前記圧縮空気の供給は、電磁弁を制御することにより行われることを特徴とする請求項4に記載のレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。
【請求項6】
前記レンズを1個ずつ取り出すように、前記圧縮空気の供給量を制御することを特徴とする請求項4又は5に記載のレンズ収納容器からのレンズ取り出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−213873(P2008−213873A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52448(P2007−52448)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】