説明

レンズ装置及びカメラシステム

【課題】 フィルムが使用されるカメラ及び撮像素子を備えたデジタルカメラの双方が着脱可能に装着される交換レンズにおいて、どちらのカメラが装着されても制度の高いフォーカス制御をできるようにする。
【解決手段】 それぞれレンズ装置(2b)から受信した情報を用いて演算を行うカメラであり、フィルム(18)を使用する第1のカメラ(1a)と撮像素子(17)を備えた第2のカメラ(1b)とに装着可能なレンズ装置であって、前記第1のカメラに対応した第1の情報と前記第2のカメラに対応した第2の情報を生成するための第3の情報とを記憶した記憶手段(11)と、前記第1及び第2の情報のうち該レンズ装置が装着されたカメラに対応する情報を該カメラに送信する制御手段(10)とを有することを特徴とするレンズ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムが使用されるカメラ及び撮像素子を備えたカメラに対して着脱可能なレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の銀塩フィルムを用いた一眼レフカメラは、多くの交換レンズユニットを揃えてシステム化されている。近年、撮像素子(例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ)を用いたデジタルカメラの製品化が活発になっている。レンズ交換が可能な一眼レフタイプのデジタルスチルカメラにおいては、動画用カメラ(ビデオムービー)及びコンパクトデジタルスチルカメラよりも撮影画像を高画質化するために、撮像素子の寸法を大きく設定しており、その画素数は400〜600万画素程度のものが主流となっている。
【0003】
さらに、最近では1000万画素を超える撮像素子も製品化されており、今後はさらなる高画素化の要求に伴い、銀塩フィルム以上の高画質化が求められる。
【0004】
レンズ交換が可能な一眼レフタイプのデジタルスチルカメラのうち、デジタルカメラ専用の交換レンズしか使用できないカメラがある。
【0005】
一方、既に発売されている銀塩用交換レンズを購入しているユーザのために、デジタルカメラ専用レンズ及び銀塩用交換レンズの双方の着脱が可能なカメラが提案されている。このカメラの場合、銀塩カメラとデジタルカメラ両方を所有しているユーザにとっては同じレンズを両カメラで使用できるメリットがある。
【0006】
銀塩フィルム用カメラと異なり、デジタルカメラの場合、通常偽色やモアレなどの不具合を緩和防止するために撮像素子と交換レンズの間に厚みを持った板状のローパスフィルタを配置している。
【0007】
また、撮像素子は長波長側の赤外域に感度を有しているため、分光感度を可視域に補正するためにダイクロフィルタ特性を有する板状部材を配置している。例えば、銀塩カメラ用交換レンズをデジタルカメラに装着した場合、前述したようなローパスフィルタ、ダイクロフィルタさらに撮像素子のカバーガラス等が配置されているため、レンズから撮像素子の受光面に結像する入射光は、光学的に1〜4mm程度の厚み寸法を有する平板ガラスを通過した場合と同様の作用を及ぼすことになる。
【0008】
平板ガラスを通過することによりレンズの焦点距離は変化しないが、平板ガラス空気換算相当の光路長のピント位置変化と、平板ガラスを通過することによる光学収差である球面収差や像面湾曲等が変化することにより、ベストピント位置が変化することになる。
【0009】
前記平板ガラス空気換算相当の光路長のピント位置変化に関しては、前記平板ガラス相当の厚みだけに依存する固定量であり、その量はそのデジタルカメラ固有の固定量となるために、例えばデジタルカメラ側で交換レンズの取り付け位置基準を銀塩カメラの取り付け基準に対してシフトさせることで対応可能である。
【0010】
また、カメラ側でレンズのフォーカス時に補正することも技術的には可能である。しかしながら光学収差の変化によるベストピント位置変化に関しては、交換レンズの光学的諸特性と平板ガラス相当の厚みの2つの要素の相乗的なものに依存することより、従来のレンズ、カメラシステムではデジタルカメラが交換レンズのROM情報等より、レンズのFno情報や射出瞳位置情報とカメラが保有しているデジタルカメラの前記平板ガラス相当厚み情報をもとにして、カメラ側でその影響に対する補正量を、演算や情報テーブルを使い求め、カメラがレンズのピント位置を制御するときに使用していた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−112859号公報(段落番号0008など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、交換レンズでの光学収差はレンズ構成、設計思想、グレード等によりさまざま形をしており、同じレンズ仕様であっても光学収差の量、その形状は全く異なる。同じ焦点距離、Fno、射出瞳位置であっても光学収差が違う場合は、同じ厚みの平板ガラスを入れたときの収差変化量は微妙に異なり、概算値としてレンズ仕様情報(Fナンバー、射出瞳位置)と平板ガラス相当厚み情報から算出された概算値とはずれが生じ、その差分はピント位置の誤差となってしまう。
【0012】
また、銀塩カメラで使用される銀塩フィルムとデジタルカメラ用の固体撮像素子ではその分光感度特性が大きく異なり、このように記録媒体の分光感度特性が異なる場合、レンズ固有の色収差によってそのベストピント位置が銀塩フィルムとデジタルカメラの撮像素子では異なるといった問題がある。
【0013】
銀塩用カメラとデジタルカメラの一方にしか装着できないようなシステムでは問題にはならないが、両カメラシステムに装着可能な交換レンズシステムの場合、最適化が難しいために高画質、高性能化が難しいといった問題がある。
【0014】
デジタルカメラ用レンズのみ装着可能なカメラシステムでは、その閉じたシステムの中では高画質化、高性能化は可能であるが、既存の銀塩用交換レンズは機構上装着不可としている場合もある。銀塩用カメラとデジタルカメラの両方に高性能、高画質を要求した場合、銀塩カメラ用交換レンズとデジタルカメラ用交換レンズをそれぞれ独立に持つ必要があり非常に不経済となる。
【0015】
そこで、本発明は、デジタル用カメラシステムおよび銀塩用カメラシステムの両方のカメラに装着可能な交換レンズにおいて、どちらのカメラシステムに装着されても高性能、高精度を得ることかできるレンズ装置およびカメラシステムを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本願発明のレンズ装置は、一つの観点として、それぞれレンズ装置から受信した情報を用いて演算を行うカメラであり、フィルムを使用する第1のカメラと撮像素子を備えた第2のカメラとに装着可能なレンズ装置であって、第1のカメラに対応した第1の情報と第2のカメラに対応した第2の情報を生成するための第3の情報とを記憶した記憶手段と、第1及び第2の情報のうちレンズ装置が装着されたカメラに対応する情報をカメラに送信する制御手段とを有することを特徴とする。ここで、上記構成において、第1及び第2の情報を記憶手段に記憶させ、これらの情報のうちレンズ装置が装着されたカメラに対応する情報をカメラに送信するようにしてもよい。また、記憶手段に第2の情報と第1の情報を生成するための第3の情報とを記憶させ、第1及び第2の情報のうちレンズ装置が装着されたカメラに対応する情報をカメラに送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レンズ装置をフィルムが使用される第1のカメラおよび撮像素子を備えた第2のカメラのうちいずれに装着した場合であっても、それぞれのカメラシステムにおい各カメラに対応した情報をカメラに送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を用いて本発明の実施例であるレンズ交換式のカメラシステムについて説明する。ここで、図1は、本発明の実施例であるカメラシステムの機能ブロック図である。同図において、1bはデジタルカメラ、2はデジタルカメラ1bに対して着脱可能な撮影レンズ(レンズ装置)であり、点線は機械的な接続を表し、実線は電気的な接続を表している。
【0019】
まず、撮影レンズ2の構成を説明する。7は焦点調節のために移動するフォーカスレンズ3の駆動力を発生する動力源であるモータ、6はモータ7の出力の減速とトルクアップを行うための減速器である。5は減速器6からの出力をフォーカスレンズ3の光軸方向駆動力に変換するカム筒等を含むフォーカスユニットである。
【0020】
10は撮影レンズ2内のすべての制御を司るレンズマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)(制御手段)、11はRAM、ROM、EEPROM等の内部メモリ(記憶手段)であり、後述するベストピント(以下、「BP」という場合もある)データ,レンズの仕様情報(Fナンバー、射出瞳位置等)などが記憶されている。
【0021】
4はレンズマイコン10からモータ7に駆動電力を与えるためのドライバ回路、9は減速器6およびフォーカスユニット5を介してモータ7によって駆動されるフォーカスレンズ3の移動に応じて信号(パルス信号)を出力するエンコーダユニットである。なお、このエンコーダユニット9は、モータ7の回転量を検出するものであってもよい。
【0022】
12はレンズマイコン10がデジタルカメラ1bとの通信を行うための接点を有するレンズ接点ユニットである。
【0023】
次に、デジタルカメラ1bの構成を説明する。15はデジタルカメラ1bおよびカメラシステムの全ての制御を司るカメラマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)である。13はカメラマイコン15から出力された指令信号に応じて、撮影レンズ1内の撮影光学系の被写体に対するピントずれ量を検出する焦点検出ユニットである。焦点検出ユニット13の動作については、後述する。
【0024】
14はカメラマイコン15からの命令に応じて、被写体の輝度を測定するための測光ユニット、16はカメラマイコン15がレンズマイコン10と通信を行うための接点を有するカメラ接点ユニットである。デジタルカメラ1bに撮影レンズ2を装着すると、カメラ接点ユニット16がレンズ接点ユニット12に電気的に接触し、カメラマイコン15とレンズマイコン10との間での通信およびデジタルカメラ1b側からレンズ2側への電源供給が可能となる。
【0025】
17は撮影レンズ2の撮影光学系により形成される被写体像を光電変換して画像信号を出力する、CCD,CMOSセンサ等の撮像素子であり、不図示のカバーガラスによって覆われている。撮像素子17から出力された画像信号は、不図示の画像処理回路により画像処理され、不図示の記録媒体(半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等)に記録される。
【0026】
撮像素子17と撮影レンズ2の間には、不図示のローパスフィルタ、ダイクロフィルタが配置されている。該ローパスフィルタによって偽色やモアレなどの不具合を抑制することができ、該ダイクロイックフィルタによって分光感度を可視域に補正することができる。
【0027】
次に、銀塩カメラ1aの構成について説明する。ただし、焦点検出ユニット13、測光ユニット14、カメラマイコン15及び接点16の構成については、デジタルカメラ1bの構成と略同様であるため、説明を省略する。
【0028】
18は被写体光が露光されるフィルムであり、フィルム駆動ユニット19によって駆動される。銀塩カメラ1aには、デジタルカメラ1bの光学ローパスフィルタ、ダイクロイックフィルタに相当する光学部材が組み込まれていない。
【0029】
次に、図2を参照して、従来の銀塩カメラ用の撮影レンズ2aを銀塩カメラ1a及びデジタルカメラ1bに装着した際の、フォーカス制御の手順を説明する。ここで、図2は、従来の銀塩カメラ用の撮影レンズ2aを銀塩カメラ1a及びデジタルカメラ1bに装着した際の、フォーカス制御の制御手順を示したフローチャートである。
【0030】
同図において2aは従来の銀塩カメラ用の撮影レンズであり、この撮影レンズ2aに組み込まれたレンズ内部メモリ11には、メモリ情報の一部としてBPデータが記憶されている。このBPデータは、撮影レンズ2aがカメラ1に装着された場合に、レンズ内部メモリ11から読み出されて、レンズ接点ユニット12及びカメラ接点ユニット16を介してカメラ1に送信される。
【0031】
ここで、BPデータとは、カメラ1がフォーカス制御を行うときに、カメラ1の焦点検出ユニット13によって検出されたデフォーカス情報に対応した、フォーカスレンズ3の駆動量に関する情報である。
【0032】
このBPデータはレンズ固有の情報であり、このBPデータをフォーカス制御の際に用いることにより、ズーム領域や撮影被写体距離等の撮影条件が異なる複数の撮影レンズ2aに対して、常にベストピントに合わせられるように、フォーカス制御を行うことができる。
【0033】
通常BPデータは、撮影レンズ2aの種類に応じて測定された設計基準データと、この設計基準データを補正する、製造誤差などに基づく各撮影レンズ固有の補正データとから構成されており、カメラ1はこれらのデータの演算値を撮影レンズ2aのフォーカス制御用データとして使用している。
【0034】
次に、銀塩カメラ用の撮影レンズ2aがデジタルカメラ1bに装着された場合のカメラシステムの動作について説明する。ここで、前述したように、デジタルカメラ1bの場合、銀塩カメラ1aと異なり撮像素子17と撮影レンズ2との間にローパスフィルタ、ダイクロイックフィルタ、カバーガラス等を有しているため、これらの光学的な作用によりBP位置が変化する。このBP位置の変化量の概算値は、前記要素(ローパスフィルタ、ダイクロイックフィルタ、カバーガラスなど)の材質、総合的な厚み、撮影レンズ2の仕様(Fナンバー、射出瞳位置等)を用いることにより計算が可能である。
【0035】
銀塩用の撮影レンズ2aがデジタルカメラ1bに装着された場合、内部メモリ11に記憶された銀塩用のBPデータ及び撮影レンズの仕様情報が、レンズ接点ユニット12及びカメラ接点ユニット16を介して、撮影レンズ2aからカメラ側に送信される(ステップS11)。
【0036】
ここで、デジタルカメラで取り込まれた銀塩用BPデータは、前述した理由でそのままでは使うことができない。
【0037】
そのため、デジタルカメラ1bは、内部メモリ11から読み出されたレンズの仕様情報と、カメラ自体の固有値のピント位置変化要素情報(対銀塩カメラ)をもとにして、その銀塩カメラ用BPデータに対してデジタルカメラ特有の補正データを算出し、その補正データを銀塩用BPデータに加算して、補正レンズBPデータを生成する(ステップS12)。
【0038】
そして、この補正レンズBPデータを用いて、レンズのベストピント位置を演算し、この演算結果を駆動データとして銀縁用の撮影レンズ2aに送信する(ステップS13)。これにより、フォーカスレンズ3がベストピント位置に駆動される。前述したように、補正値が概算値であることや、レンズの固有の色収差からくるピント位置の誤差に関しては補正されていない。
【0039】
なお、銀塩用の撮影レンズ2aが銀塩カメラ1aに装着された場合には、撮影レンズ2aから銀塩カメラ2aにBPデータが送信され(ステップS1)、銀塩カメラ2aは、このBPデータを用いて、フォーカスレンズ3のベストピント位置を演算する。
【0040】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1であるカメラシステムについて、図1及び図3を用いて説明する。ここで、図3は、新レンズ2が保有しているメモリ情報とデジタルカメラ1bに新レンズ2を装着したカメラシステムのフォーカス制御手順とを示したフローチャートである。なお、以下のフローチャートにおけるカメラ側の制御は、カメラマイコン15によって実行され、レンズ側の制御は、レンズマイコン10によって実行される。
【0041】
図3において、2は銀塩カメラ1a及びデジタルカメラ1bの双方に対して着脱可能な新レンズであり。この新レンズ2の内部メモリ11には、メモリ情報として、銀塩用BPデータ(第1の情報)、補正データ(銀塩カメラ用BPデータとデジタルカメラ用BPデータの差のデータ)(第2の情報)、デジタルBP保有フラグ(デジタルカメラ用BPをメモリ情報として有していることを認識するための情報)(第3の情報)が記憶されている。
【0042】
デジタルカメラ用のBPデータは、銀塩用BPデータに補正データを加算することにより求められ、デジタルカメラ1bからの要求信号に応じてデジタルカメラ1bに送信される。
【0043】
内部メモリ11に記憶された補正データは、デジタルカメラ1bで使用されるピント位置変化要素の標準条件(光軸方向におけるローパスフィルタ、カバーガラス、ダイクロイックフィルタ等の総厚みが3mm)であり、実際のレンズ収差を考慮して算出された値である。これは、デジタルカメラが仮に標準条件であれば正確な補正値データとなり、レンズ固有の色収差や他の光学収差に違いがあっても、正確にフォーカス制御することができる。
【0044】
図3において、銀塩カメラ1aに新レンズ2が装着された場合、従来と同じように新レンズ2からカメラ側に内部メモリ11に記憶された銀塩用BPデータが送信され、この銀塩用BPデータを用いてフォーカスレンズ3のベストピント位置が決定される。そして、このベストピント位置までの距離に応じたモータ7のパルス駆動量を算出して、この駆動パルス数分だけモータ7を駆動することにより、フォーカスレンズ3をベストピント位置に移動させる。
【0045】
次に、デジタルカメラ1bに新レンズ2が装着された場合のカメラシステムの動作について説明する。
【0046】
まず、デジタルカメラ1bは、新レンズ2に対してカメラ接点ユニット16を介して通信することにより、内部メモリ11にデジタルBP保有フラグが記憶されているかどうか判別し、記憶されている場合には、新レンズ2がデジタル用BPデータを保有しているかを判定する(ステップS21)。
【0047】
仮に保有していないと判断された場合は、取りつけられた交換レンズは従来の銀塩用レンズであると判断して、銀塩用BPデータをカメラ側に送信する(ステップS27)。以降のステップS28、ステップS29におけるフォーカス制御に関する処理は、図2のステップS12、ステップS13と同様であり、これにより旧レンズシステムに対しての互換性を持たせることができる。
【0048】
デジタルカメラ1bに装着された新レンズ2がデジタル用BPデータを保有していると判定した場合、レンズマイコン10は、レンズ接点ユニット12を介して、デジタル用BPデータをデジタルカメラ1bに送信する(ステップS22)。
【0049】
次に、デジタルカメラ1bのピント位置変化要素に関する実際の条件が、標準条件(3mm)と一致しているかどうかを判定し(ステップS23)、一致している場合には、そのデジタル用BPデータを用いてベストピント位置を演算し、この演算結果を駆動データとして新レンズ2bに送信する(ステップS24)。
【0050】
他方で、標準条件と異なる場合は、実際条件と標準条件との厚みの差分量に対して、従来のシステムが行っていた概算値算出方式によってさらに補正データを求め、この補正データをデジタル用BPデータに加算して補正レンズBPデータを生成する(ステップS25)。
【0051】
そして、この補正レンズBPデータを用いてフォーカスレンズ3のベストピント位置を演算し、この演算結果を駆動データとして新レンズ2bに送信する(ステップS26)。
【0052】
デジタルカメラの実際条件と標準条件が合致すれは非常に精度の高いピント位置制御を行うことができ、仮に合致しなくとも従来に較べ補正量を格段に小さくすることができる。これにより、誤差は非常に小さくすることができるため、精度の高いピント位置制御を行うことができる。
【0053】
なお、図4に示すように、銀塩用BPデータ(第1の情報)と補正データとを用いて得られたデジタル用BPデータ(第2の情報)を予め内部メモリ11に記憶させ、これをカメラからの要求に応じて送信するようにしてもよい。この場合、銀塩カメラ1a及びデジタルカメラ1bにおける動作は、上述した図3のフローと同様であるため、説明を省略する。
【0054】
また、図5に示すように、デジタル用BPデータ(第2の情報)及び補正データ(第3の情報)を内部メモリ11に予め記憶しておき、これらを加算して銀塩用BPデータ(第1の情報)を生成するようにしてもよい。この場合、銀塩カメラ1a及びデジタルカメラ1bにおける動作は、上述した図3のフローと同様であるため、説明を省略する。
【0055】
(実施例2)
図6を用いて本発明のカメラシステムの第2実施例について説明する。ここで図6は、新レンズ2cが保有しているメモリ情報と、カメラシステムにおけるフォーカス制御手順を示したフローチャートである。
【0056】
同図において、2cは新レンズであり、新レンズ2cは銀塩用BPデータと補正用データ(銀塩用BPとデジタル用BPの差分データ)を有している。この新レンズ2cからカメラ1に対してBPデータを送信する際の制御手順について説明する。なお、このレンズ2cにおける制御は、レンズマイコン10によって実行される。
【0057】
まず、装着されたカメラに対して通信して、該カメラが有する不図示のメモリ情報を読み出すとともに、この読み出したメモリ情報に基づき該カメラがデジタルカメラかどうかを判定する(ステップS31)。
【0058】
そして、装着されたカメラがデジタルカメラでないと判定した場合には、内部メモリ11に記憶された銀塩用BPデータを銀塩カメラ1aに送信し(ステップS32)、デジタルカメラであると判定した場合には、銀塩用BPデータに補正データを加算したものをデジタル用BPデータとしてデジタルカメラ1b送信する(ステップS33)。
【0059】
ここで、デジタル用BPデータは、実施例1で説明したように標準条件での補正値をもとに算出されたものである。
【0060】
そして、デジタル用BPデータを受信したデジタルカメラ1b(ステップS41)は、デジタルカメラ1bのピント位置変化要素に関する実際の条件が、標準条件(3mm)と一致しているかどうかを判定し(ステップS42)、一致している場合には、そのデジタル用BPデータを用いてベストピント位置を演算し、この演算結果を駆動データとして新レンズ2bに送信する(ステップS43)。
【0061】
他方で、標準条件と異なる場合は、実際条件と標準条件との厚みの差分量に対して、従来のシステムが行っていた概算値算出方式によってさらに補正データを求め、この補正データをデジタル用BPデータに加算して補正レンズBPデータを生成する(ステップS44)。
【0062】
そして、この補正レンズBPデータを用いてフォーカスレンズ3のベストピント位置を演算し、この演算結果を駆動データとして新レンズ2bに送信する(ステップS45)。
【0063】
実施例1において、銀塩用BPデータに補正データを加算することによりデジタル用BPデータを求めているのは、補正データの形態でもつことにより、必要に応じてデータ量を調整しやすく、補正データテーブルの共通化を行ってレンズ内のメモリ容量を削減してコストダウンするためである。
【0064】
無論実施例としては、銀塩用BPデータとデジタル用BPデータを演算なしで独立に持たせることも可能であり、銀塩用BPデータをデジタル用BPデータと補正データの演算によって算出するようにすることもできる。
【0065】
以上の説明は、銀塩用カメラとデジタル用カメラのピント制御上の情報に関しての説明であるが、銀塩とデジタルで異なる情報に関しては同様な手法で適用することが可能であり、例えばデジタルカメラと銀塩カメラでイメージサークルが異なる場合、測光に関する情報(例えば周辺光量情報)に関して両データを持つようにしても良い。
【0066】
さらに、デジタルカメラで特有の条件が複数ある場合には、デジタルカメラ1、デジタルカメラ2というように区別してレンズ側から送る情報を銀塩条件以外に3種類以上にすることもできる。
【0067】
以上説明したように、上述の実施例によれば、撮影レンズをデジタルカメラおよび銀塩用カメラのどちらのカメラに装着しても、それぞれのカメラで最適な制御を可能とすることができる。また、既に発売済の旧システムのレンズやカメラとの互換性も容易にとることができ、利便性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】カメラシステムの機能ブロック図
【図2】従来のレンズ、カメラシステム(銀塩、デジタル両対応)を説明するための概念図
【図3】本発明の実施例1のレンズ、カメラシステム(銀塩、デジタル両対応)を説明するための概念図
【図4】実施例1の変形例を説明するための概念図
【図5】実施例1の変形例を説明するための概念図
【図6】本発明の実施例2のレンズ、カメラシステム(銀塩、デジタル両対応)を説明するための概念図
【符号の説明】
【0069】
1 カメラ
2 撮影レンズ
3 フォーカスレンズ
4 ドライバ
5 フォーカスユニット
6 減速器
7 モータ
9 エンコーダ
10 レンズマイコン
11 内部メモリ
12 接点
13 焦点検出ユニット
14 測光ユニット
15 カメラマイコン
16 接点
17 撮像素子
18 フィルム
19 フィルム駆動ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれレンズ装置から受信した情報を用いて演算を行うカメラであり、フィルムを使用する第1のカメラと撮像素子を備えた第2のカメラとに装着可能なレンズ装置であって、
前記第1のカメラに対応した第1の情報と前記第2のカメラに対応した第2の情報を生成するための第3の情報とを記憶した記憶手段と、
前記第1及び第2の情報のうち該レンズ装置が装着されたカメラに対応する情報を該カメラに送信する制御手段とを有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
それぞれレンズ装置から受信した情報を用いて演算を行うカメラであり、フィルムを使用する第1のカメラと撮像素子を備えた第2のカメラとに装着可能なレンズ装置であって、
前記第1のカメラに対応した第1の情報と前記第2のカメラに対応した第2の情報とを記憶した記憶手段と、
前記第1及び第2の情報のうち該カメラに対応する情報を送信する制御手段とを有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項3】
それぞれレンズ装置から受信した情報を用いて演算を行うカメラであり、フィルムを使用する第1のカメラと撮像素子を備えた第2のカメラとに装着可能なレンズ装置であって、
前記第2のカメラに対応した第2の情報と前記第1のカメラに対応した第1の情報を生成するための第3の情報とを記憶した記憶手段と、
前記第1及び第2の情報のうち該レンズ装置が装着されたカメラに対応する情報を該カメラに送信する制御手段とを有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項4】
前記第1および第2の情報は、該レンズ装置のフォーカス制御に関わる情報であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第1および第2の情報は、前記第1および第2のカメラにおける測光に関わる情報であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、該レンズ装置が前記第2の情報を有するレンズ装置であることを前記第2のカメラに検出させるための第4の情報を前記第2のカメラに送信することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、該レンズ装置が装着されたカメラが前記第1のカメラか前記第2のカメラかを判別し、該判別結果に応じて該カメラに送信する情報を選択することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のレンズ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のレンズ装置と、
フィルムを使用するカメラであって前記レンズ装置から受信した情報を用いて演算を行う第1のカメラと、
撮像素子を備えたカメラであって前記レンズ装置から受信した情報を用いて演算を行う第2のカメラとを有することを特徴とするカメラシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−119283(P2006−119283A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305903(P2004−305903)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】